説明

半導体装置及びそれを用いた電源回路装置

【課題】グリッドアレイ端子構造の半導体装置において、スイッチ回路がつながる端子の発熱を低減して溶解の危険性を少なくすること。
【解決手段】BGAなどのグリッドアレイ端子構造の半導体装置に内蔵されるスイッチ回路の出力端を、グリッドアレイ端子のうちの複数の端子に接続する。これにより、1つのアレイ端子に流れる電流を許容電流レベル内に低減し、また、ICソケットとの接触抵抗による発熱量を低減する。また、複数の端子の各端子間に1つ以上の他の端子が存在するように配置し、また、複数の端子の全てをグリッドアレイ端子のうちの最外周に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングトランジスタを内蔵する半導体装置及びその半導体装置を用いた電源回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチング素子(例、トランジスタスイッチ)をその駆動回路と共に半導体集積回路に設けて、出力電圧を制御するようにしたスイッチング型電源回路装置が広く使用されている。
【0003】
図3は、従来のスイッチング型電源回路装置の構成例を示す図である。半導体集積回路(IC)10に、トランジスタスイッチQoと、このトランジスタスイッチQoを駆動する駆動回路20が内蔵されている。このトランジスタスイッチQoがIC10のパッドPoを介してコイルLoに直列に接続されている。その接続点の電圧をダイオードDoとキャパシタCoによって整流し平滑して出力電圧Voutを得ている。
【0004】
トランジスタスイッチQoがオンされると、電池などの電源(入力電圧Vin)から、コイルLo、パッドPo、トランジスタスイッチQoを通ってスイッチング電流Ioが流れる。この電流Ioは、トランジスタスイッチQoがオンした後の、時間の経過につれて大きくなっていく。トランジスタスイッチQoがオフされると、コイルLoに蓄積されたエネルギーがダイオードDo、キャパシタCoで整流・平滑されて、入力電圧Vinが変換された出力電圧Voutが出力される。
【0005】
出力電圧Voutは、トランジスタスイッチQoのオン時間Tonとオフ時間Toffのデューティ比(Ton/(Ton+Toff))によって決まる。通常は、駆動回路20に、出力電圧Voutに応じた帰還電圧を帰還して、その帰還電圧が所定の基準電圧に等しくなるようにデューティ比を制御して、出力電圧Voutを所定レベルに維持するように構成されている。
【0006】
パッドPoやそれに接続するためのボンディングワイヤや接触による抵抗Rpが存在する。抵抗Rpは、図3で括弧内に表記している。この抵抗Rpと電流Ioとによって電圧降下が発生し、また電力損失が発生する。
【0007】
これら電圧降下等を低減するために、複数本のボンディングワイヤを並列に接続し、抵抗Rpを低減することが行われている(特許文献1,2)。
【特許文献1】特開平7−202097号公報
【特許文献2】特開2000−114307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ICを小型化するために、ウエハレベルのチップサイズドパッケージ(WL−CSP)型のICが多く採用されるようになってきている。WL−CSP型ICでは、BGA(ボールグリッドアレイ)等の格子状(グリッド状)に二次元に配置された多数のボール形状の端子を用いて、ICの外部回路と接続することになる。このボール形状の端子は、高密度実装を実現するために、極めて小さいサイズに形成される。
【0009】
BGAのボール端子では、特許文献1、2に示されるように複数本のボンディングワイヤを並列に接続する構成を取ることは困難である。また、ボール端子が格子状に配置されるから特定の端子、即ちトランジスタスイッチにつながる端子、のサイズを他の端子のサイズよりも大きくすることも難しい。
【0010】
一方、スイッチングに伴う電流Ioは比較的大きな電流レベルであるから、ボール端子の電流耐量(許容電流レベル)を超えることもありえる。また、ボール端子の接触抵抗などの抵抗と電流Ioによる損失等によって発熱する。これらにより、トランジスタスイッチがつながっているボール端子が溶解する危険性を含んでいる。
【0011】
そこで、本発明は、スイッチ回路とその駆動回路を内蔵する、BGAなどのグリッドアレイ端子構造の半導体装置において、スイッチ回路がつながる端子の発熱を低減して溶解の危険性を少なくした半導体装置を提供することを目的とする。また、その半導体装置を用いて変換効率を向上した電源回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の半導体装置は、スイッチ回路と該スイッチ回路をオン・オフ制御する駆動回路を内蔵するグリッドアレイ端子構造の半導体装置において、
前記スイッチ回路の出力端が、前記グリッドアレイ端子のうちの複数の端子に接続されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の半導体装置は、請求項1に記載の半導体装置において、前記複数の端子は、該複数の端子の各端子間に少なくとも1つの他の端子が存在するように配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の半導体装置は、請求項2に記載の半導体装置において、前記他の端子は、電流が流れない端子、もしくは前記スイッチ回路に流れる電流に比して極めて小さい電流しか流れない端子であることを特徴とする。
【0015】
請求項4の半導体装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置において、前記複数の端子の全ては、グリッドアレイ端子のうちの最外周の端子であることを特徴とする。
【0016】
請求項5の半導体装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置において、前記スイッチ回路は、並列接続され、同時にオンあるいはオフに制御される複数のトランジスタスイッチにより構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6の半導体装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置において、前記グリッドアレイ端子は、ボールグリッドアレイ端子であることを特徴とする。
【0018】
請求項7の電源回路装置は、スイッチ回路と該スイッチ回路をオン・オフ制御する駆動回路を内蔵するグリッドアレイ端子構造を有しており、前記スイッチ回路の出力端が前記グリッドアレイ端子のうちの複数の端子に接続されている半導体装置を含み、前記複数の端子が前記半導体装置の外部で相互に接続されるとともに、前記スイッチ回路のオン・オフ制御によって入力電圧を変換した出力電圧を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、BGAなどのグリッドアレイ端子構造の半導体装置に内蔵されるスイッチ回路の出力端が、前記グリッドアレイ端子のうちの複数の端子に接続されている。これにより、1つのアレイ端子に流れる電流を許容電流レベル内に低減する。また、ICソケットとの接触抵抗による発熱量を低減する。よって、BGAなどのアレイ端子の溶解などの危険性を抑えることができる。
【0020】
また、スイッチング電流が複数端子に分流されるから、端子やその近辺における電力損失が低減され、電源回路装置の変換効率の向上に寄与する。
【0021】
また、複数の端子の各端子間に1つ以上の他の端子が存在するように配置されていること、他の端子の電流は零もしくは極めて小さいから、発熱範囲が分散され放熱しやすくなるので端子の温度上昇を抑制できる。また、複数の端子の全てが、グリッドアレイ端子のうちの最外周の端子であることにより、外部配線を太くして配線抵抗を低減するとともに、放熱効果を増大することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の半導体装置及びその半導体装置を用いた電源回路装置の実施例について図を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施例に係るIC10Aと、このIC10Aを用いた電源回路装置の構成を模式的に示す図である。なお、11Aは、IC10A内部のICチップである。また、図2は、IC10Aの一面に多数のボール形状の端子が格子状に配置された、BGAの端子配置を示す図である。
【0024】
図1において、コイルLo、ダイオードDo、キャパシタCo及び入力電圧Vin、出力電圧Voutは、図3におけるものと、同様である。
【0025】
IC10Aは、WL−CSPのICであり、そのサイズが小さくされている。そのIC10Aの一面(例えば、裏面)には、図2に例示されるように、m行、n列にボール形状の端子B1−1〜Bn−mが格子状に配置されて、BGAの端子配置とされている。
【0026】
図1に戻って、IC10Aの内部に、トランジスタスイッチQ1〜Q3からなるスイッチ回路と、このトランジスタスイッチQ1〜Q3を駆動する駆動回路20が内蔵されている。トランジスタスイッチQ1〜Q3は、この例ではNPNバイポーラトランジスタであるが、他のトランジスタ、例えばMOSFETでもよい。これらトランジスタスイッチQ1〜Q3は、駆動回路20からのオン駆動信号あるいはオフ駆動信号にしたがって、同時にオンあるいはオフにスイッチングされる。
【0027】
スイッチ回路は、3つのトランジスタスイッチQ1〜Q3から構成されることとしているが、1つでもよい。ただ、回路の断線や接触不良の発生などに影響されることを防止するためにも、トランジスタスイッチは2以上の数とすることが望ましく、また、電流容量にも余裕を持たせることがよい。
【0028】
このトランジスタスイッチQ1〜Q3のコレクタがそれぞれ、ICチップ11AのパッドP2−1、P4−1、P6−1及びそのバンプを介して、BGA端子B1−1〜Bn−mのうちの複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1に接続されている。このトランジスタスイッチQ1〜Q3のコレクタはそれぞれ相互に接続されていることが、望ましい。
【0029】
また、トランジスタスイッチQ1〜Q3のコレクタがそれぞれ接続された複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1は、IC10Aの外部でそれぞれ相互に接続されている。この相互に接続された複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1が、コイルLoとダイオードDoとの接続点に接続される。
【0030】
コイルLoに接続されるボール端子は3つとして示しているが、電流Ioを分流させればよいので、少なくとも2つであればよい。ただ、ボール端子での抵抗(接触抵抗や配線抵抗など)Rbによる発熱量を下げるために、また、回路の断線や接触不良の発生などに影響されることを防止するためにも、コイルLoに接続されるボール端子は3つ以上とすることが望ましい。
【0031】
トランジスタスイッチQ1〜Q3がオンされると、コイルLoを流れる電流Ioが時間の経過につれて大きくなっていく。その電流Ioは、ボール端子B2−1、B4−1、B6−1に分流して、各ボール端子B2−1、B4−1、B6−1には約3分の1ずつの電流Io/3が流れる。トランジスタスイッチQ1〜Q3にも同様に分流した電流Io/3が流れる。
【0032】
トランジスタスイッチQ1〜Q3がオフされると、コイルLoに蓄積されたエネルギーがダイオードDo、キャパシタCoで整流・平滑されて、出力電圧Voutが出力される。出力電圧Voutの制御は、従来の図3におけると同様である。
【0033】
この構成によれば、並列に接続された複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1の各ボール端子やバンプに流れる電流を許容電流レベル内に低減するし、また、IC10Aが接続される基板との接触抵抗等による発熱量を低減する。したがって、BGAのボール端子の溶解などの危険性を抑えることができる。
【0034】
また、コイルに流れる電流(スイッチング電流)Ioが複数端子に分流(この例では、3つに分流)することにより、合成された接触抵抗を低減(Rb/3)できるから、各ボール端子やその近辺における電力損失が低減されるとともに発熱を分散できるようになる。これにより、電源回路装置の変換効率が向上する。
【0035】
また、複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1が並列に接続されることや、スイッチングトランジスタQ1〜Q3が並列に接続されることによって、回路中に断線や接触不良等が発生した場合にも、その影響を小さくすることができる。
【0036】
再度、図1,図2を参照すると、複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1は、それら複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1の各端子間に、少なくとも1つの他のボール端子B3−1、B5−1が存在するように配置されている。各端子間B2−1、B4−1、B6−1に配置する他のボール端子は、それぞれ2個以上としてもよい。
【0037】
また、これら他のボール端子は、電流が流れない端子や、複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1に流れる電流Io/3に比して極めて小さい電流しか流れない端子とする。
【0038】
このように、並列接続される複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1の各端子間に他の端子を設けることによって、合成抵抗を小さくして発熱量が低減されることに加えて、発熱領域が分散されるから、各ボール端子の温度上昇を抑制できる。
【0039】
また、複数のボール端子B2−1、B4−1、B6−1の全てが、BGA端子のうちの最外周に配置されている。このように、BGA端子のうちの最外周に配置することにより、内周に配置した場合に比して外部配線を太くして配線抵抗を低減することができ、さらに放熱効果が期待できる。
【0040】
なお、以上の説明では、IC10Aの一面に多数のボール形状の端子が格子状に配置されたBGAの例について示したが、本発明はこれに限ることなく、例えばPGA(ピングリッドアレイ)などのグリッドアレイ構造のICに適用することができる。
【0041】
また、本発明は、図1に示される昇圧型直流−直流変換のものに限らず、降圧型直流−直流変換のものや、直流−交流変換のものを含め、スイッチ回路を用いるスイッチング型電源回路装置や、モータなどのドライバ装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係るICと、このICを用いた電源回路装置の構成を示す図
【図2】図1のICの一面へのBGAの端子配置を示す図
【図3】従来のスイッチング型電源回路装置の構成例を示す図
【符号の説明】
【0043】
Lo コイル
Do ダイオード
Co キャパシタ
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
10A IC
20 駆動回路
B1−1〜Bn−m ボール端子
Q1〜Q3 トランジスタスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ回路と該スイッチ回路をオン・オフ制御する駆動回路を内蔵するグリッドアレイ端子構造の半導体装置において、
前記スイッチ回路の出力端が、前記グリッドアレイ端子のうちの複数の端子に接続されていることを特徴とする、半導体装置。
【請求項2】
前記複数の端子は、該複数の端子の各端子間に少なくとも1つの他の端子が存在するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記他の端子は、電流が流れない端子、もしくは前記スイッチ回路に流れる電流に比して極めて小さい電流しか流れない端子であることを特徴とする、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の端子の全ては、グリッドアレイ端子のうちの最外周の端子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記スイッチ回路は、並列接続され、同時にオンあるいはオフに制御される複数のトランジスタスイッチにより構成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記グリッドアレイ端子は、ボールグリッドアレイ端子であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
スイッチ回路と該スイッチ回路をオン・オフ制御する駆動回路を内蔵するグリッドアレイ端子構造を有しており、前記スイッチ回路の出力端が前記グリッドアレイ端子のうちの複数の端子に接続されている半導体装置を含み、前記複数の端子が前記半導体装置の外部で相互に接続されるとともに、前記スイッチ回路のオン・オフ制御によって入力電圧を変換した出力電圧を出力することを特徴とする、電源回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−32827(P2006−32827A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212749(P2004−212749)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】