双方向軸流ファンおよびトンネル換気システム
【課題】簡素で空力性能が高くランニングコストが低くメンテナンス性と安全性に優れた双方向軸流ファンおよびトンネル換気システムを提供する。
【解決手段】複数の回転翼1をハブに取付けてなる羽根車3と、この羽根車3の外周に設けられたケーシング6と、前記羽根車3を回転させる回転駆動装置4とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼1はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置4は一方向回転を行なう一方向回転駆動装置であり、前記羽根車3と前記一方向回転駆動装置とをその回転軸9が180°度回転するように反転させる位相反転駆動機構11を備えている構成とする。
【解決手段】複数の回転翼1をハブに取付けてなる羽根車3と、この羽根車3の外周に設けられたケーシング6と、前記羽根車3を回転させる回転駆動装置4とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼1はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置4は一方向回転を行なう一方向回転駆動装置であり、前記羽根車3と前記一方向回転駆動装置とをその回転軸9が180°度回転するように反転させる位相反転駆動機構11を備えている構成とする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、双方向軸流ファン(通称ジェットファン)および、双方向軸流ファンを備えたトンネル換気システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車専用道路などのトンネルでは、自動車から排出される煤煙やCO、窒素酸化物(NOx)等の有害物質を外に出し、新鮮な空気を送り込むために、さまざまな換気装置が設置されている。
【0003】
現在広く用いられている換気装置は、トンネル内空気流れが車道の長手方向になる縦流換気方式の双方向軸流ファンである。双方向軸流ファンは、トンネル施工後でも特別な付帯設備工事なしで容易に取り付けることができ、1000mを超える長いトンネルにも複数のファンを直列/並列で組み合わせて使用することができる。
【0004】
また双方向軸流ファンは、トンネル内の換気流の殆どが車道を流れるため圧力損失が小さく、専用のダクトを必要としないためコンパクトであり、設置コスト低減や設置時間短縮化が容易でり、ファンを逆回転することにより両方向換気が可能である等の特長を有しており、短・中距離トンネル換気用として広く用いられている。
【0005】
トンネル内双方向換気用としてこのような双方向軸流ファンを複数台用いた場合、軸流ファン出口流速が約30m/s程度であれば、トンネル内通風平均速度約5m/sの換気流が可能である。
【0006】
以下、図を参照して従来の双方向軸流ファンについて説明する。
図16(a)に示すように、従来の双方向軸流ファンは、複数の回転翼1を円筒状の回転するハブ2に取付けた構成の2段の羽根車3と、この羽根車3を回転させる回転駆動装置4と、この回転駆動装置4を支持するとともに電力を供給する電力ケーブルを内蔵する支持具5と、前記羽根車3の外周に設けられたケーシング6とで構成され、吊り下げ支持具7でトンネル壁8に取り付けられている。
【0007】
回転駆動装置4の両側の回転軸9は、回転方向が相反するように構成される場合は、図16R>6(b)に示すように回転翼1の取り付け位置がA−A断面、B−B断面に示すように位相を変えて構成される。
【0008】
このように構成された双方向軸流ファンでは流れ方向を変える場合(正転から逆転、逆転から正転)は回転翼1の取り付け角を逆にする回転翼角反転機構が必要であり(例えば、特許文献1参照。)、構造が複雑になる。一方、両側の回転軸9の回転方向が同一の場合は、軸対称翼形状を有する回転翼が同位相で取付けられるため構造の簡素化が図られるが(例えば、特許文献2,3参照。)、空気力学的性能(効率)が低くなるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−280489号公報
【特許文献2】
特開平6−336993号公報
【特許文献3】
特開平10−2298号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の双方向軸流ファンにおいては、非対称翼を回転翼として使用する場合は、翼の取付け角を反転させる回転翼角反転機構を翼毎に設ける必要があり、構造が複雑になるという問題がある。
また、対称翼を回転翼として使用する場合は、一方向流れに最適な翼形状を採用できないため、低い効率しか得られないという問題がある。
【0011】
また、翼負荷を大きくした場合、流れの翼面からの剥離による失速等が発生しやすくなり、所定(設計仕様を満足する)の空力性能が得られないという問題がある。
【0012】
また、ハブの先端に整流のためのノーズコーンを設けた場合、ノーズコーンの上流から下流への絞りが線形または急に変化した場合、流れの局所に剥離や偏向流が発生して良好な整流効果が得られないという問題がある。
また、双方向軸流ファンの大型化に伴い、羽根車、ハブ、ノーズコーンなどを支持する支持具の強度が充分に得られなくなるという問題がある。
【0013】
また、双方向軸流ファンの流体騒音を防止するため、防音(消音)装置が設けられたものにおいては、ケーシング内壁面の凹凸による壁面粗さが大きくなることや、回転翼先端とケーシング内面との隙間を精度良く管理できないため摩擦損失が大きくなったり、前記隙間からの作動媒体漏洩が大きくなったりして空力損失が増大するといった問題がある。
【0014】
また、前記防音装置にグラスウールなどの防音マットを使用した場合、この防音マットをケーシングに装着するために開口率20〜30以上(通常50%程度)を有するパンチングメタル等で押さえるように構成されるが、この場合も上述と同様にケーシング内壁面の凹凸による壁面粗さが大きくなることによる摩擦損失の増大(圧力損失増大)を招き、空力性能が低下するなどの問題がある。
【0015】
また、高負荷(高速流)の双方向軸流ファンにおいては、ファン吸入部(ファン入口部)のケーシング側では半径方向流れから軸方向流れへの急激な縮流(曲がり流れ)となるため、局所的な流れの剥離、トンネル壁の影響(双方向軸流ファンはトンネル壁近傍に取り付けられる)によるファン内の偏向流を誘発し、空力性能が低下するなどの問題がある。
【0016】
また、双方向軸流ファンを構成する構成部品点数の増加に伴い、定期的なファンの点検や清掃、または修理の際、一部の分解、または全分解に要する時間が長くなるなどの問題がある。
【0017】
また、高負荷(高速流)の双方向軸流ファンにおいては、ケーシング内部流れにスワール流れがある場合、軸方向速度成分が低下してしまうなどの問題がある。特に回転による周方向速度成分が大きくなる回転半径外向き(ハブよりケーシング側に向かって)に大きなスワールが発生するという問題がある。
【0018】
また、トンネル内換気のため複数台の双方向軸流ファンを使用する場合には、トンネル入口(出口)と出口(入口)の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御に関しては連成して判断制御する必要があるが、これまで充分な配慮がなされていない。
【0019】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、簡素で空力性能が高くランニングコストが低くメンテナンス性と安全性に優れた双方向軸流ファンおよびトンネル換気システムを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は一方向回転を行なう一方向回転駆動装置であり、前記羽根車と前記一方向回転駆動装置とをその回転軸が180°度回転するように反転させる位相反転駆動機構を備えている構成とする。
【0021】
請求項2の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は双方向回転を行なう双方向回転駆動装置であり、前記羽根車は一対の位相反転羽根車であって前記双方向回転駆動装置に着脱可能に結合され、前記双方向回転駆動装置の回転方向に応じて一方の羽根車を前記双方向回転駆動装置に結合して回転駆動し、他方の羽根車を前記双方向回転駆動装置から切り離して流れの旋回を防止する静止翼として機能させる構成とする。
【0022】
請求項3の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼は回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなす構成とする。
【0023】
請求項4の発明は、回転翼の翼中心軸に垂直な翼断面でのキャンバーラインがS字形である構成とする。
請求項5の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸竜ファンにおいて、前記回転翼の翼面背側に縦渦発生体突起を設けた構成とする。
【0024】
請求項6の発明は、前記縦渦発生体突起は、羽根車の回転による慣性力によって翼外面と翼内部間を移動可能であり、翼背側では翼外面に、翼腹側では翼内部になるように設けられている構成とする。
【0025】
請求項7の発明は、前記ハブの上流側及び下流側に前記ケーシングから支持された静止ノーズコーンを備え、この静止ノーズコーンは円形曲率入口部と正弦曲率絞り部と直線導入部とを有する構成とする。
【0026】
請求項8の発明は、前記ケーシングに防音装置を取付けるとともに前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に間隙を所定の大きさに規定するリングを取付けた構成とする。
【0027】
請求項9の発明は、前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に軸方向漏洩を防ぐシール部材を設けた構成とする。
請求項10の発明は、前記ケーシング内の流路の一部に整流板を設けた構成とする。
【0028】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファンをトンネル内に備え、前記双方向軸流ファンの上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、前記物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて前記双方向軸流ファンの回転方向を決定するようにした構成とする。
【0029】
請求項12の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファン複数台をトンネル内に備えるとともに、前記双方向軸流ファンそれぞれにその上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、当該物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて判断した前記双方向軸流ファンそれぞれの回転方向を多数決処理して前記双方向軸流ファン全ての回転方向を一方向に決定するようにした構成とする。
請求項13の発明は、双方向軸流ファンはトンネルの長手方向に対して所定の角度を持って設置されている構成とする。
【0030】
請求項1の発明の双方向軸流ファンにおいては、一方向送風に適合した軸非対称翼形を有する羽根車と回転駆動装置とをその回転軸が180°回転するように反転させる位相反転駆動機構を備えており、非対称翼を回転翼として使用する場合に翼の取り付け角を反転させる回転翼可変制御機構を翼毎に形成する必要がなくなり、構造が簡素化される。
【0031】
請求項2の発明によれば、一方向送風に適合した軸非対称翼形を有する一対の位相反転羽根車を回転駆動装置と着脱可能に設け、回転駆動装置の回転方向の違いにより一方の羽根車を回転駆動装置に連結させて回転駆動させ、他方の羽根車を回転駆動装置から切り離して流れの旋回除去静止翼として用いることができるため、高い空力性能が得られる。
【0032】
請求項3あるいは請求項4の発明においては、軸対称翼の先端の局所に軸非対称の反りを持たせたり、翼のキャンバーラインをS字に形成してあるため、翼先端近傍翼面からの流れの剥離による失速等が発生し難くなり、設計仕様を満足する所定の空力性能を得ることができる。また、S字キャンバーラインの一部を直線にすることにより翼形状の簡素化が可能となり加工時間を短縮することができる。
【0033】
請求項5の発明においては、回転翼の翼面背側に縦渦発生体突起を設けてあるため、翼背側からの主流流れの剥離を防止できるため、空力性能が向上する。 請求項6の発明においては、縦渦発生体突起を回転による慣性力を利用して翼外面と翼内部間を移動可能とすると共に、縦渦発生体突起が翼外面に位置する場合は翼背側に突出させ、縦渦発生用突起が翼内に位置する場合は翼腹側に納めることができるため、背側の主流流れの剥離を防止できると共に腹側の流れを乱さないようにできるため、双方向の換気流において高い空力性能が得られる。
【0034】
請求項7の発明においては、ハブの両端側に整流のためのノーズコーンを設ける場合、ハブの前後に円形曲率入口部と、正弦曲率絞り部と直線導入部とで構成される整流用静止ノーズコーンを設けてあるため、ノーズコーンの上流のケーシング内流速が比較的小さい領域で絞り比を大きくし、下流部の近傍の流速が大きい領域では絞り比を小さくし、ハブ近傍で絞り比を一定に保つことができるため、流れの局所に剥離が発生しなくなり、また、半径方向の流れ成分を持った偏向流を抑制できるため良好な整流効果が得られ空力性能が向上する。
【0035】
さらに、整流用静止ノーズコーンに旋回除去静止案内翼を設けると共に、前記静止案内翼をノーズコーン吊り具としても兼用する構成にすると、旋回除去防止と共に、ノーズコーンを支持する支持具の強度を充分に得ることができる。
【0036】
請求項8あるいは請求項9の発明においては、流体騒音を防止するため、防音(消音)装置が設けられた双方向軸流ファンにおいて、回転翼先端部分に位置するケーシング内面にリングを挿入したり、ケーシングと羽根車に取り付けられた翼先端とで形成される間隙に軸方向漏洩防止のシール部材を用いてあるため、回転翼先端とケーシング内面との隙間を精度良く管理できるようになり、前記隙間からの作動媒体漏洩を極力防止できるため、空力損失を小さくすることができる。
請求項10の発明においては、ケーシング内流路の一部に整流板を設けてあるため、旋回流が小さく均一な流れとなり整流効果を得ることができる。
【0037】
請求項11,12,13の発明においては、トンネル内換気のため複数台の双方向軸流ファンを使用する場合、軸流ファン前後の差圧に関する物理量を検知する物理量検知装置を設置すると共に、物理量の時間的に変化する正負の勾配に応じて軸流ファン回転(通風)方向を決定させたり、軸流ファン前後の差圧または車両排気に関する物理量のどちらか一方または両方を検知する物理量検知装置を設置すると共に、これらの物理量の時間的な変化に応じて軸流ファンの回転(通風)方向を各ファンごとに判断し、最終的には多数決にて決定させたり、軸流ファンをトンネル壁に取り付ける取り付け角度をトンネルの長手方向(軸方向)と一定の違い角度を持たせたりすることで、トンネル入口(出口)と出口(入口)の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御に関してきめこまかにそれぞれ連成して良好に判断制御することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る双方向軸流ファンおよびトンネル換気システムのいくつかの実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示す第1の実施の形態は、回転中心から放射方向に延びる図示しない翼中心軸に垂直な断面での翼断面中心軸に対して翼形状が非対称であり、一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する複数の回転翼を円筒状の回転するハブ2に取付けた構成の羽根車3と、この羽根車3の外周に設けられたケーシング6と、上記羽根車3を一方向回転させる回転駆動装置4とを備えた軸流ファンに、羽根車3と回転駆動装置4とを位相反転経線11aに沿って反転させ、これらの回転軸を180°回転させる位相反転駆動機構11を付設した構成である。
【0039】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する羽根車3と回転駆動装置4とを位相反転駆動機構11によって位相反転経線11aに沿って速やかに反転させて正逆方向とも効率のよい送風をおこなうことができるとともに、回転翼1の取付け角を反転させる回転翼角反転機構を翼毎に設ける必要がなくなり、構造が簡素化される。
【0040】
図2に示す第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に軸非対称翼を回転翼1として使用する場合であり、一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する複数の回転翼1で構成される一対(2個)の位相反転型の羽根車3を着脱型回転駆動装置44と着脱可能に軸結合し、着脱型回転駆動装置44の回転方向の違いにより一方の羽根車3を回転駆動装置44に連結させて回転駆動させ、他方の羽根車3(図の右側)を回転駆動装置44から切り離して空転または固定させて静止翼1aとする。
【0041】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、一方向最適形状を有する複数の回転翼1で構成される羽根車3だけを回転させることができるため動力の節約ができる。また、駆動装置44のモーター軸を左右に移動させることで一方の羽根車3だけを駆動できること、また電気的に位相反転させることにより逆転できるため駆動装置を2台備える必要が無く簡便で低コスト化が図られる。さらに、駆動されない翼を流れの旋回を除去する静止翼(静翼)1aとして作用させることができるため高い空力性能が得られる。
【0042】
なお、この実施の形態は軸非対称翼だけでなく、回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な断面での翼断面中心軸に対して翼形状が対称となっている軸対称翼を備えた双方向軸流ファンへも適用可能であるが、この場合には、一方向送風に最適な軸非対称翼を備えたものよりも空力性能が若干低下する。
【0043】
図3に示す第3の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼を有する高性能の双方向軸流ファンである。図3(b)は(a)で示したC−C断面、すなわち回転中心から放射方向へ延びる翼中心軸に直交する平面における翼断面図である。図3(b)において、符号10は翼断面中心線を表すキャンバーラインであり、本実施の形態ではキャンバーライン10は直線となっている。そして、上述のように本実施の形態では回転翼111として軸対称翼を用いているので、キャンバーライン10の中心に翼中心軸が直交している。本実施形態は、このような軸対称の回転翼111を、その翼中心軸と直交する翼断面において翼端の局所に反り12を持たせた反り付き回転翼111としたものである。ここで、反り12は、回転方向の先端側でキャンバーライン10よりも回転方向側に傾け、後端側では回転方向と逆方向に傾けることで、全体としての翼断面形状は翼中心軸に対称となるようにしている。
【0044】
従来の翼形状のまま翼負荷を大きくとる場合、翼先端部への流れの相対的な流入角が大きくなることによって、翼先端部近傍の背側翼面に剥離が生じることが考えられるが、本実施の形態のように反り12を持たせることによって、翼先端における相対的な流入角を小さくすることができるので、このような剥離を生じることを防止できる。また、翼後端部に設けられた反り12は同様に翼面からの流体の流出角を小さくするので、これによって翼後流のスワール流れを緩和させて整流効果を得ることができる。このようにして、本実施の形態によれば、翼負荷を大きくとり高い空力性能を得ることが可能となる。
【0045】
図4は本発明の第4の実施の形態を示す図であり、図3(b)と同様に翼中心軸に直交する平面における翼断面図である。本実施の形態は第3の実施の形態における反り12を設けた反り付き回転翼111のかわりに、図4に示すような、翼断面のキャンバーライン10をS字形に形成したS字形回転翼112を用いるものである。そして、このようにキャンバーライン10を滑らかなS字形曲線状に形成することにより、第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能となる。さらに本実施の形態においては、キャンバーライン10を滑らかな形状とすることによって、より高い空力性能を得ることができる。
なお、S字形のキャンバーライン10の一部を直線にすることにより翼形状の簡素化が可能となり加工時間を短縮することができる。
【0046】
図5は本発明の第5の実施の形態に係る双方向軸流ファンの翼形状のうち、図3(b)、および図4と同様に翼中心軸に直交する断面図を示すものである。 図5に示すように本実施の形態は、スタッド14を介して翼外面と翼内部間を移動可能な縦渦発生体突起13を回転翼1の両面にそれぞれ設け、高負荷に対応可能な軸対称翼とするものである。
【0047】
ここで、これらの縦渦発生体突起13は、翼回転による慣性力を利用して翼外面と翼内部間をスタッド14を介して移動可能に設けられている。すなわち、縦渦発生体突起13は、翼面の腹側(高圧側)に位置する場合には翼内部に収納され、翼面の背側(低圧側)に位置する場合翼外面に突出するようになっている。
【0048】
このような構成の本実施の形態においては、翼面の背側に突出した縦渦発生体突起13は、これより後方の流れに縦渦を発生させる。そして、発生した縦渦によって、主流流れの翼面への付着効果が生じ、翼面背側における主流の剥離を防止でき、空力性能が向上する。また、縦渦発生体突起13は翼の回転による慣性力を利用して翼外面と翼内部間を移動可能であり、翼背側においてのみ突出し、翼面の腹側においては翼内部に収まっているため、腹側の流れに対しては何ら影響を与えず、翼面の腹側における主流流れを乱すことがない。そして、回転翼1を逆転させた場合であっても、縦渦発生体突起13は慣性力によって移動するように構成されているため、常に翼面の背側において突出させることができるので、正転、逆転のどちらの運転であっても全く同様の作用効果を得ることができ、双方向の換気流において高い空力性能が得られる。
【0049】
なお、本実施の形態において、回転翼1として軸対称翼を用いず、一方向送風に最適な形状を持つ軸非対称翼を用いることもできる。この場合、回転翼1を逆転させることはないので、翼面の背側に固定した縦渦発生体突起13を設けることで、同様に縦渦を発生させて翼面の背側における主流流れの剥離を防止させることができる。
【0050】
本発明の第6の実施の形態の双方向軸流ファンは図6に示すように、ハブ2の両端側に整流のための静止ノーズコーン16が吊り具15でケーシング6に支持されて設けてある。静止ノーズコーン16は、円形曲率を有する入口部19と、正弦曲率を有する絞り部18と、直線状の導入部17とからなる。
【0051】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、静止ノーズコーン16を設けたことによって空気の流れを整流することができる。すなわち、静止ノーズコーン16上流から流入する空気は、ケーシング6内の円形曲率を有する入口部19においては、この部位の有する大きな流路絞り比によって大きく加速される。入口部19を通過して正弦曲率を有する絞り部18に流入した空気は、この部位における流路が正弦曲率となっており、局所における流路絞り比が流路の奥にかけて徐々に小さくなるようになっているため、奥に進むほど加速度が小さくなり、絞り部18の出口においてはほぼ加速度がゼロとなる。そして、このまま直線状の導入部17を通過してさらに整流されて回転翼1へと流入する。
【0052】
このように、本実施の形態においては、静止ノーズコーン16がその入口部で空気に大きな加速度を与え、その後この加速度を徐々に減じながら回転翼1まで導くことができ、つまり、加速度の変化率が負となるようにしたので、流れの局所に剥離などが発生せず、また、半径方向の流れ成分を持った偏向流などを抑制できるため、良好な整流効果が得られ高い空力性能が得られる。
【0053】
なお、本実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状の翼を有する双方向軸流ファンに適用すると高い効果が得られる。
【0054】
本発明の第7の実施の形態は、図7に示すように、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する回転翼1と、上記第6の実施の形態におけると同様の整流用の静止ノーズコーン16と、偏平な断面を有し前記静止ノーズコーン16をケーシング6から支持する静止案内翼20とを備えた構成である。
【0055】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、静止案内翼20を静止ノーズコーン16の吊り具として兼用できるため、空気流の旋回を防止すると共に、静止ノーズコーン16の十分な支持強度を得ることができる。
【0056】
本発明の第8の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する高性能の双方向軸流ファンに、図8に示すように、運転時の流体騒音を防止するために消音機能を持たせた消音装置付きケーシング22を採用したものである。そして、ケーシング22の内面の回転翼1先端部分に回転翼1との間隙を所定の大きさに規定するリング21が設けられている。
【0057】
このように構成された本実施の形態においては、ケーシング22内面に、羽根車3に取り付けられた回転翼1先端と消音装置付きケーシング22で形成される間隙を精度良く管理するリング21が取り付けられているので、上記間隙からの軸方向作動媒体漏洩を防止できるため、空力損失を小さくすることができる。
【0058】
本発明の第9の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、図9に示すように、前記第8の実施の形態と同様の構成のほかに、消音装置付きケーシング22内面にスポンジや焼結金属からなる多孔質充填材23を取り付けた構成である。
【0059】
このように構成された本実施の形態においては、ケーシング22内壁面の凹凸が極めて小さくなり壁面粗さが小さくなって摩擦損失を小さくできる。ケーシング22の消音装置にグラスウールなどの消音マットを使用したときに使用される消音マット押さえパンチングメタル等に適用した場合、よりいっそうの摩擦損失低減(圧力損失低減)により空力性能向上が可能となる。
【0060】
本発明の第10の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、図1010に示すように、前記第8の実施の形態と同様の構成のほかに、消音装置付きケーシング22の内面と回転翼1先端とのあいだの間隙に軸方向漏洩を防ぐシール部材24を設けた構成である。
【0061】
このように構成された本実施の形態においては、回転翼1の先端とケーシング22の内面との隙間を精度良く管理できるようになり、前記隙間からの作動媒体漏洩を防止できるため、空力損失を小さくすることができる。
【0062】
図11は本発明の第11の実施の形態を示す。本実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、前記第9の実施の形態の構成に加えて、消音装置付きケーシング22の開口部に整流機能を持たせた脱着可能なリム25を取り付けた構成である。
【0063】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、ファン吸入部(ファン入口部)のケーシング22側では半径方向流れから軸方向流れへの急激な縮流を防止することができる。これによって局所的な流れの剥離やトンネル壁8の影響によるファン内の偏向流を防止できるため、空力性能が向上する。また、ケーシング22の開口部に着脱可能なリム25が取り付けられているため、定期的なファンの点検や清掃、または修理を容易にし、一部の分解、または全分解に要する時間を短縮することができる。
【0064】
図12は本発明の第12の実施の形態を示す。本実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、前記第11の実施の形態の構成の加えて、消音装置付きケーシング22内の空気流路の一部にたとえばハネカム構造の整流板26を取り付けた構成である。
【0065】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、消音装置付きケーシング22内の流路の一部に整流板26を備えているため、流路内部の圧力損失を抑えつつ、旋回流を小さくし、且つ均一な流れを得ることができる。
【0066】
本発明の第13の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、図1313に示すように、前記第6の実施の形態の構成に加えて、ケーシング6とハブ16とで形成される環状の流路の一部にケーシング6内壁から半径内向き(ハブ側)に伸びる任意形状流線形の整流板27を設けた構成である。
【0067】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、より旋回成分の強い半径外側部分の流れ(大きなスワール流れ領域)に対して整流効果を得ると共に、旋回成分が比較的小さい半径内側部分では整流板が無いため整流板挿入による摩擦損失を生じることがない。また流れ方向のブロッケージ(遮蔽)効果を小さくすることもできる。
【0068】
本発明の第14の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンを備えたトンネル換気システムである。すなわち図14に示すように、トンネル37内換気のために複数台の双方向軸流ファン28−1〜28−nを備える。そしてこれらの双方向軸流ファン前後の差圧に関する物理量を検知する物理量検知センサー29と、センサー信号線30と、差圧データ変換器31と、差圧データ信号線32とで構成する物理量検知装置を設える。また、軸流ファン28−1〜28−n前後の差圧データ信号線32と、車両排気に関する物理量(COガス濃度、NOx/SOx濃度など)検知センサー38からの車両排気データを伝送する車両排気データ信号線39は演算器33に接続されている。
【0069】
演算器33は、検知センサー29,38の検出値に基づいてこれらの物理量の時間変化に応じて軸流ファン28−1〜28−nの回転(通風)方向をそれぞれ判断する。そして、演算器33は、判断したn台の軸流ファン28−1〜28−nの回転(通風)方向を多数決処理して、台数の多い回転(通風)方向を回転方向指示信号34として決定する。この決定に従って生成される回転方向指示信号34を回転指示器35と回転駆動制御ケーブル36を介して軸流ファン28−1〜28−nへ伝送し、軸流ファン28−1〜28−nの全てを決定された方向に回転させる。また、これとは別に緊急割込み指示器40を備え、緊急時には緊急割込み信号41を演算器33に入力して回転(通風)方向を上記の回転判断機能に優先させて決定させる。
【0070】
このような構成によってこのように動作する本実施の形態のトンネル換気システムにおいては、トンネルの入口と出口の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御を連成して良好におこなうことができる。
【0071】
トンネル換気システムは通常はトンネルの左右(入口/出口)の気象条件により気圧の高い方向から低い方向に流すように(風向きに順応して)運転される。但し、非常時、例えばトンネル内の局所で車両事故が発生し炎上した場合や局所排気ガスの有害濃度が高くなった場合は、トラブル発生箇所に近いほうのトンネル口へ向かって強制排気が必要になる。この場合、通常の通気方向とは違って運転する必要が生じる。トンネル内には複数のセンサーが設置されており、夫々のセンサーで通気方向指示が異なることが容易に予想される。従って、最終の通気方向決定は演算器33内で各センサーからの通気指示方向の多数決で行うのが合理的である。また、各センサーにはトラブルの重要度に応じて火災発生検知センサーなどは多数決によらず最優先するなど、プライオリティーや重み付けを付加して決定することによって、より安全で効率のよいトンネル換気システムとなる。なお、上記の各種データ信号、制御信号の伝送は有線、無線のいずれによってもよいことは言うまでもない。
【0072】
本発明の第15の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンを備えたトンネル換気システムである。システム構成は上記第14の実施の形態と同じであるが、図15に示すように、軸流ファン28のトンネル37の壁への取り付けに角度をもたせ、トンネル37の長手方向(軸方向)を基準として逆八形配列形42a,八形配列形42b,β角付並列型42c,α角付並列型42d等の少なくともいずれか一つとしたものである。
【0073】
このように構成された本実施の形態のトンネル換気システムにおいては、トンネル入口と出口の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御に関して連成して良好に判断制御することができる。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、簡素で空力性能が高く、ランニングコストが低くメンテナンス性、安全性に優れた高性能な双方向軸流ファンおよびトンネル換気システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の双方向軸流ファンの断面を示し、(a)は反転開始時、(b)は反転中、(c)は反転終了時の図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の双方向軸流ファンの断面を示し、(a)は正転時、(b)は逆転時の図。
【図3】本発明の第3の実施の形態の双方向軸流ファンを示し、(a)は全体の断面図、(b)は回転翼の断面図。
【図4】本発明の第4の実施の形態の双方向軸流ファンに備えられる回転翼の断面図。
【図5】本発明の第5の実施の形態の双方向軸流ファンに備えられる回転翼の断面図。
【図6】本発明の第6の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図7】本発明の第7の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図8】本発明の第8の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図9】本発明の第9の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図10】本発明の第10の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図11】本発明の第11の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図12】本発明の第12の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図13】本発明の第13の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図14】本発明の第14の実施の形態のトンネル換気システムを示す図。
【図15】本発明の第15の実施の形態のトンネル換気システムを示す図。
【図16】従来の双方向軸流ファンを示し、(a)は全体の断面図、(b)は回転翼の断面図。
【符号の説明】
1…回転翼、1a…静止翼、2…ハブ、3…羽根車、4…回転駆動装置、5…支持具、6…ケーシング、7…吊り下げ支持具、8…トンネル壁、9…回転軸、10…キャンバーライン、11…位相反転駆動機構、11a…位相反転経線、12…反り、13…縦渦発生体突起、14…スタッド、15…吊り具、16…静止ノーズコーン、17…導入部、18…絞り部、19…入口部、20…静止案内翼、21…リング、22…消音装置付きケーシング、23…多孔質充填材、24…シール部材、25…リム、26,27…整流板、28−1〜28−n…双方向軸流ファン、29…物理量検知センサー、30…センサー信号線、31…差圧データ変換器、32…差圧データ信号線、33…演算器、34…回転方向指示信号、35…回転指示器、36…回転駆動制御ケーブル、37…トンネル、38…車両排気物理量検知センサー、39…車両排気データ信号線、40…緊急割込み指示器、41…緊急割込み信号、42a,42b,42c,42d…軸流のファンの配列型、44…着脱型回転駆動装置、111…反り付き回転翼、112…S字型回転翼。
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、双方向軸流ファン(通称ジェットファン)および、双方向軸流ファンを備えたトンネル換気システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車専用道路などのトンネルでは、自動車から排出される煤煙やCO、窒素酸化物(NOx)等の有害物質を外に出し、新鮮な空気を送り込むために、さまざまな換気装置が設置されている。
【0003】
現在広く用いられている換気装置は、トンネル内空気流れが車道の長手方向になる縦流換気方式の双方向軸流ファンである。双方向軸流ファンは、トンネル施工後でも特別な付帯設備工事なしで容易に取り付けることができ、1000mを超える長いトンネルにも複数のファンを直列/並列で組み合わせて使用することができる。
【0004】
また双方向軸流ファンは、トンネル内の換気流の殆どが車道を流れるため圧力損失が小さく、専用のダクトを必要としないためコンパクトであり、設置コスト低減や設置時間短縮化が容易でり、ファンを逆回転することにより両方向換気が可能である等の特長を有しており、短・中距離トンネル換気用として広く用いられている。
【0005】
トンネル内双方向換気用としてこのような双方向軸流ファンを複数台用いた場合、軸流ファン出口流速が約30m/s程度であれば、トンネル内通風平均速度約5m/sの換気流が可能である。
【0006】
以下、図を参照して従来の双方向軸流ファンについて説明する。
図16(a)に示すように、従来の双方向軸流ファンは、複数の回転翼1を円筒状の回転するハブ2に取付けた構成の2段の羽根車3と、この羽根車3を回転させる回転駆動装置4と、この回転駆動装置4を支持するとともに電力を供給する電力ケーブルを内蔵する支持具5と、前記羽根車3の外周に設けられたケーシング6とで構成され、吊り下げ支持具7でトンネル壁8に取り付けられている。
【0007】
回転駆動装置4の両側の回転軸9は、回転方向が相反するように構成される場合は、図16R>6(b)に示すように回転翼1の取り付け位置がA−A断面、B−B断面に示すように位相を変えて構成される。
【0008】
このように構成された双方向軸流ファンでは流れ方向を変える場合(正転から逆転、逆転から正転)は回転翼1の取り付け角を逆にする回転翼角反転機構が必要であり(例えば、特許文献1参照。)、構造が複雑になる。一方、両側の回転軸9の回転方向が同一の場合は、軸対称翼形状を有する回転翼が同位相で取付けられるため構造の簡素化が図られるが(例えば、特許文献2,3参照。)、空気力学的性能(効率)が低くなるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−280489号公報
【特許文献2】
特開平6−336993号公報
【特許文献3】
特開平10−2298号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の双方向軸流ファンにおいては、非対称翼を回転翼として使用する場合は、翼の取付け角を反転させる回転翼角反転機構を翼毎に設ける必要があり、構造が複雑になるという問題がある。
また、対称翼を回転翼として使用する場合は、一方向流れに最適な翼形状を採用できないため、低い効率しか得られないという問題がある。
【0011】
また、翼負荷を大きくした場合、流れの翼面からの剥離による失速等が発生しやすくなり、所定(設計仕様を満足する)の空力性能が得られないという問題がある。
【0012】
また、ハブの先端に整流のためのノーズコーンを設けた場合、ノーズコーンの上流から下流への絞りが線形または急に変化した場合、流れの局所に剥離や偏向流が発生して良好な整流効果が得られないという問題がある。
また、双方向軸流ファンの大型化に伴い、羽根車、ハブ、ノーズコーンなどを支持する支持具の強度が充分に得られなくなるという問題がある。
【0013】
また、双方向軸流ファンの流体騒音を防止するため、防音(消音)装置が設けられたものにおいては、ケーシング内壁面の凹凸による壁面粗さが大きくなることや、回転翼先端とケーシング内面との隙間を精度良く管理できないため摩擦損失が大きくなったり、前記隙間からの作動媒体漏洩が大きくなったりして空力損失が増大するといった問題がある。
【0014】
また、前記防音装置にグラスウールなどの防音マットを使用した場合、この防音マットをケーシングに装着するために開口率20〜30以上(通常50%程度)を有するパンチングメタル等で押さえるように構成されるが、この場合も上述と同様にケーシング内壁面の凹凸による壁面粗さが大きくなることによる摩擦損失の増大(圧力損失増大)を招き、空力性能が低下するなどの問題がある。
【0015】
また、高負荷(高速流)の双方向軸流ファンにおいては、ファン吸入部(ファン入口部)のケーシング側では半径方向流れから軸方向流れへの急激な縮流(曲がり流れ)となるため、局所的な流れの剥離、トンネル壁の影響(双方向軸流ファンはトンネル壁近傍に取り付けられる)によるファン内の偏向流を誘発し、空力性能が低下するなどの問題がある。
【0016】
また、双方向軸流ファンを構成する構成部品点数の増加に伴い、定期的なファンの点検や清掃、または修理の際、一部の分解、または全分解に要する時間が長くなるなどの問題がある。
【0017】
また、高負荷(高速流)の双方向軸流ファンにおいては、ケーシング内部流れにスワール流れがある場合、軸方向速度成分が低下してしまうなどの問題がある。特に回転による周方向速度成分が大きくなる回転半径外向き(ハブよりケーシング側に向かって)に大きなスワールが発生するという問題がある。
【0018】
また、トンネル内換気のため複数台の双方向軸流ファンを使用する場合には、トンネル入口(出口)と出口(入口)の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御に関しては連成して判断制御する必要があるが、これまで充分な配慮がなされていない。
【0019】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、簡素で空力性能が高くランニングコストが低くメンテナンス性と安全性に優れた双方向軸流ファンおよびトンネル換気システムを提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は一方向回転を行なう一方向回転駆動装置であり、前記羽根車と前記一方向回転駆動装置とをその回転軸が180°度回転するように反転させる位相反転駆動機構を備えている構成とする。
【0021】
請求項2の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は双方向回転を行なう双方向回転駆動装置であり、前記羽根車は一対の位相反転羽根車であって前記双方向回転駆動装置に着脱可能に結合され、前記双方向回転駆動装置の回転方向に応じて一方の羽根車を前記双方向回転駆動装置に結合して回転駆動し、他方の羽根車を前記双方向回転駆動装置から切り離して流れの旋回を防止する静止翼として機能させる構成とする。
【0022】
請求項3の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼は回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなす構成とする。
【0023】
請求項4の発明は、回転翼の翼中心軸に垂直な翼断面でのキャンバーラインがS字形である構成とする。
請求項5の発明は、複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸竜ファンにおいて、前記回転翼の翼面背側に縦渦発生体突起を設けた構成とする。
【0024】
請求項6の発明は、前記縦渦発生体突起は、羽根車の回転による慣性力によって翼外面と翼内部間を移動可能であり、翼背側では翼外面に、翼腹側では翼内部になるように設けられている構成とする。
【0025】
請求項7の発明は、前記ハブの上流側及び下流側に前記ケーシングから支持された静止ノーズコーンを備え、この静止ノーズコーンは円形曲率入口部と正弦曲率絞り部と直線導入部とを有する構成とする。
【0026】
請求項8の発明は、前記ケーシングに防音装置を取付けるとともに前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に間隙を所定の大きさに規定するリングを取付けた構成とする。
【0027】
請求項9の発明は、前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に軸方向漏洩を防ぐシール部材を設けた構成とする。
請求項10の発明は、前記ケーシング内の流路の一部に整流板を設けた構成とする。
【0028】
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファンをトンネル内に備え、前記双方向軸流ファンの上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、前記物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて前記双方向軸流ファンの回転方向を決定するようにした構成とする。
【0029】
請求項12の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファン複数台をトンネル内に備えるとともに、前記双方向軸流ファンそれぞれにその上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、当該物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて判断した前記双方向軸流ファンそれぞれの回転方向を多数決処理して前記双方向軸流ファン全ての回転方向を一方向に決定するようにした構成とする。
請求項13の発明は、双方向軸流ファンはトンネルの長手方向に対して所定の角度を持って設置されている構成とする。
【0030】
請求項1の発明の双方向軸流ファンにおいては、一方向送風に適合した軸非対称翼形を有する羽根車と回転駆動装置とをその回転軸が180°回転するように反転させる位相反転駆動機構を備えており、非対称翼を回転翼として使用する場合に翼の取り付け角を反転させる回転翼可変制御機構を翼毎に形成する必要がなくなり、構造が簡素化される。
【0031】
請求項2の発明によれば、一方向送風に適合した軸非対称翼形を有する一対の位相反転羽根車を回転駆動装置と着脱可能に設け、回転駆動装置の回転方向の違いにより一方の羽根車を回転駆動装置に連結させて回転駆動させ、他方の羽根車を回転駆動装置から切り離して流れの旋回除去静止翼として用いることができるため、高い空力性能が得られる。
【0032】
請求項3あるいは請求項4の発明においては、軸対称翼の先端の局所に軸非対称の反りを持たせたり、翼のキャンバーラインをS字に形成してあるため、翼先端近傍翼面からの流れの剥離による失速等が発生し難くなり、設計仕様を満足する所定の空力性能を得ることができる。また、S字キャンバーラインの一部を直線にすることにより翼形状の簡素化が可能となり加工時間を短縮することができる。
【0033】
請求項5の発明においては、回転翼の翼面背側に縦渦発生体突起を設けてあるため、翼背側からの主流流れの剥離を防止できるため、空力性能が向上する。 請求項6の発明においては、縦渦発生体突起を回転による慣性力を利用して翼外面と翼内部間を移動可能とすると共に、縦渦発生体突起が翼外面に位置する場合は翼背側に突出させ、縦渦発生用突起が翼内に位置する場合は翼腹側に納めることができるため、背側の主流流れの剥離を防止できると共に腹側の流れを乱さないようにできるため、双方向の換気流において高い空力性能が得られる。
【0034】
請求項7の発明においては、ハブの両端側に整流のためのノーズコーンを設ける場合、ハブの前後に円形曲率入口部と、正弦曲率絞り部と直線導入部とで構成される整流用静止ノーズコーンを設けてあるため、ノーズコーンの上流のケーシング内流速が比較的小さい領域で絞り比を大きくし、下流部の近傍の流速が大きい領域では絞り比を小さくし、ハブ近傍で絞り比を一定に保つことができるため、流れの局所に剥離が発生しなくなり、また、半径方向の流れ成分を持った偏向流を抑制できるため良好な整流効果が得られ空力性能が向上する。
【0035】
さらに、整流用静止ノーズコーンに旋回除去静止案内翼を設けると共に、前記静止案内翼をノーズコーン吊り具としても兼用する構成にすると、旋回除去防止と共に、ノーズコーンを支持する支持具の強度を充分に得ることができる。
【0036】
請求項8あるいは請求項9の発明においては、流体騒音を防止するため、防音(消音)装置が設けられた双方向軸流ファンにおいて、回転翼先端部分に位置するケーシング内面にリングを挿入したり、ケーシングと羽根車に取り付けられた翼先端とで形成される間隙に軸方向漏洩防止のシール部材を用いてあるため、回転翼先端とケーシング内面との隙間を精度良く管理できるようになり、前記隙間からの作動媒体漏洩を極力防止できるため、空力損失を小さくすることができる。
請求項10の発明においては、ケーシング内流路の一部に整流板を設けてあるため、旋回流が小さく均一な流れとなり整流効果を得ることができる。
【0037】
請求項11,12,13の発明においては、トンネル内換気のため複数台の双方向軸流ファンを使用する場合、軸流ファン前後の差圧に関する物理量を検知する物理量検知装置を設置すると共に、物理量の時間的に変化する正負の勾配に応じて軸流ファン回転(通風)方向を決定させたり、軸流ファン前後の差圧または車両排気に関する物理量のどちらか一方または両方を検知する物理量検知装置を設置すると共に、これらの物理量の時間的な変化に応じて軸流ファンの回転(通風)方向を各ファンごとに判断し、最終的には多数決にて決定させたり、軸流ファンをトンネル壁に取り付ける取り付け角度をトンネルの長手方向(軸方向)と一定の違い角度を持たせたりすることで、トンネル入口(出口)と出口(入口)の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御に関してきめこまかにそれぞれ連成して良好に判断制御することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る双方向軸流ファンおよびトンネル換気システムのいくつかの実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示す第1の実施の形態は、回転中心から放射方向に延びる図示しない翼中心軸に垂直な断面での翼断面中心軸に対して翼形状が非対称であり、一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する複数の回転翼を円筒状の回転するハブ2に取付けた構成の羽根車3と、この羽根車3の外周に設けられたケーシング6と、上記羽根車3を一方向回転させる回転駆動装置4とを備えた軸流ファンに、羽根車3と回転駆動装置4とを位相反転経線11aに沿って反転させ、これらの回転軸を180°回転させる位相反転駆動機構11を付設した構成である。
【0039】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する羽根車3と回転駆動装置4とを位相反転駆動機構11によって位相反転経線11aに沿って速やかに反転させて正逆方向とも効率のよい送風をおこなうことができるとともに、回転翼1の取付け角を反転させる回転翼角反転機構を翼毎に設ける必要がなくなり、構造が簡素化される。
【0040】
図2に示す第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に軸非対称翼を回転翼1として使用する場合であり、一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する複数の回転翼1で構成される一対(2個)の位相反転型の羽根車3を着脱型回転駆動装置44と着脱可能に軸結合し、着脱型回転駆動装置44の回転方向の違いにより一方の羽根車3を回転駆動装置44に連結させて回転駆動させ、他方の羽根車3(図の右側)を回転駆動装置44から切り離して空転または固定させて静止翼1aとする。
【0041】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、一方向最適形状を有する複数の回転翼1で構成される羽根車3だけを回転させることができるため動力の節約ができる。また、駆動装置44のモーター軸を左右に移動させることで一方の羽根車3だけを駆動できること、また電気的に位相反転させることにより逆転できるため駆動装置を2台備える必要が無く簡便で低コスト化が図られる。さらに、駆動されない翼を流れの旋回を除去する静止翼(静翼)1aとして作用させることができるため高い空力性能が得られる。
【0042】
なお、この実施の形態は軸非対称翼だけでなく、回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な断面での翼断面中心軸に対して翼形状が対称となっている軸対称翼を備えた双方向軸流ファンへも適用可能であるが、この場合には、一方向送風に最適な軸非対称翼を備えたものよりも空力性能が若干低下する。
【0043】
図3に示す第3の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼を有する高性能の双方向軸流ファンである。図3(b)は(a)で示したC−C断面、すなわち回転中心から放射方向へ延びる翼中心軸に直交する平面における翼断面図である。図3(b)において、符号10は翼断面中心線を表すキャンバーラインであり、本実施の形態ではキャンバーライン10は直線となっている。そして、上述のように本実施の形態では回転翼111として軸対称翼を用いているので、キャンバーライン10の中心に翼中心軸が直交している。本実施形態は、このような軸対称の回転翼111を、その翼中心軸と直交する翼断面において翼端の局所に反り12を持たせた反り付き回転翼111としたものである。ここで、反り12は、回転方向の先端側でキャンバーライン10よりも回転方向側に傾け、後端側では回転方向と逆方向に傾けることで、全体としての翼断面形状は翼中心軸に対称となるようにしている。
【0044】
従来の翼形状のまま翼負荷を大きくとる場合、翼先端部への流れの相対的な流入角が大きくなることによって、翼先端部近傍の背側翼面に剥離が生じることが考えられるが、本実施の形態のように反り12を持たせることによって、翼先端における相対的な流入角を小さくすることができるので、このような剥離を生じることを防止できる。また、翼後端部に設けられた反り12は同様に翼面からの流体の流出角を小さくするので、これによって翼後流のスワール流れを緩和させて整流効果を得ることができる。このようにして、本実施の形態によれば、翼負荷を大きくとり高い空力性能を得ることが可能となる。
【0045】
図4は本発明の第4の実施の形態を示す図であり、図3(b)と同様に翼中心軸に直交する平面における翼断面図である。本実施の形態は第3の実施の形態における反り12を設けた反り付き回転翼111のかわりに、図4に示すような、翼断面のキャンバーライン10をS字形に形成したS字形回転翼112を用いるものである。そして、このようにキャンバーライン10を滑らかなS字形曲線状に形成することにより、第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能となる。さらに本実施の形態においては、キャンバーライン10を滑らかな形状とすることによって、より高い空力性能を得ることができる。
なお、S字形のキャンバーライン10の一部を直線にすることにより翼形状の簡素化が可能となり加工時間を短縮することができる。
【0046】
図5は本発明の第5の実施の形態に係る双方向軸流ファンの翼形状のうち、図3(b)、および図4と同様に翼中心軸に直交する断面図を示すものである。 図5に示すように本実施の形態は、スタッド14を介して翼外面と翼内部間を移動可能な縦渦発生体突起13を回転翼1の両面にそれぞれ設け、高負荷に対応可能な軸対称翼とするものである。
【0047】
ここで、これらの縦渦発生体突起13は、翼回転による慣性力を利用して翼外面と翼内部間をスタッド14を介して移動可能に設けられている。すなわち、縦渦発生体突起13は、翼面の腹側(高圧側)に位置する場合には翼内部に収納され、翼面の背側(低圧側)に位置する場合翼外面に突出するようになっている。
【0048】
このような構成の本実施の形態においては、翼面の背側に突出した縦渦発生体突起13は、これより後方の流れに縦渦を発生させる。そして、発生した縦渦によって、主流流れの翼面への付着効果が生じ、翼面背側における主流の剥離を防止でき、空力性能が向上する。また、縦渦発生体突起13は翼の回転による慣性力を利用して翼外面と翼内部間を移動可能であり、翼背側においてのみ突出し、翼面の腹側においては翼内部に収まっているため、腹側の流れに対しては何ら影響を与えず、翼面の腹側における主流流れを乱すことがない。そして、回転翼1を逆転させた場合であっても、縦渦発生体突起13は慣性力によって移動するように構成されているため、常に翼面の背側において突出させることができるので、正転、逆転のどちらの運転であっても全く同様の作用効果を得ることができ、双方向の換気流において高い空力性能が得られる。
【0049】
なお、本実施の形態において、回転翼1として軸対称翼を用いず、一方向送風に最適な形状を持つ軸非対称翼を用いることもできる。この場合、回転翼1を逆転させることはないので、翼面の背側に固定した縦渦発生体突起13を設けることで、同様に縦渦を発生させて翼面の背側における主流流れの剥離を防止させることができる。
【0050】
本発明の第6の実施の形態の双方向軸流ファンは図6に示すように、ハブ2の両端側に整流のための静止ノーズコーン16が吊り具15でケーシング6に支持されて設けてある。静止ノーズコーン16は、円形曲率を有する入口部19と、正弦曲率を有する絞り部18と、直線状の導入部17とからなる。
【0051】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、静止ノーズコーン16を設けたことによって空気の流れを整流することができる。すなわち、静止ノーズコーン16上流から流入する空気は、ケーシング6内の円形曲率を有する入口部19においては、この部位の有する大きな流路絞り比によって大きく加速される。入口部19を通過して正弦曲率を有する絞り部18に流入した空気は、この部位における流路が正弦曲率となっており、局所における流路絞り比が流路の奥にかけて徐々に小さくなるようになっているため、奥に進むほど加速度が小さくなり、絞り部18の出口においてはほぼ加速度がゼロとなる。そして、このまま直線状の導入部17を通過してさらに整流されて回転翼1へと流入する。
【0052】
このように、本実施の形態においては、静止ノーズコーン16がその入口部で空気に大きな加速度を与え、その後この加速度を徐々に減じながら回転翼1まで導くことができ、つまり、加速度の変化率が負となるようにしたので、流れの局所に剥離などが発生せず、また、半径方向の流れ成分を持った偏向流などを抑制できるため、良好な整流効果が得られ高い空力性能が得られる。
【0053】
なお、本実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状の翼を有する双方向軸流ファンに適用すると高い効果が得られる。
【0054】
本発明の第7の実施の形態は、図7に示すように、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する回転翼1と、上記第6の実施の形態におけると同様の整流用の静止ノーズコーン16と、偏平な断面を有し前記静止ノーズコーン16をケーシング6から支持する静止案内翼20とを備えた構成である。
【0055】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、静止案内翼20を静止ノーズコーン16の吊り具として兼用できるため、空気流の旋回を防止すると共に、静止ノーズコーン16の十分な支持強度を得ることができる。
【0056】
本発明の第8の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する高性能の双方向軸流ファンに、図8に示すように、運転時の流体騒音を防止するために消音機能を持たせた消音装置付きケーシング22を採用したものである。そして、ケーシング22の内面の回転翼1先端部分に回転翼1との間隙を所定の大きさに規定するリング21が設けられている。
【0057】
このように構成された本実施の形態においては、ケーシング22内面に、羽根車3に取り付けられた回転翼1先端と消音装置付きケーシング22で形成される間隙を精度良く管理するリング21が取り付けられているので、上記間隙からの軸方向作動媒体漏洩を防止できるため、空力損失を小さくすることができる。
【0058】
本発明の第9の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、図9に示すように、前記第8の実施の形態と同様の構成のほかに、消音装置付きケーシング22内面にスポンジや焼結金属からなる多孔質充填材23を取り付けた構成である。
【0059】
このように構成された本実施の形態においては、ケーシング22内壁面の凹凸が極めて小さくなり壁面粗さが小さくなって摩擦損失を小さくできる。ケーシング22の消音装置にグラスウールなどの消音マットを使用したときに使用される消音マット押さえパンチングメタル等に適用した場合、よりいっそうの摩擦損失低減(圧力損失低減)により空力性能向上が可能となる。
【0060】
本発明の第10の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、図1010に示すように、前記第8の実施の形態と同様の構成のほかに、消音装置付きケーシング22の内面と回転翼1先端とのあいだの間隙に軸方向漏洩を防ぐシール部材24を設けた構成である。
【0061】
このように構成された本実施の形態においては、回転翼1の先端とケーシング22の内面との隙間を精度良く管理できるようになり、前記隙間からの作動媒体漏洩を防止できるため、空力損失を小さくすることができる。
【0062】
図11は本発明の第11の実施の形態を示す。本実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、前記第9の実施の形態の構成に加えて、消音装置付きケーシング22の開口部に整流機能を持たせた脱着可能なリム25を取り付けた構成である。
【0063】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、ファン吸入部(ファン入口部)のケーシング22側では半径方向流れから軸方向流れへの急激な縮流を防止することができる。これによって局所的な流れの剥離やトンネル壁8の影響によるファン内の偏向流を防止できるため、空力性能が向上する。また、ケーシング22の開口部に着脱可能なリム25が取り付けられているため、定期的なファンの点検や清掃、または修理を容易にし、一部の分解、または全分解に要する時間を短縮することができる。
【0064】
図12は本発明の第12の実施の形態を示す。本実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、前記第11の実施の形態の構成の加えて、消音装置付きケーシング22内の空気流路の一部にたとえばハネカム構造の整流板26を取り付けた構成である。
【0065】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、消音装置付きケーシング22内の流路の一部に整流板26を備えているため、流路内部の圧力損失を抑えつつ、旋回流を小さくし、且つ均一な流れを得ることができる。
【0066】
本発明の第13の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンに適用する場合であり、図1313に示すように、前記第6の実施の形態の構成に加えて、ケーシング6とハブ16とで形成される環状の流路の一部にケーシング6内壁から半径内向き(ハブ側)に伸びる任意形状流線形の整流板27を設けた構成である。
【0067】
このように構成された本実施の形態の双方向軸流ファンにおいては、より旋回成分の強い半径外側部分の流れ(大きなスワール流れ領域)に対して整流効果を得ると共に、旋回成分が比較的小さい半径内側部分では整流板が無いため整流板挿入による摩擦損失を生じることがない。また流れ方向のブロッケージ(遮蔽)効果を小さくすることもできる。
【0068】
本発明の第14の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンを備えたトンネル換気システムである。すなわち図14に示すように、トンネル37内換気のために複数台の双方向軸流ファン28−1〜28−nを備える。そしてこれらの双方向軸流ファン前後の差圧に関する物理量を検知する物理量検知センサー29と、センサー信号線30と、差圧データ変換器31と、差圧データ信号線32とで構成する物理量検知装置を設える。また、軸流ファン28−1〜28−n前後の差圧データ信号線32と、車両排気に関する物理量(COガス濃度、NOx/SOx濃度など)検知センサー38からの車両排気データを伝送する車両排気データ信号線39は演算器33に接続されている。
【0069】
演算器33は、検知センサー29,38の検出値に基づいてこれらの物理量の時間変化に応じて軸流ファン28−1〜28−nの回転(通風)方向をそれぞれ判断する。そして、演算器33は、判断したn台の軸流ファン28−1〜28−nの回転(通風)方向を多数決処理して、台数の多い回転(通風)方向を回転方向指示信号34として決定する。この決定に従って生成される回転方向指示信号34を回転指示器35と回転駆動制御ケーブル36を介して軸流ファン28−1〜28−nへ伝送し、軸流ファン28−1〜28−nの全てを決定された方向に回転させる。また、これとは別に緊急割込み指示器40を備え、緊急時には緊急割込み信号41を演算器33に入力して回転(通風)方向を上記の回転判断機能に優先させて決定させる。
【0070】
このような構成によってこのように動作する本実施の形態のトンネル換気システムにおいては、トンネルの入口と出口の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御を連成して良好におこなうことができる。
【0071】
トンネル換気システムは通常はトンネルの左右(入口/出口)の気象条件により気圧の高い方向から低い方向に流すように(風向きに順応して)運転される。但し、非常時、例えばトンネル内の局所で車両事故が発生し炎上した場合や局所排気ガスの有害濃度が高くなった場合は、トラブル発生箇所に近いほうのトンネル口へ向かって強制排気が必要になる。この場合、通常の通気方向とは違って運転する必要が生じる。トンネル内には複数のセンサーが設置されており、夫々のセンサーで通気方向指示が異なることが容易に予想される。従って、最終の通気方向決定は演算器33内で各センサーからの通気指示方向の多数決で行うのが合理的である。また、各センサーにはトラブルの重要度に応じて火災発生検知センサーなどは多数決によらず最優先するなど、プライオリティーや重み付けを付加して決定することによって、より安全で効率のよいトンネル換気システムとなる。なお、上記の各種データ信号、制御信号の伝送は有線、無線のいずれによってもよいことは言うまでもない。
【0072】
本発明の第15の実施の形態は、翼負荷を大きくした軸対称翼または一方向送風に最適な軸非対称翼形状を有する翼を有する高性能の双方向軸流ファンを備えたトンネル換気システムである。システム構成は上記第14の実施の形態と同じであるが、図15に示すように、軸流ファン28のトンネル37の壁への取り付けに角度をもたせ、トンネル37の長手方向(軸方向)を基準として逆八形配列形42a,八形配列形42b,β角付並列型42c,α角付並列型42d等の少なくともいずれか一つとしたものである。
【0073】
このように構成された本実施の形態のトンネル換気システムにおいては、トンネル入口と出口の気象状態やトンネル内の局所車両排気有害物質の速やかな排気を実現するための換気の流れ方向制御、ファン風量制御、緊急時の換気流流れ制御に関して連成して良好に判断制御することができる。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、簡素で空力性能が高く、ランニングコストが低くメンテナンス性、安全性に優れた高性能な双方向軸流ファンおよびトンネル換気システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の双方向軸流ファンの断面を示し、(a)は反転開始時、(b)は反転中、(c)は反転終了時の図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の双方向軸流ファンの断面を示し、(a)は正転時、(b)は逆転時の図。
【図3】本発明の第3の実施の形態の双方向軸流ファンを示し、(a)は全体の断面図、(b)は回転翼の断面図。
【図4】本発明の第4の実施の形態の双方向軸流ファンに備えられる回転翼の断面図。
【図5】本発明の第5の実施の形態の双方向軸流ファンに備えられる回転翼の断面図。
【図6】本発明の第6の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図7】本発明の第7の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図8】本発明の第8の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図9】本発明の第9の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図10】本発明の第10の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図11】本発明の第11の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図12】本発明の第12の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図13】本発明の第13の実施の形態の双方向軸流ファンの断面図。
【図14】本発明の第14の実施の形態のトンネル換気システムを示す図。
【図15】本発明の第15の実施の形態のトンネル換気システムを示す図。
【図16】従来の双方向軸流ファンを示し、(a)は全体の断面図、(b)は回転翼の断面図。
【符号の説明】
1…回転翼、1a…静止翼、2…ハブ、3…羽根車、4…回転駆動装置、5…支持具、6…ケーシング、7…吊り下げ支持具、8…トンネル壁、9…回転軸、10…キャンバーライン、11…位相反転駆動機構、11a…位相反転経線、12…反り、13…縦渦発生体突起、14…スタッド、15…吊り具、16…静止ノーズコーン、17…導入部、18…絞り部、19…入口部、20…静止案内翼、21…リング、22…消音装置付きケーシング、23…多孔質充填材、24…シール部材、25…リム、26,27…整流板、28−1〜28−n…双方向軸流ファン、29…物理量検知センサー、30…センサー信号線、31…差圧データ変換器、32…差圧データ信号線、33…演算器、34…回転方向指示信号、35…回転指示器、36…回転駆動制御ケーブル、37…トンネル、38…車両排気物理量検知センサー、39…車両排気データ信号線、40…緊急割込み指示器、41…緊急割込み信号、42a,42b,42c,42d…軸流のファンの配列型、44…着脱型回転駆動装置、111…反り付き回転翼、112…S字型回転翼。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は一方向回転を行なう一方向回転駆動装置であり、前記羽根車と前記一方向回転駆動装置とをその回転軸が180°度回転するように反転させる位相反転駆動機構を備えていることを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項2】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は双方向回転を行なう双方向回転駆動装置であり、前記羽根車は一対の位相反転羽根車であって前記双方向回転駆動装置に着脱可能に結合され、前記双方向回転駆動装置の回転方向に応じて一方の羽根車を前記双方向回転駆動装置に結合して回転駆動し、他方の羽根車を前記双方向回転駆動装置から切り離して流れの旋回を防止する静止翼として機能させることを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項3】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼は回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなすことを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項4】
回転翼の翼中心軸に垂直な翼断面でのキャンバーラインがS字形であることを特徴とする請求項3記載の双方向軸流ファン。
【請求項5】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸竜ファンにおいて、前記回転翼の翼面背側に縦渦発生体突起を設けたことを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項6】
前記縦渦発生体突起は、羽根車の回転による慣性力によって翼外面と翼内部間を移動可能であり、翼背側では翼外面に、翼腹側では翼内部になるように設けられていることを特徴とする請求項5記載の双方向軸流ファン。
【請求項7】
前記ハブの上流側及び下流側に前記ケーシングから支持された静止ノーズコーンを備え、この静止ノーズコーンは円形曲率入口部と正弦曲率絞り部と直線導入部とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項8】
前記ケーシングに防音装置を取付けるとともに前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に間隙を所定の大きさに規定するリングを取付けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項9】
前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に軸方向漏洩を防ぐシール部材を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項10】
前記ケーシング内の流路の一部に整流板を設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファンをトンネル内に備え、前記双方向軸流ファンの上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、前記物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて前記双方向軸流ファンの回転方向を決定するようにしたことを特徴とするトンネル換気システム。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファン複数台をトンネル内に備えるとともに、前記双方向軸流ファンそれぞれにその上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、当該物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて判断した前記双方向軸流ファンそれぞれの回転方向を多数決処理して前記双方向軸流ファン全ての回転方向を一方向に決定するようにしたことを特徴とするトンネル換気システム。
【請求項13】
双方向軸流ファンはトンネルの長手方向に対して所定の角度を持って設置されていることを特徴とする請求項11または請求項12記載のトンネル換気システム。
【請求項1】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は一方向回転を行なう一方向回転駆動装置であり、前記羽根車と前記一方向回転駆動装置とをその回転軸が180°度回転するように反転させる位相反転駆動機構を備えていることを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項2】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼はその回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなし、前記回転駆動装置は双方向回転を行なう双方向回転駆動装置であり、前記羽根車は一対の位相反転羽根車であって前記双方向回転駆動装置に着脱可能に結合され、前記双方向回転駆動装置の回転方向に応じて一方の羽根車を前記双方向回転駆動装置に結合して回転駆動し、他方の羽根車を前記双方向回転駆動装置から切り離して流れの旋回を防止する静止翼として機能させることを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項3】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸流ファンにおいて、前記回転翼は回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形をなすことを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項4】
回転翼の翼中心軸に垂直な翼断面でのキャンバーラインがS字形であることを特徴とする請求項3記載の双方向軸流ファン。
【請求項5】
複数の回転翼をハブに取付けてなる羽根車と、この羽根車の外周に設けられたケーシングと、前記羽根車を回転させる回転駆動装置とを備えた双方向軸竜ファンにおいて、前記回転翼の翼面背側に縦渦発生体突起を設けたことを特徴とする双方向軸流ファン。
【請求項6】
前記縦渦発生体突起は、羽根車の回転による慣性力によって翼外面と翼内部間を移動可能であり、翼背側では翼外面に、翼腹側では翼内部になるように設けられていることを特徴とする請求項5記載の双方向軸流ファン。
【請求項7】
前記ハブの上流側及び下流側に前記ケーシングから支持された静止ノーズコーンを備え、この静止ノーズコーンは円形曲率入口部と正弦曲率絞り部と直線導入部とを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項8】
前記ケーシングに防音装置を取付けるとともに前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に間隙を所定の大きさに規定するリングを取付けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項9】
前記ケーシング内面の前記回転翼先端部分に軸方向漏洩を防ぐシール部材を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項10】
前記ケーシング内の流路の一部に整流板を設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の双方向軸流ファン。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファンをトンネル内に備え、前記双方向軸流ファンの上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、前記物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて前記双方向軸流ファンの回転方向を決定するようにしたことを特徴とするトンネル換気システム。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の双方向軸流ファン複数台をトンネル内に備えるとともに、前記双方向軸流ファンそれぞれにその上下流の差圧あるいは車両排気の少なくとも一方に関する物理量を検知する物理量検知装置を設け、当該物理量検知装置にて検知した物理量の経時変化に応じて判断した前記双方向軸流ファンそれぞれの回転方向を多数決処理して前記双方向軸流ファン全ての回転方向を一方向に決定するようにしたことを特徴とするトンネル換気システム。
【請求項13】
双方向軸流ファンはトンネルの長手方向に対して所定の角度を持って設置されていることを特徴とする請求項11または請求項12記載のトンネル換気システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2004−278349(P2004−278349A)
【公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−68124(P2003−68124)
【出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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