説明

半導体集積回路およびRFIDタグ

【課題】 高周波信号を受けて動作する複数の半導体集積回路のバーンインを同時に実施する。
【解決手段】 内部回路は、通常動作モード中に整流回路により生成される電源電圧を受け、第1および第2端子のいずれかに供給される高周波信号を入力端子で受けて動作する。テスト制御回路は、第1および第2端子に直流電圧が供給されるテストモード中に動作し、内部回路を動作させる信号を生成する。第1および第2スイッチは、テストモード中に、第1端子をテスト制御回路および内部回路の電源端子に接続する。第3スイッチは、テストモード中に、テスト制御回路の出力端子を内部回路の入力端子に接続する。直流電圧を第1および第2端子に供給することで、テスト制御回路が内部回路を動作させる信号を生成するため、高周波信号を受けて動作する複数の半導体集積回路のバーンインを同時に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を受けるための端子を有する半導体集積回路およびRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号を受けて動作する半導体集積回路として、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)タグチップがある。この種の半導体集積回路では、タグチップをテスト装置に直接接続することなく、テスト装置からタグチップにアンテナを介して高周波信号が供給され、テストが実施される(例えば、特許文献1参照)。また、タグチップのダミー端子をテスト装置に接続し、ダミー端子間に電圧を与えることで、端子の接続テストが実施される(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
一方、半導体集積回路は、信頼性を向上するために半導体ウエハの製造後にバーンインが実施されることが多い。バーンインでは、多数の半導体集積回路は、バーンイン装置内に収納され、高温下で所定の時間、入力信号を受けて動作する。バーンインにより信頼性の低い素子は破壊される。そして、バーンイン後の動作テストにより、初期不良品が取り除かれる。
【特許文献1】特開2000−242746号公報
【特許文献2】特開2007−287062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バーンイン装置の駆動回路は、共通の入力信号を多数の半導体集積回路に同時に供給する。駆動回路に接続される負荷は大きい。このため、例えば、タグチップをバーンインする場合、正しい波形の高周波信号を各タグチップに供給することは難しい。一方、タグチップ内の回路は、高周波信号を受けて動作するように設計されているため、低周波信号を受けても動作できない。したがって、この種の半導体集積回路にバーンインを実施することは困難である。
【0005】
本発明の目的は、高周波信号を受けて動作する複数の半導体集積回路のバーンインを同時に実施することである。特に、高周波信号を受ける端子のみを用いて、複数の半導体集積回路のバーンインを同時に実施することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
整流回路は、第1ノードと第2ノードの間に第3ノードを介して直列に接続され、交互に充放電される第1キャパシタおよび第2キャパシタを有し、通常動作モード中に第3ノードに電気的に接続された第1端子および第2ノードに電気的に接続された第2端子で高周波信号を受け、第1および第2ノードに電源電圧を生成する。内部回路は、通常動作モード中に電源電圧を受け、第1および第2端子で受ける高周波信号に重畳された変調信号を入力端子で受けて動作する。負荷回路は、第1ノードと第2ノードとの間に接続されている。テスト制御回路は、第1および第2端子に直流電圧が供給されるテストモード中に動作し、内部回路を動作させる信号を出力端子から出力する。第1スイッチは、テストモード中に、第1端子をテスト制御回路の電源端子に接続する。第2スイッチは、テストモード中に、第1端子を内部回路の電源端子に接続する。第3スイッチは、テストモード中に、テスト制御回路の出力端子を内部回路の入力端子に接続する。
【発明の効果】
【0007】
直流電圧を第1および第2端子に供給することで、テスト制御回路が内部回路を動作させる信号を生成するため、高周波信号を受けて動作する複数の半導体集積回路のバーンインを同時に実施できる。したがって、第1および第2端子のみを用いて、複数の半導体集積回路のバーンインを同時に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施形態を図面を用いて説明する。
【0009】
図1は、一実施形態における半導体集積回路を示している。例えば、半導体集積回路は、RFIDタグチップ(以下、RFIDチップと称する)である。RFIDチップは、整流回路RECT、バーンイン制御回路BCNT、内部回路INT、電流源CS、抵抗R1、スイッチSW1−SW3、ダイオードD3およびキャパシタC3を有している。
【0010】
整流回路RECTは、キャパシタC1、C2およびダイオードD1、D2を有している。キャパシタC1、C2は、ノードND1とノードND2の間に、ノードND3を介して直列に接続されている。ダイオードD1は、外部端子T2とノードND1の間に順方向に接続されている。ダイオードD2は、ノードND2と外部端子T2との間に順方向に接続されている。ノードND3は、外部端子T1に接続されている。
【0011】
端子T1、T2(アンテナ端子)は、図4に示すように、RFIDタグのアンテナANTに接続される。整流回路RECTは、通常動作モード中に、端子T1、T2に供給される高周波信号から直流電源VDD、VSSを生成する。ここで、通常動作モードは、整流回路RECTによる整流動作が行われ、端子T1、T2で受ける高周波信号に重畳される変調信号(コマンド信号や情報信号)を受けて内部回路INTが動作するモードである。
【0012】
電流源CSは、ダイオードD1もしくはダイオードD2に流れる電流量を適切な倍率でコピーした量の電流を内部回路INTに供給する。例えば、電流源CSは、カレントミラー回路により実現される。抵抗R1は、バーンイン動作モード中に、ノードND1上の電荷を端子T2に逃がすための負荷回路として機能する。これにより、ノードND1は、バーンイン動作モード中に低レベルに保持される。抵抗R1の抵抗値は、例えば10メガオームである。抵抗値を高く設計することで、抵抗R1を流れる電流を最小限にでき、RFIDタグの消費電力を削減できる。バーンイン動作モード中の動作は、図5に示す。
【0013】
バーンイン制御回路BCNTは、バーンイン動作モード中に動作し、内部回路INTを動作させるためのテスト信号(コマンド信号や情報信号)を出力端子O1から出力する。バーンイン制御回路BCNTの例は、図2に示す。バーンイン動作モードは、RFIDチップの初期不良を取り除くためのテスト工程においてエントリされる。このため、バーンイン制御回路BCNTは、テスト制御回路として機能する。
【0014】
スイッチSW1−SW3は、pチャネルMOSFETを有している。スイッチSW1−SW3を構成するpチャネルMOSFETのゲートは、ノードND1に接続され、スイッチSW1−SW3を構成するpチャネルMOSFETの基板端子はノードND3に接続されている。スイッチSW1を構成するpチャネルMOSFETは、ゲートで低レベルを受けているときにオンし、ノードND3をバーンイン制御回路BCNTの電源端子VDDに接続する。スイッチSW2を構成するpチャネルMOSFETは、ゲートで低レベルを受けているときにオンし、ノードND3を内部回路INTの電源端子VDDに接続する。スイッチSW3を構成するpチャネルMOSFETは、ゲートで低レベルを受けているときにオンし、バーンイン制御回路BCNTの出力端子O1を内部回路INTの入力端子I1に接続する。
【0015】
内部回路INTは、通常動作モード中に、整流回路RECTからの直流電源VDD、VSSを受け、電流源CSを介して入力端子I1で受ける変調信号(コマンド信号や情報信号)に応じて動作する。内部回路INTは、入力端子I1に供給される電流の変化を信号として処理する。また、内部回路INTは、バーンイン動作モード中に、端子T1、T2に供給される直流電源VDD、VSSを受け、バーンイン制御回路BCNTから出力され入力端子I1で受けるテスト信号に応じて動作する。内部回路INTの例は、図3に示す。
【0016】
ダイオードD3は、バーンイン動作モード中に、ノードND3の高レベルがノードND1に伝達されることを防止する。キャパシタC3は、直流電源VDD、VSSを安定化させる平滑容量であり、整流により生じた電荷を蓄積する。
【0017】
図2には、図1に示したバーンイン制御回路BCNTを示している。バーンイン制御回路BCNTは、発振回路OSC、信号生成回路SGEN、インバータINV1およびpチャネルMOSFETを有している。発振回路OSCは、電源電圧VDD、VSSを受けているときに、クロックCLK1を生成する。信号生成回路SGENは、電源電圧VDD、VSSを受けているときに、図1に示した内部回路INTの構成要素の全体が順次動作するための信号S0を、クロックCLK1に基づいて生成する。
【0018】
生成された信号S0は、インバータINV1を介してpチャネルMOSFETのゲートに供給される。pチャネルMOSFETのソースおよび基板端子は、電源線VDDに接続されている。そして、pチャネルMOSFETは、信号S0に応じてドレイン電流を変化させる。すなわち、信号生成回路SGENにより生成される信号S1に応じて出力信号O1が出力される。図1に示したスイッチSW3は、バーンイン動作モード中にオンするため、出力信号O1(出力電流)は、内部回路INTに入力され、信号処理される。
【0019】
図3は、図1に示した内部回路INTの例を示している。例えば、内部回路INTは、データ復調回路DDM、クロック発生回路CLKG、論理回路LOGIC、強誘電体メモリFMおよびデータ変調回路DMを有している。内部回路INTの各回路DDM、CLKG、LOGIC、FM、DMは、電源電圧VDD、VSSを受けて動作する。
【0020】
データ復調回路DDMは、入力端子I1で受ける信号を復調し、復調した信号O2を論理回路LOGICに出力する。クロック発生回路CLKGは、内蔵する発振回路によりクロックを発生し、発生したクロックCLK2を論理回路LOGICに出力する。なお、クロックCLK2は、クロック抽出回路により入力端子I1で受ける信号から抽出してもよい。論理回路LOGICは、強誘電体メモリFMの読み書き動作を制御し、リーダ/ライタとの間でコマンドやデータを入出力する。リーダ/ライタは、図4に示すRFIDタグTAGと無線通信する装置である。強誘電体メモリFMは、リーダ/ライタから出力されるデータや、論理回路LOGICで生成されたデータを記憶する。データ変調回路DMは、論理回路LOGICから出力される信号に基づき、アンテナ端子T1、T2で受ける高周波信号を変調する。変調された高周波信号は図4に示す端子T1、T2およびアンテナANTを介してリーダ/ライタに返信される。なお、図1では、変調された信号の出力経路は省略している。
【0021】
図4は、図1に示したRFIDチップが搭載されるRFIDタグTAGの例を示している。RFIDタグTAGは、RFIDチップおよびアンテナANTが搭載された基板あるいはパッケージを有している。なお、アンテナANTは、基板上に配線パターンを用いて形成されてもよく、RFIDチップ内に形成されてもよい。RFIDチップの端子T1、T2は、ボンディングワイヤ等によりアンテナANTの端子に接続される。
【0022】
図5は、図1に示したRFIDチップのバーンイン動作モード中の動作を示している。図に示した太い矢印は、電流または信号の流れを示している。バーンイン動作モード(テストモード)は、端子T1を電源電圧VDD(直流電源の正側端子)に接続し、端子T2を電源端子VSS(直流電源の負側端子)に接続することでエントリされる。
【0023】
バーンイン動作モードにエントリされた直後、端子T1からノードND3、キャパシタC1、抵抗R1、ダイオードD2、端子T2の経路でキャパシタC1に充電電流が流れる。キャパシタC1は、ノードND3側が正(VDD)に、ノードND1側が負(VSS)に充電される。充電が終わると、キャパシタC1の充電電流は流れなくなる。ノードND1は、抵抗R1を介して端子T2(VSS)に接続されているため、その電圧は接地電圧VSS(低レベル)となる。ノードND2も接地電圧VSSになる。このため、バーンイン制御回路BCNTおよび内部回路INTの接地端子VSSは、接地電圧VSSを受ける。
【0024】
スイッチSW1−SW3を構成するpチャネルMOSFETは、ゲートで低レベルを受けてオンする。バーンイン制御回路BCNTは、スイッチSW1を介して電源電圧VDDを受け、動作を開始し、信号S1を生成する。生成された信号S1は、スイッチSW3を介して内部回路INTに供給される。内部回路INTは、スイッチSW2を介して電源電圧VDDを受け、動作を開始し、信号S1を処理する。これにより、内部回路INTは、バーンイン制御回路BCNTにより生成された信号S1に基づいて、所定のクロック周波数で所定の動作を繰り返す。
【0025】
なお、電流源CSは、ダイオードD1もしくはダイオードD2に流れる電流量を適切な倍率でコピーした量の電流を内部回路INTに流す。このため、電流源CSからの電流とバーンイン制御回路BCNTからの信号電流とが加算された量の電流が、内部回路INTの入力端子I1に供給される。バーンイン動作モード中、ダイオードD2に流れる電流は、バーンイン制御回路BCNTと内部回路INTの動作電流であるが、平滑キャパシタC3の働きもあり、ほぼ一定である。このため、バーンイン制御回路BCNTからの信号電流に電流源CSからの電流が加算されても、内部回路INTはバーンイン制御回路BCNTからの信号を正常に処理できる。
【0026】
図6は、図1に示したRFIDチップの通常動作モード中の動作を示している。端子T1、T2がアンテナANTに接続されたRFIDタグTAGは、高周波信号を受信すると、整流回路RECTを用いて電力を生成する。端子T1が正、端子T2が負のとき、電流は、実線の矢印で示すように、以下の経路(1)、(2)、(3)を流れる。
経路(1):端子T1、キャパシタC1、抵抗R1、ダイオードD2、端子T2
経路(2):端子T1、キャパシタC1、ダイオードD3、内部回路INTおよびキャパシタC3の並列接続、ダイオードD2、端子T2
経路(3):端子T1、キャパシタC2、ダイオードD2、端子T2
端子T1が負、端子T2が正のとき、電流は、破線の矢印で示すように、以下の経路(4)、(5)、(6)を流れる。
経路(4):端子T2、ダイオードD1、キャパシタC1、端子T1
経路(5):端子T2、ダイオードD1、抵抗R1、キャパシタC2、端子T1
経路(6):端子T2、ダイオードD1、D3、内部回路INTおよびキャパシタC3の並列接続、キャパシタC2、端子T1
端子T1、T2に供給される電圧の正負の極性は絶えず変化するので、キャパシタC1、C2を流れる電流が途絶えることはない。これは、バーンイン動作モードで端子T1、T2に直流電源が接続されるときと異なる。キャパシタC1、C2には、正負の極性により両方向の電流が流れる。キャパシタC1は、経路(4)において最も高い電圧を受ける。キャパシタC2は経路(3)において最も高い電圧を受ける。このため、キャパシタC1の充電は、経路(4)が支配的であり、キャパシタC2の充電は、経路(3)が支配的である。その結果、ノードND2を基準として、ノードND1が正の電圧になる。この際、充電されたキャパシタC1の電圧と、充電されたキャパシタC2の電圧が加算されるため、ノードND1の電圧は、端子T1、T2で受ける高周波信号の電圧の振幅のほぼ2倍になる。すなわち、内部回路INTに供給される電源電圧VDDは、端子T1、T2で受ける高周波信号の電圧の振幅のほぼ2倍になる。
【0027】
スイッチSW1−SW3を構成するpチャネルMOSFETは、ゲートで高レベルを受け、オフする(遮断状態)。これにより、バーンイン制御回路BCNTは電源電圧VDDを受けず、信号S1を生成しない。抵抗R1は高抵抗のため流れる電流は非常に小さく、回路に与える影響は無視できる。したがって、RFIDチップは、バーンイン制御回路BCNTを搭載しているにもかかわらず、端子T1、T2で高周波信号を受けるとき、通常のRFIDタグTAGとして正常に動作する。
【0028】
図7は、図1に示したRFIDチップをバーンインするテストシステムTSYSの例を示している。テストシステムTSYSは、電源装置PSと、バーンインを実施するための恒温槽TCを含む。例えば、半導体製造工程により製造された半導体ウエハWAF上のRFIDチップは、テスト工程において、ウエハWAFから切り出される前にバーンインされる。バーンインは、摂氏100度から200度で所定時間RFIDチップを動作することで実施される。この実施形態では、バーンインは、恒温槽TCに収納されたウエハWAF上のRFIDチップに、電源装置PSから電源電圧VDD、VSSを供給することで自動的に実施される。図では、1つのRFIDチップが電源装置PSに接続されているが、実際には、複数のRFIDチップが電源装置PSに同時に接続される。このために、例えば、同時に複数チップの端子T1、T2に接触するような多数のプローブ(針)を持つプローブカードを用いる。
【0029】
このように、各RFIDチップの端子T1、T2に共通の直流電源PSを接続するだけで、各RFIDチップのバーンインを実施できる。すなわち、簡易な電源装置PSにより、複数のRFIDチップのバーンインを同時に実施できる。図2に示したバーンイン制御回路BCNTは、RFIDチップ毎に内部回路INTを動作させるためのテスト信号O1を生成する。このため、各RFIDチップの端子T1、T2を共通の直流電源PSに接続する場合にも、内部回路INTに通常動作モードでリーダ/ライタから送られる変調信号(コマンド信号や情報信号)と同等の信号を供給できる。すなわち、内部回路INTを確実に動作できる。
【0030】
バーンイン後、LSIテスタ等を用いて、各RFIDチップの動作テストが実施される。正しく動作しないRFIDチップは、不良品として扱われる。これにより、信頼度不良が市場で発生することを防止でき、信頼性を向上できる。
【0031】
図8は、図1に示したRFIDチップをバーンインするテストシステムTSYSの別の例を示している。このテストシステムTSYSでは、恒温槽TC内に、例えばパッケージングされた複数のRFIDチップが収納される。例えば、RFIDチップは、恒温槽TC内に配置され電源配線VDD、VSSが配線されたバーンインボードBRD上のICソケットSCKTに装着される。バーンインは、RFIDチップが図4のRFIDタグTAGに搭載される前に実施される。
【0032】
以上、この実施形態では、高周波信号を受けて動作する複数のRFIDチップのバーンインを同時に実施できる。また、高周波信号を受ける端子T1、T2のみを用いて、複数のRFIDチップのバーンインを同時に実施できる。バーンイン時に内部回路INTを動作させる信号を各RFIDチップに供給する専用のバーンイン端子は必要ない。このため、RFIDチップのチップサイズを小さくでき、製造コストを削減できる。
【0033】
各RFIDチップの端子T1、T2に共通の直流電源PSを接続するだけで、各RFIDチップのバーンインを実施できる。すなわち、簡易なバーンイン装置により、複数のRFIDチップのバーンインを同時に実施できる。したがって、RFIDチップのバーンインコストを削減でき、テストコストを削減できる。バーンイン動作モードでは、各RFIDチップの内部回路INTに通常動作モードでリーダ/ライタから送られる変調信号(コマンド信号や情報信号)と同等の信号を供給できる。このため、信頼性が低い素子を有する内部回路INTを確実に検出でき、初期不良を起こす可能性があるRFIDチップを確実に取り除くことができる。
【0034】
RFIDチップは、端子T1、T2で高周波信号を受けるとき、バーンイン制御回路BCNTの動作を停止する。これにより、通常動作モード中に、RFIDチップは、バーンイン制御回路BCNTを搭載しているにもかかわらず、通常のRFIDタグTAGとして正常に動作できる。
【0035】
図9は、別の実施形態における半導体集積回路の例を示している。上述した実施形態で説明した要素と同一の要素については、同一の符号を付し、これ等については、詳細な説明を省略する。RFIDチップは、整流回路RECTが図1と相違している。その他の構成は、図1と同じである。RFIDチップは、図4に示したように、RFIDタグTAGの基板上に搭載される。また、RFIDチップは、図7または図8に示したテストシステムTSYSによりバーンインされる。
【0036】
整流回路RECTは、図1に示した整流回路RECTに多段化回路MULT1、MULT2およびキャパシタC11を追加している。多段化回路MULT1−2は、通常動作モード中に端子T1、T2で受ける高周波信号の電圧の振幅のほぼn倍(nは正の整数)の電圧をキャパシタC1、C2に与えるために設けられる。これにより、高周波信号の電圧の振幅が小さいときにも、内部回路INTを動作させる電源電圧VDDを高くできる。キャパシタC11の作用は、図10で説明する。
【0037】
図10は、図9に示した整流回路RECTの具体例を示している。多段化回路MULT1は、端子T2とノードND1との間に、ノードND4を介して直列に接続されたキャパシタC12およびダイオードD11と、端子T1とノードND4との間に、キャパシタC11を介して接続されたダイオードD12とを有している。多段化回路MULT2は、ノードND2と端子T2との間に、ノードND5を介して直列に接続されたダイオードD13およびキャパシタC13と、ノードND5と端子T1との間に接続されたダイオードD14とを有している。
【0038】
図10に示したRFIDチップは、バーンイン動作モード中に次のように動作する。まず、図5と同様に、端子T1が電源電圧VDD(直流電源の正側端子)に接続され、端子T2が電源端子VSS(直流電源の負側の端子)接続される。キャパシタC1は、ノードND3側が正(VDD)に、ノードND1側が負(VSS)に充電される。また、端子T1、キャパシタC11、ダイオードD12、D11、抵抗R1、ダイオードD2、端子T2の経路で、キャパシタC11にも充電電流が流れ、ノードND3が正に、ノードND4が負に充電される。
【0039】
なお、ダイオードD2に並列に接続されているダイオードD13とキャパシタC13にも充電電流の一部が流れる。ダイオードD2の電圧降下分からD13の電圧降下分を引いた電圧がキャパシタC13に充電される。ただし、ダイオードD2とダイオードD13の電圧降下の値はほぼ等しいため、D13の電圧は無視できるほど小さく、端子T2とノードND2の電位はほぼ等しい。
【0040】
キャパシタC1、C11の充電が終わると、この充電電流は流れなくなる。ノードND1は、接地電圧VSSになり、図5と同様に、スイッチSW1−SW3はオンする。その後の動作は、図5と同じである。なお、キャパシタC11がないと、端子T1の電源電圧VDDがノードND1に常時供給され、ノードND1を接地電圧VSSに設定できない。換言すれば、キャパシタC11は、バーンイン動作モード中に、端子T1とノードND1との直流的な接続を遮断する機能を有する。
【0041】
一方、通常動作モードでは、整流回路RECTは、端子T1、T2で高周波信号を受信し、次のように動作する。端子T1が正、端子T2が負のとき、電流は、以下の経路(1)、(2)、(3)を流れる。
・経路(1):端子T1、キャパシタC11、ダイオードD12、キャパシタC12、端子T2
・経路(2):端子T1、キャパシタC1と、キャパシタC11、ダイオードD12、D11との並列接続、負荷(抵抗R1と、ダイオードD3、内部回路INTおよびキャパシタC3の並列接続)、ダイオードD2と、ダイオードD13およびキャパシタC13との並列接続、端子T2
・経路(3):端子T1、キャパシタC2、ダイオードD2と、ダイオードD13およびキャパシタC13との並列接続、端子T2
端子T1が負、端子T2が正のとき、電流は、以下の経路(4)、(5)、(6)を流れる。
・経路(4):端子T2、キャパシタC13、ダイオードD14、端子T1
・経路(5):端子T2、ダイオードD1と、キャパシタC12およびダイオードD11との並列接続、負荷(抵抗R1と、ダイオードD3、内部回路INTおよびキャパシタC3の並列接続)、キャパシタC2、端子T1
・経路(6):端子T2、ダイオードD1と、キャパシタC12およびダイオードD11との並列接続、キャパシタC1、端子T1
なお、キャパシタC11の容量値は、キャパシタC12の容量値より十分大きく設定されている。そのため、経路(1)において2つのキャパシタC11、C12に充電されるときに、ほとんどの電圧がキャパシタC12に加わる。したがって、端子T1と端子T2に印加される電圧をVとすると、経路(1)でキャパシタC12にほぼVの電圧が充電される。
【0042】
正負の極性の電圧の入力が、端子T1と端子T2の間に繰り返し入力されると、経路(1)でほぼVの電圧がキャパシタC12に充電された後、経路(6)でほぼVの2倍の電圧がキャパシタC1に充電される。同様に、経路(4)でほぼVの電圧がキャパシタC13に充電され、経路(3)でほぼVの2倍の電圧がキャパシタC2に充電される。したがって、ノードND1とノードND2の間にはVの約4倍の電圧が生成される。
【0043】
スイッチSW1−SW3のゲートは、図6と同様に正にバイアスされ、スイッチSW1−SW3はオフする。抵抗R1は高抵抗のため、抵抗R1に流れる電流は非常に小さく、回路に与える影響は無視できる。したがって、高周波信号が端子T1、T2に供給される場合、図10に示したRFIDチップは、図6と同様に、通常のRFIDタグTAGとして正常に動作する。
【0044】
図11は、図9に示した整流回路RECTの別の具体例を示している。この例では、多段化回路MULT1は、図10に示した多段化回路MULT1にキャパシタC14およびダイオードD15を追加している。キャパシタC14は、端子T1とノードND6との間に接続されている。キャパシタC14は、図9と図10に示したキャパシタC11の役割も兼ねているため、キャパシタC11は図11では省略されている。ノードND6は、キャパシタC14とダイオードD12の接続ノードである。ダイオードD15は、端子T2とノードND6との間に順方向に接続されている。
【0045】
多段化回路MULT2は、図10に示した多段化回路MULT2にキャパシタC15およびダイオードD16を追加している。キャパシタC15は、端子T1とノードND7との間に接続されている。ノードND7は、ダイオードD14とキャパシタC15との接続ノードである。ダイオードD16は、ノードND7と端子T2との間に順方向に接続されている。その他の構成は、キャパシタC11が削除されていることを除き、図10と同じである。動作の説明は省略するが、図11に示した多段化回路MULT1−2は3段構成である。このため、端子T1と端子T2に印加される電圧をVとすると、ノードND1とノードND2の間にはVの約6倍の電圧が供給される。以上、この実施形態においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態は、ノードND1、ND2の間に抵抗R1を配置する例について述べた。しかし、例えば、ノードND1、ND2に電源端子VDD、VSSがそれぞれ接続された別の内部回路があるとき、この内部回路は負荷回路として機能する。このとき、抵抗R1は省略可能である。
【0047】
上述した実施形態では、高周波信号を内部回路INTに供給するための電流源CSを端子T2と内部回路INTの間に配置する例について述べた。しかし、例えば、電流源CSを端子T1と内部回路INTの間に配置してもよい。
【0048】
上述した実施形態では、バーンイン動作モード中に、内部回路INTの構成要素の全体を順次動作するための信号S0をバーンイン制御回路BCNTにより生成する例について述べた。しかし、例えば、内部回路INTの構成要素の全体をテストするためのテスト信号をバーンイン制御回路BCNTにより生成してもよい。このとき、バーンイン制御回路BCNTは、テスト制御回路として動作し、内部回路INTから出力される信号を期待値と比較し、内部回路INTが正常に動作するか否かを判定する。例えば、判定結果は、専用のテスト結果端子から出力される。あるいは、判定結果は、強誘電体メモリセル等の不揮発性の回路に記憶され、バーンイン動作モード(テストモード)から通常動作モードに移行した後に、RFIDチップ毎に読み出される。
【0049】
以上の実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
第1ノードと第2ノードの間に第3ノードを介して直列に接続され、交互に充放電される第1キャパシタおよび第2キャパシタを有し、通常動作モード中に前記第3ノードに電気的に接続された第1端子および第2ノードに電気的に接続された第2端子で高周波信号を受け、前記第1および第2ノードに電源電圧を生成する整流回路と、
通常動作モード中に前記電源電圧を受け、前記第1および第2端子で受ける高周波信号に重畳された変調信号を入力端子で受けて動作する内部回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続された負荷回路と、
前記第1および第2端子に直流電圧が供給されるテストモード中に動作し、前記内部回路を動作させる信号を出力端子から出力するテスト制御回路と、
前記テストモード中に、前記第1端子を前記テスト制御回路の電源端子に接続する第1スイッチと、
前記テストモード中に、前記第1端子を前記内部回路の電源端子に接続する第2スイッチと、
前記テストモード中に、前記テスト制御回路の前記出力端子を前記内部回路の入力端子に接続する第3スイッチとを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
(付記2)
付記1記載の半導体集積回路において、
前記テスト制御回路は、
クロックを生成する発振回路と、
前記クロックを受けて動作し、前記内部回路を動作させるための信号を生成する論理回路と、
前記論理回路からの信号をゲートで受け、ドレインが前記出力端子に接続されたトランジスタを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
(付記3)
付記1または付記2記載の半導体集積回路において、
前記第1ノードと前記内部回路の電源端子の間に、前記内部回路の電源端子から前記第1ノードに電流が流れることを防止する逆電流防止回路を備えていることを特徴とする半導体集積回路。
(付記4)
付記1ないし付記3のいずれか1項記載の半導体集積回路において、
前記第1、第2および第3スイッチは、前記第1ノードにゲートが接続されたトランジスタを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
(付記5)
付記1ないし付記4のいずれか1項記載の半導体集積回路において、
前記第2端子と前記第1ノードの間に順方向接続された第1ダイオードと、
前記第2ノードと前記第2端子との間に順方向接続された第2ダイオードとを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
(付記6)
付記1ないし付記5のいずれか1項記載の半導体集積回路と、
前記第1および第2端子に接続されたアンテナとを備えていることを特徴とするRFIDタグ。
(付記7)
付記6記載のRFIDタグにおいて、
前記テスト制御回路は、
クロックを生成する発振回路と、
前記クロックを受けて動作し、前記内部回路を動作させるための信号を生成する論理回路と、
前記論理回路のからの信号をゲートで受け、ドレインが前記出力端子に接続されたトランジスタを備えていることを特徴とするRFIDタグ。
(付記8)
付記6または付記7記載のRFIDタグにおいて、
前記半導体集積回路は、前記第1ノードと前記内部回路の電源端子の間に、前記内部回路の電源端子から前記第1ノードに電流が流れることを防止する逆電流防止回路を備えていることを特徴とするRFIDタグ。
(付記9)
付記6ないし付記8のいずれか1項記載のRFIDタグにおいて、
前記第1、第2および第3スイッチは、前記第1ノードにゲートが接続されたトランジスタを備えていることを特徴とするRFIDタグ。
(付記10)
付記6ないし付記9のいずれか1項記載のRFIDタグにおいて、
前記半導体集積回路は、
前記第2端子と前記第1ノードの間に順方向接続された第1ダイオードと、
前記第2ノードと前記第2端子との間に順方向接続された第2ダイオードとを備えていることを特徴とするRFIDタグ。
【0050】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点及び利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神及び権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点及び利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良及び変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物及び均等物に拠ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】一実施形態における半導体集積回路の例を示している。
【図2】図1に示したバーンイン制御回路を示している。
【図3】図1に示した内部回路の例を示している。
【図4】図1に示したRFIDチップが搭載されるRFIDタグの例を示している。
【図5】図1に示したRFIDチップのバーンイン動作モード中の動作を示している。
【図6】図1に示したRFIDチップの通常動作モード中の動作を示している。
【図7】図1に示したRFIDチップをバーンインするテストシステムの例を示している。
【図8】図1に示したRFIDチップをバーンインするテストシステムの別の例を示している。
【図9】別の実施形態における半導体集積回路の例を示している。
【図10】図9に示した整流回路の具体例を示している。
【図11】図9に示した整流回路の別の具体例を示している。
【符号の説明】
【0052】
ANT‥アンテナ;BCNT‥バーンイン制御回路;CLKG‥クロック発生回路;CS‥電流源;DDM‥データ復調回路;DM‥データ変調回路;FM‥強誘電体メモリ;INT‥内部回路;INV1‥インバータ;LOGIC‥論理回路;OSC‥発振回路;PS‥電源装置;R1‥抵抗;RECT‥整流回路;SGEN‥信号生成回路;SW1−SW3‥スイッチ;T1、T2‥端子;TAG‥RFIDタグ;TC‥恒温槽;WAF‥ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ノードと第2ノードの間に第3ノードを介して直列に接続され、交互に充放電される第1キャパシタおよび第2キャパシタを有し、通常動作モード中に前記第3ノードに電気的に接続された第1端子および第2ノードに電気的に接続された第2端子で高周波信号を受け、前記第1および第2ノードに電源電圧を生成する整流回路と、
通常動作モード中に前記電源電圧を受け、前記第1および第2端子で受ける高周波信号に重畳された変調信号を入力端子で受けて動作する内部回路と、
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に接続された負荷回路と、
前記第1および第2端子に直流電圧が供給されるテストモード中に動作し、前記内部回路を動作させる信号を出力端子から出力するテスト制御回路と、
前記テストモード中に、前記第1端子を前記テスト制御回路の電源端子に接続する第1スイッチと、
前記テストモード中に、前記第1端子を前記内部回路の電源端子に接続する第2スイッチと、
前記テストモード中に、前記テスト制御回路の前記出力端子を前記内部回路の入力端子に接続する第3スイッチとを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路において、
前記テスト制御回路は、
クロックを生成する発振回路と、
前記クロックを受けて動作し、前記内部回路を動作させるための信号を生成する論理回路と、
前記論理回路からの信号をゲートで受け、ドレインが前記出力端子に接続されたトランジスタを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の半導体集積回路において、
前記第1ノードと前記内部回路の電源端子の間に、前記内部回路の電源端子から前記第1ノードに電流が流れることを防止する逆電流防止回路を備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の半導体集積回路において、
前記第1、第2および第3スイッチは、前記第1ノードにゲートが接続されたトランジスタを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の半導体集積回路において、
前記第2端子と前記第1ノードの間に順方向接続された第1ダイオードと、
前記第2ノードと前記第2端子との間に順方向接続された第2ダイオードとを備えていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の半導体集積回路と、
前記第1および第2端子に接続されたアンテナとを備えていることを特徴とするRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−38644(P2010−38644A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199953(P2008−199953)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】