説明

口腔内測定方法および口腔内測定装置

【課題】口腔内を正確に形状計測することが可能な口腔内測定方法および口腔内測定装置を提供する。
【解決手段】口腔内測定方法は、投光工程と、撮像工程と、露光時間制御工程と、画像合成工程と、三次元演算工程とを備えている。投光工程は、コード化された縞パターンを投影する。撮像工程は、縞パターンが投影された領域を二次元静止画像として取り込む。露光時間制御工程は、撮像工程において二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御する。画像合成工程は、少なくとも2つの異なる露光時間によって取り込んだ二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する。三次元演算工程は、合成二次元静止画像に基づいて口腔内の三次元座標を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インレー、クラウン、ブリッジ等の歯科用補綴物作成のために口腔内を撮像する方法と装置に関するものであり、更に詳細には、患者の口腔内を直接測定する口腔内測定方法と口腔内測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インレー、クラウン、ブリッジ等の歯科用補綴物の作製は、ロストワックス鋳造法により金属材料やセラミックス材料を鋳造して作製する方法が一般的に採用されてきた。しかし、近年の歯科用補綴物の作成においては、セレックシステム(独、シロナ社のシステム)に代表されるような光学三次元カメラを用いた歯および歯肉の口腔内測定と、CAD/CAMシステムを用いた歯科用補綴物の設計・作製システムが注目されてきている。
【0003】
光学三次元カメラには、位相シフト法や空間コード化法に代表される非接触三次元計測手法が用いられている。光学三次元カメラは、支台歯や窩洞形成した歯牙や、場合によっては、隣在歯や対合歯の形状を口腔内で直接読み取る(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この光学三次元カメラおよびCAD/CAMシステムは、前述のような鋳造による方法等と比較して効率良く歯科用補綴物を作製でき、設計が適切に行われていれば完成した歯科用補綴物の精度も高く、口腔内への適合精度に優れた歯科用補綴物を作製できる特長がある。しかし、光学三次元カメラおよびCAD/CAMシステムでは、最終的な歯科用補綴物の形状を決定する(形状を加工用の情報にする)計算はコンピュータで自動計算が可能であるが、口腔内形状は患者一人一人によって異なり、虫歯の状態や、歯を構成するエナメル質と象牙質さらには歯肉の組成の違いにより、各組織の表面反射率が異なり、鮮鋭な画像を取り込むことができないため正確な歯および歯肉の形状計測が困難である。このため、適合精度に優れた理想的な歯科用補綴物を作製することが困難となるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、口腔内の反射率の異なりを均一化するため、前記セレックシステム(独、シロナ社のシステム)においては、酸化チタンなどのパウダーを口腔内に噴霧している。
【特許文献1】特開2000‐74635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、パウダーの噴霧は、患者にとってはパウダーが金属粉末のため苦味や不快感を伴う行為であり、医師にとっては均一な噴霧が必要なため時間と熟練を要する行為となっていた。
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、パウダーを噴霧することなく、口腔内を正確に形状計測することが可能な口腔内測定方法と口腔内測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る口腔内測定方法は、口腔内を測定対象とする口腔内測定方法であって、投光工程と、撮像工程と、露光時間制御工程と、画像合成工程と、三次元演算工程とを備えている。投光工程は、コード化された縞パターンを投影する。撮像工程は、縞パターンが投影された領域を二次元静止画像として取り込む。露光時間制御工程は、撮像工程において二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御する。画像合成工程は、少なくとも2つの異なる露光時間によって取り込んだ二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する。三次元演算工程は、合成二次元静止画像に基づいて口腔内の三次元座標を演算する。
【0009】
ここでは、露光時間制御工程で、撮像工程において二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御し、画像合成工程において、少なくとも2つの異なる露光時間によって取り込まれた二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する。
【0010】
従来より、光学三次元カメラおよびCAD/CAMシステムによって、口腔内形状を計測して、歯科用補綴物の形状を決定することが行われている。ところが、口腔内形状は、虫歯の状態や歯肉の組成の違いにより、各組織の表面反射率が異なるため、コントラストの小さな画像しか取り込むことができない。このため、正確な歯および歯肉の形状計測が困難である。
【0011】
そこで、本発明の口腔内測定方法においては、撮像工程において二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御する露光時間制御工程と、少なくとも2つの異なる露光時間によって取り込んだ二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する画像合成工程とを備えている。
【0012】
これにより、表面反射率の異なる領域を抽出し、その領域ごとに最適な露光時間で二次元静止画像を取り込むことができるので、対象となる領域についてコントラストの大きな二次元静止画像をそれぞれ取得することが可能となる。また、最適露光時間で取り込んだそれぞれの二次元静止画像を合成することによって、全ての領域についてコントラストが大きな合成二次元静止画像を取得することが可能となる。
【0013】
この結果、コントラストよく撮像された合成二次元静止画像を使用して計測することができるので、パウダーを噴霧することなく、口腔内を正確に形状計測することが可能となる。
【0014】
第2の発明に係る口腔内測定方法は、第1の発明に係る口腔内測定方法であって、露光時間制御工程は、口腔内における歯および歯肉のそれぞれの領域が撮像工程によって最適に取り込まれるように露光時間を制御する。
【0015】
ここでは、口腔内における歯の領域と歯肉の領域とをそれぞれ抽出し、それぞれの領域が撮像工程によって最適に取り込まれるように露光時間を制御する。
これにより、歯の領域および歯肉の領域のそれぞれについて最適な露光時間で二次元静止画像を取り込むことができるので、歯の領域についてコントラストの大きな二次元静止画像と、歯肉の領域についてコントラストの大きな二次元静止画像との2枚を取得することが可能となる。そして、上記2枚の二次元静止画像を合成することによって、歯の領域と歯肉の領域との両方の領域についてコントラストが大きな合成二次元静止画像を取得することが可能となる。
【0016】
第3の発明に係る口腔内測定方法は、第1または第2の発明に係る口腔内測定方法であって、露光時間制御工程は、データ分離工程と、露光時間算出工程と、露光時間調整工程と、を有している。データ分離工程は、撮像工程において得られる映像信号から信号データを分離する。露光時間算出工程は、信号データに基づいて二次元静止画像における飽和限界の露光時間を算出する。露光時間調整工程は、露光時間算出工程において算出された露光時間に基づいて、露光時間を調整する。
【0017】
ここでは、データ分離工程で、撮像工程において得られる映像信号から信号データを分離し、露光時間算出工程で、信号データに基づいて二次元静止画像における飽和限界の露光時間を算出する。
【0018】
これにより、露光時間を算出に用いる信号データを抽出可能となるので、適切に露光時間を算出することができる。また、飽和限界の露光時間を算出することによって最もコントラストの高い状態を算出することが可能となる。
【0019】
第4の発明に係る口腔内測定方法は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る口腔内測定方法であって、露光時間制御工程は、輝度情報に基づいて歯の領域および歯肉の領域の設定を行う。
ここでは、歯の領域と歯肉の領域との抽出にあたり輝度情報を使用している。
これにより、比較的に容易に歯の領域と歯肉の領域とを抽出することが可能になる。
【0020】
第5の発明に係る口腔内測定装置は、口腔内を測定対象とする口腔内測定装置であって、投光部と、撮像部と、露光時間制御部と、画像合成部と、三次元演算部とを備えている。投光部は、コード化された縞パターンを投影する。撮像部は、縞パターンが投影された領域を二次元静止画像として取り込む。露光時間制御部は、撮像部が二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御する。画像合成部は、少なくとも2つの異なる露光時間によって取り込んだ二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する。三次元演算部は、合成二次元静止画像に基づいて口腔内の三次元座標を演算する。
【0021】
ここでは、露光時間制御部が、撮像部が二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御して、画像合成部が、少なくとも2つの異なる露光時間によって取り込まれた二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する。
【0022】
従来より、光学三次元カメラおよびCAD/CAMシステムによって、口腔内形状を計測して、歯科用補綴物の形状を決定することが行われている。ところが、口腔内形状は、虫歯の状態や歯肉の組成の違いにより、各組織の表面反射率が異なるため、コントラストの小さな画像しか取り込むことができない。このため、正確な歯および歯肉の形状計測が困難である。
【0023】
そこで、本発明の口腔内測定装置においては、撮像部が二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御する露光時間制御部と、少なくとも2つの異なる露光時間によって取り込んだ二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する画像合成部とを備えている。
【0024】
これにより、表面反射率の異なる領域を抽出し、その領域ごとに最適な露光時間で二次元静止画像を取り込むことができるので、対象となる領域についてコントラストの大きな二次元静止画像をそれぞれ取得することが可能となる。また、最適露光時間で取り込んだそれぞれの二次元静止画像を合成することによって、全ての領域についてコントラストが大きな合成二次元静止画像を取得することが可能となる。
【0025】
この結果、コントラストよく撮像された合成二次元静止画像を使用して3次元座標を演算することができるので、パウダーを噴霧することなく、口腔内を正確に形状計測することが可能となる。
【0026】
第6の発明に係る口腔内測定装置は、第5の発明に係る口腔内測定装置であって、露光時間制御部は、口腔内における歯および歯肉のそれぞれの領域が撮像部によって最適に取り込まれるように露光時間を制御する。
【0027】
ここでは、口腔内における歯の領域と歯肉の領域とをそれぞれ抽出し、それぞれの領域が撮像部によって最適に取り込まれるように露光時間を制御する。
これにより、歯の領域および歯肉の領域のそれぞれについて最適な露光時間で二次元静止画像を取り込むことができるので、歯の領域についてコントラストの大きな二次元静止画像と、歯肉の領域についてコントラストの大きな二次元静止画像との2枚を取得することが可能となる。そして、上記2枚の二次元静止画像を合成することによって、歯の領域と歯肉の領域との両方の領域についてコントラストが大きな合成二次元静止画像を取得することが可能となる。
【0028】
第7の発明に係る口腔内測定装置は、第5または第6の発明に係る口腔内測定装置であって、露光時間制御部は、データ分離部と、露光時間算出部と、露光時間調整部とを有している。データ分離部は、撮像部において得られる映像信号から信号データを分離する。露光時間算出部は、信号データに基づいて二次元静止画像における飽和限界の露光時間を算出する。露光時間調整部は、露光時間算出部において算出された露光時間に基づいて、露光時間を調整する。
【0029】
ここでは、データ分離部が、撮像部において得られる映像信号から信号データを分離し、露光時間算出部が、信号データに基づいて二次元静止画像における飽和限界の露光時間を算出する。
【0030】
これにより、露光時間を算出に用いる信号データを抽出可能となるので、適切に露光時間を算出することができる。また、飽和限界の露光時間を算出することによって最もコントラストの高い状態を算出することが可能となる。
【0031】
第8の発明に係る口腔内測定装置は、第5から第7の発明のいずれか1つに係る口腔内測定装置であって、露光時間制御部は、輝度情報に基づいて、歯の領域および歯肉の領域の設定を行う。
【0032】
ここでは、歯の領域と歯肉の領域との抽出にあたり輝度情報を使用している。
これにより、比較的に容易に歯の領域と歯肉の領域とを抽出することが可能になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る口腔内測定方法および口腔内測定装置によれば、コントラストよく撮像された合成二次元静止画像を使用して3次元座標を演算することができるので、口腔内を正確に形状計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1における、口腔内撮影および画像計測フロー図である。
図1において、口腔内にセットされた光学三次元カメラ(以下オーラルスキャナーと称する)は、口腔内撮影として、従来型のビデオシステムと類似の動作を行う(S01)。撮像フレーム内に、撮像レンズおよびセンサによって歯108および歯肉109が撮像され、その映像がディスプレイに表示される。これにより、標準のビデオ映像が得られる(S02)。このとき、オーラルスキャナーの撮像位置を歯108および歯肉109に正確にあわせるため、例えば、フレームや十字等のマーク等によって撮像位置を指定する等を行ってもよい。
【0036】
次に、縞パターン投影による三次元画像処理を高速高精度に実施する為に、イメージセンサーのシャッター速度等を調整して、歯108の領域、歯肉109の領域それぞれに対して最適な露光時間の設定を行なう(S03:露光時間制御工程)。なお、歯108および歯肉109の領域化とそれぞれの領域に対する最適な露光時間の条件の設定については後述する。
【0037】
次に、上記撮像走査段階で得られたビデオ画像に対して、歯108および歯肉109の画像が良好であるかを確認する(S04)。良好であれば、フットスイッチなどを用いて画像計測を行なう。
【0038】
画像計測では、三角測量法により、二次元静止画像を三次元静止画像に変換するための縞パターンを投影し、CCD等のイメージセンサーを用いて撮像し、画像データ(二次元静止画像)としてメモリに記録する(S05:投光工程、撮像工程)。このとき、縞パターンは、空間コード化法を用いるならば、図2に示すようなグレーコードと呼ばれるパターンを用いるのが好ましい。なお、通常のコードパターンでも計測精度として十分であるならば使用可能である。また、位相シフト法を用いるのであれば、正弦波状に変化する既知の濃淡パターンを用いるのが一般的である。
【0039】
次に、メモリに記録された画像データの縞パターンのコントラストを改善する為、歯108および歯肉109の領域で、ノイズ除去、階調補正、ガンマ補正等の二次元画像処理を行う(S06)。
【0040】
続いて、歯の領域、歯肉の領域に対して、撮像画像のヒストグラムを参照しながら階調補正を行い、画像を合成する(S07:画像合成工程)。歯と歯肉の領域の画像合成手法については後述する。
【0041】
さらに、最終の三次元データ量を1/2〜1/10に間引いた画像データから三角測量にて低精度の三次元画像変換を行う(S08)。これにより、撮像された画像が良好であるかどうかを判定する(S09)。これは、得られた画像の良否判定の高速化をはかるものであり、高速化の必要がない場合は不要となる。
【0042】
最後に撮像された画像が良好であれば、三角測量法にて、高精度の三次元画像変換を行い、得られた三次元座標を点群データまたはSTL(Stereo Lithography)データとして、メモリに保存し、そのデータを用いて、ディスプレイ上に三次元座標を表示する(S10:三次元演算工程)。ここでは、代表的なデータ形式として、点群データまたはSTLデータを挙げているが、データ形式をこれに限定するものではない。
【0043】
図3は、本発明の実施の形態1における、オーラルスキャナー(口腔内測定装置)1の構成概略図である。
オーラルスキャナー1は、図3に示すように、患者の口腔内に直接挿入する事が可能なように、内部構成物を格納する外装ケース101を備えている。外装ケース101内には、発光ダイオードLED、または、レーザーからなる光源(投光部)102が取り付けられた構成となっている。光源102からの光は、集光レンズ103を通過して、LCDシャッターなどで構成された縞パターンを生成するためのパターンマスク104に照射可能な構成をとっている。そして、ビームスプリッター105を通過した縞パターンは、絞り106と対物集光レンズ107とを介して、被測定物である歯108および歯肉109に投影される構成となっている。また、光源からの光束を、投影光経路と観察光経路とに分離する為、ビームスプリッター105を設けている。縞パターン光は、撮像レンズ110を介して、最終的にCCD等のイメージセンサー(撮像部)111によって受光される。入力されたデータは、転送ケーブル112を介してPC等の外部機器120に格納された画像処理部(画像合成部)113へデータ転送される構成としている。
【0044】
外部機器120には、画像処理部113の他、イメージセンサー111が口腔内の画像を取り込む際の露光時間を制御する露光時間制御部114と、画像処理部113により生成された撮像画像に基づいて三次元座標を演算する三次元演算部118とを備えている。露光時間制御部114は、さらに、データ分離部115と、露光時間算出部116と、露光時間調整部117とを有している。データ分離部115は、イメージセンサー111において得られる映像信号からL信号とS信号とに分離する。露光時間算出部116は、データ分離部115によって得られた信号画像を取り込む際の最適露光時間を算出する。露光時間調整部117は、露光時間算出部116において算出された最適露光時間に基づいてイメージセンサー111における露光時間を最適化する。
【0045】
なお、本実施形態においては、画像処理部113、露光時間制御部114、三次元演算部118が外部機器120に格納された例を挙げて説明したが、これらは、オーラルスキャナー1に内蔵されていてもよいし、無線LAN等によって接続されたサーバ等に格納されていてもよい。
画像処理部113、露光時間制御部114、三次元演算部118が行う詳細の処理内容については後段にて説明する。
【0046】
図4は、実施の形態1における、歯108および歯肉109の領域化とそれぞれの領域に対する露光時間の条件の設定についての処理フロー図である。
【0047】
露光時間の設定が開始されると(T01)、イメージセンサー111から口腔内の映像信号が画像処理部113へ取り込まれる(T02)。このとき、イメージセンサー111は、CCDの水平転送速度を通常の2倍の速度にして水平ライン毎に、露光時間が長時間の映像信号(L信号)および露光時間が短時間の映像信号(S信号)を交互に出力することにより、通常の撮像にて1フィールド分の映像を出力する期間内に、L信号およびS信号をそれぞれ1フィールド分出力している。
【0048】
次に、イメージセンサー111より出力された信号に対して、ノイズ除去等の前処理を施す(T03)。続いて、前処理された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する(T04)。次に、イメージセンサー111にて生成された映像信号においてL信号とS信号とを独立して取り扱うことが出来るように、イメージセンサー111にて連続的に生成されたL信号とS信号との時間軸を変換する(T05)。
【0049】
次に、L信号およびS信号をL信号画像およびS信号画像として画像処理部113内の記憶メモリに保存する(T06)。
続いて、L信号画像から歯108および歯肉109の領域設定に用いる情報を抽出する(T07)。領域設定情報としては、輝度信号でも良いし、特定の色信号でも良い。また、これらの輝度信号や色信号の最大値や最小値などを用いても良い。ここでは、最も一般的な、輝度値を領域設定に用いるものとして説明する。また、ここでは領域設定にはノイズの関係から露光時間が長時間であるL信号画像を用いているが、S信号画像を用いても良い。
【0050】
次に、領域設定の閾値を算出する(T08)。ここでは閾値として、抽出された輝度値から飽和していないデータの平均をとる。
次に、各画素の輝度値と、領域設定の閾値を比較する(T09)。輝度値が閾値未満であれば歯肉109の領域と設定し(T10)、閾値以上であれば歯108の領域と設定する(T11)。
【0051】
続いて、歯肉109の領域の露光時間を調整する(T12)。通常、歯肉109の領域は、歯108の領域に比べて暗いため、露光時間が長時間のL信号画像を露光時間調整に用いる。
【0052】
次に、露光時間を変化させL信号画像を取り込む(T13)。L信号画像の歯肉109の領域の輝度レベルが飽和するまで露光時間を遅くし露光時間を最適化する(T14)。ここでは、輝度レベルが飽和していないことを前提に処理しているが、逆の場合は露光時間を速めながら調整する。
【0053】
輝度レベルが飽和した段階で、露光時間を飽和する直前のレベルに戻し、歯肉109の領域の露光時間を確定する(T15)。同時に、歯肉109の領域露光時間(GT)を記録する(T16)。
【0054】
同様に、歯108の領域における露光時間の調整および歯108の領域露光時間(DT)の記録を行なう(T17〜T21)。ただし、歯108の領域は、歯肉109の領域に比べて明るいため露光時間が短時間のS画像を露光時間調整に用いる。
以上、T01〜T22のフローを実施することによって、露光時間の設定が完了する(T22)。
【0055】
図5は、実施の形態1における、歯108の領域と歯肉109の領域との各画像の画像合成処理のフロー図である。
【0056】
画像合成が開始されると(U01)、図4のフローで調整された露光時間GTおよびDTで撮影された、L信号およびS信号が画像処理部113へ取り込まれる(U02)。このときも、イメージセンサー111は、CCDの水平転送速度を通常の2倍の速度にして水平ライン毎にL信号およびS信号を交互に出力することにより、通常の撮像にて1フィールド分の映像を出力する期間内に、L信号およびS信号をそれぞれ1フィールド分出力する。次に、イメージセンサー111より出力された信号に対して、ノイズ除去等の前処理を施す(U03)。続いて、前処理された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する(U04)。次に、イメージセンサー111にて生成された映像信号をL信号とS信号を独立して取り扱うことが出来るように、イメージセンサー111にて連続的に生成されたL信号およびS信号の時間軸を変換する(U05)。
【0057】
次に、L信号およびS信号をL信号画像およびS信号画像として画像処理部113内の記憶メモリに保存する(U06)。L信号画像およびS信号画像は、歯108の領域と歯肉109の領域とに分割される(U07)。この情報を元に歯108および歯肉109の領域が設定される(U08、U09)。
【0058】
図6(a)〜図6(d)は実施の形態1における、歯108と歯肉109との領域分割(U07)を説明するための図である。図6(a)は、イメージセンサー111で撮像した歯108と歯肉109を示す図である。一般的に、歯108の領域は高輝度領域となり、歯肉109の領域は低輝度領域となる。図6(b)は、歯肉109の領域にあわせて調整した長時間の露光時間GTで取得したL信号画像の輝度値、図6(c)は、歯108の領域にあわせて調整した短時間の露光時間DTで取得したS信号画像の輝度値である。図6(b)および図6(c)は、共に、図6(a)に示す画像のAB線に対応する輝度値である。ここで、L信号画像の輝度値および閾値の比較を行い、輝度レベルが閾値未満であれば歯肉109の領域に、閾値以上であれば歯108の領域に領域分割され、歯108の領域信号(DA)と歯肉109の領域信号(GA)が付与(U08、U09)される。図6(d)では、歯108および歯肉109の領域に分割されている。
【0059】
次に、図5に示すように、各領域において輝度のヒストグラムデータを取得する(U12、U13)。歯108の領域は、高輝度領域となっているためヒストグラムは、明るい部分に集中している。したがって、明るい部分を持ち上げるような階調補正を行なう(U14)。逆に、歯肉109の領域は、低輝度領域となっているためヒストグラムは、暗い部分に集中している。したがって、暗い部分を持ち上げるような階調補正を行なう(U15)。
最後に、領域信号DA、GAを用いて、階調補正された歯108の領域の画像(二次元静止画像)と歯肉109の領域の画像(二次元静止画像)とを合成する(U16)。
【0060】
図7(a)〜図7(c)は、通常の処理フローで撮像処理された画像と、本発明の実施の形態1の処理フローを用いて撮像処理された画像の比較図である。
【0061】
図7(a)および図7(b)は、通常の処理フローで撮像処理された画像で露光時間が異なる。図7(c)は、本発明の実施の形態1の処理フローで撮像処理された画像(合成二次元静止画像)である。ここでは、測定対象として歯の模型を用いている。図7(a)〜図7(c)で明らかなように、歯108と歯肉109との両方の領域において、階調情報が保たれて撮像されている。
【0062】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2における、歯108および歯肉109の領域化とそれぞれの領域に対する露光時間の条件設定についての処理フロー図である。実施の形態1との違いは、歯および歯肉を領域化する処理フローである。その他のフロー構成は、実施の形態1と同様であるためここではその説明を省略する。
実施の形態2における、歯および歯肉の領域化とそれぞれの領域に対する露光時間の条件設定についての処理フローでは、L信号画像の輝度成分の比較(V11)に、比較領域の輝度値を用いる点が実施の形態1との違いである。
【0063】
以下、フローに従って説明する。
まず、露光時間の設定が開始されると(V01)、イメージセンサー111から口腔内映像信号が画像処理部113へ取り込まれる(V02)。このとき、イメージセンサー111の動作は、実施の形態1と同様である。
【0064】
次に、イメージセンサー111より出力された信号に対して、ノイズ除去等の前処理を施す(V03)。続いて、前処理された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する(V04)。次に、イメージセンサー111にて生成された映像信号をL信号とS信号とを独立して取り扱うことが出来るように、イメージセンサー111にて連続的に生成されたL信号とS信号との時間軸を変換する(V05)。さらに、L信号およびS信号をL信号画像およびS信号画像として画像処理部113内の記憶メモリに保存する(V06)。
【0065】
続いて、L信号画像から歯108と歯肉109との領域設定に用いる輝度値を抽出する(V07)。次に、領域設定の閾値を算出する(V08)。ここでは、閾値として、抽出された輝度値から飽和していないデータの平均をとる。
【0066】
次に、各画素の輝度値と、領域設定の閾値とを比較する比較領域枠を設定する(V09)。続いて、比較領域枠内で輝度値から飽和していないデータの平均(比較領域平均輝度値)をとる(V10)。
【0067】
次に、比較領域平均輝度値と領域設定の閾値とを比較する(V11)。ここで、輝度値が閾値未満であれば歯肉109の領域と設定し(V12)、閾値以上であれば歯108の領域と設定する(V13)。
【0068】
続いて、歯肉109の領域の露光時間を調整する(V14)。通常、歯肉109の領域は、歯108の領域に比べて暗いため露光時間が長時間のL画像を露光時間調整に用いる。
【0069】
次に、露光時間を変化させL信号画像を取り込む(V15)。そして、L信号画像の歯肉109の領域の輝度レベルが飽和するまで露光時間を遅くし、露光時間を最適化する(V16)。ここでは、輝度レベルが飽和していないことを前提に処理しているが、逆の場合は露光時間を速めながら調整する。
【0070】
次に、輝度レベルが飽和した段階で、露光時間を飽和する直前のレベルに戻し、歯肉109の領域の露光時間を確定する(V17)。同時に、歯肉109の領域露光時間(GV)を記録する(V18)。
【0071】
同様に、歯108の領域の露光時間を調整と歯108の領域露光時間(DV)の記録を行なう(V19〜V23)。ただし、歯108の領域は、歯肉109の領域に比べて明るいため、露光時間が短時間のS画像を露光時間調整に用いる。
【0072】
以上のV01〜V24のフローを実施することによって、露光時間の設定が完了する(V24)。
なお、実施の形態2を用いれば、露光時間の条件設定を高速化することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
口腔内測定方法および装置は、表面反射率の異なる歯および歯肉を正確に形状計測する効果を有し、その他表面反射率の異なる歯科用補綴物の適合性を患者の口腔内で直接計測する用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態1における口腔内撮影および画像計測のフロー図。
【図2】空間コード化法で用いられるグレイパターンの一例を示した図。
【図3】本発明の実施の形態1におけるオーラルスキャナーの構成概略図。
【図4】本発明の実施の形態1における最適な露光時間設定の処理フロー図。
【図5】本発明の実施の形態1における歯の領域と歯肉の領域の各画像の画像合成処理のフロー図。
【図6】(a)〜(d)は、実施の形態1における歯および歯肉の領域分割の説明図。
【図7】従来の撮像フロー(a),(b)と本発明の実施の形態1(c)における撮像フローとによって撮像処理された画像の比較図。
【図8】本発明の実施の形態2における最適な露光時間設定の処理フロー図。
【符号の説明】
【0075】
1 オーラルスキャナー(口腔内測定装置)
101 外装ケース
102 光源(投光部)
103 集光レンズ
104 パターンマスク
105 ビームスプリッター
106 絞り
107 対物集光レンズ
108 歯
109 歯肉
110 撮像レンズ
111 イメージセンサー(撮像部)
112 転送ケーブル
113 画像処理部(画像合成部)
114 露光時間制御部
115 データ分離部
116 露光時間算出部
117 露光時間調整部
118 三次元演算部
120 外部機器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内を測定対象とする口腔内測定方法であって、
コード化された縞パターンを投影する投光工程と、
前記縞パターンが投影された領域を二次元静止画像として取り込む撮像工程と、
前記撮像工程において前記二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御する露光時間制御工程と、
少なくとも2つの異なる前記露光時間によって取り込んだ前記二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する画像合成工程と、
前記合成二次元静止画像に基づいて前記口腔内の三次元座標を演算する三次元演算工程と、
を備えている、口腔内測定方法。
【請求項2】
前記露光時間制御工程は、前記口腔内における歯および歯肉のそれぞれの領域が前記撮像工程によって最適に取り込まれるように前記露光時間を制御する、
請求項1に記載の口腔内測定方法。
【請求項3】
前記露光時間制御工程は、
前記撮像工程において得られる映像信号から信号データを分離するデータ分離工程と、
前記信号データに基づいて前記二次元静止画像における飽和限界の前記露光時間を算出する露光時間算出工程と、
前記露光時間算出工程において算出された前記露光時間に基づいて、前記露光時間を調整する露光時間調整工程と、
を有している、請求項1または2に記載の口腔内測定方法。
【請求項4】
前記露光時間制御工程は、輝度情報に基づいて前記歯の領域および前記歯肉の領域の設定を行う、
請求項1から3のいずれか1項に記載の口腔内測定方法。
【請求項5】
口腔内を測定対象とする口腔内測定装置であって、
コード化された縞パターンを投影する投光部と、
前記縞パターンが投影された領域を二次元静止画像として取り込む撮像部と、
前記撮像部が前記二次元静止画像を最適に取り込めるように露光時間を制御する露光時間制御部と、
少なくとも2つの異なる前記露光時間によって取り込んだ前記二次元静止画像を合成して、合成二次元静止画像を生成する画像合成部と、
前記合成二次元静止画像に基づいて前記口腔内の三次元座標を演算する三次元演算部と、
を備えている、口腔内測定装置。
【請求項6】
前記露光時間制御部は、前記口腔内における歯および歯肉のそれぞれの領域が前記撮像部によって最適に取り込まれるように前記露光時間を制御する、
請求項5に記載の口腔内測定装置。
【請求項7】
前記露光時間制御部は、
前記撮像部において得られる映像信号から信号データを分離するデータ分離部と、
前記信号データに基づいて前記二次元静止画像における飽和限界の前記露光時間を算出する露光時間算出部と、
前記露光時間算出部において算出された前記露光時間に基づいて、前記露光時間を調整する露光時間調整部と、
を有している、請求項5または6に記載の口腔内測定装置。
【請求項8】
前記露光時間制御部は、輝度情報を基に、前記歯の領域および前記歯肉の領域の設定を行う、
請求項5から7のいずれか1項に記載の口腔内測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−165558(P2009−165558A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4904(P2008−4904)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】