説明

固体撮像素子

【課題】 撮像画素および焦点検出画素を備える固体撮像素子において、精度の高いAFを実現する。
【解決手段】 固体撮像素子は、被写体の像を撮像して画像信号を生成する撮像画素と、各画素で光学系の瞳の異なる部分領域を通過する光束をそれぞれ受光し、被写体の像の位相差情報を取得する一対の焦点検出画素とを備える。焦点検出画素は、瞳のうち位相差情報の生成に用いる第1範囲に対応する受光面上の位置に、入射光の光量に応じて信号電荷を生成する光電変換領域を備える。また、焦点検出画素は、瞳のうち第1範囲と重複しない第2範囲に対応する受光面上の位置に、電荷を排出する排出領域を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、1つの固体撮像素子で撮像とAFとを実現するために、撮像画素と位相差検出方式の焦点検出画素とを設けた固体撮像素子が提案されている。一例として、特許文献1には、各々の開口位置が異なる遮光膜を一対の焦点検出画素の上面に配置することで瞳分割を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−109623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように遮光膜で瞳分割を行う場合、焦点検出画素のマイクロレンズの集光位置を遮光膜に合わせないとオートフォーカス(AF)の精度が低下してしまう。一方、固体撮像素子において被写体の画像を撮像する画素(撮像画素)では、マイクロレンズの集光位置が基板上の光電変換領域に一致するように設計されている。
【0005】
したがって、遮光膜で瞳分割を行う焦点検出画素を備えた固体撮像素子では、精度の高いAFを行うために、撮像画素と焦点検出画素とでマイクロレンズの構成を変化させる等の必要がある点が指摘されている。
【0006】
そこで、本発明は、撮像画素と焦点検出画素とを備える撮像素子において精度の高いAFを実現できる固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の態様の固体撮像素子は、被写体の像を撮像して画像信号を生成する撮像画素と、光学系の瞳の異なる部分領域を通過する光束をそれぞれ受光し、被写体の像の位相差情報を取得する一対の焦点検出画素とを備える。焦点検出画素は、瞳のうち位相差情報の生成に用いる第1範囲に対応する受光面上の位置に、入射光の光量に応じて信号電荷を生成する光電変換領域を備える。また、焦点検出画素は、瞳のうち第1範囲と重複しない第2範囲に対応する受光面上の位置に、電荷を排出する排出領域を備える。
【0008】
上記の一の態様において、排出領域が、焦点検出画素の電源またはリセット制御線に接続されていてもよい。
【0009】
上記の一の態様の固体撮像素子は、排出領域の電位を調整する電位調整部をさらに含んでいてもよい。
【0010】
上記の一の態様において、焦点検出画素は、光電変換領域で生成された信号電荷を蓄積するフローティングディフュージョン領域と、光電変換領域からフローティングディフュージョン領域に信号電荷を転送する転送トランジスタと、をさらに含んでいてもよい。また、焦点検出画素で隣接する2つの光電変換領域の間に、各画素のフローティングディフュージョン領域および転送トランジスタが、交互に対向配置されていてもよい。
【0011】
上記の一の態様において、焦点検出画素は、光電変換領域で生成された信号電荷を蓄積するフローティングディフュージョン領域と、光電変換領域からフローティングディフュージョン領域に信号電荷を転送する転送トランジスタと、をさらに含んでいてもよい。また、一対の焦点検出画素のうち一方の画素について、フローティングディフュージョン領域および転送トランジスタが、第1範囲と第2範囲との境界側に配置されていてもよい。
【0012】
なお、上記の各態様の固体撮像素子を備えた撮像装置も、本発明の具体的態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
一の態様の固体撮像素子によれば、精度の高いAFを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態での固体撮像素子の概略構成例を示す図
【図2】第1実施形態での固体撮像素子の画素配置例を示す図
【図3】図2の画素配列の部分拡大図
【図4】第1実施形態での撮像画素および焦点検出画素の平面構造の例を示す図
【図5】撮像画素および焦点検出画素の回路構成例を示す図
【図6】第1実施形態における焦点検出画素の断面を示す模式図
【図7】第2実施形態での撮像画素および焦点検出画素の平面構造の例を示す図
【図8】撮像画素および焦点検出画素の平面構造の変形例を示す図
【図9】撮像画素および焦点検出画素の平面構造の変形例を示す図
【図10】撮像画素および焦点検出画素の平面構造の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態の説明>
図1は、第1実施形態での固体撮像素子の概略構成例を示す図である。なお、第1実施形態の固体撮像素子は、例えば、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話のカメラモジュールなどの撮像装置に組み込まれる。
【0016】
第1実施形態の固体撮像素子は、シリコン基板上にCMOS(相補性金属酸化膜半導体)プロセスを使用し、CMOS型の固体撮像素子として形成されている。また、固体撮像素子は、撮像画素と、焦点検出画素との2種類の画素が配列された画素アレイを有している。
【0017】
ここで、上記の撮像画素は、被写体の像を撮像して画像信号を生成する画素である。また、上記の焦点検出画素は、一対の画素で不図示の光学系(撮影レンズなど)の瞳の異なる部分領域を通過する光束をそれぞれ受光し、AF時に被写体の像の位相差情報を取得する。なお、被写体の像の位相差情報を用いて光学系のデフォーカス量を求める位相差AFの原理は公知であるので、詳細な内容の説明は省略する。
【0018】
図2は、第1実施形態の固体撮像素子の画素アレイにおける撮像画素と焦点検出画素との配置例を示す図である。第1実施形態では、固体撮像素子の受光面において、それぞれ横方向(行方向)に延在する焦点検出画素の配列が、3×3の正方格子状に9箇所に配置されている。また、受光面において、焦点検出画素の配列を除く他の部分には撮像画素がそれぞれ配置されている。
【0019】
図3は、図2の画素配列の部分拡大図である。撮像画素の電荷蓄積領域(フォトダイオード)はほぼ正方形状に形成されている。また、各々の焦点検出画素の電荷蓄積領域は、撮像画素の電荷蓄積領域よりも小さな縦長の矩形状に形成されている。また、焦点検出画素の画素配列では、一対の焦点検出画素を用いて瞳分割を行うために、射出瞳の右半分の像を取得する焦点検出画素と、射出瞳の左半分の像を取得する焦点検出画素とが横方向に交互に並べられている。そして、各々の焦点検出画素の電荷蓄積領域の位置は、射出瞳の像を光電変換する範囲に応じて、画素中心よりも右側または左側のいずれかに偏心して配置されている。
【0020】
図1に戻って、固体撮像素子の回路構成を説明する。なお、以下の説明では、撮像画素および焦点検出画素をまとめて画素PXと総称することがある。
【0021】
固体撮像素子は、マトリックス状に配置された複数の画素PXと、垂直走査部11と、信号蓄積部12と、水平走査部13と、画素PXの列ごとにそれぞれ設けられた垂直出力線14と、各垂直出力線14にそれぞれ接続された定電流源15と、各垂直出力線14を信号蓄積部12に接続するための一対の転送ゲート16a,16bとを有している。図1では、簡単のため画素PXを3×2個のみ示すが、図2、図3からも分かるように、実際の固体撮像素子の受光面にはさらに多数の画素が配列されることはいうまでもない。
【0022】
垂直走査部11は、図1の横方向に並ぶ画素群に選択パルスφSEL、リセットパルスφRESおよび転送パルスφTXをそれぞれ出力する。パルスφSEL,φRES,φTXは、高論理レベルが電源電圧VDDであり、低論理レベルが接地電圧VSSである。信号蓄積部12は、図1の横方向に並ぶ画素群の各画素PXから出力されるノイズ信号およびフォトダイオードで生じた信号電荷に相当する信号成分にノイズ信号が重畳された画素信号を順次蓄積する。水平走査部13は、制御パルスφHにより信号蓄積部12の動作を制御し、信号蓄積部12に蓄積された信号を不図示の相関二重サンプリング回路(CDS回路)等に順次出力する。
【0023】
定電流源15は、画像信号を読み出すために垂直出力線14に電流を流す。転送ゲート16a,16bは、nMOSトランジスタで形成されている。転送ゲート16aは、ノイズ信号が重畳された画素信号を信号蓄積部12に転送するために、信号転送パルスφTSに同期してオンする。転送ゲート16bは、ノイズ信号を信号蓄積部12に転送するために、ノイズ転送パルスφTNに同期してオンする。
【0024】
図4は、第1実施形態での撮像画素および焦点検出画素の平面構造の例を示す図である。また、図5は、撮像画素および焦点検出画素の回路構成例を示す図である。ここで、図4において網掛けで示す領域はトランジスタのゲートを示している。なお、図4において、パルスφSEL,φRES,φTXをそれぞれ供給するための制御配線の図示は省略している。
【0025】
撮像画素および焦点検出画素の各画素は、フォトダイオードPDと、転送トランジスタTXと、リセットトランジスタRESと、増幅トランジスタAMPと、選択トランジスタSELと、フローティングディフュージョン領域FDとをそれぞれ有している。なお、各画素に形成されるトランジスタは、全てnMOSトランジスタである。
【0026】
上記のフォトダイオードPDは、入射光の光量に応じて光電変換により信号電荷を生成する。転送トランジスタTXは、転送パルスφTXの高レベル期間にオンし、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷をフローティングディフュージョン領域FDに転送する。
【0027】
転送トランジスタTXのソースはフォトダイオードPDであり、転送トランジスタTXのドレインはフローティングディフュージョン領域FDである。フローティングディフュージョン領域FDは、半導体基板に不純物を導入することで形成されたN拡散領域である。なお、各画素でのフローティングディフュージョン容量は、拡散層容量および配線容量の和で求められる。
【0028】
なお、フローティングディフュージョン領域FDは、接続配線(銅配線またはアルミニウム配線)によって、増幅トランジスタAMPのゲートと、リセットトランジスタRESのソースとにそれぞれ接続されている。
【0029】
図4の各画素において、選択トランジスタSEL、増幅トランジスタAMP、リセットトランジスタRESは、フォトダイオードPD、転送トランジスタTXおよびフローティングディフュージョン領域FDが並ぶ列に沿って一列に配置されている。選択トランジスタSEL、増幅トランジスタAMP、リセットトランジスタRESは、図4の横方向に延在する1つの能動領域上に所定間隔をおいてゲートを配置することで形成されている。増幅トランジスタAMPおよびリセットトランジスタRESは、電源線VDDに接続された共通のドレインを有している。第1実施形態では、かかる配置により、選択トランジスタSEL、増幅トランジスタAMP、リセットトランジスタRESのソース/ドレインを共通化し、各画素のレイアウトサイズを最小限にすることができる。
【0030】
上記のリセットトランジスタRESは、リセットパルスφRESの高レベル期間にオンし、フローティングディフュージョン領域FDを電源電圧VDDにリセットする。また、増幅トランジスタAMPは、ドレインが電源電圧VDDに接続され、ゲートがフローティングディフュージョン領域FDにそれぞれ接続され、ソースが選択トランジスタSELのドレインに接続され、定電流源15を負荷とするソースフォロア回路を構成している。増幅トランジスタAMPは、フローティングディフュージョン領域FDの電圧値に応じて、選択トランジスタSELを介して出力端子OUTに読み出し電流を出力する。選択トランジスタSELは、選択パルスφSELの高レベル期間にオンし、増幅トランジスタAMPのソースを出力端子OUTに接続する。
【0031】
また、図4に示すように、焦点検出画素の受光面には、不要電荷を排出する矩形状の排出領域17がフォトダイオードPDに隣接して配置されている。第1実施形態の焦点検出画素の配列では、フォトダイオードPDが右側に偏心して配置されている焦点検出画素の左側の領域と、フォトダイオードPDが左側に偏心して配置されている焦点検出画素の右側の領域とに跨って、共通の排出領域17が1つ配置されている。それゆえ、第1実施形態における排出領域17は、隣接する画素間で共有されている。なお、第1実施形態において、各排出領域17はいずれも電源線VDDと接続されている。
【0032】
また、1つの焦点検出画素の受光面において、フォトダイオードPDは、光学系の瞳のうち位相差情報の生成に用いる第1範囲(例えば瞳の右半分)が結像する位置に配置されている。また、排出領域17は、光学系の瞳のうち第1範囲と重複しない残りの第2範囲(例えば瞳の左半分)が結像する位置に配置されている。また、横方向に隣接する焦点検出画素間では、第1範囲および第2範囲が左右逆になる。なお、本明細書の図面では、受光面において瞳像の結像する範囲を一点鎖線で示すとともに、焦点検出画素における第1範囲をハッチングで示す。
【0033】
ここで、焦点検出画素のフォトダイオードPDには、瞳の第1範囲に対応する光束を受光することで信号電荷が蓄積される。一方、瞳の第2範囲に対応する光束の大部分は排出領域17に結像する。そして、瞳の第2範囲に対応する光束を受光して焦点検出画素の排出領域17内で発生する電荷は、排出領域17からそのまま排出される。また、排出領域17の電位は電源の電位と等しく、フォトダイオードPDよりも電位が低い。したがって、フォトダイオードPDと排出領域17との間の分離領域で発生した電荷の多くは、排出領域17に吸収されて排出される。これにより、第1実施形態では、焦点検出画素のフォトダイオードPDにおいて、瞳像の第1範囲に対応する電荷をよく分離することができる。
【0034】
なお、撮像画素のフォトダイオードPDの配置は、光学系の瞳像がすべて結像するように設定されている。これにより、撮像画素のフォトダイオードPDには、瞳像の全範囲に対応する光束を受光して得られた電荷が蓄積される。なお、本明細書の図面では、撮像画素において瞳像の結像する範囲もハッチングで示している。
【0035】
また、第1実施形態において、焦点検出画素のフォトダイオードPDは、排出領域17の反対側に信号電荷を転送する構成となっている。そして、焦点検出画素の配列において隣接する2つのフォトダイオードPDの間には、フローティングディフュージョン領域FDおよび転送トランジスタTXが、干渉を避けるために上下に位置をずらして交互に対向配置されている。焦点検出画素のフローティングディフュージョン領域FDおよび転送トランジスタTXを上記のように配置することで、撮像画素と焦点検出画素との構造的な乖離を比較的少なくでき、各画素のレイアウトや固体撮像素子の製造がより容易となる。
【0036】
図6は、第1実施形態における焦点検出画素の断面を示す模式図である。第1実施形態の固体撮像素子は、N型シリコン基板21上にP型ウエル22を設け、このP型ウエル22上にフォトダイオードPD、転送トランジスタTX、フローティングディフュージョン領域FD、排出領域17などの素子を形成している。P型ウエル22の上面側にはシリコン酸化膜23が形成されている。
【0037】
また、図6に示すフォトダイオードPDは、P型ウエル22中に設けられたN型の電荷蓄積層とその表面側に配置されたP型の空乏化防止層とからなる埋め込み型フォトダイオードである。また、排出領域17はN型の拡散層で構成されている。なお、フォトダイオードPDと排出領域17との素子間分離は、例えば、LOCOS(local oxidation of silicon)法、STI(shallow trench isolation)法、拡散分離などの公知の手法で行えばよい。
【0038】
また、各々の焦点検出画素の上面には、マイクロレンズ24がそれぞれ配置されている。そして、焦点検出画素の配線部分は、マイクロレンズ24と受光面との間に配置された遮光アルミ膜25により入射光が遮光されている。図6に示す焦点検出画素では、光学系の瞳のうち位相差情報の生成に用いる第1範囲の光束が結像する領域(フォトダイオードPD)と、光学系の瞳のうち第1範囲と重複しない残りの第2範囲の光束が結像する領域(排出領域17のうち画素境界を除く)とは、遮光膜25で覆われておらず、それ以外の領域が遮光膜25で覆われる。なお、隣接する画素間で共有される排出領域17の上部に、遮光アルミ層25が、隣接する焦点検出画素間に跨って配置されているが、この遮光アルミ層25は必ずしも設ける必要は無い。また、上述したように、第2範囲の光束が結像する領域の上部には遮光膜25が設けられていないが、遮光層25を設けてもよい。
【0039】
以下、第1実施形態における固体撮像素子の作用を述べる。第1実施形態の焦点検出画素では、フォトダイオードPDによって瞳の第1範囲に対応する光束を受光して信号電荷を蓄積し、瞳の第2範囲に対応する光束を受光して生じた電荷を排出領域17から排出する。これにより、第1実施形態の焦点検出画素では、所望の瞳領域以外の光束によって生成される電荷がフォトダイオードPDに流入することを阻止できるので、基板表面の位置で瞳分割を比較的精度よく行うことが可能となる。そして、比較的簡易な構成で位相差情報を用いた精度の高いAFを実現できる。
【0040】
また、第1実施形態の固体撮像素子では、基板表面の位置で瞳分割を行うため、撮像画素および焦点検出画素でマイクロレンズの集光位置を一致させることができる。そのため、撮像画素と焦点検出画素とで同じマイクロレンズを使用できるので、遮光膜で瞳分割を行う固体撮像素子の場合と比べて、マイクロレンズの形成工程を簡略化できる。
【0041】
<第2実施形態の説明>
図7は、第2実施形態での撮像画素および焦点検出画素の平面構造の例を示す図である。なお、以下の実施形態の説明では、第1実施形態と共通する構成には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0042】
第2実施形態の固体撮像素子は、排出領域17の電位を調整する電位調整部18を備えている。この電位調整部18は、各々の排出領域17と制御用の配線でそれぞれ接続されている。
【0043】
第2実施形態において、排出領域17の電位を低く調整した場合、フォトダイオードPDと排出領域17との間の分離領域で発生した電荷は、排出領域17に流れ込む確率がより高くなる。一方、排出領域17の電位を高く調整した場合、上記の分離領域で発生した電荷のうち、フォトダイオードPDの近傍で発生した電荷はフォトダイオードPDに流れ込みやすくなる。したがって、第2実施形態の構成によれば、排出領域17の電位を調整することで、焦点検出画素において瞳像を分割する境界の位置を微調整することが可能となる。
【0044】
また、第2実施形態において、図示しないが、固体撮像素子は通常、図6に示すマイクロレンズ24と受光面との間にカラーフィルタが各画素に対応して設けられている。撮像画素と焦点検出画素とを有する固体撮像素子では、特に制限されないが、撮像画素の受光面側には互いに異なる色のカラーフィルタ(例えば、赤色、青色および緑色のカラーフィルタ)のそれぞれが各画素に対応して配置される。また、焦点検出画素の受光面側には、例えば、可視光域の光を透過するホワイトフィルタが配置される。その場合、撮影条件によっては、焦点検出画素で生成される信号電荷レベルと、撮像画素で生成される信号電荷レベルとのバランスが問題となる場合がある。その場合、焦点検出画素のフォトダイオードPDの面積を瞳分割に影響しないように変更すればよい。例えば、フォトダイオードPDの面積を瞳分割に影響しない領域にまで拡大させることが可能である。
【0045】
<実施形態の補足事項>
(1)上記の第1実施形態の例では、焦点検出画素の排出領域17が電源線VDDと接続されている例を説明した。しかし、図4に示す電源線VDDに代えて、リセットパルスφRESを伝達するリセット制御線に焦点検出画素の排出領域17が接続されていてもよい。ここで、焦点検出画素のフォトダイオードPDで電荷を蓄積する期間は、リセットパルスφRESが高レベルとなってフローティングディフュージョン領域FDのリセットが行われる。そのため、排出領域17をリセット制御線に接続することで、不要な電荷を吸収することが可能となる。
【0046】
(2)上記の実施形態の焦点検出画素の構成はあくまで一例にすぎない。例えば、図8に示すように、2つの撮像画素および2つの焦点検出画素を含む2×2画素の範囲において、増幅トランジスタAMPおよびリセットトランジスタRESのドレインと、排出領域17とを接続して一体化してもよい。なお、図8の例では、排出領域17等と接続される電源線VDDの図示は省略している。
【0047】
ここで、図8の場合、一対の焦点検出画素(図8の下の行の画素)のうちで図中左側(左列)の画素については、フローティングディフュージョン領域FDおよび転送トランジスタTXが第1範囲と第2範囲との境界側に配置されている。焦点検出画素のフォトダイオードPDに蓄積された信号電荷の転送方向は、上記した第1実施形態では一対の焦点検出画素では互いに反対方向であったが、図8の場合、同一方向である。かかる配置によっても、撮像画素と焦点検出画素との構造的な乖離を比較的少なくでき、各画素のレイアウトや固体撮像素子の製造がより容易となる。
【0048】
なお、図4に示した撮像画素および焦点検出画素の平面構造の例においても、2つの撮像画素および2つの焦点検出画素を含む2×2画素の範囲において、増幅トランジスタAMPおよびリセットトランジスタRESのドレインと、排出領域17とを接続して一体化してもよい。
【0049】
また、図9は、画素アレイの行方向に瞳分割を行う場合の焦点検出画素の他の配置例である。図9の例では、一対の焦点検出画素(図9の下の行の画素)のうちで図中左側(左列)の画素については、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷の転送方向が右側(右列)の焦点検出画素における電荷転送の方向と直交方向となるように、フローティングディフュージョン領域FDおよび転送トランジスタTXが下向きに配置されるとともに、選択トランジスタSEL、増幅トランジスタAMP、リセットトランジスタRESが上下方向に沿って配列されている。そして、図9に示す排出領域17は、左側の焦点検出画素の増幅トランジスタAMPおよびリセットトランジスタRESのドレインと一体化されている。なお、図9の例では、排出領域17等と接続される電源線VDDの図示は省略している。
【0050】
さらに、図10は、画素アレイの列方向に瞳分割を行う場合の焦点検出画素の配置例である。図10の例では、図中右列の画素が一対の焦点検出画素となる。そして、上側(上行)の焦点検出画素のフォトダイオードPDが上側に偏心して配置され、下側(下行)の焦点検出画素のフォトダイオードPDが下側に偏心して配置されている。また、上記の2つのフォトダイオードPDの間には排出領域17が配置されている。図10に示す排出領域17は、上側の焦点検出画素の増幅トランジスタAMPおよびリセットトランジスタRESのドレインと一体化されている。なお、図10の例では、排出領域17等と接続される電源線VDDの図示は省略している。
【0051】
なお、図10の例では、一対の焦点検出画素において排出領域17は、上側の焦点検出画素の増幅トランジスタAMPおよびリセットトランジスタRESのドレインと一体化された構造を示しているが、これに限定されない。一対の焦点検出画素において、排出領域17を個別に設けてよい。その場合、上記した実施形態と同様に、排出領域17は電源線VDDと接続されるか、もしくは、リセット制御線と接続さればよい。
【0052】
(3)上記の各実施形態において、焦点検出画素の排出領域17の上面側に遮光膜を配置するようにしてもよい。遮光膜による遮光と排出領域17による不要電荷の排出とを組み合わせることで、焦点検出画素でより精度の高い瞳分割を行うことが可能となる。
【0053】
(4)なお、焦点検出画素のフォトダイオードPDは、例えば、特開2009−105358号公報に示す構成を適用して偏心配置させてもよい。
【0054】
(5)また、本発明の構成は、画素アレイ上で斜め方向に延在する焦点検出画素の配列についても応用できる。また、上記実施形態では、1画素につき4つのトランジスタを有するCMOSセンサの例を説明したが、本発明の固体撮像素子はかかる構成に限定されるものではなく、他の固体撮像素子(CCDなど)の構成に応用してもよい。
【0055】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
11…垂直走査部、12…信号蓄積部、13…水平走査部、14…垂直出力線、15…定電流源、16a,16b…転送ゲート、17…排出領域、18…電位調整部、21…N型シリコン基板、22…P型ウエル、23…シリコン酸化膜、24…マイクロレンズ、25…遮光アルミ膜、PX…画素、PD…フォトダイオード、TX…転送トランジスタ、RES…リセットトランジスタ、AMP…増幅トランジスタ、SEL…選択トランジスタ、FD…フローティングディフュージョン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の像を撮像して画像信号を生成する撮像画素と、光学系の瞳の異なる部分領域を通過する光束をそれぞれ受光し、前記被写体の像の位相差情報を取得する一対の焦点検出画素とを備える固体撮像素子において、
前記焦点検出画素は、
前記瞳のうち前記位相差情報の生成に用いる第1範囲に対応する受光面上の位置に、入射光の光量に応じて信号電荷を生成する光電変換領域と、
前記瞳のうち前記第1範囲と重複しない第2範囲に対応する受光面上の位置に、電荷を排出する排出領域とを備えることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記排出領域が、前記焦点検出画素の電源またはリセット制御線に接続されることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項3】
請求項1に記載の固体撮像素子において、
前記排出領域の電位を調整する電位調整部をさらに含むことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の固体撮像素子において、
前記焦点検出画素は、
前記光電変換領域で生成された前記信号電荷を蓄積するフローティングディフュージョン領域と、
前記光電変換領域から前記フローティングディフュージョン領域に前記信号電荷を転送する転送トランジスタと、をさらに含み、
前記焦点検出画素で隣接する2つの前記光電変換領域の間に、各画素の前記フローティングディフュージョン領域および前記転送トランジスタが、交互に対向配置されていることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載の固体撮像素子において、
前記焦点検出画素は、
前記光電変換領域で生成された前記信号電荷を蓄積するフローティングディフュージョン領域と、
前記光電変換領域から前記フローティングディフュージョン領域に前記信号電荷を転送する転送トランジスタと、をさらに含み、
前記一対の焦点検出画素のうち一方の画素について、前記フローティングディフュージョン領域および前記転送トランジスタが、前記第1範囲と前記第2範囲との境界側に配置されていることを特徴とする固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−60815(P2011−60815A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205676(P2009−205676)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】