説明

回転式電子部品

【課題】爪による回転つまみの取り付けが外れない、組み立て容易な回転式電子部品を提供する。
【解決手段】ケース190と、ケース190の開口195内に回転自在に収納される回転つまみ220と、回転つまみ220によって回転操作される回転型物50とを具備する。回転つまみ220に設けた爪229を、ケース190の開口195内に設けた周方向に延びる爪係合部201に係合すると同時に、爪229の背面側に回転型物50に設けた押圧部63を当接させることで爪229と爪係合部201との係合の外れを防止する。爪係合部201に係合した爪229の先端はケース190の外周よりも内側に位置している。回転型物50を軸支部材90の軸部91によって回転自在に軸支する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転つまみを回転することで電気的出力を変化する回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式スイッチや回転式可変抵抗器等の回転式電子部品の中には、ケース(外装ケース等)の表面側に露出するように設置した回転つまみを回転操作することで、ケースの裏面側に設置した回転体(回転型物)を回転し、これによってその電気的出力を変化するように構成されたものがある。そしてこの種の回転式電子部品の中には、回転つまみと回転体との一体化を、回転つまみと回転体の外周部分で行うものがある。その場合例えば特許文献1に示すように、両者の一体化は回転つまみと回転体の何れか一方の外周に設けた爪を、他方の外周に設けた爪係合部に係合(スナップイン係合)することによって行われる。両者の一体化を回転つまみと回転体の外周部分で行うのは、例えば特許文献1に示すように、この回転式電子部品の中央に別の電子部品(例えば押圧式電子部品)を設置する場合、両者をその中央部分で一体化することがスペース的に困難である等の理由による。
【0003】
しかしながら上記従来の回転式電子部品においては、回転つまみと回転体の一体化を爪及び爪係合部の係合によって行なっているので、回転つまみを強い力で引っ張り上げた場合、前記係合が外れ、回転つまみが外れてしまう恐れがあった。この問題は特に回転式電子部品が小型化して前記爪及び爪係合部による係合力が弱くなった場合に顕著となる。
【特許文献1】特開2002−93283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、爪による回転つまみの取り付けが外れることのない、組み立ての容易な回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載の発明は、ケースと、前記ケースに設けた開口内に回転自在に収納される回転つまみと、前記回転つまみによって回転操作される回転体と、前記回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部とを具備し、前記回転つまみに設けた爪を、前記ケースの開口内に設けた周方向に延びる爪係合部に係合すると同時に、爪の背面側に前記回転体に設けた押圧部を当接又は接近させることで前記爪と前記爪係合部との係合の外れを防止することを特徴とする回転式電子部品にある。
【0006】
本願請求項2に記載の発明は、前記爪係合部に係合した爪の先端がケースの外周よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品にある。
【0007】
本願請求項3に記載の発明は、前記回転体はその中央を貫通する軸支部材の軸部に回転自在に軸支されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、爪と爪係合部とを係合することで、回転つまみをケースに回転自在に取り付けたので、予め回転つまみを取り付けたケースを、回転体や電気的機能部を設置した部材上に取り付けるだけでケース付きの回転式電子部品の組み立てが行え、その組立作業が容易になる。
また回転つまみの爪の背面側に回転体の押圧部を当接又は接近して設置したので、例え回転つまみを強い力で引き上げても、爪と爪係合部との係合が外れることはない。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、爪係合部に係合した爪の先端がケースの外周よりも内側に位置する程度浅い係合であっても、回転体の押圧部によって、爪と爪係合部との係合が外れることはない。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、回転つまみを強い力で引き上げる際に爪によって回転体の押圧部が回転体の回転中心軸方向に押圧されても、この押圧力は軸支部材の軸部によって容易に支えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態にかかる回転式電子部品1−1の概略断面図(説明の都合上、切断面は各部で異なっている)、図2は回転式電子部品1−1を上側から見た分解斜視図(その上側半分の部分)、図3は回転式電子部品1−1を上側から見た分解斜視図(その下側半分の部分)、図4は回転式電子部品1−1を下側から見た分解斜視図(その上側半分の部分)、図5は回転式電子部品1−1を下側から見た分解斜視図(その下側半分の部分)である。これらの図に示すように回転式電子部品1−1は、取付板10上に、回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)30と、回転体(以下「回転型物」という)50と、中立位置復帰バネ80と、軸支部材90と、第2スイッチ基板120と、押圧部材130と、第1スイッチ基板150と、キートップ160と、ケース190と、回転つまみ220とを取り付けて構成されている。なお以下の説明において、取付板10から見てケース190や回転つまみ220等を設置した側を上又は上方向といい、その反対側を下又は下方向という。以下各構成部品について説明する。
【0012】
取付板10は硬質板(この実施形態では金属板)であり、その中央に貫通する略T字状の小孔からなる軸支部材取付部11を設け、その周囲4ヶ所に貫通する円形及び略矩形状の2つずつの小孔からなるケース取付部13を設け、またケース取付部13近傍部分に3つの略矩形状の貫通孔からなるかしめ用開口部15を設けて構成されている。
【0013】
フレキシブル回路基板30は可撓性のある合成樹脂フイルム(この実施形態ではポリエチレンテレフタレート(PET)フイルムを用いている)31の上面の所定位置に下記する摺動子73が摺接する円弧状の摺接パターン33を設け、また前記取付板10の軸支部材取付部11とケース取付部13とかしめ用開口部15にそれぞれ対応する同一位置にそれぞれこれらと略同一形状の軸支部材取付部35とケース取付部37とかしめ用開口部39とを設けて構成されている。なお前記合成樹脂フイルム31の材質としては、PETフイルム以外にも、他の各種熱可塑性、熱硬化性、光硬化性の合成樹脂フイルム、例えばポリフェニレンスルフイド(PPS)フイルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フイルム、ポリエーテルイミド(PEI)フイルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フイルム、ポリエーテルケトン(PEK)フイルム、ポリカーボネート(PC)フイルム、ポリブチレンナフタレート(PBN)フイルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フイルム等を用いても良い。また前記摺接パターン33は合成樹脂フイルム31上に所望の導電ペースト(抵抗体ペーストを含む)を印刷等することによって形成される。形成される摺接パターン33は抵抗体パターンであっても良いし、スイッチパターンであっても良いし、その他の各種パターンであっても良い。また摺接パターン33は印刷以外の各種方法、例えば金属箔のエッチングや金属蒸着等によって形成しても良い。
【0014】
回転型物50は、合成樹脂を略円板状に成形して構成されており、中央に上下に貫通する略円形の軸支孔51を設け、またその外周面53から半径方向外方に向かって舌片状(矩形状)に突出する複数(3つ)のつまみ取付部55を設け、各つまみ取付部55内に上下に貫通する細長形状の取付孔57を設け、またその下面の所定位置(外周近傍位置)に薄く凹む摺動子取付部59を設け、またその外周面53から半径方向外方に向かって突出する小突起状のストッパー部61を設け、さらにその外周面53の180°対向する位置に半径方向外方に向かって台形状に突出する小突起状の一対の押圧部63を設けて構成されている。
【0015】
回転型物50上面の軸支孔51を設けたその周囲の面は浅く凹むバネ収納部65となっており、このバネ収納部65はその中央部分に略円形で下記する中立位置復帰バネ80のコイル部81の部分を収納するコイル部収納部65aを有し、またコイル部収納部65aの部分から半径方向外方に向かって扇状に形成されて下記する中立位置復帰バネ80の弾発部83の部分を収納する弾発部収納部65bを有している。弾発部収納部65bの左右両側面(円周方向に垂直な対向する面)は弾接面67となっている。また摺動子取付部59の底面には、下記する摺動子73の位置決め取付用の一対の小突起状の取付凸部69が突設されている。押圧部63は回転型物50の外周面53から少しの高さ半径方向外方に向けて突出しており、その先端面は略円弧面状である。
【0016】
摺動子73は弾性金属板製であり、略矩形状の摺動子基部75の外周の一辺から複数本(2本)の摺動冊子77を突出してそれらの根元部分を摺動子基部75の下面側に折り曲げて構成されている。摺動子基部75には前記回転型物50に設けた取付凸部69に挿入される一対の取付穴部79が設けられている。
【0017】
中立位置復帰バネ80はバネ線材をコイル状に巻き回してなるコイル部81と、その両端を半径方向外方に向けて略直線状に突出してなる一対の弾発部83とを具備して構成されている。
【0018】
軸支部材90は合成樹脂の成形品であり、前記回転型物50の軸支孔51に回動自在に挿入される寸法形状の軸部91と、軸部91の下面から突出して前記フレキシブル回路基板30の軸支部材取付部35と取付板10の軸支部材取付部11にぴったり嵌合する寸法形状(略T字形状)の柱状に突出する基板取付部93と、軸部91の上部に設置される略平板状で半径方向に広がる覆い部95とを具備して構成されている。覆い部95の下面の前記軸部91の周囲を囲む位置には一対の略円弧状に突出する突出部97が設けられており、これら突出部97の内側の空間が前記中立位置復帰バネ80のコイル部81を収納する収納部99となっている。一対の突出部97の端部間に形成される2つの隙間の内の一方の隙間には前記中立位置復帰バネ80の弾発部83が挿入され、一対の突出部97の対向する端部は弾発部当接部101となっている。覆い部95の上面には複数(3つ)の小突起状の取付部103,105,107が設けられている。取付部103,107は180°対向する位置にあり、取付部105は一方の取付部107の近傍位置にある。
【0019】
第2スイッチ基板120は合成樹脂フイルム(この実施形態ではPETフイルム)121を略円形に形成して構成されており、外周の二ヶ所の前記取付部103,105に対向する位置に舌片状に一対の突出部123を設け、これら突出部123中に前記取付部103,105を挿入する内径形状の小孔からなる取付部125を設け、またその上面中央に図示しない一対のスイッチ接点パターンを設け、これらスイッチ接点パターン上に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板129を設置することで第2スイッチ127を設けて構成されている。
【0020】
押圧部材130は合成樹脂の成形品であり、中央に略柱状の押圧部131を設け、押圧部131の外周の180°対向する位置から一対の薄板帯状のヒンジ部133を突出し、各ヒンジ部133の途中に小孔からなる取付部135を設け、またそれらの両先端部分に柱状のつまみストッパー137を設けて構成されている。両ヒンジ部133は全体として略S字状に屈曲しており、押圧部131を中心にして点対称になっている。従って押圧部131を中心にして両取付部135と両つまみストッパー137とは180°対称の位置に設置されている。両ヒンジ部133の押圧部131に接続されている部分近傍の部分は、ヒンジ部133のそれより先端側の部分に比べて上方向に少し持ち上がるように屈曲している。
【0021】
第1スイッチ基板150は合成樹脂フイルム(この実施形態ではPETフイルム)151を略円形に形成して構成されており、外周の二ヶ所の下記するキートップ160の各取付部167に対向する位置に舌片状に一対の突出部153を設け、これら突出部153中に下記するキートップ160の取付部167を挿入する内径形状の小孔からなる取付部155を設け、またその下面中央に図示しない一対のスイッチ接点パターンを設け、これらスイッチ接点パターンの下面側に弾性金属板をドーム形状に形成してなる反転板159を設置することで第1スイッチ157を設けて構成されている。なおこの反転板159の反転に必要な押圧力と、前記第2スイッチ基板120の反転板129の反転に必要な押圧力とは異なっており、この実施形態では反転板159の反転に要する押圧力の方を弱くしている。
【0022】
ところで図示の都合上、フレキシブル回路基板30と第2スイッチ基板120と第1スイッチ基板150とを別々の部材として示しているが、この実施形態では実際にはこれら各基板は連結されており、従って第2スイッチ基板120と第1スイッチ基板150の出力はフレキシブル回路基板30に引き出されている。つまり合成樹脂フイルム31と合成樹脂フイルム121と合成樹脂フイルム151とは同一の一枚の合成樹脂フイルムである。なお回転型物50に設けたスリット71と軸支部材90に設けたスリット109は、合成樹脂フイルム31と合成樹脂フイルム121間を連結する合成樹脂フイルム(連結部)を周囲の邪魔にならないように通すためのものである。
【0023】
キートップ160は合成樹脂の成形品であり、略円板状に形成されており、円板状の本体部161の外周にリング状のつば部162を設け、またその下面中央部分は基板取付面163となっており、またその下面の外周近傍部分の180°対向する位置には下方向に向かって突出する小突起状の一対のストッパー突起165及び一対の取付部167が設けられている。取付部167は前記第1スイッチ基板150の取付部155に挿入される位置・寸法に形成されている。
【0024】
ケース190は合成樹脂の成形品であり、略筒状の側壁部191と、側壁部191の下部外周から半径方向外方に向けてリング状に突出するつば部193とを設け、またその中央に円形の開口195を設けて構成されている。ケース190の下面からは複数本(4本)の取付突部197が突出し、またその下面の所定位置に開口195の内周面側を切り欠いてなる凹部からなるストッパー挿入部199を設け、また開口195の内周面に周方向に延びる段部からなる爪係合部201を設けている。爪係合部201は開口195の下側の内径寸法が上側の内径寸法に比べて大きくなるような段部となっている。
【0025】
回転つまみ220は合成樹脂の成形品であり、略円形であって中央に前記キートップ160の本体部161を露出する内径寸法の開口部221を設け、開口部221の周囲の上面を操作面223とし、また操作面223の下面から下方向に向かって側壁部225を突出し、側壁部225の下端辺から前記回転型物50の各取付孔57に挿入される略平板状の突起からなる取付突部227を突設し、また側壁部225の下端辺から前記回転型物50の各押圧部63に対向する位置(即ち180°対向する位置)に一対の爪229を突設して構成されている。爪229は下方向に延びる平板状の基部231と、基部231の先端で半径方向外向きに突出する爪部233とを具備し、半径方向に基部231が撓むように弾性を有して構成されている。
【0026】
次に回転式電子部品1−1の組立方法を説明する。まず予め回転型物50の摺動子取付部59に摺動子73を設置し、その際一対の取付凸部69を取付穴部79に挿入して位置決めし、何れか一方の取付凸部69の先端を熱かしめして固定しておく。またキートップ160の下面に設けた一対の取付部167を第1スイッチ基板150に設けた一対の取付部155に挿入し、それらの先端を熱かしめすることによって、キートップ160に第1スイッチ基板150を取り付けておく。またケース190の開口195にその上面側から回転つまみ220の側壁部225を挿入し、一対の爪229をケース190の爪係合部201に係合(スナップイン係合)させておく。即ちケース190の開口195内に回転つまみ220の側壁部225を挿入した際に爪部233を開口195の内周面に当接して基部231を内側(開口195内側)に撓ませ、その後、爪部233を爪係合部201に係合することで前記基部231の撓みを解除して元の形状に復帰させることでスナップイン係合させる。これによって爪部233が前記ケース190の開口195内に設けた周方向に延びる爪係合部201内に係合することで、回転つまみ220はケース190に回動自在に取り付けられる。
【0027】
そして取付板10上にフレキシブル回路基板30を載置する。このとき取付板10の軸支部材取付部11とケース取付部13とかしめ用開口部15の位置と、フレキシブル回路基板30の軸支部材取付部35とケース取付部37とかしめ用開口部39の位置とをそれぞれ一致させておく。次に中立位置復帰バネ80のコイル部81に軸支部材90の軸部91を挿入し、コイル部81を収納部99に収納すると同時に、一対の弾発部83を弾発部当接部101に当接する。次にこの軸支部材90の軸部91を回転型物50の軸支孔51に回動自在に挿入した上で、これらをフレキシブル回路基板30上に設置し、その際軸支部材90の基板取付部93をフレキシブル回路基板30の軸支部材取付部35と取付板10の軸支部材取付部11とに挿入・嵌合し、取付板10の下面側に突出する基板取付部93の先端を熱かしめによって固定する。これによって軸支部材90はフレキシブル回路基板30上に設置されて固定され、回転型物50はフレキシブル回路基板30と覆い部95の間で回動自在に軸支される。またこのとき中立位置復帰バネ80は回転型物50のバネ収納部65にも収納され、両弾発部83は前記軸支部材90の両弾発部当接部101に弾接すると同時に回転型物50の弾発部収納部65bの両弾接面67にも同時に弾接する。またこのとき回転型物50の各つまみ取付部55は、フレキシブル回路基板30の各かしめ用開口部39及び取付板10の各かしめ用開口部15によって形成されている開口内に露出していて取付板10の下方から見える。
【0028】
次に軸支部材90の覆い部95の上面に第2スイッチ基板120を載置し、その際軸支部材90の一対の取付部103,105をそれぞれ取付部125に挿入し、第2スイッチ基板120上に突出する一方の取付部105の先端を熱かしめして取り付ける。次に第2スイッチ基板120上に押圧部材130を載置し、その際一対の取付部135に前記軸支部材90の取付部103,107を圧入することで押圧部材130を第2スイッチ基板120上に取り付ける。次に予め第1スイッチ基板150をその下面に載置して取り付けておいたキートップ160を、押圧部材130上に載置する。
【0029】
そして前記回転つまみ220をスナップイン係合によって回転自在に取り付けておいたケース190を、キートップ160の上から被せ、ケース190のつば部193の下面をフレキシブル回路基板30上に載置し、その際ケース190の各取付突部197をフレキシブル回路基板30の各ケース取付部37と取付板10の各ケース取付部13とに挿入する。同時に回転つまみ220の各取付突部227を回転型物50の各取付孔57に挿入する。このとき図1に示すように、回転型物50の一対の押圧部63の先端面は、回転つまみ220の一対の爪229の爪部233の背面にそれぞれ当接する。ここで爪229の背面とは、爪229の爪係合部201に対向する面の反対側の面をいう。そして図1に示すように、取付板10の下面から突出する各取付突部197の先端、及び回転型物50の下面から突出してフレキシブル回路基板30の各かしめ用開口部39と取付板10の各かしめ用開口部15に露出する各取付突部227の先端を、それぞれ熱かしめする。これによって図1に示す回転式電子部品1−1が完成する。
【0030】
以上のように構成された回転式電子部品1−1において、キートップ160の上面を押圧すると、押圧部材130の押圧部131によって第1スイッチ基板150の反転板159が反転し、第1スイッチ157がオンする。さらにキートップ160を押圧すると、押圧部材130の押圧部131によって第2スイッチ基板120の反転板129が反転し、第2スイッチ127もオンする。前記キートップ160への押圧を解除していけば、第2スイッチ127、第1スイッチ157の順にオフする。なお反転板159,129等が破壊されないように、キートップ160の押圧寸法を規制するため、前述のようにキートップ160と押圧部材130にはストッパー突起165とつまみストッパー137とが設けられている。
【0031】
一方回転つまみ220を回転すると、回転つまみ220の取付突部227と回転型物50のつまみ取付部55とからなる係合機構によって回転方向に対して一体化されている回転型物50が回転し、回転型物50に取り付けた摺動子73の摺動冊子77がフレキシブル回路基板30の摺接パターン33上を摺動し、摺接パターン33の電気的出力が変化する。この実施形態では摺動子73と摺接パターン33が電気的機能部を構成している。回転つまみ220を回転した際、中立位置復帰バネ80の一方の弾発部83は軸支部材90の一方の弾発部当接部101に当接し、他方の弾発部83は回転型物50の他方の弾接面67に当接して弾接面67の移動と共に移動し、これによって回転型物50及び回転つまみ220には中立位置への自動復帰力が生じる。従って回転つまみ220への回転方向への押圧を解除すれば、回転つまみ220は回転型物50と共に元の中立位置に自動復帰する。なお回転つまみ220及び回転型物50の回転範囲は、回転型物50のストッパー部61がケース190のストッパー挿入部199内を移動する範囲に規制されている。
【0032】
以上のようにこの回転式電子部品1−1は、ケース190と、ケース190に設けた開口195内に回転自在に収納される回転つまみ220と、回転つまみ220によって回転操作される回転型物50と、回転型物50の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部(摺動子73及び摺接パターン33)とを具備している。
【0033】
そして回転つまみ220に設けた爪229を、ケース190の開口195内に設けた周方向に延びる爪係合部201に係合する(さらにいえば、ケース190に設けた開口195の内周面を軸受として回転自在に回転つまみ220が収納されている)と同時に、爪229の背面側に回転型物50に設けた押圧部63を当接させることで爪229と爪係合部201との係合の外れを防止している。このように爪229と爪係合部201とを係合することで、回転つまみ220をケース190に回転自在に取り付けたので、予め回転つまみ220を取り付けたケース190を、回転型物50や電気的機能部を設置した部材(フレキシブル回路基板30)上に取り付けるだけでケース付きの回転式電子部品1−1の組み立てが行え、その組立作業が容易になる。また回転つまみ220の爪229の背面側に回転型物50の押圧部63を当接して設置したので、例え回転つまみ220を強い力で引き上げても、爪229が爪係合部201から離れる方向に移動することはなく、従って爪229と爪係合部201との係合が外れることはない。
【0034】
またこの回転式電子部品1−1においては、回転型物50と回転つまみ220の間に両者を回転方向に対して一体化する係合機構(回転型物50のつまみ取付部55と回転つまみ220の取付突部227からなる)を設けている。回転型物50はケース190の開口195内に設置されて回転つまみ220によって回転操作される。つまり回転型物50と回転つまみ220間の一体化を前記爪229と爪係合部201との係合によって行わず、別途設けた係合機構によって行うので、爪229と爪係合部201との係合による回転つまみ220の外れ防止と、係合機構による回転つまみ220と回転型物50の回転方向の一体化とを別々に行うことができ、何れの機能も確実に発揮させることができる。
【0035】
またこの回転式電子部品1−1においては、爪係合部201に係合した爪229の先端がケース190の外周よりも内側に位置していて爪229と爪係合部201との係合が浅い。そして本実施形態によれば、爪係合部201に係合した爪229の先端がケース190の外周よりも内側に位置する程度浅い係合であっても、回転型物50の押圧部63によって、爪229と爪係合部201との係合が外れることはない。即ちこの実施形態のようにケース190がそのまま最終組立機器での外装ケースになり、且つ回転式電子部品1−1の小型化が必要な場合、爪229(特に爪部233)をケース190から外方に突出しないようにその内側に位置させる必要から爪229と爪係合部201との係合が浅くなるが、このような場合にも十分対応できる。
【0036】
また回転式電子部品1−1の回転型物50は、その中央を貫通する軸支部材90の軸部91に回転自在に軸支されている。従って回転つまみ220を強い力で引き上げる際に爪229によって回転型物50の押圧部63が回転型物50の回転中心軸方向に押圧されても、この押圧力は軸支部材90の軸部91によって容易に支えることができる。またこの回転式電子部品1−1の軸支部材90には回転型物50の上面を覆う覆い部95が設けられている。つまり回転型物50の上面を覆い部95で覆うことで、回転型物50の上方(ケース190の開口195の上方)への抜けが防止できる。さらに前記係合機構によって回転型物50に回転つまみ220を一体に固定した場合(回転方向だけではなく上下方向も一体化した場合)は、回転つまみ220の上方向への抜けも同時に防止でき、即ちこの場合、爪229と爪係合部201の係合による回転つまみ220の抜け防止作用を係合機構によって補強することができる。なおこの係合機構のみによって回転つまみ220の抜けを防止するように構成すること(即ち爪229と爪係合部201の係合機構を省略すること)も考えられるが、そうすると回転つまみ220を引き上げた際にその力は全て軸支部材90中央の軸部91の基板取付部93の一点に集中し、基板取付部93を取り付けた部分が破壊・変形等される恐れが生じる。つまり回転つまみ220の取付強度が弱くなる。そこで回転つまみ220の抜け防止の主な役割は複数箇所に設置できて取付板10に対して強い強度で取り付けられているケース190に力を分散できる爪229と爪係合部201の係合に担わせている。
【0037】
〔第2実施形態〕
図6は本発明の第2実施形態にかかる回転式電子部品1−2の概略断面図(説明の都合上、切断面は各部で異なっている)である。この図に示すように回転式電子部品1−2も、前記回転式電子部品1−1と同様に、取付板10上に、フレキシブル回路基板30と、回転型物50と、中立位置復帰バネ80と、軸支部材90と、第2スイッチ基板120と、押圧部材130と、第1スイッチ基板150と、キートップ160と、ケース190と、回転つまみ220とを取り付けて構成されている。回転式電子部品1−2において、前記図1〜図5に示す実施形態にかかる回転式電子部品1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図5に示す実施形態と同じである。
【0038】
この回転式電子部品1−2において前記回転式電子部品1−1と相違する点は、回転型物50のつまみ取付部55と回転つまみ220の取付突部227からなる係合機構の構成のみである。即ちこの実施形態における係合機構は、回転つまみ220の取付突部227を回転型物50のつまみ取付部55の取付孔57に挿入するだけであり、取付突部227の先端を熱かしめしない構造としている。つまりこの係合機構は、回転型物50と回転つまみ220の両者を回転方向に対してのみ一体化する構成となっている。このように構成しても、回転つまみ220は爪229と爪係合部201との係合によってケース190から外れることが防止されているので、何ら問題は生じない。即ちこの実施形態の場合も、回転型物50と回転つまみ220間の一体化を爪229と爪係合部201との係合によって行わず、別途設けた係合機構によって行うので、爪229と爪係合部201との係合による回転つまみ220の外れ防止と、係合機構による回転つまみ220と回転型物50の回転方向の一体化とを別々に行うことができ、何れの機能も確実に発揮させることができる。なおその他の各種作用・効果も前記第1実施形態と同じである。なおこの実施形態の場合、取付突部227の先端を熱かしめする必要がないので、第1実施形態においてフレキシブル回路基板30と取付板10にそれぞれ設けたかしめ用開口部39,15は設けなくても良い。
【0039】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば上記実施形態では爪229の背面側に回転型物50に設けた押圧部63を当接させたが、爪229の背面側に回転型物50に設けた押圧部63を接近して設置しても良い。この場合、回転つまみ220を強い力で引き上げようとした際、爪229は少し爪係合部201から離れる方向(内側方向)に移動するが、その移動位置にて押圧部63に当接するので、上記実施形態と同様に爪229と爪係合部201との係合が外れることはない。ここで「接近」とは、爪229が背面側に移動しても押圧部63に当接して爪229と爪係合部201との係合が保たれる範囲の接近をいう。
【0040】
また回転式電子部品1−1,1−2を構成する各構成部品に種々の形状や構造の変更が可能であることは言うまでもない。例えばキートップ160や第1,第2スイッチ基板150,120等によって構成される押圧式電子部品は本発明においては必ずしも設置しなくても良く、省略しても良い。その場合押圧式電子部品を設置していた部分には別の各種機能部品(例えば揺動式電子部品や回転式電子部品等)を設置しても良いし、何も設置しなくても良い。また押圧式電子部品はこの実施形態のように二段押圧スイッチで構成しなくても良く、一段又は三段以上の押圧スイッチであっても良い。ケース190は必ずしもこの回転式電子部品1−1,1−2専用のケースでなくても良く、別の各種電子部品を搭載する外装ケースの一部に回転式電子部品1−1,1−2を取り付ける開口195を設けたものであっても良い。上記実施形態の電気的機能部は摺動子73と摺接パターン33からなる電気的機能部であったが、他の各種電気的機能部であっても良く、要は回転型物50の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部であればどのような構成や機能であっても良い。爪229や爪係合部201や押圧部63の形状や構造も種々の変形が可能である。係合機構の構造も種々の変更が可能であり、要は回転型物50と回転つまみ220を回転方向に対して一体化する係合機構であればどのような構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】回転式電子部品1−1の概略断面図である。
【図2】回転式電子部品1−1を上側から見た分解斜視図(上側半分部分)である。
【図3】回転式電子部品1−1を上側から見た分解斜視図(下側半分部分)である。
【図4】回転式電子部品1−1を下側から見た分解斜視図(上側半分部分)である。
【図5】回転式電子部品1−1を下側から見た分解斜視図(下側半分部分)である。
【図6】回転式電子部品1−2の概略断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1−1 回転式電子部品
10 取付板
30 フレキシブル回路基板(回路基板)
33 摺接パターン(電気的機能部)
50 回転型物(回転体)
55 つまみ取付部(係合機構)
57 取付孔(係合機構)
63 押圧部
73 摺動子(電気的機能部)
80 中立位置復帰バネ
90 軸支部材
91 軸部
95 覆い部
120 第2スイッチ基板
130 押圧部材
150 第1スイッチ基板
160 キートップ
190 ケース
195 開口
201 爪係合部
220 回転つまみ
227 取付突部(係合機構)
229 爪
231 基部
233 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースに設けた開口内に回転自在に収納される回転つまみと、前記回転つまみによって回転操作される回転体と、前記回転体の回転によって電気的出力を変化する電気的機能部とを具備し、
前記回転つまみに設けた爪を、前記ケースの開口内に設けた周方向に延びる爪係合部に係合すると同時に、爪の背面側に前記回転体に設けた押圧部を当接又は接近させることで前記爪と前記爪係合部との係合の外れを防止することを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
前記爪係合部に係合した爪の先端がケースの外周よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の回転式電子部品。
【請求項3】
前記回転体はその中央を貫通する軸支部材の軸部に回転自在に軸支されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−282702(P2008−282702A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126341(P2007−126341)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】