説明

半導体集積回路

【課題】ドライバ回路の回路素子を破壊から保護する半導体集積回路を提供することを目的とする。
【解決手段】ブートストラップ回路を用いたDC/DCコンバータの半導体集積回路であって、前記ブートストラップ回路のキャパシタC1が接続される第1端子BSと第2端子SW間を前記キャパシタC1に印加される最大電圧より大きい電圧でブレークダウンする標準耐圧とする保護素子30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブートストラップ回路を用いたDC/DCコンバータの半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブートストラップ回路を用いたDC/DCコンバータの半導体集積回路が各種用途に用いられている(例えば引用文献1参照)。
【0003】
図4は従来のDC/DCコンバータの半導体集積回路の一例のブロック構成図を示す。図4において、半導体集積回路10の外部端子BS,外部端子SW間にはキャパシタC1が接続され、外部端子SW,外部端子GND間にはショットキーダイオードSDが接続されされている。外部端子SWはインダクタL1を介して出力端子11に接続されている。出力端子11と外部端子GND間は抵抗R1,R2が直列に接続されると共に、キャパシタC2が接続されている。抵抗R1,R2の接続点は半導体集積回路10の外部外部端子FBに接続されている。半導体集積回路10の外部端子FBには例えば12Vの直流電圧が外部から印加される。
【0004】
半導体集積回路10において、レギュレータ12は外部端子VINから供給される直流電圧(例えば12V)から例えば電圧5Vの直流電圧を生成して半導体集積回路10の各部に供給すると共に、上記の電圧5Vの直流電圧をダイオードD1を介して外部端子BSに印加している。
【0005】
外部端子SWにはスイッチング素子であるnチャネルMOSトランジスタM1のソースとnチャネルMOSトランジスタM2のドレインが接続されている。MOSトランジスタM1のドレインは外部端子VINに接続され、ゲートにはドライバ回路13の出力するスイッチング信号が供給される。ドライバ回路13は外部端子BS,SWから動作電源が供給されている。MOSトランジスタM2のソースは外部端子GNDに接続され、ゲートにはドライバ回路14の出力するスイッチング信号が供給される。
【0006】
スイッチコントロール部15はドライバ回路13、14に極性が反転したスイッチング信号を供給し、これによりMOSトランジスタM1,M2は交互にオンする。MOSトランジスタM1のオフ時(M2のオン時)に外部端子SWは接地レベルとなり、キャパシタC1は電圧5Vで充電されて外部端子BSは5Vとなる。
【0007】
次のMOSトランジスタM1のオン時(M2のオフ時)に外部端子SWは外部端子VINから供給される12Vとなり、キャパシタC1の充電電圧により外部端子BSは17Vとなる。このスイッチングを繰り返し、インダクタL1等により平滑して端子11から所定電圧の直流電圧を出力する。
【0008】
端子11の出力電圧は抵抗R1,R2で分圧されて半導体集積回路20の外部外部端子FBからエラーアンプ16の反転入力端子に供給される。エラーアンプ16の非反転入力端子には基準電圧Vrefが供給されており、エラーアンプ16は基準電圧Vrefに対する出力電圧の誤差電圧を生成しPWMコンパレータ17の反転入力端子に供給する。
【0009】
PWMコンパレータ17の非反転入力端子には発振器18から所定周波数の三角波が供給されており、PWMコンパレータ17は誤差電圧を三角波と比較してPWM(パルス幅変調)信号を生成しスイッチコントロール部15に供給する。スイッチコントロール部15はPWM信号を反転した信号を生成して端子DRHからドライバ回路13に供給すると共に、PWM信号の立ち上がり時にPWM信号を端子DRLからドライバ回路14に供給する。
【0010】
ところで図示していないものの、半導体集積回路10の外部端子VIN,BS,SWそれぞれには、カソードを上記外部端子VIN,BS,SWに接続されアノードを接地されたダイオード等の高耐圧のESD(electro−static discharge:静電気放電)保護素子(耐圧は例えば数10V)が設けられている。
【0011】
<ドライバ回路の回路構成図>
図5はドライバ回路13の一例の回路構成図を示す。図5において、ドライバ回路13はレベルシフト回路13aとラッチ回路13bとドライブ段インバータ13cを有している。レベルシフト回路13aは、ハイレベル/ローレベルが5V/0Vの入力信号をMOSトランジスタM1のオン時にハイレベル/ローレベルが17V/12Vの信号に変換して出力し、MOSトランジスタM1のオフ時に変換せずに出力する。
【0012】
ラッチ回路13bはレベルシフト回路13aの出力信号をラッチする。ドライブ段インバータ13cは1段目のインバータを構成するCMOS構成のpチャネルMOSトランジスタM11及びnチャネルMOSトランジスタM12と、2段目のインバータを構成するCMOS構成のpチャネルMOSトランジスタM13及びnチャネルMOSトランジスタM14を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−83872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図4に示す半導体集積回路10において、HBM(Human Body Model:人体モデル)法で外部端子VINを基準として外部端子BSに正の高電圧を印加した場合、図5に示すドライバ回路13のドライブ段インバータ13cが破壊するという問題があった。
【0015】
これは、外部端子VINを基準として外部端子BSに正の高電圧が印加された場合、外部端子BSに設けられている高耐圧のESD保護素子がブレークダウンする前に、MOSトランジスタM13(又はM11)のソース・ゲート間、又は、MOSトランジスタM14(又はM12)のゲート・ソース間がブレークダウンして、図5の外部端子BSからMOSトランジスタM13(又はM11)のソース・ゲート、MOSトランジスタM14(又はM12)のゲート・ソース、MOSトランジスタM1のボディダイオードを経て外部端子VINに電流が流れるためである。このようにして、MOSトランジスタM13,M14(又はM11,M12)がブレークダウンにより破壊される。
【0016】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、ドライバ回路の回路素子を破壊から保護する半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施態様による半導体集積回路は、
ブートストラップ回路を用いたDC/DCコンバータの半導体集積回路であって、
前記ブートストラップ回路のキャパシタ(C1)が接続される第1端子(BS)と第2端子(SW)間を前記キャパシタ(C1)に印加される最大電圧より大きい電圧でブレークダウンする標準耐圧とする保護素子(30)を設けた。
【0018】
好ましくは、前記保護素子(30)は、前記第1端子(BS)と接地端子(GND)間、前記第2端子(SW)と接地端子(GND)間それぞれを前記標準耐圧より大きい電圧でブレークダウンする高耐圧とする。
【0019】
好ましくは、前記保護素子(30)は、
前記接地端子(GND)に接続される半導体基板(41)内に形成され前記第1端子(BS)に接続される第1層(42)と、
前記第1層内に形成され前記第2端子(SW)に接続される第2層(43)と、
前記第2層内に形成され前記第1端子(BS)に接続されるドレイン領域(45)と、
前記第2層内に形成され前記第2端子(SW)に接続されるソース領域(44)と、
前記半導体基板と絶縁されて形成され前記第2端子(SW)に接続されるゲート電極(47)と、を有し、構成される。
【0020】
好ましくは、前記半導体基板(41)と前記第2層(43)は、p型であり、
前記第1層(42)と前記ドレイン領域(45)と前記ソース領域(44)は、n型である。
【0021】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ドライバ回路の回路素子を破壊から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の半導体集積回路の一実施形態のブロック構成図である。
【図2】ドライバ回路と保護素子の一実施形態の回路構成図である。
【図3】保護素子の一実施形態の断面構成図
【図4】従来の半導体集積回路の一例のブロック構成図である。
【図5】ドライバ回路の一例の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0025】
<半導体集積回路のブロック構成>
図1は本発明のDC/DCコンバータの半導体集積回路20の一実施形態のブロック構成図を示す。図1において、半導体集積回路20の外部端子BS,外部端子SW間にはキャパシタC1が接続され、外部端子SW,外部端子GND間にはショットキーダイオードSDが接続されている。外部端子SWはインダクタL1を介して出力端子21に接続されている。
【0026】
出力端子21と外部端子GND間は抵抗R1,R2が直列に接続されると共に、キャパシタC2が接続されている。抵抗R1,R2の接続点は半導体集積回路20の外部外部端子FBに接続されている。半導体集積回路20の外部端子VINには例えば12Vの直流電圧が外部から印加される。
【0027】
更に、半導体集積回路20内には外部端子BS,SW間に標準耐圧(耐圧は例えば数V)の保護素子30が接続されている。また、図示していないものの、外部端子VINには、カソードを外部端子VINに接続されアノードを接地されたダイオード等の高耐圧のESD保護素子(耐圧は例えば数10V)が設けられている。
【0028】
半導体集積回路20において、レギュレータ22は外部端子VINから供給される直流電圧(例えば12V)から例えば電圧5Vの直流電圧を生成して半導体集積回路20の各部に供給すると共に、上記の電圧5Vの直流電圧をダイオードD1を介して外部端子BSに印加している。外部端子SWにはスイッチング素子であるnチャネルMOSトランジスタM1のソースとnチャネルMOSトランジスタM2のドレインが接続されている。
【0029】
MOSトランジスタM1のドレインは外部端子VINに接続され、ゲートにはドライバ回路23の出力するスイッチング信号が供給される。ドライバ回路23は外部端子BS,SWから動作電源が供給されている。MOSトランジスタM2のソースは外部端子GNDに接続され、ゲートにはドライバ回路24の出力するスイッチング信号が供給される。
【0030】
スイッチコントロール部25はドライバ回路23、24に極性が反転したスイッチング信号を供給し、これによりMOSトランジスタM1,M2は交互にオンする。MOSトランジスタM1のオフ時(M2のオン時)に外部端子SWは接地レベルとなり、キャパシタC1は電圧5Vで充電されて外部端子BSは5Vとなる。
【0031】
次のMOSトランジスタM1のオン時(M2のオフ時)に外部端子SWは外部端子VINから供給される12Vとなり、キャパシタC1の充電電圧により外部端子BSは17Vとなる。このスイッチングを繰り返し、インダクタL1等により平滑して端子21から所定電圧の直流電圧を出力する。
【0032】
なお、正常動作を行っている際には、外部端子SW,BS間電圧は5Vを超えることはない。外部端子SW,BS間電圧が5Vを超えるのはESD等の異常時である。
【0033】
端子21の出力電圧は抵抗R1,R2で分圧されて半導体集積回路20の外部外部端子FBからエラーアンプ26の反転入力端子に供給される。エラーアンプ26の非反転入力端子には基準電圧Vrefが供給されており、エラーアンプ26は基準電圧Vrefに対する出力電圧の誤差電圧を生成しPWMコンパレータ27の反転入力端子に供給する。
【0034】
PWMコンパレータ27の非反転入力端子には発振器28から所定周波数の三角波が供給されており、PWMコンパレータ27は誤差電圧を三角波と比較してPWM(パルス幅変調)信号を生成しスイッチコントロール部25に供給する。スイッチコントロール部25はPWM信号を反転した信号を生成して端子DRHからドライバ回路23に供給すると共に、PWM信号の立ち上がり時にPWM信号を端子DRLからドライバ回路24に供給する。
【0035】
<ドライバ回路と保護素子の回路構成図>
図2はドライバ回路23と保護素子30の一実施形態の回路構成図を示す。図2において、ドライバ回路23はレベルシフト回路23aとラッチ回路23bとドライブ段インバータ23cを有している。
【0036】
レベルシフト回路23aは、ハイレベル/ローレベルが5V/0Vの入力信号をMOSトランジスタM1のオン時にハイレベル/ローレベルが17V/12Vの信号に変換して出力し、MOSトランジスタM1のオフ時に変換せずに出力する。ラッチ回路23bはレベルシフト回路23aの出力信号をラッチする。
【0037】
ドライブ段インバータ23cは1段目のインバータを構成するCMOS構成のpチャネルMOSトランジスタM11及びnチャネルMOSトランジスタM12と、2段目のインバータを構成するCMOS構成のpチャネルMOSトランジスタM13及びnチャネルMOSトランジスタM14を有している。MOSトランジスタM13,M14のドレインはMOSトランジスタM1のゲートに接続されている。
【0038】
保護素子30はnチャネルMOSトランジスタ20で構成されている。MOSトランジスタ20のドレインは外部端子BSに接続され、ゲート及びソース及びバックゲートは外部端子SWに接続されている。
【0039】
<保護素子の断面構成図>
図3は保護素子30の一実施形態の断面構成図を示す。この保護素子30はトリプルウェル構造である。図3において、p型の半導体基板41の表面から所定の深さまでn型ウェル42が形成されている。n型ウェル42内にはバックゲートとなるp型ウェル43が形成されている。更に、p型ウェル43内にソースとなるn型領域44とドレインとなるn型領域45が互いに離間して形成されている。半導体基板41の表面には絶縁層46が形成され、絶縁層46上にゲート電極47が形成されている。
【0040】
p型の半導体基板41は端子51から外部端子GNDに接続され、n型ウェル42及びドレインとなるn型領域45は端子52から外部端子BSに接続される。バックゲートとなるp型ウェル43及びソースとなるn型領域44及びゲート電極47は端子53から外部端子SWに接続される。
【0041】
接地レベルの半導体基板41とバックゲートのp型ウェル43はn型ウェル42によって分離されているため、外部端子GNDと外部端子BS間、外部端子GNDと外部端子SW間それぞれは高耐圧(例えば数10V)となる。そして、バックゲートのp型ウェル43内に形成されたn型領域44,45間すなわち外部端子SW,BS間を標準耐圧(例えば6〜9V程度)となる。
【0042】
これによって、外部端子VINを基準として外部端子BSに正の高電圧を印加した場合、MOSトランジスタM13(又はM11)のソース・ゲート間、又は、MOSトランジスタM14(又はM12)のゲート・ソース間がブレークダウンする前に、保護素子30のドレイン・ソース間つまり外部端子SWと外部端子BS間がブレークダウンし、MOSトランジスタM13,M14(又はM11,M12)を破壊から保護することができる。
【0043】
なお、保護素子30は端子51〜53の半導体基板41,ウェル42,43,n型領域44,45に対するコンタクトを大きくする等の処理がなされているため、保護素子30はブレークダウンした場合にも破壊には至らない。
【符号の説明】
【0044】
20 半導体集積回路
21 出力端子
22 レギュレータ
23,24 ドライバ回路
25 スイッチコントロール部
26 エラーアンプ
27 PWMコンパレータ
28 発振器
30 保護回路
41 半導体基板
42 n型ウェル
43 p型ウェル
44,45 n型層
46 絶縁層
47 ゲート電極
C1,C2 キャパシタ
D1 ダイオード
L1 インダクタ
M1〜M21 MOSトランジスタ
R1,R2 抵抗
SD ショットキーダイオード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブートストラップ回路を用いたDC/DCコンバータの半導体集積回路であって、
前記ブートストラップ回路のキャパシタが接続される第1端子と第2端子間を前記キャパシタに印加される最大電圧より大きい電圧でブレークダウンする標準耐圧とする保護素子を
設けたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路において、
前記保護素子は、前記第1端子と接地端子間、前記第2端子と接地端子間それぞれを前記標準耐圧より大きい電圧でブレークダウンする高耐圧とすることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
請求項2記載の半導体集積回路において、
前記保護素子は、
前記接地端子に接続される半導体基板内に形成され前記第1端子に接続される第1層と、
前記第1層内に形成され前記第2端子に接続される第2層と、
前記第2層内に形成され前記第1端子に接続されるドレイン領域と、
前記第2層内に形成され前記第2端子に接続されるソース領域と、
前記半導体基板と絶縁されて形成され前記第2端子に接続されるゲート電極と、
を有し、構成されることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
請求項3記載の半導体集積回路において、
前記半導体基板と前記第2層は、p型であり、
前記第1層と前記ドレイン領域と前記ソース領域は、n型であることを特徴とする半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−14738(P2011−14738A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158080(P2009−158080)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】