説明

反射防止透明フィルムの検査方法

【課題】紫外光を通しにくい反射防止機能の、又は低反射機能を持った反射防止透明フィルムの表面状態を検査し、光学欠陥を検出する方法のおいて、光学欠陥を検出する時、検査効率が低下せず、生産ライン上で検出する検査方法であって、分解能を上げずに実用上問題となる光学欠陥のみを検出する反射防止透明フィルムの検査方法を提供すること。
【解決手段】紫外光の300から400nmの波長域の光源を用い、透明フイルムの基材の片側表面に低反射層を形成した反射防止透明フィルムの片側表面より照射して、その正反射光を紫外光用カメラで撮像することにより、反射防止透明フィルムの光学欠陥を検出することを特徴とする反射防止透明フィルムの検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示用のディスプレイ画面の表面に貼り付け、表面反射を防ぎ、ディスプレイ画面を見易くするための反射防止透明フィルムの表面の光学欠陥を検出する反射防止透明フィルムの欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止透明フィルムや低反射透明フィルム(以下反射防止透明フィルムと記す)の表面の光学的欠陥(光学欠陥と記す)を検出する方法としては、従来の方法では、光学欠陥に付随する異物を検出し、二次的に光学欠陥を検出していた。
【0003】
反射防止透明フィルムの構成は、透明フイルムからなる基材の片側に所定の膜厚を備えた低反射層を形成したものである。通常の実施例においては、低反射層の厚さは、可視光波長域である400nmから700nmのほぼ中央値となる550nmの1/4波長であり、すなわち、約140nmに設定され、該低反射層によって、550nmの緑色の光が打ち消され、550nmを中心とした可視光域が弱められことにより、正反射光が大幅に減衰し、反射防止透明フイルムとしての効果を発現するものである。次に、前記光学欠陥は、低反射層の厚さのバラツキに起因する欠陥であり、1/4波長に相当する厚さを中心値として正反射光の光量が極小となり、1/2波長及び0波長に相当する厚さで正反射光が極大となる。すなわち、膜厚が増加しても減少しても正反射光の光量が大幅に増加し、反射防止透明フイルムとしての効果を消滅するものである。前記低反射層の厚さのバラツキの異常部位には、その近傍に、付随する異物の存在が確認されている。すなわち、付随する異物の近傍では、低反射層の厚さのバラツキが確認され、その近傍の低反射層2の厚さが凸状に浮上した厚膜と、又はその近傍の低反射層2の厚さが凹状に沈下した薄膜となる。光学欠陥は、付随する異物の近傍に発生する現象を用いて、付随する異物を検出し、二次的に光学欠陥を検出していた。
【0004】
前記異物を検出するには、検出の分解能を上げれば上げるほど、細かい異物を検出できるが、分解能を上げると被検査面の単位長さ当たりの検出速度が遅くなり、装置も大規模となる問題がある。
【0005】
さらに、従来の検出方法では分解能が問題点となり、小さな異物を発見しようとすれば、当然のように分解能を上げていかなければならず、検査効率が低下し、生産ライン上で検出するには限界がある。
【0006】
また、分解能を上げると、細かい異物まで検出可能となるが、光学欠陥として影響を及ぼさないような異物、気泡等までも検出してしまうようになり、その分別のための作業負荷が増加する問題も生じてくる。さらに、異物を伴わない光学欠陥のみの欠陥の場合、この方法では検出することが出来ない問題がある。
【0007】
また、従来の方法で光学欠陥を検出するには、異物を検出するに伴うことで二次的に光学欠陥を検出していたが、例えば、100μm直径の光学欠陥を検出するためには、20μm程度の異物を検出しなければならないが、分解能を上げてこれらの小さい異物を検出するとなると、実用上問題にはならない微小な異物や気泡等までも検出してしまい、光学的欠陥のみを検出することが望まれていた。
【0008】
従来では、反射防止透明フイルムの光学欠陥は、異物を検出することで二次的に検出していたため、例えば、異物が小さく、または異物が存在しない100μm以上の大きさの
光学的欠陥では、従来の異物検査では発見することが出来なかった。
【0009】
それ以外に、光学的欠陥を検出するには種々方法があるが、どれも装置が大掛かりであったり、検出速度が遅い、あるいは破壊検査方法である等、製造ライン上で検出できるものは今のところ無い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、反射防止透明フィルムの光学欠陥を検出する時、検査効率が低下せず、生産ライン上で検出する検査方法であって、分解能を上げずに実用上問題となる光学欠陥のみを検出する反射防止透明フィルムの検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る発明は、反射防止機能、又は低反射機能を持った反射防止透明フィルムの表面状態を検査し、光学欠陥を検出する反射防止透明フィルムの検査方法において、紫外光の300から400nmの波長域の光源を用い、透明フイルムの基材の片側表面に低反射層を形成した反射防止透明フィルムの片側表面より照射して、その正反射光を紫外光用カメラで撮像することにより、反射防止透明フィルムの光学欠陥を検出することを特徴とする反射防止透明フィルムの検査方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の検査方法を用いることで、光学欠陥の不良として影響の少ない異物を検出することなく、光学欠陥のみを検出することができる。また、本発明の方法を用いることにより、光学欠陥の不良として影響する小さな異物を検出することなく、光学欠陥のみを検出することができることにより、分解能を上げることなく検査することが出来る。また、本発明の反射防止透明フィルムの検査方法を用いて光学欠陥を検出する場合、検査効率が低下しないため、生産ライン上で検出する検査方法を採用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の反射防止透明フィルムの検査方法を説明する側断面図である。反射防止透明フィルム10は、基材1の表面に低反射層2を形成した構造である。図左端は、正常な膜厚、すなわち、1/4波長に相当する膜厚により形成された無欠陥の低反射層90であり、図中央には、凸状に浮上した光学欠陥92と、図右端には、凹状に沈下した光学欠陥91がある。各々の低反射層90、92、91側より、400nm〜300nmの波長域を持つ紫外線の入射光100を照射した時、照射光s0の光路は、最初に低反射層90、92、91の各々表面で、正反射光r0を分岐し、さらに直進し、2番目に基材1の表面で、正反射光r1を分岐し、さらに直進し、3番目に基材1の裏面で、正反射光r2及び直進する照射光とに分岐する。本発明の検査方法では、前記正反射光r0及び正反射光r1を測定するものである。
【0015】
図1は、上面(r0)と下面(r1)からの反射2光束が完全に打ち消し合うには、2光束が相等しく、各境界面における屈折率比が等しい構造である。従って、位相差が180°となる光学膜厚は1/4波長で形成された構造の反射防止透明フイルムである。図左側の無欠陥の低反射層90の製品に1/4波長を中心とした可視光域を照射した場合、上面と下面からの反射2光束が完全に打ち消し合う干渉により反射防止を発現した透明フィルムとなる。図中央の凸状に浮上した光学欠陥92と、図右端の凹状に沈下した光学欠陥91の製品に1/4波長を中心とした可視光域を照射した場合、上面と下面からの反射2光束の位相が180°よりずれるため、不完全に打ち消し合う干渉により反射防止効果が
不十分となる透明フィルムとなる。本発明の検査方法に用いる被検査体の反射防止透明フィルムは、1/4波長の波長は550nmとしたものである。すなわち、可視光波長域である400nmから700nmのほぼ中央値となる550nmの緑色の光が打ち消される厚さに設定されている。
【0016】
図1に示す図面では、光学欠陥を持つ反射防止透明フィルム10へ400nm〜300nmの波長域を持つ紫外線の入射光100を照射した場合、1/4波長の波長はほぼ中央値となる350nmとなり、凹状に沈下した光学欠陥91では、低反射層2の膜厚が100nmとなり、上面と下面からの反射2光束が互いに打ち消し合う干渉領域であり、凸状に浮上した光学欠陥92では、低反射層2の膜厚が190nmとなり、上面と下面からの反射2光束が互いに強め合う干渉領域となる。すなわち、凹状に沈下した光学欠陥では、350nmを中心とした波長域で紫外線をも反射しにくく、正反射光は極小となり、凸状に浮上した光学欠陥では、紫外光は低反射域から外れ、しっかり反射し、正反射光は極大となる。本発明では、検査に用いる照射光を紫外線の400nm〜300nmの波長域を持つ光源とし、該波長域での位相差による2光束の干渉の差による反射防止透明フィルムを検査する検査方法である。なお、反射光r2は、基材1内部で吸収されてなくなる。また、本発明では、反射光r0と反射光r1との2光束を測定するものであって、照射光s0の正反射光r0及びr1では、中間値と、又は照射光s1の正反射光r0及びr1では、極小値と、又は照射光s2の正反射光r0及びr1では、極大値となる。
【0017】
本発明では、検査に用いる照射光を紫外線の平行光、散乱光を含む光源は、400nm〜300nmの波長域を持つ照射光であり、400nmより長波長では、反射防止透明フィルムを透過するため使用できず、逆に、300nmより短波長では、2光束の干渉の差が発現せずに使用できない。
【0018】
図2は、本発明の反射防止透明フィルムの検査方法を説明する側断面図で、図2aは、凹状に沈下した光学欠陥であり、図2bは、凸状に浮上した光学欠陥である。図上の破線は、140nm厚(1/4波長)である。照射光s1、s2は、低反射層2の表面での正反射光r0、基材1の表面での正反射光r1、基材1の裏面での正反射光r2、に分岐されている。
【0019】
図2(a)〜(b)は、反射防止透明フイルム10の欠陥部9の構成を示したものである。図2は、低反射層2の厚さが、可視光波長域である400nmから700nmのほぼ中央値となる550nmの緑色の光が打ち消される厚さに設定されている(図上破線参照)。すなわち、低反射層2の厚さは、1/4波長であり、約140nmに設定されている。通常140nmの厚さの低反射層2に可視光が当たった場合、550nmを中心とした可視光域が弱められ、反射防止透明フイルムとしての効果を発現するものである。
【0020】
図2(a)に示す光学欠陥9は、異物の存在のため、低反射層2の表面より数10nm凹状に沈下した場合、その異物周囲が約−50nm程度厚みの変動のある部分である。図2(b)に示す光学欠陥9は、異物の存在のため、低反射層2の表面より数10nm凸状に浮上した場合、その異物周囲が約+50nm程度厚みの変動のある部分である。
【0021】
通常140nmの厚さの低反射層2に可視光が当たった場合、550nmを中心とした可視光域が弱められるが、本発明では、紫外光の長波長域(300nmから400nm)の散乱光を用いることにより、90nmの厚さの低反射層2に前記紫外光の散乱光100が当たった場合、350nmを中心とした紫外光域が弱められる。異物により厚さ変化を起こした90nmの厚さの低反射層2の部分において、低反射を起こす波長域の中心値が350nmとシフトする。すなわち、図2(a)に示すように、数10nm凹状に沈下した場合、該周囲の低反射層2では、膜厚が90nmの低反射層であり、350nmを中心
とした波長域で紫外線をも反射しにくくする。すなわち、紫外光の入射光100(s1)の正反射光r0及びr1では、極小値となる。図2(b)に示すように、数10nm凸状に浮上した場合、該周囲の低反射層2では、膜厚が190nmの低反射層であり、紫外光は低反射域から外れ、しっかり反射してくるようになる。すなわち、紫外光の入射光100(s2)の正反射光r0及びr1では、極大値となる。
【0022】
このような特徴を利用し、検査に用いる紫外光源として、紫外光の長波長域(300nmから400nm)を使い、この正反射光をUV光に感度のあるUV用CCDカメラでとらえることで、異物周囲の光学的欠陥領域の紫外反射光の波長域の違いを検出する。異物周囲がUV用CCDカメラで黒く見える場合は、凹んでいるため低反射層の厚さは薄く、白く見える場合は、低反射層の厚さが厚くなっていることがわかる。すなわち、図2(a)では、黒く見え、図2(b)では、白く見える。
【0023】
以下に本発明の実施例を図3、図4を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
図3に示すように、単純なブラックライト(20)の散乱光源をワーク(10)に照射し、UV用CCDカメラ(30)で撮像する。反射角度は、同軸である0度を越えて60度くらいまでの範囲で撮像可能である。
【実施例2】
【0025】
また、図4はラインCCDカメラを用いた実際のロール巻き取り状の反射防止透明フイルムを検査する構成である。
【0026】
ある程度の速度で流れていく反射防止透明フイルム(40)を連続的に撮像していくため、UV照明(60)を表面に照射し、UV帯域まで感度を持つラインCCDカメラ(50)を使用する。もちろんUV専用カメラでも良いが、価格が高いため、また、使用波長帯域がUVの中でも長波長域であるため、300nm以下の感度はあえて必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の反射防止透明フィルムの検査方法を説明する側断面図である。
【図2】本発明の反射防止透明フィルムの検査方法を説明する側断面図で、(a)は、凹状に沈下した光学欠陥であり、(b)は、凸状に浮上した光学欠陥である。
【図3】本発明の一実施例の反射防止透明フイルムを検査する構成図である。
【図4】本発明の一実施例のロール巻き取り状の反射防止透明フイルムを検査する構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1…基材
2…低反射層
9…光学欠陥
10…低反射透明フィルム
20…ブラックライト
30…UV用CCDカメラ
40…低反射透明フィルム
50…ラインCCDカメラ
60…UV照明
90…無欠陥の低反射層
91…凹状に沈下した光学欠陥
92…凸状に浮上した光学欠陥
100…(300nmから400nm長波長域の)紫外光の入射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止機能、又は低反射機能を持った反射防止透明フィルムの表面状態を検査し、光学欠陥を検出する反射防止透明フィルムの検査方法において、紫外光の300から400nmの波長域の光源を用い、透明フイルムの基材の片側表面に低反射層を形成した反射防止透明フィルムの片側表面より照射して、その正反射光を紫外光用カメラで撮像することにより、反射防止透明フィルムの光学欠陥を検出することを特徴とする反射防止透明フィルムの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−38728(P2006−38728A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221272(P2004−221272)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】