説明

収穫機のエンジン冷却装置

【課題】 塵埃が多い作業環境であっても十分な冷却風量を確保して良好なエンジンの冷却を行うことが可能なものでありながら、逆風モードでの運転によってエンジンの温度が大きく上昇することを回避することが可能となる収穫機のエンジン冷却装置を提供する。
【解決手段】 外気を吸引してエンジン冷却部に供給する順風モードと、その順風モードとは逆向きに通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、順風モードを順風用設定時間の間実行した後、逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられ、通風制御手段が、メインスイッチがオン操作されると、順風モードに切り換えるように通風手段の作動を制御する順風モード復帰処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンバイン等のような収穫機のエンジン冷却装置に関し、詳しくは、除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の収穫機のエンジン冷却装置は、外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードでの運転中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって機外に吹き飛ばし除去することで、塵埃が多い作業環境であっても十分な冷却風量を確保して良好なエンジンの冷却を行うことができるものであるが、このような収穫機のエンジン冷却装置において、従来では、次のように構成したものがあった。
【0003】
すなわち、エンジンが作動して通風制御手段が通風運転処理を行うように通風手段の作動を制御しているときにエンジンが停止すると、そのエンジン停止時点で通風手段が順風モードであるか否かを記憶しておき、そのとき順風モードでないことが記憶されていれば、エンジンが始動したときに順風モードに切り換えるように通風手段の作動を制御するようにしたり、あるいは、このような構成とは別に、メインスイッチが切り操作されたときに通風手段が逆風モードであれば、そのメインスイッチが切り操作されるに伴って順風モードに切り換えるように通風手段の作動を制御するように構成したものがあった(例えば、特許文献1参照。)。そして、前記通風手段が、前記順風モードと前記逆風モードとの切り換え操作を行う電動モータ式の切換操作手段と、その切換操作手段の操作位置を検出する操作位置検出手段としての操作位置センサとを備えて構成され、その操作位置センサの検出情報に基づいて切換操作手段により順風モードと逆風モードとの切り換え操作を行う構成となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−263063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成は、例えば作業を一時中断するために運転者がメインスイッチを切り操作してエンジンを停止したような場合、あるいは、作業中に搬送経路中で排出ワラ詰まりを起こして、エンジンが非常停止したような場合等において、通風手段が逆風モードに切り換えられている状態でエンジンが停止したときであっても、次回にエンジンを始動するときに、通風手段を順風モードに切り換えるようにしたものである。
【0006】
しかしながら、上記従来構成のように、エンジンを始動するときに通風手段を順風モードに切り換えるようにした場合であっても、通風手段が逆風モードから順風モードに切り換えられて外気を吸引してエンジン冷却部に通風させる状態になるまでの間に、切り換え操作に時間がかかることがあり、エンジンが始動したときに逆風モードから順風モードに切り換えるように通風制御手段を制御しても、上述したような時間遅れによってエンジンが始動してから実際に外気を吸引してエンジン冷却部に通風させる状態になるまでの間に時間がかかり、その間は冷却風が通風されない状態となり、エンジンの温度が大きく上昇するおそれがある。
【0007】
又、上述したように作業中に搬送経路中で排出ワラ詰まりを起こしてエンジンが非常停止したような場合等において、その後、運転者がメインスイッチを入り状態にしたまま、排ワラ詰まり等を解消したのちにエンジンを始動させることがあるが、このような場合、エンジンが停止したときに逆風モードであれば、次回のエンジン始動時に逆風モードにてエンジンが始動することになる。そうすると、エンジンを始動してから逆風モードが維持されている間は冷却風が通風されない状態となり、その間は冷却風が通風されない状態となるから、エンジンの温度が大きく上昇するおそれがある。
【0008】
又、上記従来構成では、前記通風運転処理を行う場合に、前記切換操作手段が通風手段を順風モードから逆風モードに切り換える際に、その切り換え操作の途中で動作異常を起こすような場合も考えられるが、上記従来構成では、このような動作異常については何ら考慮されていない。このような順風モードから逆風モードへの切り換え操作の途中で動作異常が発生したときに、一般的な処理としては、動作異常が発生した時点で直ちに通風手段に対する制御を停止して警報作動させる構成とすることが考えられるが、このように動作異常が検出されると直ちに制御を停止させる構成とした場合であれば、異常が発生したときに通風手段が逆風モードに切り換えられており、しかも、そのような状態で誤ってエンジンが継続して運転されると、エンジン冷却部に冷却風が通風されない状態が長く続いてエンジンの温度が大きく上昇するおそれがある。
【0009】
更に、上記従来構成では、操作位置検出手段の検出情報に基づいて切換操作手段により順風モードと逆風モードとの切り換え操作を行う構成となっているが、操作位置検出手段は、通風手段が順風モードにあるときの操作位置と逆風モードにある操作位置の夫々における検出値が組み付け誤差に起因して収穫機毎に個体差が生じるおそれがあるので、切換装置手段及び操作位置検出手段の組み付けが行われた後に、実際の操作位置に対応した検出値になるように検出値を校正するための校正用情報を用意しておき、実際の制御の際には、その校正情報を用いて制御を行うことが行われることになる。しかし、例えば、通風制御手段が故障して新たなものに取り換えられた場合等においては、このような校正用情報が設定されない状態でその後の制御が行われるおそれがある。そして、このような校正用情報がない場合には、通風手段が順風モードであるか逆風モードであるかを正確に検出することができないので、例えば、エンジンが始動したときに、通風手段が逆風モードであるにもかかわらず、そのことが検出できないと、通風手段の切り換えが適正に行われず、エンジン冷却部に冷却風が通風されない状態が長く続くおそれがあり、エンジンの温度が大きく上昇するおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、順風モードでの運転中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することで、塵埃が多い作業環境であっても十分な冷却風量を確保して良好なエンジンの冷却を行うことが可能なものでありながら、逆風モードでの運転によってエンジンの温度が大きく上昇することを回避することが可能となる収穫機のエンジン冷却装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、前記通風制御手段が、メインスイッチがオン操作されると、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段の作動を制御する順風モード復帰処理を実行するように構成されている点にある。
【0012】
第1特徴構成によれば、前記通風制御手段は、順風モードを順風用設定時間の間実行した後、逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うことにより、順風モードでの運転によって除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するようにしながら、その順風モード中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することができる。
【0013】
そして、通風制御手段は、メインスイッチがオン操作されると前記順風モード復帰処理を実行する構成となっているから、前回のメインスイッチの切り操作の際に、通風手段が逆風モードに切り換わっている状態であっても、メインスイッチのオン操作に伴って通風手段が順風モードに切り換えられるので、メインスイッチのオン操作の後において行われるエンジン始動操作の際には、通風手段は既に順風モードに切り換わっているか、あるいは、ほぼ順風モードに近い状態にまで切り換わっているので、エンジンが始動してから時間遅れのない状態ですぐにエンジン冷却部に冷却風が供給されることになり、エンジンの温度が大きく上昇するおそれは少ないものとなる。
【0014】
従って、順風モードでの運転中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することで、塵埃が多い作業環境であっても十分な冷却風量を確保して良好なエンジンの冷却を行うことが可能なものでありながら、逆風モードでの運転によってエンジンの温度が大きく上昇することを回避することが可能となる収穫機のエンジン冷却装置を提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、前記通風制御手段が、エンジンが停止すると、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段の作動を制御する順風モード復帰処理を実行するように構成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、前記通風制御手段は、順風モードを順風用設定時間の間実行した後、逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うことにより、順風モードでの運転によって除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するようにしながら、その順風モード中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することができる。
【0017】
そして、通風制御手段は、エンジンが停止すると前記順風モード復帰処理を実行する構成となっているから、例えば、運転者の操作によりメインスイッチが切り操作されるに伴ってエンジンが停止したような場合、あるいは、メインスイッチが切り操作されていなくても、例えばオーバーヒートを防止するためにエンジンを非常停止させたような場合等において、エンジンが停止したときに通風手段が順風モードに切り換えられるので、その後におけるエンジン始動操作の際には、通風手段は既に順風モードに切り換わっていることになる。つまり、エンジンが始動してからすぐにエンジン冷却部に冷却風が供給されることになり、エンジンの温度が大きく上昇するおそれは少ないものとなる。
【0018】
従って、順風モードでの運転中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することで、塵埃が多い作業環境であっても十分な冷却風量を確保して良好なエンジンの冷却を行うことが可能なものでありながら、逆風モードでの運転によってエンジンの温度が大きく上昇することを回避することが可能となる収穫機のエンジン冷却装置を提供できるに至った。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、前記通風制御手段が、前記順風モードから前記逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されると、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段の作動を制御する順風モード復帰処理を実行するように構成されている点にある。
【0020】
第3特徴構成によれば、前記通風制御手段は、順風モードを順風用設定時間の間実行した後、逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うことにより、順風モードでの運転によって除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するようにしながら、その順風モード中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することができる。
【0021】
そして、通風制御手段は、順風モードから逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されると、前記順風モード復帰処理を実行する構成となっているから、順風モードへの切換動作を実行することが可能な状態であれば、適正に通風手段を順風モードに切り換えるので、動作異常が発生したときに直ちに制御を停止させる構成のように逆風モードが長い間継続するおそれがなく、エンジンの温度が大きく上昇するおそれは少ないものとなる。
【0022】
従って、順風モードでの運転中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することで、塵埃が多い作業環境であっても十分な冷却風量を確保して良好なエンジンの冷却を行うことが可能なものでありながら、逆風モードでの運転によってエンジンの温度が大きく上昇することを回避することが可能となる収穫機のエンジン冷却装置を提供できるに至った。
【0023】
本発明の第4特徴構成は、除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、前記通風手段が、前記順風モードと前記逆風モードとの切り換え操作を行う切換操作手段と、その切換操作手段の操作位置を検出する操作位置検出手段とを備えて構成され、前記通風制御手段が、前記操作位置検出手段の検出情報及び校正情報に基づいて、前記切換操作手段を前記順風モードのときには順風用操作位置に及び前記逆風モードのときには逆風用操作位置に操作するように構成され、且つ、前記校正情報がないときには、前記操作位置検出手段の検出情報に基づいて、前記切換操作手段を順風用仮操作位置に操作して、前記順風モードを維持するように構成されている点にある。
【0024】
第4特徴構成によれば、前記通風制御手段は、順風モードを順風用設定時間の間実行した後、逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うことにより、順風モードでの運転によって除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するようにしながら、その順風モード中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することができる。
【0025】
そして、通風制御手段は、操作位置検出手段の検出情報及び校正情報に基づいて、切換操作手段を順風モードのときには順風用操作位置に及び逆風モードのときには逆風用操作位置に操作するように構成されている。つまり、操作位置検出手段及び切換操作手段の組み付けが行われた後に、検出値を校正するための校正情報を用意しておき、操作位置検出手段の検出情報及び校正情報に基づいて、切換操作手段における実際の操作位置を精度よく検出して切換操作手段を適正に制御することができる。
【0026】
しかし、例えば、通風制御手段が故障してメンテナンス作業にて新たなものに交換された場合等において、前記校正情報の取得が行われないままメンテナンス作業が終了して、校正情報がない状態で通風運転処理を行うことがある。このように校正情報がない場合において、操作位置検出手段の検出情報のみに基づいて切換操作手段の作動を制御すると、切換操作手段を順風用操作位置及び逆風用操作位置に夫々適正に操作することができないものとなる。そこで、通風制御手段は、前記校正情報がないときには、操作位置検出手段の検出情報に基づいて、切換操作手段を順風用仮操作位置に操作して順風モードを維持するように構成されている。
【0027】
つまり、前記操作位置検出手段は、前記校正情報がないので、正確な操作位置を検出することはできないが、切換操作手段の操作位置の大まかな操作位置を検出することは可能であるから、校正情報がない場合に制御の実行を停止するのではなく、操作位置検出手段の検出結果に基づいて順風用モードであると判別することになる順風用仮操作位置にまで切換操作手段を操作してその位置に維持させるのである。この操作位置は大まかには順風モードに対応する位置であるから、順風モードを維持することによって、エンジンの温度が大きく上昇するおそれは少ないものとなる。
【0028】
従って、順風モードでの運転中に除塵網に付着堆積した塵埃を逆風モードでの運転によって除去することで、塵埃が多い作業環境であっても十分な冷却風量を確保して良好なエンジンの冷却を行うことが可能なものでありながら、逆風モードでの運転によってエンジンの温度が大きく上昇することを回避することが可能となる収穫機のエンジン冷却装置を提供できるに至った。
【0029】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記通風制御手段が、作業状態を検出すると、前記通風運転処理を行い、且つ、非作業状態を検出すると、前記順風モードを維持する順風運転処理を行うように構成されている点にある。
【0030】
第5特徴構成によれば、通風制御手段が、作業状態を検出すると、順風モードを順風用設定時間の間実行した後、逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行い、非作業状態を検出すると、順風モードを継続して実行する順風運転処理を行うので、多くの塵埃の発生が想定される作業状態においては、順風モードでの通風により除塵網に付着した塵埃を、その後行われる逆風モードでの通風により、機外へ吹き飛ばして除去することができ、エンジン冷却装置の冷却性能を良好な状態で維持することができる。また、塵埃の発生が比較的少ないと想定される非作業状態においては、不要な逆風モードでの通風を行なわずに順風モードでの通風を継続して実行することで、断続的な逆風モーでの通風によるエンジン冷却装置の冷却性能の低下を回避して、良好な冷却性能を得ることができる。このように、作業状態と非作業状態とで通風制御手段が行う通風手段の運転処理を異ならすことにより、夫々の状態において好適な通風手段の運転を行うことができる。
【0031】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成に加えて、前記通風制御手段が、前記作業状態として、エンジン回転速度が設定回転速度以上であり、且つ、作業クラッチが入り状態であることを検出するように構成されている点にある。
【0032】
第6特徴構成によれば、作業を行う場合には、エンジン出力を作業負荷に対応できるよう高めるためにエンジンをアクセルアップした状態で作業クラッチが入れられるので、エンジンが設定回転速度以上の回転状態で作業クラッチが入り状態であることを検出することで作業状態であることが的確に認識されることになる。従って、作業状態であることが的確に認識されることになるので、除塵網に付着した塵埃の除去を適切なタイミングで行うことができる。
【0033】
本発明の第7特徴構成は、第1特徴構成〜第6特徴構成のいずれかに加えて、前記通風手段が、一定方向に回転駆動されるハブに対して通風羽根の向きを反転させることにより、前記順風モードと前記逆風モードとに切り換える冷却ファンを備えて構成されている点にある。
【0034】
第7特徴構成によれば、通風手段に備えられる冷却ファンが、一定方向に回転駆動されるハブに対して通風羽根の向きを反転させることにより順風モードと逆風モードとに切り換えられる構成であるから、例えば、一定姿勢の通風羽根をハブに備えた冷却ファンの駆動回転方向を正転方向と逆転方向とに切換えて順風モードと逆風モードとに切換えるように通風手段を構成する場合に比べて、冷却ファンの駆動構造を単純なもので済ますことができる。従って、冷却ファンの駆動構造を比較的単純なもので済ますことができるので、通風手段を小型で安価に製作しやすいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の収穫機のエンジン冷却装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1には収穫機の一例である自脱形のコンバインの全体右側面が、図2にはその全体平面がそれぞれ示されており、このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成された機体フレーム1、この機体フレーム1の下部に配備された左右一対のクローラ式走行装置2、走行に伴って植立穀稈を刈り取って左右向き姿勢に姿勢変更しながら左後方に向けて搬送するように機体フレーム1の前部に昇降揺動可能に連結された刈取搬送部3、刈取搬送部3からの刈取穀稈を受け取って脱穀・選別処理を施すように機体フレーム1における刈取搬送部3の後方箇所に搭載された脱穀装置4、この脱穀装置4からの穀粒を貯留するように機体フレーム1における脱穀装置4の右側方箇所に配備された穀粒タンク5、及び、機体フレーム1における刈取搬送部3の右側方箇所に形成された搭乗運転部6等によって構成されている。
【0036】
穀粒タンク5は、その内部に貯留した穀粒を機外に排出するためのスクリュー式の排出機構7を備えるとともに、機体フレーム1における穀粒タンク5の後方箇所に立設した排出機構7の揚送スクリュー8を支点にして、脱穀装置4に隣接して脱穀装置4からの穀粒を貯留する作業位置と、脱穀装置4から離間して脱穀装置4の右側方を開放するメンテナンス位置とにわたって、左右方向に揺動変位可能に構成されている。
【0037】
搭乗運転部6は、機体フレーム1の右前部に敷設された搭乗ステップ9、機体フレーム1における搭乗ステップ9の直前箇所に立設されたフロントパネル10、このフロントパネル10に装備された旋回操作用でかつ刈取搬送部昇降操作用の操縦レバー11、機体フレーム1における搭乗ステップ9の直左箇所に立設されたサイドパネル12、このサイドパネル12に装備された主変速レバー13や副変速レバー14、及び、搭乗ステップ9の後方に配備された運転座席15等によって形成されている。
【0038】
図1〜4に示すように、運転座席15は、機体フレーム1における穀粒タンク5の前方箇所に配備された原動部16を覆うエンジンボンネット17の上部に配備されている。穀粒タンク5とエンジンボンネット17との間には、揚送スクリュー8を支点にした穀粒タンク5の揺動変位を許容する隙間が確保されている。原動部16は、機体フレーム1上に出力軸18が左右向きになる横向き姿勢で防振搭載された水冷式のエンジン19、このエンジン19の右外側方に立設されたエンジン冷却部としてのラジエータ20、及び、ベルト式伝動機構21を介して伝達される出力軸18からの動力で一定方向に回転駆動されるようにエンジン19とラジエータ20との間に配備された冷却ファン22などによって構成されている。
【0039】
エンジンボンネット17は、その右側壁23が導風経路24を備える中空構造に形成され、その右側壁23の外面25に除塵網26が張設された吸気口27が、その右側壁23の内面28にラジエータ20に対する連通口29がそれぞれ形成されており、冷却ファン22の吸引作用によって、除塵網26で塵埃などが濾過除去された清浄な外気を冷却用としてラジエータ20やエンジン19等に供給するように構成されている。
【0040】
図3〜6に示すように、ベルト式伝動機構21は、出力軸18に装着された出力プーリ30、エンジン19の左側部に配備された発電機31の入力軸32に装着された第1入力プーリ33、エンジン19の前上部に配備されたウォータポンプ34のポンプ軸35に装着された第2入力プーリ36、及び、それらの各プーリ30,33,36にわたって回し掛けられた伝動ベルト37、などによって構成されている。
【0041】
第2入力プーリ36は、その中心部38にウォータポンプ34の入り込みを許容する内部空間を有するように、その中心部38が外方に向けて円筒状に膨出形成された板金製で、その膨出端部が、ポンプ軸35の突出端に固着された第1回転体39に4本のボルト40で連結されており、これによって、ウォータポンプ34のポンプ軸35に円盤状の第2入力プーリ36を装着する場合に比較して、ポンプ軸35の軸心P1に沿う方向でのそれらの配設長さを短くしながら、出力軸18からの動力をウォータポンプ34の駆動力としてポンプ軸35に伝達することができる。
【0042】
このようにベルト式伝動機構21を介したエンジン19からの動力でウォータポンプ34を駆動することで、エンジン19に備えた図外の冷却水ジャケットとラジエータ20との間で冷却水を循環流動させることができ、エンジン冷却効率の向上を図ることができる。
【0043】
そして、このコンバインは、除塵網26を通して外気を吸引してラジエータ20に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段Aが設けられている。以下、その構成について説明を加える。
【0044】
図3〜10に示すように、冷却ファン22は、ポンプ軸35の軸心P1を回転軸心としてポンプ軸35とともに回転駆動されるハブ41や、このハブ41との回転軸心P1周りでの一体回転で起風する通風羽根としての7枚の起風翼42等を備え、ベルト式伝動機構21を介したエンジン19からの動力で一定方向に回転駆動されることで起風するように構成されている。
【0045】
ハブ41は、その中央部に凹入空間を有する碗状に形成され、その外周部には、ボス状の7つの第1支持部43が周方向に一定間隔を隔てる状態で整列形成され、それらの各第1支持部43に、起風翼42の支軸部44が、メタルベアリング45を介して、回転軸心P1と直交する方向に設定された対応する軸心P2周りに相対回動可能に支持されている。
【0046】
ハブ41の凹入空間には、4本のボルト40によって第1回転体39に、第2入力プーリ36とともに一体回転するように連結される第2回転体46が配備され、この第2回転体46の中心部には、その軸心をポンプ軸35の軸心P1に一致させた状態で配備される断面円形の支軸47が、第2回転体46と一体回転する状態に圧入嵌合装備され、その支軸47に、ハブ41の中心部が、ガタによる傾動が抑制された嵌合精度の高い状態で回転軸心P1に沿う方向に相対摺動可能となるように、カラー48を介して嵌合支持されている。つまり、支軸47が、第2回転体46に対するハブ41の回転軸心P1に沿う方向での摺動変位を許容する摺動案内軸である。
【0047】
そして、ハブ41の中心部と支軸47との間におけるカラー48の外方側に、ハブ41の中心部と支軸47との間への異物の入り込みを防止するシール部材としてのオーリング49が嵌入されている。
【0048】
ハブ41の中央部には、その周方向に所定間隔を隔てる状態でボルト操作用の4つの孔50が穿設されるとともに、それらの孔50を閉塞するとともにオーリング49を抜け止めする蓋体51が備えられ、その蓋体51と、支軸47にボルト連結されるバネ受具52との間に、その蓋体51とともにハブ41を第2入力プーリ36側に向けて付勢する1組の圧縮バネ53が介装されている。
【0049】
第2回転体46の外周部には、ハブ41の中央部にその周方向に所定間隔を隔てる状態で穿設された4つの貫通孔54のうちの対応するものに、回転軸心P1に沿う方向に相対摺動可能に挿通されるとともに、第2回転体46の回転軸心P1周りでの回転に伴ってハブ41を回転軸心P1周りに連動回転させる4本の連動軸55が、その周方向に所定間隔を隔てる状態で圧入嵌合装備されている。
【0050】
各貫通孔54にはカラー56が内嵌され、それらのカラー56と対応する連動軸55との間には、ハブ41及び第2回転体46における各回転軸心P1から外周方向に離れた位置に設けられる各貫通孔54と対応する連動軸55との製造誤差に起因した貫通孔54に対する連動軸55の挿通不良を回避するために、比較的に大きい隙間が形成され、又、各貫通孔54と対応する連動軸55との間からの異物の入り込みを防止するとともに、駆動時や駆動停止時におけるハブ41と連動軸55との接触に起因した異音の発生を防止するオーリング57が嵌入されている。そして、これらのオーリング57は、ハブ41にビス止めされるリング状の押さえ金具58によって抜け止めされている。
【0051】
各起風翼42の支軸部44には、その軸心P2周りでの回動に伴ってその軸心P2周りに揺動する揺動アーム59が固着され、各揺動アーム59は、その支軸部44との連結部位から外れた遊端部位に、第2回転体46に向けて突出する連係ピン60が装備され、それらの各揺動アーム59や各連係ピン60などによって連係機構61が構成されている。
【0052】
第2回転体46の外縁部には、対応する連係ピン60が係入される7つの溝部62が、その周方向に所定間隔を隔てる状態に形成され、各溝部62の間は、各起風翼42の支軸部44に揺動アーム59を固着するナット63との干渉を回避するために凹入形成されている。
【0053】
つまり、ハブ41の凹入空間に第2回転体46が配備され、その凹入空間におけるハブ41の外周部と第2回転体46の外周部との隙間を有効利用して、回転軸心P1に沿う方向での第2回転体46に対するハブ41の変位によって、各起風翼42をそれらの軸心P2周りに姿勢変更する連係機構61が配備されており、これによって、各起風翼42の軸心P2周りでの姿勢変更を可能にしながらも冷却ファン22としてのコンパクト化を図れるようにしてある。
【0054】
尚、第2入力プーリ36と第2回転体45との間には、第2入力プーリ36の回転軸心P1に沿う方向での位置決めや各駆動軸54の第2入力プーリ36側への抜け止めなどを行うスペーサ64が介装されている。
【0055】
エンジン19の前部には、シフトフォーク65を回転軸心P1に沿う方向に揺動可能に支持する支持部材66がボルト連結され、そのシフトフォーク65の下端部には、第2入力プーリ36の中心部38を外囲する筒状の移動部材67が、一対のボルト68を介して、それらのボルト68を支点にしたシフトフォーク65に対する姿勢変更が可能な状態で支持連結され、その移動部材67に、ハブ41の外周部に形成した第2支持部69がラジアルベアリング70を介して支持されている。
【0056】
つまり、ハブ41は、その中心部が支軸47にカラー48を介して支持され、その外周部が移動部材67にラジアルベアリング70を介して支持される安定状態で、シフトフォーク65の揺動に伴って、回転軸心P1に沿う方向に移動部材67とともに一体変位するように構成されている。
【0057】
又、第2入力プーリ36の中心部38を外囲する移動部材67に、ハブ41の外周部に形成した第2支持部69を、ラジアルベアリング70を介して支持させることで、第2入力プーリ36の重合部となる中心部38に対して、ハブ41の外周部、移動部材67、及びラジアルベアリング70を、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向に重合させたコンパクトな状態で配備できる。
【0058】
各第2支持部69は、ハブ41の外周部における各第1支持部43の間において、第1支持部43よりもハブ41の径方向内側に位置するように形成されており、これによって、それらの第2支持部69で支持される移動部材67及びラジアルベアリング70が、ハブ41の径方向では、各第1支持部43に支持される起風翼42を第2回転体46に連係する連係機構61に対して重合し、又、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向では、ハブ41に対して重合する状態に配備されることになる。
【0059】
その結果、第2支持部69を、ハブ41の径方向で第1支持部43と同じ位置に形成する場合に比較して、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向での長さや径方向の長さを大きくすることなく、ハブ41の各第1支持部43における断面積を大きくすることができて、各第1支持部43での起風翼42の支持強度やハブ41の全体強度を高めることができる。
【0060】
又、連係機構61に対して移動部材67及びラジアルベアリング70をハブ41の径方向で重合させない状態で配備する場合に比較して、ハブ41の径方向での長さを小さくすることができ、これによって、冷却ファン22の径方向での大型化を招くことなく、各起風翼42の起風有効長さを大きくすることができて、各起風翼42による高い起風性能を確保できる。
【0061】
更に、ハブ41に対して移動部材67及びラジアルベアリング70をハブ41の回転軸心P1に沿う方向で重合させない状態で配備する場合に比較して、ハブ41の回転軸心P1に沿う方向での長さを小さくすることができ、もって、大きい空間の確保が難しいエンジン19とラジエータ20との間への配備が行い易くなる。
【0062】
その上、各第2支持部69を、第1支持部43よりもハブ41の径方向内側に位置させた状態で、ハブ41の外周部全域にわたって形成する場合に生じる、第1支持部43に起風翼42を支持させる際や、起風翼42と第2回転体46とを連係機構61で連係する際に、第2支持部69が邪魔になることに起因した組み付け性の低下を回避できる。
【0063】
ハブ41の外周部には、その外周部の各第2支持部69をラジアルベアリング70に支持固定するリング状の押さえ金具71がビス止めされている。
【0064】
図1〜6に示すように、シフトフォーク65の上端部は、プルワイヤ72などを介して、エンジンボンネット17の後壁73に前後軸心P3に揺動可能に支持されたセクターギヤ74に連係され、このセクターギヤ74は、エンジンボンネット17の後壁73に配備した減速機付きで正逆転切り換え可能な電動モータ75の出力ギヤ76に噛合されている。
【0065】
そして、電動モータ75からの動力で、セクターギヤ74が前後軸心P3周りで機体右方向に揺動駆動されると、その揺動でプルワイヤ72が引き操作されるとともにシフトフォーク65が回転軸心P1に沿う方向に揺動操作されて、移動部材67とともにハブ41が、圧縮バネ53の付勢に抗して、第2回転体46に対して回転軸心P1に沿って機体右方向に変位するようになり、この変位によって、各起風翼42の姿勢が順風操作位置から逆風操作位置に一斉に変更されるようになる。又、図3に示すように、セクターギヤ74の前後軸心P3周りでの揺動角度を、電動モータ75による各起風翼42の操作位置として検出する操作位置検出手段としての回転式のポテンショメータからなる角度センサS3が設けられている。
【0066】
又、電動モータ75からの動力で、セクターギヤ74が前後軸心P3周りで機体左方向に揺動駆動されると、その揺動でプルワイヤ72による引き操作が解除されるとともに、ハブ41が圧縮バネ53の付勢で移動部材67とともに第2回転体46に対して回転軸心P1に沿って機体左方向に変位するようになり、この変位によって、各起風翼42の姿勢が逆風操作位置から順風操作位置に一斉に変更されるようになる。
【0067】
つまり、圧縮バネ53、シフトフォーク65、移動部材67、プルワイヤ72、セクターギヤ74、及び電動モータ75、などによって、その電動モータ75の作動でハブ41を第2回転体46に対して回転軸心P1に沿う方向に変位させる切換操作手段としての操作機構77が構成され、その操作機構77による第2回転体46に対するハブ41の変位量が連係機構61によってハブ41に対する各起風翼42の操作位置を一斉に変更できるようになっており、その操作位置が角度センサS3によって検出される構成となっている。
【0068】
そして、各起風翼42を順風操作位置に切り換えると、それらの回転軸心P1周りでの回転に伴って外気をエンジンボンネット17の各吸気口27からエンジンボンネット17内に吸引する順風モードFが現出され、各起風翼42を逆風操作位置に切り換えると、それらの回転軸心P1周りでの回転に伴ってエンジンボンネット17内の熱気をエンジンボンネット17における右側壁23の各吸気口27から機外に排出する逆風モードRが現出される。
【0069】
従って、前記冷却ファン22、操作機構77、角度センサS3等により、前記通風手段Aが構成されており、この通風手段Aは、非作業状態では、各起風翼42を順風操作位置に維持して順風モードFで通風させることで、エンジンボンネット17の各吸気口27から取り込んだ外気をラジエータ20やエンジン19などに供給してそれらを冷却する。また、作業状態では、各起風翼42の姿勢を順風操作位置から逆風操作位置に切り換えるとともに、予め設定された逆風用設定時間(例えば5秒間)が経過するまでの間、その逆風操作位置を維持して逆風モードRで通風させ、エンジンボンネット17の各吸気口27から排出する熱気で右側壁23の除塵網26に付着した塵埃などを機外に吹き飛ばして除塵網26から除去する。その逆風用設定時間が経過すると、各起風翼42の姿勢を逆風操作位置から順風操作位置に切り換えるとともに、順風用設定時間が経過するまでの間、各起風翼42の姿勢を順風操作位置に維持して順風モードFで通風させ、以後、計時に基づいて逆風モードRと順風モードFとを切り換え現出する。
【0070】
図12に、通風手段Aを構成する操作機構77における操作用アクチュエータである電動モータ75を制御するための制御ブロック図が示されている。電動モータ75は、通風制御手段としてのマイクロコンピュータ利用の制御装置78によって作動制御されるものであり、制御装置78には、エンジン19の回転速度Nを検出する回転速度センサS1、刈取搬送部3及び脱穀装置4への動力伝達を断続する図示されない作業クラッチの入り切りを検出する作業スイッチS2、前記角度センサS3がそれぞれ接続されており、これらのセンサ及びスイッチ類からの情報に基づいて電動モータ75がプログラム制御されるようになっている。又、図12に示すように、オン位置に操作すると、機体に搭載される各電気機器に電源供給する状態となり、オフ位置に操作すると、各電気機器に対する電源供給を停止し、始動位置に操作すると図示しないエンジンスタータにてエンジン19を始動させるメインスイッチS4が設けられている。
【0071】
前記制御装置78は、メインスイッチS4がオン操作されると、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段Aの作動を制御する順風モード復帰処理を実行するように構成されている。制御装置78は、エンジン19が停止すると前記順風モード復帰処理を実行するように構成されている。又、制御装置78は、前記順風モードから前記逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されると、前記順風モード復帰処理を実行するように構成されている。さらに、制御装置78は、前記角度センサS3の検出情報及び校正情報に基づいて、通風手段Aにおける操作機構77を順風モードのときには順風用操作位置に及び逆風モードのときには逆風用操作位置に操作するように構成され、且つ、前記校正情報がないときには、角度センサS3の検出情報に基づいて、操作機構77を順風用仮操作位置に操作して順風モードを維持するように構成されている。
【0072】
以下、制御装置78による具体的な制御動作について説明する。
つまり、制御装置78の制御作動は、4つの作動モードM1〜M4からなり、制御装置78が行う各作動モードによる制御作動に基づいて、通風手段Aが順風モードFと逆風モードRとに切り換わる。
具体的には、作動モードM1は、電動モータ75を動作させずに起風翼42の姿勢を順風操作位置に維持して、冷却ファン22を順風モードFに保持する順風保持作動モードM1であり、作動モードM2は、電動モータ75を動作させることで各起風翼42を順風操作位置から逆風操作位置に切換えて、冷却ファン22を順風モードFから逆風モードRへ移行させる逆風出力作動モードM2であり、作動モードM3は、電動モータ75を動作させずに起風翼42の姿勢を逆風操作位置に維持して、冷却ファン22を逆風モードRに保持する逆風保持作動モードM3であり、作動モードM4は、電動モータ75を動作させることで各起風翼42を逆風操作位置から順風操作位置に切換えて、冷却ファン22を逆風モードRから順風モードFへ移行させる順風出力作動モードM4である。そして、この順風出力作動モードM4における処理動作が前記順風モード復帰処理に対応するものである。
【0073】
図14、図15に示すように、メインスイッチS4がオン操作されて制御装置78が起動されると、制御装置78は、イニシャライズ処理として、順風保持作動モードM1での処理毎にディクリメントされる順風保持カウンタCfの値をゼロクリアし、作動モードを順風出力作動モードM3にセットし、順風出力モードM4での処理毎にディクリメントされる順風出力監視カウンタCwfの値を、逆風操作位置から順風操作位置への切換えに要する時間を考慮した切換え動作監視用時間として例えば3秒に設定する。つまり、メインスイッチS4がオン操作されるに伴って作動モードを順風出力作動モードM3にセットするので、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段Aの作動を制御する順風モード復帰処理を実行することになる。
【0074】
制御装置78は、上述のイニシャライズ処理を経た後、メインルーチンに入り、メインルーチンでの処理を動作周期Tc毎に実行する。なお、制御装置78の動作周期Tcは、図示しない外部クロックが発生するクロック信号により任意に設定できるが、制御装置78の制御対象を考慮すると、数msec程度以下の動作周期であるのが好ましい。
【0075】
前述のように制御装置78の作動モードはイニシャライズ処理により順風出力作動モードM3にセットされているので、制御装置78の起動後最初に行われるメインルーチンの開始時の制御装置78の作動モードは、順風出力作動モードM3であるが、その後の処理が実行されることにより、図13に示す経路の何れかの経路により作動モードは変化することになる。図13によると、順風保持作動モードM1から逆風保持作動モードM3に変化する場合は、逆風出力作動モードM2を経て変化し、逆に、逆風保持作動モードM3から順風保持作動モードM1に変化する場合は、順風出力作動モードM4を経て変化することがわかる。図中実線で示す作動モードの変化は正常動作時に発生する作動モードの変化を示しており、破線で示す作動モードの変化は後述する異常動作時に発生する作動モードの変化を示している。
【0076】
図14、図15に示すメインルーチンでは、まず、角度センサS3の出力信号電圧が正常電圧範囲内であるかどうかに基づいて、角度センサS3の出力が正常か異常か判別し(ステップ#1)、セクターギヤ74の前後軸心P3周りでの機械的な揺動限界における角度センサS3の出力値を制御装置78に学習させる角度センサS3の初期調整が完了して、不揮発性メモリなどの図示しない記憶装置に校正情報が格納されているかどうかを判別する(ステップ#2)。
【0077】
この校正情報について説明すると、前記電動モータ75を含む操作機構77及び角度センサS3がコンバインに組み付けられたときに、セクターギヤ74を前後軸心P3周りでの機械的な揺動限界にまで操作したときの角度センサS3の検出値は、例えば0〜5Vの範囲の電圧値等で表されるが、組み付け誤差によって個体差が発生するので、組み付け後において、セクターギヤ74を前後軸心P3周りでの機械的な揺動限界にまで操作したときの実際の検出値を計測して不揮発性メモリ等の記憶装置に記憶させておき、電動モータ75を実際に制御するときには、この校正情報を用いて制御することになる。
【0078】
尚、この校正情報としては、セクターギヤ74を前後軸心P3周りでの機械的な揺動限界にまで操作したときの角度センサS3の検出値を電圧値で表したものに限らず、例えば、セクターギヤ74を前後軸心P3周りでの機械的な揺動限界にまで操作したときの基準値を一定の値(例えば、最小値が0.5Vと最大値が0.45V)として設定しておき、組み付け後の検出値と前記基準値との差の情報を校正情報として記憶しておくことも可能であり、要するに校正情報としては、前記揺動限界にまで操作したときの実際の角度センサS3の個体差の情報を得るものであればよく、各種の形態で求めることができる。
【0079】
又、記憶装置に格納された情報に基づき、順風出力作動モードM4及び逆風出力作動モードM2での制御作動を実行している際に発生した過去の作動異常(この作動異常については後述する)の有無を判別する(ステップ#3)。
【0080】
次に、回転速度センサS1の値に基づき、エンジン19の回転速度Nが設定回転速度n以上であるか否かによってエンジン19が回転状態であるかどうかを判別し(ステップ#4)、作業スイッチS2の状態に基づき、作業クラッチが入り状態であるかどうかを判別する(ステップ#5)。
【0081】
ステップ#1〜#5までの判別処理における何れかの条件に該当しない場合は、コンバインが非作業状態であると制御装置78が検出したことになり、作業状態であると検出した時には処理する後述のステップ#6〜#8を処理せずに、ステップ#9へ移行する。
【0082】
なお、ステップ#4の判別処理における条件に該当しない場合、つまり、エンジン19が回転状態でないと判別された場合は、制御装置78は、ステップ#14において、前回の処理で行われたステップ#4での判別処理にて記憶装置に格納された前回処理での判別結果情報を参照して、この前回判別結果情報に基づいてエンジン19が回転状態から非回転状態に変化したと判別すると、作動モードを順風出力作動モードM4にセットして順風出力監視カウンタCwfの値を順風監視用設定時間(例えば3秒)にセットしてから(ステップ#15)、ステップ#9へ移行する。これによりエンジン19が、例えば、脱穀装置における穀稈搬送経路中で排ワラ詰まりが発生したり、エンジン水温が設定値以上に上昇していることが検出される等の異常状態が検出されてエンジン19が強制停止された場合や、作業者によりメインスイッチS4のオフ操作によりエンジン19の停止操作が行われた場合に、そのときの通風手段Aの作動状態に拘わらず、通風手段Aを順風モードFにすることができる。従って、エンジン19が停止すると前記順風モード復帰処理を実行することになる。
【0083】
ステップ#1〜#5までの判別処理におけるすべての条件に該当する場合は、コンバインが作業状態であると制御装置78が検出したことになり、ステップ#6、ステップ#7、#8を処理する。
【0084】
ステップ#6では、順風保持カウンタCfの値がゼロであるかどうかを判別し、ゼロであればステップ#7へ進み、ゼロでなければステップ#9へ移行する。こうすることで、作動モードが順風保持作動モードM1であって、後述する順風保持処理M1が実行される毎に順風保持カウンタCfの値がディクリメントされている間は、作業クラッチがオンになっても、作動モードを変更せずにステップ#9へ移行することになる。
【0085】
ステップ#7では、処理時点での作動モードが順風保持作動モードM1であればステップ#8へ進み、処理時点での作動モードが順風保持作動モードM1でなければステップ#9へ移行する。こうすることで、順風保持カウンタCfの値がすでにゼロであっても作動モードが順風保持作動モードM1以外である場合には、作動モードを変更せずにステップ#9へ移行することになる。
【0086】
ステップ#8では、作動モードを逆風出力作動モードM2にセットし、逆風出力作動モードM2での処理毎にディクリメントされる逆風出力監視カウンタCwrの値を、順風操作位置から逆風操作位置への切換えに要する時間を考慮した切換え動作監視用時間(例えば3秒)にセットしてから、ステップ#9へ進む。このように、ステップ#6及びステップ#7の二つの判別処理における条件を満たす場合にステップ#8を実行することで、逆風出力作動モードM2への変更(図13のモード変化MC12)は、順風保持作動モードM1による制御作動を、順風保持カウンタCfの値がゼロまでディクリメントされるまで実行した後の作業状態への切換えの検出によってのみ行われることになる。つまり、制御装置78が作業状態への切換えを検出しても、通風運転処理による逆風モードでの通風が前回行われてから逆風禁止用設定時間が経過するまでは新たな逆風モードの実行が牽制されることになる。
【0087】
非作業状態から作業状態への切換えを検出した場合であっても、作業状態から非作業状態への切換えを検出した場合であっても、ステップ#9以降の処理は同じである。つまり、ステップ#9において、記憶装置に格納された情報に基づき、逆風出力作動モードM2での制御作動を実行している際に発生した過去の作動異常の有無を判別し、異常有りと判別した場合は、ステップ#12へ移行する。
【0088】
ステップ#9において、異常なしと判別した場合には、ステップ#10へ移行し、作動モードが逆風出力作動モードM2であれば逆風出力処理Z2を実行し、作動モードが逆風出力作動モードM2でなければ、ステップ#11へ移行する。ステップ#11において、作動モードが判別され、作動モードが逆風保持作動モードM3であれば逆風保持処理Z3を実行し、作動モードが逆風保持作動モードM3でなければ、ステップ#12へ移行する。
【0089】
ステップ#12では、記憶装置に格納された情報に基づき、順風出力作動モードM4での制御作動を実行している際に発生した過去の作動異常の有無を判別し、異常無しと判別した場合は、ステップ#13へ進み、異常有りと判別した場合は、メインルーチンの先頭へ移行する。
【0090】
ステップ#13では、作動モードが判別され、作動モードが順風出力作動モードM4であれば順風出力処理Z4を実行し、作動モードが順風出力作動モードM4でなければ、この場合は必ず作動モードは順風保持作動モードM1であり、順風保持処理Z1を実行する。
【0091】
このように、ステップ#9以降の処理により、作動モード毎に対応する処理が振り分けられることなる。これら4つの作動モードM1〜M4で制御装置78が実行するZ1〜Z4の各処理について図16〜図19に基づいて説明する。
【0092】
図16に示すように、順風保持処理Z1では、順風保持カウンタCfの値が正の値かどうかを判別し(ステップ#1)、正の値であれば、順風保持カウンタCfの値をディクリメントし(ステップ#2)、正の値でなければ、つまり、ゼロまでディクリメントされていれば、なんら処理を行わず、順風保持カウンタCfの値をゼロで維持するとともに、作動モードを順風保持作動モードM1のまま維持する(図13のMC11)。
【0093】
図17に示すように、逆風出力処理Z2では、角度センサS3の出力値に基づき、前記操作機構77の操作位置、つまり、電動モータ75による冷却ファン22の各起風翼42の現在操作位置が目標位置に到達したかどうか、言い換えると、各起風翼42の順風操作位置から逆風操作位置への姿勢切換えが完了して通風手段Aが順風モードFから逆風モードRに切換えられたかどうか判別し(ステップ#1)、目標位置へ到達していなければ、ステップ#2に進み、目標位置へ到達していれば、ステップ#5へ進む。ステップ#2において、逆風出力監視カウンタCwrの値が正であればステップ#3を経てステップ#4へ進み、正でなければステップ#6を経てステップ#7へ進む。
【0094】
ステップ#5では、各起風翼42の順風操作位置から逆風操作位置への姿勢切換えが正常に完了したと考えられるので、作動モードを現在の逆風出力作動モードM2から逆風保持作動モードM3へ変更(図13のモード変更MC23)すべく、作動モードを逆風保持作動モードM3にセットし、逆風保持カウンタCrの値を所定の設定時間(例えば5秒)にセットする。
【0095】
ステップ#6では、順風操作位置から逆風操作位置への切換えに要する時間を考慮した切換え動作監視用時間として逆風出力監視カウンタCwrの初期値として図14のステップ#8においてセットされた設定時間を越えているにもかかわらず、前記目標位置へ到達していないときは、逆風出力作動モードM2での制御作動中に何らかの作動異常が発生したと考えられるので、記憶装置に逆風出力異常記録を格納し、作動モードを現在の逆風出力作動モードM2から順風出力作動モードM4へ変更(図13のモード変更MC24)すべく、ステップ#7で作動モードを順風出力作動モードM4にセットして、順風出力監視カウンタCwfの値を逆風操作位置から順風操作位置への切換えに要する時間を考慮した切換え動作監視用時間(例えば3秒)にセットする。従って、前記順風モードから前記逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されたときには、順風モード復帰処理を実行することになる。
【0096】
ステップ#3では、各起風翼42の順風操作位置から逆風操作位置への姿勢切換えが未だ完了していないと考えられるので、作動モードは現在の作動モードである逆風出力作動モードM2を維持(図13のMC22)し、電動モータ75を逆転駆動操作し、ステップ#4で逆風出力監視カウンタCwrの値をディクリメントする。
【0097】
図18に示すように、逆風保持処理Z3では、逆風保持カウンタCrの値が正の値かどうかを判別し(ステップ#1)、正の値であれば、逆風保持カウンタCrの値をディクリメントし(ステップ#2)、作動モードは現在の作動モードである逆風保持作動モードM3を維持する(図13のMC33)。逆風保持カウンタCrの値が正の値でなければ、つまり、ゼロまでディクリメントされていれば、作動モードを現在の逆風保持作動モードM3から順風出力作動モードM4へ変更(図13のモード変更MC34)すべく、ステップ#3で作動モードを順風出力作動モードM4にセットし、順風出力作動モードM4での処理毎にディクリメントされる順風出力監視カウンタCwfの値を、順風操作位置から逆風操作位置への切り換えに要する時間を考慮した切り換え動作監視用時間(例えば3秒)にセットする。このようにすることで、逆風保持カウンタCrがゼロになった場合、つまり、本発明の通風制御手段が逆風モードを逆風用設定時間の間実行した場合には、作動モードが順風出力作動モードM4に変更されるので、通風手段Aが逆風操作位置から順風操作位置へ切換えられる。ステップ#3の処理は、図17に示す順風出力処理Z2におけるステップ#7と同じ処理である。
【0098】
図19に示すように、順風出力処理Z4では、ステップ#1において、角度センサS3の初期調整が完了して上述したような校正情報が記憶装置に記憶されているか否かを判別し、角度センサS3の初期調整が完了している場合と、していない場合とで、各起風翼42の現在操作位置が目標位置に到達したかどうかを判別する際の目標位置としての値を異なった値となるように分岐する処理を行う。
【0099】
角度センサS3の初期調整が完了している場合には、ステップ#2へ進み、角度センサS3の出力値に基づき、電動モータ75による冷却ファン22の各起風翼42の現在操作位置が正規の目標位置に到達したかどうか、つまり、冷却ファン22の各起風翼42の順風操作位置への姿勢切換えが完了して冷却ファン22が順風モードFに切換えられたかどうか判別し、目標位置へ到達していなければ、ステップ#3に進み、目標位置へ到達していれば、ステップ#8へ進む。角度センサS3の初期調整が完了していない場合には、ステップ#6へ進み、角度センサS3の出力値に基づき、電動モータ75による冷却ファン22の各起風翼42の現在操作位置が順風用仮操作位置(以下仮目標位置という)に到達したかどうか、つまり、冷却ファン22の各起風翼42の順風操作位置に近い姿勢への姿勢切換えが完了して冷却ファン22が一応の順風モードFに切換えられたかどうか判別し、仮目標位置へ到達していなければ、ステップ#3に進み、目標位置へ到達していればステップ#8へ進む。
【0100】
角度センサS3の初期調整が完了している場合及び角度センサS3の初期調整が完了していない場合の何れの場合でも、ステップ#3において、順風出力監視カウンタCwfの値が正であればステップ#4を経てステップ#5へ進み、正でなければステップ#7を経てステップ#8へ進む。
【0101】
ステップ#7では、逆風操作位置から順風操作位置への切換えに要する時間を考慮した切換え動作監視用時間として逆風出力監視カウンタCwfの初期値として図14のメインルーチンのイニシャライズ処理又は図18のステップ#3においてセットされた設定時間を越えており、順風出力作動モードM4での制御作動中に何らかの作動異常が発生したと考えれるので、記憶装置に順風出力異常記録を格納し、ステップ#8へ進む。
【0102】
ステップ#8では、ステップ#7から進んできた場合には順風出力作動モードM4での制御作動中に何らかの作動異常が発生したと考えれるので、作動モードを現在の順風出力作動モードM4から順風保持作動モードM1へ変更(図13のモード変更MC41b)すべく作動モードを順風保持作動モードM1にセットし、また、ステップ#6から移行してきた場合には各起風翼42の順風操作位置或いは順風操作位置に近い姿勢への姿勢切換えが正常に完了したと考えられるので、作動モードを現在の順風出力作動モードM4から順風保持作動モードM1へ変更(図13のモード変更MC41a)すべく作動モードを順風保持作動モードM1にセットして順風保持カウンタCfの値を所定の設定時間(例えば3分)にセットする。従って、このステップ#8を通過した後は、通風手段Aは順風モードが維持されることになるのであり、制御装置78は、角度センサS3の初期調整が完了しておらず校正情報がないときには、角度センサS3の検出情報に基づいて、操作機構77を順風用仮操作位置に操作して順風モードFを維持するように構成されている。
【0103】
説明を加えると、前記校正情報が記憶されておらず、角度センサS3の初期調整が完了していない場合であっても、この角度センサS3にて冷却ファン22の各起風翼42の現在操作位置の大まかな位置は検出可能であるから、この角度センサS3の検出結果に基づいて冷却ファン22の各起風翼42が順風操作位置にあると判別する位置であれば、ほぼ順風操作位置又はそれに近い位置にあると推定できるから、前記仮目標位置にて維持させるようにしているのである。
【0104】
ステップ#4では、各起風翼42の順風操作位置或いは順風操作位置に近い姿勢への姿勢切換えが未だ完了していないと考えられるので、作動モードは現在の作動モードである順風出力作動モードM4を維持し(図13のMC44)、電動モータ75を正転転駆動操作し、ステップ#5で順風出力監視カウンタCwfの値をディクリメントする。
【0105】
上述したような角度センサS3の初期調整、すなわち、校正情報の記憶処理は、通常は製造時に工場にて行われるものであるので、起動直後の制御装置78が図14のステップ#2及び順風出力処理Z4でのステップ#1での判別処理では殆どの場合、調整完了済みと判別するが、例えば、制御装置78が故障により記憶装置とともに新たなものに交換された場合などには、角度センサS3の初期調整が完了していない状態でコンバインが使用される事態が起こり得る。角度センサS3の初期調整が完了しておらず、校正情報が記憶されていないまま制御装置78が起動されると、場合によってはその後の冷却ファン22の各起風翼42の順風操作位置と逆風操作位置との間での姿勢切換えが正しく行えず、冷却ファン22の順風モードF及び逆風モードRが正しく現出しないことがある。
【0106】
そこで、角度センサS3の初期調整が完了していない場合には、制御装置78は、冷却ファン22の各起風翼42を逆風操作位置へは切換えず、順風操作位置に近い姿勢で確実に維持するような制御を行う。角度センサS3の初期調整が完了していない以上、角度センサS3の出力に基づいて冷却ファン22の各起風翼42の姿勢を正しく把握することはできないので、既に説明した順風出力処理Z4のステップ#6において、冷却ファン22の各起風翼42の目標位置を未調整用時用の目標値に設定することにより、未調整時において想定される検出誤差を考慮した本来の順風操作位置に近い無難な姿勢で冷却ファン22の各起風翼42が保持されるようにしている。
【0107】
図14のステップ#2で、校正情報が記憶されておらず角度センサS3の初期調整が完了してないと判別されると、既に説明したように、ステップ#9へ移行する。制御装置78の起動時にイニシャライズ処理にて作動モードは順風出力作動モードM3にセットされるので、起動後最初にステップ#9へ移行したときの作動モードは、イニシャライズ処理にてセットされた順風出力作動モードM4である。既に説明した順風出力作動モードM4での制御作動が完了すると、作動モードが順風保持作動モードM1に変化する。順風保持作動モードM1での制御作動中は、角度センサS3の初期調整が完了してない場合には、図14、図15のメインルーチンでは先頭からステップ#9に移行してしまうので、メインルーチンのステップ#8或いはステップ#5に示す作動モードの変更を伴う処理は実行されない上、順風保持処理Z1でも作動モードの変更を伴う処理は実行されないので、制御装置78は、その後制御作動を継続しても、作動モードを順風保持作動モードM1で維持することになる。つまり、角度センサS3の初期調整が完了してない場合には、制御装置78は、起動直後の順風出力作動モードM4での制御作動を経て、その後は順風保持作動モードM1だけで作動することになる。このようすることで、角度センサS3の初期調整が完了していない場合には、冷却ファン22はその各起風翼42の姿勢が無難な姿勢による順風モードFでの通風を行うことになる。
【0108】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0109】
(1)上記実施形態では、前記通風制御手段が、メインスイッチがオン操作されると前記順風モード復帰処理を実行するように構成され、エンジンが停止すると前記順風モード復帰処理を実行するように構成され、前記順風モードから前記逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されると、前記順風モード復帰処理を実行するように構成され、更に、前記操作位置検出手段についての校正情報がないときに、操作位置検出手段の検出情報に基づいて、切換操作手段を順風用仮操作位置に操作して、順風モードを維持するように構成されているものを例示したが、このような構成に代えて、次のように構成してもよい。
【0110】
すなわち、メインスイッチがオン操作されること、エンジンが停止すること、及び、前記順風モードから前記逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されることという3つの条件のうちのいずれか1つの条件だけを判別して、前記順風モード復帰処理を実行するか否かを判別する構成としてもよい。そのとき、他の2つの条件は判別しないが、前記校正情報がないときに、操作位置検出手段の検出情報に基づいて切換操作手段を順風用仮操作位置に操作して順風モードを維持する構成については、これを採用してもよく、又、採用しないようにしてもよい。
【0111】
又、メインスイッチがオン操作されること、エンジンが停止すること、及び、前記順風モードから前記逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されることという3つの条件のうちのいずれか2つの条件を判別して、前記順風モード復帰処理を実行するか否かを判別する構成としてもよい。そのとき、他の1つの条件は判別しないが、前記校正情報がないときに、操作位置検出手段の検出情報に基づいて切換操作手段を順風用仮操作位置に操作して順風モードを維持する構成については、これを採用してもよく、又、採用しないようにしてもよい。
【0112】
更には、前記3つの条件のいずれの条件も判別しないで、前記校正情報がないときに、操作位置検出手段の検出情報に基づいて切換操作手段を順風用仮操作位置に操作して順風モードを維持するように構成するものでもよい。
【0113】
(2)上記実施形態では、順風モードと逆風モードとに通風方向を変更する通風手段Aとして、一定方向に回転駆動されるハブに対して羽根の向きを反転させる構造の冷却ファンを用いたが、このような構成に代えて羽根の姿勢が固定された冷却ファンの駆動回転方向を正逆に切り換えて順風モードと逆風モードを現出するように構成したものを利用することもできる。
【0114】
(3)上記実施形態では、順風モードと逆風モードとに通風方向を変更する通風手段Aとして、1つの冷却ファンを正流状態と逆流状態とに切り換える構成としたが、順風モードをもたらすエンジン冷却専用の冷却ファンと、逆風モードをもたらす除塵専用の冷却ファンとを備え、これらを使い分けるようにすることもできる。
【0115】
(4)上記実施形態では、エンジンに水冷エンジンを利用している場合を例示したが、空冷エンジンを搭載した小型の収穫機に適用することもでき、この場合の除塵された冷却風は、エンジン冷却部としてエンジンのシリンダ周辺に直接に供給されることになる。
【0116】
(5)上記実施形態では、エンジンの動力で冷却ファンを駆動する構成としたが、電動モータで駆動される冷却ファンでラジエータを冷却する形態で実施することもでき、この場合は、順風モードと逆風モードとに通風方向を変更する通風手段Aとして、電動モータを正逆転制御して冷却ファンの回転方向を切換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】自脱形コンバインの全体側面図
【図2】自脱形コンバインの全体平面図
【図3】原動部の一部縦断背面図
【図4】原動部の縦断側面図
【図5】冷却ファンの構成を示す要部の縦断背面図
【図6】順風生起状態F及び逆風生起状態Rを示す要部の一部縦断背面図
【図7】起風翼の順風生起姿勢及び逆風生起姿勢を示す要部の平面図
【図8】冷却ファンの構成を示す要部の縦断側面図
【図9】操作機構の構成を示す要部の縦断側面図
【図10】冷却ファンの中心部の構成を示す拡大縦断側面図
【図11】支持部材とシフトフォークとの間にハブ付勢用の圧縮バネを介装した構成を示す要部の縦断側面図
【図12】制御ブロック図
【図13】制御装置の動作周期毎の作動モードの変化を示す図
【図14】制御装置が実行する制御プログラムのフローチャート
【図15】制御装置が実行する制御プログラムのフローチャート
【図16】制御装置が実行する順風保持処理のフローチャート
【図17】制御装置が実行する逆風出力処理のフローチャート
【図18】制御装置が実行する逆風保持処理のフローチャート
【図19】制御装置が実行する順風出力処理のフローチャート
【符号の説明】
【0118】
19 エンジン
20 エンジン冷却部
22 冷却ファン
26 除塵網
41 ハブ
42 羽根
77 切換操作手段
78 通風制御手段
A 通風手段
F 順風モード
R 逆風モード
S3 操作位置検出手段
S4 メインスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、
前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、
前記通風制御手段が、メインスイッチがオン操作されると、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段の作動を制御する順風モード復帰処理を実行するように構成されている収穫機のエンジン冷却装置。
【請求項2】
除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、
前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、
前記通風制御手段が、エンジンが停止すると、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段の作動を制御する順風モード復帰処理を実行するように構成されている収穫機のエンジン冷却装置。
【請求項3】
除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、
前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、
前記通風制御手段が、前記順風モードから前記逆風モードへの切換動作を実行しているときに動作異常が検出されると、前記順風モードに切り換えるように前記通風手段の作動を制御する順風モード復帰処理を実行するように構成されている収穫機のエンジン冷却装置。
【請求項4】
除塵網を通して外気を吸引してエンジン冷却部に供給するように通風させる順風モードと、その順風モードとは通風方向を逆向きにして前記除塵網に空気を供給するように通風させる逆風モードとに切換え自在に構成された通風手段と、
前記順風モードを順風用設定時間の間実行した後、前記逆風モードを逆風用設定時間の間実行することを繰り返す通風運転処理を行うように前記通風手段の作動を制御する通風制御手段とが設けられた収穫機のエンジン冷却装置であって、
前記通風手段が、前記順風モードと前記逆風モードとの切り換え操作を行う切換操作手段と、その切換操作手段の操作位置を検出する操作位置検出手段とを備えて構成され、
前記通風制御手段が、
前記操作位置検出手段の検出情報及び校正情報に基づいて、前記切換操作手段を前記順風モードのときには順風用操作位置に及び前記逆風モードのときには逆風用操作位置に操作するように構成され、且つ、
前記校正情報がないときには、前記操作位置検出手段の検出情報に基づいて、前記切換操作手段を順風用仮操作位置に操作して、前記順風モードを維持するように構成されている収穫機のエンジン冷却装置。
【請求項5】
前記通風制御手段が、作業状態を検出すると、前記通風運転処理を行い、且つ、非作業状態を検出すると、前記順風モードを維持する順風運転処理を行うように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の収穫機のエンジン冷却装置。
【請求項6】
前記通風制御手段が、前記作業状態として、エンジン回転速度が設定回転速度以上であり、且つ、作業クラッチが入り状態であることを検出するように構成されている請求項5に記載の収穫機のエンジン冷却装置。
【請求項7】
前記通風手段が、一定方向に回転駆動されるハブに対して通風羽根の向きを反転させることにより、前記順風モードと前記逆風モードとに切り換える冷却ファンを備えて構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の収穫機のエンジン冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−123637(P2006−123637A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312427(P2004−312427)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】