説明

半導体装置

【課題】 ノイズによる信号品質の劣化を抑え、かつラッチアップによる回路の誤動作を低減させつつ、良好なアイソレーションを確保することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体基板100内に形成された、抵抗率が10Ωcmよりも大きく1kΩcmよりも小さな第1層103と、半導体基板100内の表面側に、第1層103上方に位置するように形成された第2層105と、第2層105内又は第2層105上に形成された2つの半導体素子109と、2つの半導体素子109の間に位置し、半導体基板100の表面から第1層103に達するように半導体基板100内に形成され、2つの半導体素子109を電気的に分離するトレンチ型絶縁領域111とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースバンド帯域からRF(高周波)帯域における、アナログ回路、デジタル回路あるいはアナログ・デジタル混載回路を構成する半導体素子及び半導体回路が形成された半導体装置に関し、特に素子間・ブロック間の信号干渉を防ぐ半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機や携帯情報端末等で使用されるモジュールに対する小型化・低コスト化の要望はますます強くなってきている。これに対応するために、チップレイアウトの面積縮小、高周波・ベースバンドの1チップ化、及びデジタル・アナログ混載チップ化が推進されている。しかしながら、このような構成をとる半導体装置においては、素子間、ブロック間、あるいはチップ間での信号間干渉が増大し、信号処理に支障がきたされるため、良好なアイソレーション対策を講じなければならない。
【0003】
このようなアイソレーション確保の目的で報告された素子分離に関する従来技術としては、非特許文献1に記載の半導体装置がある。この半導体装置では、図16に示されるように、p型のシリコン基板1000上に形成された、これよりも低抵抗率を有するn型の半導体層中に、ベース1001、コレクタ1003及びエミッタ1002から構成されるバイポーラトランジスタが形成されている。また、このバイポーラトランジスタを挟み込むように、半導体層表面に対して垂直な深さ方向のトレンチ1004が半導体層内に形成されており、トレンチ1004には絶縁物が埋め込まれている。また、そのトレンチ1004は、シリコン基板1000まで到達するように形成されている。
【0004】
このような構成を有する半導体装置においては、トレンチ1004により、半導体層表面に対して平行な横方向への信号干渉が防がれる。また、バイポーラトランジスタが形成された領域、つまり2つのトレンチ1004で挟まれた素子領域の下方には、pn接合空乏層による容量が設けられているので、深さ方向への信号干渉も防がれる。その結果、アイソレーションが確保される。
【0005】
また、素子分離に関する他の従来技術としては、非特許文献2に記載の半導体装置がある。この半導体装置では、図17に示されるように、抵抗率が1kΩcm以上のシリコン基板1101内に、半導体素子が形成されるウェル領域1102が形成されている。
【0006】
このような構成を有する半導体装置においては、半導体素子の周囲にpn接合空乏層による容量が設けられるので、基板内に設けられた2つの半導体素子間の信号干渉が防がれる。また、半導体素子の周囲の基板の抵抗率が高いので、基板を伝播する信号は減衰する。その結果、アイソレーションが確保される。
【0007】
また、素子分離に関する他の従来技術としては、特許文献1に記載の半導体装置がある。この半導体装置では、図18に示されるように、シリコン基板1200内に、内部に絶縁物が埋め込まれたトレンチ1203と、抵抗率が1kΩcm以上の高抵抗層1201と、高抵抗層1201よりも抵抗率の小さな低抵抗層1202とを形成し、トレンチ1203で挟まれる低抵抗層1202内に半導体素子1204を形成している。
【0008】
このような構成を有する半導体装置においては、半導体素子間には1つのトレンチが形成されるので、シリコン基板表面に対して平行な横方向への信号干渉が防がれる。また、半導体素子の下方の基板の抵抗率が高いので、トレンチの下方、すなわち所定の深さより深い位置まで伝播し、横方向に伝播する信号は減衰する。その結果、アイソレーションが確保される。
【非特許文献1】MIKE GOLIO The RF AND MICROWAVE HANDBOOK CRC Press 2000 7-51 Figure 7.43
【非特許文献2】小坂大輔・永田 真(神戸大)・平岡幸生・今西郁夫・前田昌克(松下電器産業(株))・村坂佳隆・岩田 穆((株)エイアールテック CMOSミックストシグナル/RF回路における基板結合対策 集積回路研究会(ICD) 一般講演(実験)
【特許文献1】特開2004−253633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、通常、アナログ回路やデジタル回路では、半導体素子が形成された素子領域から発生した信号は、基板、基板表面あるいは基板表面付近についた寄生容量や抵抗によって、その他の素子領域に伝播する。この信号は、信号発生素子以外の素子、回路あるいはチップにとってはノイズとなって、他部位の信号の質を劣化させる。特に、この問題は、モジュールのレイアウト面積縮小、アナログ・デジタル混載チップ化、及びRF(高周波)ベースバンドの1チップ化が推進されるほど、より顕著になる。
【0010】
しかしながら、非特許文献1に記載の半導体装置では、pn接合空乏層による容量を用いて素子領域の下方への信号伝播を防止しているので、信号に例えば800MHz以上のRF信号が使用された場合、十分高いインピーダンスを確保することができない。その結果、トレンチの下方の基板領域を介して横方向に容易に信号が伝搬し、この伝播した信号が再度上方に伝搬してクロストークが発生する。従って、この半導体装置では、良好なアイソレーションを確保することができない。
【0011】
また、非特許文献2に記載の半導体装置でも同様に、pn接合空乏層による容量を用いて他の半導体素子への信号伝播を防止しているので、信号に800MHz以上のRF信号が使用された場合、十分高いインピーダンスを確保することができない。その結果、クロストークが発生し、この半導体装置でも、良好なアイソレーションを実現することができない。
【0012】
さらに、非特許文献2及び特許文献1に記載の半導体装置では、高抵抗率の領域を基板内の半導体素子の周囲に形成し、半導体素子から漏れた、基板を伝播する信号を減衰させてクロストークを抑制しているが、基板抵抗率をあげればあげるほど、基板から発生する熱雑音も増大する。そして、半導体基板表面に形成された半導体素子は、基板寄生容量等を介してこの熱雑音を拾い上げるので、半導体素子の信号の品質が劣化する。また、基板抵抗率が高いと結晶欠陥ができやすくなるので、pn接合のリーク電流に起因するラッチアップが起こり易くなり、回路動作が不安定になる。
【0013】
さらにまた、特許文献1に記載の半導体装置では、半導体基板内の複数の半導体素子間に、トレンチを1つ形成することで信号干渉を抑えているが、さらによいアイソレーションが必要な場合では、このレイアウトは十分ではない。
【0014】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、ノイズによる信号品質の劣化を抑え、かつラッチアップによる回路の誤動作を低減させつつ、良好なアイソレーションを確保することが可能な半導体装置を提供することを第1の目的とする。
【0015】
また、アイソレーションを向上させることが可能な半導体装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置は、半導体基板内に形成された、抵抗率が10Ωcmよりも大きく1kΩcmよりも小さな第1層と、前記半導体基板内の表面側に、前記第1層上方に位置するように形成された第2層と、前記第2層内又は前記第2層上に形成された2つの半導体素子又は半導体回路と、前記2つの半導体素子又は半導体回路の間に位置し、前記半導体基板の表面から前記第1層に達するように前記半導体基板内に形成され、前記2つの半導体素子又は半導体回路を電気的に分離する分離領域とを備えることを特徴とする。ここで、前記半導体素子はデジタル回路素子であってもよい。
【0017】
これによって、分離領域及び高抵抗の第1層により半導体素子又は半導体回路で発生したノイズの拡散が防止されるので、800MHz以上のRF信号に対しても、良好なアイソレーションを確保することができる。また、第1層の抵抗率が10Ωcmよりも大きく1kΩcmよりも小さな抵抗率に規定されるので、熱雑音及びラッチアップの発生が抑えられる。その結果、回路の誤動作を低減し、信号の品質劣化を抑えることができるので、信号品質の劣化を抑え、かつ回路の誤動作を低減させつつ、良好なアイソレーションを確保することが可能になる。
【0018】
また、前記分離領域は、前記2つの半導体素子又は半導体回路の間に2つ形成されてもよい。
【0019】
これによって、2つの分離領域により半導体素子又は半導体回路間の信号干渉を抑えることができるため、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0020】
また、前記第2層内の前記2つの分離領域の間に形成された、抵抗率が前記第2層よりも大きな高抵抗領域をさらに備えてもよい。
【0021】
これによって、高抵抗領域により半導体素子又は半導体回路間の信号干渉を抑えることができるため、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0022】
また、前記第2層内の前記2つの分離領域の間に形成された、電位が固定され、かつ抵抗率が前記第2層よりも小さな低抵抗領域をさらに備えてもよい。
【0023】
これによって、低抵抗領域を介してノイズを外部へ排出できるため、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0024】
また、前記2つの分離領域のうちの一方である第1分離領域は、1つの前記半導体素子又は半導体回路を取り囲むように形成され、前記2つの分離領域のうちの他方である第2分離領域は、前記第1分離領域を取り囲むように形成されてもよい。
【0025】
これによって、隣接する半導体素子又は半導体回路間の距離を増大させ、高抵抗率の第1層による信号の減衰効果を高めることができるので、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0026】
また、前記第2層と接するように前記第1層内に形成された、前記第1層と異なる導電型の埋め込み層をさらに備えてもよい。
【0027】
これによって、半導体素子又は半導体回路の下方にpn接合空乏層が形成されるので、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0028】
また、前記第2層と接するように前記第1層内に形成された、抵抗率が前記第1層よりも小さな埋め込み領域をさらに備えてもよい。
【0029】
これによって、低抵抗率の埋め込み領域を介してノイズを外部へ排出できるため、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る半導体装置によれば、ノイズによる信号品質の劣化を抑え、かつ回路の誤動作を低減させつつ、良好なアイソレーションを確保することが可能になる。また、チップ面積の増大を抑えつつ、ラッチアップによる回路の誤動作を低減させることが可能になる。すなわち、安定した回路動作を維持しつつ、半導体装置を小型化することができる。なお、これらの効果は、周波数帯域や使用デバイス又はシステムによって限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態における半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【0033】
この半導体装置では、第1層103、第2層105及びトレンチ型絶縁領域111が半導体基板100内に形成されている。
【0034】
第1層103は、半導体基板100内に形成された、10Ωcmよりも大きく1kΩcmよりも小さな高抵抗率を有する第1導電型の高抵抗基板である。
【0035】
第2層105は、半導体基板100内の表面側に、第1層103の上方に位置するように形成され、第1層103よりも小さな低抵抗率、例えば1Ωcmの低抵抗率を有する第2導電型の低抵抗基板である。第2層105の所定の部位内には、半導体素子又は半導体回路(以下、単に半導体素子という)109が複数形成されている。なお、半導体素子109としては、例えばアナログ回路、デジタル回路あるいはRF回路等の集積回路、バイポーラトランジスタ、あるいはMOSトランジスタ等のアクティブ素子、又は抵抗、インダクタあるいはキャパシタ等のパッシブ素子がある。
【0036】
このとき、第1層103及び第2層105は、エピタキシャル成長法により形成されてもよいし、基板内へのイオン注入により形成されてもよい。
【0037】
トレンチ型絶縁領域111は、半導体素子109を取り囲むように位置し、2つの半導体素子109を電気的に分離する。トレンチ型絶縁領域111は、半導体基板100の表面から第2層105を横切って半導体基板100表面に対して垂直な深さ方向に第2層105を分断し、第1層103に達する深さ、例えば3ミクロン(μm)の深さを有し、内部に絶縁物が埋め込まれたトレンチにより構成される。
【0038】
以上のような構造を有する半導体装置において、半導体素子109が動作することで、信号(その他の素子又は回路にとってはノイズ)又は信号に起因するノイズが発生するが、何も対策を打たなければ、その信号又はそれに起因するノイズは、半導体基板100表面に対して平行な横方向と、深さ方向とに拡散していく。
【0039】
しかしながら、上記半導体装置においては、半導体素子109を取り囲むようにトレンチ型絶縁領域111が形成されているため、信号又はそれに起因するノイズの横方向への伝播は抑制される。また、トレンチ型絶縁領域111により横方向に伝播することができない信号又はそれに起因するノイズは、深さ方向への経路を通るしかないが、トレンチ型絶縁領域111は基板表面から第1層103に達するように形成されているため、深さ方向の信号経路には、高抵抗率(10Ωcmより大きく1kΩcmよりも小さい抵抗率)の第1層103が存在することとなり、深さ方向に伝播する信号又はそれに起因するノイズは第1層103により減衰される。従って、この構造により、良好なアイソレーションを確保することができる。
【0040】
ところで、回路誤動作の原因の一つにラッチアップがあるが、これは、pn接合のリーク電流が基板抵抗を流れ、ΔV(=基板抵抗×リーク電流)だけ基板電圧を持ち上げるこ
とが原因である。このとき、シリコン基板は、抵抗率の高いものほど結晶欠陥を多く有するため、基板の高抵抗化はリーク電流増加の原因となる。従って、良好なアイソレーションを確保するために基板を高抵抗化した場合には、上記ΔVを規定する基板抵抗及びリー
ク電流の両方の値が増大するので、ラッチアップが起こり易くなり、回路誤動作が起こり易くなる。
【0041】
このとき、上記半導体装置において、レイアウト的には、基板電位を固定する部位の位置が半導体素子から離れるほど、リーク電流が流れる経路が長くなるため、基板抵抗は増大する。また、その部位の面積が小さいと、寄生抵抗が増加する。従って、ラッチアップの発生を抑える方法として、半導体素子直近に、十分に大きな面積の基板電位を固定する部位を設ける方法が考えられる。しかしながら、この方法は、結果的に、チップ面積増大につながる。
【0042】
また、抵抗は、熱雑音の原因であり、雑音電圧VTは、VT=(4kTBR)1/2で決定される。ここで、kはボルツマン定数(J/K)、Bは雑音帯域幅(Hz)、Tは絶対温度(K)、Rは抵抗値(Ω)を示している。そして、基板抵抗に起因する熱雑音は、基板の寄生容量を介して、半導体素子に付加される。従って、良好なアイソレーションを確保するために基板を高抵抗化した場合には、上の式に示されるように、熱雑音は基板抵抗率が高いほど大きくなり、半導体素子に多くのノイズが付加されるため、信号の品質劣化が大きくなる。
【0043】
従って、回路の誤動作を低減し、信号の品質劣化を抑えるためには、必要以上に基板抵抗を増大させないことが必要である。
【0044】
上記半導体装置において、周波数100MHzのRF信号に対するアイソレーションの抵抗率(第1層103の抵抗率)依存性を示す図2の実験結果のグラフから分かるように、周波数100MHzのRF信号に対して、アイソレーションは基板抵抗率に比例して増加するが、抵抗率1kΩcm以上で飽和する。また、周波数1GHzのRF信号に対するアイソレーションの抵抗率(第1層103の抵抗率)依存性を示す図3の実験結果のグラフから分かるように、RF信号の周波数が増大するに従ってアイソレーションが飽和する抵抗率が低くなり、抵抗率100Ωcmを有する基板と抵抗率1kΩcmを有する基板とで、アイソレーション効果に差異はなくなる。すなわち、上記半導体装置において、周波数100MHz以上のRF信号に対しては、アイソレーションは、抵抗率1kΩcmよりも小さな所定の抵抗値を境にして、これ以上抵抗率を増大させても良くならなくなる。
【0045】
また、熱雑音の抵抗率(第1層103の抵抗率)依存性を示す図4の実験結果のグラフから分かるように、基板抵抗に起因する熱雑音電圧は、基板抵抗率に比例して増大する。従って、基板抵抗率を1kΩcm以上に設定すると、アイソレーションは飽和し、ノイズのみが増大するという不具合が生じる。また、前述のように、回路誤動作の要因を増大させることにもなる。なお、図4において、熱雑音は、第1層103の抵抗率が10Ωcmのときの熱雑音を基準とした、基準からの熱雑音の劣化量を示している。
【0046】
また、図2、図3の実験結果のグラフから分かるように、第1層103の抵抗率が一般的な半導体基板の抵抗率である10Ωcm近傍にある場合には、高抵抗にするほど、アイソレーション効果が向上する。
【0047】
以上の結果を考慮すると、高抵抗基板である第1層103の抵抗率の下限を一般的な半導体基板の抵抗率である10Ωcmとして、上限を1kΩcmに設定することで、周波数100MHz以上のRF信号に対して、良好なアイソレーションを確保しつつ、回路の誤動作を低減し、信号の品質劣化を抑えることが可能になるのがわかる。
【0048】
このとき、周波数1GHzより大きいRF信号に対しても、約100Ωcmの抵抗率でアイソレーションが飽和するので、第1層103の抵抗率の下限を100Ωcmにしてもよい。これによって、さらに良好なアイソレーションを実現することが可能となる。
【0049】
以上のように、本実施の形態の半導体装置によれば、ノイズによる信号品質の劣化を抑え、かつラッチアップによる回路の誤動作を低減させつつ、良好なアイソレーションを確保することが可能になる。また、チップ面積の増大を抑えつつ、ラッチアップによる回路の誤動作を低減させることが可能になる。
【0050】
なお、本実施の形態の半導体装置において、半導体素素子109は、第2層105内に形成されるとしたが、第2層105上に形成されてもよい。
ところで、回路誤動作の原因の一つにラッチアップ
【0051】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【0052】
この半導体装置は、第1層103内に形成された第1埋め込み層213と、第2層105内に形成された第2埋め込み層215とを備えるという点で第1の実施の形態の半導体装置とは異なる。
【0053】
第1埋め込み層213は、第2層105と接するように形成された、第1層103よりも低抵抗率の第2導電型の低抵抗層である。
【0054】
第2埋め込み層215は、トレンチ型絶縁領域111と半導体素子109との間に、半導体素子109を取り囲むように位置する、第1層103よりも低抵抗率の第2導電型の低抵抗層である。第2埋め込み層215は、半導体基板100の表面から第2層105を横切って深さ方向に第2層105を分断して第1埋め込み層213に達する深さを有する。
【0055】
このとき、第1埋め込み層213及び第2埋め込み層215は、第1層103及び第2層105内に、例えばP型不純物(ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)等)のイオンを埋め込んで形成される。
【0056】
以上のように本実施の形態の半導体装置によれば、半導体素子109は、低抵抗の第1埋め込み層213及び第2埋め込み層215により取り囲まれる。よって、第1埋め込み層213及び第2埋め込み層215を外部のグランド線(図示せず)に接続することにより、ノイズを外部へ排出できるため、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0057】
また、本実施の形態の半導体装置によれば、半導体素子109下方の第1埋め込み層213と第1層103との間にpn接合空乏層が形成されるので、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0058】
(第3の実施の形態)
図6(a)は、第3の実施の形態に係る半導体装置の平面図であり、図6(b)は、同半導体装置の断面図(図6(a)のA−A’線における断面図)である。
【0059】
この半導体装置は、2つの半導体素子109の間に複数のトレンチ型絶縁領域、つまり第1トレンチ型絶縁領域311及び第2トレンチ型絶縁領域321が形成されているという点で第1の実施の形態の半導体装置とは異なる。
【0060】
第1トレンチ型絶縁領域311及び第2トレンチ型絶縁領域321は、それぞれ異なる半導体素子109を取り囲むように位置し、取り囲む半導体素子109を他の半導体素子109から電気的に分離する。第1トレンチ型絶縁領域311及び第2トレンチ型絶縁領域321は、半導体基板100の表面から第2層105を横切って深さ方向に第2層105を分断し、第1層103に達する深さ、例えば3ミクロン(μm)の深さを有し、内部に絶縁物が埋め込まれたトレンチにより構成される。
【0061】
以上のように本実施の形態の半導体装置によれば、複数の半導体素子109は、それぞれ異なるトレンチ型絶縁領域より取り囲まれる、よって、素子間の信号干渉を確実に抑えることができるため、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0062】
(第4の実施の形態)
図7(a)は、第4の実施の形態における半導体装置の平面図であり、図7(b)は、同半導体装置の断面図(図7(a)のA−A’線における断面図)である。
【0063】
この半導体装置は、異なる半導体素子109を取り囲む2つのトレンチ型絶縁領域間に高抵抗領域417を形成しているという点で第3の実施の形態の半導体装置とは異なる。
【0064】
高抵抗領域417は、第1トレンチ型絶縁領域311と第2トレンチ型絶縁領域321との間に位置するように第2層105内に形成された、第1層103及び第2層105よりも高抵抗率の高抵抗層(例えば、酸化層)である。このとき、高抵抗領域417は、半導体基板100の表面から第2層105を横切って深さ方向に第2層105を分断し、第1層103に達する深さを有してもよい。
【0065】
以上のように本実施の形態の半導体装置によれば、2つの半導体素子109をそれぞれ取り囲む第1トレンチ型絶縁層311と第2トレンチ型絶縁層321との間の第2層105内には、第1層103及び第2層105よりも、高抵抗率を有する高抵抗領域417が形成される。よって、素子間の信号干渉を確実に抑えることができるため、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0066】
なお、本実施の形態の半導体装置において、2つのトレンチ型絶縁領域間の第2層105内には高抵抗領域417が形成されるとした。しかし、例えば、第2層105への第2導電型の不純物の高濃度ドーピング又は第2層105上への金属層の形成により、2つのトレンチ型絶縁領域間の第2層105内には、第2層105よりも低い抵抗率の電位固定された低抵抗領域が形成されてもよい。これにより、ノイズを外部へ排出できるため、高抵抗領域を形成した場合と同様にアイソレーションを向上させることが可能になる。
【0067】
(第5の実施の形態)
図8(a)は、第5の実施の形態における半導体装置の平面図であり、図8(b)は、同半導体装置の断面図(図8(a)のA−A’線における断面図)である。
【0068】
この半導体装置は、半導体素子109を2重に取り囲む複数のトレンチ型絶縁領域、つまり第3トレンチ型絶縁領域511及び第4トレンチ型絶縁領域521が形成されているという点で第1の実施の形態の半導体装置とは異なる。
【0069】
第3トレンチ型絶縁領域511は、半導体素子109を取り囲むように位置し、取り囲む半導体素子109を他の半導体素子109から電気的に分離する。第3トレンチ型絶縁領域511は、半導体基板100の表面から第2層105を横切って深さ方向に第2層105を分断し、第1層103に達する深さ、例えば3ミクロン(μm)の深さを有し、内部に絶縁物が埋め込まれたトレンチにより構成される。
【0070】
第4トレンチ型絶縁領域521は、第3トレンチ型絶縁領域511を取り囲むように位置し、第3トレンチ型絶縁領域511により取り囲まれる半導体素子109を他の半導体素子109から電気的に分離する。第4トレンチ型絶縁領域511は、半導体基板100の表面から第2層105を横切って深さ方向に第2層105を分断し、第1層103に達する深さ、例えば3ミクロン(μm)の深さを有し、内部に絶縁物が埋め込まれたトレンチにより構成される。
【0071】
以上のように本実施の形態の半導体装置によれば、半導体素子109を取り囲むトレンチ型絶縁領域が一部の半導体素子に対して、2重以上設けられる。よって、隣接する半導体素子間の距離を増大させ、高抵抗率の第1層による信号の減衰効果を高めることができるので、アイソレーションを向上させることが可能になる。
【0072】
(実験例)
次に、第1、第3及び第4の実施の形態における半導体装置の実験例を示す。
【0073】
テストパターンとしては、第1の実施の形態における半導体装置に対応する第1テストパターン、第3の実施の形態における半導体装置に対応する第2テストパターン、及び第4の実施の形態における半導体装置に対応する第3テストパターンの3つを用意した。
【0074】
第1テストパターンは、図9に示すような断面構造を有する。すなわち、第1テストパターンは、S1ポート51及びS2ポート53につながれた2つの半導体素子(フォトダイオード)109のうちの、S1ポート51につながれた半導体素子(フォトダイオード)109のみがトレンチ型絶縁領域111で取り囲まれた断面構造を有する。
【0075】
第2テストパターンは、図10に示すような断面構造を有する。すなわち、第2テストパターンは、S1ポート51及びS2ポート53につながれた2つの半導体素子(フォトダイオード)109の両方が第1トレンチ型絶縁領域311及び第2トレンチ型絶縁領域321でそれぞれ取り囲まれた断面構造を有する。
【0076】
第3テストパターンは、図11に示すような断面構造を有する。すなわち、第3テストパターンは、S1ポート51及びS2ポート53につながれた2つの半導体素子(フォトダイオード)109の両方が第1トレンチ型絶縁領域311及び第2トレンチ型絶縁領域321でそれぞれ取り囲まれ、第1トレンチ型絶縁領域311と第2トレンチ型絶縁領域321との間に高抵抗領域417が形成された断面構造を有する。
【0077】
このとき、ウェハとして標準的な0.25μmCMOSミックストシグナルプロセスで試作した厚さ300umのウェハを用いて、第1層103の抵抗率を、標準的な公称抵抗率10Ωcmの高抵抗基板と比較するために、100Ωcm、1kΩcm、及び2kΩcmとし、第2層105の抵抗率を1Ωcmとし、トレンチ型絶縁領域111、第1トレンチ型絶縁領域311及び第2トレンチ型絶縁領域321の深さを3μmとして実験を行った。
【0078】
図12〜15は、各テストパターンに対して行われたアイソレーションの周波数依存性の実験結果を示すグラフである。図12は、第1層103の抵抗率が10Ωcmの場合における各テストパターンのS1ポート51とS2ポート53との間のアイソレーションの周波数依存性を示している。また、図13は、第1層103の抵抗率が100Ωcmの場合における各テストパターンのS1ポート51とS2ポート53との間のアイソレーションの周波数依存性を示している。また、図14は、第1層103の抵抗率が1kΩcmの場合における各テストパターンのS1ポート51とS2ポート53との間のアイソレーションの周波数依存性を示している。また、図15は、第1層103の抵抗率が2kΩcmの場合における各テストパターンのS1ポート51とS2ポート53との間のアイソレーションの周波数依存性を示している。
【0079】
図12〜15から、第2テストパターン及び第3テストパターンは第1テストパターンよりも5dB〜20dB以上アイソレーションが向上するため、複数の半導体素子の間に、トレンチ型絶縁領域を複数形成することで、より高いアイソレーション効果が得られることがわかる。また、第3テストパターンは周波数1GHz以上のRF信号に対して、第2テストパターンよりも、5dB程度のアイソレーション向上を示すため、トレンチ型絶縁領域の間に高抵抗領域を形成することで、とりわけ1GHz以上のRF信号に対して、高いアイソレーション効果が得られることがわかる。
【0080】
以上、本発明の半導体装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態の限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、半導体装置に利用でき、特にベースバンド帯域からRF帯域における、アナログ回路、デジタル回路あるいはアナログ・デジタル混載回路を構成する半導体素子及び半導体回路が形成された半導体装置等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態における半導体装置の断面図である。
【図2】周波数が100MHzのRF信号に対するアイソレーションの抵抗率(第1層の抵抗率)依存性を示すグラフである。
【図3】周波数が1GHzのRF信号に対するアイソレーションの抵抗率(第1層の抵抗率)依存性を示すグラフである。
【図4】熱雑音の抵抗率(第1層の抵抗率)依存性を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図6】(a)本発明の第3の実施の形態における半導体装置の平面図である。(b)同実施の形態における半導体装置の断面図(図6(a)のA−A’線における断面図)である。
【図7】(a)本発明の第4の実施の形態における半導体装置の平面図である。(b)同実施の形態における半導体装置の断面図(図7(a)のA−A’線における断面図)である。
【図8】(a)本発明の第5の実施の形態における半導体装置の平面図である。(b)同実施の形態における半導体装置の断面図(図8(a)のA−A’線における断面図)である。
【図9】実験で使用した第1のテストパターンの構造を示す断面図である。
【図10】実験で使用した第2のテストパターンの構造を示す断面図である。
【図11】実験で使用した第3のテストパターンの構造を示す断面図である。
【図12】第1層の抵抗率が10Ωcm時の第1、第2、第3のテストパターンにおけるアイソレーションの周波数依存性を示すグラフである。
【図13】第1層の抵抗率が100Ωcm時の第1、第2、第3のテストパターンにおけるアイソレーションの周波数依存性を示すグラフである。
【図14】第1層の抵抗率が1kΩcm時の第1、第2、第3のテストパターンにおけるアイソレーションの周波数依存性を示すグラフである。
【図15】第1層の抵抗率が2kΩcm時の第1、第2、第3のテストパターンにおけるアイソレーションの周波数依存性を示すグラフである。
【図16】非特許文献1に記載の従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図17】非特許文献2に記載の従来の半導体装置の構造を示す斜視図である。
【図18】特許文献1に記載の従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
51 S1ポート
53 S2ポート
100 半導体基板
103 第1層
105 第2層
109、1204 半導体素子
111 トレンチ型絶縁領域
213 第1埋め込み層
215 第2埋め込み層
311 第1トレンチ型絶縁領域
321 第2トレンチ型絶縁領域
417 高抵抗領域
511 第3トレンチ型絶縁領域
521 第4トレンチ型絶縁領域
1000、1101、1200 シリコン基板
1001 ベース
1002 エミッタ
1003 コレクタ
1004、1203 トレンチ
1102 ウェル領域
1201 高抵抗層
1202 低抵抗層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板内に形成された、抵抗率が10Ωcmよりも大きく1kΩcmよりも小さな第1層と、
前記半導体基板内の表面側に、前記第1層上方に位置するように形成された第2層と、
前記第2層内又は前記第2層上に形成された2つの半導体素子又は半導体回路と、
前記2つの半導体素子又は半導体回路の間に位置し、前記半導体基板の表面から前記第1層に達するように前記半導体基板内に形成され、前記2つの半導体素子又は半導体回路を電気的に分離する分離領域とを備える
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記分離領域は、前記2つの半導体素子又は半導体回路の間に2つ形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2層内の前記2つの分離領域の間に形成された、抵抗率が前記第2層よりも大きな高抵抗領域をさらに備える
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2層内の前記2つの分離領域の間に形成された、電位が固定され、かつ抵抗率が前記第2層よりも小さな低抵抗領域をさらに備える
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記2つの分離領域のうちの一方である第1分離領域は、1つの前記半導体素子又は半導体回路を取り囲むように形成され、
前記2つの分離領域のうちの他方である第2分離領域は、前記第1分離領域を取り囲むように形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2層と接するように前記第1層内に形成された、前記第1層と異なる導電型の埋め込み層をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2層と接するように前記第1層内に形成された、抵抗率が前記第1層よりも小さな埋め込み領域をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体素子はデジタル回路素子である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−67012(P2007−67012A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248269(P2005−248269)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】