説明

可塑化部材及びその表面処理方法

【課題】可塑化部材の耐摩耗性及び耐腐食性を高くすることができるようにする。
【解決手段】成形に伴って溶融させられた成形材料と接触させられる可塑化部材に適用されるようになっている。鉄を元素として含有する合金から成る母材と、該母材の表面に形成されたFe−Al金属間化合物とを有する。母材の表面にFe−Al金属間化合物が形成されるので、硫黄を含有する樹脂と接触してもFe−Al金属間化合物は硫化しない。したがって、可塑化部材の耐腐食性を高くすることができる。前記Al−Fe金属間化合物の層の硬度は高いので、可塑化部材の耐摩耗性を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑化部材及びその表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた成形材料としての樹脂を、高圧で射出して金型装置のキャビティ空間に充填し、該キャビティ空間内において冷却して固化させることによって成形品が得られるようになっている。
【0003】
そのために、前記射出成形機には、金型装置、型締装置及び射出装置が配設され、前記金型装置は固定金型及び可動金型を備え、型締装置は、固定プラテン、可動プラテン、トグル機構、型締用モータ等を備える。そして、型締用モータを駆動してトグル機構を作動させ、可動プラテンを進退させることによって、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われ、型締めに伴って、前記固定金型と可動金型との間にキャビティ空間が形成される。
【0004】
一方、前記射出装置は、ホッパから供給された樹脂を加熱して溶融させる加熱シリンダ、該加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズル、前記加熱シリンダ内に回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリュー、該スクリューを回転させるための計量用モータ、前記スクリューを前進させるための射出用モータ等を備える。そして、前記計量用モータを駆動し、前記スクリューを回転させると、溶融させられた樹脂はスクリューより前方に蓄えられ、それに伴って、スクリューが後退させられる。続いて、前記射出用モータを駆動し、前記スクリューを前進させると、スクリューより前方に蓄えられた樹脂は射出ノズルから射出され、金型装置のキャビティ空間に充填される。
【0005】
ところで、成形品の強度を大きくするために、樹脂にガラスフィラー等の硬質粒子を添加したり、成形品の耐熱性を高くするために、樹脂に塩素、臭素等のハロゲン元素を添加したりすることがある。この場合、前記ガラスフィラーは、樹脂が接触する金属製の部材、すなわち、可塑化部材、例えば、加熱シリンダ、射出ノズル、スクリュー、金型装置等に対して研磨剤として機能し、可塑化部材を摩耗させてしまう。また、前記ハロゲン元素は、可塑化部材に対して腐食促進剤として機能し、可塑化部材を腐食させてしまう。その結果、可塑化部材の使用環境が低くなってしまう。
【0006】
特に、光学素子部品(ピックアップレンズ、導光板、導波路、回折格子等)、狭ピッチコネクタ等のような微細構造を有する部品を成形品として成形する場合、成形品の精度を高くする必要がある場合等には、樹脂の温度、射出圧力、射出速度等が高くされる傾向があるので、可塑化部材の使用環境が一層低くなってしまう。
【0007】
そこで、可塑化部材の耐腐食性を高くするために、金属の表面に酸化膜被膜である不働態皮膜が形成されるようにした成形機が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−262133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の可塑化部材においては、不働態皮膜を形成した場合、層厚が小さく、数〔nm〕程度であるので、樹脂中に含有される硬質粒子によって摩耗されやすい。
【0009】
そこで、可塑化部材の耐摩耗性を高くするために合金を使用することが考えられるが、該合金の元素である鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等は硫黄(S)と化合しやすく、硫化物を形成する傾向があるので、成形条件によっては、硫黄を含有する樹脂によって可塑化部材が硫化し腐食してしまう。その結果、可塑化部材の耐腐食性が極めて低くなってしまう。
【0010】
本発明は、前記従来の可塑化部材の問題点を解決して、耐摩耗性及び耐腐食性を高くすることができる可塑化部材及びその表面処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明の可塑化部材においては、成形に伴って溶融させられた成形材料と接触させられる可塑化部材に適用されるようになっている。
【0012】
そして、鉄を元素として含有する合金から成る母材と、該母材の表面に形成されたFe−Al金属間化合物とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可塑化部材においては、成形に伴って溶融させられた成形材料と接触させられる可塑化部材に適用されるようになっている。
【0014】
そして、鉄を元素として含有する合金から成る母材と、該母材の表面に形成されたFe−Al金属間化合物とを有する。
【0015】
この場合、母材の表面にFe−Al金属間化合物が形成されるので、硫黄を含有する樹脂と接触してもFe−Al金属間化合物は硫化しない。したがって、可塑化部材の耐腐食性を高くすることができる。
【0016】
また、前記Al−Fe金属間化合物の層の硬度は高いので、可塑化部材の耐摩耗性を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機について説明する。
【0018】
図2は本発明の実施の形態における射出成形機の要部を示す概略図である。
【0019】
図において、10は射出装置、51は金型装置である。該金型装置51は、第1の金型としての固定金型52、及び該固定金型52と対向させて、かつ、進退自在に配設された第2の金型として図示されない可動金型を備え、図示されない型締装置を作動させることによって、可動金型を固定金型52に対して接離させ、金型装置51の型閉じ、型締め及び型開きを行うことができ、型締めが行われるのに伴って、固定金型52と可動金型との間にキャビティ空間が形成される。
【0020】
また、11はシリンダ部材としての加熱シリンダであり、該加熱シリンダ11の前端(図において左端)に射出ノズル12が取り付けられ、加熱シリンダ11の外周に複数の環状のヒータ13が配設される。
【0021】
前記加熱シリンダ11内には、射出部材としてのスクリュー14が回転自在に、かつ、進退自在に配設される。そして、該スクリュー14は、フライト部15及びヘッド部16から成り、後端(図において右端)において軸部21を介して駆動部22と連結される。該駆動部22は、図示されない射出用の駆動部としての射出用モータ、及び計量用の駆動部としての計量用モータを備える。また、前記フライト部15の周囲には、螺旋状のフライト23が形成され、該フライト23に沿って溝24が形成される。
【0022】
前記ヘッド部16は、円錐形の形状を有するスクリューヘッド41、該スクリューヘッド41とスクリュー14の本体を構成する前記フライト部15とを連結するロッド42、該ロッド42の外周に配設された環状の逆止リング43、及び該逆止リング43と当接自在に配設され、フライト部15に取り付けられたシールリング44から成る。なお、逆止リング43及びシールリング44は、射出工程時にスクリューヘッド41の前方に蓄えられた成形材料としての樹脂が逆流するのを防止する逆流防止装置として機能する。
【0023】
そして、前記加熱シリンダ11の後端の近傍の所定の位置には成形材料供給口としての樹脂供給口25が形成され、該樹脂供給口25に成形材料供給装置としてのホッパ31が配設される。該ホッパ31に収容されたペレット状の樹脂は、樹脂供給口25を介して加熱シリンダ11内に供給される。
【0024】
前記樹脂供給口25は、スクリュー14を加熱シリンダ11内における最も前方(図において左方)の位置に置いた状態で、前記溝24の後端部(図において右端部)と対向する箇所に形成される。そして、前記フライト部15には、後方(図において右方)から前方にかけて、樹脂供給口25を介して樹脂が供給される樹脂供給部P1、供給された樹脂を圧縮させながら溶融させる圧縮部P2、及び溶融させられた樹脂を一定量ずつ計量する計量部P3が順に形成される。
【0025】
前記構成の射出装置において、計量工程時に、前記計量用モータを駆動することによって、前記スクリュー14を回転させると、ホッパ31から加熱シリンダ11内に供給された樹脂は、前記溝24に沿って前進(図において左方に移動)させられるとともに、前記ヒータ13によって加熱され、溶融させられ、それに伴って、スクリュー14は後退(図において右方に移動)させられる。そして、前記スクリュー14が後退させられるのに伴って、前記逆止リング43はロッド42に対して前方に移動させられるので、フライト部15の前端に到達した樹脂は、ロッド42と逆止リング43との間の図示されない樹脂流路を通り、スクリューヘッド41の前方に送られる。したがって、スクリューヘッド41の前方に1ショット分の溶融させられた樹脂が蓄えられる。そして、この間に、型締装置が作動させられ、金型装置51において型閉じ及び型締めが行われ、図示されないキャビティ空間が形成される。
【0026】
次に、射出工程時に、前記射出用モータを駆動して、スクリュー14を前進させると、前記スクリューヘッド41の前方に蓄えられた樹脂は、前記射出ノズル12から射出され、前記キャビティ空間に充填される。
【0027】
続いて、冷却工程時に、前記キャビティ空間内の樹脂が冷却され、固化させられて成形品になる。次に、前記型締装置が作動させられ、金型装置51において型開きが行われ、成形品が取り出される。
【0028】
ところで、成形品の強度を大きくするために、樹脂にガラスフィラー等の硬質粒子を添加したり、成形品の耐熱性を高くするために、樹脂に塩素、臭素等のハロゲン元素を添加したりすることがある。この場合、前記ガラスフィラーは、金属製の可塑化部材、例えば、加熱シリンダ11、射出ノズル12、スクリュー14、金型装置51等に対して研磨剤として機能し、可塑化部材を摩耗させてしまう。また、前記ハロゲン元素は、可塑化部材に対して腐食促進剤として機能し、可塑化部材を腐食させてしまう。したがって、可塑化部材の使用環境が低くなってしまう。
【0029】
そこで、可塑化部材の母材として、耐摩耗性及び耐腐食性を高くするために、工具鋼、マルテンサイト系ステンレス、低合金鋼等の鉄系の合金であるFe基合金、又はNi基合金、Co基合金等の合金を使用することが考えられるが、該各合金の元素である鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等は硫黄(S)と化合しやすく、硫化物を形成する傾向があるので、成形条件によっては、硫黄を含有する樹脂によって可塑化部材が硫化し腐食してしまう。その結果、可塑化部材の耐腐食性が極めて低くなってしまう。
【0030】
ところで、溶融させられた樹脂が加熱され、かつ、せん断力を受けると、樹脂が劣化し、ラジカルが発生するが、該ラジカルによって、可塑化部材が摩耗したり、腐食したりすると考えられる。
【0031】
そして、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の硫黄を多量に含有する樹脂を使用した場合、反応性のラジカルRSが発生し、可塑化部材として、例えば、Fe基合金を使用した場合、鉄とラジカルRSとが以下のように反応し、硫化物から成る皮膜、すなわち、硫化皮膜が生成される。
【0032】
Fe+2RS→Fe(SR)2
Fe(SR)2 →2FeS+(R−R)
可塑化部材の母材としてNi基合金、Co基合金等が使用される場合も、同様に硫化皮膜が生成される。
【0033】
そして、成形品の強度を大きくするために、樹脂にガラスフィラー等の硬質粒子が添加されていると、硬質粒子が有するアブレッシブ摩耗作用によって、前記硫化皮膜が摩耗ささせられ、母材の素地が現れやすくなり、再び、合金に含有される元素とラジカルRSとが反応し、更に硫化皮膜が生成される。
【0034】
また、可塑化部材の耐腐食性を高くするために、合金の表面に酸化膜被膜である不働態皮膜を形成することも考えられるが、その場合も、樹脂にガラスフィラー等の硬質粒子が添加されていると、硬質粒子が有するアブレッシブ摩耗作用によって、前記不働態皮膜が摩耗させられ、母材の素地が現れやすくなり、合金に含有される元素とラジカルRSとが反応し、再び硫化皮膜が生成されてしまう。
【0035】
そこで、本実施の形態においては、母材の表面に、硫化物が生成されにくい元素を含有する化合物を形成するようにしている。
【0036】
すなわち、母材をFe基合金によって形成し、該Fe基合金の表面に、Fe−Al金属間化合物を生成することによって、硫黄を含有する樹脂による腐食が殆ど起こらないようにしている。
【0037】
ところで、例えば、合金の表面にアルミニウムを適用した例としては、前記特許文献1に示されているように、アルミニウム含有ステンレス鋼の表面に酸化膜被膜である不働態皮膜(Al2 3 )を形成する方法がある。ところが、この方法は、合金化による方法であり、不働態皮膜の厚さが数〔nm〕〜0.1〔μm〕程度であり、樹脂に硬質粒子が含有される場合、わずかな時間で不働態皮膜が消滅して、アルミニウム含有ステンレス鋼の素地が現れてしまう。
【0038】
また、Fe基合金にアルミニウムを加えようにとする場合、アルミニウムの固溶限度は約8〔wt%〕程度であり、不働態皮膜が形成された後の可塑化部材の加工性が極めて低くなってしまう。
【0039】
さらに、前記不働態皮膜を形成する際の処理温度は、700〔℃〕〜1200〔℃〕であり、極めて高く、不働態皮膜が形成された後の可塑化部材の強度が低くなってしまう。
【0040】
そこで、本実施の形態においては、前述されたように、母材の表面に、Fe−Al金属間化合物を生成し、硫黄を含有する樹脂に対して耐摩耗及び耐腐食性を持たせるようにした。なお、この場合、仕上がり寸法を得るために、Al−Fe金属間化合物が生成された後の母材に、切削、研削等の所定の加工が施されても、Al−Fe金属間化合物が母材の表面に存在している必要がある。
【0041】
また、母材にアルミニウムを付着させてAl−Fe金属間化合物を生成する場合、母材を溶融させられたアルミニウム、すなわち、溶融アルミニウムに浸漬するのが好ましいが、その場合、余剰のアルミニウムが母材に付着すると、可塑化部材の最終の寸法及び形状が損なわれてしまう。
【0042】
そこで、母材に付着させたアルミニウムを拡散させ、その後、余剰のアルミニウムを除去するようにしている。
【0043】
図1は本発明の実施の形態における可塑化部材の表面処理方法を示す第1の図、図3は本発明の実施の形態における可塑化部材の表面処理方法を示す第2の図である。なお、図3においては可塑化部材の一部分だけが表される。
【0044】
図において、61は工具鋼、マルテンサイト系ステンレス、低合金鋼等のFe基合金から成る可塑化部材の母材、62は浸漬処理を行うための浸漬処理槽であり、該浸漬処理槽62内に溶融アルミニウム68が収容される。また、63は拡散処理を行うための加熱炉、64は洗浄処理を行うための洗浄処理槽、65は加熱炉63の加熱源となるコイルであり、前記洗浄処理槽64内に洗浄剤としてアルカリ溶液69が収容される。該アルカリ溶液69の水素イオン濃度指数はpH8以上、好ましくは、pH9以上にされる。
【0045】
前記可塑化部材の表面処理を行うに当たり、まず、浸漬処理において、母材61を浸漬処理槽62内に投入し、溶融アルミニウム68に短時間浸漬し、母材61の表面にアルミニウムを付着させる。なお、図1において、71は母材61の表面に付着させられた付着アルミニウム、72は母材61の表面に付着アルミニウム71が付着させられた被処理体である。該被処理体72において、付着アルミニウム71は母材61に単純に付着しているだけであり、アルミニウムめっきと同じ状態であり、母材61への付着力は極めて小さい。
【0046】
そこで、浸漬処理が終了した後、被処理体72は、加熱炉63に投入され、該加熱炉63によって拡散処理が行われる。そのために、前記加熱炉63において、母材61は所定の温度に加熱され、付着アルミニウム71のアルミニウムが母材61の合金に浸透し、拡散してFe−Al金属間化合物から成る拡散層73を形成する。なお、
加熱炉63における加熱温度は、300〔℃〕以上、かつ、550〔℃〕以下の範囲に設定される。また、加熱時間は、拡散層73の厚さに応じて設定される。加熱温度が300〔℃〕より低い場合、アルミニウムを拡散させるのに必要な時間が長くかかり、加熱温度が550〔℃〕より高い場合、母材61を構成する工具鋼、マルテンサイト系ステンレス、低合金鋼等のFe基合金の焼戻し温度を超えてしまうので、母材61が軟化してしまう。
【0047】
このようにして拡散処理が終了した後、母材61、拡散層73及び付着アルミニウム71から成る被処理体74が形成される。該被処理体74において、付着アルミニウム71は余剰アルミニウムを構成する。
【0048】
そこで、最終製品である可塑化部材の形状、寸法等にするために、被処理体74は、洗浄処理槽64内に投入され、アルカリ溶液69に浸漬させられる。その結果、付着アルミニウム71を化学的に除去することができる。なお、本実施の形態においては、洗浄剤としてアルカリ溶液が使用されるが、pH4以下の酸溶液を使用し、付着アルミニウム71を除去することができる。なお、酸性溶液を使用すると、母材61を構成する合金が腐食させられる可能性があるので、アルカリ溶液を使用するのが好ましい。
【0049】
このようにして、表面にAl−Fe金属間化合物が形成された可塑化部材を形成することができる。この場合、Al−Fe金属間化合物は、硫黄を含有する樹脂によって硫化することがないので、可塑化部材の耐腐食性を高くすることができる。
【0050】
また、前記Al−Fe金属間化合物の層の硬度は、高く、ビッカースHVで900程度になるので、可塑化部材の耐摩耗性を高くすることができる。
【0051】
本実施の形態の表面処理方法で処理しない低合金鋼、本実施の形態の表面処理方法で処理した低合金鋼、及び本実施の形態の表面処理方法で処理しないマルテンサイト系ステンレスを、それぞれ、溶融させられたポリフェニレンサルファイドに浸漬した場合の硫化皮膜の厚さを比較した結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
本実施の形態の表面処理方法で処理しない低合金鋼の場合、35〔μm〕の厚さの硫化皮膜が形成され、本実施の形態の表面処理方法で処理しないマルテンサイト系ステンレスの場合、25〔μm〕の厚さの硫化皮膜が形成されたのに対して、本実施の形態の表面処理方法で処理した低合金鋼の場合、硫化皮膜は形成されなかった。
【0054】
本実施の形態においては、Fe基合金から成る母材61を使用するようになっているが、Fe基合金に代えて、Ni基合金、Co基合金等から成る母材を使用することができる。その場合、Ni基合金、Co基合金等に元素として含有される鉄と、浸透させたアルミニウムとによって、Al−Fe金属間化合物の層が形成される。
【0055】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態における可塑化部材の表面処理方法を示す第1の図である。
【図2】本発明の実施の形態における射出成形機の要部を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態における可塑化部材の表面処理方法を示す第2の図である。
【符号の説明】
【0057】
11 加熱シリンダ
12 射出ノズル
14 スクリュー
51 金型装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形に伴って溶融させられた成形材料と接触させられる可塑化部材において、
(a)鉄を元素として含有する合金から成る母材と、
(b)該母材の表面に形成されたFe−Al金属間化合物とを有することを特徴とする可塑化部材。
【請求項2】
前記Fe−Al金属間化合物は、母材中にアルミニウムを拡散させることによって形成され、拡散層を構成する請求項1に記載の可塑化部材。
【請求項3】
(a)溶融させられたアルミニウムに、鉄を元素として含有する合金から成る母材を浸漬して該母材にアルミニウムを付着させ、
(b)母材にアルミニウムが付着した状態の被処理体を加熱して、母材中にアルミニウムを拡散させ、
(c)余剰のアルミニウムを洗浄剤によって除去することを特徴とする可塑化部材の表面処理方法。
【請求項4】
前記被処理体を加熱する際の加熱温度は、300〔℃〕以上、かつ、550〔℃〕以下の範囲に設定される請求項3に記載の可塑化部材の表面処理方法。
【請求項5】
前記洗浄剤は、pH9以上のアルカリ溶液である請求項3に記載の可塑化部材の表面処理方法。
【請求項6】
前記洗浄剤は、pH4以下の酸溶液である請求項3に記載の可塑化部材の表面処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−13786(P2008−13786A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183176(P2006−183176)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】