説明

吸音材及びその製造方法

【課題】軽量性に優れると共に剛性が高く、自動車のエンジンルームにおけるフードサイレンサーや、ダッシュサイレンサーとして好適な吸音材を提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォーム11と、前記ポリウレタンフォーム11の片面に積層接着された表面材21と、前記ポリウレタンフォーム11の前記表面材21とは反対側の面に積層接着された熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31とで吸音材を構成した。前記吸音材の曲げ剛性は6〜10N/25mmである。前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31における前記ポリウレタンフォーム11とは反対側の面にも表面材を積層接着してもよい。前記表面材21は不織布が好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の分野で吸音材が用いられている。例えば、自動車の分野では、エンジンルームのボンネット裏側に配設されるフードサイレンサーや車室内との境界に配設されるダッシュサイレンサーなどの吸音材がある。
【0003】
吸音材の多くは、表面材と基材を積層して接着した構造からなる。前記吸音材の表面材としては、ホットメルト樹脂や熱硬化性樹脂などを塗布した不織布が一般的であり、また基材としては、熱硬化性樹脂を含有するフェルトやグラスウールなどが一般的である。
【0004】
従来における吸音材の製造方法は、ホットメルト樹脂や熱硬化性樹脂などを塗布した不織布と、熱硬化性樹脂を含有するフェルトやグラスウールなどを積層し、熱プレスすることにより行われている。
【0005】
しかし、従来の吸音材及びその製造方法にあっては、基材が熱硬化性樹脂を含むフェルトやグラスウールのみからなるため、吸音材が重くなる問題がある。また、吸音材を軽量とするために基材としてポリウレタンフォームを用いる方法もあるが、その場合には熱硬化性樹脂を含むフェルトやグラスウールからなる基材を用いる吸音材と比較すると、剛性面で劣り、吸音材の使用場所等によっては吸音材を正しく保持できないこともある。
【特許文献1】特開2004−106477号公報
【特許文献2】特開2004−27383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、軽量性に優れると共に剛性の高い吸音材及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポリウレタンフォームと、前記ポリウレタンフォームの片面に積層接着された表面材と、前記ポリウレタンフォームの前記表面材とは反対側の面に積層接着された熱硬化性樹脂含有硬化フェルトよりなることを特徴とする吸音材に係る。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記吸音材の曲げ剛性が6〜10N/25mmであることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記ポリウレタンフォームの片面と前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルトにおける前記ポリウレタンフォームとは反対側の面にそれぞれ前記表面材が積層接着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記表面材が不織布からなることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、撥水剤の水性エマルジョンに液状バインダーの触媒を混合してなる触媒混合エマルジョンを表面材に含浸させて触媒混合エマルジョン含浸表面材を得る工程と、ポリウレタンフォームの両面に、触媒未含有の液状バインダーを塗布して触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームを得る工程と、熱硬化性樹脂を含有し該熱硬化性樹脂の少なくとも一部が未硬化状態にある熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトを、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームの片面に積層し、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームにおける前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトとは反対側の面に前記触媒混合エマルジョン含浸表面材を積層する工程と、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトと前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームと前記触媒混合エマルジョン含浸表面材との積層体を熱プレスすることにより、前記液状バインダーを硬化させて前記積層体を一体に接着すると共に前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトの前記熱硬化性樹脂を硬化させて賦形する熱プレス工程と、よりなることを特徴とする吸音材の製造方法に係る。
【0012】
請求項6の発明は、請求項5において、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトと、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームと、前記触媒混合エマルジョン含浸表面材の積層工程時に、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトにおける前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームとは反対側の面にも前記触媒混合エマルジョン含浸表面材を積層し、その後に熱プレスを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、吸音材がポリウレタンフォームと、前記ポリウレタンフォームの片面に積層接着された表面材と、前記ポリウレタンフォームの前記表面材とは反対側の面に積層接着された熱硬化性樹脂含有硬化フェルトよりなり、ポリウレタンフォームと熱硬化性樹脂含有硬化フェルトが吸音材の基材を構成することになるため、基材が熱硬化性樹脂含有硬化フェルトのみからなる場合や、熱硬化性樹脂含有硬化グラスウールのみからなる場合と比べて吸音材が軽量となる。さらに、本発明の吸音材は、ポリウレタンフォームのみで吸音材の基材が構成される場合と比べ、熱硬化性樹脂含有硬化フェルトの存在によって剛性が高くなる。
【0014】
請求項2の発明によれば、吸音材の曲げ剛性が6〜10N/25mmであるため、吸音材の形状保持性が良好となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルトの表面に表面材が積層接着されているため、熱硬化性樹脂含有硬化フェルトを保護することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、表面材が不織布からなるため、音が不織布を通ってポリウレタンフォームに入射し易くなり、ポリウレタンフォームによって吸音を良好に行うことができる。
【0017】
請求項5及び6の発明によれば、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームは、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト及び前記触媒混合エマルジョン含浸表面材と積層されて熱プレスされるまで液状バインダーが接着作用を発揮せず、取り扱いが容易である。しかも熱プレスによって接着と賦形の両方を行うため、軽量、かつ形状保持可能な剛性を有する吸音材を、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の第一実施形態に係る吸音材の断面図、図2は第一実施形態に係る吸音材の製造時に触媒混合エマルジョンを表面材に含浸させる際を示す概略図、図3は同第一実施形態に係る吸音材の製造時に触媒未含有の液状バインダーをポリウレタンフォームの両面に塗布する際を示す概略図、図4は同第一実施形態に係る吸音材の製造時における積層及び熱プレスの一例を示す断面図、図5は本発明の第二実施形態に係る吸音材の断面図、図6は第二実施形態に係る吸音材の製造時における積層及び熱プレスの一例を示す断面図である。
【0019】
図1に示す第一実施形態に係る吸音材10は、ポリウレタンフォーム11と、前記ポリウレタンフォーム11の片面に積層接着された表面材21と、前記ポリウレタンフォーム11の前記表面材21とは反対側の面に積層接着された熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31とからなり、自動車のエンジンルーム用として好適なものである。前記ポリウレタンフォーム11と熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31は、吸音材10の基材に相当する。
【0020】
前記ポリウレタンフォーム11は、軟質スラブポリウレタンフォームをシート状に裁断したものが好ましい。前記軟質スラブポリウレタンフォームは、通常、連続コンベアー上に軟質ポリウレタン発泡原液を流して、断面が角形又はカマボコ形に連続発泡させた後、所定長さに裁断したもので、セル(気泡)の連通により通気性が高く、しかも安価なため、本発明における吸音材の構成部材として好適である。前記軟質スラブポリウレタンフォームは、より良好な通気性及び軽量性を得るため、密度5〜20kg/mのものが、特に好ましい。また、前記吸音材10におけるポリウレタンフォーム11は、適宜の厚みとされるが、例として10〜50mmを挙げる。
【0021】
前記表面材21は、適宜の材質とされるが、音の通過し易さなどから不織布が好ましい。不織布としては、適宜のものを使用できるが、前記吸音材10がエンジンルーム用の場合には、エンジンルーム内の高温に耐えられるよう、耐熱性に優れるポリエステル繊維の不織布が好ましい。特には目付量30〜100g/mのニードルパンチされたポリエステル繊維スパンボンド不織布からなるものが好ましい。また、前記表面材21には、撥水剤を分散させるのが好ましい。特に走行中と停車中とで温度差が大きい自動車のエンジンルームのように結露を生じ易い場所、あるいは水分が付着し易い場所に用いられる吸音材にあっては、前記表面材21に撥水剤を分散させて撥水性を付与するのが好ましい。前記表面材21に分散する撥水剤としては、適宜のものを使用可能であるが、前記吸音材10が自動車のエンジンルーム用の場合には、耐熱性の良好なものが好ましく、特にフッ素樹脂が好ましい。前記撥水剤は水性エマルジョンにして表面材21に含浸させ、吸音材製造時の熱プレスによってエマルジョンの水分を蒸発させることによって表面材21への撥水材の分散固定が行われる。
【0022】
前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31は、熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトの熱硬化性樹脂を硬化させたものをいう。また、本発明において、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトとは、繊維成分に熱硬化性樹脂を含有し、該含有熱硬化性樹脂の少なくとも一部が未硬化状態にあるものをいう。前記繊維成分としては、羊毛、綿、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、カーボン繊維、ガラスウール等の有機、無機系からなる天然繊維または合成繊維あるいは金属繊維等を挙げることができる。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール(フェノール、あるいはクレゾール、キシレノール、レゾルシン、ビスフェノールAなどのフェノール誘導体でもよい。)と、ホルムアルデヒド(ホルムアルデヒド、あるいはパラホルムアルデヒド、ホルマリン、トリオキサンなどのホルムアルデヒドの等価品であってもよい。)を、酸触媒(シュウ酸、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸など)で反応させることにより得られるノボラック型フェノール樹脂、あるいはノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂との混合物、またはポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。一般的には、良好な硬化性などの点からフェノール樹脂が用いられる。前記熱硬化性樹脂は、繊維成分100重量部に対して10〜60重量部、好ましくは20〜50重量部とされる。なお、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトは公知のものを用いることができる。
【0023】
前記ポリウレタンフォーム11と前記表面材21の界面K1及び前記ポリウレタンフォーム11と前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31との界面K2は、液状バインダーの硬化によって接着されている。前記液状バインダーとしてはイソシアネート接着剤が好ましい。さらにイソシアネート接着剤としては、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)が、良好な耐熱性及び扱いやすさの点で好ましい。前記イソシアネート接着剤は、触媒の存在下、水分によって硬化し、接着性を発揮する。
【0024】
次に前記吸音材10の製造方法について一実施形態を説明する。前記吸音材10の製造方法は、液状バインダーの触媒含浸表面材を得る工程、触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームを得る工程、積層工程、熱プレス工程よりなる。
【0025】
液状バインダーの触媒含浸表面材を得る工程では、まず、触媒混合エマルジョンを調製する工程を行う。触媒混合エマルジョン調製工程では、前記撥水剤の水性エマルジョンに液状バインダーの触媒を混合する。液状バインダーがイソシアネート接着剤の場合、液状バインダーの触媒としては、イソシアネート接着剤の触媒が用いられる。前記イソシアネート接着剤の触媒としてはアミン触媒が好適である。次に、図2に示すように、前記触媒混合エマルジョン調製工程で得られた触媒混合エマルジョンEを、前記表面材(例えば不織布)21に塗布して含浸させ、液状バインダーの触媒含浸表面材21aを得る。前記触媒混合エマルジョンの塗布は、適宜の方法で行うことができるが、スプレー塗布が作業し易く、好ましい。前記触媒混合エマルジョンの塗布量は、適宜の量とされ、表面材21(例えば不織布)の材質、厚み、目付量等により最適な量が異なる。
【0026】
前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームを得る工程では、図3に示すように、前記ポリウレタンフォーム11の両面に、触媒未含有の液状バインダー(例えば触媒未含有のイソシアネート接着剤)Bを塗布して、触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aを得る。前記触媒未含有の液状バインダーの塗布は、適宜の方法で行うことができるが、スプレー塗布が作業し易く、好ましい。また、前記触媒未含有の液状バインダーは、適宜の塗布量とされ、ポリウレタンフォーム11の密度や厚み等によって異なるが、後の熱プレス時に不織布からなる表面材の表面に触媒未含有の液状バインダーが染み出さず、しかも表面材との接着力不足を生じない量が好ましい。
【0027】
前記積層工程では、図4に示すように、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aを前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aの片面に積層し、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aにおける熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aとは反対側の面に前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aを積層し、未接着の3層の積層体とする。その際、前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aの触媒混合エマルジョン塗布面が前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aの表面と対向するようにするのが好ましい。
【0028】
前記熱プレス工程では、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aと前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aと前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aとの未接着の積層体を、熱プレス型41,42により熱プレスする。熱プレス温度は、前記液状バインダーが反応硬化し、かつ前記熱硬化性樹脂が硬化する温度とされ、前記液状バインダーがイソシアネート接着剤の場合には160〜220℃が好ましい。前記熱プレス時、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aの液状バインダーが、前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aの触媒と接触し、さらに前記液状バインダーがイソシアネート接着剤の場合には、イソシアネート接着剤が前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aの水分と接触して反応硬化し、前記積層体が一体に接着する。それと共に、前記熱プレス時の熱により、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aの熱硬化性樹脂が硬化して、前記積層体が賦形され、図1に示した吸音材10が得られる。このようにして得られた吸音材10は、前記表面材11に含まれる撥水剤によって撥水性を有する。
【0029】
また、前記熱プレス時、前記表面材21が不織布の場合、前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aにおける水性エマルジョンの水分が一気に蒸発し、得られる前記吸音材10は、水分の蒸発経路跡が表面材(不織布)21内部から表面まで連通した連通孔を形成し、前記表面材21の連通孔により前記吸音材10の吸音性が良好になる。前記熱プレスの温度が160℃より低くなると、前記イソシアネート接着剤の硬化及び熱硬化性樹脂の硬化に時間がかかるのみならず、前記水分の蒸発が一気に行われ難くなって前記蒸発経路跡からなる通気路が途中で途切れたり、細くなったりして良好な通気性が得難くなり、前記吸音材10の吸音性が低下するようになる。それに対して220℃よりも高くなると、前記不織布やポリウレタンフォームが熱によって変質等の不具合を生じるおそれがある。なお、前記熱プレス時における前記積層体の圧縮量は、目的とする吸音材10の厚み等により、適宜設定される。図4では、前記熱プレス型41,42間に配置されるスペーサ43,43によって前記熱プレス時の最大圧縮量が調節される。また、前記熱プレス型41,42には、電熱ヒータ等の加熱手段が設けられ、前記熱プレス型41,42が加熱可能にされている。
【0030】
図5は第二実施形態に係る吸音材10Aの断面図である。この第二実施形態の吸音材10Aは、ポリウレタンフォーム11の片面と熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31における前記ポリウレタンフォーム11とは反対側の面にそれぞれ表面材22を積層接着したことが、前記第一実施形態の吸音材10とは異なり、その他の構成は前記第一実施形態の吸音材10と同様である。なお、第二実施形態の吸音材10Aに関して、前記第一実施形態の吸音材10と同一の構成部分については、共通の符号を用いて図示すると共に、その説明を省略または簡略にする。
【0031】
前記第二実施形態の吸音材10Aにおいて、前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31に積層接着される表面材22は、前記ポリウレタンフォーム11の片面に積層接着される表面材21と同様の不織布が好ましい。特には、前記吸音材10Aがエンジンルーム用の場合には、エンジンルーム内の高温に耐えられるように、耐熱性に優れるポリエステル繊維の不織布が好ましい。特には目付量30〜100g/mのニードルパンチされたポリエステル繊維からなるものが好ましい。さらに、一方の不織布21がエンジンルーム内側を向く不織布とされ、他方の不織布22がボンネットフード側を向く不織布とされる場合、前記エンジンルーム内側を向く不織布21を、前記ボンネットフード側を向く不織布22よりも、ポリエステル繊維の目付量を大にするのが吸音性の点から好ましい。特には、前記エンジンルーム内側を向く不織布21は、目付量100g/mのニードルパンチされたポリエステル繊維からなるものが好ましく、また前記ボンネットフード側を向く不織布22は、目付量30g/mのニードルパンチされたポリエステル繊維からなるものが好ましい。
【0032】
前記ポリウレタンフォーム11と前記表面材21の界面K1及び前記ポリウレタンフォーム11と前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31との界面K2、さらには前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルト31と前記表面材22との界面K3は、第一実施例と同様の液状バインダーの硬化によって接着されている。
【0033】
前記第二実施形態の吸音材10Aに関する製造方法は、前記第一実施形態の吸音材10に関する製造方法と同様に、液状バインダーの触媒含浸表面材を得る工程、触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームを得る工程、積層工程、熱プレス工程とよりなり、一部の工程においては次の作業が加わる。
【0034】
すなわち、前記液状バインダーの触媒含浸表面材を得る工程では、前記第一実施形態で説明した触媒混合エマルジョンEを、前記表面材21と22の両方に塗布して含浸させ、液状バインダーの触媒含浸表面材21a,22aを得る。また前記積層工程では、図6に示すように、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aを前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aの片面に積層し、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aとは反対側の面に前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aを積層し、さらに前記熱硬化性樹脂未含有フェルト31aにおける前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aとは反対側の面に前記触媒混合エマルジョン含浸表面材22aを積層し、未接着の4層の積層体とする。また、前記熱プレス工程では、前記未接着の4層の積層体を、前記第一実施形態の製造方法と同様に熱プレス型41,42により熱プレスする。熱プレス時、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム11aの液状バインダーが、前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aの触媒と接触し、さらに前記液状バインダーがイソシアネート接着剤の場合には、イソシアネート接着剤が前記触媒混合エマルジョン含浸表面材21aの水分とも接触する。その際、前記水分及び触媒と接触したイソシアネート接着剤は、熱プレスによるポリウレタンフォームの圧縮でポリウレタンフォームから染み出して積層体全体に行き渡り、その状態で反応硬化して前記積層体を一体に接着する。それと共に、熱プレス時の熱により、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aの熱硬化性樹脂が硬化して、前記積層体が賦形され、図5に示した第二実施形態の吸音材10Aが得られる。このようにして得られた吸音材10Aは、前記表面材11に含まれる撥水剤によって撥水性を有する。
【実施例】
【0035】
以下、自動車のボンネットの裏側に貼着されるエンジンルームの吸音材に関し、具体的な実施例について説明する。まず、フッ素樹脂を水に分散させた撥水剤の水性エマルジョン(商品名:アサヒガードAG533S、旭硝子株式会社製、固形分:18%)100重量部と、イソシアネート接着剤のアミン触媒として、トリエチレンジアミン(商品名:DABCO 33LV、三共エアプロダクツ株式会社製)2.5重量部を混合して触媒混合エマルジョンを調製した。また、触媒未含有の液状バインダーを構成するイソシアネート接着剤としては、メチレンジフェニルジイソシアネート(商品名:44V20、住友バイエルウレタン株式会社)、エンジンルーム内側を向く表面材21を構成する不織布としては、目付量100g/mのニードルパンチされたポリエステル繊維からなるもの、ボンネットフード側を向く表面材22を構成する不織布としては、目付量30g/mのニードルパンチされたポリエステル繊維からなるもの、ポリウレタンフォーム11としては、密度12kg/mの軟質スラブポリウレタンフォーム(品番:RD10FR、株式会社イノアックコーポレーション製)、熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aとしては、フェノール樹脂を含有する熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト(目付量500g/m、厚み8mm、豊和繊維工業株式会社製)を用いた。前記不織布は、目付量に関わらず幅500mm×長さ500mmのサイズとし、また、前記ポリウレタンフォームは、厚み20mm×500mm×500mmのサイズとした。なお、比較例用として雑反毛品(熱硬化性樹脂未含有フェルト、目付量500g/m、厚み8mm、豊和繊維工業株式会社製)、グラスウール(商品名:グラスロンウール、目付量1000g/m、旭ファイバーグラス社製)を用いた。
【0036】
実施例1及び2の4層構造からなる吸音材に関しては、前記エンジンルーム内側を向く不織布及び前記ボンネットフード側を向く不織布におけるそれぞれの片面に、前記触媒混合エマルジョンをスプレーガンによりスプレー塗布して含浸させ、また実施例3の3層構造からなる吸音材に関しては、エンジンルーム内側を向く不織布の片面に前記触媒混合エマルジョンをスプレーガンによりスプレー塗布した。塗布量は100g/mである。また、前記ポリウレタンフォームの両面に、触媒を含まない前記イソシアネート接着剤をスプレーガンによりスプレー塗布し、含浸させた。イソシアネート接着剤の塗布量は、表1に示す通り、実施例1では10g/m、実施例2では100g/m、実施例3では50g/mである。
【0037】
【表1】

【0038】
次に、図6のように、触媒混合エマルジョンが含浸した両表面材(不織布)21a,22aと、触媒を含まないイソシアネート接着剤が塗布されたポリウレタンフォーム11aと、熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aを積層して熱プレス型41,42間に配置し、熱プレス温度195℃で60秒間、プレス厚15mmに熱プレスし、図5に示した吸音材10Aと同様の4層構造からなる実施例1及び2の吸音材を得た。また、図4のように、触媒混合エマルジョンが含浸した表面材(不織布)21aと、触媒を含まないイソシアネート接着剤が塗布されたポリウレタンフォーム11aと、熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト31aを積層して熱プレス型41,42間に配置し、熱プレス温度195℃で60秒間、プレス厚15mmに設定して熱プレスし、図1に示した吸音材10と同様の3層構造からなる実施例3の吸音材を得た。熱プレス型41,42のプレス面は、平面からなり、サイズは1000mm×1000mmである。
【0039】
また、表1に示す比較例1〜4の吸音材を製造した。比較例1及び2は、熱硬化性樹脂含有硬化フェルトが存在しない例、比較例3はウレタンフォーム及び熱硬化性樹脂含有硬化フェルトに代えてグラスウールを用いた例、比較例4は熱硬化性樹脂含を含まないフェルトを用いた例である。
【0040】
比較例及び実施例の吸音材に対して、剥離試験、水滴試験、表皮染み出し試験、全体目付量、吸音性試験、曲げ試験、厚み精度試験を以下の方法で行った。測定結果は表1に示す通りである。なお、比較例3においては、イソシアネート接着剤がグラスウールの内部に染み込んで不織布との接着に使用されず、熱プレス後に表皮が剥がれ、剥離試験等の各試験を行うことができなかった。
【0041】
剥離試験は、エンジンルーム内側を向く不織布とポリウレタンフォームに対して、幅25mm、長さ150mmの試験片を作成し、その試験片の一端に対して長さ10mmにわたって不織布とポリウレタンフォームを剥がし、剥がした部分の不織布とポリウレタンフォームを把持して引張速度200mm/minにて剥離試験を行った。評価はポリウレタンフォームが材料破壊された場合に○、不織布が界面で剥離した場合に×とした。
【0042】
水滴試験は、エンジンルーム内側を向く不織布の表面に水滴を注射器により1滴落とした後、6時間後に水滴の状態を確認し、水滴が滴下時と同じ半球の場合に○、不織布へ浸透あるいは馴染んだ場合(半球でなくなった場合)に×とした。
【0043】
表皮染み出し試験は、エンジンルーム内側を向く不織布の表面を目視し、イソシアネート接着剤の染み出しが確認されなかった場合に○、染み出しが確認された場合に×とした。
【0044】
全体目付量は熱プレス後の吸音材の重量をそれぞれの吸音材における片面の面積で除した値であり、吸音材の軽量性判断に用いた。
【0045】
吸音性試験は、垂直入射吸音率(JIS A 1405)にて吸音性を測定し、1000〜4000Hzの吸音率(単位%)について平均値を計算した。
【0046】
曲げ試験は、200×25×厚みからなる試験片を2点支持し、中央部に荷重をかけ、降伏点の荷重を読みとり、その荷重を剛性の評価に用いた。
【0047】
厚み精度試験は、熱プレス時に設定した厚み15mmに対して、製造後の厚みが15±1mmであれば○、それ以外を×とした。
【0048】
表1に示すように、実施例1〜3の吸音材は、剥離試験、水滴試験、表皮染み出し試験、曲げ試験、厚み精度の何れも良好な結果であり、また、全体目付量の値から比較例3の吸音材(グラスウール製吸音材)に対して1/2〜1/3の重量からなって軽量であることが判明し、さらに、曲げ試験の結果から比較例1,2及び4に対して2〜5倍程度の剛性を有することも確認できた。さらに実施例2は、実施例1のイソシアネート接着剤の塗布量を10gから100gに増やしたことにより、剛性が1.5倍になっている。しかも、実施例1〜3の吸音材は、吸音性についても従来(比較例)の吸音材から劣るものではなかった。このことから、実施例1〜3の吸音材は、軽量で剛性が高いものであり、軽量性が求められる自動車のエンジンルームの吸音材として好適であることがわかる。なお比較例についてさらに述べると、比較例1は剛性が実施例と比べ著しく低く、比較例2はイソシアネート接着剤塗布量が多いため、不織布からイソシアネート接着剤が染み出し、型に対する吸音材の離型性が悪くなって良好な製品にならず、比較例3は前記のようにグラスウールと不織布との接着が不良となって良好な製品にならなかった。また、比較例4は賦形及び形状固定を行うことができず、厚み精度が悪く、良好な製品にならなかった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第一実施形態に係る吸音材の断面図である。
【図2】第一実施形態に係る吸音材の製造時に触媒混合エマルジョンを表面材に含浸させる際を示す概略図である。
【図3】同第一実施形態に係る吸音材の製造時に触媒未含有の液状バインダーをポリウレタンフォームの両面に塗布する際を示す概略図である。
【図4】同第一実施形態に係る吸音材の製造時における積層及び熱プレスの一例を示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る吸音材の断面図である。
【図6】第二実施形態に係る吸音材の製造時における積層及び熱プレスの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10,10A 吸音材
11 ポリウレタンフォーム
11a 触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォーム
21,22 表面材
21a,22a 液状バインダーの触媒含浸表面材
31 熱硬化性樹脂含有硬化フェルト
31a 熱硬化性樹脂含有未硬化フェルト
K1,K2,K3 界面
41,42 熱プレス型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームと、前記ポリウレタンフォームの片面に積層接着された表面材と、前記ポリウレタンフォームの前記表面材とは反対側の面に積層接着された熱硬化性樹脂含有硬化フェルトよりなることを特徴とする吸音材。
【請求項2】
前記吸音材の曲げ剛性が6〜10N/25mmであることを特徴とする請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォームの片面と前記熱硬化性樹脂含有硬化フェルトにおける前記ポリウレタンフォームとは反対側の面にそれぞれ前記表面材が積層接着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記表面材が不織布からなることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の吸音材。
【請求項5】
撥水剤の水性エマルジョンに液状バインダーの触媒を混合してなる触媒混合エマルジョンを表面材に含浸させて触媒混合エマルジョン含浸表面材を得る工程と、
ポリウレタンフォームの両面に、触媒未含有の液状バインダーを塗布して触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームを得る工程と、
熱硬化性樹脂を含有し該熱硬化性樹脂の少なくとも一部が未硬化状態にある熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトを、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームの片面に積層し、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームにおける前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトとは反対側の面に前記触媒混合エマルジョン含浸表面材を積層する工程と、
前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトと前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームと前記触媒混合エマルジョン含浸表面材との積層体を熱プレスすることにより、前記液状バインダーを硬化させて前記積層体を一体に接着すると共に前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトの前記熱硬化性樹脂を硬化させて賦形する熱プレス工程と、
よりなることを特徴とする吸音材の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトと、前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームと、前記触媒混合エマルジョン含浸表面材の積層工程時に、前記熱硬化性樹脂含有未硬化フェルトにおける前記触媒未含有液状バインダー付着ポリウレタンフォームとは反対側の面にも前記触媒混合エマルジョン含浸表面材を積層し、その後に熱プレスを行うことを特徴とする請求項5に記載の吸音材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−71959(P2006−71959A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255113(P2004−255113)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】