説明

半導体装置

【課題】 半導体パワー素子のみならずそれに逆並列接続されたフリーホイールダイオードの過熱判定も行えるようにする。
【解決手段】 IGBT11と、このIGBT11に逆並列接続されたフリーホイールダイオード21とからなるパワー部と、IGBT11の温度を検出する第1のダイオード12と、フリーホイールダイオード21の温度を検出する第2のダイオード22とを備え、第1、第2のダイオード12、22は、並列接続され、それによる検出温度電圧Vtempが温度検出回路40に入力されるようになっており、この温度検出回路40にて、検出温度電圧Vtempに基づき過熱判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングを行う半導体パワー素子と、この半導体パワー素子に逆並列接続されたフリーホイールダイオードとからなるパワー部を有し、その過熱判定を行うようにした半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチングを行う半導体パワー素子と、この半導体パワー素子に逆並列接続されたフリーホイールダイオードとからなるパワー部を有する半導体装置として、例えば、図10に示す、電気自動車のモータを駆動する装置に適用されたものがある。この装置では、上記したパワー部が、3相のインバータ102に用いられるとともに、昇圧コンバータ101にも用いられている。
【0003】
図に示す装置では、バッテリ100の電圧(例えば200V)が昇降圧コンバータ101で昇圧されてコンデンサ103に昇圧電圧(例えば650V)が生成される。その昇圧電圧が3相のインバータ102で3相交流電圧に変換され、それによりモータ104が駆動される。また、電力回生時は、昇降圧コンバータ101で降圧される。
【0004】
ここで、昇降圧コンバータ101は、コンデンサ101a、コイル101b、半導体パワー素子(例えば、図に示すような絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ:以下、IGBTという)101c、101d、フリーホイールダイオード101e、101fから構成されており、モータ駆動時には、IGBT101cをオフにするとともにIGBT101dをデューティ制御して、コンデンサ103に昇圧電圧を生成し、また電力回生時には、IGBT101dをオフにするとともにIGBT101cをデューティ制御して、コンデンサ103の電圧を降圧する。なお、モータ駆動時には、IGBT101cに逆並列接続されたフリーホイールダイオード101eに電流が流れ、電力回生時には、IGBT101dに逆並列接続されたフリーホイールダイオード101fに電流が流れる。
【0005】
上記した装置において、インバータ102を構成するIGBTや昇降圧コンバータ101を構成するIGBTに過電流が流れると、IGBTの温度が上昇して破壊に至る虞があるため、IGBTの温度を温度検出素子によって検出し、IGBTの温度が所定温度以上になる過熱判定が行われると、IGBTの動作を停止して素子の保護を図るものが多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−38964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1等に記載された装置では、IGBTの方がそれに逆並列接続されたフリーホイールダイオードよりも発熱が大きかったため、温度検出素子はもっぱらIGBTに設けられてきた。しかし、図10に示す構成の場合、昇降圧コンバータ101を構成するIGBT101c、101dに逆並列接続されたフリーホイールダイオード101e、101fには、インバータを構成するIGBTに逆並列接続されたフリーホイールダイオードに比べ、通電が集中するため、IGBTのみなならずフリーホイールダイオードに対しても発熱に対策を施す必要がある。この場合、フリーホイールダイオードを、熱的にマージンをもったサイズで構成することにより、その対応を図ることができるが、コスト低減の理由等からフリーホイールダイオードのサイズを小さくした場合には、他の対策を施さなくてはならない。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みたもので、半導体パワー素子のみならずそれに逆並列接続されたフリーホイールダイオードの過熱判定も行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体パワー素子と、この半導体パワー素子に逆並列接続されたフリーホイールダイオードとからなるパワー部と、
前記半導体パワー素子の温度を検出する第1の温度検出素子と、
前記第1の温度検出素子によって検出された温度が第1の閾値を超えたときに過熱判定を行う温度検出回路と、を備えた半導体装置において、
前記フリーホイールダイオードの温度を検出する第2の温度検出素子を備え、
前記温度検出回路は、前記第2の温度検出素子によって検出された温度が前記第1の閾値と異なる第2の閾値を超えたときにも過熱判定を行うことを特徴としている。
【0009】
このことにより、半導体パワー素子のみならずそれに逆並列接続されたフリーホイールダイオードの過熱判定も行うことができる。
【0010】
この請求項1に記載の発明は、以下に示す各請求項の発明によって具体的に実現できる。すなわち、請求項2に記載の発明では、前記パワー部に流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記第1、第2の温度検出素子は、第1、第2のダイオードであって、並列接続され、この並列された前記第1、第2のダイオードの検出温度電圧が前記温度検出回路に入力されるようになっており、
前記温度検出回路は、前記電流検出手段にて検出されたパワー部に流れる電流により、前記半導体パワー素子に電流が流れていることを判別したときには前記第1の閾値を設定し、前記フリーホイールダイオードに電流が流れていることを判別したときには前記第2の閾値を設定する閾値設定手段と、前記並列接続された第1、第2のダイオードの検出温度電圧を前記閾値設定手段にて設定された前記第1、第2の閾値のいずれか一方と比較して前記過熱判定を行う判定手段とを有する。
【0011】
ここで、第1、第2のダイオードの特性がばらついて、例えばオフセット的にずれたり、温度特性が異なっている場合、単にそれらを並列接続すると、電圧が低い側のダイオードに検出電圧が固定されて、半導体パワー素子とフリーホイールダイオードの両者の温度を検出できなくなる虞がある。このことに対処するためには、請求項3に記載の発明のように構成すればよい。すなわち、請求項3に記載の発明では、前記パワー部に流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記第1、第2の温度検出素子は、第1、第2のダイオードであって、前記第1、第2のダイオードの検出温度電圧が前記温度検出回路に入力されるようになっており、
前記温度検出回路は、前記電流検出手段にて検出されたパワー部に流れる電流により、前記半導体パワー素子に電流が流れていることを判別したときには前記第1の閾値を設定し、前記フリーホイールダイオードに電流が流れていることを判別したときには前記第2の閾値を設定する閾値設定手段と、前記閾値設定手段が前記第1の閾値を設定しているときに前記第1のダイオードの検出電圧を選択し、前記閾値設定手段が前記第2の閾値を設定しているときに前記第2のダイオードの検出電圧を選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された前記第1、第2のダイオードの検出電圧のいずれか一方を前記閾値設定手段にて設定された前記第1、第2の閾値のいずれか一方と比較して前記過熱判定を行う判定手段とを有する。
【0012】
第2のダイオードは、フリーホイールダイオードと同一ICチップに形成することができる。この場合、第2のダイオードを、フリーホイールダイオードが形成された半導体基板上に酸化膜等の絶縁膜上に形成すれば、フリーホイールダイオードを流れる主電流から第2のダイオードを分離することができる。また、第2のダイオードを、フリーホイールダイオードの素子形成領域と分離された分離島に形成された拡散ダイオードとすることもできる。この場合、請求項4に記載の発明のように、拡散ダイオードの接続配線の電位により拡散ダイオードが分離島と逆バイアスされるようにすれば、フリーホイールダイオードを流れる主電流から拡散ダイオードを分離することができる。
【0013】
また、第2の温度検出素子を、フリーホイールダイオードの素子形成領域と分離された分離島に形成された拡散抵抗とすることもできる。この場合、請求項5に記載の発明のように、拡散抵抗の接続配線の電位により拡散抵抗が分離島と逆バイアスされるようにすれば、フリーホイールダイオードを流れる主電流から拡散抵抗を分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す。この図1に示す実施形態は、IGBT11と、このIGBT11に逆並列接続されたフリーホイールダイオード21とからなるパワー部に対し、その過熱判定および過熱判定に基づく制御が行えるようにしたものである。このパワー部は、図10に示す昇降圧コンバータ101における、IGBT101cとそれに逆並列接続されたフリーホイールダイオード101eからなるパワー部と、IGBT101dとそれに逆並列接続されたフリーホイールダイオード101fからなるパワー部の一方を示している。なお、他方のパワー部についても図1に示すものと同様の構成にて過熱判定およびその過熱判定に基づく制御が行えるようになっている。
【0015】
パワー部を構成するIGBT11は、駆動回路30によって駆動される。IGBT11を構成する半導体回路(ICチップ)10には、IGBT11の温度を検出する第1の温度検出素子として第1のダイオード12が形成され、フリーホイールダイオード21を構成する半導体回路(ICチップ)20には、フリーホイールダイオード21の温度を検出する第2の温度検出素子として第2のダイオード22が形成されている。それら第1、第2のダイオード12、22は、並列接続されており、第1、第2のダイオード12、22による検出温度電圧Vtempが温度検出回路40に入力される。
【0016】
また、パワー部を流れる電流Icを検出するため、IGBT11の電流センサ出力端子に電流検出用抵抗50が接続されており、それによる電流検出電圧Vseが温度検出回路40に入力される。
【0017】
温度検出回路40は、上記した検出温度電圧Vtemp、電流検出電圧Vseにより、IGBT11あるいはフリーホイールダイオード21の過熱判定を行う。
【0018】
次に、上記した温度検出回路40の具体的な構成について説明する。図2に、その構成を示す。温度検出回路40は、図に示すように、並列接続された第1、第2のダイオード12、22に定電流を流す定電流源41と、検出温度電圧Vtempを閾値Vref0と比較する第1の比較器42と、電流検出電圧Vseを第3の閾値Vref3と比較する第2の比較器43と、第2の比較器43の出力により第1の閾値Vref1と第2の閾値Vref2(第1の閾値Vref1より小さい値)のいずれか一方を第1の比較器42の閾値Vref0とする閾値切替回路44とから構成されている。
【0019】
この温度検出回路40の作動を図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。
【0020】
IGBT11に電流が流れているときには、IGBT11の電流センサ出力端子から電流検出用抵抗50に電流が流れ、電流検出電圧Vseが第3の閾値Vref3より高くなるため、第2の比較器43の出力はハイレベル(Hi)になる。また、フリーホイールダイオード21に電流が流れているときには、IGBT11の電流センサ出力端子から電流検出用抵抗50に電流が流れないため、電流検出電圧Vseは第3の閾値Vref3より低くなり、第2の比較器43の出力はローレベル(Lo)になる。このように電流検出電圧Vseにより、IGBT11とフリーホイールダイオード21のいずれに電流が流れているかの通電方向を判別することができる。
【0021】
そして、IGBT11に電流が流れているときには、第2の比較器43の出力がハイレベルになるため、閾値切替回路44は第1の閾値Vref1を選択し、第1の比較器42の閾値Vref0を第1の閾値Vref1に設定する。また、フリーホイールダイオード21に電流が流れているときには、第2の比較器43の出力がローレベルになるため、閾値切替回路44は第2の閾値Vref2を選択し、第1の比較器42の閾値Vref0を第2の閾値Vref2に設定する。
【0022】
したがって、IGBT11に電流が流れているときには、検出温度電圧Vtempが第1の比較器42において第1の閾値Vref1と比較され、フリーホイールダイオード21に電流が流れているときには、検出温度電圧Vtempが第1の比較器42において第2の閾値Vref2と比較される。
【0023】
ここで、検出温度電圧Vtempは、検出温度が高くなると、低くなる。したがって、IGBT11に電流が流れている状態で検出温度電圧Vtempが第1の閾値Vref1より低くなると、第1の比較器42は過熱判定を行い、またフリーホイールダイオード21に電流が流れている状態で検出温度電圧Vtempが第2の閾値Vref2より低くなると、第1の比較器42は過熱判定を行う。図3は、IGBT11に電流が流れている状態で検出温度電圧Vtempが第1の閾値Vref1より高くなっているため、第1の比較器42は過熱判定を行わないが、フリーホイールダイオード21に電流が流れている状態で検出温度電圧Vtempが第2の閾値Vref2より低くなったため、第1の比較器42が過熱判定を行うことを示している。
【0024】
なお、上記した図2に示す構成において、第1、第2のダイオード12、22の特性がばらついて、例えばオフセット的にずれたり、温度特性が異なっている場合、単にそれらを並列接続すると、電圧が低い側のダイオードに検出電圧が固定されて、IGBTとフリーホイールダイオードの両者の温度を検出できなくなる虞がある。このことに対処するためには、図4のように構成すればよい。
【0025】
すなわち、図4に示すように、定電流源41aから第1のダイオード12に定電流を流し、定電流源41bから第2のダイオード22に定電流を流し、第1、第2のダイオード12、22の検出温度電圧のいずれか一方を選択回路45で選択する。選択回路45は、第2の比較器43の出力により第2の比較器43の出力がハイレベルのとき(すなわち閾値切替回路44が第1の閾値Vref1を選択するとき)、第1のダイオード12の検出温度電圧を選択し、第2の比較器43の出力がローレベルのとき(すなわち閾値切替回路44が第2の閾値Vref2を選択するとき)、第2のダイオード22の検出温度電圧を選択する。このことにより、図2に示す構成のものと同様、IGBT11に電流が流れているときには、第1のダイオード12の検出温度電圧が第1の比較器42において第1の閾値Vref1と比較され、フリーホイールダイオード21に電流が流れているときには、第2のダイオード22の検出温度電圧が第1の比較器42において第2の閾値Vref2と比較される。
【0026】
図5に、上記したフリーホイールダイオード21を構成する半導体回路の模式的な構成を示す。(a)は、平面構成を示し、(b)は、(a)中のA−A断面構成を示す。但し、(a)の平面構成においては、(b)に示す保護膜213を形成していない状態となっている。
【0027】
この半導体回路は、n-型の半導体基板201にフリーホイールダイオード21を形成するためのp層202が形成され、その表面に主電極203が形成されるとともに半導体基板201の裏面に他方の電極204が形成された構成となっている。また、半導体基板201の表面の所定領域に酸化膜205を介してポリシリコンによるダイオード(第2のダイオード22)206およびそれに通電するための第1、第2の配線207、208と電極パッド209、210が形成されている。このような構成により、ダイオード206は、主電極203を介して流れる主電流の通電部と分離される。また、フリーホイールダイオード21の素子形成領域の周囲にはガードリング211が形成され、さらにその外周には外周部の電位を固定するためのn+層212が形成されており、このガードリング211上およびダイオード206と第1、第2の配線207、208上に保護膜213が形成されている。このような構成において、電極パッド209、210にワイヤボンドなどで結線することにより、外部にフリーホイールダイオード21の温度に応じた信号を取り出すことができる。なお、電極パッド209、210は、素子内のどこにあっても良いが、素子の端や角部が望ましい。また、第1、第2の配線207、208は、出来る限り近接並行配置が望ましい。
【0028】
図6に、図5に示す半導体回路の製造方法を示す。まず、n-型の半導体基板201を用意し(図6(a))、それにフリーホイールダイオード21およびガードリング211を形成するためにp層の拡散を行い(図6(b))、続いてn+層層212を外周部に形成する(図6(c))。次に、半導体基板201の表面に酸化膜205を形成してパターニングし、半導体基板201の中央部の酸化膜205上にp型、n型のポリシリコンを形成してダイオード206を構成する(図6(d))。この後、半導体基板201の表面に電極(主電極203、第1、第2の配線207、208、ガードリングの電極など)を形成する(図6(e))。さらに、ガードリング211上およびダイオード206と第1、第2の配線207、208上に保護膜213を形成し、裏面に電極204を形成する(図6(f))。
【0029】
このような製造方法を用いれば、フリーホイールダイオード21を製造する従来の製造方法に対し、ポリシリコンによるダイオード206およびそれに通電するための第1、第2の配線207、208を形成するのみで、図5に示す半導体回路20を製造することができる。
(第2実施形態)
上記した第1実施形態では、半導体基板201の表面に酸化膜205を介してポリシリコンによるダイオード206およびそれに通電するための第1、第2の配線207、208を形成するものを示したが、図7に示すように、半導体基板201の表層部にp型の分離島214を形成し、この分離島214にn型拡散層206a、p型拡散層206bを形成してダイオード206を構成するようにしてもよい。なお、ダイオード206に通電するための第1、第2の配線207、208および電極パッド209、210は、図7には図示してないが、第1実施形態と同様、半導体基板201の表面に形成された酸化膜205上に形成されている。
【0030】
ここで、図7に示すように、分離島214には主電極203の一部が接しているため、分離島214は主電極203の電位、すなわちパワー部における基準電位(例えばGND電位)に固定される。また、第1、第2の配線207、208のうち電位が高い方の配線(ダイオード206を構成するp型拡散層206bに接続された配線208)の電位により、ダイオード206は分離島214と逆バイアスされる。したがって、ダイオード206(第2のダイオード22)は、フリーホイールダイオード21を流れる主電流から分離される。
【0031】
このように第2のダイオード22を分離島214と確実に逆バイアスするためには、図2に示す定電流源41を第1、第2のダイオード12、22のアノード側ではなく、カソード側に設け、第2のダイオード22のアノード(図7のp型拡散層)の電位を電源電位に固定するのが好ましい。すなわち、図8に示すように構成するのが好ましい。
(第3実施形態)
上記した第2実施形態では、第2の温度検出素子を拡散ダイオード206で構成するものを示したが、図9に示すように拡散抵抗215で構成するようにしてもよい。この図9に示す構成は、図7に示すn型拡散層206a、p型拡散層206bの替わりに拡散抵抗215を形成したものであって、その他の構成は図7に示すものと同じである。
【0032】
この実施形態においても、分離島214には主電極203の一部が接しているため、分離島214は基準電位(例えばGND電位)に固定され、拡散抵抗215に接続された第1、第2の配線207、208のうち電位が高い方の配線の電位により、拡散抵抗215は分離島214と逆バイアスされる。したがって、拡散抵抗215は、フリーホイールダイオード21を流れる主電流から分離される。
【0033】
なお、この実施形態のように、第2の温度検出素子を拡散抵抗215で構成した場合には、IGBT11の温度を検出するダイオード12と温度特性が異なるため、それと並列接続した構成とすることはできない。したがって、この実施形態では、図4の構成においてダイオード22を拡散抵抗215に置き換え、IGBT11の温度を検出するダイオード12による検出温度電圧を第1の閾値と比較し、フリーホイールダイオード21の温度を検出する拡散抵抗215による検出温度電圧を第2の閾値と比較し、そのいずれかにおいて過熱判定をすると、それを示す信号を駆動回路30に出力する構成となる。
(その他の実施形態)
なお、上記した第1、第2実施形態において、パワー部を流れる電流IcをIGBT11の電流センサ出力端子に接続された電流検出用抵抗50によって検出するものを示したが、それ以外の部位からパワー部を流れる電流Icを検出するようにしてもよい。
【0034】
また、第1、第2の実施形態では、温度検出回路40において、第2の比較器43と閾値切替回路44により、IGBT11に電流が流れていることを判別したときには第1の閾値Vref1を設定し、フリーホイールダイオード21に電流が流れていることを判別したときには第2の閾値Vref2を設定する閾値設定手段を構成し、また第1の比較器32にて、並列接続された第1、第2のダイオード12、22の検出温度電圧Vtempを第1、第2の閾値Vref1、Vref2のいずれか一方と比較して過熱判定を行う判定手段を構成し、また図4に示す選択回路45にて選択手段を構成するものを示したが、それらの構成は、図2に示すようなものに限らず、他の回路構成のものであってもよい。
【0035】
また、上記した実施形態では、半導体パワー素子としてIGBT11を用いるものを示したが、MOSFETなどの素子であってもよい。また、本発明は、図10の昇降圧コンバータを構成するパワー部に適用されるものに限らず、図10の3相のインバータを構成するパワー部に適用してもよく、またその他の回路におけるパワー部に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す図である。
【図2】図1中の温度検出回路40の具体的な構成を示す図である。
【図3】図3に示す温度検出回路40の作動説明に供するタイミングチャートである。
【図4】温度検出回路40の他の具体的な構成を示す図である。
【図5】図1、2に示すフリーホイールダイオード21を構成する半導体回路の模式的な構成を示す図である。
【図6】図5に示す半導体回路の製造方法を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるフリーホイールダイオード21を構成する半導体回路の模式的な構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態における温度検出回路40の具体的な構成を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態におけるフリーホイールダイオード21を構成する半導体回路の模式的な構成を示す図である。
【図10】従来の電気自動車のモータを駆動する装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
11…IGBT、12…第1のダイオード、21…フリーホイールダイオード、22…第2のダイオード、30…駆動回路、40…温度検出回路、41…定電流源、42…第1の比較器、43…第2の比較器、44…閾値切替回路、50…電流検出用抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パワー素子と、この半導体パワー素子に逆並列接続されたフリーホイールダイオードとからなるパワー部と、
前記半導体パワー素子の温度を検出する第1の温度検出素子と、
前記第1の温度検出素子によって検出された温度が第1の閾値を超えたときに過熱判定を行う温度検出回路と、を備えた半導体装置において、
前記フリーホイールダイオードの温度を検出する第2の温度検出素子を備え、
前記温度検出回路は、前記第2の温度検出素子によって検出された温度が前記第1の閾値と異なる第2の閾値を超えたときにも過熱判定を行うことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記パワー部に流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記第1、第2の温度検出素子は、第1、第2のダイオードであって、並列接続され、この並列された前記第1、第2のダイオードの検出温度電圧が前記温度検出回路に入力されるようになっており、
前記温度検出回路は、前記電流検出手段にて検出されたパワー部に流れる電流により、前記半導体パワー素子に電流が流れていることを判別したときには前記第1の閾値を設定し、前記フリーホイールダイオードに電流が流れていることを判別したときには前記第2の閾値を設定する閾値設定手段と、前記並列接続された第1、第2のダイオードの検出温度電圧を前記閾値設定手段にて設定された前記第1、第2の閾値のいずれか一方と比較して前記過熱判定を行う判定手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パワー部に流れる電流を検出する電流検出手段を備え、
前記第1、第2の温度検出素子は、第1、第2のダイオードであって、前記第1、第2のダイオードの検出温度電圧が前記温度検出回路に入力されるようになっており、
前記温度検出回路は、前記電流検出手段にて検出されたパワー部に流れる電流により、前記半導体パワー素子に電流が流れていることを判別したときには前記第1の閾値を設定し、前記フリーホイールダイオードに電流が流れていることを判別したときには前記第2の閾値を設定する閾値設定手段と、前記閾値設定手段が前記第1の閾値を設定しているときに前記第1のダイオードの検出電圧を選択し、前記閾値設定手段が前記第2の閾値を設定しているときに前記第2のダイオードの検出電圧を選択する選択手段と、前記選択手段にて選択された前記第1、第2のダイオードの検出電圧のいずれか一方を前記閾値設定手段にて設定された前記第1、第2の閾値のいずれか一方と比較して前記過熱判定を行う判定手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フリーホイールダイオードと前記第2のダイオードは、同一ICチップに形成され、前記第2のダイオードは、前記フリーホイールダイオードの素子形成領域と分離された分離島に形成された拡散ダイオードであり、前記拡散ダイオードの接続配線の電位により前記拡散ダイオードが前記分離島と逆バイアスされていることを特徴とする請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記フリーホイールダイオードと前記第2の温度検出素子は、同一ICチップに形成され、前記第2の温度検出素子は、前記フリーホイールダイオードの素子形成領域と分離された分離島に形成された拡散抵抗であり、前記拡散抵抗の接続配線の電位により前記拡散抵抗が前記分離島と逆バイアスされていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−87191(P2006−87191A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268103(P2004−268103)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】