説明

半導体装置の製造方法

【課題】放熱性が高い封止樹脂の構造を低コストで実現する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置の製造方法では、モールド金型40に、複数のキャビティ46A−46Cが連通領域48A、48Bを介して連通している。そして、熱伝導性に優れた樹脂シート52を、キャビティ46A−46Cおよび連通領域48A、48Bに渡るように配置し、この樹脂シート52によりアイランド12の下面を被覆している。従って、単一の樹脂シート52により、複数のユニット56A−56Cが備えるアイランド12の下面が被覆されるので、簡素化された工程により放熱性に優れた半導体装置を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に、半導体素子が樹脂封止されるリードフレーム型の半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路等を構成する半導体素子を樹脂封止した半導体装置が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7を参照して、この種の半導体装置100の構成を説明する。図7(A)は半導体装置100の平面図であり、図7(B)は図7(A)のB−B’線に於ける断面図である。
【0004】
図7(A)および図7(B)を参照して、半導体装置100は、半導体素子104と、半導体素子104が実装されるアイランド102と、半導体素子104と接続されて一部が外部に導出するリード110と、これらを一体に被覆する封止樹脂108とを備えた構成と成っている。
【0005】
半導体素子104は、例えばディスクリートのMOSFETであり、裏面のドレイン電極がアイランド102に接続され、表面のゲート電極が金属細線106を介してリード110Aと接続され、表面のソース電極が金属細線106を経由してリード110Cと接続されている。
【0006】
また、封止樹脂108の側面からは、リード110A〜110Cが導出しており、これらのリードを実装基板に挿入することにより、半導体装置100は差込実装される。
【0007】
半導体素子104として大電流のスイッチングを行うパワー素子が採用されると、半導体素子104から多量の熱が放出される。この熱による半導体装置100の過熱を防止するために、図7(B)に示す封止樹脂108の裏面はヒートシンクに当接される。
【0008】
上記した構成の製造方法は次の通りである。先ず、図7(A)に示すアイランド102およびリード110を備えるリードフレームを用意する。そして、アイランド102に半導体素子104を固着した後に、半導体素子104の上面の電極とリード110A、110Cとを金属細線106を経由して接続する。その後に、モールド金型を使用したトランスファーモールドにより、アイランド102、半導体素子104、金属細線106を樹脂封止する。
【0009】
しかしながら、上記構成の半導体装置100では、熱伝導性を向上しづらい問題があった。具体的には、図7(B)を参照して、半導体素子104が動作中に発する熱を良好に外部に放出させるためには、アイランド102を被覆する封止樹脂108の厚みを薄くすることが有効である。更にまた、封止樹脂108に含有されるフィラーの割合を増加させると、封止樹脂108の熱抵抗が低減されるので、装置全体の放熱性を向上させることができる。しかしながら、このようにすると、トランスファーモールドにより封止樹脂108を形成する工程にて、アイランド102の下方の領域が狭くなってしまう。この結果、アイランド102の下方に封止樹脂108が充填されずにボイドが発生する恐れがある。
【0010】
この問題を回避するために、シート状の樹脂材料をアイランドの下面に配置する構造が開発されている(下記特許文献2)。この文献の図2およびその説明箇所を参照すると、半導体チップが収納される本体部2を外被体4で被覆し、更に本体部2の下面を熱伝導性薄膜シート5で被覆している。熱伝導性薄膜シート5として熱伝導性に優れる材料を採用することにより、装置全体の放熱性を向上している。
【0011】
更に、封止材としてシート状の樹脂材料を用いるものとして、下記特許文献3に開示された技術がある。この文献の図1およびその説明箇所を参照すると、半導体ペレット2の上面および側面を樹脂封止体6により被覆し、半導体ペレット2の下面を絶縁性樹脂テープ4により被覆している。この様な構成により、樹脂封止体6と絶縁性樹脂テープ4は同等の樹脂材料からなるので、両者の間にクラックが生じづらい、という効果が奏されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−320009号公報
【特許文献2】特開平10−289970号公報
【特許文献3】特開平6−334106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献2に開示された技術では、図5およびの説明箇所からも明らかなように、各電子部品毎にモールド用の金型および熱伝導薄膜シート12を用意しているので、工程数が増加し複雑なものと成り、製造コストが高くなる恐れがあった。
【0014】
更に、上記特許文献3に記載された技術では、図2およびその説明箇所から明らかなように、各半導体装置毎に絶縁性樹脂テープ4をリードフレームに貼着する必要がある。従って、絶縁性樹脂テープ4を個別に貼り付ける工程が必要とされることにより製造コストが高くなる恐れがあった。
【0015】
本発明は上述した問題を鑑みて成されたものである。本発明の主な目的は、放熱性が高い封止樹脂の構造を低コストで実現する半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の半導体装置の製造方法は、複数のキャビティと、各々の前記キャビティに設けられたゲートおよびエアベントと、前記キャビティ同士を連通する連通領域とを有するモールド金型を用意する第1工程と、複数の前記キャビティおよび前記連通領域に渡り樹脂シートを配置し、半導体素子が実装されたアイランドおよび前記半導体素子と接続されたリードから成るユニットを前記キャビティに収納し、前記アイランドを前記樹脂シートに載置する第2工程と、前記各キャビティにて、前記樹脂シートを溶融させて第1封止樹脂とし、液状または半固形状の第2封止樹脂を前記ゲートから注入し、前記第1封止樹脂および前記第2封止樹脂からなる樹脂封止体で、前記各アイランドおよび前記半導体素子を樹脂封止する第3工程と、樹脂封止された前記ユニットを前記各キャビティから取り出した後に、前記連通領域で硬化した前記樹脂シートから成る残余部分を切除し、各ユニットを個別に分離する第4工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放熱性が高い一枚の樹脂シートを用いて複数の半導体装置を製造することができるので、封止樹脂を介した放熱性の高い半導体装置を低コストで製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の製造方法で製造される半導体装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は側方から半導体装置を見た図である。
【図2】本発明の製造方法で製造される半導体装置が適用される半導体モジュールを示す断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【図4】本発明の半導体装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は断面図であり、(C)は拡大された断面図であり、(D)はリードフレームを上方から見た平面図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の半導体装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図7】背景技術の半導体装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、本形態の製造方法により製造される半導体装置10の構成を説明する。図1(A)は半導体装置10を示す平面図であり、図1(B)は図(A)のB−B’線に於ける断面図であり、(C)は図1(A)に示す半導体装置10を矢印の方向から見た側面図である。
【0020】
図1(A)および図1(B)を参照して、半導体装置10は、アイランド12と、アイランド12の上面に実装された半導体素子20と、外部接続端子として機能するリード14と、これらを一体的に被覆して機械的に支持する樹脂封止体15とを主要に備えている。本形態では、樹脂封止体15は第1封止樹脂16と第2封止樹脂18とから成る。第1封止樹脂16はアイランド12の下面を被覆する樹脂材料であり放熱性の高い材料からなる。第2封止樹脂18は通常の樹脂封止に用いられる安価な樹脂材料から成る。
【0021】
アイランド12は、厚みが0.6mm程度の銅等の金属から成る導電材料を、エッチング加工やパンチング加工により所定形状に成形したものである。アイランド12は、例えば縦×横=12.0mm×14.0mm程度の矩形であり、実装される半導体素子20よりも平面視で大きく形成される。
【0022】
図1(A)を参照して、アイランド12の紙面上に於ける下側の側辺の中央部からは、外部に連続してリード14Bが延在している。また、図1(B)を参照すると、アイランド12を外部と絶縁させるために、アイランド12の下面は第1封止樹脂16により被覆されている。アイランド12の裏面を被覆する第1封止樹脂16の厚み(L1)は例えば0.4mm以上1.0mm以下と非常に薄いので、半導体素子20が動作することにより発生する熱は、アイランド12および第1封止樹脂16を経由して良好に外部に放出される。この厚みL1を0.4mm未満とすると樹脂封止時に微小なボイド(ピンホール)が出現して耐圧性が劣化する恐れがあり、厚みL1を1.0mmよりも長くすると放熱性が低下する恐れがある。また、この図に示す第1封止樹脂16の厚みL1は、この部位の材料と成る樹脂シートの厚み(図4(B)に示すL2)よりも短い。この事項は、図4(B)を参照して後述する。
【0023】
リード14は、内蔵された半導体素子20と電気的に接続され、一部が外部に露出して外部接続端子として機能している。具体的には、図1(A)を参照して、リード14は、リード14A−14Cから成る。リード14A、14Cは、金属細線34を経由して半導体素子20の上面に形成された電極と接続される。一方、中央のリード14Bは、アイランド12と一体的に連続している。リード14Bは中間部が曲折加工されており、両端に位置するリード14A、14Cは、曲折加工されていない平坦な形状である。そして、リード14A、14B、14Cの外部に導出する部分は、同一平面上に位置している。また、リード14A〜14Cを実装基板等の実装面に挿入することにより、半導体装置10は差込実装される。
【0024】
半導体素子20は裏面に主電極を備えた半導体素子であり、具体的には、MOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が採用される。本実施の形態では、半導体素子20としては、例えば1A以上の大電流のスイッチングを行うパワー系の半導体素子(パワー素子)が採用される。
【0025】
一例として、MOSFETが半導体素子20として採用されると、下面のドレイン電極が導電性固着材を介してアイランド12の上面に接続され、上面のゲート電極は金属細線34を経由してリード14Aと接続され、上面のソース電極は金属細線34を経由してリード14Cと接続される。そして、半導体素子20は、リード14Aから供給される制御信号に基づいて、リード14Bおよびリード14Cを通過する大電流のスイッチング動作を行う。
【0026】
本形態では、アイランド12および半導体素子20を単一の樹脂材料により樹脂封止するのではなく、2種類の樹脂(第1封止樹脂16および第2封止樹脂18)により樹脂封止している。具体的には、第1封止樹脂16はアイランド12の下面を被覆している。一方、第2封止樹脂18は、アイランド12の残りの表面、半導体素子20、金属細線34およびリード14の端部を被覆している。
【0027】
第1封止樹脂16は、フィラーが添加された樹脂材料から成る。ここで、樹脂材料としては、エポキシ樹脂、ビフェニル系またはクレノボ系の樹脂等の熱硬化性樹脂が採用される。フィラーとしてはシリカ(SiO)、アルミナ(Al)またはこれらの混合物が採用される。第1封止樹脂16にフィラーが含まれる割合は、例えば、80重量%以上85重量%以下である。この割合を80重量%以上とすることにより、第1封止樹脂16の熱抵抗を低減して、半導体素子20が動作時に発生する熱を第1封止樹脂16を経由して良好に外部に放出できる。第1封止樹脂に採用されるフィラーとしては、アルミナまたはシリカが採用可能であるが、アルミナを採用することにより放熱性が向上する。また、フィラーの形状としては、破砕した形状、溶融した形状またはこれらを混合したものが採用される。この様な構成の第1封止樹脂16の熱抵抗は、例えば0.1℃/Wと低いので、半導体素子20が動作時に発する熱は、アイランド12および第1封止樹脂16を経由して良好に外部に放出される。
【0028】
更に、アイランド12の下面全域が第1封止樹脂16により被覆されてもよいが、本形態では、アイランド12の下面の一部を第1封止樹脂16により被覆し、他の下面は第2封止樹脂18で被覆している。これにより、放熱性は高いが高価な第1封止樹脂16の使用料が削減される。
【0029】
具体的には、図1(B)を参照して、アイランド12の中間部分には段差部が設けられており、紙面上にて段差部よりも左側の領域には半導体素子20が実装され、段差部よりも右側の領域は高い部位に配置されている。
【0030】
そして、第1封止樹脂16は、少なくとも半導体素子20が載置された部分のアイランド12の下面を被覆している。実際は、半導体素子20が実装される領域よりも若干広い部分のアイランド12の下面を第1封止樹脂16が被覆している。これにより、第1封止樹脂16が形成される場所や、半導体素子20が載置される場所に誤差が発生したとしても、半導体素子20と第1封止樹脂16とが平面的に重畳され、良好な放熱性が確保される。
【0031】
第2封止樹脂18は、第1封止樹脂16により被覆される部分以外のアイランド12の表面、半導体素子20、金属細線34およびリード14A−14Cの先端部分を被覆している。耐湿性等の信頼性に優れる第2封止樹脂18によりリード14を被覆することで、装置全体の信頼性が被覆される。また、第1封止樹脂16の下面と、第2封止樹脂18の下面とは、同一平面上に配置されている。
【0032】
第2封止樹脂18の材料は、第1封止樹脂16と同様に、フィラーが添加された熱硬化性樹脂から成るが、含有されるフィラーの種類が異なる。第2封止樹脂18に含まれるフィラーとしては、シリカまたはアルミが採用可能であるが、安価なシリカを採用することでコストが低減される。第2封止樹脂18のフィラーの含有率は80重量%以上85重量%以下であり、第1封止樹脂16と同等で良い。更に、第2封止樹脂18に含まれるフィラーの形状も第1封止樹脂16と同様で良い。ここで、第1封止樹脂16および第2封止樹脂に含まれるフィラーが、共にシリカとアルミナとの混合物から成る場合、第1封止樹脂16にアルミナが含まれる割合を第2封止樹脂18よりも多くしても良い。
【0033】
図1(C)を参照して、図1(A)に示す矢印の方向から見たら、第1封止樹脂16は、樹脂封止体15の左端から右端に到るまで連続して配置されており、アイランド12の下面全域を被覆している。更に、左右両端部では、第1封止樹脂16の端部は側面に沿って上方に這い上がる構造を呈している。この理由は、板状の樹脂シートから第1封止樹脂16を形成する際に、キャビティの側面下面に沿って樹脂シートを配置するからである。この事項は図4(B)を参照して後述する。
【0034】
図2の断面図を参照して、次に、上記した構成の半導体装置10が組み込まれた半導体モジュール10Aの構成を説明する。
【0035】
この図に示す半導体モジュール10Aは、半導体装置10と、半導体装置10の下面に当接するヒートシンク26とを備えている。ここで、半導体装置10は、図示せぬビス等の固定手段を用いてヒートシンク26の上面に固定される。この場合、ビスは半導体装置10の樹脂封止体15を貫通する。
【0036】
ヒートシンク26は、銅やアルミニウム等の金属から成り、半導体装置10と面的に接触するために上面は平坦面であり、放熱性を向上させるために下部は異形形状とされている。尚、ヒートシンク26に替えて、金属から構成されるセットの筐体を放熱手段として採用することも可能である。
【0037】
本形態では、放熱性に優れる第1封止樹脂16が半導体装置10の下面に露出し、ヒートシンク26の上面に当接している。従って、半導体素子20が動作時に発生する熱は、アイランド12、第1封止樹脂16を経由して良好にヒートシンク26に伝導した後に外部に放出される。
【0038】
図3から図6を参照して、次に、上記した構成の半導体装置の製造方法を説明する。
【0039】
先ず、図3の平面図を参照して、所定形状のリードフレーム50を用意する。リードフレーム50は、板状の導電材料に対してエッチング加工またはプレス加工を施すことにより形成される。リードフレーム50は、1つの半導体装置となるユニットが複数個連結された状態となっている。ここでは、ユニット56A−56Cの3つのユニットが示され、個々のユニットは、アイランド12と、アイランドに一端が接近するリード14A、14Cと、アイランド12から一体的に連続するリード14Bとから構成されている。また、各ユニットのリードの中間部と端部は、タイバー58により連結されている。
【0040】
更に、各ユニットには半導体素子が接続されている。ユニット56Aを参照すると、アイランド12の上面に半導体素子20が実装されている。半導体素子20としては、バイポーラ・トランジスタ、MOSFET、IGBT等のディスクリートのトランジスタが採用される。半導体素子20の裏面電極は、半田等の導電性の固着材を用いた接続または共晶結合により、アイランド12の上面に接続される。半導体素子20の上面の電極は、金属細線34を経由してリード14Aおよびリード14Cに接続される。
【0041】
図4および図5を参照して、上記した各ユニットを個別に樹脂封止する工程を説明する。図4(A)は本工程で用いるモールド金型40を示す断面図であり、図4(B)は金型に樹脂シートおよび各ユニットを収納した状態を示す断面図であり、図4(C)はキャビティ46Bを示す断面図であり、図4(D)は本工程を上方から見た図であり、図5は、本工程の射出成形を示す断面図である。
【0042】
図4(A)を参照して、本工程ではモールド金型40を用いたトランスファーモールドにより、図3に示す各ユニット56を樹脂封止する。モールド金型40は、上金型42および下金型44から成り、両者を当接させた時の空隙としてキャビティ46A−46Cが形成される。また、同様に、キャビティ同士を互いに連通させる連通領域48A、48Bが設けられており、この領域は樹脂封止に用いられる樹脂シートを収納するための領域である。連通領域48Aによりキャビティ46Aとキャビティ46Bとが連通し、連通領域48Bによりキャビティ46Bとキャビティ46Cとが連通する。
【0043】
また、連通領域48A、48Bの下金型44の下方の内壁は、キャビティ46A−46Cの下方の内壁よりも上方に配置されている。これにより、下記するように、キャビティ46A−46Cに充填された封止樹脂体と、連通領域48A、48Bに充填された樹脂材料との連結部分が、樹脂材料の端部から外して配置される。この事項は、図6を参照して説明する。また、連通領域48A、48Bは、紙面上左右方向の方向に沿って細長く、下金型44の上面に溝状に設けられている。
【0044】
また、ここでは不図示であるが、各キャビティ46A−46Cの紙面上奥行き側の側面に、封止樹脂を注入するためのゲートが配置される。更に、各キャビティ46A−46Cの紙面上手前側の側面に、封止樹脂に伴い空気を外部に逃がすためのエアベントが設けられる。この構造は図5を参照して後述する。
【0045】
図4(B)を参照して、先ず本工程では、下金型44の上面に樹脂シート52を載置する。ここで、樹脂シート52とは、アルミナ等のフィラーが充填されたエポキシ樹脂等から成る封止材を粉状に粉砕した後に打錠加工で板状に成形したものである。樹脂シート52は、図1(A)を参照して、樹脂封止体15の一部である第1封止樹脂16の材料であり、その組成は第1封止樹脂16と同様である。即ち、キャビティに注入される材料よりも熱抵抗が低い組成を備えている。なお、本工程で使用される樹脂シート52の厚み(L2)は例えば0.5mm以上であり、この樹脂シート52から形成される第1封止樹脂16(図1(C)参照)よりも厚い。
【0046】
樹脂シート52は、複数個のキャビティ46A−46Cおよび連通領域48A、48Cに渡るように下金型44に載置される。具体的には、紙面上左側から、キャビティ46A、連通領域48A、キャビティ46B、連通領域48B、キャビティ46Cに渡って、一枚の樹脂シート52が配置される。
【0047】
下金型44に載置される前の樹脂シート52は平坦であるが、下金型44に載置された樹脂シート52は、高温(例えば170度以上)な状態の下金型44により加熱されて軟化する。この結果、下金型44の上面の形状に追従して変形する。
【0048】
図4(C)を参照して、変形後の樹脂シート52は、下金型44に設けられたキャビティ46Bおよび連通領域48A、48Bの形状に則して変形している。具体的には、連通領域48Bの下面は、キャビティ46Bの下面よりも上方に配置されており、両者が離間する距離L3は例えば0.4mm以上である。これにより、連通領域48Bに充填される樹脂材料と、キャビティ46Bに充填される樹脂封止体との接続部位が、樹脂封止体の端部から離して配置される。この事項は図6を参照して後述する。
【0049】
樹脂シート52が下金型44に載置された後は、図4(B)を参照して、各キャビティ46A−46Cに、リードフレームで連結された状態の各ユニット56A−56Cを配置する。各ユニット56A−56Cのアイランド12は、樹脂シート52の上面に配置される。
【0050】
次に、上金型42と下金型44とを当接させることにより、両者の間隙として形成されるキャビティ46A−46Cに、ユニット56A−56Cを収納する。これにより、図4(C)を参照して、リード14A−14Cが上金型42及び下金型44で挟持されるので、キャビティ46Bの内部に於けるユニット(アイランド12およびリード14A−14C)の位置が固定される。ここで、本工程での樹脂シート52の厚みは、完成品でアイランド12の下面を被覆する第1封止樹脂16(図1(C)参照)よりも厚い。従って、樹脂シート52はアイランド12により下方に押圧されることになり、その後軟化した樹脂シート52が支持力を失うと樹脂シート52が沈み込み、アイランド12の下面を被覆する樹脂を52が所定の厚みとなる。これにより、半導体素子20が実装されるアイランド12の下方の領域には、放熱性に優れた樹脂シート52のみが存在し、ボイドやキャビティ46Bに対して後に注入される樹脂は、この領域には存在しないことに成る。
【0051】
図4(D)を参照して、樹脂シート52の幅(紙面上で縦方向の長さ)は、アイランド12に実装される半導体素子20の幅よりも長く設定されている。これにより、熱伝導性に優れた樹脂シート52から成る樹脂材料が、熱源である半導体素子20の下方に確実に配置される。
【0052】
図5を参照して、上金型42の内壁には、下方に突出する押圧部74が設けられており、この押圧部74の下端がアイランド12の端部の上面を上方から押圧することにより、アイランド12の厚み方向(上下方向)の位置が固定される。ここで、押圧部74に対応する箇所で、下金型44の内壁から上方に突出する押圧部でアイランド12の下面を押圧しても良い。また、押圧部74は、固定式でもよいし可動式でも良い。可動式の場合は、第2封止樹脂18の注入に伴い押圧部74は徐々に上昇するので、押圧部74が押圧する部分のアイランド12の上面も第2封止樹脂18により覆われて外部に露出しない。
【0053】
ここでは、リード14Bに対向した位置に配置されたゲート70から、液状または半固形状の第2封止樹脂18をキャビティ46Aに注入している。また、ゲート70は、アイランド12の側方に設けられている。この図では、注入された第2封止樹脂18が流動する経路を太い実践で示している。注入された第2封止樹脂18の大部分はアイランド12よりも上方の領域に流動し、紙面上でアイランドの左側端部の下面まで行き渡る。一方、ゲートから供給される第2封止樹脂18の一部は、紙面上でアイランド12の右端から下方に流動する。第2封止樹脂18の注入に伴い、キャビティ46Aの内部の空気は、エアベント72を経由して外部に放出される。
【0054】
また、アイランド12の下方に配置された樹脂シート52は、加熱された下金型44と面的に接触することで溶融されて第1封止樹脂16となる。この第1封止樹脂16によりアイランド12の下面が被覆される。
【0055】
ここで、アイランド12の下面と下金型44の内壁との距離L4は、製造される半導体装置10の第1封止樹脂16の厚みL1(図1(B)参照)と同様であり、例えば0.4mm程度と非常に狭い。しかしながら、本工程では、この部分に既に樹脂シート52が配置されているので、樹脂封止の未充填領域(ボイド)が発生するおそれが小さい。
【0056】
上記工程が終了すると、第1封止樹脂16によりアイランド12の下面の中心部分が被覆される。一方、第2封止樹脂18により、アイランド12の周辺部の下面を含む表面、半導体素子20、金属細線34およびリード14B等の先端部付近が樹脂封止される。
【0057】
また、本工程に於いては、第1封止樹脂16および第2封止樹脂18の両方が液状に溶融されるので、両者は界面で混合されて一体化した樹脂封止体15(図1(B)参照)となる。
【0058】
第2封止樹脂18の充填が終了したら、充填された封止樹脂を加熱硬化した後に、上金型42と下金型44とを離型し、樹脂封止されたユニット56A−56Cを外部に取り出す。
【0059】
本工程の利点は、先ず、一枚の樹脂シート52で複数のユニット56A−56Cのアイランド12の下面を被覆できるので、工程が簡略化される。更に、1枚の樹脂シート52を連通領域48A、48Bに配置して位置合わせを行うことにより、複数のユニット56A−56Cに対して所定の位置に樹脂シート52が配置されるので、誤配置の恐れが小さくなる。更に、各ユニット56A−56Cの内部において、樹脂シート52の端部を、ユニットの隅部から外して配置しているので、後述するように、樹脂シート52の残余部を除去する際の樹脂封止体の欠けが防止される。
【0060】
図6を参照して、次に、各ユニット56A−56Cを分離する。図6(A)は樹脂封止工程を経たリードフレーム50を示す平面図であり、図6(B)はその断面図である。
【0061】
樹脂封止工程を経ることで、各ユニット56A−56Cは、樹脂封止体15により樹脂封止されている。また、図4(B)に示した連通領域48A等に配置された樹脂シート52も上記工程で同時に加熱硬化される結果、図6(A)に示す残余部分54となる。即ち、ユニット56A−56Cの樹脂封止体は、残余部分54により互いに連結されている。
【0062】
本工程では、この残余部分54と樹脂封止体15とを、両者の接続箇所で分離する。この分離は、金型を用いたプレス加工、研削加工またはレーザー照射で行うことができる。図6(B)では分離する部分を点線で示している。
【0063】
図4(C)に示す連通領域48A等で成形される残余部分54と樹脂封止体15と残余部分54との連結部分は、樹脂封止体15の隅部よりも上方の側面に位置している。従って、プレス加工等の機械的衝撃を伴う分離方法により、残余部分54を樹脂封止体15との連結部分から分離しても、この衝撃により樹脂封止体15へのクラックの発生等が防止される。
【0064】
仮に、上記した連結部分を樹脂封止体15の下端に配置すると、プレス加工の衝撃により、樹脂封止体15の角部が残余部分54と共に欠けてしまう虞がある。本形態では、これを防止するために、残余部分54と樹脂封止体15との連結部分を、隅部から離間した樹脂封止体15の側面に配置している。
【0065】
更に本工程では、図6(A)を参照して、リードフレーム50のタイバー58をプレス加工することにより、各ユニット56A−56Cのリードを個別に分離する。
【0066】
上記した樹脂封止が終了した後は、メッキ膜によりリードを被覆する工程、各ユニットをリードフレーム50から分離する工程(図3参照)、各ユニットの電気的特性を測定する工程、等を経て、図1に構造を示すような半導体装置10が製造される。また、図2に示す半導体モジュールを製造する場合は、半導体装置の主面をヒートシンクに当接させて両者を熱的に結合させる。
【符号の説明】
【0067】
10 半導体装置
10A 半導体モジュール
12 アイランド
14、14A、14B、14Cリード
15 樹脂封止体
16 第1封止樹脂
18 第2封止樹脂
20 半導体素子
26 ヒートシンク
34 金属細線
40 金型
42 上金型
44 下金型
46、46A、46B、46Cキャビティ
48、48A、48B、48C連通領域
50 リードフレーム
52 樹脂シート
54 残余部分
56、56A、56B、56Cユニット
58 タイバー
70 ゲート
72 エアベント
74 押圧部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャビティと、各々の前記キャビティに設けられたゲートおよびエアベントと、前記キャビティ同士を連通する連通領域とを有するモールド金型を用意する第1工程と、
複数の前記キャビティおよび前記連通領域に渡り樹脂シートを配置し、半導体素子が実装されたアイランドおよび前記半導体素子と接続されたリードから成るユニットを前記キャビティに収納し、前記アイランドを前記樹脂シートに載置する第2工程と、
前記各キャビティにて、前記樹脂シートを溶融させて第1封止樹脂とし、液状または半固形状の第2封止樹脂を前記ゲートから注入し、前記第1封止樹脂および前記第2封止樹脂からなる樹脂封止体で、前記各アイランドおよび前記半導体素子を樹脂封止する第3工程と、
樹脂封止された前記ユニットを前記各キャビティから取り出した後に、前記連通領域で硬化した前記樹脂シートから成る残余部分を切除し、各ユニットを個別に分離する第4工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂シートは、前記半導体素子が実装される部分の前記アイランドと重畳する位置で、前記キャビティに配置されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記モールド金型の前記連通領域の下側内壁を、前記キャビティの下側内壁よりも上方に配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂封止体と前記残余部分との連続箇所は、前記樹脂封止体の端部から離間した側面に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1封止樹脂となる前記樹脂シートは、フィラーとしてアルミナが充填された樹脂材料から成り、
前記第2封止樹脂は、フィラーとしてシリカが充填された樹脂材料から成ることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2工程で配置される前記樹脂シートの厚みは、前記アイランドの下面を被覆する前記第1封止樹脂よりも厚いことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−20997(P2013−20997A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150571(P2011−150571)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(300057230)セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (119)
【Fターム(参考)】