説明

合成樹脂製積層体及びその製造方法

【課題】
表面に硬化皮膜層を有し、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性、経済性に優れ、かつ、可視光には透過性で選択的に熱線遮蔽機能を有し、車輌用の窓ガラス、サンルーフ等の熱線遮蔽性グレージング材に適した合成樹脂製積層体を提供することである。
【解決手段】
透明合成樹脂100重量部に対して、平均直径が1〜50μmで厚さが平均直径の1/200〜1/10の範囲の燐片状アルミ粉を0.0005〜0.05重量部添加した樹脂組成物からなり、射出成形により成形された透明合成樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜厚み1〜10μmのプライマー塗膜層(B)が形成され、該プライマー塗膜層(B)上に多官能アルコキシシランからなる塗膜厚み1〜10μmの硬化被膜層(C)が形成されてなる合成樹脂製積層体(D)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製積層体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、表面に硬化皮膜層を有し、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性に優れ、かつ、可視光には透過性で選択的に熱線遮蔽機能を有し、一般の窓ガラス、自動車の窓ガラス、サンルーフ等の熱線遮蔽性グレージング材、赤外線カットフィルター等の光学材、農業用資材等多くの用途に好適な、熱線反射性合成樹脂製積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート等の透明合成樹脂は、加工の自由度、軽量性等に優れていることからガラスに代わる構造材料として広く使用されてきており、例えば、窓ガラス、サンルーフ等の自動車用途、赤外線カットフィルター等の光学材、採光用屋根材等の建材用途、温室被覆材、農業用フィルム等に幅広く用いられている。しかしながら、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性等の表面特性及び熱線遮蔽性が不十分であることからその用途は制限されており、透明合成樹脂の表面特性と熱線遮蔽性を改良することが切望されている。
【0003】
特許文献1には、熱線遮蔽材料として、フタロシアニン系等の有機色素の金属錯塩が提案されているが、有機色素の金属錯塩は可視光線の透過率が低く、暗褐色から暗青色の濃厚な着色を有している上、樹脂への熱分解促進作用があり、耐久性の点でも満足できるものではなかった。
特許文献2には、近赤外線吸収色素と紫外線吸収剤を含有するエチレン−酢酸ビニル(EVA)系接着性ポリマーをガラス或いは樹脂板とを貼り合せた近赤外線吸収板が提案されているが、この提案では接着性ポリマーが必要で、さらに接着性ポリマーとガラス或いは樹脂板とを貼り合せて作製するため、接着工程等繁雑な工程が必要になるという欠点があった。
特許文献3には、透明性を有する合成樹脂に鱗片状をしたアルミ片を添加した組成物よりなる成形物の片面又は両面に厚み30〜300μmの透明着色合成樹脂層を設けた熱線遮蔽板が提案されているが、耐擦傷性や耐摩耗性が不十分であった。
特許文献4には、ポリカーボネート樹脂、フタロシアニン系近赤外線吸収剤、およびホスファイト化合物およびホスホナイト化合物から選択される少なくとも1種のリン化合物0.0005〜0.3重量部からなる樹脂組成物から射出成形により形成された成形品の表面にハードコート層を有するポリカーボネート樹脂成形体が提案されているが、フタロシアニン系近赤外線吸収剤のポリカーボネート樹脂に対する熱分解作用などもあり、長期間耐候性の要求されるグレージング材として使用できる樹脂成形体ではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平06−240146号公報
【特許文献2】特開平07−178861号公報
【特許文献3】特開平11−333991号公報
【特許文献4】特開2004−27111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術にみられる上記の課題を解決しようとするものであり、表面に硬化皮膜層を有し、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性、経済性に優れ、かつ、可視光には透過性で選択的に熱線を遮蔽する機能を有し、自動車の窓ガラス、サンルーフ等の熱線遮蔽性グレージング材に適した合成樹脂製積層体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を解決すべく、透明合成樹脂に熱線反射剤、熱線遮蔽剤、熱線吸収剤を配合し、さらに透明合成樹脂層上に種々の硬化皮膜層を形成させ、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性等の改良研究を重ねた。その結果、透明合成樹脂に特定形状のアルミニウム粉末を添加分散させ、該透明合成樹脂層上に特定組成の硬化皮膜層を形成させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、透明合成樹脂に特定形状の燐片状アルミニウム粉末を添加した樹脂組成物より射出成形により形成された透明合成樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜厚み1〜10μmのプライマー塗膜層(B)を形成し、該プライマー塗膜層(B)上に多官能アルコキシシランからなる塗膜厚み1〜10μmの硬化被膜層(C)を形成してなる合成樹脂製積層体(D)及びその製造方法にある。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)透明合成樹脂100重量部に対して、平均直径が1〜50μmで厚さが平均直径の1/200〜1/10の範囲の燐片状アルミニウム粉末を0.0005〜0.05重量部添加した樹脂組成物からなり、射出成形により形成された透明合成樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜厚み1〜10μmのプライマー塗膜層(B)が形成され、該プライマー塗膜層(B)上に多官能アルコキシシランからなる塗膜厚み1〜10μmの硬化被膜層(C)が形成されてなることを特徴とする合成樹脂製積層体(D)に係る。
【0008】
(2)透明合成樹脂層(A)が、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪族酸0〜2重量部、及び炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル0.01〜5重量部、及びリン系酸化防止剤0.001〜2重量部、及び窒素原子含有紫外線吸収剤0.01〜1重量部を含有してなる合成樹脂層であることを特徴とする上記(1)に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0009】
(3)透明合成樹脂層(A)が、熱可塑性ポリカーボネート樹脂からなる合成樹脂層であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0010】
(4)プライマー塗膜層(B)が、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンを含むベンゾフェノン系紫外線吸収剤を塗料中の不揮発分100重量部に対して5〜30重量部添加された熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜層であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0011】
(5)プライマー塗膜層(B)が、更に分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有する光安定剤を塗料中の不揮発分100重量部に対して0.1〜5重量部添加された熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜層であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0012】
(6)硬化皮膜層(C)は、下記多官能アルコキシシランコーティング組成物(CC)からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
(イ)下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシラン(d)
(化1)
1nSi(OR24-n (1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜8の置換または非置換の炭化水素基、R2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1または2)
(ロ)無水ケイ酸含有量が10〜50重量%で、粒径が4〜20nmのコロイダルシリカ(e)
(ハ)50重量%以下のアルコキシシリル基を含有するアクリル系および/またはビニル系有機共重合体(f)
(二)アミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)
および
(ホ)シリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)からなり、かつ(ロ)の配合量が(イ)100重量部に対して、50〜200重量部であり、(ハ)の配合量が、(イ)と(ロ)の合計100重量部に対して、0〜20重量部であり、(二)の配合量が、(イ)、(ロ)および(ハ)の合計量100重量部に対して、1.0〜5.0重量部であり、(ホ)の配合量が、(イ)、(ロ)、(ハ)および(二)の合計100重量部に対して、0〜35重量部である。
【0013】
(7)オルガノアルコキシシランが、上記式(1)において、n=1、R1は炭素数1〜8の置換基又は非置換の一価の炭化水素基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−1)であることを特徴とする上記(6)に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0014】
(8)オルガノアルコキシシランが、上記式(1)において、n=1、R1がアルキル基であるオルガノアルコキシシラン(d−2)を80〜97重量部と、R1が3,3,3−トリフルオロプロピル基であるオルガノアルコキシシラン(d−3)を20〜3重量部とからなることを特徴とする上記(6)に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0015】
(9)オルガノアルコキシシランが、上記式(1)でn=1のアルキルトリアルコキシシラン(d−4)を99〜97重量部と、n=2のジアルキルジアルコキシシラン(d−5)を1〜3重量部とからなるオルガノアルコキシシランであることを特徴とする上記(6)に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0016】
(10)オルガノアルコキシシランが、上記式(1)において、n=1で、R1が炭素数1または2のアルキル基で、R2が炭素数1〜5のアルキル基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−6)を80〜97重量部と、R1が炭素数3または4のアルキル基で、R2が炭素数1〜5のアルキル基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−7)を20〜3重量部とからなることを特徴とする上記(6)に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0017】
(11)無水ケイ酸を10〜50重量%含有し、かつ平均粒径が4〜7nmのコロイダルシリカ(e)からなるコーティング組成物(CC)であることを特徴とする上記(6)〜(10)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0018】
(12)射出成形により形成される透明合成樹脂層(A)とプライマー塗膜層(B)、プライマー塗膜層(B)と硬化皮膜層(C)との線膨張係数の差が、それぞれ32×10-5/℃以下であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0019】
(13)射出成形により形成される透明合成樹脂層(A)の厚みが、2〜70mmであることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0020】
(14)透明合成樹脂層(A)が、射出圧縮成形により形成した上記(1)〜(13)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0021】
(15)プライマー塗装層(B)と透明合成樹脂層(A)との間に、あるいは硬化被膜層(C)の面に、熱線回路、アンテナ、ブラックアウトの印刷部を有することを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0022】
(16)合成樹脂製積層体(D)の可視光線透過率が成形品3mm厚みで20〜80%であることを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【0023】
さらに、本発明は、(17)上記(1)〜(16)のいずれかに記載の合成樹脂製積層体からなることを特徴とする車輌用窓ガラス。
に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の合成樹脂製積層体は、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性、熱線遮蔽性、経済性に優れており、特に、可視光に対して優れた透過性を有し、選択的に熱線遮蔽機能を有するので、計器カバー、窓ガラス、サンルーフ、ランプレンズ、ミラー等の自動車用途、一般の窓ガラスや採光用屋根材等の建材用途、銘板等の用途に好適であるが、特に自動車用窓ガラスとして好適である。
また本発明の合成樹脂製積層体は、特定形状のアルミニウム粉末を使用することにより、合成樹脂製積層体は優れた熱線反射性を示し優れた熱線反射遮蔽性能を発現することができる。
また、硬化皮膜を形成する多官能性アルコキシシランとして特定のコーティング組成物を用いることにより、密着性に優れ、透明性、耐擦傷性、耐摩耗性、耐候性に優れた硬化皮膜が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における透明合成樹脂層(A)を構成する透明樹脂は、可視領域の光線透過率が高い透明な熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、3mm厚の板状成形体としたときのJIS R 3106記載による可視光透過率が50%以上で、JIS K7105記載によるヘイズが30%以下のものが挙げられる。具体的には、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ−4−メチルペンテン−1等を挙げることができる。これらの中でも、ポリカーボネートは耐衝撃性に優れるために好ましい。ポリカーボネートとしては、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族−脂肪族ポリカーボネートを用いることができるが、芳香族ポリカーボネートが好ましい。
【0026】
芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物、またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって作られる、分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。製造方法については、特に限定されるものでは無く、ホスゲン法(界面重合法)あるいは、溶融法(エステル交換法)等で製造することができる。さらに、溶融法で製造された末端のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネートも使用することができる。ポリカーボネートの分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、16,000〜40,000である。より好ましくは18,000〜32,000であり、最も好ましくは20,000〜28,000である。粘度平均分子量が16,000未満では機械的強度が不足し、40,000を越えると流動性が低下し、成形品外観に不良を生じやすく好ましくない。
【0027】
本発明で使用する燐片状アルミニウム粉末(以下、燐片状アルミ粉末、あるいは単にアルミ粉末と記すことがある)の平均直径は1〜50μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。燐片状アルミ粉末の厚さは、平均直径の1/200〜1/10の範囲のものが好ましい。燐片状アルミ粉末の粒径が細かくなるほど反射遮蔽効果が高くなる傾向があるが、あまり細かくなりすぎるとほんのわずかな添加量の変化で反射遮蔽効果が大きく変化するため製造上の点から好ましくない。一方、燐片状アルミ粉末の粒径が大きくなると多量に添加しなければ必要とする反射遮蔽効果が得られず、コストアップや物性低下を招く結果となり、また積層体の表面に燐片を散りばめたようなぎらついた外観となり好ましくない。
【0028】
また、上記燐片状アルミ粉末の添加量は、使用する燐片状アルミ粉末の形状および基材の厚みにより異なるが、積層体の可視光線透過率が20〜80%の範囲となるように適宜選択される。具体的には透明性合成樹脂100重量部に対して0.0005〜0.05重量部の範囲が好ましく、0.0007〜0.03重量部がより好ましい。可視光線透過率が20%未満では満足な明るさが得られず、80%を超えると満足できる熱線を反射する遮蔽効果が得られない。
【0029】
上記アルミ粉末は、粉塵爆発の危険があるため、通常、ミネラルスピリット、トルエン、芳香族系炭化水素など有機溶剤に分散されたアルミペーストとして、取引されている。アルミペースト中のアルミ粉末量は、55〜80重量%である。また、アルミペーストはアルミ粉末に粉砕する際に使用される潤滑油をステアリン酸とオレイン酸を用いることにより、2種類のタイプに分別される。ステアリン酸の場合はアルミ粉末との濡れ性が悪いことから、アルミ粉末が塗膜の表面近くに存在するリーフィングタイプと呼ばれるものがある。また、オレイン酸の場合はアルミ粉末との濡れ性が良いことから塗膜中にくまなく存在するノンリーフィングタイプと呼ばれるものがある。これらのうちノンリーフィングタイプの方が透明樹脂やプライマー塗膜との接着性が良好のため好適に使用される。
【0030】
アルミペーストの市販品としては、例えば、シルバーライン(株)製、SS−6246AR、SS−5000ARなどが挙げられる。 また、有機顔料をアルミ片に化学的に付着させた着色アルミペーストも好適に使用でき、上市品としては、例えば、シルバーライン(株)製のLEPC−2027(グリーン)、2061(ブルー)、2626(ゴールド)、2276(レッド)が挙げられる。
【0031】
本発明における透明合成樹脂層(A)を構成する合成樹脂には、顔料、染料、可塑剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができるが、次のような添加剤、すなわち炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪族酸、炭素数8〜22の飽和又は不飽和酸とペンタエリスリトールとのエステル、リン系酸化防止剤及び窒素原子含有紫外線吸収剤を配合することが好ましい。
【0032】
炭素数8〜22の飽和脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸があげられ、炭素数8〜22の不飽和脂肪酸としては例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、リノレン酸があげられる。特に飽和脂肪酸が好ましく、なかでもステアリン酸、ベヘン酸が好ましい。
【0033】
炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステルは、フルエステルが好ましい。炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸とペンタエリスリトールとのフルエステルとして、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラパルミネート等である。特に好ましくはペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0034】
リン系酸化防止剤としては、例えば、亜リン酸エステル中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/または炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル、亜リン酸あるいはテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイトから選ばれた少なくとも1種である。亜リン酸エステルの具体例としては、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリスノニルフェニルホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジターシャリーブチルフェニル)フッ化ホスファイト、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、モノノニルフェノールおよびジノニルフェノールからなる亜リン酸エステル、さらに式(V)に示したヒンダードフェノールを有する亜リン酸エステル等を挙げることができる。本発明においては、リン化合物として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、亜リン酸が好ましい。
【0035】
窒素原子含有紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤がよく、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、具体的には、例えば2−(2H―ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(5−メチルー2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチルー2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2―ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert―ブチルー2−ヒドロキシフェニル)―5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2‘−ヒドロキシー5−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert―アミルー2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α―ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、〔メチル−3−〔3−tert―ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)―4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコール〕縮合物などが例示される。これらのうち、2−(2H―ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2’−ヒドロキシー5−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチルー2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2―ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが好適に用いられる。
【0036】
トリアジン系紫外線吸収剤は、具体的には、トリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。
【0037】
ヒンダードアミン系紫外線吸収剤は、アミン系光安定剤であり、通常市販品のものであれば適用できる。通常ポリカーボネート樹脂の加水分解を促進しやすい傾向がありその使用は好まれないが、例えばトリアゾール系あるいはトリアジン系紫外線吸収剤と併用することにより相乗効果を生み出すことができる。
【0038】
本発明における透明合成樹脂層(A)を構成する樹脂に上記の添加剤を配合する場合の配合率は、合成樹脂100重量部に対し、炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸を0〜2重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステルを0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜2重量部、リン系酸化防止剤を0.001〜2重量部、好ましくは0.001〜1重量部である。炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸の配合率が0.1重量部未満であると添加効果が小さく、2重量部を超えると合成樹脂の耐加水分解性が低下したりする虞がある。炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステルの配合率が0.01重量部未満では滑剤としての効果が小さく、5重量部を超えると合成樹脂の耐加水分解性が低下する虞がある。また、リン系酸化防止剤の配合率が0.001重量部未満では、酸化防止効果が小さく、2重量部を超えると合成樹脂の耐加水分解性が低下することがある。また、窒素原子含有紫外線吸収剤0.01〜1重量部配合することが好ましい。
窒素原子含有紫外線吸収剤の配合率が0.01重量部未満では耐候性の改良効果が小さく、1重量部を超えると成形時の金型汚染が発生したりする虞があり、また経済性の点から不利である。
【0039】
本発明のプライマー塗膜層(B)を構成するプライマー塗料に使用される熱硬化性アクリル樹脂は、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキルメタクリレート類、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート類、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、アクリルニトリル、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、エチレングリコールジメタクリレートで例示されるビニル単量体の少なくとも1種に、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤の少なくとも1種を2〜50重量%含有させたものから誘導されるものであり、上記単量体及びシランカップリング剤を含有する溶液にジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド類またはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物から選択されるラジカル重合用開始剤を加え加熱下に反応させることにより容易に得られる。
【0040】
上記プライマー塗料には溶剤が使用される。この溶剤としては、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、キシレン、トルエン等が挙げることができる。このプライマー塗料は、通常、上記溶剤で希釈され、熱硬化性アクリル樹脂の5〜10重量%の溶液として使用される。
【0041】
上記プライマー塗料には紫外線吸収剤が配合されることが好ましい。プライマー塗料に配合される紫外線吸収剤は、熱硬化性アクリル樹脂と相容性の良好なベンゾフェノン系紫外線吸収剤がよく、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジエトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジプロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジブトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−エトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−プロポキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−4’−ブトキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン等が例示される。更に、紫外線吸収性能、プライマー塗料との相溶性、揮散性の点から2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが好適に用いられる。
【0042】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の添加量としては、熱硬化性アクリル樹脂塗料中の不揮発分100重量部に対して5〜30重量部、好ましくは8〜20重量部、さらに好ましくは10〜15重量部がよい。30重量部よりも多いと塗膜上に析出し外観不良となり、さらに熱硬化性アクリル樹脂の安定性が低下する。また5重量部よりも少ないと所望の耐候性が得られない。しかし、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの量が増えると、初期の黄色度が高くなるので、それを改善するためには2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの一部を熱硬化性アクリル樹脂と相溶性の良好な他のベンゾフェノン系紫外線吸収剤に置き換えることが好ましく、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンは、プライマー塗料に添加されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤の10〜100重量%の範囲内で使用される。2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンの配合割合が、10重量%未満であると十分な耐候性が得られない。
【0043】
更に、上記プライマー塗料に、分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有する光安定剤を添加することにより、耐候性が大幅に向上できる。使用される光安定剤としては、プライマー塗料に用いた溶剤に溶解し、かつ熱硬化性アクリル樹脂との相溶性が良く、また低揮散性のものが良い。添加量は熱硬化性アクリル塗料中の不揮発分100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部である。0.1重量部未満の場合には添加の効果が発現されず、一方、5重量部を超えて添加すると塗膜の密着性が低下する虞がある。
【0044】
上記光安定剤の具体例としては、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン(市販品としては商品名:サンドバー3055、クラリアント(株)製)、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン(市販品としては商品名:サンドバー3056、クラリアント(株)製)、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン(市販品としては商品名:サンドバー3058、クラリアント(株)製)、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(市販品としては商品名:スミソーブ577、住友化学工業(株)製)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(市販品としては商品名:サノールLS−765、三共(株)製)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(市販品としては商品名:アデカスタブLA−57、旭電化工業(株)製)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(市販品としては商品名:アデカスタブLA−52、旭電化工業(株)製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデカノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−67、旭電化工業(株)製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデカノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−62、旭電化工業(株)製)、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン(市販品としては商品名:サノールLS−440、三共(株)製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−63または63P、旭電化工業(株)製)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(市販品としては商品名:アデカスタブLA−68LD、旭電化工業(株)製)等が挙げられ、これらの光安定剤は2種以上併用しても良い。
【0045】
つぎに、本発明において上記プライマー塗膜層(B)の上に形成させる硬化皮膜層(C)は、下記多官能アルコキシシランコーティング組成物(CC)からなる。すなわち、該コーティング組成物(CC)は、
(イ)下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシラン(d)
(化2)
1nSi(OR24-n (1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜8の置換または非置換の炭化水素基、R2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1または2)
(ロ)無水ケイ酸含有量が10〜50重量%で、粒径が4〜20nmのコロイダルシリカ(e)
(ハ)50重量%以下のアルコキシシリル基を含有するアクリル系および/またはビニル系有機共重合体(f)
(二)アミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)
および
(ホ)シリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)からなり、かつ(ロ)の配合量が(イ)100重量部に対して、50〜200重量部であり、(ハ)の配合量が、(イ)と(ロ)の合計100重量部に対して、0〜20重量部であり、(二)の配合量が、(イ)、(ロ)および(ハ)の合計量100重量部に対して、1.0〜5.0重量部であり、(ホ)の配合量が、(イ)、(ロ)、(ハ)および(二)の合計100重量部に対して、0〜35重量部である。
【0046】
本発明における上記式(1)で表されるオルガノトリアルコキシシラン(d)の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランである。これらのオルガノシランは、1種類単独、もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0047】
本発明において、オルガノアルコキシシラン(d)は、以下のような組み合わせで使用することが特に好ましい。すなわち、上記式(1)において、n=1、R1が炭素数1〜8の非置換アルキル基であるオルガノアルコキシシラン(d−1)が80〜97重量%と、R1が3,3,3−トリフルオロプロピル基のオルガノアルコキシシラン(d−2)が20〜3重量%からなるオルガノアルコキシシランが好ましく使用され、耐候性及び耐摩耗性をより向上させることができる。この場合、オルガノアルコキシシラン(d−2)が3重量%未満では、コーティング組成物(CC)の耐候性及び耐摩耗性に対する改良効果が小さく、20重量%を超えると密着性が不十分となる傾向がある。
【0048】
オルガノアルコキシシラン(d−1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシランなどである。これらのオルガノトリアルコキシシランは、1種類単独、もしくは2種類以上を併用して使用することができる。オルガノアルコキシシラン(d−2)の具体例としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシランがある。
【0049】
また、上記式(1)において、n=1のアルキルトリアルコキシシラン(d−3)99〜97重量%と、n=2のジアルキルジアルコキシシラン(d−4)1〜3重量%とからなるオルガノアルコキシシランが好ましく使用され、硬化膜の伸びを向上し耐クラック性および耐候性を向上させることができる。ジアルキルジアルコキシシラン(d−4)の配合率が1重量%未満ではコーティング組成物(CC)の耐クラック性および耐候性の改良効果が小さく、3重量%を超えると架橋密度が低下し、耐候性が低下する傾向がある。
【0050】
上記のアルキルトリアルコキシシラン(d−3)の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン等を挙げることができる。これらのアルキルトリアルコキシシランは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
上記のジアルキルジアルコキシシラン(d−4)としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン等が挙げられる。これらのジアルキルジアルコキシシランは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
また、上記式(1)において、n=1で、R1が炭素数1または2のアルキル基、R2が炭素数1〜5のアルキル基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−5)80〜97重量%と、R1が炭素数3または4のアルキル基で、R2が炭素数1〜5のアルキル基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−6)20〜3重量%からなるオルガノアルコキシシランが好ましく使用される。このオルガノトリアルコキシシランは耐候性が向上する。(d−5)及び(d−6)の比率が前記範囲より外れるとコーティング組成物(CC)の耐候性改良効果が十分に発現されない虞がある。
【0053】
上記のオルガノトリアルコキシシラン(d−5)としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン等が例示でき、それらは単独又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
また、オルガノトリアルコキシシラン(d−6)としては、例えば、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリブトキシシラン等があり、それらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明における上記オルガノアルコキシシラン(d)は加水分解物であるポリオルガノシロキサンとしてコーティング組成物に使用することができる。加水分解は、公知の方法、例えば酸触媒存在下、該アルコキシシランの低級アルコール溶液に水を添加して行われる。低級アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が例示される。また、上記加水分解の際にコロイダルシリカの水性分散液を酸触媒とともに添加しても良い。このようにして得られるポリオルガノシロキサンは、1〜2量体成分が実質的に存在せず、6量体以上が65重量%以上であって、数平均重合度が8〜30であることが好ましい。
【0056】
本発明におけるコーティング組成物(CC)を構成するのコロイダルシリカ(e)には無水ケイ酸が10〜50重量%含有されており、コロイダルシリカの平均粒径は4〜20nmが好ましく、4〜7nmであることが特に好ましい。このようなコロイダルシリカ(e)の分散剤は、水または有機溶媒、さらに親水性有機溶媒、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;ジアセトンアルコール等の少なくとも1種と水との混合溶媒を用いることができる。これらの水系溶媒の中でも、水または水−メタノール混合溶媒が、分散安定性と、塗布後の分散媒の乾燥性の点で好ましい。
【0057】
コロイダルシリカを塩基性水溶液中で分散させた市販品として日産化学工業(株)のスノーテックス30、スノーテックス40、触媒化成工業(株)のカタロイドS30、カタロイドS40、酸性水溶液中で分散させた市販品として日産化学工業(株)のスノーテックスO、有機溶剤に分散させた市販品として日産化学工業(株)のMA−ST、IPA−ST、NBA−ST、IBA−ST、EG−ST、XBA−ST、NPC−ST、DMAC−ST等がある。
【0058】
本発明では、安定性に優れた分散体を得るとともに特に耐候性に優れた硬化皮膜層(C)を得るために、平均粒径が4〜20nm、特に好ましくは4〜7nmの範囲にあるコロイダルシリカを使用する。また、コロイダルシリカ(e)は、前記オルガノアルコキシシラン(d)100重量部に対して50〜200重量部、好ましくは70〜180重量部の範囲で使用するのが好ましい。
【0059】
本発明におけるコーティング組成物(CC)を構成しする50重量%以下のアルコキシシリル基を含有するアクリル系及び/またはビニル系単量体とこれら単量体と共重合可能な他の単量体との有機共重合体(f)は、アルコキシシリル基により熱硬化性アクリル樹脂からなるプライマー塗膜層(B)との接着性が向上し、耐熱性や耐久性も向上する。但し、アルコキシシリル基を含有する単量体の含有量が50重量%を越えると接着性が低下する。
【0060】
アルコキシシリル基を含有するアクリル系単量体としては、例えば、3−メタクロリキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロリキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクロリキシプロピルトリブトキシシラン、3−メタクロリキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、メタクロリキシメチルトリメトキシシラン、メタクロリキシメチルトリエトキシシラン、メタクロリキシメチルトリブトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリブトキシシラン、3−メタクロリキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクロリキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクロリキシプロピルメチルジブトキシシラン、メタクロリキシメチルメチルジメメトキシシラン、メタクロリキシメチルメチルジエトキシシラン、メタクロリキシメチルメチルジブトキシシラン、3−アクロリキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクロリキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクロリキシプロピルメチルジブトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジブトキシシランなどがあり、作業性、反応性、架橋性の点から3−メタクロリキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロリキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0061】
アルコキシシリル基を含有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジブトキシシラン、ビニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−ビニロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ビニロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ビニロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−ビニロキシプロピルメチルジエトキシシランなどがあり、作業性や反応性の点からビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−ビニロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
アルコキシシランと共重合可能な他の単量体としては、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアルキルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレングリコール、ジメタクリレートなどがある。
【0062】
上記有機共重合体(f)は、前記アルコキシシリル基を含有する単量体とこれと共重合しうる他の単量体との共重合体であり、共重合はこれらの単量体を含有する溶液にベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどのパーオキサイド類やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物から選択されるラジカル重合用触媒を加え、加熱して、反応させることによって得られる。該有機共重合体(f)は、前記オルガノアルコキシシラン(d)とコロイダルシリカ(e)からなる組成物100重量部に対し、0〜20重量部好ましくは2〜18重量部が配合される。有機共重合体(f)の配合量が20重量部を越えると、耐煮沸性試験で白化し、密着性も低下し、さらに耐候性試験においても白化し、塗膜が剥離する。
【0063】
本発明におけるコーティング組成物(CC)を構成するアミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)として、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート、ジメチルアニリンホルメート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート、トリメチルベンジルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムアセテートなどをあげることができる。
このアミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)は、
アルコキシシラン(d)、コロイダルシリカ(e)及び有機共重合体(f)からなる組成物100重量部に対し1〜5重量部、好ましくは1.5〜4重量部の範囲で使用される。アミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)の使用量が1重量部より少ないと皮膜の耐摩耗性が低く、5重量部を超えると皮膜の透明性が低下するので好ましくない。
【0064】
本発明におけるコーティング組成物(CC)を構成するもう一つの成分であるシリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)は、特開2001−139924号公報に記載された紫外線吸収剤を使用することができる。該紫外線吸収剤(h)は、下記式(2)で示されるベンゾフェノン系紫外線吸収モノマー(h1)、及び下記式(3)で示されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収モノマー(h2)から選択された少なくとも一種の紫外線吸収モノマー(h1h2)と、下記式(4)で示されるシリコーンマクロマー(h3)と、官能基含有共重合性ビニルモノマー(h4)と、官能基非含有共重合性ビニル化合物(h5)からなる重量平均分子量が10,000〜100,000の重合物である。
【0065】
【化3】

(2)
(式(2)中、R11は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルコキシル基を示す。R12は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、m1は0又は1を示す。R13は水素原子、又は低級アルキル基を示す。X1はエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
【0066】
【化4】

(3)
(式(3)中、R21 は水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を示す。R22は水素原子、又は炭素数1〜6の炭化水素基を示す。R23は炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のオキシアルキレン基を示し、m21は0又は1を示す。R24は炭素数1〜8のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜8のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜8のアルキレン基を示し、m22は0又は1を示す。R25は水素原子、又は低級アルキル基を示す。X2はエステル結合、アミド結合、エーテル結合、又はウレタン結合を示す。)
【0067】
【化5】

(4)
(式(4)中、R31は水素原子、又はメチル基を示す。R32は炭素数1〜6のアルキレン基、又は炭素数1〜6のオキシアルキレン基を示し、m31は0又は1を示す。R33は炭素数1〜6のアルキレン基、アミノ基を有する炭素数1〜6のアルキレン基、又はヒドロキシル基を有する炭素数1〜6のアルキレン基を示し、m32は0又は1を示す。nは1〜200の整数を示し、X3はエステル結合又はアミド結合を示す。)
【0068】
シリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)を構成する前記各成分の比率は、h1h2/h3/h4/h5=5〜50/5〜60/50〜80/5〜20(重量%)である。また、シリコーンマクロマー(h3)の重量平均分子量は200〜10,000であることが好ましい。シリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)は、オルガノトリアルコキシシラン(d)、コロイダルシリカ(e)、アルコキシシリル基を含有する有機共重合体(f)、アミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)の合計100重量部に対し、0〜35重量部の範囲で配合される。シリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)は所望に応じて配合されるが、配合量が35重量部より多いと硬化皮膜層(C)の線膨張係数が大きくなり好ましくない。
【0069】
上記のアルコキシシラン(d)、コロイダルシリカ(e)、有機共重合体(f)、アミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)、及びシリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)からなる硬化皮膜層(C)用のコーティング組成物(CC) の分散溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができ、分散溶媒としてはゾルの安定性や入手のし易さの観点から、水、或いは低級アルコールであるメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ケトン類であるメチルエチルケトン、ジアセチルアセトンなどを用いることが好ましい。又、本発明において前記溶媒効果を発現させるためには、組成物中の水分含有量が15%以下とすることが好ましい。15%を超えると水がシラノール基に選択的に配位するため、シラノール基の安定性が損なわれる。
【0070】
上記コーティング組成物(CC)の保存温度は、通常25℃以下、好ましくは15℃以下、更に好ましくは5℃以下である。25℃を超えると、保存期間が長い場合、加水分解・縮合反応が徐々に進行するので好ましくない。コーティング組成物(CC)を硬化させて硬化膜を形成させる際、硬化膜の硬度や耐擦傷性の向上、又は高屈折率化などの光学的機能性を付与させるために、公知の硬化触媒や金属酸化物及びその他の添加物を適宜加えても良い。
【0071】
硬化触媒の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、蟻酸ナトリウム、蟻酸カリウム、n−ヘキシルアミン、プロピオン酸カリウム、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセンのごとき塩基性化合物、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、アルミニウムアセチルアセトナート、過塩素酸アルミニウム、塩化アルミニウム、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、錫アセチルアセトナート、ジブトキシ錫オクチレートの如き金属化合物類、p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸の如き酸性化合物類が挙げられる。硬化触媒の添加量は、コーティング組成物(CC)100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。
【0072】
金属酸化物の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化鉄などが挙げられる。特に、耐擦傷性を目的とした硬化剤とする場合には、コロイダルシリカ(シリカゾル)が好適である。硬化剤として使用する場合の金属酸化物の添加量は、コーティング組成物(CC)100重量部に対して5〜500重量部、特に10〜200重量部であることが好ましい。これらの金属酸化物の存在下に縮合反応を行っても良く、また縮合反応後に加えても良い。
【0073】
本発明に関わるコーティング組成物(CC)を熱硬化性アクリル樹脂からなるプライマー塗膜層(B)上に塗装する方法は、塗装される成形品の形状や塗装目的に応じて、刷毛、ロール、ディッピング、流し塗り、スプレー、ロールコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーター、スクリーンプロセス、電着塗装、蒸着塗装等がある。
【0074】
プライマー塗膜層(B)上にコーティング組成物(CC)を塗布後、硬化して形成される硬化皮膜層(C)の厚さは、1〜10μmである。皮膜層の厚さが1μm未満であると表面硬化の効果が不十分になりやすく、10μmを超えても表面硬化の効果は更には向上し難く、クラックが発生し易く、コスト的に不利である。硬化皮膜層(C)の厚さは、より好ましくは2〜8μmである。
【0075】
本発明では、透明合成樹脂層(A)とプライマー塗膜層(B)、プライマー塗膜層(B)と硬化被膜層(C)との線膨張係数の差が、それぞれ32×10-5/℃以下であることが好ましい。それぞれの線膨張係数の差が32×10-5/℃以下であると、長期間にわたり各層間の密着性が保たれ、耐擦傷性や耐候性に優れた合成樹脂製積層体(D)を得ることができる。
【0076】
本発明の合成樹脂製積層体は、透明合成樹脂100重量部に対して、平均直径が1〜50μmで厚さが平均直径の1/200〜1/10の範囲の燐片状アルミ粉末を0.0005〜0.05重量部添加した樹脂組成物を、射出成形により透明合成樹脂成形体を形成し、該透明合成樹脂成形体の少なくとも一方の面に、熱硬化性アクリル樹脂からなるプライマー塗料を塗膜厚みが1〜10μmとなるように塗布してプライマー塗膜層(B)を形成し、該プライマー塗膜層(B)上に、多官能アルコキシシランからなるコーティング組成物を塗膜厚みが1〜10μmとなるように塗布し硬化して硬化皮膜層(C)を形成することにより製造することができる。
【0077】
射出成形により形成される透明合成樹脂層(A)は、厚みが2〜70mmであることか好ましい。特に、本発明の合成樹脂製積層体(D)が自動車用窓ガラスに用いられる場合の透明合成樹脂層(A)の厚みは、剛性、重量、透明性等の点より、好ましくは2〜10mmであり、より好ましくは2.5〜8mmである。透明合成樹脂層(A)の厚みが70mmを越えると外観が低下したり、成形時間が長くなるので好ましくない。また、透明合成樹脂層(A)の成形法としては、厚肉成形品のヒケを小さくでき、成形歪みや反りを低減でき、さらに、高度な面精度を出しやすい射出圧縮成形により形成することが特に好ましい。
【0078】
透明合成樹脂層(A)の面、すなわちプライマー塗装層(B)と透明合成樹脂層(A)との間に、あるいは硬化被膜層(C)の面には、グラビヤ印刷、平板印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、パット印刷およびスクリーン印刷等の通常の印刷工法により、熱線回路、アンテナ、文字、マーク、ブラックアウト等の印刷部を有することができる。印刷部に熱線回路が形成される場合、通常、印刷ペーストを用いて印刷する。印刷ペーストとしては、好ましくは、銀、カーボン、銅、ニッケル、クロムまたは金を含むペーストが用いられ、低抵抗性、コスト、印刷性の点から、より好ましくは、銀を含むペーストあるいは銀とカーボンを含むペーストが好ましい。印刷インキの密着性を向上させるためには、印刷インキに不飽和ポリエステル樹脂を溶剤で溶かした溶液を混入したインキを回路印刷の上に再度印刷することも可能である。印刷インキとしては、例えば、十條化工(株)製、商品名:HIPETインキ#9390が挙げられ、不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、東洋紡績(株)製、商品名:バイロン200が挙げられ、溶剤としては、例えば、メチルエチルケトンが挙げられる。印刷インキと溶液の混合比率は、例えば、重量比で3:1である。また印刷回路の酸化防止性を向上させるために、カーボン等の印刷インキを回路印刷の上に印刷することもできる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、特に断らない限り、以下に記す「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0080】
製造例1
(透明合成樹脂層(A)の製造)
芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ユーピロンS−3000、粘度平均分子量22,000)100部に対し、鱗片状アルミ粉末としてSS−7000AR(商品名、ミネラルスピリット36重量%含有アルミペースト、平均直径9.6μm、平均厚さ0.1μm、シルバーライン社製)を0.0028部(純アルミ分として0.0018部)、ペンタエリスリトールテトラステアレート(日本油脂(株)製、ユニスターH476)0.1部、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(旭電化(株)製、アデカスタブ2112)を0.02部、窒素原子含有紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(シプロ化成(株)製、シーソーブ709)を0.3部配合した樹脂組成物(a-1)、及び芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス製、商品名ユーピロンS−3000、粘度平均分子量22,000)100部に対し、鱗片状アルミ粉末として片SBT−554RD(商品名、ミネラルスピリッツ46重量%含有アルミペースト、平均直径17μm、平均厚さ0.68μm、シルバーライン社製)を0.0033部(純アルミ分として0.0018部)、ペンタエリスリトールテトラステアレート0.1部、ステアリン酸0.02部、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトを0.02部、窒素原子含有紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールを0.3部配合した樹脂組成物(a-2)を調製し、一軸のベント式押出機で押し出し、ペレット化した樹脂組成物(a-1)及び(a-2)を得た。(a-1)及び(a-2)のペレットを120℃の熱風乾燥機中で5時間以上乾燥した後、射出圧縮成形機(三菱重工(株)製1600MMIIIW、240オンス)にサンルーフ形状(600mm×400mm、厚み5mm)のモデル型を装備し、可動金型部を操作して型締めし、そして、溶融樹脂の温度を300℃、金型温度を70゜C、金型の保持圧力を50MPaに設定した後、射出速度200mm/secにてキャビティ内に溶融樹脂を射出した。そして、キャビティ内の樹脂を冷却、固化させ、次いで、型開きを行って透明合成樹脂層(A)となる成形品を取り出した。ここで、樹脂組成物(a-1)から成形された透明合成樹脂層をAA−1A(以下、単に(AA−1A)と略記する)、樹脂組成物(a-2)から成形された透明合成樹脂層をAA2A(以下、単に(AA−2A)と略記する)とする。
【0081】
製造例2
(比較例用透明合成樹脂層の製造)
芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ユーピロンS−3000、粘度平均分子量22,000)100部に対し、鱗片状アルミ片としてSS−760−20C(商品名、ミネラルオイル20重量%含有アルミペースト、平均直径54μm、平均厚さ0.5μm、シルバーライン社製)を0.0022部(純アルミ分として0.0018部)添加した以外は、製造例1と全く同一手順により比較例用透明合成樹脂層AA-1B(以下、単に(AA-1B)と略記する)を成形した。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ユーピロンS−3000、粘度平均分子量22,000)100部に対し、鱗片状アルミ片のかわりに球形状アルミ片ESS−909AR(商品名、ミネラルスピリット12重量%含有アルミペースト、平均粒子径5μm、シルバーライン社製)を0.002部(純アルミ分として0.0018部)添加した以外は、製造例1と全く同一手順により比較例用透明合成樹脂層AA−2B(以下、単に(AA−2B)と略記する)を成形した。
さらに、芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名ユーピロンS−3000、粘度平均分子量22,000)に鱗片状アルミ片を添加しない以外は、製造例1と全く同一手順により比較例用透明合成樹脂層AA−3B(以下、単に(AA−3B)と略記する)を成形した。
【0082】
製造例3
(プライマー塗膜層(B)用プライマー塗料の製造)
ジムロート型コンデンサー付き500mlセパラブルフラスコにγーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40部、メチルメタクリレート40部、エチルアクリレート5部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート10部、エチレングリコールジメタクリレート0.2部及び重合触媒としてアゾビスイソブチルニトリルを0.5部ならびに溶剤としてジアセトンアルコール20部、エチレングリコールモノメチルエーテルを80部仕込み窒素気流下にて80〜90℃で5時間攪拌した。得られた熱硬化性アクリル樹脂溶液の粘度は38500cst、また該共重合体中のアルコキシシリル基含有量は40重量%であった。次に、得られた樹脂溶液を不揮発分10%になる様、ジアセトンアルコールとエチレングリコールモノメチルエーテルの比率を20/80とした混合溶剤にて調整した。この調整にて得られたプライマー塗料(B-1)の粘度は20〜40cstであった。このプライマー塗料(B-1)に、塗料中の不揮発成分100部に対し、紫外線吸収剤として2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンを15部配合し、プライマー塗料BB−1(以下、単に(BB−1)と略記することがある)を得た。
また、プライマー塗料(B-1)に、塗料中の不揮発成分100部に対し、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンを10部、ヒンダードアミン構造を有する光安定剤としてアデカスタブLA−62(旭電化工業(株))を10部配合し、プライマー塗料BB−2(以下、単に(BB−2)と略記することがある)を得た。
【0083】
合成例1
(有機共重合体(f−1)の調整)
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン20部に、これと共重合可能な単量体としてメチルメタクリレート58部、エチルアクリレート6部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート11部、エチレングリコールジメタクリレート0.2部及び重合触媒としてのアゾビスイソブチロニトリル0.5部、ジアセトンアルコール100部を配合し、窒素気流下に80〜90℃で5時間加熱撹拌し、粘度42,200cpsで、アルコキシシリル基20重量%を含有する単量体含有量の有機共重合体f−1(以下、単に(f−1)と略記することがある)を得た。
【0084】
参考例1
(コーティング組成物CC-1A、CC-2Aの製造)
表1に示すようにメチルトリメトキシシラン(d−1)(以下、単に(d−1)と略記することがある)と3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(d−2)(以下、単に(d−2)と略記することがある)の配合率を変化させ、酢酸1部を混合した後、氷浴で冷却し攪拌を行いながら温度を0〜10℃に保持し、次いでスノーテックス30(日産化学工業(株)製コロイダルシリカ SiO230wt%、平均粒径10〜20nm)84部を滴下した。滴下後温度を10℃に保持し4時間攪拌を行った後、更にスノーテックスIBA−ST(日産化学工業(株)製コロイダルシリカ SiO225〜26wt%、平均粒子径10〜20nm)84部を滴下し、20℃で12時間攪拌を行い熟成を行った。次に、酢酸セロソルブ45部、イソブチルアルコール50部及びKP−341(信越化学工業(株)製ポリオキシアルキレングリコールジメチルシロキサン共重合体)0.02部を滴下混合し、更に硬化触媒としてテトラメチルアンモニウムアセテートを2部滴下し混合しコーティング組成物を調製した。調製後、高分子タイプの紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製XL−183 50wt%)を該組成物中の樹脂分100部に対して10部添加し、コーティング組成物CC−1AとCC−2A(以下、単に(CC−1A)、(CC−2A)と略記することがある)を製造した。
【0085】
参考例2
(コーティング組成物CC−1B、CC−2Bの製造)
メチルトリメトキシシラン(d−1)と3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(d−2)との配合率を表1のように変えた以外は、参考例1と全く同一条件でコーティング組成物CC−1BとCC−2B(以下、単に(CC−1B)、(CC−2B)と略記することがある)を製造した。
【0086】
参考例3
(コーティング組成物CC−3A、CC−4Aの製造)
参考例1(CC−1A),(CC−2A)の製造において3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(d−2)をジメチルジメトキシシラン(d−4)(以下、単に(d−4)と略記することがある)に替えて配合率を表2のように変えた以外は、参考例1と全く同一条件でコーティング組成物CC−3AとCC−4A(以下、単に(CC−3A)、(CC−4A)と略記することがある)を製造した。
【0087】
参考例4
(コーティング組成物CC−3BとCC−4Bの製造)
メチルトリメトキシシラン(d−1)とジメチルジメトキシシラン(d−4)との配合率を表2のように変えた以外は、参考例1と全く同一条件でコーティング組成物CC−3BとCC−4B(以下、単に(CC−3B)、(CC−4B)と略記することがある)を製造した。
【0088】
参考例5
(コーティング組成物CC−5AとCC−6Aの製造)
参考例1(CC−1A),(CC−2A)の製造において3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(d−2)をプロピルトリメトキシシラン(d−6)(以下、単に(d−6)と略記することがある)に替えて配合率を表3のように変えた以外は、参考例1と全く同一条件でコーティング組成物CC−5AとCC−6A(以下、単に(CC−5A)、(CC−6A)と略記することがある)を製造した。
【0089】
参考例6
(コーティング組成物CC−5BとCC−6Bの製造)
メチルトリメトキシシラン(d−1)とプロピルトリメトキシシラン(d−6)との配合率を表3のように変えた以外は、参考例1と全く同一条件でコーティング組成物CC−5BBとCC−6B(以下、単に(CC−5B)、(CC−6B)と略記することがある)を製造した。
【0090】
参考例7
(コーティング組成物CC−7AとCC−8A、コーティング組成物CC−7Bの製造)
メチルトリメトキシシラン(d−1)(以下、単に(d−1)と略記することがある)100部に、酢酸1部を混合した後、氷浴で冷却し攪拌を行いながら温度を0〜10℃に保持し、次いで表4に示した平均粒径のコロイダルシリカ(e)84部を滴下した。滴下後温度を10℃に保持し4時間攪拌を行った後、更にコロイダルシリカ(e)を84部を滴下し、20℃で12時間攪拌を行い熟成を行った。以後、参考例1と全く同一条件でコーティング組成物CC−7AとCC−8A(以下、単に(CC−7A)、(CC−8A)と略記することがある)、及びコーティング組成物CC−7B(以下、単に(CC−7B)と略記することがある)を製造した。
【0091】
参考例8
(コーティング組成物CC−9A、CC−10Aの製造)
メチルトリメトキシシラン(d−1)100部と酢酸1部を混合した後、氷浴で冷却し攪拌を行いながら温度を0〜10℃に保持し、次いでスノーテックス30(日産化学工業(株)製コロイダルシリカ SiO2 30wt%、平均粒径10〜20nm)84部を滴下した。滴下後温度を10℃に保持し4時間攪拌を行った後、更にスノーテックスIBA−ST(日産化学工業(株)製コロイダルシリカ SiO225〜26wt%、平均粒子径10〜20nm)84部を滴下し、20℃で12時間攪拌を行い熟成を行った。その後、上記(有機共重合体(f-1)の調整)で得た共重合体を、表5に示した比率で配合し、次に、酢酸セロソルブ45部、イソブチルアルコール50部及びKP−341(商品名信越化学工業(株)製ポリオキシアルキレングリコールジメチルシロキサン共重合体)0.02部を滴下混合し、更に硬化触媒としてテトラメチルアンモニウムアセテートを2部滴下し混合し塗料組成物を調製した。調製後、高分子タイプの紫外線吸収剤(一方社油脂工業(株)製XL−183 50wt%)を、該組成物中の樹脂分100部に対して10部添加しコーティング組成物CC−9A、CC−10A(以下、単に(CC−9A)、(CC−10A)と略記することがある)を製造した。
【0092】
参考例9
(コーティング組成物CC−8B、CC−9Bの製造)
上記合成例1で得た有機共重合体(f−1)の配合率を表5のように変えた以外は、参考例1と全く同一条件でコーティング組成物CC−8B,CC−9B(以下、単に(CC−8B)、(CC−9B)と略記することがある)を製造した。
【0093】
以下の実施例、比較例で用いた評価、試験方法は次の通りである。
【0094】
(1)熱線遮蔽効果:第3図に示す測定装置を用いて以下の要領で行った。即ち、熱がこもらないように側壁に通気孔を有するボックス11の上壁開口部12を覆うように試験片13(サンルーフ成形品切り出し片)を置き、その上方約35cmに125Wの赤外線ランプ14によって試験片13を照明し、試験片から16cmの間隔をあけてボックス内に設置された熱吸収板(両面黒色の鉄板)15によって試験片を透過した熱線を吸収させ、この熱吸収板の温度を熱電対16によって経時的に測定し、温度が変化しない平衡点を求めたものである。
【0095】
(2)全光線透過率と曇価:日本電色工業のヘーズメーターにて試験片の全光線透過率(%)、曇価(%)を測定した。
【0096】
(3)初期密着性:JIS K5400に準拠し、サンプルをカミソリの刃で2mm間隔に6本ずつ切れ目をいれて25個の碁盤目をつくり、市販のセロテープ(登録商標)をよく密着させた後、90°手前方向に急激に剥がした時、塗膜が全く剥離しないものを合格、1個以上の碁盤目の剥離したものを不合格とした。
【0097】
(4)テーバー摩耗性:ASTM−D1044に準拠し、テーバー摩耗性試験機にて摩耗輪CS−10Fを装着し、荷重500g下で500回転後のヘイズ(%)を測定し、試験前のヘイズを引いた値ΔH(%)を示した。なお、ヘイズは日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH−2000にて測定した。
【0098】
(5)耐候性:JIS K5400に準拠し、カーボンアーク式サンシャインウェザーメーターにて4000時間処理し、次の評価を行った。
(5−1)耐候塗膜密着性:塗膜が剥離しないものを合格、剥離したものを不合格とした。
(5−2)耐候黄変度:JIS Z―8722に準拠し、日本電色工業製分光式色彩計SE−2000にて測定した。黄変度5以下を合格、5をこえるものを不合格とした。
【0099】
実施例1〜2、比較例1〜4
上記製造例1で得られた透明合成樹脂層AA−1A、AA−1B、AA−2Bに、製造例2で得られたプライマー塗料を乾燥塗膜厚が2〜5μmになる様フロー方法により塗布し、120℃にて30分間硬化させた後、表1に示すようにメチルトリメトキシシラン(d−1)(以下、単に(d−1)と略記することがある)と3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(d−2)(以下、単に(d−2)と略記することがある)の配合率を変化させたコーティング組成物CC−1A、CC−2A、CC−1B、CC−2Bを塗布し、室温で20分間自然乾燥させた後、130℃、1時間硬化させて硬化皮膜層を有する合成樹脂製積層体を得た。得られた合成樹脂製積層体の評価結果を表1に示した。
【0100】
実施例3〜4、比較例5〜8
上記製造例1で得た透明合成樹脂層AA−2A、AA−3Bに、製造例2で得られたプライマー塗料を乾燥塗膜厚が2〜5μmになる様フロー方法により塗布し、120℃にて30分間硬化させた後、表2に示すようにメチルトリメトキシシラン(d−1)とジメチルジメトキシシラン(d−4)の配合率を変化させたコーティング組成物CC−3A、CC−4A、CC−3B、CC−4Bを塗布し、実施例1と同様にして硬化皮膜層を有する合成樹脂製積層体を得た。得られた合成樹脂製積層体の評価結果を表2に示した。また、実施例3及び実施例4の合成樹脂製積層体は、透視歪みもなく、乗用車の窓ガラスとして使用できるものであった。
【0101】
実施例5〜6、比較例9〜12
上記製造例1で得た透明合成樹脂層AA−1A、AA−2Bに、製造例2で得られたプライマー塗料を乾燥塗膜厚が2〜5μmになる様フロー方法により塗布し、120℃にて30分間硬化させた後、表3に示すようにメチルトリメトキシシラン(d−1)とプロピルトリメトキシシラン(d−6)(以下、単に(d−6)と略記することがある)の配合率を変化させたコーティング組成物CC−5A、CC−6A、CC−5B、CC−6Bを塗布し、実施例1と同様にして硬化皮膜層を有する合成樹脂製積層体を得た。得られた合成樹脂製積層体を前記方法で評価し、評価結果を表3示した。
【0102】
実施例7〜8、比較例13〜15
上記製造例1で得た透明合成樹脂層AA−2A、AA−3Bに、製造例2で得られたプライマー塗料を乾燥塗膜厚が2〜5μmになる様フロー方法により塗布し、120℃にて30分間硬化させた後、メチルトリメトキシシラン(d−1)100部に、酢酸1部を混合した後、氷浴で冷却し攪拌を行いながら温度を0〜10℃に保持し、次いで表4に示した平均粒径のコロイダルシリカ(e)84部を滴下した。滴下後温度を10℃に保持し4時間攪拌を行った後、更にコロイダルシリカ(e)84部を滴下し、20℃で12時間攪拌し、熟成を行い、以後、参考例1と同一条件で製造したコーティング組成物CC-7A、CC-8A、CC-7Bを塗布し、実施例1と同様にして硬化皮膜層を有する合成樹脂製積層体を得た。得られた合成樹脂製積層体の評価結果を表4に示した。また、実施例7及び実施例8の合成樹脂製積層体は、透視歪みもなく、乗用車の窓ガラスとして使用できるものであった。
【0103】
実施例9〜10、比較例16〜19
上記製造例1で得た透明合成樹脂層AA−1A、AA−1B、AA−2B、に、製造例2で得られたプライマー塗料を乾燥塗膜厚が2〜5μmになる様フロー方法により塗布し、120℃にて30分間硬化させた後、表5に示したコーティング組成物CC−9A、CC−10A、CC−8B、CC−9Bを塗布し、実施例1と同様にして硬化皮膜層を有する合成樹脂製積層体を得た。得られた合成樹脂製積層体の評価結果を表5に示した。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明合成樹脂製積層体からなる自動車用サンルーフの成形品の概要を示す平面図である。
【図2】図2のA−A切断断面の説明図である。
【図3】熱線遮蔽試験片(サンルーフ成形品の切り出し片)の熱線遮蔽効果の測定に用いた装置の概略図である。
【符号の説明】
【0110】
1 熱線遮蔽性合成樹脂層
2 プライマー塗膜層
3 硬化皮膜層
4 ブラックアウト印刷部
11 ボックス
12 上壁開口
13 試験片
14 125W赤外線ランプ
15 熱線吸収板
16 熱電対
17 記録計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明合成樹脂100重量部に対して、平均直径が1〜50μmで厚さが平均直径の1/200〜1/10の範囲の燐片状アルミニウム粉末を0.0005〜0.05重量部添加した樹脂組成物からなり、射出成形により形成された透明合成樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜厚み1〜10μmのプライマー塗膜層(B)が形成され、該プライマー塗膜層(B)上に多官能アルコキシシランからなる塗膜厚み1〜10μmの硬化被膜層(C)が形成されてなることを特徴とする合成樹脂製積層体(D)。
【請求項2】
透明合成樹脂層(A)が、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪族酸0〜2重量部、及び炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル0.01〜5重量部、及びリン系酸化防止剤0.001〜2重量部、及び窒素原子含有紫外線吸収剤0.01〜1重量部を含有してなる合成樹脂層であることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項3】
透明合成樹脂層(A)が、熱可塑性ポリカーボネート樹脂からなる合成樹脂層であることを特徴とする請求項1または2に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項4】
プライマー塗膜層(B)が、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンを含むベンゾフェノン系紫外線吸収剤を塗料中の不揮発分100重量部に対して5〜30重量部添加された熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項5】
プライマー塗膜層(B)が、更に分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有する光安定剤を塗料中の不揮発分100重量部に対して0.1〜5重量部添加された熱硬化性アクリル樹脂からなる塗膜層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項6】
硬化皮膜層(C)は、下記多官能アルコキシシランコーティング組成物(CC)からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
(イ)下記式(1)で示されるオルガノアルコキシシラン(d)
(化1)
1nSi(OR24-n (1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜8の置換または非置換の炭化水素基、R2は炭素数1〜5のアルキル基、nは1または2)
(ロ)無水ケイ酸含有量が10〜50重量%で、粒径が4〜20nmのコロイダルシリカ(e)
(ハ)50重量%以下のアルコキシシリル基を含有するアクリル系および/またはビニル系有機共重合体(f)
(二)アミンカルボキシレート及び/又は第4級アンモニウムカルボキシレート(g)
および
(ホ)シリコーン含有高分子紫外線吸収剤(h)からなり、かつ(ロ)の配合量が(イ)100重量部に対して、50〜200重量部であり、(ハ)の配合量が、(イ)と(ロ)の合計100重量部に対して、0〜20重量部であり、(二)の配合量が、(イ)、(ロ)および(ハ)の合計量100重量部に対して、1.0〜5.0重量部であり、(ホ)の配合量が、(イ)、(ロ)、(ハ)および(二)の合計100重量部に対して、0〜35重量部である。
【請求項7】
オルガノアルコキシシランが、上記式(1)において、n=1、R1は炭素数1〜8の置換基又は非置換の一価の炭化水素基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−1)であることを特徴とする請求項6に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項8】
オルガノアルコキシシランが、上記式(1)において、n=1、R1がアルキル基であるオルガノアルコキシシラン(d−2)を80〜97重量部と、R1が3,3,3−トリフルオロプロピル基であるオルガノアルコキシシラン(d−3)を20〜3重量部とからなることを特徴とする請求項6に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項9】
オルガノアルコキシシランが、上記式(1)でn=1のアルキルトリアルコキシシラン(d−4)を99〜97重量部と、n=2のジアルキルジアルコキシシラン(d−5)を1〜3重量部とからなるオルガノアルコキシシランであることを特徴とする請求項6に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項10】
オルガノアルコキシシランが、上記式(1)において、n=1で、R1が炭素数1または2のアルキル基で、R2が炭素数1〜5のアルキル基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−6)を80〜97重量部と、R1が炭素数3または4のアルキル基で、R2が炭素数1〜5のアルキル基であるオルガノトリアルコキシシラン(d−7)を20〜3重量部とからなることを特徴とする請求項6に記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項11】
無水ケイ酸を10〜50重量%含有し、かつ平均粒径が4〜7nmのコロイダルシリカ(e)からなるコーティング組成物(CC)であることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項12】
射出成形により形成される透明合成樹脂層(A)とプライマー塗膜層(B)、プライマー塗膜層(B)と硬化被膜層(C)との線膨張係数の差が、それぞれ32×10-5/℃以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項13】
射出成形により形成される透明合成樹脂層(A)の厚みが、2〜70mmであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項14】
透明合成樹脂層(A)が、射出圧縮成形により形成した請求項1〜13のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項15】
プライマー塗装層(B)と透明合成樹脂層(A)との間に、あるいは硬化被膜層(C)の面に、熱線回路、アンテナ、ブラックアウトの印刷部を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項16】
合成樹脂製積層体(D)の可視光線透過率が成形品3mm厚みで20〜80%であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の合成樹脂製積層体(D)。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の合成樹脂製積層体からなることを特徴とする車輌用窓ガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−44171(P2006−44171A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231519(P2004−231519)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】