説明

固体撮像装置およびその製造方法ならびにカメラ

【課題】固体撮像装置の暗電流の低減に有利な技術を提供する。
【解決手段】光電変換部を有する固体撮像装置の製造方法は、原料ガスとしてヘキサクロロジシランを用いて、前記光電変換部の少なくとも一部を覆うように減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置およびその製造方法ならびにカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電変換部に入射する光を増やすために導波路を有する固体撮像装置が提案されている。特許文献1には、フォトダイオードが形成された半導体基板の上に減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成し、該窒化シリコン膜の上に層間絶縁膜を形成し、該窒化シリコン膜をエッチングストッパとして該層間絶縁膜をエッチングすることが記載されている。該層間絶縁膜のエッチングによって光導波路を形成するための孔部が形成される。更に、該孔部を通して該窒化シリコン膜をエッチングすることによって該窒化シリコン膜にも孔部が形成される。特許文献1にはまた、エッチングストッパとしての窒化シリコン膜は、高い水素吸収効果を有するので、該窒化シリコン膜によって覆われた部分への水素の侵入が防止されることが記載されている(段落0019−0021、0030、0031)。特許文献1にはまた、フォトダイオードの上面の一部の領域(光導波路の周囲の領域)がゲート絶縁膜を介して窒化シリコン膜によって覆われた構造が記載されている(段落0021、図3(B))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−207433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された窒化シリコン膜は、それによって覆われた部分への水素の侵入を防止するように機能する。よって、該窒化シリコン膜は、水素含有量が小さい膜、即ちジクロロシラン(Dichlorosilane(SiHCl):以下、DCSという)を材料として減圧CVD法により形成されたシリコン窒化膜(以下、DCS−SiNという)であると理解される。DCS−SiNで画素を覆ってしまうと、光電変換部への水素の供給が不十分となり、十分にダングリングボンドを終端させることができないため、暗電流の低い固体撮像装置を得ることが困難である。
【0005】
一方、光電変換部への水素の供給量を増大させるために光電変換部の上にプラズマCVD(PECVD)法によって窒化シリコン膜(以下、P−SiNという)を形成する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、P−SiNの形成時に基板がプラズマダメージを受けるので、P−SiNで画素を覆う構造は、光電変換部の結晶欠陥を増大させうるので、暗電流の低い固体撮像装置を得るためには不利である。
【0006】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、固体撮像装置の暗電流の低減に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、光電変換部を有する固体撮像装置の製造方法に係り、前記製造方法は、原料ガスとしてヘキサクロロジシランを用いて、前記光電変換部の少なくとも一部を覆うように減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成する工程を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固体撮像装置の暗電流の低減に有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の固体撮像装置およびその製造方法を説明するための図。
【図2】本発明の第1実施形態の固体撮像装置およびその製造方法を説明するための図。
【図3】本発明の第1実施形態の固体撮像装置およびその製造方法を説明するための図。
【図4】減圧CVD装置の構成例を例示する図。
【図5】HCD−SiNおよびDCS−SiNにおけるSi−H結合およびN−H結合の密度の分析結果を示す図。
【図6】本発明の第2実施形態の固体撮像装置およびその製造方法を説明するための図。
【図7】本発明の第2実施形態の固体撮像装置およびその製造方法を説明するための図。
【図8】本発明の第2実施形態の固体撮像装置およびその製造方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の1つの実施形態は、光電変換部を有する固体撮像装置の製造方法に関する。該製造方法は、原料ガスとしてヘキサクロロジシラン(HCD)を用いて、該光電変換部の少なくとも一部を覆うように減圧CVD(LPCVD)法によって窒化シリコン膜を形成する工程を含む。ここで、該光電変換部と該窒化シリコン膜との間には、絶縁膜等の膜が配置されてもよいし、配置されなくてもよい。該窒化シリコン膜は、該光電変換部の全域を覆っていてもよい。この実施形態によれば、光電変換部への水素供給能力に優れた窒化シリコン膜が形成されるので、水素によって光電変換部のダングリングボンドが終端され、暗電流を低下させることができる。また、この実施形態は、プラズマCVD法によって窒化シリコン膜を形成する場合におけるようなプラズマダメージが光電変換部に与えられないので、この点でも暗電流の低下に有利である。
【0011】
一方、光電変換部の少なくとも一部を覆う窒化シリコン膜を減圧CVD法によって形成する際にシリコンを供給する原料ガスとしてDCSを用いた場合、得られる窒化シリコン膜の水素含有量は極端に少なくなる。そのため、例えば、水素雰囲気中でのシンタリング処理時に、この窒化シリコン膜によって覆われた光電変換部への水素の供給量が少なくなる。その結果、十分にダングリングボンドを終端させることができず、暗電流の低い固体撮像装置を得ることが困難である。
【0012】
以下、本発明のより具体的な実施形態を説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。例えば、以下の実施形態の固体撮像装置は、導波路を有するが、導波路の採用は任意である。また、以下の実施形態の固体撮像装置は、表面照射型であるが、本発明は、裏面照射型にも適用されうる。
【0013】
図1〜図3を参照しながら本発明の第1実施形態の固体撮像装置およびその製造方法を説明する。第1実施形態の固体撮像装置は、画素部1611と、周辺回路部1616とを含む。画素部1611は、典型的には複数の画素を含み、各画素は1つの光電変換部を含む。周辺回路部1616は、画素部1611以外の領域である。周辺回路部1616は、例えば、垂直走査回路(行選択回路)、水平走査回路(列選択回路)、読み出し回路および制御回路を含みうる。図1〜図3では、説明の便宜のために、2つの光電変換部を含む画素部1611と、1つのトランジスタ304を含む周辺回路部1616とが示されている。ただし、実際には、画素部1611は、より多くの光電変換部を含み、また、周辺回路部1616は、より多くのトランジスタを含む。
【0014】
以下、第1実施形態の固体撮像装置の製造方法を説明する。まず、図1(a)に示す工程では、トランジスタおよび光電変換部などの素子が形成された半導体基板301が準備され、半導体基板301の主面302の上に絶縁膜として、窒化シリコン膜305、酸化シリコン膜306、窒化シリコン膜307が形成される。半導体基板301は、典型的には、シリコン基板であり、主面302を有する。半導体基板301は、光電変換部(フォトダイード)をそれぞれ構成するN型半導体領域202、203と、画素部1611のトランジスタ303と、周辺回路部1616のトランジスタ304とを含む。N型半導体領域202、203は、電荷(この例では電子)を蓄積する電荷蓄積領域として機能する。転送トランジスタのゲート電極206、207は、それぞれN型半導体領域202、203に対応し、N型半導体領域202、203の電荷を転送する機能を有する。
【0015】
電荷蓄積領域としてのN型半導体領域202、203の下方には、N型半導体領域314が設けられている。N型半導体領域314は、電荷蓄積領域としてのN型半導体領域202、203よりも不純物濃度が低い。N型半導体領域314の下方には、P型半導体領域315が配置されている。少なくともN型半導体領域202、N型半導体領域314およびP型半導体領域315によって1つの光電変換部が構成される。また、少なくともN型半導体領域203、N型半導体領域314およびP型半導体領域315によって1つの光電変換部が構成される。N型半導体領域202、203は、分離部216によって相互に分離されている。
【0016】
画素部1611のトランジスタ303は、N型のソース・ドレイン領域309と、ゲート電極308とを有する。トランジスタ303のソース・ドレイン領域309およびフローティングディフュージョン210の下方には、P型半導体領域316が配置されている。周辺回路部1616には、CMOS回路を構成するNMOSトランジスタおよびPMOSトランジスタが配置されるが、図1〜図3では、NMOSトランジスタのみが例示されている。周辺回路部1616のトランジスタ304は、P型の半導体領域313に配置されたN型のソース・ドレイン領域311と、ソース・ドレイン領域311の間であって半導体基板301の主面302の上に配置されたゲート電極310とを有する。なお、図1〜図3において、ゲート絶縁膜については図示が省略されている。トランジスタ303、313等のトランジスタは、素子分離部217によって相互に分離されている。
【0017】
図1(a)に示す工程では、画素部1611および周辺回路部1616の双方の領域における半導体基板1の主面302の上に、複数の積層された絶縁膜が形成される。具体的には、主面302の上に酸化シリコン膜(不図示)が形成され、該酸化シリコン膜の上に窒化シリコン膜305が形成され、窒化シリコン膜305の上に酸化シリコン膜306が形成される。そして、画素部1611および周辺回路部1616のうち周辺回路部1616については、酸化シリコン膜(不図示)、窒化シリコン膜305および酸化シリコン膜306がエッチングされて、これによりゲート電極10の側壁にサイドスペーサー312が形成される。このサイドスペーサー312を利用して、ソース・ドレイン領域311がLDD構造にされうる。画素部1611に残った窒化シリコン膜305は、コンタクトホール形成時にエッチングストッパとして利用されうるほか、反射防止膜として利用されうる。
【0018】
ソース・ドレイン領域311及びゲート電極310には、例えばコバルトシリサイド等の高融点金属のシリサイド層が設けられうる。このシリサイド層は、周辺回路部1616のトランジスタのみに選択的に形成されうる。これは、ソース・ドレイン領域311及びゲート電極310の電気抵抗を低減するためである。なお、シリサイド層はソース・ドレイン領域311及びゲート電極310のいずれか1か所のみに設けられていてもよい。
【0019】
次に、画素部1611および周辺回路部1616の双方の領域に、窒化シリコン膜(絶縁膜)307が形成されうる。ここで、窒化シリコン膜307を形成する前に、画素部1611および周辺回路部1616の双方に、酸化シリコン膜(不図示)を形成してもよい。これは、周辺回路部1616のトランジスタ304のソース・ドレイン領域311において半導体基板の主面302が露出しないようにするためである。
【0020】
次いで、図1(b)に示す工程では、画素部1611と周辺回路部1616に形成されている窒化シリコン膜307をパターニングして、窒化シリコン膜317および窒化シリコン膜318が形成される。ここで、酸化シリコン膜(不図示)を形成した場合には、窒化シリコン膜317と窒化シリコン膜318と同じ形状にパターニングされてもよい。ここで、窒化シリコン膜317は、電荷蓄積領域としてのN型半導体領域202、203の上、すなわち光電変換部の少なくとも一部および転送トランジスタのゲート電極207の少なくとも一部を覆うように配置されうる。画素部1611の他の領域においては、窒化シリコン膜307はエッチングによって除去されている。周辺回路部1616において、窒化シリコン膜307は、エッチングされることなく窒化シリコン膜318として残されている。
【0021】
次いで、図1(c)に示す工程では、複数の層間絶縁膜319と、コンタクトプラグ320と、第1の配線層321と、ビアプラグを含む第2の配線層322とが形成されうる。複数の層間絶縁膜319は、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを交互に積層して構成されうる。複数の層間絶縁膜319は、導波路のクラッドとして利用されうる。第1の配線層321および第2の配線層322は、例えば、銅を主成分とする材料によってダマシン法によって形成されうるが、例えば、アルミニウムなどの他の材料によって形成されてもよい。
【0022】
次いで、図2(a)に示す工程では、複数の層間絶縁膜319に開口323が形成される。開口323は、複数の層間絶縁膜319の上に、光電変換部(N型半導体領域202、203)に対応した領域に開口を有するフォトレジストパターン(不図示)を形成し、それをマスクとして複数の層間絶縁膜319をエッチングすることによって形成されうる。このエッチングは、例えば異方性エッチングでありうる。具体的には、窒化シリコン膜317が露出するまで、プラズマエッチング処理が複数の層間絶縁膜319に対して行われうる。窒化シリコン膜317は、エッチング時における光電変換部(N型半導体領域202、203)へのプラズマダメージを低減するための膜であり、また、エッチングストップ膜としても機能する。半導体基板の主面302と窒化シリコン膜305との間に配置された前述の酸化シリコン膜(不図示)と、窒化シリコン膜305と、酸化シリコン膜306とは、光電変換部(N型半導体領域202、203)に入射する光に対する反射防止膜として機能しうる。
【0023】
次いで、図2(b)に示す工程では、開口323に、クラッドとなる複数の層間絶縁膜319よりも屈折率の高い透明材料を充填し、これにより、光電変換部に光を導くための導波路のコアとなる部分を形成する。ここでは、複数の層間絶縁膜319を構成する主な材料である酸化シリコンよりも屈折率の高い窒化シリコンを開口323に形成する。具体的には、高密度プラズマCVD法(High Density Plasma−CVD法、以下、HDP−CVD法)によって窒化シリコンを全面に堆積し、これにより開口323に窒化シリコン324を充填する。開口323の以外の部分に形成された窒化シリコンは、例えば化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、以下CMP)あるいはプラズマエッチングによって除去されうる。この工程により、窒化シリコンの表面が平坦化されて窒化シリコン膜325が形成されうる。導波路は、複数の層間絶縁膜319と高屈折率部材としての窒化シリコン324とによって構成される。窒化シリコン膜325の上面には、酸窒化シリコン膜(絶縁膜)326が形成されうる。
【0024】
次いで、図2(c)に示す工程では、窒化シリコン膜325および酸窒化シリコン膜326がパターニングされる。図2(c)に示す例では、周辺回路部1616における窒化シリコン膜325および酸窒化シリコン膜326除去さている。しかしながら、窒化シリコン膜325および酸窒化シリコン膜326は、それらの全体領域のうち少なくとも後述のビアプラグ331を形成すべき領域が除去されれば十分である。また、窒化シリコン膜325および酸窒化シリコン膜326がビアプラグ331を形成すべき領域に残っていてもよい。窒化シリコン膜325および酸窒化シリコン膜326のパターニングは、異方性エッチング、例えばプラズマエッチングによって行われうる。この工程により、窒化シリコン膜325および酸窒化シリコン膜326は、開口329を有する窒化シリコン膜328および酸窒化シリコン膜328となる。その後、開口329を埋めるとともに窒化シリコン膜328および酸窒化シリコン膜328を覆うように、絶縁膜330が形成される。絶縁膜330は、例えば酸化シリコンで構成されうる。絶縁膜330は、例えばプラズマCVD法によって形成されうる。次いで、絶縁膜330と第2の配線層322とを接続するビアプラグ331が形成される。ビアプラグ331は、例えばタングステンで構成され、チタンや窒化チタンのバリアメタルを有しうる。次いで、ビアプラグ331の上方に第3の配線層333が形成されうる。第3の配線層333は、例えばアルミニウムを主成分とする導電体で構成されうる。ここで、第3の配線層333は、周辺回路領域の遮光膜としても機能し得る。
【0025】
次いで、図3(a)に示す工程では、絶縁膜334を形成するための第1絶縁膜と絶縁膜335を形成するための第2絶縁膜をこの順で形成する。そして、該第2絶縁膜上にレンズ形状のフォトレジストパターンを形成し、それをマスクとして該第2絶縁膜をエッチングすることにより、該第2絶縁膜に層内レンズ337を形成する。その後、レンズ上に絶縁膜336を形成するための第3絶縁膜を形成する。入力パッドおよび出力パッドなどのパッドに対応する領域における第3絶縁膜を除去することで、絶縁膜336が形成される。ここで、絶縁膜335は層内レンズ337を有するレンズ層であり、絶縁膜334および絶縁膜336は、絶縁膜335の反射防止として機能しうる。
【0026】
次いで、図3(b)に示す工程では、樹脂からなる平坦化層338と、複数の色に対応したカラーフィルタを含むカラーフィルタ層339と、マイクロレンズ341を含むマイクロレンズ層340とがこの順で形成される。
【0027】
以上のような固体撮像装置の製造方法において、窒化シリコン膜305および窒化シリコン膜307の少なくとも一方は、原料ガスとしてヘキサクロロジシラン(HCD)を用いて、光電変換部の少なくとも一部を覆うように減圧CVD法によって形成されうる。以下、このような方法によって形成された窒化シリコン膜をHCD−SiNという。窒化シリコン膜305および窒化シリコン膜307は、例えば、図4に模式的に示される気相成長装置を用いて形成されうる。図4に模式的に示される気相成長装置100は、バッチ式の減圧CVD装置である。気相成長装置100は、半導体基板上に窒化シリコン膜を形成するための処理炉12を有する。処理炉12の中には、ボート26によって保持された基板が配置される。気相成長装置100は、窒化シリコン膜を形成するための反応ガス14を処理炉12内に導くためのガス管25と、反応ガス14の流量を制御するためのマスフローコントローラ(MFC)18と、処理炉12内の気体を排気するための排気ポンプ20とを含む。気相成長装置100はまた、反応ガス14の流量ならびに処理炉12内の温度および圧力を制御するための制御部(不図示)を有する。
【0028】
一例において、窒化シリコン膜305は、シリコンを供給する反応ガスとしてHCDを用い、窒素を供給する反応ガスとしてアンモニア(NH)を用いて減圧CVD法によって形成されうる。より具体的には、まず、処理炉12内を13.3〜133Pa(0.1〜1.0Torr)の範囲における所定の圧力に減圧する。その後、ガス流量比HCD/NH=10〜100程度、温度600℃、成膜時間約30分の処理条件で窒化シリコン膜305を成長させる。これにより、窒化シリコン膜305として、約50nmの厚さを有するHCD−SiNが形成されうる。ここで、温度を600℃前後に設定することにより、成膜レートを確保しながら、HCD−SiNに水素を多く含ませることができる。窒化シリコン膜307についても、窒化シリコン膜305と同様の条件で形成することができる。
【0029】
ここで、窒化シリコン膜305および窒化シリコン膜307の双方をHCD−SiNで形成する必要はなく、窒化シリコン膜305および窒化シリコン膜307の少なくとも一方をHCD−SiNで形成すればよい。例えば、窒化シリコン膜305をDCS−SiNで形成し、窒化シリコン膜305をHCD−SiNで形成することができる。あるいは、窒化シリコン膜305をHCD−SiNで形成し、窒化シリコン膜305をDCS−SiNで形成することができる。
【0030】
窒化シリコン膜305または窒化シリコン膜307をDCS−SiNで形成するための処理を例示的に説明する。まず、処理炉12内を13.3〜133Pa(0.1〜1.0Torr)の範囲における所定の圧力に減圧する。その後、反応ガスとしてDCSおよびアンモニアNHを用いて、ガス流量比DCS/NH=10/1〜1程度、温度770℃、成膜時間約20分の処理条件で窒化シリコン膜を成長させる。これにより、厚さが約50nmの窒化シリコン膜(DCS−SiN)が得られる。
【0031】
図5には、フーリエ変換赤外分光法(以下、FT−IR法)による分析結果が示されている。図5には、上記の方法で形成したHCD−SiNとDCS−SiNのそれぞれのN−H結合、Si−H結合の密度が示されている。HCD−SiNおよびDCS−SiNの膜厚はそれぞれ約50nmである。HCD−SiNは、DCS−SiNよりも、Si−H結合およびN−H結合の密度が高く、水素を多く含んだシリコン窒化膜であることが分かる。ここで、Si−H結合およびN−H結合の少なくとも一方の密度が1.5×1021atoms/cm以上であることが望ましい。本発明者の検討によると、1.5×1021atoms/cm以上の密度でSi−H結合またはN−H結合を含むシリコン窒化膜が光電変換部を覆うことが望ましい。これにより、配線パターンが形成された後のシンタリング工程のアニールにおいて、脱離した水素が光電変換部のダングリングボンドを効果的に終端するので、ノイズの低い固体撮像装置を得ることができる。HCD−SiNにおけるSi−H結合の密度は、3.3×1021atoms/cmであり、HCD−SiNにおけるN−H結合の密度は、2.5×1021atoms/cmであり、いずれも1.5×1021atoms/cm以上を超えている。
【0032】
図6〜図8を参照しながら本発明の第2実施形態の固体撮像装置およびその方法を説明する。第2実施形態は、窒化シリコン膜317を画素部1611に残さず、窒化シリコン膜305をエッチングストッパとして用いる点で第1実施形態と相違し、他の点では第1実施形態と共通している。
【0033】
まず、図6(a)に示す工程では、図1(a)を参照しながら説明した方法と同様の方法で図6(a)に示す構造が形成される。ただし、第2実施形態では、窒化シリコン膜305は、HCD−SiNで形成される。次いで、図6(b)に示す工程では、画素部1611および周辺回路部1616のうち画素部1611に形成されている窒化シリコン膜307を除去し、周辺回路1616に窒化シリコン膜318が残される。
【0034】
次いで、図6(c)に示す工程では、複数の層間絶縁膜319と、コンタクトプラグ320と、第1の配線層321と、ビアプラグを含む第2の配線層322とが形成されうる。複数の層間絶縁膜319は、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを交互に積層して構成されうる。複数の層間絶縁膜319は、導波路のクラッドとして利用されうる。第1の配線層321および第2の配線層322は、例えば、銅を主成分とする材料によってダマシン法によって形成されうるが、例えば、アルミニウムなどの他の材料によって形成されてもよい。
【0035】
次いで、図7(a)に示す工程では、複数の層間絶縁膜319および酸化シリコン膜306に開口323が形成される。開口323は、複数の層間絶縁膜319の上に、光電変換部(N型半導体領域202、203)に対応した領域に開口を有するフォトレジストパターン(不図示)を形成し、それをマスクとして複数の層間絶縁膜319をエッチングすることによって形成されうる。このエッチングは、例えば異方性エッチングでありうる。具体的には、窒化シリコン膜305が露出するまで、プラズマエッチング処理が複数の層間絶縁膜319および酸化シリコン膜306に対して行われうる。窒化シリコン膜305は、エッチング時における光電変換部(N型半導体領域202、203)へのプラズマダメージを低減するための膜であり、また、エッチングストップ膜としても機能する。
【0036】
次いで、図7(b)に示す工程では、開口323に、クラッドとなる複数の層間絶縁膜319よりも屈折率の高い透明材料を埋め込み、これにより、導波路のコアとなる部分を形成する。ここでは、複数の層間絶縁膜319を構成する主な材料である酸化シリコンよりも屈折率の高い窒化シリコンを開口323に形成する。具体的には、HDPを用いて減圧CVD法によって窒化シリコン(HCD−SiN)を全面に堆積し、これにより開口323に窒化シリコン324を充填する。開口323の以外の部分に形成された窒化シリコンは、例えばCMPあるいはプラズマエッチングによって除去される。この工程により、窒化シリコンの表面は平坦化されて窒化シリコン膜325が形成されうる。
【0037】
その後、図7(c)、図8(a)、図8(b)に示す工程において、図2(c)、図3(a)、図3(b)に示す工程と同様の方法で、配線層333、平坦化層338、カラーフィルタ層339、マイクロレンズ341を含むマイクロレンズ層340が形成される。
【0038】
第2実施形態では、HCD−SiNで構成される窒化シリコン膜305が第1実施形態における窒化シリコン膜317よりも光電変換部(N型半導体領域202、203)に近い。よって、第2実施形態における窒化シリコン膜305は、第1実施形態における窒化シリコン膜317よりも、光電変換部に水素を供給する能力が高い。
【0039】
以下、上記の各実施形態に係る固体撮像装置の応用例として、該固体撮像装置が組み込まれたカメラについて例示的に説明する。カメラの概念には、撮影を主目的とする装置のみならず、撮影機能を補助的に備える装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末)も含まれる。カメラは、上記の実施形態として例示された本発明に係る固体撮像装置と、該固体撮像装置から出力される信号を処理する処理部とを含む。該処理部は、例えば、A/D変換器、および、該A/D変換器から出力されるデジタルデータを処理するプロセッサを含みうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部を有する固体撮像装置の製造方法であって、
原料ガスとしてヘキサクロロジシランを用いて、前記光電変換部の少なくとも一部を覆うように減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成する工程を含む、
ことを特徴とする固体撮像装置の製造方法。
【請求項2】
前記窒化シリコン膜の上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜に開口を形成する工程と、
前記開口に窒化シリコンを充填する工程と、を更に含み、
前記層間絶縁膜と前記開口に充填された窒化シリコンとによって前記光電変換部に光を導く導波路が形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項3】
前記開口に窒化シリコンを充填する工程では、プラズマCVD法によって前記開口に窒化シリコンを充填する、
ことを特徴とする請求項2に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項4】
前記層間絶縁膜に開口を形成する工程では、減圧CVD法によって形成された前記窒化シリコン膜をエッチングストッパとして前記層間絶縁膜をエッチングすることによって前記開口を形成する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項5】
前記固体撮像装置は、前記光電変換部を含む画素部と、トランジスタを含む周辺回路部とを有し、
前記減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成する工程では、前記光電変換部の少なくとも一部および前記トランジスタを覆うように前記窒化シリコン膜を形成する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項6】
前記減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成する工程の前に、前記光電変換部の少なくとも一部を覆うように他の窒化シリコン膜を形成する工程を更に含み、前記減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成する工程では、前記他の窒化シリコン膜の上に前記窒化シリコン膜を形成する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項7】
前記他の窒化シリコン膜を形成する工程では、原料ガスとしてヘキサクロロジシランを用いて、前記光電変換部の少なくとも一部を覆うように前記他の窒化シリコン膜を形成する、
ことを特徴とする請求項6に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項8】
前記固体撮像装置は、前記光電変換部を含む画素部と、トランジスタを含む周辺回路部とを有し、
前記製造方法は、前記トランジスタを覆うように他の窒化シリコン膜を形成する工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項9】
減圧CVD法によって形成された前記窒化シリコン膜は、Si−H結合およびN−H結合を含み、
前記減圧CVD法によって窒化シリコン膜を形成する工程では、前記Si−H結合および前記N−H結合の少なくとも一方の密度が1.5×1021atoms/cm以上となるように前記窒化シリコン膜を形成する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項10】
光電変換部を有する固体撮像装置であって、
前記光電変換部の少なくとも一部を覆うように配置された窒化シリコン膜を含み、前記窒化シリコン膜は、原料ガスとしてヘキサクロロジシランを用いて減圧CVD法によって形成されている、
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項11】
前記窒化シリコン膜は、Si−H結合およびN−H結合を含み、
前記Si−H結合および前記N−H結合の少なくとも一方の密度が1.5×1021atoms/cm以上である、
ことを特徴とする請求項10に記載の固体撮像装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の固体撮像装置と、
前記固体撮像装置から出力される信号を処理する処理部と、
を備えることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84693(P2013−84693A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222348(P2011−222348)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】