説明

半導体記憶装置

【課題】TFTなどのトランジスタ特性がばらつく状況や、RF回路から電源が供給され
電源が安定しない状況で、SRAMを作製する場合、従来の1つのメモリセルに6つのト
ランジスタの構成では読み出し時にメモリセルが保持する値が書き換わる誤書き込みが発
生してしまう。
【解決手段】SRAMのメモリセルは、書き込みの回路と読み出しの回路を分離する事に
より、SRAMの誤書き込みを防ぎ、安定した動作を行うことを可能にする。また、書き
込みのタイミングを考慮する事により、誤書き込みを起こさず、より確実に書き込みの動
作を行うことが可能なSRAMを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶機能を有する半導体装置(半導体記憶装置)及び当該装置の動作方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(大規模集積回路)の処理が複雑になるのに伴い、LSI内部に存在する記憶装
置(メモリ)の容量が増大している。特に、CPU(Central Processi
ng Unit)に内蔵されるキャッシュメモリなどは、非常に容量が大きくなってしま
う。キャッシュメモリは、使用頻度の高いデータを蓄えておき、処理速度の高速化を目指
すためのメモリであり、CPUの処理能力が高まるにつれ、必要とする容量が大きくなっ
てしまう。その結果、キャッシュメモリがLSIの面積全体に占める割合が非常に大きな
ものとなる。面積が大きい事により、LSI全体でのチップの歩留まり、消費電力等に対
する影響も大きくなっている。
【0003】
図5に従来のメモリセルを示す。インバータループ108は、2つのNチャネル型トラ
ンジスタ111、113と2つのPチャネル型トランジスタ112、114から構成され
る。メモリセルの入力端子104は電源線であり、入力端子105はグランド線であり、
メモリセルは電源線とグランド線により電源電圧が供給される。
【0004】
Nチャネル型トランジスタ106、107のゲート端子はメモリセルの入力端子103
と接続されている。また、Nチャネル型トランジスタ106、107のドレイン端子はそ
れぞれメモリセルの入力端子101、102と接続され、ソース端子はそれぞれインバー
タループ108のノード109、110と接続されている。
【0005】
図5のメモリセルに値(データともよぶ)を書き込む場合には、書き込みのワード線で
ある入力端子103をHIGH状態に保持して、Nチャネル型トランジスタ106、10
7をオンの状態にする。このとき、入力端子101に書き込む値を、入力端子102には
書き込む値の反転した値を保持してメモリセルに値を書き込む。
【0006】
図5のメモリセルから値を読み出す時には、入力端子103をHIGH状態に保持して
、Nチャネル型トランジスタ106、107をオンの状態にする。このとき、入力端子1
01、102をHIGH状態とLOW状態との間の電位(以下、中間電位と記す)に保持
しメモリセルから値を読み出し、読み出し回路において電位差を増幅して値を読み出す。
【0007】
6つのトランジスタを用いたメモリセルは、SRAM(Static Random
Access Memory)を構成することができる。このようにSRAMを作製する
場合、入力端子101、102からの電流によりメモリセルの値が書き換わらない事が必
要とされる。具体的には、読み出し時にNチャネル型トランジスタ106、107をオン
の状態にしたときに、中間電位に保持された入力端子101、102からの電流によりメ
モリセルの値が書き換わらない必要がある。
【0008】
しかしながら、トランジスタの閾値電圧等のばらつきが大きいと、読み出し時にメモリ
セルの値が書き換わってしまう。RF回路は、トランジスタの閾値電圧に敏感であり、特
にトランジスタとして薄膜トランジスタを用いる場合、トランジスタの閾値電圧のばらつ
きによる誤動作が生じてしまう。
【0009】
以下、図5を用いてトランジスタの閾値電圧のばらつきが大きいと、読み出し時にメモ
リセルの値が書き換わる場合について電源電圧を5Vとして説明する。
【0010】
読み出し時には入力端子101、102が中間電位に保持され、オンの状態になったN
チャネル型トランジスタ106、107を通ってメモリセルに流れ込む電流と、メモリセ
ル内のインバータループ108内のトランジスタから供給される電流によって、インバー
タループ108内の電位が決定される。
【0011】
これらのトランジスタの閾値電圧のばらつきが設計時に想定された範囲内であれば、読
み出し時にメモリセルの値の誤書き込みは起こらない。例えばNチャネル型トランジスタ
113の閾値電圧が高めで、Pチャネル型トランジスタ112の閾値電圧が低めで、ノー
ド109が5Vでノード110が0Vに保持された状態でNチャネル型トランジスタ10
6、107、つまり入力端子がオンである場合について説明する。
【0012】
Nチャネル型トランジスタ106、107がオンの状態になると、入力端子101から
電流がNチャネル型トランジスタ106を通って流れ込む。このとき、オンの状態になっ
ているPチャネル型トランジスタ112を通って電源から流れる電流によってノード10
9は、瞬間的に電源電圧5Vより低下し中間電位2.5Vよりも少し高い電位になる。し
たがってNチャネル型トランジスタ113とPチャネル型トランジスタ114で構成され
るインバータの出力であるノード110は0Vより上昇する。
【0013】
この時、Nチャネル型トランジスタ113の閾値電圧が高く、中間電位より少し高い電
位でのNチャネル型トランジスタ113を流れる電流の値が小さくなるため、Pチャネル
型トランジスタ114からの電流が大きくなり、ノード110は5Vに書き換わってしま
う。
【0014】
このようにトランジスタの特性のばらつきが大きい場合には、図5に示すような6つの
トランジスタの構成は、SRAMを作るのには適さないため、書き込みのポートと読み出
しのポートを分ける事により、読み出し時に誤った値を書き込まないようにすることがで
きる。例えば、特許文献1に開示される、書き込み用ポートと、読み出し用ポートとを分
ける構成によって、読みだし時に誤った値を書き込まないようにすることができる。なお
書き込み用ポートと、読み出し用ポートとを分ける構成によって、メモリセルの高集積化
を図ることができるため、特許文献1ではこれを課題としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平8−161890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に記載のメモリセルの構成で、書き込みのポートと読み出しのポートを分け
る事により、読み出し時に誤書き込みが起こる可能性はなくなる。しかし、このメモリセ
ルの構成の場合、読み出し回路にプリチャージ回路などの複雑な回路を必要とする。なお
、プリチャージ回路は読み出し回路に設けられ、読み出し以外の期間に読み出し用のデー
タ線をHIGHの状態に保持するものである。
【0017】
そこで本発明は、トランジスタの特性がばらつく場合でも誤書き込みを起こさず、複雑
な読み出し回路を必要としないSRAMを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を鑑み本発明は、メモリセルの書き込みの系と、読み出しの系が分かれたメモリ
セルであって、プリチャージ回路等の複雑な回路を要しないことを特徴とする。
【0019】
以下に、具体的な本発明について示す。
【0020】
本発明の一形態は、アナログスイッチと、アナログスイッチの入力端子(第1の端子、
入出力端子ともよぶ)に接続された第1のデータ線と、アナログスイッチの出力端子(第
2の端子、入出力端子ともよぶ)に接続された第1のインバータと、第1のインバータの
出力端子に接続された第2のインバータと、第2のインバータの入力端子及び、アナログ
スイッチの出力端子に接続されたクロックドインバータと、クロックドインバータの出力
端子に接続された第2のデータ線と、を有し、アナログスイッチ及びクロックドインバー
タには、それぞれ、複数のワード線が接続されることを特徴とする半導体記憶装置である

【0021】
本発明の別形態は、アナログスイッチと、アナログスイッチの入力端子に接続された第
1のデータ線と、アナログスイッチの出力端子に接続された第1のインバータと、第1の
インバータの出力端子に接続された第2のインバータと、第2のインバータの入力端子及
び、アナログスイッチの出力端子に接続されたクロックドインバータと、クロックドイン
バータの出力端子に接続された第2のデータ線と、を有し、アナログスイッチを構成する
第1のトランジスタのゲートに第1のワード線が接続され、前記アナログスイッチを構成
する第2のトランジスタのゲートに第2のワード線が接続され、クロックドインバータを
構成する第3のトランジスタのゲートに第3のワード線が接続され、クロックドインバー
タを構成する第4のトランジスタのゲートに第4のワード線が接続されることを特徴とす
る半導体記憶装置である。
【0022】
本発明の一形態は、アナログスイッチと、アナログスイッチの入力端子に接続された第
1のデータ線と、アナログスイッチの出力端子に接続された第1のインバータと、第1の
インバータの出力端子に接続された第2のインバータと、第2のインバータの入力端子及
び、アナログスイッチの出力端子に接続されたクロックドインバータと、クロックドイン
バータの出力端子に接続された第2のデータ線と、を有し、アナログスイッチ及び前記ク
ロックドインバータには、それぞれ、複数のワード線が接続されることを特徴とする半導
体記憶装置であって、アナログスイッチに接続されたワード線の一をHIGH状態に保持
し、ワード線の他をLOW状態に保持することにより、第1のデータ線より入力されたデ
ータに基づいた値が書き込まれ、クロックドインバータに接続されたワード線の一をHI
GH状態に保持し、ワード線の他をLOW状態に保持することにより、書き込まれた値が
前記第2のデータ線より読み出されることを特徴とする半導体記憶装置の動作方法である

【0023】
本発明の別形態は、アナログスイッチと、アナログスイッチの入力端子に接続された第
1のデータ線と、アナログスイッチの出力端子に接続された第1のインバータと、第1の
インバータの出力端子に接続された第2のインバータと、第2のインバータの入力端子及
び、アナログスイッチの出力端子に接続されたクロックドインバータと、クロックドイン
バータの出力端子に接続された第2のデータ線と、を有し、アナログスイッチを構成する
第1のトランジスタのゲートに第1のワード線が接続され、アナログスイッチを構成する
第2のトランジスタのゲートに第2のワード線が接続され、クロックドインバータを構成
する第3のトランジスタのゲートに第3のワード線が接続され、クロックドインバータを
構成する第4のトランジスタのゲートに第4のワード線が接続されることを特徴とする半
導体記憶装置であって、第1のワード線をHIGH状態とし、第2のワード線をLOW状
態とすることにより、第1のデータ線より入力されたデータに基づいた値が書き込まれ、
第3のワード線をHIGH状態とし、第4のワード線をLOW状態とすることにより、書
き込まれた値が第2のデータ線より読み出されることを特徴とする半導体記憶装置の動作
方法である。
【0024】
本発明の半導体記憶装置において、アナログスイッチは、Nチャネル型トランジスタと、
Pチャネル型トランジスタとを有する。また本発明の半導体記憶装置において、クロック
ドインバータは、複数のNチャネル型トランジスタと、複数のPチャネル型トランジスタ
とを有する。
【0025】
本発明の別形態は、メモリセルを有し、前記メモリセルは、アナログスイッチ、第1の
インバータ、第2のインバータ及びクロックドインバータを有する。アナログスイッチが
オンになり、クロックドインバータがオフになり、メモリセルにデータが書き込まれる。
アナログスイッチがオフになり、クロックドインバータがオンになり、メモリセルからデ
ータが読み出される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の半導体記憶装置と、その動作方法を用いることにより、トランジスタの特性が
ばらつく場合でも確実に書き込み、読み出しを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のメモリセル構成を示した図。
【図2】一般的なSRAMのタイミングチャート。
【図3】本発明のSRAMの第1のタイミングチャート。
【図4】本発明のSRAMの第2のタイミングチャート。
【図5】一般的なSRAMのメモリセルの構成図。
【図6】本発明の無線チップの作製工程を示す図。
【図7】本発明の無線チップの作製工程を示す図。
【図8】本発明の無線チップの作製工程を示す図。
【図9】本発明のSRAMを搭載しうる無線チップのアンテナの形状を示した図。
【図10】本発明のSRAMを搭載しうるCPUを示したブロック図。
【図11】本発明のSRAMを搭載しうる無線チップの写真。
【図12】本発明のSRAMを搭載しうる無線チップのブロック図。
【図13】本発明のメモリセルが有するアナログスイッチを示す図。
【図14】本発明のメモリセルが有するクロックドインバータを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる
態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその
形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実
施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するた
めの全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰
り返しの説明は省略する。
【0029】
(実施の形態1)
本発明のSRAMのメモリセルの回路図を図1に示す。図1において、メモリセル20
0は、アナログスイッチ205、ダブルゲートのインバータ206、インバータ207、
クロックドインバータ208を有する。ダブルゲートのインバータは電流の供給能力が低
いため、書き込み時に確実に書き込むことが可能となる。そのため本実施の形態では、ダ
ブルゲートのインバータを用いて説明するが、シングルゲートのインバータを用いてもよ
い。
【0030】
なお、ダブルゲートのインバータは、ダブルゲートのNチャネル型トランジスタとダブ
ルゲートのPチャネル型トランジスタを有する。ダブルゲートのトランジスタは、2つの
ゲート電極と2つのチャネル形成領域を含む。ダブルゲートのトランジスタは、2つのチ
ャネル形成領域を含むために、チャネル長が長い。そして、ダブルゲートのトランジスタ
は、チャネル長が長いために、電流の供給能力が低い。なお、電流の供給能力が低くする
ために、トランジスタのチャネル幅を短く設計してもよい。
【0031】
アナログスイッチ205の入力端子は入力配線209と接続され、出力端子には配線(
内部ノードと記す)211が接続されている。アナログスイッチは、図13に示すように
Nチャネル型トランジスタとPチャネル型トランジスタを有し、それらの一方の電極同士
、又は他方の電極同士が接続される。図13(A)には(1)から(4)の端子を有する
アナログスイッチの回路記号を示し、図13(B)には図13(A)に相当する回路図を
示す。このようなアナログスイッチを構成するNチャネル型トランジスタのゲートには入
力配線203が接続され、Pチャネル型トランジスタのゲートには入力配線202が接続
されている。
【0032】
クロックドインバータ208の入力端子は内部ノード211と接続され、出力端子はメ
モリセルの入力配線210と接続されている。クロックドインバータは、図14に示すよ
うに複数のNチャネル型トランジスタと、複数のPチャネル型トランジスタとを有し、こ
れらが順に直列接続されている。図14(A)には(1)から(4)の端子を有するクロ
ックドインバータの回路記号を示し、図14(B)には図14(A)に相当する回路図を
示す。クロックドインバータ208を構成するNチャネル型のスイッチングの入力端子、
つまりNチャネル型トランジスタはメモリセルの入力配線204と接続され、Pチャネル
型のスイッチングの入力端子、つまりPチャネル型トランジスタはメモリセルの入力配線
201に接続されている。
【0033】
インバータ207の入力端子は内部ノード211と接続され、出力端子は、ダブルゲー
トのインバータ206の入力端子と接続されている。ダブルゲートのインバータ206の
出力端子は内部ノード211と接続されている。
【0034】
以下、本実施の形態のメモリセル200に値を書き込む場合について説明する。入力配線
203、202は書き込みのワード線であり、デコーダが接続されている。書き込み時に
は入力配線203がHIGH状態に、入力配線202がLOW状態に保持され、書き込み
以外の時には入力配線203がLOW状態に、入力配線202がHIGH状態に保持され
る。なおHIGH状態とLOW状態とは、相対的な電圧値が高い状態と低い状態とを示し
ており、HIGH状態を「1」とし、LOW状態を「0」とする。入力配線209は書き
込みのデータ線であり、「1」を書き込む場合にはHIGH状態に保持され、「0」を書
き込む場合にはLOW状態に保持される。
【0035】
入力配線203がHIGH状態に、入力配線202がLOW状態に保持されるとデータの
書き込みは禁止される。具体的には、入力配線203がHIGH状態に、入力配線202
がLOW状態に保持されるとアナログスイッチ205がオンの状態になり、入力配線20
9から供給される電圧・電流とダブルゲートのインバータ206からの電圧・電流の大き
さによりメモリセル200の内部ノード211の電位が決定される。この時、内部ノード
211の電圧がインバータ207の閾値電圧を超えると、インバータ207の出力電位が
反転し、これによってダブルゲートのインバータ206から出力される値も反転し、メモ
リセル200の値が書き換わる。このような電位が反転した信号を反転信号と記す。本実
施の形態のメモリセル200では、インバータ206として、ダブルゲートのインバータ
を用いる。ダブルゲートのインバータ206は電流の供給能力が低いため、書き込み時に
確実に書き込むことが可能となる。このように書き込み時に使用される回路には、入力配
線202、203から信号が入力される。
【0036】
以下、本実施の形態のメモリセル200から値を読み出す場合について説明する。入力
配線201、204は、読み出しのワード線であり、デコーダが接続されている。読み出
し時には入力配線204がHIGH状態に、入力配線201がLOW状態となるように、
WE(WRITE ENABLE)信号とADDR(ADDRESS、ADDR信号、A
DDRESS信号)に基づきデコーダによってアサートされる。読み出し時以外には入力
配線204がLOW状態に、入力配線201がHIGH状態に保持される。入力配線21
0は読み出しのデータ線であり、入力配線204がHIGH状態に、入力配線201がL
OW状態にアサートされた時、クロックドインバータ208がオンの状態になり、入力配
線210に内部ノード211の電位を反転した値が出力される。このように読み出しの系
では、入力配線201、204が用いられる。
【0037】
本実施の形態のメモリセル200の構成では、書き込み時にダブルゲートのインバータ
206とメモリの書き込み回路との電流の大きさにより、内部ノード211の電位が決定
されるが、書き込み回路のゲート幅を十分に大きく取ればトランジスタの閾値電圧がばら
ついても確実に書き込む事ができる。
【0038】
つまり、書き込み回路であるアナログスイッチ205を構成するトランジスタのゲート
幅を十分に大きく取れば、メモリセル200が含むトランジスタのしきい値電圧がばらつ
いても、確実にメモリセルにデータを書き込むことができる。また、入力配線209を駆
動する回路が含むトランジスタのゲート幅を十分に大きく取れば、メモリセル200が含
むトランジスタのしきい値電圧がばらついても、確実にメモリセルにデータを書き込むこ
とができる。
【0039】
また、メモリセルの書き込みの系と、読み出しの系とが分かれている、つまり書き込み
時に用いられる入力配線(入力配線209)と、読み出し時に用いられる入力配線(入力
配線210)とが異なるため、メモリセルに保持された電荷は読み出し時にメモリセルの
値を保持する系に影響を与えず、読み出し時の誤書き込みが起こる可能性が無い。また、
本実施の形態のメモリセルを用いてSRAMを作製すれば、メモリセルが保持する値が読
み出し時に保持されるため、読み出し回路に複雑な回路を必要としない。
【0040】
(実施の形態2)
SRAMでは、書き込みのワード線である入力配線202、203をそれぞれHIGH
状態、LOW状態にして、メモリセルに値を書き込む場合に、書き込みのワード線と、書
き込みのデータ線の値を保持するタイミングを考慮しないと、誤書き込みが発生する。図
2を用いて、誤書き込みが生じてしまうタイミングについて説明する。
【0041】
図2においてCLK(CLOCK)信号はクロック信号である。WE(WRITE E
NABLE)信号はメモリセルに対する書き込みの期間を指定する信号であり、この信号
がHIGH状態の期間がメモリセルに対する書き込み期間となる。ADDR(ADDRE
SS)は値を書き込むメモリセルのアドレスを表す。WDATA(WRITE DATA
)はADDRで指定されたメモリセルに書き込まれる値を表す。
【0042】
なお、複数のメモリセル200が設けられたメモリセルアレイの周囲には、リード/ラ
イト回路とデコーダが設けられている。リード/ライト回路には、CLK信号、WE信号
、WDATAが入力される。デコーダには、CLK信号、ADDRが入力される。リード
/ライト回路には、入力配線209と入力配線210が接続される。デコーダには、入力
配線201〜204が接続される。
【0043】
また、リードライト回路には、RE(Read Enable)信号と、RDATA(
READ DATA)が入力される。RDATAはメモリセル200から読み出された値
である。
【0044】
図2において期間301、304はWE信号がLOW状態であるため、メモリセルに値
の書き込みが行われない。期間302はADDR305のメモリセルにWDATA307
が書き込まれる期間であり、期間303はADDR306のメモリセルにWDATA30
8が書き込まれる期間である。問題になるのは期間302から期間303のSRAMの状
態遷移の時、すなわち、期間302から期間303に動作が切り替わる時である。この状
態遷移の時では、WE信号は期間302から期間303にかけてHIGH状態が続く。
【0045】
ADDRバスが保持する値がADDR305からADDR306に変わるタイミングが
、トランジスタの特性、閾値電圧のばらつき等により、WDATAがWDATA307か
らWDATA308に変わるタイミングよりも少し遅れた場合、WE信号がHIGH状態
に保持されたままであるため、WDATA307からWDATA308に変わる。本来な
らばADDR305のメモリセルにはWDATA307の値を書き込み、ADDR306
にはWDATA308の値が書き込まれるべきであるが、この場合はADDR305のメ
モリセル、ADDR306のメモリセルともにWDATA308の値が書き込まれてしま
う。このようにSRAMはWE信号がHIGH状態のときに、ADDRバスとWDATA
がトランジスタの特性、閾値電圧のばらつき等により変化してしまうと、誤書き込みを起
こす可能性がある。
【0046】
そのためTFTなどの電気特性ばらつきが大きいトランジスタを用いてSRAMを作製
する場合、タイミングを考慮しないと、誤書き込みが発生する。そこで本実施の形態では
、誤書き込みの起こらないように考慮したタイミングについて図3を用いて説明する。図
2と同様に、CLK(CLOCK)信号はクロック信号である。WE(WRITE EN
ABLE)信号は、メモリセルに対する値の書き込みの期間を指定する信号であり、この
信号がHIGH状態の期間が書き込み期間となる。ADDR(ADDRESS)は、値を
書き込むメモリセルのアドレスを表す。WDATA(WRITE DATA)はADDR
信号で指定されたメモリセルに書き込まれる値を表す。
【0047】
期間401、403、404、406はWE信号がLOW状態である。期間402はW
E信号がHIGH状態であるためADDR407のメモリセルのWE信号がHIGH状態
になり、ADDR407に値が書き込まれる(WDATA409)。期間405もWE信
号がHIGH状態であるためADDR408のメモリセルのWE信号がHIGH状態にな
り、ADDR408に値が書き込まれる(WDATA410)。
【0048】
図3に示すタイミングでSRAMを駆動すると、期間401から期間402に動作が切
り替わる時、WE信号がHIGH状態になり、ADDR407のメモリセルのWE信号が
HIGH状態になる。期間402でADDR407に値が書き込まれ、期間402から期
間403に動作が切り替わるタイミングでWE信号がLOW状態になる。このようにWE
信号をADDRとWDATAが変化しない範囲内のタイミングでHIGH状態に保持すれ
ば誤書き込みは起こらなくなる。
【0049】
本実施の形態で示した動作方法は、1つの系統のクロックで動作させることができる。
そのため、ADDRとWDATAが変わるのを待つために、WE信号はHIGH状態の1
クロック期間の前後にそれぞれ1クロック、合計3クロック分の時間を必要とする。
【0050】
このように本発明のメモリセルは、書き込みの系と、読み出しの系が分かれており、加え
てWE信号をADDRとWDATAが変化しない範囲内のタイミングでHIGH状態に保
持することにより誤書き込みは起こらなくなる。
【0051】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なり、正クロックと負クロックを用い、誤書き
込みを起こさないように駆動する方法について説明する。
【0052】
図4においてCLK1とCLK2はクロック信号であり、お互いにHIGH状態とLO
W状態とが反転した関係を有する。この関係を利用して、WE信号がHIGH状態の1ク
ロック期間の前後にそれぞれ半クロック、合計2クロック分の時間で誤書き込みを起こさ
ずに書き込みを行うことを可能にする。具体的には、ADDRとWDATAをCLK1の
ポジティブエッジによって駆動し、WE信号をCLK2のポジティブエッジによって駆動
する。
【0053】
以下、本実施の形態の駆動のタイミングによる書き込みの動作について説明する。図4
において期間501の動作に切り替わるCLK1のポジティブエッジのタイミングでAD
DR、WDATAは変化する。この後、期間501〜504の間、ADDRとWDATA
をは一定である。期間501から期間502に動作が切り替わるCLK2のポジティブエ
ッジのタイミングでWE信号がHIGH状態に変化し、ADDR509のメモリセルの書
き込み信号がHIGH状態になる。期間502、503の間で、ADDR509のメモリ
セルの値は書き換わり、期間503から期間504に動作が切り替わるCLK2のポジテ
ィブエッジのタイミングでADDR509のメモリセルの書き込み信号はLOW状態にな
る。このときADDR509のワード線は、ADDRバスとWE信号により制御されるた
め、ADDR509が変化しないでWE信号が変化することにより、ADDR509のワ
ード線はWE信号の変化と同様に変化する。
【0054】
次に期間504から期間505に動作が切り替わるCLK1のポジティブエッジのタイ
ミングでADDR、WDATAは変化する。この後、期間505〜508の間、ADDR
とWDATAをそれぞれ書き込むアドレスと、書き込む値を保持する。期間505から期
間506に動作が切り替わるCLK2のポジティブエッジのタイミングでWE信号がHI
GH状態に変化し、ADDR510のメモリセルの書き込み信号がHIGH状態になる。
期間506、507の間で、ADDR510のメモリセルの値は書き換わり、期間507
から期間508に動作が切り替わるCLK2のポジティブエッジのタイミングでADDR
510のメモリセルの書き込み信号はLOW状態になる。
【0055】
このように、実施の形態3と同様にWE信号をADDRとWDATAが変化しない範囲
内のタイミングでHIGH状態に保持する事により誤書き込みは起こらず、反転の関係に
ある2つの系統のクロックを用いれば、クロックが1系統の場合に比べて、少ない時間で
書き込みをする事が可能となる。
【0056】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明のメモリセルを有する無線チップの作製方法について説明す
る。
【0057】
図6(A)には、絶縁表面を有する基板(以下、絶縁基板と記す)600上に、剥離層
601、絶縁層602、半導体膜603を順に形成する。絶縁基板600には、ガラス基
板、石英基板、珪素からなる基板、金属基板、プラスチック基板等を用いることができる
。また絶縁基板600は研磨することによって薄型化してもよい。薄型化された絶縁基板
を用いることによって、完成品を軽量化、薄型化することができる。
【0058】
剥離層601には、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブ
デン(Mo)、ニオブ(Nb)、ネオジウム(Nd)、ニッケル(Ni)、コバルト(C
o)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、
パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、珪素(Si)から選ば
れた元素または前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料から形成することが
できる。剥離層601は、上記元素等の単層構造、又は上記元素等の積層構造を用いるこ
とができる。このような剥離層はCVD法、スパッタリング法または電子ビーム等によっ
て形成することができる。本実施例では、タングステン(W)をCVD法により形成する
。このとき、O、N又はNOを用いてプラズマで処理を行うとよい。すると、後の
工程である剥離工程を簡便に行うことができる。また剥離層601は、絶縁基板600の
全体に形成する必要はなく、選択的に形成しても良い。すなわち、剥離層601は、後に
絶縁基板600を剥離することができればよく、剥離層を形成する領域は限定されない。
【0059】
絶縁層602には、酸化珪素、窒化珪素等の無機材料を用いることができる。窒化珪素
を用いることにより、絶縁基板600からの不純物元素の侵入を防止することができる。
また、絶縁層602は、単層構造又は積層構造を用いることができる。絶縁層602が積
層構造を有する場合、このような窒化珪素はいずれか一つの層に用いることによって、効
果を発揮する。
【0060】
半導体膜603には、シリコンを有する材料を用いることができる。半導体膜はCVD
法、又はスパッタリング法を用いて形成することができる。半導体膜603の結晶構造は
、非晶質、結晶質、微結晶のいずれであってもよい。結晶性が高いほど、薄膜トランジス
タの移動度を高くすることができ、好ましい。また微結晶や非晶質では、隣接する半導体
膜間での結晶状態のばらつきがなく、好ましい。
【0061】
結晶性の半導体膜を形成するためには、絶縁層602に直接形成する場合もあるが、本
実施の形態では、絶縁層602上に形成された非晶質半導体膜を加熱することにより作製
される。例えば、非晶質半導体膜に対して加熱炉、レーザ照射により加熱処理を行う。そ
の結果、結晶性の高い半導体膜を形成することができる。このとき、加熱温度を低くする
ため、結晶化を促進する金属元素を用いてもよい。例えば、ニッケル(Ni)を非晶質半
導体膜表面上に添加し、加熱処理を行うことによって、温度を低下させることができる。
その結果、耐熱性の低い絶縁基板上に結晶性半導体膜を形成することができる。なおレー
ザ照射を用いる場合、選択的に半導体膜を加熱することができるため、使用する絶縁基板
の耐熱性に制約されない。
【0062】
図6(B)に示すように、半導体膜603を所定の形状を有するように加工する。加工
には、フォトリソグラフィー法によって形成されたマスクを用いたエッチングを用いるこ
とができる。エッチングには、ドライエッチング法又ウエットエッチング法を用いること
ができる。
【0063】
加工された半導体膜603を覆うように、ゲート絶縁膜604として機能する絶縁層を
形成する。ゲート絶縁膜604は、無機材料を用いて形成することができ、例えば、窒化
珪素、酸化珪素を用いて形成することができる。ゲート絶縁膜604の形成前、または形
成後にプラズマ処理を行ってもよい。プラズマ処理には、酸素プラズマ、又は水素プラズ
マを用いることができる。このようなプラズマ処理により、ゲート絶縁膜被形成面、又は
ゲート絶縁膜表面の不純物を除去することができる。
【0064】
その後、ゲート絶縁膜604を介して、半導体膜603上にゲート電極605として機
能する導電層を形成する。ゲート電極605は、単層構造、又は積層構造を有することが
できる。ゲート電極605には、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta
)、モリブデン(Mo)、ネオジウム(Nd)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr
)、亜鉛(Zn)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オス
ミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、金(Au
)、銀(Ag)、銅(Cu)、インジウム(In)から選ばれた元素、または前記元素を
主成分とする合金材料若しくは化合物材料を用いることができる。
【0065】
図6(C)に示すように、ゲート電極605側面にサイドウォール607として機能す
る絶縁物を形成する。サイドウォール607は、無機材料又は有機材料を用いて形成する
ことができる。無機材料として、酸化珪素、窒化珪素が挙げられる。例えば、酸化珪素を
ゲート電極605を覆うように形成し、等方性のエッチングを行うと、ゲート電極605
の側面にのみ残存し、これをサイドウォールとして用いることができる。等方性のエッチ
ングには、ドライエッチング法又ウエットエッチング法を用いることができる。サイドウ
ォール607を加工するとき、ゲート絶縁膜604もエッチング除去される。その結果、
半導体膜603の一部が露出される。
【0066】
サイドウォール607及びゲート電極605を用いて、自己整合的に不純物元素を半導
体膜603へ添加する。その結果、異なる濃度を有する不純物領域が半導体膜603に形
成される。サイドウォール607の下方に設けられた不純物領域609は、露出された半
導体膜603に形成された不純物領域608より、低濃度となる。このように不純物領域
の濃度を異ならせることによって、短チャネル効果を防止することができる。
【0067】
図6(D)に示すように、半導体膜603、ゲート電極605等を覆って絶縁層611
、612を形成する。半導体膜603、ゲート電極605等を覆う絶縁層611、612
は、単層構造を用いてもよいが、本実施の形態のように積層構造とすると好ましい。なぜ
なら、絶縁層611を無機材料を用いて形成することにより不純物の侵入を防止でき、ま
たCVD法を用いた無機材料を適用することによって、絶縁層611中の水素を用いて半
導体膜603中のダングリングボンドを終端させることができるからである。その後、絶
縁層612を有機材料を用いて形成することにより、平坦性を高めることができる。有機
材料はポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシク
ロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。なお、シロキサンとは、シ
リコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくと
も水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として
、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フ
ルオロ基とを用いてもよい。ポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有する
ポリマー材料を出発原料として形成される。
【0068】
その後、絶縁層611、612、ゲート絶縁膜604を貫通し、不純物領域608と接
続する配線613を形成する。配線613は、単層構造、又は積層構造を用いることがで
き、チタン(Ti)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネ
オジウム(Nd)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ルテニウ
ム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム
(Ir)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)
、インジウム(In)から選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料を用い
て形成することができる。配線613と同時に、絶縁層612上に配線619を形成する
。また、絶縁層612上にその他の配線を形成することができる。その他の配線とは、引
き回し配線等に相当する。
【0069】
このようにして薄膜トランジスタ(TFT)615、及びTFT群616を形成するこ
とができる。TFT群とは、一定の機能を奏する回路を構成するTFTの集まりを指し、
本発明のSRAMを構成することができる。
【0070】
図7(A)に示すように、絶縁層612上に絶縁層620を形成する。絶縁層620は
絶縁層611、612と同様に無機材料、又は有機材料を用いて形成することができる。
絶縁層620を貫通するように、配線621を形成する。配線621は、配線613と同
様に形成することができる。配線621は、絶縁層620に設けられた開口部を介して、
領域622で配線613と電気的に接続している。領域622では、後に形成されるメモ
リ素子の共通電極を接地することができる。また配線621と同一層から、パッド623
が形成される。パッド623は、絶縁層620に設けられた開口部を介して、領域624
で配線619と電気的に接続している。
【0071】
図7(B)に示すように、絶縁層620上に絶縁層630を形成する。絶縁層630は
、絶縁層611、612と同様に無機材料、又は有機材料を用いて形成することができる
。絶縁層630は、開口部を設ける。絶縁層630の開口部の側面は、テーパー状となる
ように加工される。
【0072】
薄膜トランジスタ(TFT)615上に設けられた開口部に、有機化合物層631を形
成する。有機化合物層631は、蒸着法、スパッタリング法により形成することができる
。このような有機化合物層は、公知のエレクトロルミネッセンス材料から形成することが
できる。その後、有機化合物層631、絶縁層630の一部を覆って、配線632が形成
される。配線632は、配線621と同様に形成することができる。配線632が形成さ
れる領域は、メモリ領域及びコンタクト領域となる。配線632は、メモリ素子の共通電
極となる。このように形成された有機メモリは、ROM(Read Only Memo
ry)として機能することができる。
【0073】
図7(C)に示すように、アンテナ640を形成する。このとき、パッド623に対し
て熱圧着して、アンテナ640を電気的に接続する。このようにして、引き回し配線等が
形成される配線領域644、有機メモリを有するROM領域642、TFT群を有するS
RAM領域643、パッド領域645、コンタクト領域646を有する無線チップが形成
される。そして、パッド領域とメモリ領域とは、ある程度に離れて設けられている。その
結果、アンテナ圧着時における応力の影響を受けることなく、データの書き込みを行うこ
とができる。
【0074】
またアンテナ圧着は、絶縁基板600の柔軟性が低い状態で行うとよい。そのため、本
実施の形態では、アンテナ圧着後、フィルム基板に転置する形態を示す。
【0075】
図8(A)に示すように、剥離層601を除去することにより、絶縁基板600を剥離
する。剥離層601は、物理的又は化学的に除去することができる。例えば、半導体膜6
03への加熱処理等により、剥離層601の結晶構造をも変化させることができる。その
後、剥離層601の一部が露出するよう開口部を設け、露出した剥離層601にレーザを
照射する。剥離層601にレーザを照射することによって、剥離のきっかけを与えること
ができる。すると、物理的に絶縁基板600と、薄膜トランジスタ等を剥離させることも
でき、しいては膜の応力により特段力を加えることなく、絶縁基板600から薄膜トラン
ジスタ等が自然に剥がれることもある。または、剥離層601へ到達する開口部を形成し
、開口部を介してエッチング剤を導入し、化学反応を利用して剥離層601を除去するこ
とができる。
【0076】
その後、図8(B)に示すように、フィルム基板650を貼り合わせる。フィルム基板
650の表面に接着性を有する場合、そのまま貼り合わせることができる。また接着性が
ない場合、接着剤を介してフィルム基板650を貼り合わせることができる。
【0077】
そして、フィルム基板に薄膜トランジスタ等が転置された無線チップを形成することが
できる。
【0078】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明のメモリ素子を有する無線チップに適用される、アンテナ用
基板に形成されたアンテナの形状について説明する。
【0079】
無線チップにおける信号の伝送方式として、電磁結合方式または電磁誘導方式(例えば
13.56MHz帯)を適用することができる。電磁誘導方式を用いる場合には、磁界密
度の変化による電磁誘導を利用するため、アンテナとして機能する導電層を輪状(例えば
、ループアンテナ)、らせん状(例えば、スパイラルアンテナ)に形成する。
【0080】
また、無線チップにおける信号の伝送方式として、マイクロ波方式(例えば、UHF帯
(860〜960MHz帯)、2.45GHz帯等)を適用する場合には、信号の伝送に
用いる電磁波の波長を考慮してアンテナとして機能する導電層の長さ等の形状を決定する
。例えば、アンテナとして機能する導電層を線状(例えば、ダイポールアンテナ)、平坦
な形状(例えば、パッチアンテナ)またはリボン型の形状等に形成することができる。ま
た、アンテナとして機能する導電層の形状は線状に限られず、電磁波の波長を考慮して曲
線状や蛇行形状またはこれらを組み合わせた形状で設けてもよい。
【0081】
図9(A)には、アンテナとして機能する導電層を幅の狭い線状とし、さらに矩形を帯
びるように形成した例を示す。図9(A)において、アンテナとして機能する導電層(ダ
イポールアンテナ)582aが形成されたアンテナ用基板581にメモリ領域等を有する
集積回路583が貼り付けられている。
【0082】
図9(B)には、アンテナとして機能する導電層を幅の広い線状となるように形成した
例を示す。図9(B)において、アンテナとして機能する導電層(パッチアンテナ)58
2bが形成されたアンテナ用基板581にメモリ領域等を有する集積回路583が貼り付
けられている。
【0083】
図9(C)には、アンテナとして機能する導電層をリボン型の形状(扇状とも記す)に
形成した例を示す。図9(C)において、アンテナとして機能する導電層582cが形成
されたアンテナ用基板581にメモリ領域等を有する集積回路583が貼り付けられてい
る。
【0084】
アンテナとして機能する導電層は、アンテナ用基板にCVD法、スパッタ法、スクリー
ン印刷やグラビア印刷等の印刷法、液滴吐出法、ディスペンサ法、メッキ法等を用いて、
導電性材料により形成する。導電性材料は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銀
(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd
)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)から選択された元素、
又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料で、単層構造又は積層構造
で形成する。
【0085】
例えば、スクリーン印刷法を用いてアンテナとして機能する導電層を形成する場合には
、粒径が数nmから数十μmの導電体粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性のペ
ーストを選択的に印刷することによって設けることができる。導電体粒子としては、銀(
Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd
)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上
の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子、または分散性ナノ粒子を用いることができる。また
、導電性ペーストに含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被
覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。代表的
には、エポキシ樹脂、珪素樹脂等の有機樹脂が挙げられる。また、導電層の形成にあたり
、導電性のペーストを押し出した後に焼成することが好ましい。例えば、導電性のペース
トの材料として、銀を主成分とする微粒子(例えば粒径1nm以上100nm以下)を用
いる場合、150〜300℃の温度範囲で焼成することにより硬化させて導電層を得るこ
とができる。また、はんだや鉛フリーのはんだを主成分とする微粒子を用いてもよく、こ
の場合は粒径20μm以下の微粒子を用いることが好ましい。はんだや鉛フリーはんだは
、低コストであるといった利点を有している。
【0086】
上述した材料以外にも、セラミックやフェライト等をアンテナに適用してもよい。
【0087】
また、電磁結合方式または電磁誘導方式を適用する場合であって、アンテナを備えた無
線チップを金属に接して設ける場合には、当該半導体装置と金属との間に透磁率を備えた
磁性材料を設けることが好ましい。なぜなら、磁界の変化に伴い金属に渦電流が流れ、当
該渦電流により発生する反磁界によって、磁界の変化が弱められて通信距離が低下してし
まう。そのため、無線チップと金属との間に透磁率を備えた材料を設けることにより金属
の渦電流を抑制し通信距離の低下を抑制することができる。なお、磁性材料としては、高
い透磁率を有し高周波損失の少ないフェライトや金属薄膜を用いることができる。
【0088】
このようにアンテナ用基板に形成されたアンテナが接着された無線チップを提供するこ
とができる。
【実施例1】
【0089】
本実施例では、本発明のメモリ素子を有する無線チップをプラスチック基板上に形成し
た形態を示す。なお本実施の形態の無線チップは、無線通信を行うためRF回路を有し、
演算回路にCPUを有する。
【0090】
本発明の無線チップの通信仕様を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
通信には13.56MHz帯域の無線信号を用い、通信規格、プロトコルは、ISO/
IEC 15693に部分準拠である。本発明の無線チップは、電源電圧をアンテナを介
して該無線信号より供給する。本発明の無線チップは外付けアンテナを有するが、回路と
一体形成された内蔵アンテナであってもよい。データ転送速度は、26.48kビット/
sとし、リーダ/ライタから無線チップへのデータ符号化はパルス位置変調であり、無線
チップからリーダ/ライタへのデータ符号化はマンチェスター方式とする。
【0093】
本発明の無線チップの概要を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
本発明の無線チップは、上述したようにフレキシブル基板に薄膜トランジスタを用いて
形成することができるため、103mgという非常に軽量な無線チップを提供することが
できる。
【0096】
次に、本発明の無線チップのブロック構成を図10に示す。本発明の無線チップ550
は、無線用回路551と、ロジック回路570とを有する。無線用回路551は、共振容
量552、電源回路553、システムリセット回路554、クロックジェネレータ555
、復調回路556、変調回路557等を有する。共振容量552は、外付けアンテナとと
もに共振回路を構成することができる。電源回路553は、整流回路と保持容量とを有し
、電源電圧を生成することができる。システムリセット回路554はシステムリセット信
号を生成し、クロックジェネレータ555はシステムクロック信号を生成することができ
る。復調回路556は、LPF(Low Pass Filter)を有し、無線信号か
らデータを抽出することができる。変調回路557は、マンチェスター方式により、無線
信号にデータを重畳することができる。これら回路は薄膜トランジスタから形成すること
ができる。
【0097】
ロジック回路570は、コントローラ560、CPU571、ROM572、RAM5
73等を有し、コントローラ560は、クロック制御回路561、制御レジスタ562、
受信データレジスタ563、送信データレジスタ564、無線用インターフェース567
、CPU用インターフェース568を有する。RAM573は、本発明のメモリセルを適
用することができる。これら回路等は、薄膜トランジスタから形成することができる。復
調回路556及び変調回路557は、無線用インターフェース567を介して制御レジス
タ562、受信データレジスタ563、送信データレジスタ564と信号のやりとりを行
うことができる。クロックジェネレータ555は、クロック制御回路561によって制御
され、クロック制御回路561は制御レジスタ562に基づき動作する。制御レジスタ5
62、受信データレジスタ563及び送信データレジスタ564は、CPU用インターフ
ェース568を介してCPU571、ROM572及びRAM573と信号のやりとりを
行うことができる。
【0098】
無線チップが有するCPUは、8bit CISCとし、2相ノンオーバーラップクロ
ック動作のフリップフロップで構成することができる。2相ノンオーバーラップクロック
動作のフリップフロップで構成することにより、クロックスキューのばらつきや、TFT
特性のばらつきに起因する誤動作を防止し、信頼性向上を図ることができる。ROM57
2には、2KBのマスクROMを適用することができ、プログラムや秘密鍵などを格納す
ることができる。RAM573には、本発明のメモリセルを用いることができる。例えば
、容量64Bである本発明のSRAMセルを適用することができ、当該メモリセルはCP
Uの作業領域として使用することができる。このようにメモリセルの回路構成を工夫し、
書き込み/読み出しの信頼性向上を図る。またコントローラ560は、本無線チップのス
テートマシンとしての機能を有する。
【0099】
本無線チップでは、暗号処理のアルゴリズムとして、SAFER(Secure An
d Fast Encryption Routine)を採用することができる。SA
FERは、主に8bit演算で構成され、8bitのCPUに適したアルゴリズムである
。本無線チップを有する無線チップでは、暗号文を受信した後、秘密鍵を用いて解読し、
平文を送信する機能を搭載することができる。勿論、本無線チップには、DES、AES
など他の暗号処理のアルゴリズムを採用することもできる。
【0100】
ガラス基板上に形成された無線チップ700と、フレキシブル基板上に形成された無線
チップ701の写真を図11に示す。本発明の無線チップは、このような非常に薄型なも
のとすることができる。
【0101】
無線チップ700は、集積回路705と、アンテナ706と、ガラス基板707を有す
る。無線チップ701は、集積回路702と、フレキシブル基板703と、アンテナ70
4とを有する。集積回路705はガラス基板707上に設けられている。集積回路702
とアンテナ704は、フレキシブル基板703上に設けられている。
【0102】
また図12には、無線チップの拡大写真にブロック図を記載したものを示す。図12にお
いて、RAMの領域には、本発明のメモリセルの構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
101 入力端子
102 入力端子
103 入力端子
104 入力端子
105 入力端子
106 Nチャネル型トランジスタ
107 Nチャネル型トランジスタ
108 インバータループ
109 ノード
110 ノード
111 Nチャネル型トランジスタ
112 Pチャネル型トランジスタ
113 Nチャネル型トランジスタ
114 Pチャネル型トランジスタ
200 メモリセル
201 入力配線
202 入力配線
203 入力配線
204 入力配線
205 アナログスイッチ
206 インバータ
207 インバータ
208 クロックドインバータ
209 入力配線
210 入力配線
211 内部ノード
301 期間
302 期間
303 期間
304 期間
305 ADDR
306 ADDR
307 WDATA
308 WDATA
401 期間
402 期間
403 期間
404 期間
405 期間
406 期間
407 ADDR
408 ADDR
409 WDATA
410 WDATA
501 期間
502 期間
503 期間
504 期間
505 期間
506 期間
507 期間
508 期間
509 ADDR
510 ADDR
511 WDATA
512 WDATA
550 無線チップ
551 無線用回路
552 共振容量
553 電源回路
554 システムリセット回路
555 クロックジェネレータ
556 復調回路
557 変調回路
560 コントローラ
561 クロック制御回路
562 制御レジスタ
563 受信データレジスタ
564 送信データレジスタ
567 無線用インターフェース
568 CPU用インターフェース
570 ロジック回路
571 CPU
572 ROM
573 RAM
581 アンテナ用基板
582a 導電層(ダイポールアンテナ)
582b 導電層(パッチアンテナ)
582c 導電層
583 集積回路
600 絶縁基板
601 剥離層
602 絶縁層
603 半導体膜
604 ゲート絶縁膜
605 ゲート電極
607 サイドウォール
608 不純物領域
609 不純物領域
611 絶縁層
612 絶縁層
613 配線
615 薄膜トランジスタ(TFT)
616 TFT群
619 配線
620 絶縁層
621 配線
622 領域
623 パッド
624 領域
630 絶縁層
631 有機化合物層
632 配線
640 アンテナ
642 ROM領域
643 SRAM領域
644 配線領域
645 パッド領域
646 コンタクト領域
650 フィルム基板
700 無線チップ
701 無線チップ
702 集積回路
703 フレキシブル基板
704 アンテナ
705 集積回路
706 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き込み回路と、第1のインバータと、第2のインバータと、読み出し回路と、第1の回路と、第2の回路と、を有し、
前記書き込み回路は、少なくとも一つのワード線を介し、前記第1の回路に電気的に接続され、
前記書き込み回路の入出力端子の一方は、第1のデータ線を介し、前記第2の回路に電気的に接続され、
前記書き込み回路の入出力端子の他方は、前記第1のインバータの出力端子と、前記第2のインバータの入力端子と、に電気的に接続され、
前記第1のインバータの入力端子は、前記第2のインバータの出力端子に電気的に接続され、
前記読み出し回路は、少なくとも一つのワード線を介し、前記第1の回路に電気的に接続され、
前記読み出し回路の出力端子は、第2のデータ線を介し、前記第2の回路に電気的に接続され、
前記読み出し回路の入力端子は、前記書き込み回路の入出力端子の他方に電気的に接続され、
前記書き込み回路に電気的に接続されたワード線と、前記読み出し回路に電気的に接続されたワード線は異なり、
前記第1の回路は、第1の期間に前記書き込み回路をオンにできる機能を有し、
前記第2の回路は、第2の期間に前記書き込み回路に書き込みデータを供給できる機能を有し、
前記第2の期間は、前記第1の期間の前にスタートし、前記第1の期間の後に終了することを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記書き込み回路は、第1のnチャネル型トランジスタを有し、
前記第1のnチャネル型トランジスタのゲートが、前記第1の回路に電気的に接続され、
前記読み出し回路は、第2及び第3のnチャネル型トランジスタを有し、
前記読み出し回路の入力端子は、第2のnチャネル型トランジスタのゲートであり、
第2のチャネル型トランジスタのソース又はドレインの一方は、第3のチャネル型トランジスタのソース又はドレインの一方と接続されていることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記書き込み回路は、アナログスイッチであり、
前記読み出し回路は、クロックドインバータであることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1の回路は、デコーダであり、
前記第2の回路は、リード/ライト回路であることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記第1のインバータは、前記第2のインバータより電流の供給能力が低いことを特徴とする半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−30265(P2013−30265A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195306(P2012−195306)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2006−311907(P2006−311907)の分割
【原出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】