説明

回路部材接続用接着剤、回路板、及びその製造方法

【課題】接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上した回路板を提供する。
【解決手段】第1の接続端子を有する第1の回路部材と、上記第1の接続端子に対向する第2の接続端子を有する第2の回路部材と、の間に介在され、上記第1の接続端子と上記第2の接続端子とを電気的に接続する回路部材接続用接着剤40であって、第3の接着剤層と第4の接着剤層とを備え、上記第3の接着剤層のガラス転移温度が120℃以上であり、上記第4の接着剤層のガラス転移温度が、上記第3の接着剤層のガラス転移温度より低く、上記第1の回路部材及び上記第2の回路部材のうち、相対的に弾性率が大きい側に上記第3の接着剤層側が接着され、相対的に弾性率が小さい側に上記第4の接着剤層側が接着されるように配置される、回路部材接続用接着剤40。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフリップチップ実装方法により半導体チップと基板とを接着固定するとともに両者の電極どうしを電気的に接続するために使用される回路部材接続用接着剤と、回路部材どうしが接続された回路板と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体実装分野では、低コスト化・高精度化に対応した新しい実装形態としてIC(Integrated Circuit)チップを直接プリント基板やフレキシブル配線板に搭載するフリップチップ実装が注目されている。
【0003】
フリップチップ実装方法としては、チップの端子にはんだバンプを設け、はんだ接続を行う方法や導電性接着剤を介して電気的接続を行う方法が知られている。これらの方法では、各種の環境に曝した場合、接続するチップと基板の熱膨張係数差に基づくストレスが接続界面で発生し接続信頼性が低下するという問題がある。このため、一般に、接続界面のストレスを緩和する目的でエポキシ樹脂系のアンダフィル材をチップ/基板の間隙に注入する方法が検討されている。
【0004】
しかし、このアンダフィルの注入工程は、プロセスを煩雑化し、生産性、コストの面で不利になるという問題がある。このような問題を解決すべく、最近では、異方導電性と封止機能とを有する異方導電性接着剤を用いたフリップチップ実装が、プロセス簡易性という観点から注目されている。
【0005】
しかしながら、異方導電接着剤を介してチップを直接基板に搭載すると、温度サイクル試験においてチップと基板との熱膨張係数差に基づくストレスが接続部で生じることから、熱衝撃試験、PCT(Pressure Cooker Test)試験、はんだバス浸漬試験などの信頼性試験を行うと接続抵抗の増大や接着剤の剥離が生じるという問題がある。また、チップの接続端子に突起電極が形成されている場合、信頼性試験においてチップと基板との熱膨張係数差に基づくストレスが突起電極とチップとの界面に集中して、突起電極がチップ電極界面から剥離し、導通不良が生じるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上する回路部材接続用接着剤と、回路部材どうしが接続された回路板と、その製造方法とを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の回路部材接続用接着剤は、相対向する回路電極間に介在して、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続するための回路部材接続用接着剤であって、接着樹脂組成物と無機質充填材とを含み、接着樹脂組成物100重量部に対して無機質充填材を10〜200重量部含有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の回路部材接続用接着剤は、相対向する回路電極間に介在させ、相対向する回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続するための回路部材接続用接着剤であって、接着樹脂組成物と無機質充填材とを含み、接着樹脂組成物100重量部に対して無機質充填材を10〜200重量部含有する第1の接着剤層と、接着樹脂組成物を主成分とする第2の接着剤層とを備えた多層構成のものである。
【0009】
また、本発明の第3の回路部材接続用接着剤は、相対向する回路電極間に介在され、相対向する回路電極の間を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続するための回路部材接続用接着剤であって、接着樹脂組成物と無機質充填材とを含み、上記接着剤の硬化後の110〜130℃での平均熱膨張係数が200ppm/℃以下であることを特徴とする。接着剤の硬化後の110〜130℃での平均熱膨張係数は30〜200ppm/℃であることが好ましい。
【0010】
また本発明の第4の回路部材接続用接着剤は、相対向する回路電極間に介在させ、相対向する回路電極を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続するための回路部材接続用接着剤であって、互いに異なる物性値を持つ第3の接着剤層と第4の接着剤層とを備えた多層構成のものである。
【0011】
上記接着剤の硬化後の弾性率が、第3の接着剤層>第4の接着剤層であり、第4の接着剤層の硬化後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであることが好ましい。
【0012】
また、上記接着剤の熱膨張係数が第3の接着剤層<第4の接着剤層であり、第3の接着剤層の30〜100℃までの熱膨張係数が20〜70ppm/℃であることが好ましい。
【0013】
また、接着剤のガラス転移温度が第3の接着剤層>第4の接着剤層であり、第3の接着剤層のガラス転移温度が120℃以上であることが好ましい。
【0014】
上記第3及び第4の少なくともいずれか一方の接着剤層は、接着樹脂組成物100重量部に対して無機質充填材を10〜200重量部含有することができる。
【0015】
上記接着剤は、接着樹脂組成物100体積部に対して導電粒子を0.1〜30体積部含有することができる。
【0016】
上記接着剤では、接着樹脂組成物の硬化後の40℃での弾性率が30〜2000MPaであることが好ましい。
【0017】
接着剤組成物は、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤を含有することができ、アクリルゴムとしては、その分子中にグリシジルエーテル基を含有しているものが好ましい。
【0018】
上記接着剤は、形状がフィルム状であってもよい。
【0019】
本発明の回路板は、
第1の接続端子を有する第1の回路部材と、
第2の接続端子を有する第2の回路部材とを、
第1の接続端子と第2の接続端子とを対向させて配置し、
上記対向配置された第1の接続端子と第2の接続端子との間に接着剤を介在させ、
加熱加圧して上記対向配置した第1の接続端子と第2の接続端子とを電気的に接続させた回路板であって、
上記接着剤が本発明の回路部材接続用接着剤であることを特徴とする。
【0020】
第1の接続端子を有する第1の回路部材が第1の接続端子を有する無機質絶縁基板であり、第2の接続端子を有する第2の回路部材が、第2の接続端子を有する有機質絶縁基板である場合、上記多層構成の接着剤の第1の接着剤層又は第3の接着剤層は、上記第1の回路部材側に接着して使用される。
【0021】
本発明の回路部材接続用接着剤は、相対向する回路電極間に介在させ、相対向する回路電極を加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続するための回路部材接続用接着剤であって、接着樹脂組成物と無機質充填材とを含み、接着樹脂組成物100重量部に対して無機質充填材を10〜200重量部含有する回路部材接続用接着剤、または、接着樹脂組成物100重量部に対して無機質充填材を10〜200重量部含有する第1の接着剤層と接着樹脂組成物を主成分とする第2の接着剤層とを備えた多層構成の回路部材接続用接着剤である。このような本発明の回路部材接着用接着剤において、接着樹脂組成物100重量部に対して無機質充填材を10〜200重量部含有する回路部材接続用接着剤の接着樹脂組成物は、硬化後の40℃での弾性率が30〜2000MPaであるものが好ましく、このとき接着剤の40℃での弾性率は100〜5000MPaであることができ、2000MPaを超え、3500MPa以下であることが好ましい。
【0022】
接着樹脂組成物の硬化後の40℃での弾性率が30〜2000MPaのもので、無機質充填材を含有することにより接着剤の40℃での弾性率が2000MPaを超えるものは、低弾性率接着樹脂組成物による応力緩和とともに無機質充填材により熱膨張係数を小さくすることができ、接続信頼性に優れる回路部材接続用接着剤を提供することができる。
【0023】
接着樹脂組成物を主成分とする第2の接着剤層には、無機質充填材を含有しないことが望ましいが、特性を調整するため第1の接着剤層の無機質充填材の量より少ない量、例えば50重量%未満、好ましくは20重量%未満含有することができる。
【0024】
また、接着樹脂組成物を主成分とする第2の接着剤層は、硬化後の40℃における弾性率が100〜2000MPaの接着剤層とすることができる。
【0025】
本発明に用いられる多層構成の接着剤は、相接続する回路部材の弾性率又は熱膨張係数の大小に応じて配置することが望ましい。すなわち、相対的に回路部材の弾性率が大きい又は熱膨張係数の小さい側に、相対的に弾性率の大きい又は熱膨張係数の小さい又はガラス転移温度の高い第3の接着剤層側が、相対的に回路部材の弾性率が小さい又は熱膨張係数の大きい側に、相対的に弾性率の小さい又は熱膨張係数の大きい又はガラス転移温度の低い第4の接着剤層側が接着されるように接着剤を配置することが望ましい。
【0026】
本発明に用いられる多層構成の接着剤において、例えば半導体チップと有機絶縁基板とを接続する場合、チップと有機絶縁基板との間の熱膨張係数差に基づく応力を緩和する目的では、有機絶縁基板側の面を構成する第4の接着剤層の硬化後の40℃での弾性率は100〜2000MPaであることが好ましい。半導体チップ側の面を構成する第3の接着剤層の硬化後の40℃での弾性率は、第4の接着剤層より大きく、500〜5000MPaが使用される。
【0027】
また、半導体チップと有機絶縁基板の間の熱膨張係数差に基づく応力を緩和する目的で半導体チップ側の面を構成する第3の接着剤層の30〜100℃までの熱膨張係数は20〜70ppm/℃であることが好ましく、有機絶縁基板側の面を構成する第4の接着剤層の30〜100℃までの熱膨張係数は第3の接着剤層より大きく、30〜100ppm/℃であることが好ましい。
【0028】
また、半導体チップと有機絶縁基板の間の熱膨張係数差に基づく応力を緩和する目的で半導体チップ側の面を構成する第3の接着剤層のガラス転移温度が120℃以上、更には180℃以下であることが好ましく、有機絶縁基板側の面を構成する第4の接着剤層のガラス転移温度は第3の接着剤層より小であることが好ましい。
【0029】
第3及び第4の少なくともいずれか一方の接着剤層は、無機質充填材を含有することができる。
【0030】
接着剤の接着後の段階に相当する接着フィルム硬化物の熱膨張係数及びガラス転移温度は、例えば、真空理工(株)熱機械試験機TM−7000(引っ張りモード、荷重5gf、5℃/分で昇温)を用いて測定することができる。なお、接着フィルムの硬化は、接着工程時の加熱温度及び時間と同じ条件で行い、硬化は、接着フィルムをオイルバスに浸漬して行うことができる。このような接着フィルム硬化物は、DSC(Differential Scanning Calorimeter)を用いた測定において全硬化発熱量の90%以上の発熱を終えたものである。
【発明の効果】
【0031】
上述のように、本発明によれば、接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上した回路板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の電子部品装置の構成の一例を示す断面図である。
【図2】電子部品と実装基板との接続状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明において用いられる接着樹脂組成物としては、エポキシ樹脂と、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤との混合物を用いることができ、回路部材の熱膨張係数差に基づくストレスを緩和するためには、接着後の40℃での弾性率が30〜2000MPaの接着樹脂組成物が好ましい。
【0034】
例えば、接続時の良好な流動性や高接続信頼性を得られる接着樹脂組成物として、エポキシ樹脂と、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤との混合物に、接着後の40℃での弾性率が30〜2000MPaになるようにアクリルゴムを配合したものが好ましい。
【0035】
接着樹脂組成物の接着後の段階に相当する接着樹脂組成物硬化物の弾性率は、例えば、レオロジ(株)製レオスペクトラDVE−4(引っ張りモード、周波数10Hz、5℃/分で昇温、−40℃から250℃まで測定)を用いてDVE法により測定することができる。なお、接着樹脂組成物の硬化は、接着工程時の加熱温度及び時間と同じ条件で行い、硬化は、接着樹脂組成物フィルムをオイルバスに浸漬して行うことができる。このような接着樹脂組成物フィルム硬化物は、DSCを用いて測定した場合の全硬化発熱量の90%以上の発熱を終えたものである。
【0036】
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独にあるいは2種以上を混合して用いることが可能である。これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na+、Cl-等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂は、熱膨張係数の低下及びガラス転移温度の向上のため、3官能以上の多官能エポキシ樹脂及び/又はナフタレン系エポキシ樹脂が好ましい。3官能以上の多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等がある。また、ナフタレン系エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも1個以上のナフタレン環を含んだ骨格を有しており、ナフトール系、ナフタレンジオール系等がある。
【0038】
アクリルゴムとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体があげられ、中でもグリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムが好適に用いられる。
【0039】
これらアクリルゴムの分子量は、接着樹脂組成物の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。アクリルゴムの接着樹脂組成物中の配合量は、15重量%以下であると接着後の40℃での弾性率が2000MPaを超えてしまい、また40重量%以上になると低弾性率化は図れるが接続時の溶融粘度が高くなって、接続電極間、又は接続電極と導電粒子との界面の溶融接着剤の排除性が低下するため、接続電極間又は接続電極と導電粒子間の電気的導通を確保できなくなる。このため、アクリル配合量としては15〜40重量%が好ましい。接着樹脂組成物に配合されたこれらのアクリルゴムは、ゴム成分に起因する誘電正接のピーク温度が40〜60℃付近にあるため、接着組成物の低弾性率化を図ることができる。
【0040】
接着樹脂組成物の硬化後の40℃での弾性率が30〜2000MPaであることが好ましく、接着剤の40℃での弾性率は100〜5000MPaであることができ、2000MPaを超えるものであることができる。
【0041】
また、接着剤にはフィルム形成性をより容易にするためにフェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂を配合することもできる。特に、フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂と構造が類似しているため、エポキシ樹脂との相溶性、接着性に優れるなどの特徴を有するので好ましい。フィルム形成は、これら少なくともエポキシ樹脂、アクリルゴム、フェノキシ樹脂、潜在性硬化剤からなる接着組成物と導電粒子とを有機溶剤に溶解あるいは分散することにより液状化して、剥離性基材表面に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。この時用いる溶剤は、芳香族炭化水素系溶剤と含酸素系溶剤との混合溶剤が材料の溶解性を向上させるため好ましい。
【0042】
本発明に用いられる無機質充填材としては、特に限定するものではなく、例えば、溶融シリカ、結晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム等の粉体があげられる。無機質充填材の配合量は、接着樹脂組成物100重量部に対して10〜200重量部であり、熱膨張係数を低下させるには配合量が大きいほど効果的であるが、多量に配合すると接着性や接続部での接着剤の排除性低下に基づく導通不良が発生し、配合量が小さいと熱膨張係数を充分低下できないため、20〜90重量部が好ましい。また、その平均粒径は、接続部での導通不良を防止する目的で3μm以下にするのが好ましい。また、接続時の樹脂の流動性の低下及びチップのパッシベーション膜のダメージを防ぐ目的では、球状充填材を用いることが望ましい。
【0043】
本発明の接着剤には、チップのバンプや基板電極の高さばらつきを吸収するために、異方導電性を積極的に付与する目的で導電粒子を混入・分散することもできる。本発明において導電粒子は、例えばAu、Ag、Cuやはんだ等の金属の粒子であり、ポリスチレン等の高分子の球状の核材にNi、Cu、Au、はんだ等の導電層を設けたものがより好ましい。更に導電性の粒子の表面にSn、Au、はんだ等の表面層を形成することもできる。粒径は基板の電極の最小の間隔よりも小さいことが必要で、電極の高さばらつきがある場合、高さばらつきよりも大きいことが好ましく、1〜10μmが好ましい。また、接着剤に分散される導電粒子量は、接着剤樹脂組成物100体積部に対して0.1〜30体積部であり、好ましくは0.2〜15体積部である。
【0044】
本発明の接着剤は、フィルム状接着剤として使用することができる。
【0045】
フィルム状接着剤は、エポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤等からなる接着組成物を有機溶剤に溶解あるいは分散することにより、液状化して、剥離性基材上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより得ることができる。
【0046】
多層構成のフィルム状接着剤は、例えば、第1又は第3のフィルム状接着剤と第2又は第4のフィルム状接着剤とを個々にポリエチレンテレフタレート、フッ素系樹脂等からなるセパレータフィルム(剥離性基材)の表面に塗布形成した後、第1又は第3のフィルム状接着剤と第2又は第4のフィルム状接着剤を加圧又は加圧と同時に加熱しながらラミネートして第1又は第3のフィルム状接着剤と第2又は第4のフィルム状接着剤とからなるフィルム状接着剤を得る方法、また、上記セパレータフィルム表面に第1又は第3のフィルム状接着剤(又は第2又は第4のフィルム状接着剤)を形成した上に、第2又は第4のフィルム状接着剤(又は第1又は第3のフィルム状接着剤)を重ねて塗布形成して第1又は第3のフィルム状接着剤と第2又は第4のフィルム状接着剤からなるフィルム状接着剤を得る方法等がある。
【0047】
第1又は第3のフィルム状接着剤と第2又は第4のフィルム状接着剤を積層してなるフィルム状接着剤との厚さは、合計で20〜120μmとすることが好ましく、第1又は第3のフィルム状接着剤と第2又は第4のフィルム状接着剤との個々の厚さの比は、第1又は第3のフィルム状接着剤:第2又は第4のフィルム状接着剤=1:9〜9:1の範囲とすることが好ましい。特に、半導体チップと有機絶縁基板との接続においては、第1又は第3のフィルム状接着剤:第2又は第4のフィルム状接着剤=3:7〜7:3の範囲とすることがより好ましい。
【0048】
フィルム状接着剤の膜厚は、第1及び第2の回路部材間のギャップに比べ、厚いほうが好ましく、一般にはギャップに対して5μm以上厚い膜厚が望ましい。
【0049】
本発明において、回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板、ポリイミドやポリエステルを基材としたフレキシブル配線板等の基板等が用いられる。
【0050】
チップ部品は、シリコン、ガラス、セラミックス、化合物半導体基板等の非金属の無機質絶縁基板に多数の接続端子が形成されており、プリント基板、ポリイミドやポリエステルを基材としたフレキシブル配線板等の基板は有機質絶縁基板に多数の接続端子が形成されている。
【0051】
チップ部品を実装する基板として、半導体チップ端子に対応する電極(接続端子)が形成された有機質絶縁基板が使用される。
【0052】
有機質絶縁基板としては、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂フィルム、又はガラスクロス、ガラス不織布等のガラス基材にポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノ−ル樹脂等の樹脂を含浸し硬化させた積層板が使用される。
【0053】
チップ端子と接続するための電極と、この電極が形成された表面絶縁層と、所定数層の絶縁層と、各絶縁層の間に配置される所定数層の配線層と、所定の上記電極及び配線層の間を電気的に接続する導体化された穴とを有する多層配線板が使用できる。
【0054】
このような多層配線板として、ガラスクロスを用いた絶縁層を備える基材又は1層以上の導体回路を有する配線基板の表面に、絶縁層と導体回路層とを交互に形成した、ビルドアップ多層基板が好ましい。
【0055】
表面絶縁層は、樹脂フィルムを用いることができ、この樹脂フィルムはエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、アミドエポキシ樹脂、フェノール樹脂やこれらの混合物、共重合物等のフィルムが、またポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族液晶ポリエステル、フッ素系樹脂などの耐熱性熱可塑性エンジニヤリングプラスチックのフィルムが使用できる。樹脂フィルム中に有機もしくは無機の充填材を含むものが使用できる。ガラス基材で補強された樹脂よりなる絶縁層としては、ガラスクロス、ガラス不織布等のガラス基材にエポキシ樹脂、フェノ−ル樹脂等の樹脂を含浸し硬化させたプリプレグが使用できる。
【0056】
回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でも良い)設けられており、上記回路部材の少なくとも1組をそれらの回路部材に設けられた接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した接続端子間に接着剤を介在させ、加熱加圧して対向配置した接続端子どうしを電気的に接続して回路板とする。
【0057】
回路部材の少なくとも1組を加熱加圧することにより、対向配置した接続端子どうしは、直接接触により又は異方導電性接着剤の導電粒子を介して電気的に接続する。
【0058】
半導体チップや基板の電極パッド上には、めっきで形成されるバンプや金ワイヤの先端をトーチ等により溶融させ、金ボールを形成し、このボールを電極パッド上に圧着した後、ワイヤを切断して得られるワイヤバンプなどの突起電極を設け、接続端子として用いることができる。
【0059】
無機絶縁基板からなる第1の回路部材と有機絶縁基板からなる第2の回路部材をフィルム状接着剤により接続する場合を例にとって、回路板の製造法を説明する。
【0060】
第1の接続端子を有する、無機質絶縁基板からなる第1の回路部材と、第2の接続端子を有する、有機質絶縁基板からなる第2の回路部材とを、第1の接続端子と第2の接続端子を対向させて配置し、この対向配置させた第1の接続端子と第2の接続端子との間に、本発明の回路部材接続用接着剤を、第1又は第3の接着剤層が第1の回路部材側になるように配置して介在させ、これを加圧して、対向配置した第1の接続端子と第2の接続端子とを電気的に接続させることにより、本発明の回路板を製造することができる。
【0061】
具体的には、例えば、まず、第2の回路部材にフィルム状第2又は第4の接着剤層の面を接触させフィルム状接着剤を第2の回路部材に仮固定する。続いて、第1の回路部材の電極と第2の回路部材の電極との位置合わせを行い、第1の回路部材側から一電極あたり20〜150gfの荷重を加えつつ、フィルム状接着剤が180〜200℃となるように温度を10〜20秒間加えてフィルム状接着剤を硬化させる。これによって第1の回路部材の電極と第2の回路部材の電極とを電気的に接続すると同時に、第1の回路部材と第2の回路部材間はフィルム状接着剤の硬化によって、この接続状態を保持する。
【0062】
半導体チップを実装基板に接続する例について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、半導体チップと実装基板とを、導電粒子を含まない接着剤を用いて接続した例を示す。図2は、図1の場合において、半導体チップと実装基板とを、導電粒子を含む接着剤を用いて接続する場合の接続部を示す。
【0063】
図1に示す電子部品装置は、実装基板20と、それに実装された半導体チップ10とで構成される。なお、図1は、電子部品装置の一部を示すもので、実際には、実装基板20上に、他の半導体チップ等の他の部品が搭載される。
【0064】
半導体チップ10は、その一つの面に、接続電極11となる突起電極(バンプ)が形成されている。この接続電極11を介して、実装基板と電気的に接続される。
【0065】
実装基板20は、複数層の絶縁層21、22と、上記各絶縁層21、22を介して配置される複数層の配線層32、33と、上記半導体チップ10の接続電極11と接続するための接続用電極端子31と、上記配線層32、33のうちの、特定の配線層間を電気的に接続するため上記絶縁層21、22を貫通して設けられる導体34とを有する。上記導体34を貫通させるため、絶縁層21、22には、必要な箇所に、スルーホールとするための孔25が設けられる。すなわち、この実装基板は、樹脂複合系多層配線板を構成する。ここで、配線層32は、内層回路として設けられ、配線層33及び接続用電極端子31は、外層回路として設けられる。接続用電極端子31は、その上にチップを搭載するための導体回路として機能する。
【0066】
半導体チップ10に設けた接続電極11である突起電極(バンプ)は、実装基板20の表面に設けた接続用電極端子31と位置合わせされる。半導体チップ10と実装基板20間に、接着のためのフィルム状の接着剤40が配置される。この状態で、半導体チップ10側から加圧加熱することにより、接着剤40は、流動し、硬化することにより、半導体チップ10に設けた接続電極11と実装基板20表面に設けた接続用電極端子31とが直接機械的に接して、電気的な接続を得る。
【0067】
導電粒子41を分散させた異方導電性接着剤等の接着剤40を用いる場合には、図2に示すように、接続電極11と接続用電極端子31が、それらの間に導電粒子41が介在した状態で接続されると共に、接着固定される。異方導電性接着剤40を用いる場合、接続すべき対向する電極面を圧接させるようにした状態では、対向電極間では、それらの間に存在する導電粒子を介して導通が行われる。また、隣接する電極間では、接着剤は、導電粒子を内包するものの、導電粒子の密度が低いため、導電性を示さない。
【0068】
上記実装基板20は、ガラス基材で補強された樹脂よりなる少なくとも1層以上の第1の絶縁層21と、最外層として、少なくとも上記電子部品が接着固定される側の1層を構成する第2の絶縁層22とを有する。なお、図1の例では、上記電子部品が接着固定される側とは異なる側にも第2の絶縁層22を設けている。
【0069】
本発明の接着剤によれば、半導体チップと回路部材接続用接着剤界面でのストレスを緩和できる他、更に接着樹脂組成物として40℃での弾性率が30〜2000MPaである場合には更に接着樹脂組成物によって熱衝撃、PCTやはんだバス浸漬試験などの信頼性試験において生じるストレスを吸収できるため、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上する。本発明によれば、回路部材接続用接着剤の厚み方向に物性の勾配をもうけることが可能なため、熱衝撃、PCTやはんだバス浸漬試験等の信頼性試験において生じる内部応力を吸収でき、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が向上する。また、フィルム状の接着剤は、取扱性にも便利である。
【0070】
したがって、本発明の接着剤は、LCD(Liquid Crystal Display)パネルとTAB(Tape Automated Bonding)、TABとフレキシブル回路基板、LCDパネルとICチップ、ICチップとプリント基板とを接続時の加圧方向にのみ電気的に接続するために好適に用いられる。
【0071】
本発明の回路板は、信頼性試験において生じるストレスを吸収でき、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上する。また、本発明の回路板では、チップ側に熱膨張係数が小さい接着フィルムを用いることによりチップと接着剤界面でのストレスを緩和できることから、チップの電極パッドに突起電極を設けた場合、温度サイクル試験下での突起電極の電極パッドからの剥離を大幅に低減できる。
【実施例】
【0072】
参考例1
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)125gとを酢酸エチル400gに溶解し、30%溶液を得た。
【0073】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を接着樹脂組成物100重量部に対して40重量部、更にニッケル粒子(直径:3μm)を2体積%分散させて、フィルム塗工用溶液を得た。
【0074】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、厚み45μmの接着フィルムaを形成した。なお、この接着フィルムaの溶融シリカ及びニッケル粒子を除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、800MPaであった。
【0075】
次に、得られた接着フィルムaを用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数:288)付きチップ(10mm×10mm、厚み:0.5mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板との接続を、以下に示すように行った。
【0076】
まず、接着フィルムa(12mm×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)との位置合わせを行った。次いで、180℃、30g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0077】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で6mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0078】
参考例2
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)175gとを酢酸エチル525gに溶解し、30%溶液を得た。
【0079】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)275gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を接着樹脂組成物100重量部に対して60重量部、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0080】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、厚み45μmの接着フィルムbを形成した。この接着フィルムbの溶融シリカ及びニッケル粒子を除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、400MPaであった。
【0081】
次に得られた接着フィルムbを用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数:288)付きチップ(10mm×10mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0082】
まず、接着フィルムb(12mm×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板との位置合わせを行った。次いで、170℃、30g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0083】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で18mΩ、平均で8mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0084】
参考例3
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)100gとを酢酸エチル350gに溶解し、30%溶液を得た。
【0085】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を接着樹脂組成物100重量部に対して60重量部、更にポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5体積%分散させて、フィルム塗工用溶液を得た。
【0086】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、厚み45μmの接着フィルムcを形成した。この接着フィルムcの溶融シリカ及び導電粒子を除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1000MPaであった。
【0087】
次に得られた接着フィルムcを用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数:288)付きチップ(10mm×10mm、厚み:0.5mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0088】
まず、接着フィルムc(12mm×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板との位置合わせを行った。次いで、170℃、30g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0089】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で5mΩ、平均で1.5mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0090】
参考例4
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)100gとを酢酸エチル350gに溶解し、30%溶液を得た。
【0091】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)350g部をこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を接着樹脂組成物100重量部に対して40重量部、更にポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5体積%分散させて、フィルム塗工用溶液を得た。
【0092】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、厚み45μmの接着フィルムdを形成した。この接着フィルムdの溶融シリカ及び導電粒子を除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1000MPaであった。また、接着フィルムdのTMA法で測定した110〜130℃の平均熱膨張係数は111ppmであった。
【0093】
次に、得られた接着フィルムdを用いて、金バンプ(面積:50μm×50μm、362バンプ、スペース:20μm、高さ:15μm)付きチップ(1.7mm×17mm、厚み:0.5mm)と、ITO(Indium Tin Oxide)回路付ガラス基板(厚み:1.1mm)との接続を以下に示すように行った。
【0094】
まず、接着フィルムd(12mm×12mm)をITO回路付ガラス基板に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとITO回路付ガラス基板との位置合わせを行った。次いで、180℃、40g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0095】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で150mΩ、平均で80mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−40〜100℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(105℃、1.2気圧)100時間においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0096】
参考例5
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)125gとを酢酸エチル400gに溶解し、30%溶液を得た。
【0097】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を接着樹脂組成物100重量部に対して60重量部、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0098】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、厚み45μmの接着フィルムeを形成した。この接着フィルムeの溶融シリカ及びニッケル粒子を除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、800MPaであった。
【0099】
次に得られた接着フィルムeを用いて、バンプレスチップ(10mm×10mm、厚み:0.5mm、パッド電極:Al、パッド径:120μm)と、回路上にNi/AuめっきCuバンプ(直径:100μm、スペース50μm、高さ:15μm、バンプ数:200)を形成したNi/AuめっきCu回路プリント基板との接続を、以下に示すように行った。
【0100】
まず、接着フィルムe(12mm×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、チップのAlパッドとNi/AuめっきCuバンプ付Ni/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)との位置合わせを行った。次いで、180℃、30g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0101】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で8mΩ、平均で4mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0102】
参考例6
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)125gとを酢酸エチル400gに溶解し、30%溶液を得た。
【0103】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を樹脂接着剤組成物100重量部に対して40重量部分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0104】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第1の接着層である接着フィルムf(厚み:25μm)を形成した。なお、この接着フィルムfの溶融シリカを除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、800MPaであった。
【0105】
また、溶融シリカを分散する代わりにニッケル粒子(直径:3μm)を2体積%分散した以外は、接着フィルムfの作成と同様にして、第2の接着層である接着フィルムg(厚み:25μm)を形成した。得られた接着フィルムgの40℃での弾性率は、800MPaであった。
【0106】
次に、得られた接着フィルムf及び接着フィルムgをラミネートして、複合膜である積層フィルム状接着剤hを得た。
【0107】
この積層フィルム状接着剤hを用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数:288)付きチップ(10mm×10mm、厚み:0.5mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板との接続を、以下に示すように行った。
【0108】
まず、この積層フィルム状接着剤h(12mm×12mm)の接着フィルムg(第2の接着剤層)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、接着フィルムf(第1の接着剤層)側にチップを対向させ、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)との位置合わせを行った。次いで、180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0109】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で6mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0110】
参考例7
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)175gとを酢酸エチル525gに溶解し、30%溶液を得た。
【0111】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)275gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:1μm)を、接着樹脂組成物100重量部に対して60重量部分散させて、フィルム塗工用溶液を得た。
【0112】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第1の接着剤層にあたる接着フィルムi(厚み:20μm)を形成した。この接着フィルiの溶融シリカを除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、400MPaであった。
【0113】
また、溶融シリカを分散する代わりにニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散した以外は、接着フィルムiの作成と同様にして、第2の接着剤層にあたる接着フィルムj(厚み:20μm)を形成した。得られた接着フィルムjの40℃での弾性率は、400MPaであった。
【0114】
次に、得られた接着フィルムi及び接着フィルムjをラミネートして、複合膜である積層フィルム状接着剤kを得た。この積層フィルム状接着剤kを用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数:288)付きチップ(10mm×10mm、厚み:0.5mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板との接続を、以下に示すように行った。
【0115】
まず、この積層フィルム状接着剤k(12mm×12mm)の接着フィルムj(第2の接着層)を、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、接着フィルムi(第1の接着層)側にチップを対向させ、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)との位置合わせを行った。次いで、180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0116】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で18mΩ、平均で8mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0117】
参考例8
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)100gとを酢酸エチル350gに溶解し、30%溶液を得た。
【0118】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を接着樹脂組成物100重量部に対して60重量部分散させて、フィルム塗工用溶液を得た。
【0119】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第1の接着層にあたる接着フィルムm(厚み:25μm)を形成した。この接着フィルムmの溶融シリカを除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1000MPaであった。
【0120】
また、溶融シリカを分散する代わりにポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5体積%分散した以外は、接着フィルムmの作成と同様にして、第2の接着層にあたる接着フィルムn(厚み:25μm)を形成した。得られた接着フィルムnの40℃での弾性率は、1000MPaであった。
【0121】
次に、得られた接着フィルムmと接着フィルムnとをラミネートして、複合膜である積層フィルム状接着剤pを得た。この積層フィルム状接着剤pを用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数:288)付きチップ(10mm×10mm、厚み:0.5mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板との接続を、以下に示すように行った。
【0122】
まず、この積層フィルム状接着剤p(12mm×12mm)の接着フィルムn(第2の接着層)を、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、接着フィルムm(第1の接着層)側にチップを対向させ、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)との位置合わせを行った。次いで、180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0123】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で5mΩ、平均で1.5mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0124】
参考例9
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(30部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)125gとを酢酸エチル400gに溶解し、30%溶液を得た。
【0125】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を、接着樹脂組成物100重量部に対して60重量部分散させて、フィルム塗工用溶液を得た。
【0126】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:25μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第1の接着層にあたる接着フィルムq(厚み:25μm)を形成した。この接着フィルムqの、溶融シリカを除いた接着樹脂組成物のみの動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、800MPaであった。
【0127】
溶融シリカを分散する代わりにニッケル粒子(直径:3μm)を2体積%分散した以外は、接着フィルムqの作成と同様にして、第2の接着層にあたる接着フィルムr(厚み:25μm)を形成した。得られた接着フィルムrの40℃での弾性率は、800MPaであった。
【0128】
次に、得られた接着フィルムqと接着フィルムrとをラミネートして、複合膜である積層フィルム状接着剤sを得た。
【0129】
この積層フィルム状接着剤sを用いて、バンプレスチップ(10mm×10mm、厚み:0.5mm、パッド電極:Al、パッド径:120μm)と、回路上にNi/AuめっきCuバンプ(直径:100μm、スペース50μm、高さ:15μm、バンプ数:200)を形成したNi/AuめっきCu回路プリント基板との接続を、以下に示すように行った。
【0130】
まず、この積層フィルム状接着剤s(12mm×12mm)の接着フィルムr(第2の接着層)を、Ni/AuめっきCuバンプ(直径:100μm、スペース50μm、高さ:15μm、バンプ数:200)を形成したNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼りつけた後、セパレータを剥離し、接着フィルムq(第1の接着層)側にチップを対向し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)との位置合わせを行った。次いで、180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0131】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で8mΩ、平均で4mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0132】
実施例10
フェノキシ樹脂195gと多官能エポキシ(エポキシ当量:212)130gとを酢酸エチル1,083gに溶解し、30%溶液を得た。
【0133】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させて、フィルム塗工用溶液を得た。
【0134】
このフィルム塗工用溶液を、セパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第3の接着層にあたる接着フィルムt(厚み:25μm)を形成した。硬化後の接着フィルムtの30〜100℃までの熱膨張係数は45ppm、ガラス転移温度は150℃、40℃での弾性率は2,600MPaであった。
【0135】
また、フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(20部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)100gとを酢酸エチル500gに溶解させ、30%溶液を得た。
【0136】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0137】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第4の接着層にあたる接着フィルムu(厚み:25μm)を形成した。硬化後の接着フィルムuの30〜100℃までの熱膨張係数は70ppm、ガラス転移温度は125℃、40℃での弾性率は1,000MPaであった。
【0138】
次に、接着フィルムtと接着フィルムuとをラミネートして、複合膜である積層フィルム状接着剤v(厚み:50μm)を形成した。
【0139】
次に、得られた積層フィルム状接着剤vを用いて、金バンプ(高さ:30μm、バンプ数:184)付きチップ(大きさ:10×10mm、厚み:0.55mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、基板厚み:0.8mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0140】
まず、積層フィルム状接着剤v(大きさ:12×12mm)の接着フィルムu(第4の接着層)面をプリント基板側として、Ni/AuめっきCu回路プリント基板に60℃、0.5MPaの条件で積層フィルム状接着剤vを仮接続させた。仮接続工程後、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板とを位置合わせして積層フィルム状接着剤v上にチップを載置し、続いて180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0141】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で10mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル及び110℃85%RH、PCT試験500時間中の試験中連続(in situ)抵抗測定で良好な接続信頼性を示した。
【0142】
実施例11
フェノキシ樹脂195gと多官能エポキシ(エポキシ当量:212)130gとを酢酸エチル1,083gに溶解し、30%溶液を得た。
【0143】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を樹脂組成物100重量部に対して20重量部、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0144】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第3の接着層にあたる接着フィルムw(厚み:25μm)を形成した。硬化後の接着フィルムwの30〜100℃までの熱膨張係数は38ppm、ガラス転移温度は153℃、40℃での弾性率は3,000MPaであった。
【0145】
また、フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(20部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)100gとを酢酸エチル500gに溶解し、30%溶液を得た。
【0146】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)を樹脂組成物100重量部に対して20重量部、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0147】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、第4の接着層にあたる接着フィルムx(厚み:25μm)を形成した。硬化後の接着フィルムxの30〜100℃までの熱膨張係数は60ppm、ガラス転移温度は127℃、40℃での弾性率は1,400MPaであった。
【0148】
次に、接着フィルムwと接着フィルムxとをラミネートし、複合膜である積層フィルム状接着剤y(厚み:50μm)を形成した。
【0149】
次に、得られた積層フィルム状接着剤yを用いて、金バンプ(高さ:30μm、バンプ数:184)付きチップ(大きさ:10×10mm、厚み:0.55mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、基板厚み:0.8mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0150】
積層フィルム状接着剤y(大きさ:12×12mm)の接着フィルムx(第4の接着層)面をプリント基板側として、Ni/AuめっきCu回路プリント基板に60℃、0.5MPaの条件で積層フィルム状接着剤yを仮接続させた。仮接続工程後、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板とを位置合わせして積層フィルム状接着剤y上にチップを載置し、続いて180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0151】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で10mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル及び110℃85%RH、PCT試験500時間中の試験中連続(in situ)抵抗測定で良好な接続信頼性を示した。
【0152】
比較例1
実施例10で得られた積層フィルム状接着剤vを用いて、金バンプ(高さ:30μm、バンプ数:184)付きチップ(大きさ:10×10mm、厚み:0.55mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、基板厚み:0.8mm)との接続を、実施例10と同様にして行った。ただし、本比較例では、積層フィルム状接着剤v(大きさ:12×12mm)の接着フィルムt(第3の接着層)面をプリント基板側とした。
【0153】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で10mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であったが、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験500サイクルで、また110℃85%RH、PCT試験300時間で電気的導通が不良になった。
【0154】
比較例2
フェノキシ樹脂195gと多官能エポキシ(エポキシ当量:212)130gとを酢酸エチル1,083gに溶解し、30%溶液を得た。
【0155】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0156】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、厚み50μmの接着フィルムzを形成した。硬化後の接着フィルムzの30〜100℃までの熱膨張係数は45ppm、ガラス転移温度は150℃、40℃での弾性率は2,600MPaであった。
【0157】
次に、得られた接着フィルムzのみを用いて、金バンプ(高さ:30μm、バンプ数:184)付きチップ(大きさ:10×10mm、厚み:0.55mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、基板厚み:0.8mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0158】
まず、接着フィルムzを、Ni/AuめっきCu回路プリント基板に60℃、0.5MPaの条件で仮接続させた。仮接続工程後、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板とを位置合わせして接着フィルムz上にチップを載置し、続いて180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行って本接続した。
【0159】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で10mΩ、平均で3mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であったが、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験300サイクル及び260℃のはんだバス浸漬10秒後において電気的導通が不良になった。接続部分の断面観察の結果、導通不良部分の一部で接着フィルム界面の剥離が観察された。
【0160】
比較例3
フェノキシ樹脂50gと、ブチルアクリレート(40部)、エチルアクリレート(20部)、アクリロニトリル(30部)及びグリシジルメタクリレート(3部)を共重合したアクリルゴム(分子量:85万)100gとを酢酸エチル500gに溶解し、30%溶液を得た。
【0161】
次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量:185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、更にニッケル粒子(直径:5μm)を2体積%分散させてフィルム塗工用溶液を得た。
【0162】
このフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み:40μm)にロールコータで塗布し、100℃で10分間乾燥させて、厚み25μmの接着フィルムαを形成した。硬化後の接着フィルムαの30〜100℃までの熱膨張係数は60ppm、ガラス転移温度は125℃、40℃での弾性率は1,000MPaであった。
【0163】
次に、得られた接着フィルムαのみを用いて、金バンプ(高さ:30μm、バンプ数:184)付きチップ(大きさ:10×10mm、厚み:0.55mm)と、Ni/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、基板厚み:0.8mm)との接続を、以下に示すように行った。
【0164】
まず、接着フィルムαをNi/AuめっきCu回路プリント基板に60℃、0.5MPaの条件で仮接続させた。仮接続工程後、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板とを位置合わせして接着フィルムα上にチップを載置し、続いて180℃、50g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行なって本接続した。
【0165】
本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で10mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であったが、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験30サイクルで、熱衝撃試験の高温試験時に電気的導通が不良になるという現象が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続端子を有する第1の回路部材と、前記第1の接続端子に対向する第2の接続端子を有する第2の回路部材と、の間に介在され、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを電気的に接続する回路部材接続用接着剤であって、
第3の接着剤層と第4の接着剤層とを備え、
前記第3の接着剤層のガラス転移温度が120℃以上であり、
前記第4の接着剤層のガラス転移温度が、前記第3の接着剤層のガラス転移温度より低く、
前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材のうち、相対的に弾性率が大きい側に前記第3の接着剤層側が接着され、相対的に弾性率が小さい側に前記第4の接着剤層側が接着されるように配置される、回路部材接続用接着剤。
【請求項2】
第1の接続端子を有する第1の回路部材と、前記第1の接続端子に対向する第2の接続端子を有する第2の回路部材と、の間に介在され、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを電気的に接続する回路部材接続用接着剤であって、
第3の接着剤層と第4の接着剤層とを備え、
前記第3の接着剤層のガラス転移温度が120℃以上であり、
前記第4の接着剤層のガラス転移温度が、前記第3の接着剤層のガラス転移温度より低く、
前記第1の回路部材及び前記第2の回路部材のうち、相対的に熱膨張係数が小さい側に前記第3の接着剤層側が接着され、相対的に熱膨張係数が大きい側に前記第4の接着剤層側が接着されるように配置される、回路部材接続用接着剤。
【請求項3】
第1の接続端子を有する、無機質絶縁基板からなる第1の回路部材と、前記第1の接続端子に対向する第2の接続端子を有する、有機質絶縁基板からなる第2の回路部材と、の間に介在され、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子とを電気的に接続する回路部材接続用接着剤であって、
第3の接着剤層と第4の接着剤層とを備え、
前記第3の接着剤層のガラス転移温度が120℃以上であり、
前記第4の接着剤層のガラス転移温度が、前記第3の接着剤層のガラス転移温度より低く、
前記第1の回路部材側に前記第3の接着剤層側が接着され、前記第2の回路部材側に前記第4の接着剤層側が接着されるように配置される、回路部材接続用接着剤。
【請求項4】
前記第3の接着剤層のガラス転移温度が120℃以上180℃以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項5】
第3及び第4の少なくともいずれか一方の接着剤層は、
接着樹脂組成物と、
前記接着樹脂組成物100重量部に対して10〜200重量部の絶縁性の無機質充填材と、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項6】
前記絶縁性の無機質充填材の平均粒径が3μm以下である請求項5記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項7】
前記接着剤層は、
導電粒子を、前記接着樹脂組成物100体積部に対して、0.1〜30体積部含有する請求項5又は6記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項8】
前記接着剤層は、
前記絶縁性の無機質充填材の平均粒径に比べて平均粒径の大きい導電粒子を、前記接着樹脂組成物100体積部に対して0.1〜30体積部含有する請求項5〜7のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項9】
前記接着樹脂組成物の硬化後の40℃での弾性率が30〜2000MPaである請求項5〜8のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項10】
前記接着樹脂組成物が、エポキシ系樹脂及び潜在性硬化剤を含有する請求項5〜9のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項11】
前記接着樹脂組成物が、エポキシ樹脂、アクリルゴム、及び、潜在性硬化剤を含有する請求項5〜10のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項12】
前記アクリルゴムが、分子中にグリシジルエーテル基を含有する請求項11記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項13】
形状がフィルム状である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項14】
第1の接続端子を有する第1の回路部材と、
第2の接続端子を有する第2の回路部材とを、
第1の接続端子と第2の接続端子を対向して配置し、
前記対向配置した第1の接続端子と第2の接続端子の間に接着剤を介在させ、
加圧して前記対向配置した第1の接続端子と第2の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、
前記接着剤が請求項1〜13のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤である回路板。
【請求項15】
前記第1の回路部材が無機質絶縁基板であり、
前記第2の回路部材が有機質絶縁基板であり、
前記第3の接着剤層の少なくともいずれかが前記第1の回路部材側に接着されている請求項14記載の回路板。
【請求項16】
前記第1の回路部材が半導体チップである、請求項14又は15記載の回路板。
【請求項17】
第1の接続端子を有する、無機質絶縁基板からなる第1の回路部材と、
第2の接続端子を有する、有機質絶縁基板からなる第2の回路部材とを、
第1の接続端子と第2の接続端子とを対向させて配置し、
前記対向配置した第1の接続端子と第2の接続端子との間に、請求項1〜13のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤を、前記第3の接着剤層が前記第1の回路部材側になるように配置して介在させ、
加圧して前記対向配置した第1の接続端子と第2の接続端子とを電気的に接続させる工程を有する、回路板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−71514(P2011−71514A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210835(P2010−210835)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2009−158970(P2009−158970)の分割
【原出願日】平成10年8月13日(1998.8.13)
【特許番号】特許第4631998号(P4631998)
【特許公報発行日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】