説明

噴霧方法および装置

【課題】 エッチング液または現像液等の処理液を、処理の対象となる被処理材料に均一に噴霧する。
【解決手段】 隣接するヘッダパイプ1a〜1g間において隣接するエッチングノズル3の間の距離をP3、エッチングノズル3のオシレーションの中心位置とエッチングがなされるプリント配線板2との間の距離をL3、最大オシレーション角度をθ3としたときに、下記の式を満たすように最大オシレーション角度θ3を調整する。
(P3/2)/L3<tanθ3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板のエッチング装置や現像装置において、エッチング液や現像液等の処理液を、プリント配線板等の被処理材料に噴霧する噴霧方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁基板に銅箔を積層したプリント配線板に配線パターンを形成する際、不要部分の銅箔はエッチングにより取り除かれる。従来のエッチング方法はエッチング装置本体内を通過する搬送装置にプリント配線板を載置し、搬送されるプリント配線板の表面にエッチング液を噴霧する方法が採用されている。
【0003】
図19はエッチング装置の平面図である。図19に示すように、ヘッダ26に多数の分岐ヘッダ27が互いに平行にかつプリント配線板の搬送方向に所定の角度傾斜して配置されており、各分岐ヘッダ27に多数のエッチングノズル3が設けられている。この分岐ヘッダ27は不図示のオシレーション装置により軸の周りに揺動するように構成されている。すなわち、図20に示すように分岐ヘッダ27の下面に突設された多数のエッチングノズル3の向きが、時間の経過と共に周期的に変化するように構成し、プリント配線板2の表面の各部におけるエッチング液の噴霧条件を可能な限り均一に維持するものである。
【0004】
なお、エッチング装置によってはオシレーション装置を備えていないものもあり、このようなエッチング装置においては、エッチングノズル3は揺動されることなく、エッチング液が噴霧されることとなる。
【0005】
このようなエッチング装置において、各分岐ヘッダのノズルから噴霧されるエッチング液は、隣接する分岐ヘッダの中間部において最も多く集まる。そして、ノズルの揺動に伴い、エッチング液の盛り上がり部が移動する。このときプリント配線板の幅方向縁部のエッチング液は比較的円滑に排除され易いが、幅方向中央部のエッチング液は全体として停留しがちである。したがって、プリント配線板の各部において、不均一なエッチングが生ずることになる。
【0006】
また、プリント配線板に積層されたレジスト層に配線パターンを露光した後の現像工程を実施する現像装置において、プリント配線板に現像液を噴霧する場合においても、現像液が停留すると不均一な現像が生ずることとなる。
【0007】
このため、エッチング液の噴霧時期を順次周期的に変化させることにより、プリント配線板各部において均一なエッチングを得るようにしたエッチング装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−226810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記特許文献1とは異なる手法により、エッチング液または現像液等の処理液を、処理の対象となる被処理材料に均一に噴霧することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による第1の噴霧方法は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置における噴霧方法において、
最大オシレーション位置における、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、該一方のノズルの位置と他方のノズルの位置との2等分線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行うことを特徴とするものである。
【0010】
「ノズルの中心線」とは、ノズルからは通常円錐状に処理液が噴霧されるが、ノズルにおける噴霧点を通り、処理液の噴霧方向に平行な線を意味する。
【0011】
「オシレーション」としては、ノズルをある一点を中心として揺動させるのみならず、ノズルを往復平行移動させることも含む。
【0012】
ここで、オシレーションは所定の振幅を持って行われるが、振幅が最大となる位置、すなわちオシレーション方向においてノズルが最大限に移動した位置が最大オシレーション位置となる。なお、最大オシレーション位置は、オシレーションにおいて2カ所に存在することとなる。この2カ所の最大オシレーション位置のほぼ中間位置を最小オシレーション位置とする。なお、ノズルが揺動する場合、ノズルの噴霧方向が被処理材料にほぼ直交する状態となるオシレーション位置が最小オシレーション位置となる。
【0013】
本発明による第2の噴霧方法は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置における噴霧方法において、
隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの最大オシレーション位置における該一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、他方のノズルの前記最大オシレーション位置とは逆側の最大オシレーション位置における該他方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行うことを特徴とするものである。
【0014】
本発明による第3の噴霧方法は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置における噴霧方法において、
最大オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度および最小オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度が略同一となるようにオシレーションを行うことを特徴とするものである。
【0015】
本発明による第4の噴霧方法は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設された噴霧装置における噴霧方法において、
隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズル間の距離をP1、前記ノズルの先端と前記被処理材料表面との距離をL1、隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズルから発せられた前記処理液の前記被処理材料表面における噴霧領域間の距離をP2としたとき、距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように、前記距離L1を調整することを特徴とするものである。
【0016】
本発明による第1の噴霧装置は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置において、
前記オシレーション手段は、最大オシレーション位置における、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、該一方のノズルの位置と他方のノズルの位置との2等分線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行う手段であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明による第2の噴霧装置は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置において、
前記オシレーション手段は、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの最大オシレーション位置における該一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、他方のノズルの前記最大オシレーション位置とは逆側の最大オシレーション位置における該他方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行う手段であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明による第3の噴霧装置は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置において、
前記オシレーション手段は、最大オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度および最小オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度が略同一となるようにオシレーションを行う手段であることを特徴とするものである。
【0019】
本発明による第4の噴霧装置は、複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設された噴霧装置において、
隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズル間の距離をP1、前記ノズルの先端と前記被処理材料表面との距離をL1、隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズルから発せられた前記処理液の前記被処理材料表面における噴霧領域間の距離をP2としたとき、距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように、前記距離L1が調整されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の噴霧方法および装置においては、最大オシレーション位置において、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの中心線の被処理材料表面における交点が、一方のノズルの位置と他方のノズルの位置との2等分線の被処理材料表面における交点を超えるようにオシレーションを行うようにしたため、被処理材料表面における処理液の停留を防止し、均一に処理液を噴霧することができる。
【0021】
本発明の第2の噴霧方法および装置においては、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの最大オシレーション位置における一方のノズルの中心線の被処理材料表面における交点が、他方のノズルの最大オシレーション位置とは逆側の最大オシレーション位置における他方のノズルの中心線の被処理材料表面における交点を超えるようにオシレーションを行うようにしたため、被処理材料表面における処理液の停留を防止し、均一に処理液を噴霧することができる。
【0022】
本発明の第3の噴霧方法および装置においては、最大オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度および最小オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度が略同一となるようにオシレーションを行うようにしたため、被処理材料表面における処理液の停留を防止し、均一に処理液を噴霧することができる。
【0023】
本発明の第4の噴霧方法および装置においては、距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように、ノズルの先端と被処理材料表面との距離L1を調整するようにしたため、被処理材料表面における処理液の停留を防止し、均一に処理液を噴霧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の第1の実施形態による噴霧装置を適用したエッチング装置の平面図、図2は同正面図である。本実施形態によるエッチング装置100は、現像がなされたプリント配線板2のエッチングを行うためのものであり、コンベアライン19上に多数のカップリングロール7が並列され、上流側にエッチング装置本体5が設けられ、下流側に洗浄機本体6が設けられている。エッチング装置本体5はその下部にエッチング液タンク16が設けられ、コンベアライン19を挟んで上下にそれぞれヘッダパイプ1a〜1gが配置されている。これらのヘッダパイプ1a〜1gは互いに平行かつ搬送面に平行であると共に、搬送方向に対してはわずかに傾斜している。なお、搬送方向に平行にヘッダパイプ1a〜1gを配置してもよく、搬送方向に対して所定の角度を持ってヘッダパイプ1a〜1gを配置してもよい。各ヘッターパイプには多数(例えば10個)のエッチングノズル3が等間隔に配置されている。また、エッチングノズル3は、コンベアライン19が移動する方向と直交して整列して並ぶようにヘッダパイプ1a〜1gに配置されている。また、上下の各ヘッダパイプはその軸線の周りにわずかに揺動するいわゆるオシレーションが行われる。
【0025】
図3はオシレーション装置の構成を示す図である。図3に示すようにオシレーション装置50は、オシレーションモータ51、オシレーションモータ51の回転軸に取付けられた駆動ギア52、揺動レバー53が取付けられた従動ギア54、駆動ギア52の動力を従動ギア54に伝達するチェーン55、ヘッダパイプ1a〜1gに取付けられたクランク機構56およびクランク機構56と揺動レバー53とを連結するクランク棒57とを備える。
【0026】
クランク機構56は回転中心O1が固定されており、クランク棒57との連結部O2が揺動レバー53の回転に応じて上下に移動することにより、回転中心O1を中心として回転する。また、ヘッダパイプ1a〜1gはその中心軸と一致する、紙面に垂直方向に延びる固定された回転軸を有している。
【0027】
このようなオシレーション装置50は以下のように駆動する。オシレーションモータ51の駆動により駆動ギア52が矢印A方向に回転すると、従動ギア54および揺動レバー53が矢印B方向に回転する。これに伴い、クランク機構56が固定中心O1を中心として矢印C方向に揺動することにより、オシレーションアームが矢印D方向に往復移動する。これにより、オシレーションアーム56aに枢着されたリンク56bがヘッダパイプ1a〜1gの回転軸の周りに左右に揺動する。このリンク56bとヘッダパイプ1a〜1gとは固定されているため、各ヘッダパイプ1a〜1gはリンク56bの揺動に伴って首ふり動作を行う。そして、エッチングノズル3から噴射されるエッチング液の噴霧範囲を図4および図5に示すように時間的に変化させる。なお、図4はエッチングノズル3が右側最大オシレーション位置に揺動した状態を、図5はエッチングノズル3が左側最大オシレーション位置に揺動した状態をそれぞれ示す。
【0028】
ここで、第1の実施形態においては、エッチングノズル3のオシレーション角度は以下のように制御される。図6は第1の実施形態におけるエッチングノズル3のオシレーション角度の一態様を説明するための図である。なお、第1の実施形態においては、エッチングノズル3のオシレーション角度はオシレーション方向において左右均等であるものとする。第1の実施形態においては、隣接するヘッダパイプ1a〜1g間において隣接するエッチングノズル3の間の距離をP3、オシレーションの中心位置(すなわちヘッダパイプ1a〜1gの回転軸の位置)とエッチングがなされるプリント配線板2との間の距離をL3、最大オシレーション角度をθ3としたときに、下記の式(1)を満たすように最大オシレーション角度θ3を調整する。なお、最大オシレーション角度θ3とは、エッチングノズル3が真下を向いた状態を基準とした場合に、左右に最も大きくエッチングノズル3が傾斜したときのヘッダパイプ1a〜1gの回転角度を意味する。
【0029】
(P3/2)/L3<tanθ3 (1)
式(1)を満たすように最大オシレーション角度θ3を調整することにより、最大オシレーション位置において、隣接するヘッダパイプ1a〜1g間における隣接する一方のエッチングノズル3の中心線のプリント配線板2の表面における交点Cが、隣接するエッチングノズル3の位置の2等分線のプリント配線板2の表面との交点を超えるように、オシレーションが行われることとなる。
【0030】
なお、最大オシレーション角度の調整は、クランク棒57の揺動レバー53における取り付け位置を従動ギア54の半径方向において変更することにより行えばよい。
【0031】
ここで、エッチングノズル3のオシレーション角度がオシレーション方向において均等でない場合においても、式(1)を満たすように最大オシレーション角度θ3を調整すればよい。この場合、図7に示すように、隣接するヘッダパイプ1a〜1g間における隣接する一方のエッチングノズル3の最大オシレーション位置における一方のエッチングノズル3の中心線のプリント配線板2の表面における交点Cが、他方のエッチングノズル3の最大オシレーション位置とは逆側の最大オシレーション位置における他方のエッチングノズル3の中心線のプリント配線板2の表面における交点Dを超えるように、オシレーションが行われることとなる。
【0032】
次いで、第1の実施形態によるエッチング装置の動作について説明する。配線パターンが露光されて現像がなされたプリント配線板2は図2のコンベアライン19上をエッチング装置100の最左端から供給される。コンベアライン19においてプリント配線板2を搬送するコンベアは、図8に示す多数のカップリングロール7により構成される。図8に示すように、カップリングロール7は、上下互いに平行に配置された軸に、一定間隔で幅の狭いゴムローラが固定されることにより構成される。各ゴムローラは、その側面にエッチング液流通用の多数の孔が穿設されている。一対のカップリングロール7は互いに同期するように、一対の平行軸が一組の歯車34により連結されている。また、一方の軸はベベルギア33を介してコンベア駆動軸32に連結されている。コンベア駆動軸32は装置の長手方向に配置され、適宜間隔でベベルギア33が設けられ、各カップリングロール7を駆動するものである。このようなコンベアライン19上をプリント配線板2が図2の左から右に移動する。
【0033】
塩化第二鉄、塩化第二銅、過酸化水素等からなるエッチング液はエッチング液タンク16からポンプおよびロータリバルブを介し各ヘッダパイプ1a〜1fに供給され、プリント配線板2にスプレーされる。スプレーされたエッチング液はエッチング液タンク16に流入し、再びスプレーされる。
【0034】
エッチング液はヒータ等の加熱装置や冷却装置によって所定温度に維持される。これとともに、新しいエッチング液が供給され、所定の濃度に維持される。プリント配線板2は、本装置を通過すると酸洗浄ノズル17、水洗浄ノズル18により洗浄される。そして、液切りロール9および絞りロール14を経て外部に取り出される。これらの制御は図2における制御盤8を介して行われ、エッチング作業時にはコンベアモータ13、水洗ポンプ12、およびオシレーションモータ51その他が駆動される。
【0035】
このように、本発明の第1の実施形態においては、上記式(1)を満たすように最大オシレーション角度θ3を調整することにより、オシレーション角度がオシレーション方向において均等である場合においては、最大オシレーション位置において、隣接するヘッダパイプ1a〜1g間における隣接する一方のエッチングノズル3の中心線のプリント配線板2の表面における交点Cが、エッチングノズル3間の2等分線のプリント配線板2の表面との交点を超えるように、オシレーションを行うようにしたものである。また、オシレーション角度がオシレーション方向において均等でない場合には、隣接するヘッダパイプ1a〜1g間における隣接する一方のエッチングノズル3の最大オシレーション位置における一方のエッチングノズル3の中心線のプリント配線板2の表面における交点Cが、他方のエッチングノズル3の最大オシレーション位置とは逆側の最大オシレーション位置における他方のエッチングノズル3の中心線のプリント配線板2の表面における交点Dを超えるように、オシレーションを行うようにしたものである。
【0036】
このため、プリント配線板2の表面におけるエッチング液の停留を防止し、均一にエッチング液を噴霧することができる。
【0037】
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態による噴霧装置において第1の実施形態と同一の構成については同一の参照番号を付し、詳細な説明は省略する。図9は第2の実施形態における噴霧装置に用いられるオシレーション装置の構成を示す図である。図9に示すように第2の実施形態におけるオシレーション装置60は、第1の実施形態におけるオシレーション装置50に、従動ギア54に取付けられた、複数の切欠が形成された位置検出用円盤61、円盤61における切欠の位置を検出するフォトインタラプタ62およびオシレーションモータ51の回転を制御する制御部63を設けたものである。
【0038】
位置検出用円盤61には、初期位置を検出するための切欠61A、初期位置を0度として円盤61の45度、135度、225度および315度の回転位置を検出するための、切欠61Aよりも小さい切欠61B〜61Eが形成されている。
【0039】
フォトインタラプタ62は、切欠61A〜61Eがフォトインタラプタ62を通過したときにオンとなってオン信号を出力し、それ以外の場合にはオフとなって信号を出力しない。
【0040】
制御部63は以下のようにしてオシレーションモータ51の回転速度を制御する。図12はモータの回転速度の制御を説明するための図である。位置検出用円盤61における切欠61Aの位置は、円盤61を横から見た場合、オシレーションモータ51の回転によりサインカーブを描くように移動する。一方、フォトインタラプタ62からは、切欠61A〜61Eが通過する毎にオン信号が出力される。すなわち、0度の初期回転位置(すなわち切欠61Aがフォトインタラプタ62を通過する位置)においてフォトインタラプタ62は長いオン信号を、45度、135度、225度および315度の回転位置において初期回転位置よりも短いオン信号を出力する。
【0041】
制御部63は、オシレーションの開始時において、初期回転位置のオン信号を検出したときに回転速度がLowとなるようにオシレーションモータ51の回転速度を制御する。初期回転位置のオン信号を検出した後に短いオン信号を検出した場合、回転速度がHighとなるようにオシレーションモータ51の回転速度を制御する。そして、以下、短いオン信号を検出する毎にオシレーションモータ51の回転速度をLow、Highと交互に切り替える。
【0042】
したがって、図9に示すようにエッチングノズル3が初期位置付近にある間はオシレーションモータ51の回転速度がLowとされ、図10および図11に示すように、エッチングノズル3が最大オシレーション位置付近にある間は、オシレーションモータ51の回転速度がHighとされる。
【0043】
ここで、第3の実施形態においては、エッチングノズル3が最大オシレーション位置付近に移動した場合のオシレーション速度、および初期位置(すなわち最小オシレーション位置)付近に移動した場合のオシレーション速度が略同一となるように、Low時およびHigh時におけるオシレーションモータ51の回転速度の比率を設定する。
【0044】
図13は本出願人によりモータ51の回転速度の比率を種々変更した場合のエッチングの効果を示す図である。図13に示すように、Low時およびHigh時の回転速度の比率としては、Low:High=4:6〜2.5:7:5とすることにより、最大オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度および最小オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度が略同一となり、ムラが中程度以下となることが分かった。したがって、Low時およびHigh時におけるオシレーションモータ51の回転速度の比率としては、Low:High=4:6〜2.5:7:5とすることが好ましい。
【0045】
ここで、オシレーションモータ51の回転速度を一定とした場合、初期位置付近と最大オシレーション位置付近においてオシレーション速度が異なるものとなるため、エッチングにムラが生じる。すなわち、最小オシレーション位置付近においてはオシレーション速度が速く、最大オシレーション位置付近においてはオシレーション速度が遅くなることから、エッチング液の照射エリアの中央部と比較して縁部のエッチングの効果が強くなってしまう。
【0046】
第2の実施形態においては、最大オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度および最小オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度が略同一となるように、Low時およびHigh時におけるオシレーションモータ51の回転速度の比率を設定してオシレーションを行うようにしたため、プリント配線板2の表面におけるエッチング液の停留を防止し、均一にエッチング液を噴霧することができる。
【0047】
なお、第2の実施形態においては、位置検出用円盤61を従動ギア54に取付けているが、とくに駆動ギア52と従動ギア54とのギア比が1:1である場合には、駆動ギア52に位置検出用円盤61を取付けてもよい。
【0048】
次いで、本発明の第3の実施形態について説明する。上記第1および第2の実施形態においてはオシレーション装置によりエッチングノズル3のオシレーションを行っていたが、第3の実施形態はオシレーションを行わないものである。図14は本発明の第3の実施形態による噴霧装置のエッチングノズルとプリント配線板との位置関係を説明するための図である。第3の実施形態においては、隣接するヘッダパイプ1a〜1g間において隣接するエッチングノズル3の間の距離をP1、エッチングノズル3からのエッチング液の噴角をθ1、エッチングノズル3の先端とプリント配線板2の表面との距離をL1、隣接するヘッダパイプ1a〜1g間における隣接するエッチングノズル3から発せられたエッチング液のプリント配線板2の表面における噴霧領域間の距離をP2としたときに、距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように、距離L1を調整するようにしたものである。なお、噴霧領域が重なる場合、距離P2は負の値をとり、離れる場合、距離P2は正の値をとるものとする。また、1つのヘッダパイプ1a〜1gにおける隣接するエッチングノズル3間の距離もP1とする。
【0049】
具体的には、距離P1および噴角θ1は固定であることから、下記の式(2)から式(3)を求め、式(3)において距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように、距離L1を調整する
P1=L1×tan(θ1/2)×2+P2 (2)
P2=P1−L1tan(θ1/2)×2 (3)
ここで、図15(a)に示すように、隣接するエッチングノズル3の距離が100mm、噴角が65度、距離L1が118mmの場合、距離P2は−50mmとなり、図15(b)に示すように全てのエッチングノズル3から発せられるエッチング液のプリント配線板2上における噴霧領域が重なる。
【0050】
このように噴霧領域が重なると、エッチングノズル3から発せられたエッチング液が、プリント配線板2の表面に到達する前に隣接する他のエッチングノズル3から発せられたエッチング液と衝突するため、プリント配線板2に対するエッチング液の吹き付け力が低下する。また、プリント配線板2の表面において吹き付けられたエッチング液の逃げ場がなくなるため、新たに吹き付けられたエッチング液とプリント配線板2の表面に停留するエッチング液との交換が進まないことから、エッチング処理を効率よく行うことができない。
【0051】
また、図16(a)に示すように、隣接するエッチングノズル3の距離が100mm、噴角が65度、距離L1が77mmの場合、距離P2は2mmとなり、図16(b)に示すように全てのエッチングノズル3から発せられるエッチング液のプリント配線板2上における噴霧領域は2mmの間隔が空けられたものとなる。この場合、距離P2は距離P1の2%となる。
【0052】
このように、距離P2が距離P1の2%となる場合、プリント配線板2の表面において吹き付けられたエッチング液の逃げ場が狭いため、新たに吹き付けられたエッチング液とプリント配線板2の表面に停留するエッチング液との交換が進まないことから、エッチング処理を効率よく行うことができない。
【0053】
また、図17(a)に示すように、隣接するエッチングノズル3の距離が100mm、噴角が65度、距離L1が47mmの場合、距離P2は40mmとなり、図17(b)に示すように全てのエッチングノズル3から発せられるエッチング液のプリント配線板2上における噴霧領域は40mmの間隔が空けられたものとなる。この場合、距離P2は距離P1の40%となる。
【0054】
このように、距離P2が距離P1の40%となる場合、プリント配線板2の表面において吹き付けられたエッチング液の逃げ場は十分に形成されるものの、エッチング液が吹き付けられない部分が大きくなることから、プリント配線板2の表面にエッチングされた部分とされない部分とが現れてしまう。
【0055】
一方、図18(a)に示すように、隣接するエッチングノズル3の距離が100mm、噴角が65度、距離L1が71mmの場合、距離P2は10mmとなり、図18(b)に示すように全てのエッチングノズル3から発せられるエッチング液のプリント配線板2上における噴霧領域は10mmの間隔が空けられたものとなる。この場合、距離P2は距離P1の10%となる。
【0056】
このように、距離P2が距離P1の10%となる場合、プリント配線板2の表面において吹き付けられたエッチング液の逃げ場は十分に形成され、また噴霧領域の中央付近においてもエッチング液の停留は見られなかった。
【0057】
したがって、第3の実施形態のように、距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように距離L1を調整することにより、プリント配線板2の表面におけるエッチング液の停留を防止し、プリント配線板2に均一にエッチング液を噴霧することができる。
【0058】
なお、上記実施形態においては、エッチング装置に本発明の噴霧装置を適用しているが、露光後の基板を現像する現像装置にも本発明の噴霧装置を適用できることはもちろんである。
【0059】
また、上記第1および第2の実施形態においては、エッチングノズル3を揺動することによりオシレーションを行っているが、エッチングノズル3を往復平行移動させることによりオシレーションを行うようにしてもよい。
【0060】
また、上記第1および第2の実施形態においては、ヘッダパイプ1a〜1gにノズル3を一定間隔にて配設しているが、とくに一定とする必要はないものである。
【0061】
また、上記実施形態においては、プリント配線板にエッチングや現像を行う装置について説明しているが、これに限定されるものではなく、カラーフィルタや、柱材、リブ材、スペーサおよび隔壁等のディスプレイ材料、あるいはホログラム、マイクロマシンおよびプルーフ等のパターン形成用の記録媒体等、各種被処理材料に被処理液を噴霧する場合にも、本発明の噴霧方法および装置を適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態による噴霧装置を提供したエッチング装置の平面図
【図2】本発明の第1の実施形態による噴霧装置を提供したエッチング装置の側面図
【図3】第1の実施形態における噴霧装置に用いられるオシレーション装置の構成を示す図(その1)
【図4】第1の実施形態における噴霧装置に用いられるオシレーション装置の構成を示す図(その2)
【図5】第1の実施形態における噴霧装置に用いられるオシレーション装置の構成を示す図(その3)
【図6】第1の実施形態におけるオシレーション角度の一態様を説明するための図
【図7】第1の実施形態におけるオシレーション角度の他の態様を説明するための図
【図8】エッチング装置のコンベアの構成を示す図
【図9】第2の実施形態における噴霧装置に用いられるオシレーション装置の構成を示す図(その1)
【図10】第2の実施形態における噴霧装置に用いられるオシレーション装置の構成を示す図(その2)
【図11】第2の実施形態における噴霧装置に用いられるオシレーション装置の構成を示す図(その3)
【図12】オシレーションモータの回転速度の制御を説明するための図
【図13】オシレーションモータの回転速度を変更した実験結果を示す図
【図14】本発明の第3の実施形態による噴霧装置のエッチングノズルと基板との位置関係を説明するための図
【図15】エッチングノズルとプリント配線板との位置関係の悪い例を示す図(その1)
【図16】エッチングノズルとプリント配線板との位置関係の悪い例を示す図(その2)
【図17】エッチングノズルとプリント配線板との位置関係の悪い例を示す図(その3)
【図18】エッチングノズルとプリント配線板との位置関係のよい例を示す図
【図19】従来のエッチング装置の構成を示す平面図
【図20】オシレーションを説明するための図
【符号の説明】
【0063】
1a〜1g ヘッダパイプ
2 プリント配線板
3 エッチングノズル
5 エッチング装置本体
7 カップリングロール
19 コンベアライン
50,60 オシレーション装置
51 オシレーションモータ
52 駆動ギア
53 揺動レバー
54 従動ギア
55 チェーン
56 クランク機構
57 クランク棒
61 位置検出用円盤
62 フォトインタラプタ
63 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置における噴霧方法において、
最大オシレーション位置における、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、該一方のノズルの位置と他方のノズルの位置との2等分線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行うことを特徴とする噴霧方法。
【請求項2】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置における噴霧方法において、
隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの最大オシレーション位置における該一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、他方のノズルの前記最大オシレーション位置とは逆側の最大オシレーション位置における該他方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行うことを特徴とする噴霧方法。
【請求項3】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置における噴霧方法において、
最大オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度および最小オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度が略同一となるようにオシレーションを行うことを特徴とする噴霧方法。
【請求項4】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設された噴霧装置における噴霧方法において、
隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズル間の距離をP1、前記ノズルの先端と前記被処理材料表面との距離をL1、隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズルから発せられた前記処理液の前記被処理材料表面における噴霧領域間の距離をP2としたとき、距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように、前記距離L1を調整することを特徴とする噴霧方法。
【請求項5】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置において、
前記オシレーション手段は、最大オシレーション位置における、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、該一方のノズルの位置と他方のノズルの位置との2等分線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行う手段であることを特徴とする噴霧装置。
【請求項6】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置において、
前記オシレーション手段は、隣接するヘッダパイプ間における隣接する一方のノズルの最大オシレーション位置における該一方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点が、他方のノズルの前記最大オシレーション位置とは逆側の最大オシレーション位置における該他方のノズルの中心線の前記被処理材料表面における交点を超えるように、オシレーションを行う手段であることを特徴とする噴霧装置。
【請求項7】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設され、該複数のノズルを前記複数のヘッダパイプ間において同期させてオシレーションするオシレーション手段を備えた噴霧装置において、
前記オシレーション手段は、最大オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度および最小オシレーション位置近傍におけるオシレーション速度が略同一となるようにオシレーションを行う手段であることを特徴とする噴霧装置。
【請求項8】
複数のヘッダパイプが互いに平行に、かつ被処理材料の搬送レベルの少なくとも上方に配置され、該複数のヘッダパイプのそれぞれに処理液を噴霧する複数のノズルが配設された噴霧装置において、
隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズル間の距離をP1、前記ノズルの先端と前記被処理材料表面との距離をL1、隣接するヘッダパイプ間における隣接するノズルから発せられた前記処理液の前記被処理材料表面における噴霧領域間の距離をP2としたとき、距離P2が距離P1の5%以上20%以下となるように、前記距離L1が調整されてなることを特徴とする噴霧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2006−135162(P2006−135162A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323699(P2004−323699)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【復代理人】
【識別番号】100104189
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 勲将
【Fターム(参考)】