説明

周波数シンセサイザ

【課題】 外部基準信号の入力断で高速にスイッチを切り替えて一定の電圧を発振器の制御電圧として出力でき、出力周波数の変動量を最小限に抑えることができる周波数シンセサイザを提供する。
【解決手段】 制御回路11が、検波回路10からの検波出力を入力し、外部基準入力信号「入」の場合には、SW3にPLL−IC1の出力をループフィルタ4に出力させる切替信号を出力し、外部基準入力信号「断」の場合には、SW3に可変抵抗2の出力をループフィルタ4に出力させる切替信号を出力し、スイッチ高速切替回路12が、外部基準入力信号の「断」を検出して制御回路11より高速にSW3に可変抵抗2の出力をループフィルタ4に出力させる切替信号を出力する周波数シンセサイザである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数シンセサイザに係り、特に、外部基準信号の入力が切断した時にPLLループから固定電圧へ切り替わる際の周波数変動を抑えることができる周波数シンセサイザに関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
[従来の周波数シンセサイザ:図7]
従来の周波数シンセサイザについて図7を参照しながら説明する。図7は、従来の周波数シンセサイザの構成ブロック図である。
従来の周波数シンセサイザは、図7に示すように、PLL(Phase Locked Loop)−IC(Integrated Circuit)(1)1と、可変抵抗2と、スイッチ(SW)3と、ループフィルタ(1)4と、OCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)5と、PLL−IC(2)6と、ループフィルタ(2)7と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)8と、AMP(Amplifier)9と、検波回路10と、制御回路11とを備えている。
【0003】
[従来の周波数シンセサイザの動作]
従来の周波数シンセサイザは、図7に示すように、OCXOが例えば10MHz又は40MHzで発振するものであり、PLL−IC(1)1で外部基準(REF)入力信号(例えばルビジウム信号等の10MHz)と同期される。
そして、その同期した信号を基準としてPLL−IC(2)6とVCO8を用いて高周波のシンセサイザ(例えば1GHz)を構成している。
【0004】
制御回路11は、PLL−IC1,6に対して、所望の周波数となるような設定データを出力し、出力周波数を決定する。
また、制御回路は、外部REF入力信号の有無を、検波回路10を介して判定し、入力がある場合は、SW3をPLL−IC(1)1側として、PLLループを構成するが、入力がない場合は、SW3を可変抵抗2側として、可変抵抗2で決まる一定の電圧値をOCXO5の制御端子に供給する。
【0005】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開平06−029837号公報「位相同期回路」(三菱電機株式会社)[特許文献1]、特開2002−135115号公報「クロック供給装置」(日本電気株式会社)[特許文献2]、特開2003−258629号公報「PLL回路及びその制御方法」(日本電気通信システム株式会社)[特許文献3]がある。
【0006】
特許文献1には、位相同期回路において、基準信号の入力場局を基準信号入力検出回路で監視し、基準信号が入力されていない時は、スイッチを直流電源側に切り替え、基準信号が入力された時は、電圧制御発振器を起動すると同時にスイッチを充放電ルート側に切り替えることが示されている。
【0007】
特許文献2には、クロック供給装置において、入力信号がクロック又はバイポーラデータのいずれかを入力信号監視手段が判断し、入力信号の断を入力信号断検出手段が検出し、入力信号の断或いは切り替え時にホールドオーバー制御手段が出力クロックの位相変動を防ぐことが示されている。
【0008】
特許文献3には、PLL回路において、瞬断検出器が入力リファレンス信号の瞬断を検出し、一次ループゲイン部の出力を「0」に固定し、瞬断復旧後に、一次ループゲイン部の出力固定を解除すると同時に分周器のカウンタをリセットして強制的に位相合わせの制御を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−029837号公報
【特許文献2】特開2002−135115号公報
【特許文献3】特開2003−258629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の周波数シンセサイザでは、何らかの要因で外部REF入力信号が有り(入り)の状態から無し(断)の状態になった場合に、SW3はPLLループ側から可変抵抗2で決まる一定電圧側に切り替わるようになっているが、外部REF入力信号が無くなった瞬間に、PLL−IC(1)1は位相比較できなくなり、SW3で可変抵抗2に切り替わるまでの時間が長いと、PLL−IC(1)1のチャージポンプ出力が不安定になってしまい、出力周波数が所望の周波数からずれてしまうという問題点があった。
【0011】
[外部REF入力信号が断となった場合の状況:図8]
外部REF入力信号が断となった場合の状況について図8を参照しながら説明する。図8は、外部REF入力信号が断となった場合の従来の状況を示す図である。
横軸を時間として、図8の一段目には外部REF入力信号、二段目にはSW切替信号、三段目にはチャージポンプ出力となるOCXO制御電圧、四段目にはAMP9からの出力周波数が示されている。
【0012】
図8に示すように、Aの時点まで外部REF入力信号が有り(存在)の場合、次の瞬間から外部REF入力信号が無し(不存在)となるが、制御回路11で外部REF入力信号の断を判定してSW3にSW切替信号を出力することになる。
但し、SW切替信号が出力されるのは、Aの時点より遅れてBの時点となる。
A時点からB時点までの時間経過で、チャージポンプ出力に電位変化ΔV1 が発生し、その電位変化によってOCXO制御電圧が不安定となり、結果的には出力周波数が変動するものであった。
【0013】
[外部REF入力信号が断となった場合の詳細状況:図9]
外部REF入力信号が断となった場合の詳細状況について図9を参照しながら説明する。図9は、外部REF入力信号が断となった場合の従来の詳細状況を示す図である。
出力周波数の変動の詳細は、図9に示すように、例えば、OCXO周波数が40MHzで、OCXO制御電圧範囲が制御電圧0〜5V、VF感度2ppm/V(80Hz/V)、VCO出力周波数が804,292,857Hzである場合に、出力周波数の変動は0.2ppmとなっている。
【0014】
尚、特許文献1〜3では、基準信号の断(無し)を検出して固定電圧を電圧制御発振器に制御電圧として出力し、基準信号の入力(有り)を検出すると、PLLループを形成するものであるが、基準信号の入力の有無を単一の回路で検出するものであるから、外部基準信号の断により高速にスイッチを切り替えて、出力周波数の変動量を最小限にするものとはなっていないものである。
【0015】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、外部基準信号の入力断で高速にスイッチを切り替えて一定の電圧を発振器の制御電圧として出力でき、出力周波数の変動量を最小限に抑えることができる周波数シンセサイザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、周波数シンセサイザであって、恒温槽付水晶発振器(基準信号用電圧制御発振器)と、電圧制御発振器(出力信号用電圧制御発振器)と、外部基準入力信号と基準信号用電圧制御発振器からの出力信号を入力し、位相比較し、位相差に応じた信号を出力する第1のPLL−ICと、電源電圧に接続し、可変可能な特定の電圧を出力する可変抵抗と、第1のPLL−ICの出力と可変抵抗の出力を外部からの切替信号により選択して出力するスイッチと、スイッチで選択された出力を平滑化して基準信号用電圧制御発振器の制御電圧として出力する第1のループフィルタと、基準信号用電圧制御発振器からの出力信号と出力信号用電圧制御発振器からの出力信号を入力し、位相比較し、位相差に応じた信号を出力する第2のPLL−ICと、第2のPLL−ICからの出力を平滑化して出力信号用電圧制御発振器の制御電圧として出力する第2のループフィルタと、出力信号用電圧制御発振器の出力を増幅する増幅器と、外部基準入力信号を入力して検波する検波回路と、検波回路からの検波出力を入力し、外部基準入力信号が入力されている「入」の場合には、スイッチに第1のPLL−ICの出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力し、外部基準入力信号が入力されていない「断」の場合には、スイッチに可変抵抗の出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力し、第1のPLL−ICと第2のPLL−ICに所望の周波数を出力させるためのデータを設定する制御回路と、外部基準入力信号の「断」を検出して制御回路より高速にスイッチに可変抵抗の出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力するスイッチ高速切替回路とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記周波数シンセサイザにおいて、スイッチ高速切替回路が、外部基準入力信号の入力がないとパルス信号を出力しないワンショットマルチバイブレータと、制御回路からの切替信号を一方の入力端子に入力し、ワンショットマルチバイブレータからの信号を他方の入力端子に入力し、論理積の信号を切替信号としてスイッチに出力する論理積回路とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明は、上記周波数シンセサイザにおいて、スイッチ高速切替回路が、外部基準入力信号の入力がないとパルス信号を出力しないワンショットマルチバイブレータと、ワンショットマルチバイブレータの出力をベースに入力し、エミッタには電源電圧が印加され、コレクタから出力が得られるPNP型の第1のトランジスタと、該コレクタの出力がベースに入力され、エミッタが接地し、コレクタから出力が得られるNPN型の第2のトランジスタと、制御回路からの出力がベースに入力され、エミッタが接地され、コレクタから出力が得られるNPN型の第3のトランジスタと、第2のトランジスタのコレクタと第3のトランジスタのコレクタが、電源電圧に接続するプルアップ抵抗に接続してスイッチの切替信号の入力端子に接続することを特徴とする。
【0019】
本発明は、上記周波数シンセサイザにおいて、スイッチ高速切替回路が、外部基準入力信号を入力して分周する第1のカウンタと、第1のカウンタ出力を内部の基準信号でラッチして遅延させる複数段のフリップフロップと、複数段のフリップフロップの異なる出力の排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、排他的論理和回路の出力でリセット動作を行い、内部の基準信号を分周する第2のカウンタと、第2のカウンタ出力をクロックとして入力し、可変抵抗の出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号をハイレベルの信号として出力すると共に、排他的論理和回路の反転出力でリセット動作を行うクリア付フリップフロップとを有することを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記周波数シンセサイザにおいて、スイッチ高速切替回路では、第1のカウンタと第2のカウンタが、パワーオンリセット信号でリセットし、クリア付フリップフロップが、パワーオンリセット信号の反転出力でリセットすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、制御回路が、検波回路からの検波出力を入力し、外部基準入力信号が入力されている「入」の場合には、スイッチに第1のPLL−ICの出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力し、外部基準入力信号が入力されていない「断」の場合には、スイッチに可変抵抗の出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力し、第1のPLL−ICと第2のPLL−ICに所望の周波数を出力させるためのデータを設定し、スイッチ高速切替回路が、外部基準入力信号の「断」を検出して制御回路より高速にスイッチに可変抵抗の出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力する周波数シンセサイザとしているので、外部基準信号の入力断で高速にスイッチを切り替えて可変抵抗からの一定の電圧を用いて発振器の制御電圧として出力でき、出力周波数の変動を抑えることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る周波数シンセサイザの構成ブロック図である。
【図2】SW高速切替回路の構成例1を示す回路図である。
【図3】SW高速切替回路の構成例2を示す回路図である。
【図4】SW高速切替回路の構成例3を示す回路図である。
【図5】SW高速切替回路のタイミングチャートである。
【図6】本シンセサイザにおける外部REF入力信号が断となった場合の詳細状況を示す図である。
【図7】従来の周波数シンセサイザの構成ブロック図である。
【図8】外部REF入力信号が断となった場合の従来の状況を示す図である。
【図9】外部REF入力信号が断となった場合の従来の詳細状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る周波数シンセサイザは、外部基準入力信号が「断」となった場合に、スイッチ高速切替回路が、制御回路より高速にスイッチを第1のPLL−ICから可変抵抗に切り替えるスイッチ切替信号を出力するようにしているので、外部基準入力信号の「断」から自走までの期間が短くなり、出力周波数の変動を抑えることができるものである。
【0024】
[本PLL回路:図1]
本発明の実施の形態に係る周波数シンセサイザについて図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る周波数シンセサイザの構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る周波数シンセサイザ(本シンセサイザ)は、図1に示すように、PLL−IC(1)1と、可変抵抗2と、スイッチ(SW)3と、ループフィルタ(1)4と、OCXO5と、PLL−IC(2)6と、ループフィルタ(2)7と、VCO8と、AMP9と、検波回路10と、制御回路(マイコン)11と、SW高速切替回路12とを基本的に有している。
図7の従来の周波数シンセサイザと比較して、SW高速切替回路12が設けられ、SW3が制御回路11の制御に加えて、SW高速切替回路12からの制御によってSW3を高速に切替動作する点で相違している。
【0025】
[本シンセサイザの各部]
本シンセサイザの各部について具体的に説明する。
PLL−IC(1)1は、外部基準(REF)入力信号、例えばルビジウム信号等の10MHzの信号を入力すると共に、OCXO5からの出力信号を入力し、OCXO5からの信号を分周し、外部REF入力信号との位相比較を行い、位相差をパルス幅の電圧でSW3の一方の入力端子に出力する。
従って、PLL−ICは、分周器、位相比較器、チャージポンプ等の回路構成をワンチップに収納したものである。
尚、PLL−IC(1)1には、所望の周波数を得るための、制御回路11からPLL−IC(1)用の設定データが入力され、設定される。
【0026】
可変抵抗2は、一端が電源電圧に接続し、他端が接地され、抵抗値を可変にすることで、SW3の他方の入力端子に特定の固定電圧を出力する。
スイッチ(SW)3は、SW高速切替回路12又は制御回路11からのSW切替信号に基づいて、2つの入力端子のいずれかを選択し、ループフィルタ(1)4にPLL−IC(1)1からの出力信号又は可変抵抗2からの固定電圧を出力する。
【0027】
ループフィルタ(1)4は、SW3からの出力を平滑化し、制御電圧としてOCXO5に出力する。
OCXO(恒温槽付水晶発振器)5は、ループフィルタ(1)4からの出力を制御電圧として入力し、例えば、40MHzの発振周波数をPLL−IC(2)6及びPLL−IC(1)1に出力する。
尚、OCXO5は、請求項における「基準信号用電圧制御発振器」に相当する。
【0028】
PLL−IC(2)6は、OCXO5からの出力信号とVCO8からの出力信号を入力し、VCO8からの信号を分周し、OCXO5からの信号との位相比較を行い、位相差をパルス幅の電圧でループフィルタ(2)7に出力する。
尚、PLL−IC(2)6には、所望の周波数を得るための、制御回路11からPLL−IC(2)用の設定データが入力され、設定される。
【0029】
ループフィルタ(2)7は、ループフィルタ(1)4と同様に、PLL−IC(2)6からの出力を平滑化し、制御電圧としてVCO8に出力する。
VCO(電圧制御発振器)8は、ループフィルタ(2)7からの出力を制御電圧として発振動作を行い、AMP9及びPLL−IC(2)6に発振信号を出力する。
尚、VCO8は、請求項における「出力信号用電圧制御発振器」に相当する。
AMP(増幅器)9は、VCO8からの発振信号を増幅して出力する。
【0030】
検波回路10は、外部REF入力信号を分岐して入力し、入力信号の検波を行い、検波出力(検波結果)を制御回路11に出力する。
そして、検波回路10は、外部REF入力信号が断となったことを検出し、また、外部REF入力信号が「断」から「入」となったことも検出して、制御回路11に出力する。
【0031】
制御回路11は、マイコンで構成されており、最適なPLL−IC(1)用の設定データをPLL−IC(1)1に、PLL−IC(2)用の設定データをPLL−IC(2)6に出力する。
また、制御回路11は、検波回路10から外部REF入力信号の「断」検出が入力されると、SW3に可変抵抗2を選択するようSW切替信号を出力する。
更に、制御回路11は、検波回路10から外部REF入力信号の「入」検出が入力されると、SW3にPLL−IC(1)1を選択するようSW切替信号を出力する。
【0032】
SW高速切替回路12は、本実施の形態における特徴的な構成であり、外部REF入力信号の「断」が発生すると、制御回路11よりも早くSW3に可変抵抗2の固定電圧を選択するSW切替信号を出力するものである。
SW高速切替回路12が、制御回路11より高速にSW3の切替動作を実現することにより、外部REF入力信号が「断」となってからSW3が可変抵抗2に切り替わるまでの時間を短くすることができ、それにより、出力周波数の変動を抑えることができる。
SW高速切替回路12は、具体的には、後述する図2,3,4に示したような回路で実現される。
【0033】
[SW高速切替回路の構成例1:図2]
SW高速切替回路の構成例1について図2を参照しながら説明する。図2は、SW高速切替回路の構成例1を示す回路図である。
SW高速切替回路の構成例1は、図2に示すように、外部REF入力信号を入力することで、再トリガ信号により出力パルス幅を拡張可能なワンショットマルチバイブレータ12aと、上記パルスによりON/OFFする2つのPNP型トランジスタTr1,NPN型トランジスタTr2と、マイコン(制御回路)11からの出力によってON/OFFするNPN型トランジスタTr3とを備え、トランジスタTr3のコレクタに接続するプルアップ抵抗Rpを介して電源電圧に印加され、トランジスタTr3のコレクタとトランジスタTr2のコレクタがワイヤードOR接続されて、SW3の切替制御端子に入力されている。
【0034】
外部REF入力信号をワンショットマルチバイブレータ12aに入力させる。入力する外部REF入力信号の周波数に応じて、ワンショットマルチバイブレータ12aに設けられた抵抗R、コンデンサCの値を設定することで、連続的に再トリガが掛かり、ワンショットマルチバイブレータ12aの出力をHigh固定にする。
すると、PNP型トランジスタTr1のコレクタはオフになり、NPN型トランジスタTr2のコレクタもオフになり、プルアップ抵抗Rpに印加される電源電圧によりSW3に入力されるSW切替信号はHigh状態(PLL−IC(1)1とループフィルタ(1)4を接続する状態)となる。
【0035】
また、外部REF入力信号が「断」になると、再トリガ信号入力が無くなることにより抵抗R、コンデンサCで設定された時定数時間経過後にワンショットマルチバイブレータ12aの出力がLow状態となり、PNP型トランジスタTr1のコレクタはオンになり、NPN型トランジスタTr2のコレクタもオンになり、プルアップ抵抗Rpを介してNPN型トランジスタTr2に電流が流れ、SW3に入力されるSW切替信号はLow状態(可変抵抗2とループフィルタ(1)4を接続する状態)となる。
【0036】
図2におけるマイコン11は、出力端子の前段に反転回路が設けられた構成となっており、SW3をPLL−IC(1)1に接続するためのSW切替信号は反転回路によりLow状態で出力され、SW3を可変抵抗2側に接続するためのSW切替信号は反転回路によりHigh状態で出力される。
マイコン11からのSW切替信号はLow状態であれば、トランジスタTr3はオフであり、プルアップ抵抗Rpに印加される電源電圧によりSW3に入力されるSW切替信号はHigh状態となる。
また、マイコン11からのSW切替信号がHigh状態であれば、トランジスタTr3はオンであり、プルアップ抵抗Rpを介してトランジスタTr3に電流が流れ、SW3に入力されるSW切替信号はLow状態となる。
【0037】
以上のように、外部REF入力信号が「断」の時は、SW切替信号がLowとなり、マイコン11からの制御信号を待たずして強制的にSW3を可変抵抗2側に切り替える。
外部REF入力信号の停止をハード的に検出し、外部REF入力信号がなくなった際に、高速に可変抵抗2側にSW3を切り替えることで、出力周波数の変動を抑えることができる。
【0038】
[SW高速切替回路の構成例2:図3]
次に、SW高速切替回路の構成例2について図3を参照しながら説明する。図3は、SW高速切替回路の構成例2を示す回路図である。
SW高速切替回路の構成例2は、図3に示すように、外部REF入力信号を入力することで再トリガ信号によりパルス幅を拡張出力し(High状態)、外部REF入力信号が「断」の検出によりパルスを停止する(Low状態)ワンショットマルチバイブレータ12aと、ワンショットマルチバイブレータ12aからの出力信号とマイコン11からの出力信号を入力し、論理積を演算するAND回路12bとを備え、AND回路12bからの論理積の出力信号(SW切替信号)がSW3の切替制御端子に入力されている。
【0039】
具体的には、外部REF入力信号が「入」の時、ワンショットマルチバイブレータ12aから連続したパルスが出力され、High状態であり、外部REF入力信号が「断」の時、ワンショットマルチバイブレータ12aからパルスが出力されず、Low状態となる。
また、マイコン11は、SW3にPLL−IC(1)1を選択させる場合には、SW切替信号としてHigh状態の信号を出力しているので、AND回路12bの出力は、ワンショットマルチバイブレータ12aの出力がHighの時にHigh状態となり、それ以外はLow状態となってSW3に出力され、可変抵抗2側に切り替えられる。
【0040】
特に、ワンショットマルチバイブレータ12aが外部REF入力信号の「断」に対してマイコン11より高速にLowとなるため、マイコン11からの出力がまだHigh状態のままであっても、AND回路12bの出力はLow状態となる。
【0041】
[SW高速切替回路の構成例3:図4]
次に、SW高速切替回路の構成例3について図4を参照しながら説明する。図4は、SW高速切替回路の構成例3を示す回路図である。
SW高速切替回路の構成例3は、図4に示すように、カウンタAと、3段のDフリップフロップと、カウンタBとを有している。
【0042】
カウンタAのCLR端子には、パワーオンリセット信号(負論理)をインバータ回路により反転した信号が入力される。
パワーオンリセット信号は負論理の信号であり、パワーオンリセットでない場合はHighレベルの信号がインバータ回路に入力され、反転されてLowレベルの信号が出力される。
【0043】
また、PLL基準クロック(外部基準信号)がカウンタAの反転CLK端子に入力され、カウンタAのQC端子からの出力が1段目のDフリップフロップのD端子に入力され、そのQ端子の出力が2段目のDフリップフロップのD端子に入力され、そのQ端子の出力が3段目のDフリップフロップのD端子に入力され、そのQ端子の出力が排他的論理和(排他的OR)回路の一方の入力端子に入力され、排他的OR回路の他方の入力端子には、2段目のDフリップフロップのQ端子からの出力が入力される。
【0044】
内部基準信号源の信号が、3段のDフリップフロップのCLK端子に入力されると共に、カウンタBの反転CLK端子に入力される。内部基準信号源の信号は、外部基準信号とは非同期である。
パワーオンリセット信号(負論理)をインバータ回路により反転した信号が、論理和(OR)回路の一方の入力端子に入力され、OR回路の他方の入力端子には排他的OR回路からの出力が入力され、OR回路からの出力は、カウンタBのCLR端子に入力される。
【0045】
そして、カウンタBのQC端子からの出力が、クリア付DフリップフロップのCLK端子に入力され、そのD端子には"H"(Highレベル)固定の電圧が印加され、OR回路の出力がインバータ回路で反転されてCLR端子に入力され、Q端子からの出力が自走切替制御信号となる。
【0046】
[SW高速切替回路のタイミングチャート:図5]
図4に示したSW高速切替回路の動作タイミングについて図5を参照しながら説明する。図5は、SW高速切替回路のタイミングチャートである。
図5における(1)〜(13)は、図4の図中に示した(1)〜(13)部分の信号状態を示している。
【0047】
具体的には、(1)は、例えば10MHzのPLL基準クロック信号(外部基準信号)を示し、途中で外部基準信号の接続断、若しくは停止が発生し(下矢印部分)、その後に外部基準信号の再接続、若しくは動作再開した状況を示している。
(2)は、カウンタAのQA端子出力を示し、(1)の2分周信号で5MHzとなる。(3)は、カウンタAのQB端子出力を示し、(2)の2分周信号で2.5MHzとなる。(4)は、カウンタAのQC端子出力を示し、(3)の2分周信号で1.25MHzとなる。
【0048】
(5)は、内部基準信号源からの別のクロックで、5MHzより高い、例えば8MHzの周波数の停止しない信号で(4)とは非同期の信号である。
(6)は、(4)の信号を(5)の信号でラッチした信号であり、(7)は、(6)の信号を(5)の信号でラッチした信号であり、(8)は、(7)の信号を(5)の信号でラッチした信号である。
(4)信号と(5)信号は非同期のため、メタステーブル対策として(5)信号の立ち上がりエッジ3発で同期化し、2段目と3段目の出力から(9)信号を生成する。
【0049】
(9)は、(7)と(8)の排他的OR信号で、カウンタBのCLR信号となる。(10)は、カウンタBのQA端子出力を示し、(5)の2分周信号である。(11)は、カウンタBのQB端子出力を示し、(10)の2分周信号である。(12)は、カウンタBのQC端子出力を示し、(11)の2分周信号である。
【0050】
(13)は、自走切替制御信号を示し、(12)信号の立ち上がりで"H"固定の電圧に変化し、(9)の信号の立ち上がりでクリアされる。(1)信号の下矢印部分から(13)信号の立ち上がりまでが、外部基準信号停止から自走切替完了までの時間となる。
ここで、自走切替制御信号のクリアは、再入力(再開)された外部基準信号を内部基準信号源のクロックでラッチしてリセットとなる(9)信号の立ち上がりで為されるようになっているので、外部基準信号の再開から高速にSW3にPLL−IC(1)1を選択するSW切替信号を出力できる。
【0051】
[具体的な動作タイミング]
具体的には、(1)信号が正常入力中の"H"期間及び"L"期間の各々の時間と、(5)信号の周期との関係から、カウンタAとカウンタBの分周出力をどのように選択するかは以下の条件に基づいて決定する。
【0052】
[第1の条件]
第1の条件は、カウンタAの分周出力((4)信号の(A)期間又は(B)期間の短い方の時間)が(5)信号(周期(C))の2周期より長く((5)信号の立ち上がりエッジが確実に2回入る)、かつ3.5周期よりも短い場合は、カウンタBのQB出力を用いることで切り替えは最短となる。尚、カウンタBのQC出力、QD出力でも使用可能である。
【0053】
[第2の条件]
第2の条件は、カウンタAの分周出力が(5)信号の2周期より長く((5)信号の立ち上がりエッジが確実に2回入る)、かつ3.5周期以上5.5周期未満の場合は、カウンタBのQC出力を用いることで切り替えは最短となる。尚、カウンタBのQD出力でも使用可能である。
【0054】
[第3の条件]
第3の条件は、カウンタAの分周出力が(5)信号の2周期より長く((5)信号の立ち上がりエッジが確実に2回入る)、かつ5.5周期以上9.5周期未満の場合は、カウンタBのQD出力を用いることで切り替えは最短となる。
【0055】
[第4の条件]
第4の条件は、第1の条件と第2の条件におけるカウンタAの分周出力の差は、2周期、第2の条件と第3の条件におけるカウンタAの分周出力の差は、4周期であり、以下、8周期、16周期、・・・と2のべき乗の周期分増える毎に、(13)信号を生成するためのDフリップフロップのクロック(CLK)端子へ入力するカウンタBの出力の分周段を1段ずつ増やすようにし、その分周出力を用いることで切り替えは最短となる。
【0056】
上記第1〜4の条件において、カウンタ及びフリップフロップのセットアップ、ホールドの時間条件を満たすように設計する必要がある。
結果として、SW切替信号は、Lowとなり、マイコン11からの制御信号を待たずして強制的にSW3を可変抵抗2側に切り替える。
【0057】
本シンセサイザは、PLL−IC1への外部REF入力信号停止をハード的に検出し、外部REF入力信号がなくなった際に、高速に可変抵抗2側に切り替え、出力周波数の変動を抑えるものであり、これにより、外部基準信号がなくなった場合の周波数変動量を最小限に抑えることができる効果がある。
尚、本シンセサイザが、純デジタル回路にて構成され、LSIに内蔵されるような場合は図4のような構成例が適している。
【0058】
[外部REF入力信号が断の時の状況:図6]
外部REF入力信号が断となった場合の詳細状況について図6を参照しながら説明する。図6は、本シンセサイザにおける外部REF入力信号が断となった場合の詳細状況を示す図である。
出力周波数の変動の詳細は、図6に示すように、時間Aから時間Bまでの期間が短い場合の周波数変化を示しており、例えば、OCXO周波数が40MHzで、OCXO制御電圧範囲が制御電圧0〜5V、VF感度2ppm/V(80Hz/V)、VCO出力周波数が804,292,857Hzである場合に、出力周波数の変動に0.03ppm抑えることができる。
【0059】
[実施の形態の効果]
本シンセサイザによれば、外部REF入力信号「断」の場合に、SW高速切替回路12が内部基準信号のクロックを用いて制御回路11より高速にSW3をPLL−IC(1)1から可変抵抗2に切り替えるSW切替信号を出力するようにしているので、外部REF入力信号「断」から自走までの期間が短くなり、出力周波数の変動を抑えることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、外部基準信号の入力断で高速にスイッチを切り替えて一定の電圧を発振器の制御電圧として出力でき、出力周波数の変動量を最小限に抑えることができる周波数シンセサイザに好適である。
【符号の説明】
【0061】
1...PLL−IC(1)、 2...可変抵抗、 3...スイッチ(SW)、 4...ループフィルタ(1)、 5...OCXO、 6...PLL−IC(2)、 7...ループフィルタ(2)、 8...VCO、 9...AMP、 10...検波回路、 11...制御回路(マイコン)、 12...SW高速切替回路、 12a...ワンショットマルチバイブレータ、 12b...論理積(AND)回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数シンセサイザであって、
基準信号用電圧制御発振器と、
出力信号用電圧制御発振器と、
外部基準入力信号と前記基準信号用電圧制御発振器からの出力信号を入力し、位相比較し、位相差に応じた信号を出力する第1のPLL−ICと、
電源電圧に接続し、可変可能な特定の電圧を出力する可変抵抗と、
前記第1のPLL−ICの出力と前記可変抵抗の出力を外部からの切替信号により選択して出力するスイッチと、
前記スイッチで選択された出力を平滑化して前記基準信号用電圧制御発振器の制御電圧として出力する第1のループフィルタと、
前記基準信号用電圧制御発振器からの出力信号と前記出力信号用電圧制御発振器からの出力信号を入力し、位相比較し、位相差に応じた信号を出力する第2のPLL−ICと、
前記第2のPLL−ICからの出力を平滑化して前記出力信号用電圧制御発振器の制御電圧として出力する第2のループフィルタと、
前記出力信号用電圧制御発振器の出力を増幅する増幅器と、
前記外部基準入力信号を入力して検波する検波回路と、
前記検波回路からの検波出力を入力し、前記外部基準入力信号が入力されている「入」の場合には、前記スイッチに前記第1のPLL−ICの出力を前記第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力し、前記外部基準入力信号が入力されていない「断」の場合には、前記スイッチに前記可変抵抗の出力を前記第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力し、前記第1のPLL−ICと前記第2のPLL−ICに所望の周波数を出力させるためのデータを設定する制御回路と、
前記外部基準入力信号の「断」を検出して前記制御回路より高速に前記スイッチに前記可変抵抗の出力を前記第1のループフィルタに出力させる切替信号を出力するスイッチ高速切替回路とを有することを特徴とする周波数シンセサイザ。
【請求項2】
スイッチ高速切替回路は、
前記外部基準入力信号の入力がないとパルス信号を出力しないワンショットマルチバイブレータと、
制御回路からの切替信号を一方の入力端子に入力し、前記ワンショットマルチバイブレータからの信号を他方の入力端子に入力し、論理積の信号を切替信号としてスイッチに出力する論理積回路とを有することを特徴とする請求項1記載の周波数シンセサイザ。
【請求項3】
スイッチ高速切替回路は、
前記外部基準入力信号の入力がないとパルス信号を出力しないワンショットマルチバイブレータと、
前記ワンショットマルチバイブレータの出力をベースに入力し、エミッタには電源電圧が印加され、コレクタから出力が得られるPNP型の第1のトランジスタと、前記コレクタの出力がベースに入力され、エミッタが接地し、コレクタから出力が得られるNPN型の第2のトランジスタと、
前記制御回路からの出力がベースに入力され、エミッタが接地され、コレクタから出力が得られるNPN型の第3のトランジスタと、
前記第2のトランジスタのコレクタと前記第3のトランジスタのコレクタが、電源電圧に接続するプルアップ抵抗に接続してスイッチの切替信号の入力端子に接続することを特徴とする請求項1記載の周波数シンセサイザ。
【請求項4】
スイッチ高速切替回路は、
外部基準入力信号を入力して分周する第1のカウンタと、
前記第1のカウンタ出力を内部の基準信号でラッチして遅延させる複数段のフリップフロップと、
前記複数段のフリップフロップの異なる出力の排他的論理和を出力する排他的論理和回路と、
前記排他的論理和回路の出力でリセット動作を行い、前記内部の基準信号を分周する第2のカウンタと、
前記第2のカウンタ出力をクロックとして入力し、可変抵抗の出力を第1のループフィルタに出力させる切替信号をハイレベルの信号として出力すると共に、前記排他的論理和回路の反転出力でリセット動作を行うクリア付フリップフロップとを有することを特徴とする請求項1記載の周波数シンセサイザ。
【請求項5】
スイッチ高速切替回路は、
第1のカウンタと第2のカウンタが、パワーオンリセット信号でリセットし、
クリア付フリップフロップが、前記パワーオンリセット信号の反転出力でリセットすることを特徴とする請求項4記載の周波数シンセサイザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55521(P2013−55521A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192617(P2011−192617)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】