説明

半導体装置の製造方法

【課題】 高速アニール処理や頻繁なクリーニング処理を必要とすることなく、不純物含有量の少ないアモルファス薄膜を基板上に効率良く形成する。
【解決手段】基板に対して成膜ガスを供給して、基板上に薄膜を形成する成膜工程と、基板に対して酸素含有ガスを活性化させた反応物を供給して、成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程と、を同一反応室内で連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、成膜工程で基板に対して供給する成膜ガスと、改質工程で基板に対して供給する反応物とを同一の供給口より反応室内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に薄膜を形成する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の1つに基板(シリコンウェハやガラスなどをベースとする微細な電気回路のパターンが形成された被処理基板)の表面に所定の成膜処理を行うCVD(Chemical Vapor Deposition)工程がある。これは、気密な反応室に基板を装填し、室内に設けた加熱手段により基板を加熱し、成膜ガスを基板上へ導入しながら化学反応を起こし、基板上に設けた微細な電気回路のパターン上へ薄膜を均一に形成するものである。このような反応室では、薄膜は基板以外の構造物へも形成される。図19に示すCVD装置では、反応室1内にシャワーヘッド6とサセプタ2を設け、サセプタ2上に基板4を載置している。成膜ガスは、シャワーヘッド6に接続された原料供給管5を通って反応室1内へ導入され、シャワーヘッド6に設けた多数の孔8より基板4上へ供給される。基板4上へ供給されたガスは、排気管7を通って排気処理される。尚、基板4はサセプタ2の下方に設けたヒータ3によって加熱される。
【0003】
このようなCVD装置として、成膜原料に有機化学材料を使ってアモルファスHfO膜やアモルファスHfシリケート膜(以下、単にHfO膜と略す)を形成するMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置や、ALD(Atomic Layer Deposition)装置がある。ここで、MOCVD装置で実施するCVD法と、ALD装置で実施するALD法との違いは次の通りである。ALD法は処理温度、圧力が低く、膜を1原子層ずつ形成する。これに対して、CVD法は、ALD法よりも処理温度、圧力は高く、膜を略1/6原子層〜数十原子層ずつ形成する。
【0004】
成膜原料としては、
Hf[OC(CH(以下、Hf−(OtBu)と略す)、
Hf[OC(CHCHOCH(以下、Hf−(MMP)と略す)、
但し、MMP:メチルメトキシプロポキシ
Hf[O−Si−(CH)]
などが使用されている。
【0005】
このなかで、例えばHf−(OtBu)、Hf−(MMP)など、多くの有機材料は常温常圧において液相である。このため、例えばHf−(MMP)は加熱して蒸気圧により気体に変換して利用されている。このような原料を利用して前記のCVD法を用いて例えば基板温度450℃以下でHfO膜を形成する。このHfO膜は、有機材料に起因するCH、OHなどの不純物が数%と多量に含まれている。その結果、物質の電気的性質を示す区分としては、絶縁体を確保したいとの意図に反して半導体、あるいは導体に属することになる。
【0006】
このような薄膜の電気的絶縁性、およびその安定性を確保するため、HfO膜をOやN雰囲気中で650℃〜800℃前後の高速アニール処理(以下、RTA[ラピッドサーマルアニーリング]と略す)を施すことにより、CやHを離脱させて緻密化し安定した絶縁体薄膜に変換しようとする試みが、従来より行われている。ここでRTAの目的は、膜中のC、H等の不純物を離脱するとともに、緻密化することである。緻密化は、結晶化まではさせないが、アモルファス状態の平均原子間距離を縮めるために行なう。
【0007】
図20に、HfO膜を形成する従来方法におけるクラスタ装置構成を示す。基板を装置外からロードロック室32に搬入し、第1反応室33でRCA洗浄(過酸化水素をベースにした典型的な洗浄法)等の基板表面処理を施し、第2反応室34で上述した従来相当の方法によりHfO膜を形成し、第3反応室35でRTA処理(不純物除去、熱アニール処理)を行い、第4反応室36で電極(poly−Si薄膜など)を形成する。電極を形成した基板はロードロック室32から装置外へ搬出する。上記搬入・搬出は、基板搬送室30に設けた基板搬送ロボット31を用いて行う。
【0008】
第3反応室35では、RTA処理によりHfO膜からC、Hを離脱させると、その表面状態は平坦性を失い凹凸な表面状態に変化するという問題が生じる。また、RTA処理によりHfO膜は部分的に結晶化しやすく、その結晶粒界を通って大きな電流が流れやすくなり、絶縁性やその安定性がかえって損なわれるという問題が生じる。これらの問題は、絶縁物に限らず全ての有機化学材料を用いたMOCVD法あるいはALD法を利用した薄膜堆積方法に共通する。
【0009】
また、第2反応室34では、基板以外の構造物にも薄膜が形成される。これを累積膜といい、この累積膜にもC、Hが多量に混入している。このため、処理した基板枚数の増加と共に、累積膜から離脱するC、H量は増加し、基板上に形成されるHfO膜に含まれるC、H混入量は処理基板枚数の増加と共に徐々に増加することになる。この現象により、連続して生産されるHfO膜の品質を一定にすることが非常に難しくなっている。このような憂慮すべき事象を解決するため、セルフクリーニングによる累積膜の除去処理を頻繁に実施することが必要になり、それが生産性を低下させる要因になっている。
【0010】
上述したようにアモルファス薄膜を形成する従来の技術では、RTA処理によりHfO膜の表面状態が平坦性を失い凹凸な表面状態に変化したり、HfO膜が部分的に結晶化して結晶粒界が発生し、絶縁性やその安定性が低くなるという問題があった。
【0011】
また、連続して生産されたHfO膜の品質を一定にするために、C、Hが多量に混入する累積膜のクリーニング処理を頻繁に実施することが必要になり、生産性が低下するという問題があった。
【0012】
なお、HfO膜に関するものではないが、薄膜形成技術として、Ta成膜と改質処理を同一反応室内で複数回繰り返す方法(例えば、特許文献1参照)、高誘電率酸化膜、強誘電体酸化膜の成膜と、酸化雰囲気ガスを用いて生成したプラズマを用いた熱処理を同一反応室内で複数回繰り返す方法(例えば、特許文献2参照)、金属膜の形成と窒化剤ガス導入による金属窒化物膜形成を複数回繰り返す方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【特許文献1】特開2002−50622号公報
【特許文献2】特開平11−177057号公報
【特許文献3】特開平11−217672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上述した特許文献1〜3に記載された従来技術を用いて、金属酸化膜を形成しようとしても、成膜工程の際、原料ガス以外に酸素原子を含むガスを用いて金属酸化膜を形成するので、改質工程の際、金属酸化膜中の特定元素を有効に除去できず、膜の改質が十分ではなかった。
【0014】
また、成膜ガスと反応物とが異なる供給口より供給されるので、供給口の内部に付着した異物が基板上へ落ちてくることを抑制できず、また、クリーニングしても供給口内部に
吸着している副生成物やクリーニングガスの除去が十分ではなかった。
【0015】
また、一の装置で薄膜を形成しアニールを行った後、一の装置から基板を取り出して別な装置で電極を形成すると、スループットが低下するという問題があった。
【0016】
本発明の課題は、上述した従来技術の問題点を解消して、改質工程の際、金属酸化膜中の特定元素を有効に除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、供給口の内部に付着した異物が基板上へ落ちてくることを抑制でき、クリーニングによって供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスを除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、Hfを含む膜中の特定元素を速やかに除去することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の課題は、スループットを向上することが可能な半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明は、酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用い、前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、前記原料ガスとは異なる反応物を用いて成膜工程において形成した金属酸化膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする。成膜工程で、原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく基板上に金属酸化膜を形成するので、膜中に特定元素が含まれやすい酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用いても、膜中の特定元素を有効に除去して膜を改質しやすくできる。また、成膜工程と改質工程とを連続して行うので、成膜工程において形成した膜中の特定元素を速やかに除去して膜を改質できる。また、成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返すので、容易に所定の膜厚の膜を形成できると共に、一度に所定の膜厚の膜を形成してから改質工程を行なう場合に対して、形成した膜中の特定元素の除去量を増加して膜を十分に改質することができる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、前記成膜工程と改質工程は同一反応室内で行われることを特徴とする。成膜工程と改質工程が同一反応室内で行われると、工程間で基板の降温が生じないので、再度基板を処理するための昇温時間が不要となり、基板の昇温時間が節約でき、処理効率がよい。また、同一反応室内に基板が止まるので、成膜表面が汚染されにくくなる。
【0019】
第3の発明は、第1の発明において、前記金属原子とはHfであり、前記金属酸化膜とはHfを含む膜であることを特徴とする。原料に金属原子を含む原料を用いる場合、通常酸素ガス等の酸素原子を含むガスも一緒に用いるが、特に金属原子がHfであり、金属酸化膜がHfを含む膜である場合、酸素原子を含むガスは用いない方が膜中の特定元素を有効に除去して膜を改質することができる。
【0020】
第4の発明は、第1の発明において、前記原料とはHf[OC(CHCH0CHであり、前記金属酸化膜とはHfを含む膜であることを特徴とする。原料に有機原料を用いる場合、通常、酸素原子を含むガスも一緒に用いるが、特にHf[OC(CHCHOCHを用いる場合、酸素原子を含むガスは用いない方がC、H等の特定元素(不純物)の混入量を少なくできる。
【0021】
第5の発明は、第1の発明において、前記金属原子とはHfであり前記金属酸化膜とはHfを含む膜であり、1回の成膜工程で形成する金属酸化膜の膜厚が0.5Å〜30Åであることを特徴とする。1回の成膜工程で形成するHf含む膜の膜厚が0.5Å〜30Å(1/6原子層〜10原子層)であると、不純物が含まれていても結晶化しにくい状態を
維持でき、この状態で改質処理を行うことにより不純物を除去して膜を改質しやすくすることができる。
【0022】
第6の発明は、第2の発明において、前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物とを同一の供給口より供給することを特徴とする。成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物を同一の供給口より供給すると、供給口の内部に付着した異物を金属酸化膜で覆って堆積することができ、異物が基板上へ落ちてくることを抑制できる。また、反応室をクリーニングガスでクリーニングした場合、供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスの除去が実施できる。
【0023】
第7の発明は、第2の発明において、前記成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物はそれぞれ別々の供給口より供給するとともに成膜工程で原料ガス用の供給口より基板に原料ガスを供給する際は反応物用の供給口に非反応性ガスを供給し、改質工程で反応物用の供給口より基板に反応物を供給する際は、原料ガス用の供給口に非反応性ガスを供給することを特徴とする。このように、原料ガスと反応物とを別々の供給口より供給し、各工程で互いに関与しない供給口から不活性ガスなどの非反応性ガスを供給するようにしても、さらに供給口の内部への累積膜形成を抑制することができる。
【0024】
第8の発明は、第2の発明において、成膜工程で基板に原料ガスを供給する際は、改質工程で使用する反応物は停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておき、改質工程で基板に反応物を供給する際は成膜工程で使用する原料ガスは停止させることなく反応室をバイパスするよう排気しておくことを特徴とする。このように、成膜工程での反応物、改質工程での成膜ガスの供給をそれぞれ停止させずに、反応室をバイパスするように流しておくと、流れを切換えるだけで、直ちに成膜ガス又は反応物を基板へ供給できる。したがって、スループットを向上させることができる。
【0025】
第9の発明は、第2の発明において、成膜工程で反応室内を排気する排気ラインと、改質工程で反応室内を排気する排気ラインには両工程共用で用いられるトラップが設けられることを特徴とする。排気ラインにトラップが設けられるので、排気ラインに通じる排気ポンプや除害装置への原料流入を少なくすることができ、装置のメンテナンスサイクルを低減できる。また、トラップを両工程共用で用いるので、メンテナンスが簡単になる。
【0026】
第10の発明は、第2の発明において、さらに反応室内に付着した膜をプラズマにより活性化させたクリーニングガスを用いて除去するクリーニング工程を有し、改質工程で用いる反応物はプラズマにより活性化させたガスであり、改質工程でガスを活性化させるために用いるプラズマ源とクリーニング工程でクリーニングガスを活性化させるために用いるプラズマ源とが共用であることを特徴とする。反応物活性化用とクリーニングガス活性化用のプラズマ源が共用であるため、プラズマ源の管理が容易となり、半導体装置を安価に製造することができる。
【0027】
第11の発明は、第1の発明において、前記反応物とは酸素原子を含むことを特徴とする。反応物が酸素原子を含むと、金属酸化膜形成直後に特定元素の改質工程を効率的に実施することができる。
【0028】
第12の発明は、第1の発明において、前記反応物とは酸素原子を含むガスをプラズマにより活性化したガスを含むことを特徴とする。反応物が酸素原子を含むガスをプラズマにより活性化したガスであると、金属酸化膜形成直後に特定元素の改質工程をより効率的に実施することができる。
【0029】
第13の発明は、第1の発明において、前記成膜工程または/および改質工程は基板を回転させながら行うことを特徴とする。基板を回転させながら行なうので、膜中の特定元素を素早く均一に除去して膜を改質できる。
【0030】
第14の発明は、第2の発明において、成膜工程と改質工程を繰り返すことにより基板上に金属酸化膜を形成後、基板を大気に晒すことなく反応室から搬送室を介して他の反応室に搬送する工程と、他の反応室内で基板上に形成された金属酸化膜上に電極を形成する工程とを有し、金属酸止膜の形成後、電極形成工程とは別工程としてアニール工程を行うことなく電極を形成すると共に、金属酸化膜の形成から電極形成までを同一装置内で行うことを特徴とする。金属酸化膜の形成から電極形成までを同一装置内で行なうので、電極形成を異なる装置で行なう場合に比べて、基板の昇温時間を節約できる。また、膜の表面を洗浄な状態のまま電極を形成できる。また、電極形成時に行う熱アニールで金属酸化膜が緻密化されるので、膜が汚染されにくくなる。
【0031】
第15の発明は、基板上に成膜ガスを供給して薄膜を形成する成膜工程と、前記成膜ガスとは異なる反応物を供給して成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程とを同一反応室内で連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、前記成膜工程で基板に供給する成膜ガスと、改質工程で基板に供給する反応物とを同一の供給口より供給することを特徴とする。成膜工程と改質工程とを連続して行うので、成膜工程において形成した膜中の特定元素を速やかに除去して膜を改質できる。また、成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返すので、容易に所定の膜厚の膜を形成できると共に、一度に所定の膜厚の膜を形成してから改質工程を行なう場合に対して、形成した膜中の特定元素の除去量を増加して膜を改質することができる。また、成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物を同一の供給口より供給すると、供給口の内部に付着した異物を薄膜で覆って堆積することができ、異物が基板上へ落ちてくることを抑制できる。また、反応室をクリーニングガスでクリーニングした場合、供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスの除去が実施できる。
【0032】
第16の発明は、Hfを含む原料を気化した原料ガスを用いて基板上にHfを含む膜を形成する成膜工程と、前記原料ガスとは異なる反応物を用いて成膜工程において形成したHfを含む膜の改質を行う改質工程と、を連続して複数回繰り返すことを特徴とする。成膜工程と改質工程とを連続して行うので、成膜工程において形成したHfを含む膜中の特定元素を速やかに除去して膜を改質できる。また、成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返すので、容易に所定の膜厚のHfを含む膜を形成できると共に、一度に所定の膜厚のHfを含む膜を形成してから改質工程を行なう場合に対して、形成した膜中の特定元素の除去量を増加してHfを含む膜を改質することができる。
【0033】
第17の発明は、第16の発明において、1回の成膜工程で形成するHf含む膜の膜厚が0.5Å〜30Åであることを特徴とする。1回の成膜工程で形成するHf含む膜の膜厚が0.5Å〜30Å、すなわち、1/6原子層〜10原子層であると、不純物があっても結晶化しにくい状態を維持でき、この状態で改質処理を行うことにより不純物を除去して膜を改質しやすくすることができる。
【0034】
第18の発明は、基板上に成膜ガスを供給して薄膜を形成する成膜工程と、前記成膜ガスとは異なる反応物を供給して成膜工程において形成した薄膜の改質を行う改質工程とを同一反応室内で連続して複数回繰り返すことにより基板上に薄膜を形成した後、基板を大気に晒すことなく反応室から搬送室を介して他の反応室に搬送する工程と、他の反応室内で基板上に形成された薄膜上に電極を形成する工程とを有し、薄膜の形成後、電極形成工程とは別工程としてアニール工程を行うことなく電極を形成すると共に薄膜の形成から電極形成までを同一装置内で行うことを特徴とする。薄膜の形成から薄膜の改質、電極形成
までを同一装置内で行なうので、薄膜の改質や電極形成を異なる装置で行なう場合に比べて、基板の昇温時間を節約できる。また、膜中の特定元素を速やかに除去して膜を改質でき、薄膜の表面を洗浄な状態のまま電極形成できる。また、電極形成時に行う熱アニールで薄膜が緻密化されるので、薄膜が汚染されにくくなる。
【0035】
第19の発明は、基板を処理する反応室と、前記反応室内に酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを供給する第1供給口と、前記反応室内に前記ガスとは異なる反応物を供給する第2供給口と、前記反応室内を排気する排気口とを備え、前記反応室内で前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく前記基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程とを連続して複数回繰り返すように制御する制御装置とを有する基板処理装置である。成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返すように制御する制御装置を有することによって、上述した半導体装置の製造方法を容易に実施できる。
【0036】
上述した第1の発明〜第2の発明、第6の発明〜第15の発明、第18、第19の発明では、成膜工程で形成される膜はHfを含む膜に限定されないが、第3の発明〜第5の発明、第16の発明〜第17の発明では、成膜工程で形成される膜はHfを含む膜に限定される。Hfを含む膜の例として、HfO、HfON、HfSiO、HfSiON、HfAlO、HfAlONなどがある。また、Hfを含む膜以外の膜の例としては、下記のものがある。
PET(Ta(OC)を利用したTaO膜(酸化タンタル膜)
Zr−(MMP)を利用したZrO膜(酸化ジルコニウム膜)
Al−(MMP)を利用したAlO膜(酸化アルミニウム膜)
Zr−(MMP)とSi−(MMP)を利用したZrSiO膜(酸化Zrシリケート膜)やZrSiON膜(酸窒化Zrシリケート膜)
Zr−(MMP)とAl−(MMP)を利用したZrAlO膜やZrAlON膜
Ti−(MMP)を利用したTiO膜(酸化チタン膜)
Ti−(MMP)とSi−(MMP)を利用したTiSiOやTiSiON膜
Ti−(MMP)とAl−(MMP)を利用したTiAlO、TiAlON膜
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、成膜工程の際、酸素原子を含むガスを用いることなく金属酸化膜を形成するので、改質工程の際、金属酸化膜中の特定元素を有効に除去して膜を改質しやすくできる。
【0038】
また、成膜ガスと反応物を同一の供給口より供給するので、供給口の内部に付着した異物を薄膜で覆って、異物が基板上へ落ちてくることを抑制でき、クリーニングすることで、供給口内部に吸着している副生成物やクリーニングガスの除去が実施できる。
【0039】
また、特に、Hfを含む膜の形成と、反応物を用いた膜の改質とを連続して行うと、成膜工程において形成したHfを含む膜中の特定元素を速やかに除去して膜を改質できる。この場合において、1回に形成するHfを含む膜の膜厚を0.5Å〜30Å(1/6原子層〜10原子層)とすると、結晶化しにくい状態で改質処理を行うことができ、不純物を有効に除去して膜を改質することができる。
【0040】
また、薄膜の形成後、電極形成工程とは別工程としてアニール工程を行うことなく電極を形成すると共に薄膜の形成から電極形成までを同一装置内で行うと、スループットを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明の実施の形態を説明する。実施の形態では、CVD法、より具体的にはMOCVD法を使って、HfO膜のうち特にアモルファス状態のHfO膜(以下、単にHfO膜と略す)を形成する場合について説明する。
【0042】
図1は実施の形態に係る基板処理装置である枚葉式CVD装置の一例を示す概略図である。従来の反応室1(図19)に対して、プラズマ源となる反応物活性化ユニット11、基板回転ユニット12、不活性ガス供給ユニット10、バイパス管14を主に追加してある。
【0043】
図に示すように、反応室1内に、上部開口がサセプタ2によって覆われた中空のヒータユニット18が設けられる。ヒータユニット18の内部にはヒータ3が設けられ、ヒータ3によってサセプタ2上に載置される基板4を加熱するようになっている。サセプタ2上に載置される基板4は、例えば半導体シリコンウェハ、ガラス等である。
【0044】
反応室1外に基板回転ユニット12が設けられ、基板回転ユニット12によって反応室1内のヒータユニット18を回転して、サセプタ2上の基板4を回転できるようになっている。基板4を回転させるのは、後述する成膜工程、改質工程における基板への処理を基板面内において素早く均一に行うためである。
【0045】
また、反応室1内のサセプタ2の上方に多数の孔8を有するシャワーヘッド6が設けられる。このシャワーヘッド6には、成膜ガスを供給する原料供給管5とラジカルを供給するラジカル供給管13とが共通に接続されて、成膜ガス又はラジカルをシャワーヘッド6からシャワー状に反応室1内へ噴出できるようになっている。ここで、シャワーヘッド6は、成膜工程で基板4に供給する成膜ガスと、改質工程で基板4に供給するラジカルとをそれぞれ供給する同一の供給口を構成する。
【0046】
反応室1外に、成膜原料としての有機液体原料を供給する成膜原料供給ユニット9と、成膜原料の液体供給流量を制御する流量制御手段としての液体流量制御装置28と、成膜原料を気化する気化器29とが設けられる。非反応ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給ユニット10と、不活性ガスの供給流量を制御する流量制御手段としてのマスフローコントローラ46が設けられる。成膜原料としてはHf−(MMP)などの有機材料を用いる。また、不活性ガスとしてはAr、He、Nなどを用いる。成膜原料供給ユニット9に設けられた原料ガス供給管5bと、不活性ガス供給ユニット10に設けられた不活性ガス供給管5aとを一本化して、シャワーヘッド6に接続される原料供給管5が設けられる。原料供給管5は、基板4上にHfO膜を形成する成膜工程で、シャワーヘッド6に成膜ガスと不活性ガスとの混合ガスを供給するようになっている。原料ガス供給管5b、不活性ガス供給管5aにはそれぞれバルブ21、20を設け、これらのバルブ21、20を開閉することにより、成膜ガスと不活性ガスとの混合ガスの供給を制御することが可能となっている。
【0047】
また、反応室1外に、ガスをプラズマにより活性化させて反応物としてのラジカルを形成するプラズマ源となる反応物活性化ユニット(リモートプラズマユニット)11が設けられる。改質工程で用いるラジカルは、原料としてHf−(MMP)などの有機材料を用いる場合は、例えば酸素ラジカルが良い。これは酸素ラジカルにより、HfO膜形成直後にCやHなどの不純物除去処理を効率的に実施することができるからである。また、クリーニング工程で用いるラジカルはClFラジカルが良い。改質工程において、酸素含有ガス(O、NO、NO等)をプラズマによって分解した酸素ラジカル雰囲気中で、膜を酸化させる処理をリモートプラズマ酸化処理(RPO[remote plasma oxidation]処理)という。
【0048】
反応物活性化ユニット11の上流側には、ガス供給管37が設けられる。このガス供給管37には、酸素(O)を供給する酸素供給ユニット47、プラズマを発生させるガスであるアルゴン(Ar)を供給するAr供給ユニット48、及びフッ化塩素(ClF)を供給するClF供給ユニット49が、供給管52、53、54を介して接続されて、改質工程で使用するOとAr、及びクリーニング工程で使用するClFを反応物活性化ユニット11に対し供給するようになっている。酸素供給ユニット47、Ar供給ユニット48、及びClF供給ユニット49には、それぞれのガスの供給流量を制御する流量制御手段としてのマスフローコントローラ55、56、57が設けられている。供給管52、53、54にはそれぞれバルブ58、59、60を設け、これらのバルブ58、59、60を開閉することにより、Oガス、Arガス、及びClFの供給を制御することが可能となっている。
【0049】
反応物活性化ユニット11の下流側には、シャワーヘッド6に接続されるラジカル供給管13が設けられ、改質工程又はクリーニング工程で、シャワーヘッド6に酸素ラジカル又はフッ化塩素ラジカルを供給するようになっている。また、ラジカル供給管13にはバルブ24を設け、バルブ24を開閉することにより、ラジカルの供給を制御することが可能となっている。
【0050】
反応室1に排気口7aが設けられ、その排気口7aは除害装置(図示せず)に連通する排気管7に接続されている。排気管7には、成膜原料を回収するための原料回収トラップ16が設置される。この原料回収トラップ16は、成膜工程と改質工程とに共用で用いられる。前記排気口7a及び排気管7で排気ラインを構成する。
【0051】
また、原料ガス供給管5b及びラジカル供給管13には、排気管7に設けた原料回収トラップ16に接続される原料ガスバイパス管14a及びラジカルバイパス管14b(これらを単に、バイパス管14という場合もある)がそれぞれ設けられる。原料ガスバイパス管14a及びラジカルバイパス管14bに、それぞれバルブ22、23を設ける。これらのバルブの開閉により、成膜工程で反応室1内の基板4に成膜ガスを供給する際は、改質工程で使用するラジカルの供給は停止させずに反応室1をバイパスするようラジカルバイパス管14b、原料回収トラップ16を介して排気しておく。また、改質工程で基板4にラジカルを供給する際は、成膜工程で使用する成膜ガスの供給は停止させずに反応室1をバイパスするよう原料ガスバイパス管14a、原料回収トラップ16を介して排気しておく。
【0052】
そして、反応室1内で基板4上にHfO膜を形成する成膜工程と、成膜工程で形成したHfO膜中の特定元素であるC、H等の不純物を反応物活性化ユニット11を用いたプラズマ処理により除去する改質工程とを、前記バルブ20〜24の開閉等を制御することにより、連続して複数回繰り返すように制御する制御装置25が設けられている。
【0053】
次に上述した図1のような構成の枚葉式CVD装置を用いて、従来とは異なる高品質なHfO膜を堆積するための手順を示す。この手順には、昇温工程、成膜工程、パージ工程、改質工程が含まれる。
【0054】
まず、図1に示す反応室1内のサセプタ2上に基板4を載置し、基板4を基板回転ユニット12により回転させながら、ヒータ3に電力を供給して基板4の温度を350〜500℃に均一に加熱する(昇温工程)。尚、基板温度は用いる有機材料の反応性により異なるが、Hf−(MMP)においては、390〜450℃の範囲内が良い。また、基板4の搬送時や基板加熱時は、不活性ガス供給管5aに設けたバルブ20を開けて、Ar、He、Nなどの不活性ガスを常に流しておくとパーティクルや金属汚染物の基板4への付
着を防ぐことができる。
【0055】
昇温工程終了後、成膜工程に入る。成膜工程では、成膜原料供給ユニット9から供給した有機液体原料例えばHf−(MMP)を、液体流量制御装置28で流量制御し、気化器29へ供給して気化させる。原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を開くことにより、気化した原料ガスをシャワーヘッド6を介して基板4上へ供給する。このときも、バルブ20を開いたままにして、不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(Nなど)を常に流して、成膜ガスを撹拌させるようにする。成膜ガスは不活性ガスで希釈すると撹拌しやすくなる。原料ガス供給管5bから供給される成膜ガスと、不活性ガス供給管5aから供給される不活性ガスとは原料供給管5で混合され、混合ガスとしてシャワーヘッド6に導びかれ、多数の孔8を経由して、サセプタ2上の基板4上へシャワー状に供給される。なお、このときO等の酸素原子を含むガスは供給せず、反応性ガスとしてはHf−(MMP)ガスのみ供給する。
【0056】
この混合ガスの供給を所定時間実施することにより、基板4上に基板との界面層(第1の絶縁層)としてのHfO膜を0.5Å〜30Å、例えば15Å形成する。この間、基板4は回転しながらヒータ3により所定温度(成膜温度)に保たれているので、基板面内にわたり均一な膜を形成できる。次に、原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を閉じて、原料ガスの基板4への供給を停止する。なお、この際、原料ガスバイパス管14aに設けたバルブ22を開き、成膜ガスの供給を原料ガスバイパス管14aで反応室1をバイパスして排気し、成膜原料供給ユニット9からの成膜ガスの供給を停止しないようにする。液体原料を気化して、気化した原料ガスを安定供給するまでには時間がかかるので、成膜ガスの供給を停止させずに、反応室1をバイパスするように流しておくと、次の成膜工程では流れを切換えるだけで、直ちに成膜ガスを基板4へ供給できる。
【0057】
成膜工程終了後、パージ工程に入る。パージ工程では、反応室1内を不活性ガスによりパージして残留ガスを除去する。なお、成膜工程ではバルブ20は開いたままにしてあり、反応室1内には不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(Nなど)が常に流れているので、バルブ21を閉じて原料ガスの基板4への供給を停止すると同時にパージが行われることとなる。
【0058】
パージ工程終了後、改質工程に入る。改質工程はRPO(remote plasma
oxidation)処理によって行う。ここでRPO処理とは、酸素含有ガス(O、NO、NO等)をプラズマによって活性化させて発生させた反応物としての酸素ラジカルを用いて、膜を酸化させるリモートプラズマ酸化処理のことである。改質工程では、供給管53に設けたバルブ59を開き、Ar供給ユニット48から供給したArをマスフローコントローラ56で流量制御して反応物活性化ユニット11へ供給し、Arプラズマを発生させる。Arプラズマを発生させた後、供給管52に設けたバルブ58を開き、酸素供給ユニット47から供給したOをマスフローコントローラ55で流量制御してArプラズマを発生させている反応物活性化ユニット11へ供給し、Oを活性化する。これにより酸素ラジカルが生成される。ラジカル供給管13に設けたバルブ24を開き、反応物活性化ユニット11から酸素ラジカルを含むガスを、シャワーヘッド6を介して基板4上へ供給する。この間、基板4は回転しながらヒータ3により所定温度(成膜温度と同一温度)に保たれているので、成膜工程において基板4上に形成された15ÅのHfO膜よりC、H等の不純物を素早く均一に除去できる。
【0059】
その後、ラジカル供給管13に設けたバルブ24を閉じて、酸素ラジカルの基板4への供給を停止する。なお、この際、ラジカルバイパス管14bに設けたバルブ23を開くことにより、酸素ラジカルを含むガスの供給を、ラジカルバイパス管14bで反応室1をバイパスして排気し、酸素ラジカルの供給を停止しないようにする。酸素ラジカルは生成か
ら安定供給するまでに時間がかかるので、酸素ラジカルの供給を停止させずに、反応室1をバイパスするように流しておくと、次の改質工程では、流れを切換えるだけで、直ちにラジカルを基板4へ供給できる。
【0060】
改質工程終了後、再びパージ工程に入る。パージ工程では、反応室1内を不活性ガスによりパージして残留ガスを除去する。なお、改質工程でもバルブ20は開いたままにしてあり、反応室1内には不活性ガス供給ユニット10から不活性ガス(Nなど)が常に流れているので、酸素ラジカルの基板4への供給を停止すると同時にパージが行われることとなる。
【0061】
パージ工程終了後、再び成膜工程に入り、原料ガスバイパス管14aに設けたバルブ22を閉じて、原料ガス供給管5bに設けたバルブ21を開くことにより、成膜ガスをシャワーヘッド6を介して基板4上へ供給し、また15ÅのHfO膜を、前回の成膜工程で形成した薄膜上に堆積する。
【0062】
以上のような、成膜工程→パージ工程→改質工程→パージ工程を複数回繰り返すというサイクル処理により、CH、OHの混入が極めて少ない所定膜厚の薄膜を形成することができる。
【0063】
ここで、Hf−(MMP)を用いた場合の好ましい成膜条件は、次の通りである。温度範囲は400〜450℃、圧力範囲は100Pa程度以下である。温度については、400℃より低くなると膜中に取り込まれる不純物(C、H)の量が急激に多くなる。400℃以上になると、不純物が離脱し易くなり、膜中に取り込まれる不純物量が減少する。また、450℃より高くなるとステップカバレッジが悪くなるが、450℃以下の温度であると、良好なステップカバレッジが得られ、また、アモルファス状態を保つこともできる。
【0064】
また、圧力については、例えば1Torr(133Pa)以上の高い圧力とするとガスは粘性流となり、パターン溝の奥までガスが入って行かなくなる。ところが、100Pa程度以下の圧力とすることにより、流れを持たない分子流とすることができ、パターン溝の奥までガスが行き届く。
【0065】
また、Hf−(MMP)を用いた成膜工程に連続して行なう改質工程であるRPO(remote plasma oxidation)処理の好ましい条件は、温度範囲は390〜450℃程度(成膜温度と略同一温度)、圧力範囲は100〜1000Pa程度である。また、ラジカル用のO流量は100sccm、不活性ガスAr流量は1slmである。
【0066】
成膜工程と、改質工程は、略同一温度で行なうのが好ましい(ヒータの設定温度は変更せずに一定とするのが好ましい)。これは、温度変動を生じさせないことにより、シャワーヘッドやサセプタ等の周辺部材の熱膨張によるパーティクルが発生しにくくなり、また、金属部品からの金属の飛び出し(金属汚染)を抑制できるからである。
【0067】
尚、クリーニングガスラジカルによる累積膜のセルフクリーニング工程を実施するには、反応物活性化ユニット11でクリーニングガス(ClやClFなど)をラジカルにして反応室1に導入する。このセルフクリーニングにより、反応室1でクリーニングガスと累積膜とを反応させ、累積膜を塩化金属などに変換して揮発させて、これを排気する。これにより反応室内の累積膜が除去される。
【0068】
上述した実施の形態によれば、HfO膜形成→改質処理(RPO処理)→HfO
形成→…を複数回繰り返すというサイクル処理をしているので、CH、OHの混入が極めて少ない所定膜厚のHfO膜を形成することができる。以下、これを次の観点から具体的に説明する。
(1)成膜時Oの不使用
(2)RPO処理
(3)サイクル処理
(4)回転機構
(5)シャワーヘッドの共有
(6)バイパス管
(7)トラップの共有
(8)プラズマ源の用途
(9)同一装置内で行う処理
(10)変形例
【0069】
(1)成膜時Oの不使用
成膜工程におけるHfO膜の成膜時に、原料ガス以外には酸素(O)等の酸素原子を含むガスを用いないようにすると、膜中のCH、OHの混入量を少なくできる。
【0070】
HfO膜を形成する際、原料ガスと不活性ガスの混合ガス中にOを混合するケースもある。これは下地に対する密着性、成膜レートを考慮すると、一般的には原料ガスと一緒にOを入れた方がよいからである。しかし、本発明者らは、実験によりHf−(MMP)については、Oを入れない方が不純物の混入量が減り膜質が向上し、逆にOを入れた方が不純物の混入量が増え膜質が低下することを見い出した。従って、成膜原料としてHf−(MMP)を用いる実施の形態では、Oを混合しない方が、膜中のCH、OHの混入量を少なくできるため、Oを混合していない。
【0071】
Hf−(MMP)を用いる場合に、酸素を供給しない方が不純物の混入量を少なくできるメカニズムは次の通りである。Hf−(MMP)を用いて酸素を混合する場合(以下、酸素ありともいう)、酸素を混合しない場合(以下、酸素なしともいう)で理想的な化学反応式を比較すると次のようになる。
【0072】
A.酸素なしで理想的な反応が起こった場合(熱のみによる理想的な自己分解反応):
Hf[OC(CHCHOCH→Hf(OH)+4C(CHCHOCH↑ (1)
Hf(OH)→HfO+2HO (2)
B.酸素ありで理想的な反応が起こった場合(完全燃焼の場合):
Hf[OC(CHCHOCH+24O→HfO+16CO↑+22HO↑ (3)
ただし、↑は揮発性物質を意味する。
上記の反応化学式で、大文字の数値は、そのまま基板上における原料のモル比と考えると、酸素なしでは、
HfO:(その他の不純物)=1:(4+2)=1:6
となる。酸素ありでは、
HfO:(その他の不純物)=1:(16+22)=1:38となる。
【0073】
したがって、1モルのHfOを生成する時に発生する不純物の総モル数は、酸素ありの方が大きくなる。
【0074】
さらに、各結合を切断するための化学式上の切断回数を比較すると、
酸素なしの場合:O−C、C−H、O−Hの切断が各4回、計12回
酸素ありの場合:O−Cが12回、C−Hが44回、計56回
この切断回数が多いほど、ラジカル量が多くなるので、膜中に不純物が混入しやすくなる。
【0075】
結論として酸素なしで成膜し、上記式(1)の[C(CHCHOCH]を分解させない温度で揮発させ、HfO膜を成膜するとよい。
【0076】
また、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)を用いてO添加量による薄膜への影響を測定した図2及び図3からも、酸素なしでHfO膜を形成する方が好ましいことが裏付けられる。
【0077】
図2は、酸素なしの場合と酸素ありの場合とで比較した薄膜の膜質特性を示す。横軸に波数(cm−1)、縦軸に成膜温度が425℃と440℃での吸光度を示している。尚、酸素ありの場合は、酸素流量は0.5SLMである。同図に示すように、特に、波数752cm−1付近のストレッチモード(stretch mode)を励起することによって、Hf−O−Hf結合を示すX−O−X結合を反映する吸光度が、酸素なしの場合は酸素ありの場合と比較して多い。すなわち酸素なしの場合の方が膜質が良いことを示している。
【0078】
図3は、酸素なしの場合と酸素ありの場合とで比較した膜中に含まれる不純物量特性を示す。横軸に波数(cm−1)、縦軸に成膜温度が425℃と440℃での吸光度を示している。尚、酸素ありの場合は、酸素流量は0.5SLMである。同図に示すように、ストレッチ及びワギングモード(stretch, wagging mode)を励起することによって、不純物量(−OH、C−H、C−O)を反映する吸光度が、酸素ありの場合は酸素なしの場合と比較して大きくなり、酸素ありの成膜は酸素なしの成膜に対して約5倍になることが判明した。これにより酸素なしの場合の方が不純物量が少なく、膜質が良いことを示している。したがって、HfO膜の成膜時に、Oを使用しないと、膜中のCH、OHの混入量を少なくでき、膜を十分に改質できる。なお、本発明は、Oありを全く排除するものではなく、成膜時にOを導入しない場合と実質的に変わらない程度の少量のOを導入する場合も含まれ、その場合でも膜の改質は十分に可能である。
【0079】
ここで、原料の自己分解反応、半自己分解反応、吸着反応を用いたそれぞれの成膜のメカニズム、温度帯について、本発明との関係を説明する。全てのCVD反応は自己分解反応、吸着反応が重なり合っている状態になっている。基板温度を下げれば吸着反応が主体的になり、温度を上げれば自己分解反応が主体的になる。その中間の温度とすれば半自己分解反応も生じる。Hf−(MMP)を用いる場合では、300℃以下が吸着反応主体となり、それより温度が高ければ自己分解反応が主体的になっていると考えられる。しかし、どの温度帯でも吸着反応が全く無くなるわけではない。Hf−(MMP)の自己分解反応の反応式は、上記式(1)、式(2)のとおりである。また、吸着反応により基板上にHf−(MMP)を吸着させ、RPO処理等により酸化させて成膜反応を生じさせる場合の反応式は、上述の気相でHf−(MMP)とOとが反応する場合(気相反応)と同じで、上記式(3)のとおりである。本発明におけるMOCVDでは、上記のいずれの反応が主体的であってもRPOによる不純物除去効果が得られるので、特に反応形式を特定するものではないが、自己分解反応を主体的としたほうが不純物がより少なくできるという実験結果が得られている。
【0080】
(2)RPO処理
成膜後の改質工程で用いるRPO処理により、膜中の水素(H)や炭素(C)などの不純物を有効に除去でき、その濃度を低減できるので、電気特性を向上させることができる
。また、水素(H)の離脱によってHf原子の移動が抑制され結晶化を防ぎ、電気特性を向上させることができる。また膜の酸化を促進することもでき、さらに膜中の酸素欠陥を補修できる。また、反応室内壁やサセプタ等の基板以外の部分に堆積した累積膜からの離脱ガスを素早く低減でき、再現性の高い膜厚制御が可能となる。
【0081】
なお、実施の形態では、改質工程でRPO処理を用いているが、本発明はこれに限定されない。RPO処理(下記〔1〕)の代替物としては、例えば次のようなものがある(下記〔2〕〜〔8〕)。
〔1〕Ar(不活性ガス)にOを混合させて行うRPO処理
〔2〕ArにNを混合させて行うRPN処理
〔3〕ArにNとHを混合させて行うRPNH処理
〔4〕ArにHを混合させて行うRPH処理
〔5〕ArにHOを混合させて行うRPOH処理
〔6〕ArにOとHを混合させて行うRPOH処理
〔7〕ArにNOを混合させて行うRPON処理
〔8〕ArにNとOを混合させて行うRPON処理
【0082】
また、実施の形態では同一反応室でHfO膜形成とRPO処理を行っているが、そのメリットは、次の通りである。HfO膜を成膜すると反応室内壁やシャワーヘッドやサセプタ等にもHfO膜が形成される。これを累積形成膜と呼ぶ。別々の反応室で行う場合、RPO処理を行わないHfO膜反応室では、この累積形成膜からC、Hが出てきて反応室内が汚染されることとなる。また累積形成膜から出てくるC、H量は、その厚みの増加とともに多くなっていく。従って、全ての被処理基板のC、H量を一定にすることが難しい。
【0083】
これに対して、HfO膜形成とRPO処理を同一反応室で実施する場合においては、基板上に形成した膜中のC、Hのみならず、反応室内に付着した累積形成膜からもC、Hを除去できるため(クリーニング効果)、全ての基板についてC、H含有量を一定にすることができる。
【0084】
(3)サイクル処理
サイクル処理により、既述のように膜中の不純物除去効率を向上させることができる。また、膜をアモルファス状態に維持することができ、結果としてリーク電流を低減することができる。また、膜表面の平坦性を改善することができ、膜厚均一性を向上させることができる。この他、膜を緻密化することもできるし(欠陥補修効果の最大化)、堆積速度の精密な制御も可能となる。さらには、成膜の下地と、堆積する膜の界面に形成される望ましくない界面層を薄くできる。
【0085】
サイクル処理で形成したHfO膜(例えば膜厚10nm)に含まれているC、Hの不純物量は、図4のようにサイクル数の増加に従って大幅に減少させることができる。横軸にサイクル数、縦軸にC、Hの総量(任意単位)を示している。尚、サイクル数が1のときが従来方法によるものに相当する。
【0086】
図4によれば、サイクル処理により形成するHfO膜のトータル膜厚が10nm(100Å)のとき3サイクル程度でCH、OHなどのHfO膜中の不純物量の低減効果が大きくなることから、1サイクル当りの膜厚は30Å程度以下が好ましい。なお、CVDでは、1度の成膜で形成できる膜厚は0.5Å程度であることから、1サイクル当たりの膜厚は、0.5Å〜30Åとするのが好ましい。特に、7サイクル程度でCH、OHなどのHfO膜中の不純物量の低減効果は極めて大きくなり、それ以上サイクル数を増やしても、不純物量の低減効果は若干よくなるものの、さほど変化はなくなることから、1サ
イクル当りの膜厚は15Å程度(5原子層)がより好ましいと考えられる。1サイクルで30Å以上堆積すると膜中の不純物が多くなり、即座に結晶化して多結晶状態となってしまう。多結晶状態というのは隙間がない状態なので、C、H等を除去しにくくなる。しかし、1サイクルにより形成される膜厚が30Åより薄い場合は、結晶化構造を作りにくくなり、不純物があっても薄膜をアモルファス状態に維持できる。アモルファス状態というのは隙間が多い(スカスカな状態)ので、アモルファス状態を維持して薄膜を堆積し、薄膜が結晶化する前にRPO処理を行うことにより膜中のC、H等の不純物を除去し易くなる。すなわち、1サイクル当たりの膜厚を0.5Å〜30Å程度として複数回のサイクル処理で得られた膜は結晶化しにくい状態となる。なおアモルファス状態の方が、多結晶状態よりもリーク電流が流れにくいというメリットがある。
【0087】
なお、HfO膜形成→RPO処理を複数回繰り返すことにより、HfO膜中の不純物の除去効率を上げることができるのは、次の理由による。深いパターン溝に対してカバレッジ良く形成されたHfO膜に対してRPO処理(C、H等の改質処理)を実施する場合、1度にHfO膜を厚く、例えば100Å形成してからRPO処理を実施すると、図5の溝の奥bの部分に対して酸素ラジカルが供給されにくくなる。これは、酸素ラジカルが溝の奥bまで到達する過程において、図5の表面aの部位にてC、Hと反応してしまう確率が高くなり(膜厚が100Åと厚くその分不純物量も多いため)、相対的に溝の奥bに到達するラジカル量が減ってしまうからである。よって、短時間で均一なC、H除去を行うことが難しくなる。
【0088】
これに対し100ÅのHfO膜を形成する際に、HfO膜形成→RPO処理を7回に分けて行う場合は、RPO処理は15Å当りのHfO膜についてのみC、H除去処理を実施すれば良いことになる。この場合、酸素ラジカルが図5の平面aの部位にてC、Hと反応する確率は高くならないので(膜厚が15Åと薄くその分不純物量も少ないため)、溝の奥bにも均一にラジカルが到達することとなる。よって、HfO膜形成→RPO処理を複数回繰り返すことによって、短時間で均一なC、H除去を行うことができる。
【0089】
さらに、成膜工程と改質工程とを連続して複数回繰り返すサイクル処理を行うことにより、反応室内に付着した累積膜に含まれるC、H等の不純物の混入量を大幅に低減でき、また累積膜からの離脱ガスを大幅に低減できるので、連続して生産されたHfO膜の品質を一定に保持することが可能となる。従って、従来と比較してセルフクリーニングによる累積膜の除去処理を頻繁に実施しなくても良くなり、生産コストの削減を図ることができる。
【0090】
(4)回転機構
実施の形態では、基板回転ユニット12により基板4を回転させているので、成膜原料供給ユニットから導入する原料ガス及び反応物活性化ユニット11から導入する反応物としてのプラズマにより活性化したガス(以下、ラジカルという)が、それぞれ基板面内に素早く均一にいきわたり、膜を基板面内にわたって均一に堆積させることができ、また膜中の不純物を基板面内で素早く均一に除去して、膜全体を改質できる。
【0091】
(5)シャワーヘッドの共有
成膜工程で基板に供給する成膜ガスと、改質工程で基板に供給する反応物としてのラジカルとを同一の供給口となるシャワーヘッド6から供給すると、シャワーヘッド6内部に付着した異物(パーティクル源)をHfO膜で覆ってコーティングすることができ、異物が基板4上へ落ちてくることを抑制できる。また、シャワーヘッド内部にコーティングされた膜は、コーティング後に反応物にさらされ、これによりシャワーヘッド内部のコーティング膜に含まれるC、H等の不純物の混入量を大幅に低減できる。また、反応室1をClFなどのClを含むガスでクリーニングした場合、反応室1内やシャワーヘッド6
内部に残留した副生成物やクリーニングガスが吸着しているが(これをクリーニング残渣という)、原料ガスと反応物の供給口を共用することにより、このクリーニング残渣を有効に除去することができる。
【0092】
(6)バイパス管
実施の形態では、成膜ガス、ラジカル供給系のそれぞれにバイパス管14(14a、14b)を設置して、ガス/ラジカル供給中に次工程で用いるラジカル/ガスを停止せずバイパス管14より排気するようにしている。原料ガス/ラジカルの供給には準備が必要であり、いずれも供給開始までに時間がかかる。よって処理中は、原料ガス/ラジカルの供給は停止せずに常に供給し続け、使用しないときはバイパス管14より排気することにより、使用時にバルブ21〜24を切り換えるだけで、直ちに原料ガス/ラジカルの供給を開始でき、スループットを向上させることができる。
【0093】
(7)トラップの共有
実施の形態では、成膜ガス、ラジカル排気系でトラップ16を共用している。すなわち、図1のように原料を回収するための原料回収トラップ16を排気管7に設置し、この原料回収トラップ16にバイパス管14を接続しているので、トラップされた液体原料を酸素ラジカルで固体に変換し、排気ポンプ(図示せず)ヘの原料の再気化による流入を防ぐことが可能である。これにより、原料回収率を向上させ、排気ポンプや除害装置(図示せず)への原料流入を少なくすることができ、基板処理装置のメンテナンスサイクルを大幅に延長することができる。
【0094】
(8)プラズマ源の用途
実施の形態では、改質工程のRPO処理でガスを活性化させるために用いるプラズマ源とクリーニング工程でクリーニングガスを活性化させるために用いるプラズマ源とが共用になっている。クリーニング工程では、反応物活性化ユニット11で生成したプラズマにより活性化させたクリーニングガスを用いて反応室1内に付着した膜を除去し、改質工程でも反応物活性化ユニット11で生成したプラズマにより活性化させた反応物を用いて膜を改質しており、反応物活性化用とクリーニングガス活性化用のプラズマ源が共用であるため、プラズマ源の管理が容易となり、半導体装置を安価に製造することができる。
【0095】
(9)同一装置内で行う処理
実施の形態によれば、(HfO成膜→RPO処理)×nサイクルによる金属酸化膜の形成から電極形成までを同一装置内で行なうので、電極形成を異なる装置で行なう場合に比べて、基板の昇温時間を節約できる。また、膜の表面を洗浄な状態のまま電極形成できる。また、電極形成時に行う熱アニールで金属酸化膜が緻密化されるので、金属酸化膜形成後、金属酸化膜の電極形成工程とは別工程としてアニール工程を行うことなく電極を形成でき、しかも膜が汚染されにくくなる。以下、これを具体的に説明する。
【0096】
図6は、実施の形態の7サイクル処理(本発明)により得られたHfO膜と、1サイクル処理(従来方法)により得られたHfO膜とについて、RTA処理前後の電気的絶縁特性を示す。横軸にHfO膜(10nm)へ印加した電界(任意単位)、縦軸にリーク電流(任意単位)を示している。尚、ここでのRTA処理とは、基板を700℃前後に加熱しながら大気圧(O雰囲気中)で高速に熱アニール処理を施すものである。図中、従来HfOとは、1サイクル処理により得られたHfO膜を表し、本発明HfOとは7サイクル処理により得られたHfO膜を表している。またRTAなしとは、RTA処理前のもの、RTAありとは、RTA処理後のものを表している。図6によれば、1サイクル処理により得られるもの(従来HfO(RTAなし))は、CH、OH混入量が多く絶縁特性がRTA前後で大幅に変るが、これに比べて、実施の形態の7サイクル処理により得られる絶縁膜(本発明HfO(RTAなし))は、CH、OH混入量が少ないため
、初期(長時間の電気的ストレスがかからない状態)での絶縁特性がRTA前後でほとんど変わらないことがわかる。これより本実施の形態のサイクル処理を行なうことにより、薄膜の電気的絶縁性の向上、およびその安定性を確保するために要求されたRTA処理を削減することができる。
【0097】
このRTA処理を削減することにより、クラスタ装置の構成を簡素化できる。これをクラスタ装置構成を示した図7を用いて説明する。
【0098】
クラスタ装置は、基板搬送ロボット41を設けた基板搬送室40、装置に対して基板を搬入/搬出するロードロック室42、基板を表面処理(RCA洗浄等)する第1反応室43、図1に示したCVD反応室としてのHfO膜を形成する第2反応室44、及び薄膜上に電極を形成する第3反応室45を備える。
【0099】
従来クラスタ装置構成(図20参照)では、第1反応室33で基板表面処理を施し、第2反応室34でHfO膜を形成し、第3反応室35でRTA処理を行い、第4反応室36で電極を形成していた。これに対し、図7の実施の形態によれば、基板を装置外からロードロック室42に搬入した後、第1反応室43でRCA洗浄等の基板表面処理を施し、第2反応室44でHfO膜形成と改質処理とを繰り返して(HfO膜形成→改質処理→HfO膜形成→改質処理→…)、所定膜厚のHfO膜形成を行ない、第3反応室45で電極(poly−Si薄膜形成、および熱アニール処理)を形成する。そして、電極を形成した基板はロードロック室42から装置外へ搬出する。
【0100】
図8に、上述した従来例と実施の形態のクラスタ装置構成により得られた基板のHfO膜の電気的特性を比較した図を示す。横軸に静電容量(任意単位)、縦軸にHfO膜厚が約5nm、約10nm、約15nmのときのリーク電流(任意単位)を示している。同図より、図20に示す従来のタラスク装置(1サイクル処理)で得られるHfO膜特性より(図中白抜きの点)、図7に示す実施の形態のクラスタ装置(HfO膜は7サイクル処理)により得られる特性(図中黒塗りの点)の方が優れていることを示している。この結果は、RTA処理が不要になっていることを示しており、このようなRTA処理不要のクラスタ構成にすることができるのは、図7の第2反応室44において、HfO膜からのCH、OH除去処理が本実施の形態によるプロセスにより十分に行われているためであると考えられる。
【0101】
従って本実施の形態では、クラスタ装置からRTA用の反応室を省いて、構成の簡素化を図ることができる。また、CH、OHを除去するためのRTA処理を行なわないので、HfO膜の表面状態が平坦性を失うことがなく、HfO膜が部分的に結晶化して絶縁性やその安定性が低くなることもない。
【0102】
実施の形態では、HfO膜を第2反応室44で形成した後に、RTA処理を行うことなく同一のクラスタ装置内の第3反応室45で電極を形成するようにしている。このように、HfO膜を形成(第2反応室)後、同一装置内で電極形成(第3反応室)までを行なうようにする場合には、
【0103】
〔1〕一の装置から基板を取り出して、他の装置に装填した後、再度基板を昇温する再昇温時間が節約できる。
〔2〕電極形成時に行われる700℃以上の熱アニールにより、HfO膜が緻密化されるため、膜表面が汚染されにくくなる。
〔3〕HfO膜の表面を清浄な状態のまま電極形成できる。
というようなメリットがある。
なお、HfO膜を形成(第2反応室)後に基板を装置外に取り出して、別の装置で電
極を形成するようにしてもよい。ただし、このように別の装置で電極を形成する場合には、
【0104】
〔1〕基板を装置外に出した場合は、基板を再度加熱するための昇温時間が必要になり無駄な処理時間が発生する。
〔2〕低温で形成されたHfO膜は装置外の雰囲気により表面が汚染されやすく、また、経時変化しやすい(デバイスの電気特性劣化の原因になる。)
というようなデメリットがある。
【0105】
このデメリットを解消するには、電極形成前にRTA処理を行えばよい。図7に示すクラスタ装置の場合であっても、HfO膜を形成(第2反応室44)後、例えば、第3反応室45でRTA処理を行なうようにすれば、その後の電極形成は別の装置で行なっても問題はない。一般的に高温で緻密化されるほど原子間の隙間が小さくなり、汚染物質(HOや有機物など)がHfO膜中に拡散しにくい状態となる。従って、HfO膜がRTA処理により高温アニールされて緻密化されているので、装置外の雰囲気で汚染したり、経時変化されにくくなるからである。
【0106】
(10)変形例
なお、上述した実施の形態では、成膜工程で基板に供給する原料ガスと、改質工程で基板に供給する反応物としての酸素ラジカルとを、シャワーヘッドの共用化で同一の供給口より反応室内に供給するようにしたが、シャワーヘッドの内部空間を成膜用と反応物用とに分割して、原料ガスと反応物はそれぞれ別々の供給口より供給するようにしてもよい。この場合、成膜工程で原料ガス用の供給口より基板に原料ガスを供給する際は反応物用の供給口に非反応性ガスを供給し、改質工程で反応物用の供給口より基板に反応物を供給する際は、原料ガス用の供給口に非反応性ガスを供給するとよい。このように、原料ガスと反応物とを別々の供給口より供給するようにして、各工程で互いに関与しない供給口から不活性ガスなどの非反応性ガスを供給すると、供給口の内部への累積膜形成を十分に抑制することができる。以下、これを図9を用いて詳述する。なお、図9に示す構成は、シャワーヘッド6に仕切板15を設けた点を除いて図1の構成と同じである。
【0107】
シャワーヘッド6の内部に吸着している原料と、反応物としての酸素ラジカルとが反応するとシャワーヘッド6の内部にも累積膜が形成される。この累積膜の形成を抑制するために、シャワーヘッド6を、仕切板15で2つ(6a、6b)に仕切る。原料ガスと酸素ラジカルとが供給されるシャワーヘッド6を仕切ることにより、原料と酸素ラジカルとの反応を有効に防止できる。
【0108】
シャワーヘッド6を仕切ることに加えて、さらに成膜ガスを基板4へ流す場合は、ラジカル供給側(反応物活性化ユニット11)から活性化ガスシャワーヘッド部6bへ不活性ガスを流し、酸素ラジカルを基板4へ流す場合は、原料供給側(成膜原料供給ユニット9、不活性ガス供給ユニット10)から成膜シャワーヘッド部6aへ不活性ガスを流すのが良い。このように成膜工程と改質工程でそれぞれ使用しない側のシャワーヘッド部6b、6aに不活性ガスを流すようにすると、さらに効果的にシャワーヘッド6内部への累積膜形成を抑制することができる。
【0109】
図9に適用されるシャワーヘッド6は種々の形状で構成することが可能である。図10にそのようなシャワーヘッド6の各種の形状を示す。図10(a)〜(e)に示す各種の形状のシャワーヘッドは、その構成が次の点で共通している。シャワーヘッド6は、多数の孔8を有するシャワー板19、背板17及び周壁26と、これらによって内部に形成されるガス空間27と、ガス空間27を仕切って2つのシャワーヘッド部6a、6bに分割する仕切板15とから構成される。このように構成されたシャワーヘッド6の背板17側
から2つのシャワーヘッド部6a、6bにそれぞれ原料供給管5、ラジカル供給管13が接続されている。
【0110】
図10(a)では、ガス空間27が円盤状をしており、仕切板15が円盤状のガス空間27の直径方向に設けられて、シャワーヘッド部6a、6bが左右に設けられている。図10(b)では、ガス空間は円盤状をしているが、仕切板15が円盤状のガス空間と同心円状に設けられて、シャワーヘッド部6a、6bが同軸の二重管状に設けられている。
【0111】
前述した図10(a)、(b)では、シャワーヘッド6の基本形状を点対称となる円形としたが、本実施の形態では基板を回転させるので、点対称となる円形ではなく、線対称となる半円や長方形のような形とすることも可能である。図10(c)〜図10(e)は、このような例である。
【0112】
図10(c)では、ガス空間が半円盤状をしており、仕切板15は半円盤状のガス空間の半径方向に設けられて、シャワーヘッド部6a、6bが左右に設けられている。図10(d)では、ガス空間が長方形盤状をしており、仕切板15は中央部に設けられて、シャワーヘッド部6a、6bが左右に設けられている。図10(e)は、四角形盤状をしており、仕切板15は中央部に設けられて、シャワーヘッド部6a、6bが左右に設けられている。このように、シャワーヘッド6は種々の形状で構成することが可能である。
【0113】
また、上述した実施の形態では、特に次の(1)〜(3)を含む構成において、基板上にHfO膜を形成する場合について説明した。
(1)成膜工程で使用する成膜ガスと、改質工程で使用する反応物としてのラジカルとを、同一の供給口(シャワーヘッド)より供給して、両者が混合するようにする。変形例では、異なる供給口(分離されたシャワーヘッド)にて供給して、両者が混合しないようにする。
(2)成膜ガス又は反応物としての酸素ラジカルの供給中に、次工程で用いる反応物としての酸素ラジカル又は成膜ガスをバイパス管より排気しておき、バルブを切換えるだけで、直ちに次工程で用いる酸素ラジカル又は成膜ガスの供給を開始できるようにする。
(3)成膜工程と改質工程とで共用のトラップを使用して、メンテナンスを簡単にする。
しかし、本発明は、上記3つの構成点については、HfO膜の成膜に限定されない。例えばTa膜などの他の種類の膜の成膜にも適用可能である。
【実施例】
【0114】
図11に、本実施例における周期的なリモートプラズマ酸化(RPO)を用いた新しいMOCVD手法の成膜シーケンス(MOCVDによる成膜とRPOを複数回繰り返すサイクル手法の手順)を示す。ここでは、図1の基板処理装置を用いて処理を行った。
【0115】
反応室内のサセプタ上に基板としてのシリコンウェハを載置し、シリコンウェハの温度が安定化したら、
(1)気化器で気化させた気体状のHf−(MMP)原料(MO−Precursor)か希釈Nと共に反応室内に△Mt秒間導入される。
(2)その後、気体状のHf−(MMP)原料の導入が停止され、反応室内は希釈Nにより△It秒間パージされる。
(3)反応室内のパージ後、リモートプラズマユニットにより活性化された酸素(Remote Plasma Oxygen)が反応室内に△Rt秒間導入される。この間も希釈
は導入され続けている。
(4)リモートプラズマで活性化した酸素の導入が停止された後、反応室内は再び希釈
により△It秒間パージされる。
(5)この(1)から(4)までのステップ(1cycle)は、膜厚が所望の値(厚さ)に到達するまで(n cycle)繰り返される。
本実施例では、Hf−(MMP)の流量を0.05g/min、希釈ガスNの流量を0.5SLM(standard liter per minute)、リモートプラズマユニットに導入する酸素の流量を0.1SLMとした。また、反応室内の圧力は、排気ラインに設けられたAPC(auto pressure control)バルブにより、100Paに保たれるようコントロールした。HfO膜のデポレート(成膜速度)を測定するために、シリコン基板はその表面の自然酸化膜を1%希釈HF溶液で取り除いて用いた。
【0116】
図12に、電流−電圧特性(I−V特性)とキャパシタンス−電圧特性(C−V特性)を測定するためのn−MOSキャパシタ構造とその作製プロセスフローを示す。
【0117】
n−MOSキャパシタの作製には、まず、LOCOS法により素子分離されたp型シリコンウェハを用いた。HfO膜の成膜前に、シリコン表面は、自然酸化膜と汚染物質を取り除くために、1%希釈Hf溶液によるエッチングが施された(Cleaning−DHF+DIW+IPa)。引き続いて、NH雰囲気内で、600℃で30秒間、熱アニール(rapid thermal annealing)することによりシリコン表面を窒化した(Surfacen nitridation)。その後、上記サイクル処理(HfO deposition by MOCVD via cyclic RPO)によりHfO膜を成膜し、N雰囲気中で、650℃で15分間、アニール処理を施した(post deposition annealing)。引き続いて、ゲート電極形成のために、膜厚80nmのTiN膜を、TiClとNHとを用いて650℃でCVD(chemical vapor deposition)法により成長させ(Gate Electrode−CVD TiN)、フォトリソグラフィーによるマスク作製とエッチングにより面積1000−10000μmのMOSキャパシタのゲート電極を形成した。HfO膜の酸化膜換算膜厚(EOT)は、面積10000μmの電極で測定したC−Vカーブに、NCSUで開発されたCVCプログラムを用いて求めた。I−V特性は、面積1000μmの電極を用いて、温度100℃で測定した。また、膜の品質を調べるために、TDS(thermal desorption spectroscopy)特性とSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)プロファイルも測定した。また、膜の結晶構造を調べるために、高分解能TEM([HRTEM]cross−section high−resolution transmission electron microscopy)画像も観測した。
【0118】
図13に上記サイクル法を用いて成膜したHfO薄膜の成長速度の基板温度依存性を示す(図中黒塗りの点)。縦軸は成長速度(Growth Rate)、横軸は温度(Temperature)を示している。サイクル法における△Mt、△It、△Rtのそれぞれのステップ時間は30秒とした。比較例としてCho等が行ったHfClとHOとを用いてALDによりHfOを形成したデータ(図中白抜きの点)も示している。成膜速度は、Cho等のデータと比較するため、nm/minの単位に直して表した。
【0119】
HfClとHOとを用いたALDの場合、成膜速度は、基板温度(成長温度)を180℃から400℃に変化(上昇)させるに従い、1.2nm/minから0.36nm/minへ減少した。なぜならば、ALDの場合、ウェハ表面への原料の吸着量が、基板温度を上げることにより減少するからである。しかしながら、本発明者らが発明した新しいサイクル手法の場合、成膜速度は、基板温度(成長温度)を300℃から490℃に上げるに従い、0.3nm/min(0.6nm/cycle)から1.5nm/min(3nm/cycle)へと増加した。これは、成膜温度を上昇させることにより、原料の
自己分解が促進されるからである。なお、使用した液体マスフローコントローラでは流量が安定化するまで時間がかかるので、30秒の△Mtのうち、成膜に実際に寄与しているのは、8秒だけであることが分かっている。そのため、低温ではALDよりも成膜速度が低くなっている。原料が実際に成膜に寄与する時間を増やせれば、成膜速度は低温でもALDより大きくすることができる。
【0120】
サイクル手法を用い、異なるサイクル数で成膜した膜厚30nmのHfO薄膜を、TDSにより評価した。図14(a)、(b)、(c)は、それぞれ、HfO薄膜の水素、HO、COのTDSスペクトルを示している。同図(a)、(b)、(c)の中の4つのスペクトルは、それぞれ、425℃で、1,10,20,40サイクルでサイクル法により成膜したHfO薄膜に関するものである。また、1,10,20,40サイクル処理のステップ時間は、それそれ、1200,120,60,30秒である。言い換えれば、1,10,20,40サイクルで成膜された膜は、それぞれ、30,3,1.5,0.75nm毎にRPO処理をされたことになる。
【0121】
図14の(a)から、1サイクルのサンプルに比べ、10,20,40サイクルのサンプルからの水素の脱離は劇的に減少していることが分かる。また、図14(b)および(c)からは、COの脱離がサイクル数によって、ほとんど変化しないのに対し、HOの脱離は、サイクル数の増加に伴い、徐々に減少していることが分かる。本発明者らは、以前RPO処理を施したサンプルとそうでないサンプルのTDSスペクトルの比較を行い、HfO薄膜成膜後のRPOは、水素とHOの混入を減少させるのに効果があることを究明した。これらの事実から、周期的なRPOは水素やHOの混入を減少させるのに効果があるといえる。
【0122】
また、Hf−(MMP)によるHfO薄膜中への不純物混入のメカニズムを調べるために、Hf−(MMP)の自己分解反応を以下のようにして調べた。
【0123】
まず、Hf−(MMP)溶液を300℃で、5時間Arガス中に放置し、その後、トルエンで希釈し、GC−MS(Gas Chromatography−Mass Spectroscopy)で分析した。検出された副生成物は、Hf−(MMP)、(CHC=CHOCO(olefin)、(CHCHCHO(isobutylaldehyde)、(CHCHCHOH(isobutanol)、CHOH(methanol)、CHC(=0)CH(acetone)であった。Olefinは、HfO−C結合の分離と、MMPのβ位の炭素(C)に結合している水素(H)の分離により生成されたものである。Isobutylaldehyde,isobutanol、methanol、acetoneは、H−MMPとolefinが分解してできたものと思われる。Hf−(MMP)の反応モデルとして、以下の式が適切と考えている。
Hf(MMP)→Hf(OH)+4olefin (4)
または、
Hf(MMP)→HfO+2H(MMP)+ 2olefin (5)
ここで、式(4)から、Hf−(MMP)を用いてMOCVDで成膜したHfOには、水素が入りやすいことが予想される。このことは、以前測定したMOCVDで成膜したHfO膜のTDSスペクトルからも確認しており、事実と一致している。しかしながら、図14より、3nm以下の膜厚毎にRPO処理を施した膜は、ほとんど水素が混入していないことから、RPO処理は、完全にHf(OH)を以下に示す式のように酸化しているようである。
Hf(OH)+O*→HfO+1/2H (6)
または、
2Hf(OH)+3O*→2HfO+HO (7)
なお、O*は酸素ラジカルである。
ここで、もし、堆積された膜の表面で式(7)の反応が起こっているとしても、薄膜表面から、発生したHOが排気されるので、膜中に取りこまれにくいと考えられる。しかし、酸素ラジカル(O*)は、膜中に存在するHf(OH)とも反応するので、HfO薄膜中には、HOが取り込まれることになる。その結果、図14に示されたように、サイクル手法を用いて成膜されたHfO薄膜でさえも、膜中にはHOは存在し、そのHOの混入による汚染はRPO処理を施す1サイクルの膜厚が減少するに従い、減少する。
【0124】
図15は、従来のMOCVD法により425℃で成膜されたHfOのサンプル(MOCVD at 425℃)と、サイクル手法により300℃および425℃で成膜されたHfOのサンプル(Cyclic Method at 300℃、425℃)の炭素((a)carbon)と水素((b)hydrogen)のSIMSプロファイルを示すものである。これらのサンプルの膜厚は、約5nmである。300℃と425℃のサンプルは、それそれ、100および10サイクルで、30秒のステップ時間で成膜した。
【0125】
図15から、MOCVD法、サイクル手法の300℃、サイクル手法の425℃のサンプルの炭素(C)の混入量は、それぞれ、1.4,0.54,0.28at.%である。また、MOCVD、サイクル手法の300℃、サイクル手法の425℃のサンプルの水素(H)の混入量は、それぞれ、2.6,O.8,0.5at.%である。CとHの混入がMOCVD法よりもサイクル手法の方が少ないという結果は、サイクル手法がCやHの混入を減少させるのに効果的であるということを示している。Kukliらの報告によると、ALDで300℃および400℃で成膜した膜中の水素混入量は、それぞれ、1.5および0.5at.%であった。このことより、サイクル手法で成膜した膜の水素混入量は、ALDと比較しても劣るものではないことがわかる。炭素の混入量が減少した原因は、以下のとおりである。上記式(4)および式(5)に示したように、Hf−(MMP)を導入した後、OlefinやH−MMPが生成される。また、さまざまな種類のアルコールがOlefinおよびH−MMPの分解により生成される。大部分のこれらの副生成物は、薄膜の表面から排気されるが、いくらかは薄膜表面に吸着する。ここで、RPOステップにより、これらの吸着物は、CO,CO,HO等に分解され、次のパージステップにより薄膜表面から排気される。Chenらは、MO原料と酸素を15秒の排気をはさんで導入するといった、「パルスモード」でZrO薄膜を成膜して、Cの混入量が0.1at.%以下であると報告しているが、これも酸素導入ステップでの有機物の分解と、その後の排気ステップでの排気に起因すると考えられる。しかし、本発明は、Chenらの手法に対し、酸素よりも活性なリモートプラズマ酸素を用いており、アルコール等の分解効率が高いという点で有利である。さらに、サイクル手法の不純物量が、成膜温度を上昇させることにより、減少していることがわかる。この理由は、成膜温度が上昇するに従い、副生成物の吸着量が減少することに起因する。これらの理由から、サイクル手法において、原料導入時間△Mtは短く、およびリモートプラズマ導入時間△Rtは、長くした方が良いと結論付けられる。また、成膜温度は、原料が気相で分解されない限り、高い方が良いと言える。
【0126】
HfO膜などの多くの酸化金属は、図16に示すように温度を上昇させると、膜中に結晶化構造を作りやすい性質がある。従来のMOCVD方法では300℃以上における堆積で既に膜中に結晶化した部分が多数含まれていた。しかし、本発明では、同図のように結晶化温度は高温側にシフトしており、結晶化しにくいHfO膜が得られることが判っている。図17に示すTEM写真は、その一例を示すものであり、従来では結晶化していた温度においてもアモルファス構造を保つことが判った。
【0127】
図17(a)および(b)は、425℃で1および4サイクルで、それそれ、ステップ
時間120秒および30秒で成膜したサンプルのHRTEM画像である。HfO薄膜成膜前に、NHアニールにより、0.8nmの界面層が形成されている。TEM画像で、黒く見える部分がHfを含むHfO膜である(重い原子ほど黒く見える)。一般に、その部分に規則性がなければアモルファスといい、規則性があれば結晶化しているという。しかし、膜全体(大きな意味)でみれば部分的に結晶化していてもアモルファスであるといって良いと考えられる。
【0128】
図17(a)、(b)より、1および4サイクルの界面層は、1.7nmおよび1.6nmであることから、RPO処理のステップ時間は、界面層の形成には、影響を与えていないと考えられる。ただし別の実験では、サイクル法により、下地とHfO膜の間に形成される望ましくない界面層の厚さを従来のMOCVD法による成膜よりも薄くできることが確認されている。図17から、1サイクルで成膜したHfO薄膜がより結晶化しているのに対し、4サイクルで成膜したのHfO薄膜は、アモルファス構造であることが分かる。Kukli等は、ALDにより成膜したZrO膜は、210℃ではアモルファス構造であったが、300℃で結晶化したと報告している。また、Aarik等は、ALDにより300℃で成膜したHfO膜は結用化していたと報告している。これらのことから本発明のサイクル手法は、膜をアモルファス構造で維持するのに適した手法と言える。なお、膜厚均一性について調べたところ、1サイクルで成膜した場合に比べ、4サイクルで成膜した場合の方が、良好となることも確認できた。
【0129】
図18に、MOCVD法とサイクル手法により425℃で成膜したHfOキャパシタのEOTと−1Vで測定したリーク電流の関係を示す。縦軸はリーク電流(Jg@−1V)、横軸はEOTを示している。HfO薄膜成膜前に、NHアニールにより、0.8nmの界面層が形成されている。サイクル手法で成膜したHfO薄膜の膜厚は、それぞれ、2.3,3.1,3.8,4.6nmである。MOCVD法により異なる膜厚で成膜したHfO膜のうち、C−V特性か得られたのは、膜厚が5nm以上のものだけだった。白抜きの点、黒塗りの点は、それぞれMOCVD法、サイクル手法により成膜した場合の結果を示している。
【0130】
図18より、サイクル手法で成膜したHfO薄膜のリーク電流は、MOCVD法で成膜した膜の100分の1以下であることが分かる。そのリーク電流がサイクル手法により減少した原因は、HfO膜中の不純物の減少とその膜構造がアモルファス状態であることである。
【0131】
以上のように本発明者らは、周期的なRPOを用いた新しいMOCVD法のアドバンテージを見出した。すなわち、サイクル手法の場合、成膜温度を上げ、原料の導入時間を縮めることにより、膜中に含まれる不純物の量を減らすことが出来ることを見出した。また、サイクル手法で成膜した膜は、アモルファス構造であり、サイクル手法はアモルファス構造を維持するのに好ましいことも判明した。その結果、HfO膜のリーク電流は減少した。また、サイクル手法により、従来のMOCVDによる成膜よりも膜厚均一性を向上することができ、さらには成膜の下地とHfO膜の間に形成される界面層の厚さも小さくできることも判明した。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】実施の形態における反応室の概要説明図である。
【図2】Hf−O−Hf結合の結合度合を、HfO膜を形成するに際し、酸素なしで形成した場合と酸素ありで形成した場合とで比較した図である。
【図3】HfO膜中に含まれる不純物量(−OH、C−H、C−O)を、HfO膜を形成するに際し、酸素なしで形成した場合と酸素ありで形成した場合とで比較した図である。
【図4】サイクル数とHfO膜中のC、H不純物総量の関係を示すグラフである。
【図5】基板上にHfO膜を形成した状態を示す断面図である。
【図6】サイクル数と絶縁特性の関係を示すグラフである。
【図7】実施の形態におけるクラスタ装置構成を示す概念図である。
【図8】従来例と実施の形態におけるクラスタ装置構成によるHfO膜の電気的特性を示すグラフである。
【図9】変形例における反応室の概要説明図である。
【図10】実施の形態によるシャワーヘッド形状の各種例を示す説明図である。
【図11】実施例におけるMOCVDとRPOのサイクル処理による成膜シーケンスを示す図である。
【図12】実施例におけるC−V特性およびI−V特性の測定に用いたn−MOSキャパシタ構造とその作製手順を説明する図である。
【図13】サイクル処理により成膜したHfO膜の成長レートの基板温度依存性を示す図である。
【図14】サイクル数を変えて成膜したHfO膜中の水素、HO、COのTDSスペクトルを示す図である。
【図15】従来のMOCVD法と実施例におけるサイクル処理により形成したサンプルの(a)炭素と(b)水素のSIMSプロファイルを示す図である。
【図16】結晶化の度合いの温度特性を示した従来例と本発明の比較図である。
【図17】1サイクルと4サイクルで形成したサンプルのHRTEM画像を示す図である。
【図18】従来のMOCVD法と実施例におけるサイクル処理により形成したHfOキャパシタのEOTとリーク電流の関係を示す図である。
【図19】従来例におけるCVD反応室の概念説明図である。
【図20】従来例におけるクラスタ装置構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0133】
1 反応室
4 基板
5 原料供給管
6 シャワーヘッド
7 排気管
9 成膜原料供給ユニット
11 反応物活性化ユニット
14 バイパス管
15 仕切板
16 トラップ
25 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して成膜ガスを供給して、前記基板上に薄膜を形成する成膜工程と、
前記基板に対して酸素含有ガスを活性化させた反応物を供給して、前記成膜工程において形成した前記薄膜の改質を行う改質工程と、
を同一反応室内で連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程で前記基板に対して供給する前記成膜ガスと、前記改質工程で前記基板に対して供給する前記反応物とを同一の供給口より前記反応室内に供給することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
Hfを含む原料を気化した原料ガスを用いて基板上にHfを含む膜を形成する成膜工程と、
酸素含有ガスを活性化させた反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記Hfを含む膜の改質を行う改質工程と、
を同一反応室内で連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程で用いる前記原料ガスと、前記改質工程で用いる前記反応物とを、同一の供給口より前記反応室内に供給することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
Hfを含む原料を気化した原料ガスを用いて基板上にHfを含む膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記Hfを含む膜の改質を行う改質工程と、
を連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、
1回の成膜工程で形成する前記Hfを含む膜の膜厚が0.5Å〜30Åであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板上に成膜ガスを供給して薄膜を形成する成膜工程と、
前記成膜ガスとは異なる反応物を供給して前記成膜工程において形成した前記薄膜の改質を行う改質工程と、
を同一反応室内で連続して複数回繰り返すことにより前記基板上に薄膜を形成した後、
前記基板を大気に晒すことなく前記反応室から搬送室を介して他の反応室に搬送する工程と、
前記他の反応室内で前記基板上に形成された前記薄膜上に電極を形成する工程とを有し、
前記薄膜の形成後、前記電極形成工程とは別工程としてアニール工程を行うことなく前記電極を形成すると共に前記薄膜の形成から前記電極の形成までを同一装置内で行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板を処理する反応室と、
前記反応室内に成膜ガスを供給する供給口と、
前記反応室内に酸素含有ガスを活性化させた反応物を供給する供給口と、
前記反応室内に前記成膜ガスを供給して前記基板上に薄膜を形成し、前記反応室内に前記反応物を供給して前記基板上に形成された前記薄膜の改質を行い、これを複数回繰り返すように制御する制御装置とを有し、
前記成膜ガスを供給する供給口と前記反応物を供給する供給口とが同一の供給口であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
前記反応物は酸素含有ガスをプラズマで活性化させた反応物であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記反応物は酸素ラジカルであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記成膜ガスと前記反応物は前記供給口内部に形成された同一の空間を介して供給されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記供給口はシャワーヘッドにより構成され、前記成膜ガスと前記反応物は前記シャワーヘッド内部に形成された同一の空間を介して供給されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記酸素含有ガスが、O、NOまたはNOであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板に対して成膜ガスを供給して、前記基板上に薄膜を形成する成膜工程と、
前記基板に対してラジカルを供給して、前記成膜工程において形成した前記薄膜の改質を行う改質工程と、
を同一反応室内で連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程で前記基板に対して供給する前記成膜ガスと、前記改質工程で前記基板に対して供給するラジカルとを同一の供給口より前記反応室内に供給することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
基板に対して酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを非酸素雰囲気下で供給して、前記基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程と、
を連続して複数回繰り返すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板に対して酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを供給して、前記基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程と、
を連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程では、前記基板に対して前記原料ガスを非酸素雰囲気下で供給して成膜する場合と実質的に変わらない程度の少量の酸素を含む雰囲気下で成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用いて基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程と、
を連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程では、前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく成膜する場合と実質的に変わらない程度の少量の酸素原子を含むガスを用いて成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
Hf[OC(CHCHOCHを気化した原料ガスを用いて基板上にHfを含む膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記Hfを含む膜の改質を行う改質工程と、
を連続して複数回繰り返す半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程では、前記原料ガスのC(CHCHOCHを分解させることなく成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
基板に対して酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを非酸素雰囲気下で供給して、前記基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用いて基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程と、
を有する半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程では、前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく成膜する場合と実質的に変わらない程度の少量の酸素原子を含む雰囲気下で成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
酸素原子と金属原子を含む原料を気化した原料ガスを用いて基板上に金属酸化膜を形成する成膜工程と、
前記原料ガスとは異なる反応物を用いて前記成膜工程において形成した前記金属酸化膜の改質を行う改質工程と、
を有する半導体装置の製造方法において、
前記成膜工程では、前記原料ガス以外には酸素原子を含むガスを用いることなく成膜する場合と実質的に変わらない程度の少量の酸素原子を含むガスを用いて成膜することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図19】
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【図20】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−134733(P2007−134733A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3174(P2007−3174)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【分割の表示】特願2002−372910(P2002−372910)の分割
【原出願日】平成14年12月24日(2002.12.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】