印刷装置およびキャリブレーション方法
【課題】効率的なキャリブレーションを行う。
【解決手段】画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置であって、前記画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定する決定手段と、前記決定したカラーパッチを印刷するパッチ印刷手段と、前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得する測色手段と、前記色彩値に基づいて補正データを作成する補正データ作成手段と、前記補正データに基づいて補正された前記インク量に基づいて前記インクドットを形成する印刷手段とを具備する。
【解決手段】画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置であって、前記画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定する決定手段と、前記決定したカラーパッチを印刷するパッチ印刷手段と、前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得する測色手段と、前記色彩値に基づいて補正データを作成する補正データ作成手段と、前記補正データに基づいて補正された前記インク量に基づいて前記インクドットを形成する印刷手段とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびキャリブレーション方法に関し、特に画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置およびそのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリブレーションを実行させるにあたり、ユーザーが最適と思われる環境情報を任意に設定するキャリブレーション方法が提案されている(特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−213036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にキャリブレーションにおいては、印刷・測色するカラーパッチの個数が多ければ多いほど、精度を高くすることができるが、キャリブレーションに要する時間や用紙の量も多くなる。そのため、あるユーザーにおいてはキャリブレーションに要する時間が過剰に長いと感じられたり、別のユーザーにおいては意図した精度が達成できないと感じられたりすることがあった。また、印刷しようとする画像が示す色とは無関係の色のカラーパッチばかりを形成し、印刷しようとする画像が示す色については精度が確保されないとう問題もあった。
【0005】
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、効率的なキャリブレーションを行うことができる印刷装置およびキャリブレーション方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、決定手段が各画素についてインク量が指定された画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定する。そして、パッチ印刷手段が前記決定したカラーパッチを印刷する。さらに、測色手段が前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得する。補正データ作成手段は、前記色彩値に基づいて補正データを作成し、印刷手段は該補正データに基づいて補正された前記インク量に基づいて前記インクドットを形成する。このように、印刷する前記画像データを解析した結果に応じて、形成する前記カラーパッチを決定するため、余剰なカラーパッチが印刷されることが防止でき、効率的にキャリブレーションを行うことができる。
【0007】
また、前記印刷手段による前記画像データの印刷において他のインクよりも多く使用される多用インクを使用した前記カラーパッチを形成するのが好ましい。前記画像データの印刷に多く使用される前記インクについての精度を向上させておけば、前記画像データ全体の再現精度を効率的に向上させることができるからである。さらに、前記画像データの各画素について指定されたインク量のうち他のインク量よりも多く存在する頻出インク量に基づく前記カラーパッチを形成するのが好ましい。この場合も、前記画像データの印刷に多く使用される前記インク量についての精度を向上させておけば、前記画像データ全体の再現精度を効率的に向上させることができるからである。
【0008】
また、前記カラーパッチの色のみならず、前記カラーパッチの位置や大きさも、前記解析の結果に応じて決定してもよい。すなわち、前記画像データにおける前記画素の空間的な分布状況に基づいて前記カラーパッチを印刷する位置や大きさを決定してもよい。基本的には、前記カラーパッチに対応するインク量の画素が多く分布している領域に該カラーパッチを形成するのが望ましいし、前記カラーパッチに対応するインク量の画素が広く分布する場合には該カラーパッチを大きく形成するのが望ましい。前記カラーパッチを大きく形成すれば、該カラーパッチにおける測色点の分布範囲も広くすることができる。
【0009】
前記画像データの解析結果のみならず、過去に印刷した前記カラーパッチの履歴に応じて前記カラーパッチを決定するようにしてもよい。そのために、過去に前記印刷手段が印刷した前記カラーパッチと、該カラーパッチを測色して得られた前記色彩値とを格納する履歴データとを記憶する記録媒体がさらに備えられる。そして、前記履歴データを参照することにより、直前に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを印刷すると決定する。これにより、連続して同一の前記カラーパッチが形成されることが防止できる。前記補正データ作成手段は、前記履歴データに格納された前記色彩値、および、過去に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを測色して得られた前記色彩値を総合して前記補正データを作成する。すなわち、複数の時期に印刷された前記カラーパッチの測色値に基づいて前記補正データを作成する。このようにすることにより、各時期に印刷される前記カラーパッチの個数を減少させることができ、迅速な印刷を実現させることができる。また、前記画像データが特徴的でない場合も考えられる。このような場合には、前記履歴データに基づく前記カラーパッチを優先して形成するのが望ましい。
【0010】
さらに、本発明の技術的思想は、具体的な印刷装置にて具現化されるのみならず、当該装置を構成する各手段が行う工程によって構成される印刷方法において具現化することもできる。むろん、上述した印刷装置がプログラムを読み込んで上述した各手段を実現する場合には、当該各手段に対応する機能を実行させるプログラムや該プログラムを記録した各種記録媒体においても本発明の技術的思想が具現化できることは言うまでもない。なお、本発明の技術的思想は、印刷装置、方法のみならず、該印刷装置、方法に組み込まれたキャリブレーション装置、方法においても具現化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンピューターのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】コンピューターのソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図3】プリンターのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】印刷処理のフローチャートである。
【図5】設定テーブルPTの一例を示す図である。
【図6】キャリブレーション処理のフローチャートである。
【図7】固定パッチデータFPDの一例を示す図である。
【図8】測色データMDの一例を示す図である。
【図9】補正テーブルATを作成する様子を示す模式図である。
【図10】カラーパッチの個数を示すグラフである。
【図11】ヒストグラムの例を示す図である。
【図12】カラーパッチの形成位置および大きさを決定する様子の説明図である。
【図13】キャリブレーション設定を受け付けるためのUI画面を示す図である。
【図14】変形例のキャリブレーション処理のフローチャートである。
【図15】変形例のUI画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.キャリブレーション装置、印刷装置の構成:
2.印刷処理:
3.設定処理:
4.変形例:
【0013】
1.キャリブレーション装置、印刷装置の構成:
図1は、本発明の一実施例にかかるプロファイル作成方法を実行するコンピューターの構成を示すブロック図である。同図において、コンピューター10はCPU11とRAM12とROM13とハードディスクドライブ(HDD)14と汎用インターフェース(GIF)15とビデオインターフェース(VIF)16と入力インターフェース(IIF)17とバス18とから構成されている。バス18は、コンピューター10を構成する各要素11〜17の間でのデータ通信を実現するものであり、図示しないチップセット等によって通信が制御されている。HDD14には、オペレーティングシステム(OS)を含む各種プログラムを実行するためのプログラムデータPDが記憶されており、当該プログラムデータPDをRAM12に展開しながらCPU11が当該プログラムデータPDに準じた演算を実行する。
【0014】
GIF15は、例えばUSB規格に準じたインターフェースを提供するものであり、外部のプリンター20をコンピューター10に接続させている。本実施例のプリンター20は、インクジェット方式のプリンターであり、シアン(C)マゼンタ(M)イエロー(Y)ブラック(K)のインク滴を、コンピューター10によって指定されたインク量に基づいて吐出することにより、印刷画像を形成する。VIF16はコンピューター10を外部のディスプレイ40に接続し、ディスプレイ40に画像を表示するためのインターフェースを提供する。IIF17はコンピューター10を外部のキーボード50aとマウス50bに接続し、キーボード50aとマウス50bからの入力信号をコンピューター10が取得するためのインターフェースを提供する。
【0015】
図2は、プリンター20の構成を示すブロック図である。プリンター20は、ASIC21と印刷ヘッド22と測色ヘッド23と吐出制御回路24と印刷ヘッド駆動制御回路25と測色ヘッド駆動制御回路26と紙送りモーター駆動制御回路27とGIF28とバス29とを有している。印刷ヘッド22は、吐出制御回路24によって制御されることにより、図示しないCMYKインクカートリッジからインクの供給を受け、CMYKインクのインク滴を印刷用紙上に吐出する。また、印刷ヘッド22は、印刷ヘッド駆動制御回路25に制御されたキャリッジモーターの駆動により、主走査方向に駆動する。印刷ヘッド22の主走査方向の駆動とともに、紙送りモーター駆動制御回路27が紙送りモーターを駆動させて印刷用紙を副走査方向に搬送することにより、印刷用紙上に2次元画像を形成することができる。画像の形成が完了した印刷用紙は、さらに紙送りモーター駆動制御回路27が紙送りモーターを駆動させることにより、測色ヘッド23によって測色可能な搬送位置まで搬送される。
【0016】
測色ヘッド23は、測色ヘッド駆動制御回路26が測色ヘッド駆動モーターを駆動制御することにより、印刷用紙に対して主走査方向に駆動する。測色ヘッド23は、図示しない光センサーを具備し、印刷用紙上に形成された印刷画像が示す色の色彩値(CIELAB色空間のL*a*b*値)を取得(測色)する。測色ヘッド23が測色を行う際に、測色ヘッド23を主走査させつつ、紙送りモーター駆動制御回路27と紙送りモーターによって印刷用紙を副走査させることにより、印刷用紙上の任意の位置について測色を行うことができる。ASIC21は、バス29を介して各構成要素24〜28と接続されており、GIF28を介してコンピューター10から入力される印刷制御データに基づいて、各構成要素22〜27の制御を実行する。また、ASIC21は、各構成要素24〜27から印刷ステータス情報や測色データMDを取得し、GIF28を介してコンピューター10へ出力する。
【0017】
図3は、コンピューター10において実行されるプログラムのソフトウェア、および、HDD14に記憶された各データのブロック図である。コンピューター10においては、キャリブレーションプログラムP1とプリンタードライバーP2とが実行されている。キャリブレーションプログラムP1は、設定管理部P1aとカラーパッチ決定部P1bと測色部P1cと補正データ作成部P1dとを備えている。プリンタードライバーP2は、サイズ変換部P2aと色変換部P2bとハーフトーン部P2cと印刷データ生成部P2dとから構成されている。HDD14には、印刷対象の画像データIDと色変換テーブルLUTと補正テーブルATと設定テーブルPTと測色データMDと標準データSDと固定パッチデータFPDとが記憶されている。
【0018】
2.印刷処理:
図4は、印刷処理のフローチャートである。ステップS100においては、印刷対象の画像データIDを取得する。本実施例の画像データIDは、各画素がレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色要素の階調値を格納する画像データである。ステップS110においては、サイズ変換部P2aが印刷用紙サイズと印刷解像度とに基づいて画像データIDのサイズ変換を行う。ステップS120においては、色変換部P2bが色変換テーブルLUTを参照して画像データIDを色変換する。色変換テーブルLUTは、RGB階調値とインク量を示すCMYKインクのインク量階調値との対応関係を複数の格子点について規定したものであり、補間演算を行うことにより各画素のRGB階調値に対応するインク量階調値を算出する。画像データIDが各画素がインク量階調値を有するインク量画像データに変換できたら、ステップS130において該インク量画像データIIDをRAM12に記憶する。ステップS140においては、設定管理部P1aがHDD14から設定テーブルPTを読み出し、該設定テーブルPTに格納された周期設定値FPを取得する。
【0019】
図5は、設定テーブルPTの一例を示す図である。周期設定値FPは、キャリブレーションを実行する時間間隔を指定する値であり、例えば1日〜365日の間の値をとる。ステップS120では、設定管理部P1aがHDD14から補正テーブルATを読み出し、その更新日時を取得する。ステップS150において、設定管理部P1aは、現在、補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過していない否かを判定する。現在、補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過していない場合には、キャリブレーション処理を実行しない。一方、現在、補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過している場合には、ステップS160においてキャリブレーション処理を実行する。
【0020】
図6は、キャリブレーション処理のフローチャートである。ステップS161では、カラーパッチ決定部P1bが補正テーブルATに格納されたカラーパッチ設定のモード設定値MPを取得し、該モード設定値MPに基づいてカラーパッチ設定がいずれであるかを判定する。本実施例では、カラーパッチ設定が固定モードか自動モードのいずれかを設定することができ、例えば固定モードと自動モードがそれぞれモード設定値MPの”0”と”1”に対応している。モード設定値MPが”0”、すなわちカラーパッチ設定が固定モードである場合には、HDD14に記憶された固定パッチデータFPDを取得し、該固定パッチデータFPDをハーフトーン部P2cに出力する(ステップS162)。固定パッチデータFPDは、印刷解像度ごとに用意されており、画像データIDを印刷する際の印刷解像度の固定パッチデータFPDが出力される。ハーフトーン部P2cは、固定パッチデータFPDに対してディザ法や誤差拡散法等のハーフトーン処理を実行し(ステップS163)、さらにハーフトーン処理のデータに対して印刷データ生成部P2dがラスタライズ等の処理を実行し、プリンター20のASIC21が制御可能な印刷制御データを作成する(ステップS164)。印刷制御データをプリンター20に出力することにより、プリンター20はカラーパッチを印刷する(ステップS165)。具体的には、主走査および副走査を行いつつ、印刷ヘッド22が固定パッチデータFPDの指定するCMYKインクのインク量に応じてインクドットを形成することにより、カラーパッチを印刷する。従って、ステップS165を実行する各ハードウェア要素が本発明のパッチ印刷手段を構成する。
【0021】
図7は、固定パッチデータFPDの一例を示す図である。固定パッチデータFPDは、各画素がCMYKインクのインク量を有する画像データであり、CMYKインクのそれぞれについて一次色のグラデーションを形成するカラーパッチ群を表す。本実施例では、CMYKインクが0〜255階調のインク量の範囲で吐出可能であり、0〜255階調の間で16階調ずつインク量が増加するインク量階調値(0,15,31,47・・・255)によって、各インクについて18個ずつカラーパッチを形成するものとする。従って、全部で18階調×4色=72個のカラーパッチが印刷されることとなる。
【0022】
カラーパッチが印刷できると、カラーパッチの測色を実行する(ステップS166)。具体的には、測色部P1cが各カラーパッチの位置を特定するデータをプリンター20のASIC21に出力することにより、測色ヘッド23の主走査と、印刷用紙の副走査とが順次行われ、各カラーパッチの測色が行われる。固定モードにおいては、各カラーパッチについて5箇所(左上隅,右上隅,中央,左下隅,右下隅)ずつ測色を行い、それらの平均値を各カラーパッチの測色値とする。補正データ作成部P1dは、各カラーパッチを測色して得られた測色値を測色データMDに記憶させる(ステップS167)。
【0023】
図8は、測色データMDの一例を示す図である。測色データMDにおいては、18×4個の各カラーパッチについて測色値が格納されるとともに、各測色値が得られた測色日時、および、各カラーパッチの形成位置が対応付けて格納されている。固定モードの場合には、18×4個のすべてのカラーパッチを一括して印刷・測色するため、同一の測色日時が格納されることとなる。なお、測色データMDは本発明の履歴データに相当する。補正データ作成部P1dは、標準データSDをHDD13から取得し、該標準データSDに規定された各カラーパッチが示すべき色彩値の標準値と測色データMDの測色値との偏差を算出し、該偏差に基づいて補正テーブルATを作成する(ステップS168)。
【0024】
図9は、補正テーブルATを作成する様子を示す模式図である。図9においてはCインクの明度(L*値)についてカラーパッチの標準値(○)と測色値(●)をプロットしている。例えば、Cインクのインク量階調値がX1のカラーパッチについての標準値がαであり、測色値がβ≠αである場合には、Cインクのインク量階調値X1付近についてインク量階調値の補正を行う必要がある。測色値をフィッティングした曲線が当該カラーパッチの標準値であるαを示すときのインク量階調値X2である場合には、Cインクのインク量階調値X1が入力されたときに、実際にはインク量階調値X2で印刷を行うようにすれば標準値αが再現できることとなる。補正テーブルATにおいては、インク量階調値X1を入力値(補正前の階調値)、インク量階調値X2を出力値(補正後の階調値)として、入力値と出力値との対応関係を補正テーブルATに格納する。以上の対応関係がCMYKインクについて格納できると、補正テーブルATの更新日時を現在とする。同時に、既存の補正テーブルATは削除する。補正テーブルATが作成できるとキャリブレーション処理を終了する。
【0025】
キャリブレーション処理が終了すると、RAM12からインク量画像データIIDを読み出し、該インク量画像データIIDの各画素が有するCMYKインクのインク量階調値を補正テーブルATに基づいて補正する(ステップS180)。また、ステップS150において補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過しておらず、キャリブレーション処理を実行しないとした場合には、そのままステップS180以降を実行する。補正後のインク量画像データIIDをハーフトーン部P2cに出力する(ステップS190)。ハーフトーン部P2cは、インク量画像データIIDに対してハーフトーン処理を実行し(ステップS200)、さらにハーフトーン処理のデータに対して印刷データ生成部P2dがラスタライズ等の処理を実行し、プリンター20のASIC21が制御可能な印刷制御データを作成する(ステップS210)。印刷制御データをプリンター20に出力することにより、プリンター20画像データIDに対応する印刷画像を印刷する(ステップS220)。このようにすることにより、CMYKインクの全濃度域にわたって標準値が再現する印刷画像を形成することができる。なお、ユーザーが設定した周期設定値FPが経過する前にはキャリブレーション処理をスキップするため、過剰な頻度でキャリブレーション処理が実行されることが防止できる。しかしながら、固定モードの場合、印刷・測色されるカラーパッチの個数は72個であり、ユーザーによっては時間がかかり過ぎると感じたり、インクがもったいないと感じる場合もある。そこで、本実施例では、自動モードを用意している。以降、自動モードについて説明する。
【0026】
図6のステップS161にて自動モードが設定されていると判定した場合には、ステップS169においてカラーパッチ決定部P1bは印刷・測色するカラーパッチの個数を決定する。カラーパッチの個数は、設定テーブルPTに設定されている周期設定値FPと精度設定値APとに基づいて決定される。
【0027】
図10は、カラーパッチの個数と周期設定値FPと精度設定値APとの関係を示すグラフである。カラーパッチの個数は、固定モードの場合のカラーパッチの72個に対して、補正係数E1,E2を乗算することにより得られる。補正係数E1は、周期設定値FPの線形増加関数であり、周期設定値FPが最大の365日である場合に1となる。従って、周期設定値FPが大きく、キャリブレーション処理の実行頻度が低い場合にカラーパッチの個数は多くなる傾向を有する。補正係数E2は、精度設定値APの線形増加関数であり、精度設定値APが最大の100%である場合に1となる。なお、精度設定値APは0〜100%の値をとり、値が大きいほどユーザーが精度を重視し、値が小さいほどユーザーが印刷の迅速さを重視することを示す。従って、ユーザーが精度を重視し、迅速さを軽視するほど、カラーパッチの個数は多くなる傾向を有する。次のステップS170では、カラーパッチ決定部P1bは、RAM12からインク量画像データIIDを読み出し、該インク量画像データIIDの各画素が有するCMYKインクのインク量階調値を解析する。インク量画像データIIDは、予め印刷処理において作成されているため、解析のために改めて作成する必要はない。また、インク量画像データIIDそのものを解析する必要はなく、縮小した画像データに基づいて解析を行ってもよい。
【0028】
図11は、前記解析において作成されるヒストグラムの例を示す図である。このヒストグラムでは、固定モードにおいて印刷されるカラーパッチのインク量階調値(0,15,31,47・・・255)を中央値とする階級(階級の幅は16)が設けられる。ヒストグラムが作成できると、全インクの各階級の相対度数の標準偏差を算出(ステップS171)し、該標準偏差が所定の閾値(例えば5%。)よりも大きいか否かを判定する(ステップS172)。標準偏差が閾値よりも大きい場合には、印刷する画像データIDが特徴的である(色・濃度の偏りがある)と考えることができる。この場合には、ステップS173において、相対度数の上位の階級をステップS169にて決定したカラーパッチの個数分だけ取得し、該階級の中央値が示すインク量階調値を有するカラーパッチを形成すると決定する。このようにすることにより、インク量画像データIIDにおいて多く使用されるインクとインク濃度についてのカラーパッチを形成することができる。例えば、風景写真の場合には、空色を再現可能なインク量に対応するカラーパッチを形成し、特に空色について再現精度を向上させることができる。なお、ステップS173にて決定されるカラーパッチのインク量階調値に対応するインクは本発明の多用インクに相当し、該インク量階調値が示すインク量は本発明の頻出インク量に相当する。
【0029】
一方、印刷する画像データIDが特徴を有していない場合には、該測色データMDに測色値が記憶された測色日時が古いカラーパッチを形成すると決定する(ステップS174)。この場合も、ステップS169にて決定したカラーパッチの個数分だけ、測色日時が古い(上位の)カラーパッチを形成すると決定する。次に、カラーパッチ決定部P1bは、形成すると決定したカラーパッチの形成位置および大きさを決定する(ステップS175)。プリンター20の色再現特性は経時的に変動するため、測色日時が古いカラーパッチについての測色値は信頼性が低いと考えることができる。従って、測色日時が古いカラーパッチを印刷・測色することにより、信頼性が低いと測色値を優先的に更新させることができる。また、必然的に、直前に印刷されたカラーパッチとは異なるカラーパッチが印刷対象として決定されることとなる。
【0030】
図12は、カラーパッチの形成位置および大きさを決定する様子の説明図である。カラーパッチ決定部P1bは、形成すると決定したカラーパッチのインク量階調値を中央値とした階級に属する画素(注目画素)のインク量画像データIIDにおける空間的な分布を各カラーパッチについて解析する。図12に示すように、注目画素が存在する位置の重心座標、および、該重心座標と各注目画素との距離の標準偏差を算出する。そして、該算出した重心座標を矩形状のカラーパッチの重心座標とし、該標準偏差に比例する長さをカラーパッチの一辺の長さとする。なお、印刷する画像データIDが特徴を有していない場合には、該測色データMDに測色値が記憶された測色日時が古いカラーパッチを、該カラーパッチに対応付けて記憶され位置と異なる位置に形成するようにしてもよい。このようにすることにより、複数のタイミングで同一のカラーパッチが形成される位置を分散させることができる。形成すると決定したすべてのカラーパッチについて形成位置と大きさを決定すると、ステップS176においてカラーパッチ決定部P1bは各カラーパッチの位置を調整する。
【0031】
ここでは、各カラーパッチが重なっている場合には、重ならないように位置を調整する。以上のようにすることにより、インク量画像データIIDにおいて各カラーパッチのインク量階調値に類似するインク量階調値を有する画素が存在する位置に、各カラーパッチを形成することができる。各カラーパッチの大きさは、各カラーパッチのインク量階調値に類似するインク量階調値を有する画素の分布する広がりに対応することとなる。以上のようにして、形成するカラーパッチのインク量階調値と位置と大きさを決定すると、インク量画像データIIDと同じ画素数の画像データに対して、決定されたカラーパッチを配置することにより、自動パッチデータAPDを生成する(ステップS177)。次に、自動パッチデータAPDをハーフトーン部P2cに出力する(ステップS178)。以降の処理は、固定モードと同様にカラーパッチを印刷する(〜ステップS165)。なお、画像データIDの印刷と同一の印刷解像度かつ同一の印刷用紙にカラーパッチを印刷することとする。
【0032】
自動モードにおけるカラーパッチの測色も、固定モードと同様に行われるが、カラーパッチ決定部P1bがステップS173〜S176にて決定・調整したカラーパッチの位置および大きさに基づいて各カラーパッチの測色位置が指定される。カラーパッチの大きさが大きければ、それに応じて測色部P1cは5箇所(左上隅,右上隅,中央,左下隅,右下隅)の測色位置の範囲を広く設定する。自動モードの場合には、基本的に72個(18階調×4色)すべてのカラーパッチが印刷・測色されないため、ステップS167では図8に示す測色データMDの測色値および測色日時は一部のカラーパッチについてのみ更新されることとなる。特に、インク量画像データIIDが特徴を有さない場合には、測色データMDの測色値のうち測色日時の古いカラーパッチについて測色値が更新されることとなる。自動モードの場合においても、固定モードと同様に補正テーブルATが作成される(ステップS168)。
【0033】
ただし、自動モードの場合には、基本的に72個すべてのカラーパッチが印刷・測色されないため、測色日時の異なる測色値に基づいて補正テーブルATが作成されることとなる。上述したようにプリンター20の色再現特性は経時的に変動するため、測色日時が新しい測色値に基づいて補正テーブルATが作成するのが望ましい。これに対して、本実施例において、インク量画像データIIDが特徴を有する場合には、該インク量画像データIIDにおいて類似するインク量階調値を有する画素が多く含まれるインク量階調値(多用インク・頻出インク量)のカラーパッチについては印刷・測色することとしている。従って、画像データIDにおいて特徴的な色については高精度で再現することができる。一方、インク量画像データIIDが特徴を有さない場合には、測色データMDの測色値のうち測色日時の古い測色値のカラーパッチについては印刷・測色することとしている。従って、特定の閾値のキャリブレーション精度が極端に劣化することが防止でき、全体的に良好な色再現精度を実現することができる。
【0034】
3.設定処理:
図13は、キャリブレーション設定を受け付けるためのUI画面を示す図である。該UI画面は、設定管理部P1aによってディスプレイ40に表示される。UI画面が表示されている期間において、キーボード50aとマウス50bからの入力信号が受け付けられる。該UI画面では、固定モードと自動モードとのいずれかを択一的に選択するラジオボタンR1が設けられている。このラジオボタンR1に対する操作によってモード設定値MPが指定される。該UI画面には、周期設定値FPと精度設定値APを指定するためのスライダーバーS1,S2が設けられている。周期設定値FPは1日(短い)から365日(長い)の間で設定でき、精度設定値APは0%(はやい)から100%(きれい)の間で設定できる。該UI画面には、決定ボタンB1が設けられており、該決定ボタンB1がクリックされたときの操作状態が設定管理部P1aによって取得され、該操作状態に応じて設定テーブルPTの各設定値MP,FP,APが更新される。このように、キャリブレーションの設定をユーザーが指定できるようにし、該設定に応じてカラーパッチが決定されるようにしたため、ユーザーが過剰に感じる程の数のカラーパッチが形成されたり、処理時間が費やされたりすることが防止できる。
【0035】
4.変形例:
図14は、本変形例にかかるキャリブレーション処理のフローチャートである。本実施例では、自動モードであっても、インク量画像データIIDに特徴がないと判断された場合には、固定モードに移行することとしている。このようにすることにより、インク量画像データIIDに特徴がなく、どのインクのどのインク濃度に重点をおいてキャリブレーション処理を実行すべきは判然しない場合には、全体的に再現精度を向上させることができる。
【0036】
図15は、変形例においてキャリブレーション設定を受け付けるためのUI画面を示す図である。同図においては、カラーパッチの大きさ設定を、自動モード、大固定モード、小固定モードのいずれかに選択することができるラジオボタンR2が追加されている。自動モードが設定された場合には、ステップS175にて前実施例と同様の手法によってカラーパッチの大きさを決定する。一方、大固定モードと小固定モードとが設定された場合には、注目画素が存在する位置の標準偏差に拘わらず、一定の大きさのカラーパッチを形成すると決定する。むろん、大固定モードが設定された場合に形成されるカラーパッチの大きさは、小固定モードが設定された場合に形成されるカラーパッチよりも大きい。
【符号の説明】
【0037】
10…コンピューター、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…HDD、15…GIF、16…VIF、17…IIF、18…バス、20…プリンター、21…ASIC、22…印刷ヘッド、23…測色ヘッド、24…吐出制御回路、25…印刷ヘッド駆動制御回路、26…測色ヘッド駆動制御回路、27…紙送りモーター駆動制御回路、28…GIF、29…バス、40…ディスプレイ、50a…キーボード、50b…マウス、P1…キャリブレーションプログラム、P1a…設定管理部、P1b…カラーパッチ決定部、P1c…測色部、P1d…補正データ作成部、P2…プリンタードライバー、P2a…サイズ変換部、P2b…色変換部、P2c…ハーフトーン部、P2d…印刷データ生成部、PD…プログラムデータ、ID…画像データ、AT…補正テーブル、PT…設定テーブル、MD…測色データ、SD…標準データ、FPD…固定パッチデータ、APD…自動パッチデータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびキャリブレーション方法に関し、特に画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置およびそのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリブレーションを実行させるにあたり、ユーザーが最適と思われる環境情報を任意に設定するキャリブレーション方法が提案されている(特許文献1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−213036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的にキャリブレーションにおいては、印刷・測色するカラーパッチの個数が多ければ多いほど、精度を高くすることができるが、キャリブレーションに要する時間や用紙の量も多くなる。そのため、あるユーザーにおいてはキャリブレーションに要する時間が過剰に長いと感じられたり、別のユーザーにおいては意図した精度が達成できないと感じられたりすることがあった。また、印刷しようとする画像が示す色とは無関係の色のカラーパッチばかりを形成し、印刷しようとする画像が示す色については精度が確保されないとう問題もあった。
【0005】
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、効率的なキャリブレーションを行うことができる印刷装置およびキャリブレーション方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、決定手段が各画素についてインク量が指定された画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定する。そして、パッチ印刷手段が前記決定したカラーパッチを印刷する。さらに、測色手段が前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得する。補正データ作成手段は、前記色彩値に基づいて補正データを作成し、印刷手段は該補正データに基づいて補正された前記インク量に基づいて前記インクドットを形成する。このように、印刷する前記画像データを解析した結果に応じて、形成する前記カラーパッチを決定するため、余剰なカラーパッチが印刷されることが防止でき、効率的にキャリブレーションを行うことができる。
【0007】
また、前記印刷手段による前記画像データの印刷において他のインクよりも多く使用される多用インクを使用した前記カラーパッチを形成するのが好ましい。前記画像データの印刷に多く使用される前記インクについての精度を向上させておけば、前記画像データ全体の再現精度を効率的に向上させることができるからである。さらに、前記画像データの各画素について指定されたインク量のうち他のインク量よりも多く存在する頻出インク量に基づく前記カラーパッチを形成するのが好ましい。この場合も、前記画像データの印刷に多く使用される前記インク量についての精度を向上させておけば、前記画像データ全体の再現精度を効率的に向上させることができるからである。
【0008】
また、前記カラーパッチの色のみならず、前記カラーパッチの位置や大きさも、前記解析の結果に応じて決定してもよい。すなわち、前記画像データにおける前記画素の空間的な分布状況に基づいて前記カラーパッチを印刷する位置や大きさを決定してもよい。基本的には、前記カラーパッチに対応するインク量の画素が多く分布している領域に該カラーパッチを形成するのが望ましいし、前記カラーパッチに対応するインク量の画素が広く分布する場合には該カラーパッチを大きく形成するのが望ましい。前記カラーパッチを大きく形成すれば、該カラーパッチにおける測色点の分布範囲も広くすることができる。
【0009】
前記画像データの解析結果のみならず、過去に印刷した前記カラーパッチの履歴に応じて前記カラーパッチを決定するようにしてもよい。そのために、過去に前記印刷手段が印刷した前記カラーパッチと、該カラーパッチを測色して得られた前記色彩値とを格納する履歴データとを記憶する記録媒体がさらに備えられる。そして、前記履歴データを参照することにより、直前に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを印刷すると決定する。これにより、連続して同一の前記カラーパッチが形成されることが防止できる。前記補正データ作成手段は、前記履歴データに格納された前記色彩値、および、過去に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを測色して得られた前記色彩値を総合して前記補正データを作成する。すなわち、複数の時期に印刷された前記カラーパッチの測色値に基づいて前記補正データを作成する。このようにすることにより、各時期に印刷される前記カラーパッチの個数を減少させることができ、迅速な印刷を実現させることができる。また、前記画像データが特徴的でない場合も考えられる。このような場合には、前記履歴データに基づく前記カラーパッチを優先して形成するのが望ましい。
【0010】
さらに、本発明の技術的思想は、具体的な印刷装置にて具現化されるのみならず、当該装置を構成する各手段が行う工程によって構成される印刷方法において具現化することもできる。むろん、上述した印刷装置がプログラムを読み込んで上述した各手段を実現する場合には、当該各手段に対応する機能を実行させるプログラムや該プログラムを記録した各種記録媒体においても本発明の技術的思想が具現化できることは言うまでもない。なお、本発明の技術的思想は、印刷装置、方法のみならず、該印刷装置、方法に組み込まれたキャリブレーション装置、方法においても具現化される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】コンピューターのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】コンピューターのソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図3】プリンターのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】印刷処理のフローチャートである。
【図5】設定テーブルPTの一例を示す図である。
【図6】キャリブレーション処理のフローチャートである。
【図7】固定パッチデータFPDの一例を示す図である。
【図8】測色データMDの一例を示す図である。
【図9】補正テーブルATを作成する様子を示す模式図である。
【図10】カラーパッチの個数を示すグラフである。
【図11】ヒストグラムの例を示す図である。
【図12】カラーパッチの形成位置および大きさを決定する様子の説明図である。
【図13】キャリブレーション設定を受け付けるためのUI画面を示す図である。
【図14】変形例のキャリブレーション処理のフローチャートである。
【図15】変形例のUI画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.キャリブレーション装置、印刷装置の構成:
2.印刷処理:
3.設定処理:
4.変形例:
【0013】
1.キャリブレーション装置、印刷装置の構成:
図1は、本発明の一実施例にかかるプロファイル作成方法を実行するコンピューターの構成を示すブロック図である。同図において、コンピューター10はCPU11とRAM12とROM13とハードディスクドライブ(HDD)14と汎用インターフェース(GIF)15とビデオインターフェース(VIF)16と入力インターフェース(IIF)17とバス18とから構成されている。バス18は、コンピューター10を構成する各要素11〜17の間でのデータ通信を実現するものであり、図示しないチップセット等によって通信が制御されている。HDD14には、オペレーティングシステム(OS)を含む各種プログラムを実行するためのプログラムデータPDが記憶されており、当該プログラムデータPDをRAM12に展開しながらCPU11が当該プログラムデータPDに準じた演算を実行する。
【0014】
GIF15は、例えばUSB規格に準じたインターフェースを提供するものであり、外部のプリンター20をコンピューター10に接続させている。本実施例のプリンター20は、インクジェット方式のプリンターであり、シアン(C)マゼンタ(M)イエロー(Y)ブラック(K)のインク滴を、コンピューター10によって指定されたインク量に基づいて吐出することにより、印刷画像を形成する。VIF16はコンピューター10を外部のディスプレイ40に接続し、ディスプレイ40に画像を表示するためのインターフェースを提供する。IIF17はコンピューター10を外部のキーボード50aとマウス50bに接続し、キーボード50aとマウス50bからの入力信号をコンピューター10が取得するためのインターフェースを提供する。
【0015】
図2は、プリンター20の構成を示すブロック図である。プリンター20は、ASIC21と印刷ヘッド22と測色ヘッド23と吐出制御回路24と印刷ヘッド駆動制御回路25と測色ヘッド駆動制御回路26と紙送りモーター駆動制御回路27とGIF28とバス29とを有している。印刷ヘッド22は、吐出制御回路24によって制御されることにより、図示しないCMYKインクカートリッジからインクの供給を受け、CMYKインクのインク滴を印刷用紙上に吐出する。また、印刷ヘッド22は、印刷ヘッド駆動制御回路25に制御されたキャリッジモーターの駆動により、主走査方向に駆動する。印刷ヘッド22の主走査方向の駆動とともに、紙送りモーター駆動制御回路27が紙送りモーターを駆動させて印刷用紙を副走査方向に搬送することにより、印刷用紙上に2次元画像を形成することができる。画像の形成が完了した印刷用紙は、さらに紙送りモーター駆動制御回路27が紙送りモーターを駆動させることにより、測色ヘッド23によって測色可能な搬送位置まで搬送される。
【0016】
測色ヘッド23は、測色ヘッド駆動制御回路26が測色ヘッド駆動モーターを駆動制御することにより、印刷用紙に対して主走査方向に駆動する。測色ヘッド23は、図示しない光センサーを具備し、印刷用紙上に形成された印刷画像が示す色の色彩値(CIELAB色空間のL*a*b*値)を取得(測色)する。測色ヘッド23が測色を行う際に、測色ヘッド23を主走査させつつ、紙送りモーター駆動制御回路27と紙送りモーターによって印刷用紙を副走査させることにより、印刷用紙上の任意の位置について測色を行うことができる。ASIC21は、バス29を介して各構成要素24〜28と接続されており、GIF28を介してコンピューター10から入力される印刷制御データに基づいて、各構成要素22〜27の制御を実行する。また、ASIC21は、各構成要素24〜27から印刷ステータス情報や測色データMDを取得し、GIF28を介してコンピューター10へ出力する。
【0017】
図3は、コンピューター10において実行されるプログラムのソフトウェア、および、HDD14に記憶された各データのブロック図である。コンピューター10においては、キャリブレーションプログラムP1とプリンタードライバーP2とが実行されている。キャリブレーションプログラムP1は、設定管理部P1aとカラーパッチ決定部P1bと測色部P1cと補正データ作成部P1dとを備えている。プリンタードライバーP2は、サイズ変換部P2aと色変換部P2bとハーフトーン部P2cと印刷データ生成部P2dとから構成されている。HDD14には、印刷対象の画像データIDと色変換テーブルLUTと補正テーブルATと設定テーブルPTと測色データMDと標準データSDと固定パッチデータFPDとが記憶されている。
【0018】
2.印刷処理:
図4は、印刷処理のフローチャートである。ステップS100においては、印刷対象の画像データIDを取得する。本実施例の画像データIDは、各画素がレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色要素の階調値を格納する画像データである。ステップS110においては、サイズ変換部P2aが印刷用紙サイズと印刷解像度とに基づいて画像データIDのサイズ変換を行う。ステップS120においては、色変換部P2bが色変換テーブルLUTを参照して画像データIDを色変換する。色変換テーブルLUTは、RGB階調値とインク量を示すCMYKインクのインク量階調値との対応関係を複数の格子点について規定したものであり、補間演算を行うことにより各画素のRGB階調値に対応するインク量階調値を算出する。画像データIDが各画素がインク量階調値を有するインク量画像データに変換できたら、ステップS130において該インク量画像データIIDをRAM12に記憶する。ステップS140においては、設定管理部P1aがHDD14から設定テーブルPTを読み出し、該設定テーブルPTに格納された周期設定値FPを取得する。
【0019】
図5は、設定テーブルPTの一例を示す図である。周期設定値FPは、キャリブレーションを実行する時間間隔を指定する値であり、例えば1日〜365日の間の値をとる。ステップS120では、設定管理部P1aがHDD14から補正テーブルATを読み出し、その更新日時を取得する。ステップS150において、設定管理部P1aは、現在、補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過していない否かを判定する。現在、補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過していない場合には、キャリブレーション処理を実行しない。一方、現在、補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過している場合には、ステップS160においてキャリブレーション処理を実行する。
【0020】
図6は、キャリブレーション処理のフローチャートである。ステップS161では、カラーパッチ決定部P1bが補正テーブルATに格納されたカラーパッチ設定のモード設定値MPを取得し、該モード設定値MPに基づいてカラーパッチ設定がいずれであるかを判定する。本実施例では、カラーパッチ設定が固定モードか自動モードのいずれかを設定することができ、例えば固定モードと自動モードがそれぞれモード設定値MPの”0”と”1”に対応している。モード設定値MPが”0”、すなわちカラーパッチ設定が固定モードである場合には、HDD14に記憶された固定パッチデータFPDを取得し、該固定パッチデータFPDをハーフトーン部P2cに出力する(ステップS162)。固定パッチデータFPDは、印刷解像度ごとに用意されており、画像データIDを印刷する際の印刷解像度の固定パッチデータFPDが出力される。ハーフトーン部P2cは、固定パッチデータFPDに対してディザ法や誤差拡散法等のハーフトーン処理を実行し(ステップS163)、さらにハーフトーン処理のデータに対して印刷データ生成部P2dがラスタライズ等の処理を実行し、プリンター20のASIC21が制御可能な印刷制御データを作成する(ステップS164)。印刷制御データをプリンター20に出力することにより、プリンター20はカラーパッチを印刷する(ステップS165)。具体的には、主走査および副走査を行いつつ、印刷ヘッド22が固定パッチデータFPDの指定するCMYKインクのインク量に応じてインクドットを形成することにより、カラーパッチを印刷する。従って、ステップS165を実行する各ハードウェア要素が本発明のパッチ印刷手段を構成する。
【0021】
図7は、固定パッチデータFPDの一例を示す図である。固定パッチデータFPDは、各画素がCMYKインクのインク量を有する画像データであり、CMYKインクのそれぞれについて一次色のグラデーションを形成するカラーパッチ群を表す。本実施例では、CMYKインクが0〜255階調のインク量の範囲で吐出可能であり、0〜255階調の間で16階調ずつインク量が増加するインク量階調値(0,15,31,47・・・255)によって、各インクについて18個ずつカラーパッチを形成するものとする。従って、全部で18階調×4色=72個のカラーパッチが印刷されることとなる。
【0022】
カラーパッチが印刷できると、カラーパッチの測色を実行する(ステップS166)。具体的には、測色部P1cが各カラーパッチの位置を特定するデータをプリンター20のASIC21に出力することにより、測色ヘッド23の主走査と、印刷用紙の副走査とが順次行われ、各カラーパッチの測色が行われる。固定モードにおいては、各カラーパッチについて5箇所(左上隅,右上隅,中央,左下隅,右下隅)ずつ測色を行い、それらの平均値を各カラーパッチの測色値とする。補正データ作成部P1dは、各カラーパッチを測色して得られた測色値を測色データMDに記憶させる(ステップS167)。
【0023】
図8は、測色データMDの一例を示す図である。測色データMDにおいては、18×4個の各カラーパッチについて測色値が格納されるとともに、各測色値が得られた測色日時、および、各カラーパッチの形成位置が対応付けて格納されている。固定モードの場合には、18×4個のすべてのカラーパッチを一括して印刷・測色するため、同一の測色日時が格納されることとなる。なお、測色データMDは本発明の履歴データに相当する。補正データ作成部P1dは、標準データSDをHDD13から取得し、該標準データSDに規定された各カラーパッチが示すべき色彩値の標準値と測色データMDの測色値との偏差を算出し、該偏差に基づいて補正テーブルATを作成する(ステップS168)。
【0024】
図9は、補正テーブルATを作成する様子を示す模式図である。図9においてはCインクの明度(L*値)についてカラーパッチの標準値(○)と測色値(●)をプロットしている。例えば、Cインクのインク量階調値がX1のカラーパッチについての標準値がαであり、測色値がβ≠αである場合には、Cインクのインク量階調値X1付近についてインク量階調値の補正を行う必要がある。測色値をフィッティングした曲線が当該カラーパッチの標準値であるαを示すときのインク量階調値X2である場合には、Cインクのインク量階調値X1が入力されたときに、実際にはインク量階調値X2で印刷を行うようにすれば標準値αが再現できることとなる。補正テーブルATにおいては、インク量階調値X1を入力値(補正前の階調値)、インク量階調値X2を出力値(補正後の階調値)として、入力値と出力値との対応関係を補正テーブルATに格納する。以上の対応関係がCMYKインクについて格納できると、補正テーブルATの更新日時を現在とする。同時に、既存の補正テーブルATは削除する。補正テーブルATが作成できるとキャリブレーション処理を終了する。
【0025】
キャリブレーション処理が終了すると、RAM12からインク量画像データIIDを読み出し、該インク量画像データIIDの各画素が有するCMYKインクのインク量階調値を補正テーブルATに基づいて補正する(ステップS180)。また、ステップS150において補正テーブルATの更新日時から周期設定値FPが経過しておらず、キャリブレーション処理を実行しないとした場合には、そのままステップS180以降を実行する。補正後のインク量画像データIIDをハーフトーン部P2cに出力する(ステップS190)。ハーフトーン部P2cは、インク量画像データIIDに対してハーフトーン処理を実行し(ステップS200)、さらにハーフトーン処理のデータに対して印刷データ生成部P2dがラスタライズ等の処理を実行し、プリンター20のASIC21が制御可能な印刷制御データを作成する(ステップS210)。印刷制御データをプリンター20に出力することにより、プリンター20画像データIDに対応する印刷画像を印刷する(ステップS220)。このようにすることにより、CMYKインクの全濃度域にわたって標準値が再現する印刷画像を形成することができる。なお、ユーザーが設定した周期設定値FPが経過する前にはキャリブレーション処理をスキップするため、過剰な頻度でキャリブレーション処理が実行されることが防止できる。しかしながら、固定モードの場合、印刷・測色されるカラーパッチの個数は72個であり、ユーザーによっては時間がかかり過ぎると感じたり、インクがもったいないと感じる場合もある。そこで、本実施例では、自動モードを用意している。以降、自動モードについて説明する。
【0026】
図6のステップS161にて自動モードが設定されていると判定した場合には、ステップS169においてカラーパッチ決定部P1bは印刷・測色するカラーパッチの個数を決定する。カラーパッチの個数は、設定テーブルPTに設定されている周期設定値FPと精度設定値APとに基づいて決定される。
【0027】
図10は、カラーパッチの個数と周期設定値FPと精度設定値APとの関係を示すグラフである。カラーパッチの個数は、固定モードの場合のカラーパッチの72個に対して、補正係数E1,E2を乗算することにより得られる。補正係数E1は、周期設定値FPの線形増加関数であり、周期設定値FPが最大の365日である場合に1となる。従って、周期設定値FPが大きく、キャリブレーション処理の実行頻度が低い場合にカラーパッチの個数は多くなる傾向を有する。補正係数E2は、精度設定値APの線形増加関数であり、精度設定値APが最大の100%である場合に1となる。なお、精度設定値APは0〜100%の値をとり、値が大きいほどユーザーが精度を重視し、値が小さいほどユーザーが印刷の迅速さを重視することを示す。従って、ユーザーが精度を重視し、迅速さを軽視するほど、カラーパッチの個数は多くなる傾向を有する。次のステップS170では、カラーパッチ決定部P1bは、RAM12からインク量画像データIIDを読み出し、該インク量画像データIIDの各画素が有するCMYKインクのインク量階調値を解析する。インク量画像データIIDは、予め印刷処理において作成されているため、解析のために改めて作成する必要はない。また、インク量画像データIIDそのものを解析する必要はなく、縮小した画像データに基づいて解析を行ってもよい。
【0028】
図11は、前記解析において作成されるヒストグラムの例を示す図である。このヒストグラムでは、固定モードにおいて印刷されるカラーパッチのインク量階調値(0,15,31,47・・・255)を中央値とする階級(階級の幅は16)が設けられる。ヒストグラムが作成できると、全インクの各階級の相対度数の標準偏差を算出(ステップS171)し、該標準偏差が所定の閾値(例えば5%。)よりも大きいか否かを判定する(ステップS172)。標準偏差が閾値よりも大きい場合には、印刷する画像データIDが特徴的である(色・濃度の偏りがある)と考えることができる。この場合には、ステップS173において、相対度数の上位の階級をステップS169にて決定したカラーパッチの個数分だけ取得し、該階級の中央値が示すインク量階調値を有するカラーパッチを形成すると決定する。このようにすることにより、インク量画像データIIDにおいて多く使用されるインクとインク濃度についてのカラーパッチを形成することができる。例えば、風景写真の場合には、空色を再現可能なインク量に対応するカラーパッチを形成し、特に空色について再現精度を向上させることができる。なお、ステップS173にて決定されるカラーパッチのインク量階調値に対応するインクは本発明の多用インクに相当し、該インク量階調値が示すインク量は本発明の頻出インク量に相当する。
【0029】
一方、印刷する画像データIDが特徴を有していない場合には、該測色データMDに測色値が記憶された測色日時が古いカラーパッチを形成すると決定する(ステップS174)。この場合も、ステップS169にて決定したカラーパッチの個数分だけ、測色日時が古い(上位の)カラーパッチを形成すると決定する。次に、カラーパッチ決定部P1bは、形成すると決定したカラーパッチの形成位置および大きさを決定する(ステップS175)。プリンター20の色再現特性は経時的に変動するため、測色日時が古いカラーパッチについての測色値は信頼性が低いと考えることができる。従って、測色日時が古いカラーパッチを印刷・測色することにより、信頼性が低いと測色値を優先的に更新させることができる。また、必然的に、直前に印刷されたカラーパッチとは異なるカラーパッチが印刷対象として決定されることとなる。
【0030】
図12は、カラーパッチの形成位置および大きさを決定する様子の説明図である。カラーパッチ決定部P1bは、形成すると決定したカラーパッチのインク量階調値を中央値とした階級に属する画素(注目画素)のインク量画像データIIDにおける空間的な分布を各カラーパッチについて解析する。図12に示すように、注目画素が存在する位置の重心座標、および、該重心座標と各注目画素との距離の標準偏差を算出する。そして、該算出した重心座標を矩形状のカラーパッチの重心座標とし、該標準偏差に比例する長さをカラーパッチの一辺の長さとする。なお、印刷する画像データIDが特徴を有していない場合には、該測色データMDに測色値が記憶された測色日時が古いカラーパッチを、該カラーパッチに対応付けて記憶され位置と異なる位置に形成するようにしてもよい。このようにすることにより、複数のタイミングで同一のカラーパッチが形成される位置を分散させることができる。形成すると決定したすべてのカラーパッチについて形成位置と大きさを決定すると、ステップS176においてカラーパッチ決定部P1bは各カラーパッチの位置を調整する。
【0031】
ここでは、各カラーパッチが重なっている場合には、重ならないように位置を調整する。以上のようにすることにより、インク量画像データIIDにおいて各カラーパッチのインク量階調値に類似するインク量階調値を有する画素が存在する位置に、各カラーパッチを形成することができる。各カラーパッチの大きさは、各カラーパッチのインク量階調値に類似するインク量階調値を有する画素の分布する広がりに対応することとなる。以上のようにして、形成するカラーパッチのインク量階調値と位置と大きさを決定すると、インク量画像データIIDと同じ画素数の画像データに対して、決定されたカラーパッチを配置することにより、自動パッチデータAPDを生成する(ステップS177)。次に、自動パッチデータAPDをハーフトーン部P2cに出力する(ステップS178)。以降の処理は、固定モードと同様にカラーパッチを印刷する(〜ステップS165)。なお、画像データIDの印刷と同一の印刷解像度かつ同一の印刷用紙にカラーパッチを印刷することとする。
【0032】
自動モードにおけるカラーパッチの測色も、固定モードと同様に行われるが、カラーパッチ決定部P1bがステップS173〜S176にて決定・調整したカラーパッチの位置および大きさに基づいて各カラーパッチの測色位置が指定される。カラーパッチの大きさが大きければ、それに応じて測色部P1cは5箇所(左上隅,右上隅,中央,左下隅,右下隅)の測色位置の範囲を広く設定する。自動モードの場合には、基本的に72個(18階調×4色)すべてのカラーパッチが印刷・測色されないため、ステップS167では図8に示す測色データMDの測色値および測色日時は一部のカラーパッチについてのみ更新されることとなる。特に、インク量画像データIIDが特徴を有さない場合には、測色データMDの測色値のうち測色日時の古いカラーパッチについて測色値が更新されることとなる。自動モードの場合においても、固定モードと同様に補正テーブルATが作成される(ステップS168)。
【0033】
ただし、自動モードの場合には、基本的に72個すべてのカラーパッチが印刷・測色されないため、測色日時の異なる測色値に基づいて補正テーブルATが作成されることとなる。上述したようにプリンター20の色再現特性は経時的に変動するため、測色日時が新しい測色値に基づいて補正テーブルATが作成するのが望ましい。これに対して、本実施例において、インク量画像データIIDが特徴を有する場合には、該インク量画像データIIDにおいて類似するインク量階調値を有する画素が多く含まれるインク量階調値(多用インク・頻出インク量)のカラーパッチについては印刷・測色することとしている。従って、画像データIDにおいて特徴的な色については高精度で再現することができる。一方、インク量画像データIIDが特徴を有さない場合には、測色データMDの測色値のうち測色日時の古い測色値のカラーパッチについては印刷・測色することとしている。従って、特定の閾値のキャリブレーション精度が極端に劣化することが防止でき、全体的に良好な色再現精度を実現することができる。
【0034】
3.設定処理:
図13は、キャリブレーション設定を受け付けるためのUI画面を示す図である。該UI画面は、設定管理部P1aによってディスプレイ40に表示される。UI画面が表示されている期間において、キーボード50aとマウス50bからの入力信号が受け付けられる。該UI画面では、固定モードと自動モードとのいずれかを択一的に選択するラジオボタンR1が設けられている。このラジオボタンR1に対する操作によってモード設定値MPが指定される。該UI画面には、周期設定値FPと精度設定値APを指定するためのスライダーバーS1,S2が設けられている。周期設定値FPは1日(短い)から365日(長い)の間で設定でき、精度設定値APは0%(はやい)から100%(きれい)の間で設定できる。該UI画面には、決定ボタンB1が設けられており、該決定ボタンB1がクリックされたときの操作状態が設定管理部P1aによって取得され、該操作状態に応じて設定テーブルPTの各設定値MP,FP,APが更新される。このように、キャリブレーションの設定をユーザーが指定できるようにし、該設定に応じてカラーパッチが決定されるようにしたため、ユーザーが過剰に感じる程の数のカラーパッチが形成されたり、処理時間が費やされたりすることが防止できる。
【0035】
4.変形例:
図14は、本変形例にかかるキャリブレーション処理のフローチャートである。本実施例では、自動モードであっても、インク量画像データIIDに特徴がないと判断された場合には、固定モードに移行することとしている。このようにすることにより、インク量画像データIIDに特徴がなく、どのインクのどのインク濃度に重点をおいてキャリブレーション処理を実行すべきは判然しない場合には、全体的に再現精度を向上させることができる。
【0036】
図15は、変形例においてキャリブレーション設定を受け付けるためのUI画面を示す図である。同図においては、カラーパッチの大きさ設定を、自動モード、大固定モード、小固定モードのいずれかに選択することができるラジオボタンR2が追加されている。自動モードが設定された場合には、ステップS175にて前実施例と同様の手法によってカラーパッチの大きさを決定する。一方、大固定モードと小固定モードとが設定された場合には、注目画素が存在する位置の標準偏差に拘わらず、一定の大きさのカラーパッチを形成すると決定する。むろん、大固定モードが設定された場合に形成されるカラーパッチの大きさは、小固定モードが設定された場合に形成されるカラーパッチよりも大きい。
【符号の説明】
【0037】
10…コンピューター、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…HDD、15…GIF、16…VIF、17…IIF、18…バス、20…プリンター、21…ASIC、22…印刷ヘッド、23…測色ヘッド、24…吐出制御回路、25…印刷ヘッド駆動制御回路、26…測色ヘッド駆動制御回路、27…紙送りモーター駆動制御回路、28…GIF、29…バス、40…ディスプレイ、50a…キーボード、50b…マウス、P1…キャリブレーションプログラム、P1a…設定管理部、P1b…カラーパッチ決定部、P1c…測色部、P1d…補正データ作成部、P2…プリンタードライバー、P2a…サイズ変換部、P2b…色変換部、P2c…ハーフトーン部、P2d…印刷データ生成部、PD…プログラムデータ、ID…画像データ、AT…補正テーブル、PT…設定テーブル、MD…測色データ、SD…標準データ、FPD…固定パッチデータ、APD…自動パッチデータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置であって、
前記画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定する決定手段と、
前記決定したカラーパッチを印刷するパッチ印刷手段と、
前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得する測色手段と、
前記色彩値に基づいて補正データを作成する補正データ作成手段と、
前記補正データに基づいて補正された前記インク量に基づいて前記インクドットを形成する印刷手段とを具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記決定手段は、
前記印刷手段による前記画像データの印刷において他のインクよりも多く使用される多用インクを特定するとともに、
前記多用インクを使用して形成される前記カラーパッチを印刷すると決定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記決定手段は、
前記画像データの各画素について指定されたインク量のうち他のインク量よりも多く存在する頻出インク量を特定するとともに、
前記決定手段は、前記頻出インク量に基づいて印刷される前記カラーパッチを印刷すると決定することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項4】
前記決定手段は、
前記画素の空間的な分布状況を特定し、
前記決定手段は、前記分布状況に基づいて前記カラーパッチを印刷する位置を決定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記決定手段は、
前記分布状況に基づいて印刷する前記カラーパッチの大きさを決定する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
過去に前記印刷手段が印刷した前記カラーパッチと、該カラーパッチを測色して得られた前記色彩値とを格納する履歴データとを記憶する記録媒体をさらに具備するとともに、
前記決定手段は、前記履歴データを参照することにより、直前に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを印刷すると決定し、
前記補正データ作成手段は、前記履歴データに格納された前記色彩値、および、過去に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを測色して得られた前記色彩値を総合して前記補正データを作成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記解析の結果が前記画像データが特徴的でないことを示す場合に、
前記決定手段は、前記履歴データを参照することにより、過去に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを印刷することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項8】
画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置をキャリブレーションするキャリブレーション方法であって、
前記画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定し、
前記決定したカラーパッチを印刷し、
前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得し、
前記色彩値に基づいて補正データを作成することを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項1】
画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置であって、
前記画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定する決定手段と、
前記決定したカラーパッチを印刷するパッチ印刷手段と、
前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得する測色手段と、
前記色彩値に基づいて補正データを作成する補正データ作成手段と、
前記補正データに基づいて補正された前記インク量に基づいて前記インクドットを形成する印刷手段とを具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記決定手段は、
前記印刷手段による前記画像データの印刷において他のインクよりも多く使用される多用インクを特定するとともに、
前記多用インクを使用して形成される前記カラーパッチを印刷すると決定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記決定手段は、
前記画像データの各画素について指定されたインク量のうち他のインク量よりも多く存在する頻出インク量を特定するとともに、
前記決定手段は、前記頻出インク量に基づいて印刷される前記カラーパッチを印刷すると決定することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項4】
前記決定手段は、
前記画素の空間的な分布状況を特定し、
前記決定手段は、前記分布状況に基づいて前記カラーパッチを印刷する位置を決定する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記決定手段は、
前記分布状況に基づいて印刷する前記カラーパッチの大きさを決定する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
過去に前記印刷手段が印刷した前記カラーパッチと、該カラーパッチを測色して得られた前記色彩値とを格納する履歴データとを記憶する記録媒体をさらに具備するとともに、
前記決定手段は、前記履歴データを参照することにより、直前に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを印刷すると決定し、
前記補正データ作成手段は、前記履歴データに格納された前記色彩値、および、過去に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを測色して得られた前記色彩値を総合して前記補正データを作成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記解析の結果が前記画像データが特徴的でないことを示す場合に、
前記決定手段は、前記履歴データを参照することにより、過去に印刷された前記カラーパッチとは異なる前記カラーパッチを印刷することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項8】
画像データを構成する各画素について指定されたインク量に基づいてインクドットを形成することにより印刷画像を形成する印刷装置をキャリブレーションするキャリブレーション方法であって、
前記画像データを解析し、該解析の結果に応じて印刷するカラーパッチを決定し、
前記決定したカラーパッチを印刷し、
前記カラーパッチを測色することにより、前記カラーパッチが示す色彩値を取得し、
前記色彩値に基づいて補正データを作成することを特徴とするキャリブレーション方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−77844(P2011−77844A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227535(P2009−227535)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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