圧力センサ
【課題】スパークによる接合強度の低下を抑制するとともに、ゲル部材の変形による応力がダイアフラムに作用するのを効果的に抑制することのできる圧力センサを提供する。
【解決手段】圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、ダイアフラム(23)から最も離れた部分で端部の開口面積よりも大きく且つ最大とされ、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上とされている。支持部材(12)は、第1圧力伝達路(33)を備え、接着材(50)を介してセンサチップ搭載面(31)にセンサチップ(11)が固定された第1支持部材(30)を有する。第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくされている。
【解決手段】圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、ダイアフラム(23)から最も離れた部分で端部の開口面積よりも大きく且つ最大とされ、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上とされている。支持部材(12)は、第1圧力伝達路(33)を備え、接着材(50)を介してセンサチップ搭載面(31)にセンサチップ(11)が固定された第1支持部材(30)を有する。第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部とゲージ抵抗が形成されたダイアフラムとを有するセンサチップ、凹部に連通する圧力伝達路を有する支持部材、凹部及び圧力伝達路に一体的に充填されるゲル部材を備え、ゲル部材を介して伝達される圧力に応じてダイアフラムが変形する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、凹部とゲージ抵抗が形成されたダイアフラムとを有するセンサチップ、凹部に連通する圧力伝達路を有する支持部材、凹部及び圧力伝達路に一体的に充填されるゲル部材を備え、ゲル部材を介して伝達される圧力に応じてダイアフラムが変形する圧力センサが知られている。
【0003】
この種の圧力センサは、ディーゼルエンジン車両の排気管内に設けられた排気清浄フィルタ(DPF)の前後の差圧を測定したり、EGR雰囲気中の圧力などの測定に用いられる。このため、腐食性を有する液体やガスなどの圧力媒体からセンサチップを保護するために、上記したゲル部材を備えている。また、センサチップの凹部に水分が侵入すると、低温時に凍結して体積膨張し、ダイアフラムがダメージを受ける虞がある。このため、ゲル部材は、支持部材の圧力伝達路を介して凹部へ水分が侵入するのを防ぐ役割も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−3449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスからなる支持部材(ステム)にセンサチップが陽極接合されてなる圧力センサでは、一般にステム側をグランド(低電位)、センサチップ側を高電位として陽極接合を行う。センサチップの凹部における支持部材側の開口部の径が、支持部材の圧力伝達路におけるセンサチップ側の開口部の径よりも小さく、センサチップに、圧力伝達路の内側に張り出す肩部が存在すると、陽極接合時に該肩部が避雷針のような役割を果たし、該肩部から電流が漏れる。すなわち、スパークが生じる。このため、接合強度が低下するなど、安定した陽極接合を行うことができない。
【0006】
これに対し、特許文献1には、ステムに形成された圧力伝達路におけるセンサチップ側の開口部の径が、センサチップにおける凹部の径よりも小さく、ステムに凹部の内側に張り出す肩部が存在する圧力センサが示されている。このようにステム側に肩部を設けることで、上記スパークが生じるのを防ぐことができる。
【0007】
ところで、上記圧力センサに用いられるゲル部材は、低温、例えば−30℃以下において硬くなり、その応力を緩和すべくゲル部材が移動(流動)することで、ダイアフラムに設けたゲージ抵抗の抵抗値が変化する、すなわちセンサ出力特性が変動してしまうことが知られている。また、高温環境下でゲル部材が膨張することで、センサ出力特性が変動してしまうことも考えられる。特に上記のように排気ガス環境に配置される場合、排気ガスに含まれる硝酸などの酸成分に長時間晒されると、ゲル部材の表層が硬くなる。このようにゲル部材の表層が硬くなると、表面が硬くなる前と較べて、センサ出力が特に高温で大きく変動してしまう。
【0008】
上記したように、ステム側に肩部を有すると、凹部からステム側へゲル部材が移動する際に、ステムに対するゲル部材の粘性抵抗が大きく、これによりゲル部材の移動が阻害される。一方、センサチップ側に肩部を有する構成に較べて、ステム側から凹部へゲル部材が移動しやすくなる。したがって、ゲル部材はダイアフラム側に比較的移動しやすく、応力がダイアフラムに作用してしまう。また、特許文献1に記載の圧力センサでは、ステムに形成された貫通穴の径が、貫通方向で一定となっている。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、スパークによる接合強度の低下を抑制するとともに、ゲル部材の変形による応力がダイアフラムに作用するのを効果的に抑制することのできる圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の圧力センサは、
一面(21)に開口する凹部(22)と、該凹部(22)の底をなすダイアフラム(23)と、該ダイアフラム(23)に形成されたゲージ抵抗(24)と、を有するセンサチップ(11)と、
センサチップ(11)の一面と対向し、センサチップ(11)が固定される搭載面(31)と、該搭載面(31)開口し、凹部(22)に連通する圧力伝達路(33,43)と、を有する支持部材(12)と、
凹部(22)から連続して圧力伝達路(33,43)における少なくとも一部まで充填され、ダイアフラム(23)を保護するゲル部材(13)と、を備え、
検出対象の圧力媒体の圧力が、ゲル部材(13)を介してダイアフラム(23)に伝達され、ダイアフラム(23)が変形することでゲージ抵抗(24)の抵抗値が変化する圧力センサであって、
支持部材(12)のセンサチップ搭載面(31)における圧力伝達路(33,43)の縁部(34)は、センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)を取り囲む領域(21a)と対向しており、
圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、ダイアフラム(23)から最も離れた部分で端部の開口面積よりも大きく且つ最大とされるとともに、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上とされており、
支持部材(12)は、センサチップ搭載面(31)からその裏面(32)にわたって貫通するとともに、圧力伝達路(33,43)の少なくとも一部をなす第1圧力伝達路(33)を備え、接着材(50)を介してセンサチップ搭載面(31)にセンサチップ(11)が固定された第1支持部材(30)を有し、
第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくされており、
第1支持部材は、接着材(50)のみを介してセンサチップ(11)に固定された部品(30)で構成されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、粘性抵抗は、粘性部材と接触する物体の形状にも依存する。具体的には、平面に較べて、凸部や凹部を有する構成のほうが、粘性部材との接触面積が大きくなり、粘性抵抗が大きくなる。
【0012】
本発明では、支持部材(12)のセンサチップ搭載面(31)における圧力伝達路(33,43)の縁部(34)が、センサチップ(11)の凹部(22)と対向するのではなく、センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)を取り囲む領域(21a)と対向している。すなわち、センサチップ搭載面(31)に平行な方向において、支持部材(12)が、凹部(22)の内側に張り出す肩部を有していない。このため、粘性部材であるゲル部材(13)が低温で硬く変形し、その変形による応力を緩和すべく移動(流動)する際に、凹部(22)から支持部材(12)の方向、すなわちダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。また、高温環境下でゲル部材が膨張する際に、ゲル部材(13)がダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。
【0013】
また、圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材(13)との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、ダイアフラム(23)から最も離れた部分で端部の開口面積よりも大きく且つ最大となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上となっている。このため、ゲル部材(13)は、支持部材(12)の圧力伝達路(33,43)内を、ダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。
【0014】
さらに、支持部材(12)は少なくとも第1支持部材(30)を有している。この第1支持部材(30)は、接着材(50)のみを介してセンサチップ(11)に固定された部品、すなわち単一部品で構成されている。そして、第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材(13)との接触部分の開口面積は、ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくなっている。このため、第1圧力伝達路(33)の開口面積が、貫通方向で一定の構成に較べて、ゲル部材(13)がダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。
【0015】
本発明によれば上記相乗効果により、ゲル部材(13)の変形による応力が、ダイアフラム(23)、ひいてはゲージ抵抗(24)に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明では、センサチップ(11)が第1支持部材(30)に陽極接合されるのではなく、接着材(50)を介して固定されるため、圧力伝達路(33,43)の縁部(34)をセンサチップ(11)の一面(21)と対向させることができる。なお、このような配置を取りながら、陽極接合ではなく、接着固定としているので、スパークによる接合強度の低下を抑制することもできる。
【0017】
なお、上記した圧力伝達路(33,43)の縁部(34)とセンサチップ(11)の一面(21)における領域(21a)との位置関係は、換言すれば、圧力伝達路(33,43)の縁部(34)と、センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)の縁部(25)とが、センサチップ搭載面(31)に平行な方向において互いに一致する、又は、縁部(34)が縁部(25)の外側に位置するということである。
【0018】
請求項2に記載のように、圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材(13)との接触部分のうち、少なくとも第1圧力伝達路(33)は、ダイアフラム(23)から遠ざかるほど開口面積が大きくされた構成とすると良い。
【0019】
これによれば、少なくとも第1圧力伝達路(33)の開口面積が、ダイアフラム(23)から離れるほど大きいため、ダイアフラム(23)に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載のように、センサチップ(11)の内壁面(22a)はセンサチップ搭載面(31)に直交する直交方向において、ダイアフラム(23)から離れるほど凹部(22)の開口面積が大きいテーパ形状を有しており、
圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材(13)との接触部分の直交方向に対するテーパ角度(θ2)と、凹部(22)の内壁面(22a)の直交方向に対するテーパ角度(θ1)が一致しており、
センサチップ(11)の凹部(22)の内壁面(22a)と、圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材(13)との接触部分が、面一とされた構成とすると良い。
【0021】
これによれば、凹部(22)の内壁面(22a)と圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材(13)との接触部分とは、フラットな状態(段差のない状態)になっている。したがって、ダイアフラム(23)から離れる方向にゲル部材(13)が移動しやすい。これにより、ダイアフラム(23)に作用する応力をさらに効果的に抑制することができる。
【0022】
請求項4に記載のように、第1圧力伝達路(33)の内壁面(33a)におけるゲル部材(13)との接触部分が、階段状とされた構成を採用しても良い。
【0023】
このような第1支持部材(30)では、開口面積が一定の区間を、互いに開口面積が異なるように複数区間有する構成となっている。このため、ゲル部材(13)の接触部分全域が開口面積一定の第1支持部材(30)に較べて、ダイアフラム(23)から離れる方向にゲル部材(13)が移動しやすい。
【0024】
請求項5に記載のように、第1支持部材(30)として、セラミック多層基板を採用するとことができる。このように、セラミック多層基板を採用すると、例えばセラミック単体に較べて、上記開口形状の第1圧力伝達路(33)を形成しやすい。
【0025】
請求項6に記載のように、ゲル部材(13)の表面(13a)が、室温において、ダイアフラム(23)と反対に凸のメニスカス形状をなすようにすると良い。
【0026】
これによれば、例えば排気ガス中の酸成分により、ゲル部材(13)の表層が硬くなっても、ダイアフラム(23)と反対に凹のメニスカス形状や表面(13a)が平坦な形状のものに較べて、ダイアフラム(23)に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0027】
請求項7に記載のように、支持部材(12)は、第1圧力伝達路(33)に連通して第1圧力伝達路(33)とともに圧力伝達路(33,43)をなす第2圧力伝達路(43)を備え、第1支持部材(30)を支持する第2支持部材(40)を有しても良い。
【0028】
第2支持部材(40)を有する場合、例えば請求項8に記載のように、ゲル部材(13)は、凹部(22)から連続して第1圧力伝達路(33)の少なくとも一部まで充填され、第2圧力伝達路(43)には充填されていないようにすると良い。
【0029】
これによれば、例えば排気ガス中の酸成分によりゲル部材(13)の表層が硬くなっても、第2圧力伝達路(43)までゲル部材(13)が充填される構成に較べて、ダイアフラム(23)に作用する応力を抑制することができる。
【0030】
請求項9に記載のように、ゲル部材(13)の厚さよりも、圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分であってダイアフラム(23)から最も離れた部分の開口径のほうが長くされた構成としても良い。
【0031】
これによれば、例えば排気ガス中の酸成分によりゲル部材(13)の表層が硬くなっても、ゲル部材(13)の厚さが開口径以上とされた構成に較べて、ダイアフラム(23)に作用する応力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図2】比較例として、ステム側に肩部を有し、且つ、ステムの開口面積が一定の圧力センサにおいて、ゲル部材の変形状態を示す断面図である。
【図3】図1に示す圧力センサにおいてゲル部材の変形状態を示す断面図である。
【図4】応力解析に用いた圧力センサの概略構成を示す図であり、(a)は図1同様、センサチップ側に肩部を有するサンプル1、(b)は比較例として図2同様ステム側に肩部を有するサンプル2を示す。
【図5】図4に示すサンプル1,2の応力解析結果を示す図である。
【図6】ゲル部材の厚さとダイアフラムに作用する応力の変動量との関係を示す図である。
【図7】ゲル部材の表面積とダイアフラムに作用する応力の変動量との関係を示す図である。
【図8】変形例を示す断面図である。
【図9】変形例を示す断面図である。
【図10】変形例を示す断面図である。
【図11】第2実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図12】変形例を示す断面図である。
【図13】第3実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図14】図13に示す圧力センサの製造工程のうち、ゲル部材を硬化させる工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の各図相互において互いに同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。また、比較例についても、本発明の実施形態と同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。なお、図4では、便宜上、ステムとケースを接着する接着層を省略している。また、ゲル部材のハッチングを省略している。また、図2,図3,図8〜図10では、便宜上、ケースの図示を省略している。
【0034】
(第1実施形態)
本実施形態に係る圧力センサは、例えば腐食性を有する圧力媒体(液体、ガスなど)の圧力測定に用いられる。具体的には、ディーゼルエンジン車両の排気管内の排気ガスの圧力、該排気管内に設けられた排気清浄フィルタ(DPF)の前後の差圧、EGR雰囲気中の圧力などの測定に用いられる。
【0035】
図1に一例を示すように、圧力センサ10は、要部として、凹部22を有するセンサチップ11と、このセンサチップ11を支持するとともに、圧力伝達路としての貫通孔33,43を有する支持部材12と、凹部22と貫通孔33,43の少なくとも一部に一体的に充填されたゲル部材13と、接着層50と、を備える。また、支持部材12は、第1支持部材としてのステム30を少なくとも備える。本実施形態では、支持部材12として、上記ステム30だけでなく、ステム30を搭載する第2支持部材としてのケース40も備える。なお、接着層50が、特許請求の範囲に記載の接着材に相当する。
【0036】
センサチップ11は、半導体基板などからなるものであり、表面20及び裏面21のうち、裏面21に開口する凹部22を有している。なお、裏面21が、特許請求の範囲に記載の一面に相当する。この凹部22は、半導体基板を裏面21側からエッチングすることで形成されている。そして、凹部22の底をなす部分、すなわち凹部22に対応する表面20側の薄肉部分がダイアフラム23となっている。
【0037】
本実施形態では、半導体基板としてシリコン基板を採用しており、結晶面によるエッチング速度の差を利用して、凹部22が形成されている。具体的には、裏面21を(100)面とし、KOH系などのエッチング液を用いて異方性ウェットエッチングを行うことで、内壁面22aの側面を(111)面、底面を(100)面とする凹部22が形成されている。このような内壁面22aは、裏面21、すなわち(100)面に対して54.7°の角度を有している。すなわち、内壁面22aは、裏面21に垂直な方向、すなわち凹部22の深さ方向において、ダイアフラム23から離れるほど凹部22の開口面積が大きくなっている。詳しくは、上記深さ方向に対する開口面積の変化量が一定のテーパ形状を有している。
【0038】
なお、図1に示す符号25は、センサチップ11の裏面21において凹部22を取り囲む領域21aのうち、凹部22の縁部(内周側縁部)としての第2内縁部である。なお、裏面21において、凹部22を取り囲む領域21aとは、センサチップ11の表面20と反対の面において、凹部22の内壁面22aを除く領域を指す。凹部22とは、センサチップ11の裏面21に開口してなるものであるため、本実施形態に示す裏面21は、凹部22の内壁面22aを含まない。このため、裏面21と裏面21における領域21aとは、実質的に等価である。
【0039】
また、センサチップ11の表面20において、ダイアフラム23の部分には、例えば不純物を拡散してなるゲージ抵抗24が形成されている。本実施形態では、感度を大きくするために、ダイアフラム23における歪みの大きい部分、例えばダイアフラム23の周辺部に、ゲージ抵抗24が形成されている。このゲージ抵抗24は、少なくとも4個設けられており、図示しないブリッジ回路を構成している。
【0040】
このように、本実施形態のセンサチップ11は、半導体式のセンサチップとして構成され、ゲージ抵抗効果によって、印加された圧力に応じた信号が出力されるようになっている。具体的には、圧力媒体の圧力が、貫通孔33,43を通じてゲル部材13に伝達され、このゲル部材13を介してダイアフラム23に伝達される。すると、ダイアフラム23は、その圧力によって歪み(変形し)、ピエゾ抵抗効果によりゲージ抵抗24の抵抗値が変化する。そして、ゲージ抵抗24からなるブリッジ回路によって、ダイアフラム23の歪に応じた信号、すなわち、印加された圧力値に応じたレベルの信号が出力されるようになっている。
【0041】
このセンサチップ11は、裏面21の少なくとも一部を固定部位として、ステム30のセンサチップ搭載面31上に載置されている。そして、凹部22を取り囲んで配置された接着層50により、ステム30に固定されている。本実施形態では、接着層50として、接着フィルムを採用している。このように、予めフィルム化された接着層50を採用すると、液状の接着材を、熱や光などにより硬化させて接着層50とする例のように、凹部22内へ接着材が垂れ込み、ダイアフラム23に付着するなどの不具合が生じるのを抑制することができる。また、接着層50として所定厚さを確保することができる。
【0042】
ステム30は、台座とも言われるものであり、センサチップ11の裏面21と対向するセンサチップ搭載面31と、該センサチップ搭載面31に開口する第1圧力伝達路としての貫通孔33と、を有する。この貫通孔33は、センサチップ搭載面31からその裏面32にわたって貫通しており、ステム30に接着固定されたセンサチップ11の凹部22と連通している。
【0043】
ステム30の構成材料としては、線膨張係数がセンサチップ11を構成する基板と近く、さらに用途によっては耐熱性を有するものが好ましい。例えばアルミナ(Al2O3)などのセラミックス、42アロイやCuなどの金属、PPSやPBTなどの樹脂、ガラスを採用することができる。本実施形態では、ステム30として、セラミック基板を4層積層してなるセラミック多層基板を採用している。
【0044】
また、ステム30のセンサチップ搭載面31のうち、貫通孔33を取り囲む第1内縁部34は、センサチップ11の裏面21(領域21a)に対向している。ここで、第1内縁部34とは、特許請求の範囲に記載の圧力伝達路の縁部に相当する。なお、第1内縁部34とセンサチップ11の裏面21との位置関係は、換言すれば、第1内縁部34と、センサチップ11の第2内縁部25とが、センサチップ搭載面31に平行な方向において互いに一致する、又は、第1内縁部34が第2内縁部25の外側に位置するということである。又は、センサチップ搭載面31に開口する貫通孔33の開口形状は、裏面21に開口する凹部22の開口形状を取り囲むように同等以上に形成されているということである。
【0045】
また、貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面31側の端部、すなわち第1内縁部34で最小となっている。また、貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分のほうが、第1内縁部34よりも大きくなっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。
【0046】
本実施形態では、第1内縁部34がその全周で第2内縁部25の外側に位置している。そして、貫通孔33の内壁面33aにおけるゲル部材13との接触部分が階段状とされ、これにより貫通孔33の開口面積は、多段に設定されている。本実施形態では、上記したようにステム30としてセラミック多層基板を採用しており、ステム30を構成する各セラミック基板に貫通孔が形成されている。そして、各セラミック基板の貫通孔の開口面積を、ケース40側ほど大きくように互いに異ならせることで、内壁面33aが階段状となっている。
【0047】
なお、接着層50における内周面は、ステム30構成するセラミック多層基板のうち、センサチップ11側のセラミック基板の端面と面一となっており、接着層50は、センサチップ11の裏面21のうち、第2内縁部25から一部の範囲を除く部分と接触している。このため、内壁面33a及び接着層50の内周面よりも、センサチップ11の第2内縁部25のほうが内側に位置しており、センサチップ11の裏面21(領域21a)の一部が、ステム30及び接着層50に対して露出している。
【0048】
このステム30は、裏面32側がケース40に向き合うように、ケース40のステム搭載面41上に載置されるとともに、接着層51によりケース40に固定されている。すなわち、ケース40とセンサチップ11の間には、接着層50、ステム30、及び接着層51が介在されている。
【0049】
ケース40は、圧力センサ10を車両の排気系の適所に取り付けるための取付部としての機能を果たすものであり、ステム搭載面41とその裏面42とにわたって貫通する、第2圧力伝達路としての貫通孔43を有する。この貫通孔43は、ケース40に接着固定されたステム30の貫通孔33と連通している。また、このケース40は、図示しない外部接続用の端子を有している。
【0050】
また、ステム搭載面41において貫通孔43の縁部である第3内縁部44が、センサチップ搭載面31に平行な方向において、ステム30の裏面32において貫通孔33の縁部である第4内縁部35の外側に位置している。そして、貫通孔43は、その開口面積がセンサチップ搭載面31(ステム搭載面41)に垂直な方向において一定のストレート形状となっている。このように、貫通孔43の開口面積のほうが、貫通孔33の開口面積よりも大きくなっている。
【0051】
ケース40の構成材料としては、PPSやPBTなどの樹脂にて成形されたものからなり、さらに、ターミナルなどの端子がインサート成形されたものを採用することができる。また、ケース40の端子とセンサチップ11とは、図示しないボンディングワイヤなどにより電気的に接続されている。
【0052】
このように、圧力センサ10では、ステム30及びケース40が接着層51を介して一体化され、支持部材12が構成されている。この支持部材12において、ステム30のセンサチップ搭載面31にセンサチップ11が接着固定されている。また、ステム30の貫通孔33とケース40の貫通孔43は互いに連通し、これにより支持部材12の圧力伝達路が構成されている。本実施形態では、凹部22を満たしつつ凹部22から連続して貫通孔33にゲル部材13が充填されている。すなわち、ケース40を有しつつも、貫通孔43の内壁面43aにはゲル部材13が接触しておらず、凹部22と貫通孔33、すなわち圧力伝達路33,43の一部に、ゲル部材13が一体的に充填されている。
【0053】
そして、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分において、その開口面積は、ステム30の第1内縁部34で最小となっている。また、ダイアフラム23から最も離れた部分、具体的には、図1に示すように、センサチップ11側から3層目のセラミック基板の端面で最大となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。
【0054】
また、本実施形態では、圧力伝達路33,43の開口面積が、ステム30の第1内縁部34で最小、貫通孔43の内壁面43aで最大となっている。詳しくは、開口面積の関係が、第2内縁部25<第1内縁部34<第4内縁部35<第3内縁部44となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。
【0055】
ゲル部材13は、センサチップ11の特にダイアフラム23と、接着層50を保護するためのものである。このゲル部材13により、ダイアフラム23における凹部22の底面部分が被覆されている。本実施形態の圧力センサ10は、ディーゼルエンジンの排気ガス圧など、腐食性を有する圧力媒体の圧力の測定に用いられるものであるが、このゲル部材13により、腐食性の圧力媒体から、センサチップの特にダイアフラム23(凹部22の底面部分)や、接着層50が保護される。
【0056】
ゲル部材13の構成材料としては、例えばシリコーン系ゲル、フッ素系ゲル、フルオロシリコーン系ゲルなどのゲル材料を用いることができる。そして、このようなゲル材料を凹部22及び貫通孔33に注入し、硬化させることで、ゲル部材13の充填がなされている。
【0057】
このゲル部材13は、センサチップ11における凹部22全域と、支持部材12の圧力伝達路をなす貫通孔33,43のうち、凹部22側から少なくとも一部に一体的に充填される。本実施形態では、上記したように、凹部22から貫通孔33の途中まで連続的に充填されている。
【0058】
このため、圧力センサ10において、ケース40の貫通孔43を介して、貫通孔43側に露出するゲル部材13の表面13a(受圧面)に、検出対象である圧力媒体の圧力P1が作用すると、貫通孔33及び凹部22に配置されたゲル部材13を通じてセンサチップ11のダイアフラム23に圧力が伝達される。
【0059】
また、本実施形態では、ゲル部材13の表面13aが、室温で、ダイアフラム23側に凸、すなわちダイアフラム23と反対側に凹の屈曲形状、所謂メニスカス形状となっている。
【0060】
次に、本実施形態に係る圧力センサ10の特徴部分の効果について説明する。
【0061】
先ず、本実施形態では、ステム30のセンサチップ搭載面31における第1内縁部34が、センサチップ11の凹部22と対向するのではなく、センサチップ11の裏面21、すなわち領域21aと対向している点を特徴とする。換言すれば、センサチップ搭載面31に平行な方向において、ステム30が、凹部22の内側に張り出す肩部を有さない構成となっている。
【0062】
このように、肩部を有さない構成とできるのは、センサチップ11をステム30に陽極接合するのではなく、接着層50を介して固定するからである。なお、陽極接合の場合、センサチップ11において、圧力伝達路をなす貫通孔33の内側に張り出す肩部が存在すると、該肩部が避雷針のような役割を果たし、該肩部から電流が漏れる。すなわちスパークが生じる。このため、支持部材12が凹部22の内側に張り出す肩部を有する構成としなければならない。
【0063】
ここで、粘性抵抗は、材料固有の粘性係数(粘性率とも言う)に比例するとともに、粘性部材と接触する物体の形状にも依存する。具体的には、平面に較べて、凸部や凹部を有する構成のほうが、粘性部材との接触面積が大きくなり、粘性抵抗が大きくなる。
【0064】
粘性部材であるゲル部材13は、例えば低温(例えば−30℃以下)で硬く変形する。そして、この変形による応力を緩和すべく移動(流動)する。図2に比較例として示す圧力センサ10では、ステム30が、凹部22の内側に張り出す肩部を有する。換言すれば、ステム30のセンサチップ搭載面31における第1内縁部34が、センサチップ11の裏面21における第2内縁部25よりも内側に位置して、センサチップ11の凹部22と対向している。このように、ステム30に肩部を有するため、凹部22からダイアフラム23と反対の方向へのゲル部材13が移動する際に、ステム30に対するゲル部材13の粘性抵抗が大きい。このため、ダイアフラム23と反対方向へのゲル部材13の移動が阻害される。一方、貫通孔33から凹部22へのゲル部材13の移動に対しては、ステム30側に肩部を有するため、凹部22からダイアフラム23と反対の方向への移動に較べて粘性抵抗は小さい。このため、ゲル部材13はダイアフラム23を圧迫し、図2に白抜き矢印で示すように応力がダイアフラム23に作用してダイアフラム23がステム30と反対方向に撓んでしまう(歪んでしまう)。なお、高温環境下でゲル部材13が膨張する場合も同様である。
【0065】
これに対し、本実施形態では、図3に示すように、ステム30が凹部22の内側に出っ張る肩部を有していない。このため、肩部による粘性抵抗の増加が抑制され、凹部22からステム30の方向、すなわちダイアフラム23と反対の方向へゲル部材13が移動しやすい。一方、貫通孔33から凹部22側へのゲル部材13の移動に対しては、センサチップ11側に肩部を有するため、凹部22からダイアフラム23と反対の方向への移動に較べて、粘性抵抗は大きくなる。このように図2に示す構成に較べてダイアフラム23と反対の方向へゲル部材13が移動しやすい。このため、ダイアフラム23と反対の方向へのゲル部材13の移動により、ゲル部材13の応力が緩和される。そして、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0066】
なお、本発明者は、有限要素法を用いた解析(FEM解析)により、上記実施形態に示す構成の効果について確認した。図4は、解析に用いた圧力センサの概略構成を示しており、(a)は本実施形態に係る圧力センサ10同様、センサチップ11側に肩部を有するサンプル1、(b)は比較例としてステム30側に肩部を有するサンプル2を示している。図4(a)に示すサンプル1では、センサチップ11をシリコン基板、接着層50をフルオロシリコーン、ステム30をアルミナ、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。また、ステム30の開口面積を一定とし、第1内縁部34から第2内縁部25までのセンサチップ搭載面31に沿う方向の距離を0.375mmとした。また、ステム30の内壁面33aと接着層50の内周面を面一とした。
【0067】
一方、図4(b)に示すサンプル2では、センサチップ11をシリコン基板、ステム30をガラス、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。また、第1内縁部34から第2内縁部25までのセンサチップ搭載面31に沿う方向の距離を0.7mmとし、ステム30の開口面積は一定とした。
【0068】
また、センサチップ11の構成(ダイアフラム23の大きさ、厚さ、センサチップ11の厚さ、凹部22の大きさ及び形状)、ケース40の構成(貫通孔43の開口面積、長さ)については、各サンプルで同じとした。そして、150℃の高温から−40℃の低温に温度を変化させたときに、ダイアフラム23に発生する応力を構造解析した。この解析では、ダイアフラム23における端部23a(図4の二点鎖線)からダイアフラム23の中心CLまでを等距離で区分して、端部23aをポイント1とする1〜15の応力測定ポイントとした。
【0069】
その結果を図5に示す。図5に示すように、サンプル1のほうがサンプル2に較べてダイアフラム23に発生する応力が小さいことが明らかである。なお、測定ポイント1〜15において最大発生応力は、サンプル1で−0.5MPa、サンプル2で−4.8MPaであった。このように、サンプル2の最大発生応力に対し、サンプル1の最大発生応力は約90%低減されている。この結果からも、本実施形態に示す構成によれば、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制できることが明らかである。
【0070】
また、本実施形態では、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分の開口面積が、ステム30の第1内縁部34で最小となっている。このため、センサチップ搭載面31側の端部よりもダイアフラム23と反対の方向に、センサチップ搭載面31側の端部よりも狭い部分が存在しない。また、接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分で第1内縁部34の開口面積よりも大きく且つ最大となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。このため、ゲル部材13が例えば低温で硬く変形し、この変形による応力を緩和する際に、ゲル部材13が、ステム30の貫通孔33内を、ダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい。これにより、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。なお、高温環境下でゲル部材13が膨張する場合も同様である。また、ゲル部材13との接触部分とは、製造時におけるゲル部材13の充填範囲ではなく、使用する温度域においてゲル部材13が取り得る範囲の最大である。実質的に高温側の使用温度上限において、膨張したゲル部材13が接触する部分である。
【0071】
また、本実施形態では、センサチップ11は、接着層50を介して、第1支持部材としてのステム30に固定されている。換言すると、第1支持部材は、接着層50のみを介してセンサチップ11が固定された部品であるステム30のみによって構成されている。そして、ステム30の貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分のほうが、第1内縁部34よりも大きくなっている。なお、上記したように、任意位置の開口面積は、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。このため、図3に示すように、ステム30内においては、ダイアフラム23の方向よりも、ダイアフラム23と反対の方向へ、ゲル部材13が移動しやすい。換言すれば、貫通孔33の開口面積が一定のステム30に較べて、ゲル部材13がダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい。これにより、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0072】
このように本実施形態に係る圧力センサ10によれば、上記相乗効果により、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0073】
特に、本実施形態に係る圧力センサ10のように、排気ガス環境に配置される場合、排気ガスに含まれる硝酸などの酸成分に長時間晒されると、ゲル部材13の表層が硬くなる。このようにゲル部材13の表層が硬くなると、表層が硬くない状態と較べて、ダイアフラム23と反対の方向にゲル部材13が移動しにくくなり、その反面ダイアフラム23を押し上げようとする力が強くなる。しかしながら、本実施形態に係る圧力センサ10は、ゲル部材13がダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい構成となっている。したがって、ゲル部材13の表層が酸成分によって硬くなっても、従来の圧力センサに較べれば、硬くなったゲル部材13の表層に対して、ダイアフラム23と反対方向に変形させようとする力が強く作用する。これにより、硬くなったゲル部材13の表層部分の変形量が大きくなり、従来の圧力センサよりも、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを抑制することができる。
【0074】
なお、本発明者は、ダイアフラム23に生じる応力の酸成分の影響有無での変動量について、ゲル部材13の厚さ、表面積の影響を、試験により確認した。その結果を図6,図7に示す。この試験では、同一構成の圧力センサ10を一組準備し、一方を140℃で加熱し、160時間、ゲル部材13の表面13aにpH1.5の排気凝縮水を20〜30分に1回滴下した。これにより、ゲル部材13の表層が硬くなったサンプルを得た。そして、このサンプルと、排気凝縮水を滴下しなかったサンプルを一組として、150℃の高温(HT)、20℃の室温(RT)、−40℃の低温(LT)の3水準で、ダイアフラム20の最大発生応力をそれぞれ測定し、その差分を変動量とした。なお、図6,図7では、高温を白抜きの三角、室温を白抜きの四角、低温を白抜きの丸で示している。
【0075】
また、ゲル部材13の厚さについては、約2.5mm、2.8mm、3.2mmの3水準を準備した。なお、センサチップ11をシリコン基板、接着層50をフルオロシリコーン、ステム30をアルミナ、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。そして、ゲル部材13の厚さ以外のパラメータは同じ条件とした。図6に示すように、高温時の変動量が大きく、特にゲル部材13の厚さが厚いほど、変動量が大きいことが明らかとなった。このように、ゲル部材13が厚いほど、高温時の変動量が大きいのは、厚いほどゲル部材13の膨張力が大きく、これにより、ダイアフラム23を押し上げようとする力が強くなるためと考えられる。
【0076】
一方、ゲル部材13の表面積については、9mm2、20mm2の2水準を準備した。なお、なお、センサチップ11をシリコン基板、接着層50をフルオロシリコーン、ステム30をアルミナ、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。そして、ゲル部材13の表面積以外のパラメータは同じ条件とした。図7に示すように、高温時の変動量が大きく、特にゲル部材13の表面積が小さいほど、変動量が大きいことが明らかとなった。このように、ゲル部材13の表面積が小さいほど、高温時の変動量が大きいのは、表面積が小さいほど、換言すると開口径が短いほど、ゲル部材13表層の硬くなった部分のばねが強くなり、変形しにくくなる。このため、ダイアフラム23を押し上げようとする力が強くなると考えられる。
【0077】
以上の結果から、酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなった状態で、ゲル部材13の膨張によりダイアフラム23に作用する応力を抑制するには、ゲル部材13の表面積を大きく、厚さを薄くすることが好ましい。厚さについては、ダイアフラム23とともに接着層50も保護する必要があるため、第1内縁部34からの最低厚さとして、接着層50を保護できる厚さ、実質的には1mm程度必要である。
【0078】
本実施形態では上記結果を踏まえ、支持部材12として、ケース40を有しながらも、ゲル部材13をステム30の貫通孔33までの充填に止め、これによりゲル部材13の厚さが薄くなるようにしている。このため、ケース40までのゲル部材13が充填される構成に較べて、ダイアフラム23に作用する応力、特に酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなったときの応力、を抑制することができる。また、ゲル部材13の厚さよりも、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。なお、ゲル部材13の厚さとは、上記直交方向に沿う最大長さである。これによれば、ゲル部材13の厚さが、開口径以上とされた構成に較べて、ダイアフラム23に作用する応力、特に酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなったときの応力、を抑制することができる。また、本実施形態では、ステム30としてセラミック多層基板を採用している。このように、セラミック多層基板を採用すると、例えばセラミック単体によるステム30に較べて、上記した開口形状の貫通孔33を形成しやすい。
【0079】
(変形例)
上記例では、ステム30の貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分が階段状とされる例を示した。しかしながら、例えば図8に示すように、貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分は、ダイアフラム23から遠ざかるほど開口面積が大きくされた構成としても良い。図8に示す例では、センサチップ搭載面31に直交する直交方向(以下、単に直交方向と示す)において、貫通孔33全域で、貫通孔33の開口面積の変化量が一定のテーパ形状となっている。このように、貫通孔33のゲル部材13との接触部分において、ダイアフラム23から遠ざかるほど開口面積が大きいと、ステム30において、ダイアフラム23と反対の方向にゲル部材13が移動しやすくなる。これにより、ダイアフラム23に作用する応力をさらに効果的に抑制することができる。また、ゲル部材13の表層が酸成分により硬くなった場合でも、上記構成により、例えば開口面積が一定のステム30に較べて、センサチップ11の体格増大を抑制しつつダイアフラム23に作用する応力を抑制することができる。なお、図8に示すステム30は、セラミック、樹脂、金属などの単体であるが、セラミック多層基板を構成する各セラミック基板の端面をテーパ加工することで、セラミック多層基板でも実現することができる。
【0080】
また、図8に示す例では、凹部22の内壁面22aと貫通孔33の内壁面33aの、直交する方向に対する傾きが異なる例を示した。すなわち、凹部22の内壁面22aの直交方向に対するテーパ角度θ1と、貫通孔33の内壁面33aの直交方向に対するテーパ角度θ2とが異なる例(θ2>θ1)を示した。しかしながら、図9に示すように、テーパ角度θ1,θ2が一致し、センサチップ11の凹部22の内壁面22aと、貫通孔33の内壁面33aにおけるゲル部材13との接触部分が、面一とされた構成としても良い。換言すれば、段差(凹凸)のないフラットな状態で、センサチップ11とステム30が接着された構成としても良い。このように、凹部22の内壁面22aと貫通孔33の内壁面33aのうちゲル部材13との接触部分とをフラットな状態とすると、ダイアフラム23と反対の方向にゲル部材13が移動しやすい。このため、ダイアフラム23に作用する応力をさらに効果的に抑制することができる。図9では、接着層50も含めて面一となっており、接着層50の内周面がテーパ形状を有している。なお、テーパ角度θ1,θ2が互いに等しいながらも、内壁面22a,33a同士が面一でない構成を採用することもできる。
【0081】
上記例では、ステム30の第1内縁部34が、センサチップ11の第2内縁部25よりも外側に位置する例を示した。しかしながら、例えば図10に示すように、センサチップ搭載面31に平行な方向において、第1内縁部34と第2内縁部25が全周で一致する構成としても良い。例えば図10に示す例では、ステム30の貫通孔33のうち、センサチップ搭載面31側の端部から深さ方向真ん中までを開口面積一定とし、それよりも裏面32側の部分を、ダイアフラム23から離れるほど開口面積が大きくなるようにしている。このようにすると、センサチップ11とステム30の接着部分に、裏面21の第2内縁部25から一部範囲が露出してなる段差(凹凸)が無いため、ゲル部材13が移動する際に凹部22からダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい。したがって、ダイアフラム23に作用する応力を、より効果的に抑制することができる。
【0082】
なお、図9に示すように、凹部22の内壁面22a、接着層50の内周面、及び貫通孔33の内壁面33aが面一とされた構成において、接着層50の厚さを薄くすると、第1内縁部34が第2内縁部25近づき、両者25,34がほぼ一致する状態となる。また、図8〜図10では、ゲル部材13の変形状態を示しており、ゲル部材13中の矢印は、ゲル部材13が凹部22から貫通孔33側へ移動しやすいことを示している。また、図8〜図10においても、ゲル部材13の厚さより、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。
【0083】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した圧力センサ10と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、凹部22から連続してステム30の貫通孔33までゲル部材13が充填される例を示した。
【0084】
これに対し、本実施形態では、図11に示すように、凹部22から連続してケース40の貫通孔43までゲル部材13が充填されている点を第1の特徴とする。そして、ケース40のステム搭載面41において、貫通孔43を取り囲む第3内縁部44が、ステム30の裏面32と対向している点を第2の特徴とする。なお、図11に示す圧力センサ10は、ゲル部材13の充填範囲を除いて、第1実施形態の図1に示す圧力センサ10と同じ構成となっている。すなわち、第3内縁部44が、ステム30の裏面32において貫通孔33を取り囲む第4内縁部35よりも外側に位置している。なお、図11では、ゲル部材13の変形状態を示しており、ゲル部材13中の矢印は、ゲル部材13が凹部22から貫通孔33側、ひいては貫通孔43側へ移動しやすいことを示している。
【0085】
このように、本実施形態では、センサチップ11に対するステム30同様、ケース40が、ステム30の貫通孔33の内側に張り出す肩部を有していない。このため、ゲル部材13がステム30からケース40に向けて移動しやすい。したがって、ダイアフラム23と反対の方向へのゲル部材13の移動によりゲル部材13の応力が緩和される。そして、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態においては、ケース40の貫通孔43が、ステム30の貫通孔33よりも開口面積が大きく、且つ、開口面積一定のストレート形状となっている。これにより、第1実施形態同様、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分の開口面積が、ステム30の第1内縁部34で最小となっている。また、接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分で第1内縁部34の開口面積よりも大きく且つ最大となっている。さらには、接触部分において、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。このため、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0087】
また、第1実施形態同様、ゲル部材13の厚さよりも、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。これにより、ダイアフラム23に作用する応力、特に酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなったときの応力、を抑制することができる。
【0088】
(変形例)
上記例では、貫通孔43の開口面積が一定のケース40を示した。しかしながら、ケース40の貫通孔43は、ゲル部材13の接触部分において、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっていれば良い。例えば図12に示す例では、貫通孔43の内壁面43aにおけるゲル部材13との接触部分は、ダイアフラム23から離れるほど貫通孔43の開口面積が大きくなっている。詳しくは、ゲル部材13との接触部分で、貫通孔43の開口面積の変化量が一定のテーパ形状となっている。また、貫通孔43の内壁面43aにおけるゲル部材13との接触部分の直交方向に対するテーパ角度θ3が、上記したテーパ角度θ1,θ2と一致している。換言すれば、支持部材12において、ゲル部材13との接触部分のテーパ角度がθ2(=θ3)であり、このテーパ角度θ2が、センサチップ11のテーパ角度θ1と一致している。そして、センサチップ11の凹部22の内壁面22a、接着層50の内周面、支持部材12を構成するステム30の貫通孔33の内壁面33aが面一とされるとともに、貫通孔33の内壁面33a、接着層51、ケース40の貫通孔43の内壁面43aにおけるゲル部材13との接触部分が面一となっている。このような構成とすると、第1実施形態の変形例(図9参照)同様、テーパ形状の効果と、面一の効果とにより、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。また、開口面積が一定の貫通孔43に較べて、ゲル部材13の表面積が大きくなるので、酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなった状態で、ダイアフラム23に作用する応力を抑制することができる。なお、図12では、ゲル部材13の変形状態を示しており、ゲル部材13中の矢印は、ゲル部材13が凹部22から貫通孔33側、ひいては貫通孔43側へ移動しやすいことを示している。また、図12でも、ゲル部材13の厚さより、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。
【0089】
図12では、貫通孔43の内壁面43aが貫通孔43の途中までテーパ形状をなし、残りの部分が開口面積一定のストレート形状をなす例を示した。しかしながら、貫通孔43の途中までゲル部材13が充填される構成において、貫通孔43の内壁面43a全体を、ダイアフラム23から離れるほど貫通孔43の開口面積が大きくなる形状としても良い。
【0090】
また、図12では、テーパ角度θ1,θ2,θ3が互いに等しい例を示したが、互いに異なる角度とされた構成としても良い。さらには、3つのテーパ角度θ1,θ2,θ3のうち、2つが等しく、残りの1つが異なる構成としても良い。また、テーパ角度θ1,θ2,θ3が互いに等しいものの、内壁面22a,33a,43a同士が面一でない構成を採用することもできる。さらには、テーパ角度θ1,θ2,θ3が互いに等しいものの、内壁面22a,33a同士が面一で、内壁面33a,43a同士が面一でない構成を採用することもできる。
【0091】
また、第3内縁部44が、第4内縁部35よりも外側に位置する例を示したが、第3内縁部44と第4内縁部35が全周で一致する構成としても良い。
【0092】
(第3実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した圧力センサ10と共通する部分についての説明は割愛する。上記実施形態では、室温状態で、ゲル部材13の表面が、ダイアフラム23と反対側に凹のメニスカス形状となっている例(図1参照)を示した。
【0093】
これに対し、本実施形態では、図13に示すように、室温状態で、ゲル部材13の表面が、ダイアフラム23と反対側に凸の屈曲形状、所謂メニスカス形状となっている点を特徴とする。なお、図13に示す圧力センサ10は、ゲル部材13の表面形状が異なる点を除けば、第1実施形態(図1参照)に示した構成と同じである。
【0094】
このように、ゲル部材13の表面を、ダイアフラム23と反対側に凸のメニスカス形状としておくと、ダイアフラム23と反対に凹のメニスカス形状、表面が平坦な形状に較べて、ゲル部材13がダイアフラム23と反対側に移動しやすい。例えば排気ガス中の酸成分により、ゲル部材13の表層が硬くなり、ゲル部材13の膨張により、表層の硬い部分がダイアフラム23と反対の方向に変形する場合を考える。この場合、表層の硬い部分は、ダイアフラム23と反対側に凸のメニスカス形状のほうが、凹のメニスカス形状、平坦形状よりも、ダイアフラム23と反対側に変形しやすい。したがって、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0095】
なお、図13に示すようなゲル部材13を形成するには、例えば以下の方法が考えられる。図14に示すように、ゲル部材13を、ケース40の貫通孔43を通じて、センサチップ11の凹部22からステム30の貫通孔33の途中まで注入する。次いで、ゲル部材13を表面13a側から加圧した状態、具体的には外部雰囲気の圧力を大気圧よりも高めた状態で、例えば加熱によりゲル部材13を硬化させる。この硬化処理後、圧力を開放して、ゲル部材13の表面13aに大気圧がかかるようにすると、図13に示すように、ダイアフラム23と反対側に凸のメニスカス形状を有するゲル部材13を得ることができる。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0097】
本実施形態では、支持部材12が、第1支持部材としてのステム30と、第2支持部材としてのケース40の2つの部材からなる例を示した。しかしながら、支持部材12の構成は上記例に限定されるものではない。少なくとも第1支持部材を備えればよい。例えば第1支持部材としてケース40を有し、ステム30を有さない構成、所謂台座レスの構成を採用することもできる。また、3つ以上の部材により支持部材12が構成されても良い。
【符号の説明】
【0098】
10・・・圧力センサ
11・・・センサチップ
12・・・支持部材
13・・・ゲル部材
21・・・裏面(一面)
22・・・凹部
23・・・ダイアフラム
24・・・ゲージ抵抗
25・・・第1内周部
30・・・ステム(第1支持部材)
31・・・センサチップ搭載面(搭載面)
33・・・貫通孔(第1圧力伝達路)
40・・・ケース(第2支持部材)
43・・・貫通孔(第2圧力伝達路)
50・・・接着層(接着材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部とゲージ抵抗が形成されたダイアフラムとを有するセンサチップ、凹部に連通する圧力伝達路を有する支持部材、凹部及び圧力伝達路に一体的に充填されるゲル部材を備え、ゲル部材を介して伝達される圧力に応じてダイアフラムが変形する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載のように、凹部とゲージ抵抗が形成されたダイアフラムとを有するセンサチップ、凹部に連通する圧力伝達路を有する支持部材、凹部及び圧力伝達路に一体的に充填されるゲル部材を備え、ゲル部材を介して伝達される圧力に応じてダイアフラムが変形する圧力センサが知られている。
【0003】
この種の圧力センサは、ディーゼルエンジン車両の排気管内に設けられた排気清浄フィルタ(DPF)の前後の差圧を測定したり、EGR雰囲気中の圧力などの測定に用いられる。このため、腐食性を有する液体やガスなどの圧力媒体からセンサチップを保護するために、上記したゲル部材を備えている。また、センサチップの凹部に水分が侵入すると、低温時に凍結して体積膨張し、ダイアフラムがダメージを受ける虞がある。このため、ゲル部材は、支持部材の圧力伝達路を介して凹部へ水分が侵入するのを防ぐ役割も果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−3449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスからなる支持部材(ステム)にセンサチップが陽極接合されてなる圧力センサでは、一般にステム側をグランド(低電位)、センサチップ側を高電位として陽極接合を行う。センサチップの凹部における支持部材側の開口部の径が、支持部材の圧力伝達路におけるセンサチップ側の開口部の径よりも小さく、センサチップに、圧力伝達路の内側に張り出す肩部が存在すると、陽極接合時に該肩部が避雷針のような役割を果たし、該肩部から電流が漏れる。すなわち、スパークが生じる。このため、接合強度が低下するなど、安定した陽極接合を行うことができない。
【0006】
これに対し、特許文献1には、ステムに形成された圧力伝達路におけるセンサチップ側の開口部の径が、センサチップにおける凹部の径よりも小さく、ステムに凹部の内側に張り出す肩部が存在する圧力センサが示されている。このようにステム側に肩部を設けることで、上記スパークが生じるのを防ぐことができる。
【0007】
ところで、上記圧力センサに用いられるゲル部材は、低温、例えば−30℃以下において硬くなり、その応力を緩和すべくゲル部材が移動(流動)することで、ダイアフラムに設けたゲージ抵抗の抵抗値が変化する、すなわちセンサ出力特性が変動してしまうことが知られている。また、高温環境下でゲル部材が膨張することで、センサ出力特性が変動してしまうことも考えられる。特に上記のように排気ガス環境に配置される場合、排気ガスに含まれる硝酸などの酸成分に長時間晒されると、ゲル部材の表層が硬くなる。このようにゲル部材の表層が硬くなると、表面が硬くなる前と較べて、センサ出力が特に高温で大きく変動してしまう。
【0008】
上記したように、ステム側に肩部を有すると、凹部からステム側へゲル部材が移動する際に、ステムに対するゲル部材の粘性抵抗が大きく、これによりゲル部材の移動が阻害される。一方、センサチップ側に肩部を有する構成に較べて、ステム側から凹部へゲル部材が移動しやすくなる。したがって、ゲル部材はダイアフラム側に比較的移動しやすく、応力がダイアフラムに作用してしまう。また、特許文献1に記載の圧力センサでは、ステムに形成された貫通穴の径が、貫通方向で一定となっている。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑み、スパークによる接合強度の低下を抑制するとともに、ゲル部材の変形による応力がダイアフラムに作用するのを効果的に抑制することのできる圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の圧力センサは、
一面(21)に開口する凹部(22)と、該凹部(22)の底をなすダイアフラム(23)と、該ダイアフラム(23)に形成されたゲージ抵抗(24)と、を有するセンサチップ(11)と、
センサチップ(11)の一面と対向し、センサチップ(11)が固定される搭載面(31)と、該搭載面(31)開口し、凹部(22)に連通する圧力伝達路(33,43)と、を有する支持部材(12)と、
凹部(22)から連続して圧力伝達路(33,43)における少なくとも一部まで充填され、ダイアフラム(23)を保護するゲル部材(13)と、を備え、
検出対象の圧力媒体の圧力が、ゲル部材(13)を介してダイアフラム(23)に伝達され、ダイアフラム(23)が変形することでゲージ抵抗(24)の抵抗値が変化する圧力センサであって、
支持部材(12)のセンサチップ搭載面(31)における圧力伝達路(33,43)の縁部(34)は、センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)を取り囲む領域(21a)と対向しており、
圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、ダイアフラム(23)から最も離れた部分で端部の開口面積よりも大きく且つ最大とされるとともに、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上とされており、
支持部材(12)は、センサチップ搭載面(31)からその裏面(32)にわたって貫通するとともに、圧力伝達路(33,43)の少なくとも一部をなす第1圧力伝達路(33)を備え、接着材(50)を介してセンサチップ搭載面(31)にセンサチップ(11)が固定された第1支持部材(30)を有し、
第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくされており、
第1支持部材は、接着材(50)のみを介してセンサチップ(11)に固定された部品(30)で構成されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、粘性抵抗は、粘性部材と接触する物体の形状にも依存する。具体的には、平面に較べて、凸部や凹部を有する構成のほうが、粘性部材との接触面積が大きくなり、粘性抵抗が大きくなる。
【0012】
本発明では、支持部材(12)のセンサチップ搭載面(31)における圧力伝達路(33,43)の縁部(34)が、センサチップ(11)の凹部(22)と対向するのではなく、センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)を取り囲む領域(21a)と対向している。すなわち、センサチップ搭載面(31)に平行な方向において、支持部材(12)が、凹部(22)の内側に張り出す肩部を有していない。このため、粘性部材であるゲル部材(13)が低温で硬く変形し、その変形による応力を緩和すべく移動(流動)する際に、凹部(22)から支持部材(12)の方向、すなわちダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。また、高温環境下でゲル部材が膨張する際に、ゲル部材(13)がダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。
【0013】
また、圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材(13)との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、ダイアフラム(23)から最も離れた部分で端部の開口面積よりも大きく且つ最大となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上となっている。このため、ゲル部材(13)は、支持部材(12)の圧力伝達路(33,43)内を、ダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。
【0014】
さらに、支持部材(12)は少なくとも第1支持部材(30)を有している。この第1支持部材(30)は、接着材(50)のみを介してセンサチップ(11)に固定された部品、すなわち単一部品で構成されている。そして、第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材(13)との接触部分の開口面積は、ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくなっている。このため、第1圧力伝達路(33)の開口面積が、貫通方向で一定の構成に較べて、ゲル部材(13)がダイアフラム(23)と反対の方向へ移動しやすい。
【0015】
本発明によれば上記相乗効果により、ゲル部材(13)の変形による応力が、ダイアフラム(23)、ひいてはゲージ抵抗(24)に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明では、センサチップ(11)が第1支持部材(30)に陽極接合されるのではなく、接着材(50)を介して固定されるため、圧力伝達路(33,43)の縁部(34)をセンサチップ(11)の一面(21)と対向させることができる。なお、このような配置を取りながら、陽極接合ではなく、接着固定としているので、スパークによる接合強度の低下を抑制することもできる。
【0017】
なお、上記した圧力伝達路(33,43)の縁部(34)とセンサチップ(11)の一面(21)における領域(21a)との位置関係は、換言すれば、圧力伝達路(33,43)の縁部(34)と、センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)の縁部(25)とが、センサチップ搭載面(31)に平行な方向において互いに一致する、又は、縁部(34)が縁部(25)の外側に位置するということである。
【0018】
請求項2に記載のように、圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材(13)との接触部分のうち、少なくとも第1圧力伝達路(33)は、ダイアフラム(23)から遠ざかるほど開口面積が大きくされた構成とすると良い。
【0019】
これによれば、少なくとも第1圧力伝達路(33)の開口面積が、ダイアフラム(23)から離れるほど大きいため、ダイアフラム(23)に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0020】
請求項3に記載のように、センサチップ(11)の内壁面(22a)はセンサチップ搭載面(31)に直交する直交方向において、ダイアフラム(23)から離れるほど凹部(22)の開口面積が大きいテーパ形状を有しており、
圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材(13)との接触部分の直交方向に対するテーパ角度(θ2)と、凹部(22)の内壁面(22a)の直交方向に対するテーパ角度(θ1)が一致しており、
センサチップ(11)の凹部(22)の内壁面(22a)と、圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材(13)との接触部分が、面一とされた構成とすると良い。
【0021】
これによれば、凹部(22)の内壁面(22a)と圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材(13)との接触部分とは、フラットな状態(段差のない状態)になっている。したがって、ダイアフラム(23)から離れる方向にゲル部材(13)が移動しやすい。これにより、ダイアフラム(23)に作用する応力をさらに効果的に抑制することができる。
【0022】
請求項4に記載のように、第1圧力伝達路(33)の内壁面(33a)におけるゲル部材(13)との接触部分が、階段状とされた構成を採用しても良い。
【0023】
このような第1支持部材(30)では、開口面積が一定の区間を、互いに開口面積が異なるように複数区間有する構成となっている。このため、ゲル部材(13)の接触部分全域が開口面積一定の第1支持部材(30)に較べて、ダイアフラム(23)から離れる方向にゲル部材(13)が移動しやすい。
【0024】
請求項5に記載のように、第1支持部材(30)として、セラミック多層基板を採用するとことができる。このように、セラミック多層基板を採用すると、例えばセラミック単体に較べて、上記開口形状の第1圧力伝達路(33)を形成しやすい。
【0025】
請求項6に記載のように、ゲル部材(13)の表面(13a)が、室温において、ダイアフラム(23)と反対に凸のメニスカス形状をなすようにすると良い。
【0026】
これによれば、例えば排気ガス中の酸成分により、ゲル部材(13)の表層が硬くなっても、ダイアフラム(23)と反対に凹のメニスカス形状や表面(13a)が平坦な形状のものに較べて、ダイアフラム(23)に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0027】
請求項7に記載のように、支持部材(12)は、第1圧力伝達路(33)に連通して第1圧力伝達路(33)とともに圧力伝達路(33,43)をなす第2圧力伝達路(43)を備え、第1支持部材(30)を支持する第2支持部材(40)を有しても良い。
【0028】
第2支持部材(40)を有する場合、例えば請求項8に記載のように、ゲル部材(13)は、凹部(22)から連続して第1圧力伝達路(33)の少なくとも一部まで充填され、第2圧力伝達路(43)には充填されていないようにすると良い。
【0029】
これによれば、例えば排気ガス中の酸成分によりゲル部材(13)の表層が硬くなっても、第2圧力伝達路(43)までゲル部材(13)が充填される構成に較べて、ダイアフラム(23)に作用する応力を抑制することができる。
【0030】
請求項9に記載のように、ゲル部材(13)の厚さよりも、圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分であってダイアフラム(23)から最も離れた部分の開口径のほうが長くされた構成としても良い。
【0031】
これによれば、例えば排気ガス中の酸成分によりゲル部材(13)の表層が硬くなっても、ゲル部材(13)の厚さが開口径以上とされた構成に較べて、ダイアフラム(23)に作用する応力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図2】比較例として、ステム側に肩部を有し、且つ、ステムの開口面積が一定の圧力センサにおいて、ゲル部材の変形状態を示す断面図である。
【図3】図1に示す圧力センサにおいてゲル部材の変形状態を示す断面図である。
【図4】応力解析に用いた圧力センサの概略構成を示す図であり、(a)は図1同様、センサチップ側に肩部を有するサンプル1、(b)は比較例として図2同様ステム側に肩部を有するサンプル2を示す。
【図5】図4に示すサンプル1,2の応力解析結果を示す図である。
【図6】ゲル部材の厚さとダイアフラムに作用する応力の変動量との関係を示す図である。
【図7】ゲル部材の表面積とダイアフラムに作用する応力の変動量との関係を示す図である。
【図8】変形例を示す断面図である。
【図9】変形例を示す断面図である。
【図10】変形例を示す断面図である。
【図11】第2実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図12】変形例を示す断面図である。
【図13】第3実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す断面図である。
【図14】図13に示す圧力センサの製造工程のうち、ゲル部材を硬化させる工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の各図相互において互いに同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。また、比較例についても、本発明の実施形態と同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。なお、図4では、便宜上、ステムとケースを接着する接着層を省略している。また、ゲル部材のハッチングを省略している。また、図2,図3,図8〜図10では、便宜上、ケースの図示を省略している。
【0034】
(第1実施形態)
本実施形態に係る圧力センサは、例えば腐食性を有する圧力媒体(液体、ガスなど)の圧力測定に用いられる。具体的には、ディーゼルエンジン車両の排気管内の排気ガスの圧力、該排気管内に設けられた排気清浄フィルタ(DPF)の前後の差圧、EGR雰囲気中の圧力などの測定に用いられる。
【0035】
図1に一例を示すように、圧力センサ10は、要部として、凹部22を有するセンサチップ11と、このセンサチップ11を支持するとともに、圧力伝達路としての貫通孔33,43を有する支持部材12と、凹部22と貫通孔33,43の少なくとも一部に一体的に充填されたゲル部材13と、接着層50と、を備える。また、支持部材12は、第1支持部材としてのステム30を少なくとも備える。本実施形態では、支持部材12として、上記ステム30だけでなく、ステム30を搭載する第2支持部材としてのケース40も備える。なお、接着層50が、特許請求の範囲に記載の接着材に相当する。
【0036】
センサチップ11は、半導体基板などからなるものであり、表面20及び裏面21のうち、裏面21に開口する凹部22を有している。なお、裏面21が、特許請求の範囲に記載の一面に相当する。この凹部22は、半導体基板を裏面21側からエッチングすることで形成されている。そして、凹部22の底をなす部分、すなわち凹部22に対応する表面20側の薄肉部分がダイアフラム23となっている。
【0037】
本実施形態では、半導体基板としてシリコン基板を採用しており、結晶面によるエッチング速度の差を利用して、凹部22が形成されている。具体的には、裏面21を(100)面とし、KOH系などのエッチング液を用いて異方性ウェットエッチングを行うことで、内壁面22aの側面を(111)面、底面を(100)面とする凹部22が形成されている。このような内壁面22aは、裏面21、すなわち(100)面に対して54.7°の角度を有している。すなわち、内壁面22aは、裏面21に垂直な方向、すなわち凹部22の深さ方向において、ダイアフラム23から離れるほど凹部22の開口面積が大きくなっている。詳しくは、上記深さ方向に対する開口面積の変化量が一定のテーパ形状を有している。
【0038】
なお、図1に示す符号25は、センサチップ11の裏面21において凹部22を取り囲む領域21aのうち、凹部22の縁部(内周側縁部)としての第2内縁部である。なお、裏面21において、凹部22を取り囲む領域21aとは、センサチップ11の表面20と反対の面において、凹部22の内壁面22aを除く領域を指す。凹部22とは、センサチップ11の裏面21に開口してなるものであるため、本実施形態に示す裏面21は、凹部22の内壁面22aを含まない。このため、裏面21と裏面21における領域21aとは、実質的に等価である。
【0039】
また、センサチップ11の表面20において、ダイアフラム23の部分には、例えば不純物を拡散してなるゲージ抵抗24が形成されている。本実施形態では、感度を大きくするために、ダイアフラム23における歪みの大きい部分、例えばダイアフラム23の周辺部に、ゲージ抵抗24が形成されている。このゲージ抵抗24は、少なくとも4個設けられており、図示しないブリッジ回路を構成している。
【0040】
このように、本実施形態のセンサチップ11は、半導体式のセンサチップとして構成され、ゲージ抵抗効果によって、印加された圧力に応じた信号が出力されるようになっている。具体的には、圧力媒体の圧力が、貫通孔33,43を通じてゲル部材13に伝達され、このゲル部材13を介してダイアフラム23に伝達される。すると、ダイアフラム23は、その圧力によって歪み(変形し)、ピエゾ抵抗効果によりゲージ抵抗24の抵抗値が変化する。そして、ゲージ抵抗24からなるブリッジ回路によって、ダイアフラム23の歪に応じた信号、すなわち、印加された圧力値に応じたレベルの信号が出力されるようになっている。
【0041】
このセンサチップ11は、裏面21の少なくとも一部を固定部位として、ステム30のセンサチップ搭載面31上に載置されている。そして、凹部22を取り囲んで配置された接着層50により、ステム30に固定されている。本実施形態では、接着層50として、接着フィルムを採用している。このように、予めフィルム化された接着層50を採用すると、液状の接着材を、熱や光などにより硬化させて接着層50とする例のように、凹部22内へ接着材が垂れ込み、ダイアフラム23に付着するなどの不具合が生じるのを抑制することができる。また、接着層50として所定厚さを確保することができる。
【0042】
ステム30は、台座とも言われるものであり、センサチップ11の裏面21と対向するセンサチップ搭載面31と、該センサチップ搭載面31に開口する第1圧力伝達路としての貫通孔33と、を有する。この貫通孔33は、センサチップ搭載面31からその裏面32にわたって貫通しており、ステム30に接着固定されたセンサチップ11の凹部22と連通している。
【0043】
ステム30の構成材料としては、線膨張係数がセンサチップ11を構成する基板と近く、さらに用途によっては耐熱性を有するものが好ましい。例えばアルミナ(Al2O3)などのセラミックス、42アロイやCuなどの金属、PPSやPBTなどの樹脂、ガラスを採用することができる。本実施形態では、ステム30として、セラミック基板を4層積層してなるセラミック多層基板を採用している。
【0044】
また、ステム30のセンサチップ搭載面31のうち、貫通孔33を取り囲む第1内縁部34は、センサチップ11の裏面21(領域21a)に対向している。ここで、第1内縁部34とは、特許請求の範囲に記載の圧力伝達路の縁部に相当する。なお、第1内縁部34とセンサチップ11の裏面21との位置関係は、換言すれば、第1内縁部34と、センサチップ11の第2内縁部25とが、センサチップ搭載面31に平行な方向において互いに一致する、又は、第1内縁部34が第2内縁部25の外側に位置するということである。又は、センサチップ搭載面31に開口する貫通孔33の開口形状は、裏面21に開口する凹部22の開口形状を取り囲むように同等以上に形成されているということである。
【0045】
また、貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分の開口面積は、センサチップ搭載面31側の端部、すなわち第1内縁部34で最小となっている。また、貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分のほうが、第1内縁部34よりも大きくなっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。
【0046】
本実施形態では、第1内縁部34がその全周で第2内縁部25の外側に位置している。そして、貫通孔33の内壁面33aにおけるゲル部材13との接触部分が階段状とされ、これにより貫通孔33の開口面積は、多段に設定されている。本実施形態では、上記したようにステム30としてセラミック多層基板を採用しており、ステム30を構成する各セラミック基板に貫通孔が形成されている。そして、各セラミック基板の貫通孔の開口面積を、ケース40側ほど大きくように互いに異ならせることで、内壁面33aが階段状となっている。
【0047】
なお、接着層50における内周面は、ステム30構成するセラミック多層基板のうち、センサチップ11側のセラミック基板の端面と面一となっており、接着層50は、センサチップ11の裏面21のうち、第2内縁部25から一部の範囲を除く部分と接触している。このため、内壁面33a及び接着層50の内周面よりも、センサチップ11の第2内縁部25のほうが内側に位置しており、センサチップ11の裏面21(領域21a)の一部が、ステム30及び接着層50に対して露出している。
【0048】
このステム30は、裏面32側がケース40に向き合うように、ケース40のステム搭載面41上に載置されるとともに、接着層51によりケース40に固定されている。すなわち、ケース40とセンサチップ11の間には、接着層50、ステム30、及び接着層51が介在されている。
【0049】
ケース40は、圧力センサ10を車両の排気系の適所に取り付けるための取付部としての機能を果たすものであり、ステム搭載面41とその裏面42とにわたって貫通する、第2圧力伝達路としての貫通孔43を有する。この貫通孔43は、ケース40に接着固定されたステム30の貫通孔33と連通している。また、このケース40は、図示しない外部接続用の端子を有している。
【0050】
また、ステム搭載面41において貫通孔43の縁部である第3内縁部44が、センサチップ搭載面31に平行な方向において、ステム30の裏面32において貫通孔33の縁部である第4内縁部35の外側に位置している。そして、貫通孔43は、その開口面積がセンサチップ搭載面31(ステム搭載面41)に垂直な方向において一定のストレート形状となっている。このように、貫通孔43の開口面積のほうが、貫通孔33の開口面積よりも大きくなっている。
【0051】
ケース40の構成材料としては、PPSやPBTなどの樹脂にて成形されたものからなり、さらに、ターミナルなどの端子がインサート成形されたものを採用することができる。また、ケース40の端子とセンサチップ11とは、図示しないボンディングワイヤなどにより電気的に接続されている。
【0052】
このように、圧力センサ10では、ステム30及びケース40が接着層51を介して一体化され、支持部材12が構成されている。この支持部材12において、ステム30のセンサチップ搭載面31にセンサチップ11が接着固定されている。また、ステム30の貫通孔33とケース40の貫通孔43は互いに連通し、これにより支持部材12の圧力伝達路が構成されている。本実施形態では、凹部22を満たしつつ凹部22から連続して貫通孔33にゲル部材13が充填されている。すなわち、ケース40を有しつつも、貫通孔43の内壁面43aにはゲル部材13が接触しておらず、凹部22と貫通孔33、すなわち圧力伝達路33,43の一部に、ゲル部材13が一体的に充填されている。
【0053】
そして、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分において、その開口面積は、ステム30の第1内縁部34で最小となっている。また、ダイアフラム23から最も離れた部分、具体的には、図1に示すように、センサチップ11側から3層目のセラミック基板の端面で最大となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。
【0054】
また、本実施形態では、圧力伝達路33,43の開口面積が、ステム30の第1内縁部34で最小、貫通孔43の内壁面43aで最大となっている。詳しくは、開口面積の関係が、第2内縁部25<第1内縁部34<第4内縁部35<第3内縁部44となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。
【0055】
ゲル部材13は、センサチップ11の特にダイアフラム23と、接着層50を保護するためのものである。このゲル部材13により、ダイアフラム23における凹部22の底面部分が被覆されている。本実施形態の圧力センサ10は、ディーゼルエンジンの排気ガス圧など、腐食性を有する圧力媒体の圧力の測定に用いられるものであるが、このゲル部材13により、腐食性の圧力媒体から、センサチップの特にダイアフラム23(凹部22の底面部分)や、接着層50が保護される。
【0056】
ゲル部材13の構成材料としては、例えばシリコーン系ゲル、フッ素系ゲル、フルオロシリコーン系ゲルなどのゲル材料を用いることができる。そして、このようなゲル材料を凹部22及び貫通孔33に注入し、硬化させることで、ゲル部材13の充填がなされている。
【0057】
このゲル部材13は、センサチップ11における凹部22全域と、支持部材12の圧力伝達路をなす貫通孔33,43のうち、凹部22側から少なくとも一部に一体的に充填される。本実施形態では、上記したように、凹部22から貫通孔33の途中まで連続的に充填されている。
【0058】
このため、圧力センサ10において、ケース40の貫通孔43を介して、貫通孔43側に露出するゲル部材13の表面13a(受圧面)に、検出対象である圧力媒体の圧力P1が作用すると、貫通孔33及び凹部22に配置されたゲル部材13を通じてセンサチップ11のダイアフラム23に圧力が伝達される。
【0059】
また、本実施形態では、ゲル部材13の表面13aが、室温で、ダイアフラム23側に凸、すなわちダイアフラム23と反対側に凹の屈曲形状、所謂メニスカス形状となっている。
【0060】
次に、本実施形態に係る圧力センサ10の特徴部分の効果について説明する。
【0061】
先ず、本実施形態では、ステム30のセンサチップ搭載面31における第1内縁部34が、センサチップ11の凹部22と対向するのではなく、センサチップ11の裏面21、すなわち領域21aと対向している点を特徴とする。換言すれば、センサチップ搭載面31に平行な方向において、ステム30が、凹部22の内側に張り出す肩部を有さない構成となっている。
【0062】
このように、肩部を有さない構成とできるのは、センサチップ11をステム30に陽極接合するのではなく、接着層50を介して固定するからである。なお、陽極接合の場合、センサチップ11において、圧力伝達路をなす貫通孔33の内側に張り出す肩部が存在すると、該肩部が避雷針のような役割を果たし、該肩部から電流が漏れる。すなわちスパークが生じる。このため、支持部材12が凹部22の内側に張り出す肩部を有する構成としなければならない。
【0063】
ここで、粘性抵抗は、材料固有の粘性係数(粘性率とも言う)に比例するとともに、粘性部材と接触する物体の形状にも依存する。具体的には、平面に較べて、凸部や凹部を有する構成のほうが、粘性部材との接触面積が大きくなり、粘性抵抗が大きくなる。
【0064】
粘性部材であるゲル部材13は、例えば低温(例えば−30℃以下)で硬く変形する。そして、この変形による応力を緩和すべく移動(流動)する。図2に比較例として示す圧力センサ10では、ステム30が、凹部22の内側に張り出す肩部を有する。換言すれば、ステム30のセンサチップ搭載面31における第1内縁部34が、センサチップ11の裏面21における第2内縁部25よりも内側に位置して、センサチップ11の凹部22と対向している。このように、ステム30に肩部を有するため、凹部22からダイアフラム23と反対の方向へのゲル部材13が移動する際に、ステム30に対するゲル部材13の粘性抵抗が大きい。このため、ダイアフラム23と反対方向へのゲル部材13の移動が阻害される。一方、貫通孔33から凹部22へのゲル部材13の移動に対しては、ステム30側に肩部を有するため、凹部22からダイアフラム23と反対の方向への移動に較べて粘性抵抗は小さい。このため、ゲル部材13はダイアフラム23を圧迫し、図2に白抜き矢印で示すように応力がダイアフラム23に作用してダイアフラム23がステム30と反対方向に撓んでしまう(歪んでしまう)。なお、高温環境下でゲル部材13が膨張する場合も同様である。
【0065】
これに対し、本実施形態では、図3に示すように、ステム30が凹部22の内側に出っ張る肩部を有していない。このため、肩部による粘性抵抗の増加が抑制され、凹部22からステム30の方向、すなわちダイアフラム23と反対の方向へゲル部材13が移動しやすい。一方、貫通孔33から凹部22側へのゲル部材13の移動に対しては、センサチップ11側に肩部を有するため、凹部22からダイアフラム23と反対の方向への移動に較べて、粘性抵抗は大きくなる。このように図2に示す構成に較べてダイアフラム23と反対の方向へゲル部材13が移動しやすい。このため、ダイアフラム23と反対の方向へのゲル部材13の移動により、ゲル部材13の応力が緩和される。そして、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0066】
なお、本発明者は、有限要素法を用いた解析(FEM解析)により、上記実施形態に示す構成の効果について確認した。図4は、解析に用いた圧力センサの概略構成を示しており、(a)は本実施形態に係る圧力センサ10同様、センサチップ11側に肩部を有するサンプル1、(b)は比較例としてステム30側に肩部を有するサンプル2を示している。図4(a)に示すサンプル1では、センサチップ11をシリコン基板、接着層50をフルオロシリコーン、ステム30をアルミナ、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。また、ステム30の開口面積を一定とし、第1内縁部34から第2内縁部25までのセンサチップ搭載面31に沿う方向の距離を0.375mmとした。また、ステム30の内壁面33aと接着層50の内周面を面一とした。
【0067】
一方、図4(b)に示すサンプル2では、センサチップ11をシリコン基板、ステム30をガラス、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。また、第1内縁部34から第2内縁部25までのセンサチップ搭載面31に沿う方向の距離を0.7mmとし、ステム30の開口面積は一定とした。
【0068】
また、センサチップ11の構成(ダイアフラム23の大きさ、厚さ、センサチップ11の厚さ、凹部22の大きさ及び形状)、ケース40の構成(貫通孔43の開口面積、長さ)については、各サンプルで同じとした。そして、150℃の高温から−40℃の低温に温度を変化させたときに、ダイアフラム23に発生する応力を構造解析した。この解析では、ダイアフラム23における端部23a(図4の二点鎖線)からダイアフラム23の中心CLまでを等距離で区分して、端部23aをポイント1とする1〜15の応力測定ポイントとした。
【0069】
その結果を図5に示す。図5に示すように、サンプル1のほうがサンプル2に較べてダイアフラム23に発生する応力が小さいことが明らかである。なお、測定ポイント1〜15において最大発生応力は、サンプル1で−0.5MPa、サンプル2で−4.8MPaであった。このように、サンプル2の最大発生応力に対し、サンプル1の最大発生応力は約90%低減されている。この結果からも、本実施形態に示す構成によれば、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制できることが明らかである。
【0070】
また、本実施形態では、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分の開口面積が、ステム30の第1内縁部34で最小となっている。このため、センサチップ搭載面31側の端部よりもダイアフラム23と反対の方向に、センサチップ搭載面31側の端部よりも狭い部分が存在しない。また、接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分で第1内縁部34の開口面積よりも大きく且つ最大となっている。さらには、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。このため、ゲル部材13が例えば低温で硬く変形し、この変形による応力を緩和する際に、ゲル部材13が、ステム30の貫通孔33内を、ダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい。これにより、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。なお、高温環境下でゲル部材13が膨張する場合も同様である。また、ゲル部材13との接触部分とは、製造時におけるゲル部材13の充填範囲ではなく、使用する温度域においてゲル部材13が取り得る範囲の最大である。実質的に高温側の使用温度上限において、膨張したゲル部材13が接触する部分である。
【0071】
また、本実施形態では、センサチップ11は、接着層50を介して、第1支持部材としてのステム30に固定されている。換言すると、第1支持部材は、接着層50のみを介してセンサチップ11が固定された部品であるステム30のみによって構成されている。そして、ステム30の貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分のほうが、第1内縁部34よりも大きくなっている。なお、上記したように、任意位置の開口面積は、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。このため、図3に示すように、ステム30内においては、ダイアフラム23の方向よりも、ダイアフラム23と反対の方向へ、ゲル部材13が移動しやすい。換言すれば、貫通孔33の開口面積が一定のステム30に較べて、ゲル部材13がダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい。これにより、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0072】
このように本実施形態に係る圧力センサ10によれば、上記相乗効果により、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0073】
特に、本実施形態に係る圧力センサ10のように、排気ガス環境に配置される場合、排気ガスに含まれる硝酸などの酸成分に長時間晒されると、ゲル部材13の表層が硬くなる。このようにゲル部材13の表層が硬くなると、表層が硬くない状態と較べて、ダイアフラム23と反対の方向にゲル部材13が移動しにくくなり、その反面ダイアフラム23を押し上げようとする力が強くなる。しかしながら、本実施形態に係る圧力センサ10は、ゲル部材13がダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい構成となっている。したがって、ゲル部材13の表層が酸成分によって硬くなっても、従来の圧力センサに較べれば、硬くなったゲル部材13の表層に対して、ダイアフラム23と反対方向に変形させようとする力が強く作用する。これにより、硬くなったゲル部材13の表層部分の変形量が大きくなり、従来の圧力センサよりも、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを抑制することができる。
【0074】
なお、本発明者は、ダイアフラム23に生じる応力の酸成分の影響有無での変動量について、ゲル部材13の厚さ、表面積の影響を、試験により確認した。その結果を図6,図7に示す。この試験では、同一構成の圧力センサ10を一組準備し、一方を140℃で加熱し、160時間、ゲル部材13の表面13aにpH1.5の排気凝縮水を20〜30分に1回滴下した。これにより、ゲル部材13の表層が硬くなったサンプルを得た。そして、このサンプルと、排気凝縮水を滴下しなかったサンプルを一組として、150℃の高温(HT)、20℃の室温(RT)、−40℃の低温(LT)の3水準で、ダイアフラム20の最大発生応力をそれぞれ測定し、その差分を変動量とした。なお、図6,図7では、高温を白抜きの三角、室温を白抜きの四角、低温を白抜きの丸で示している。
【0075】
また、ゲル部材13の厚さについては、約2.5mm、2.8mm、3.2mmの3水準を準備した。なお、センサチップ11をシリコン基板、接着層50をフルオロシリコーン、ステム30をアルミナ、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。そして、ゲル部材13の厚さ以外のパラメータは同じ条件とした。図6に示すように、高温時の変動量が大きく、特にゲル部材13の厚さが厚いほど、変動量が大きいことが明らかとなった。このように、ゲル部材13が厚いほど、高温時の変動量が大きいのは、厚いほどゲル部材13の膨張力が大きく、これにより、ダイアフラム23を押し上げようとする力が強くなるためと考えられる。
【0076】
一方、ゲル部材13の表面積については、9mm2、20mm2の2水準を準備した。なお、なお、センサチップ11をシリコン基板、接着層50をフルオロシリコーン、ステム30をアルミナ、ケース40をPBT、ゲル部材13をヤング率0.1MPa程度のフッ素系ゲルとした。そして、ゲル部材13の表面積以外のパラメータは同じ条件とした。図7に示すように、高温時の変動量が大きく、特にゲル部材13の表面積が小さいほど、変動量が大きいことが明らかとなった。このように、ゲル部材13の表面積が小さいほど、高温時の変動量が大きいのは、表面積が小さいほど、換言すると開口径が短いほど、ゲル部材13表層の硬くなった部分のばねが強くなり、変形しにくくなる。このため、ダイアフラム23を押し上げようとする力が強くなると考えられる。
【0077】
以上の結果から、酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなった状態で、ゲル部材13の膨張によりダイアフラム23に作用する応力を抑制するには、ゲル部材13の表面積を大きく、厚さを薄くすることが好ましい。厚さについては、ダイアフラム23とともに接着層50も保護する必要があるため、第1内縁部34からの最低厚さとして、接着層50を保護できる厚さ、実質的には1mm程度必要である。
【0078】
本実施形態では上記結果を踏まえ、支持部材12として、ケース40を有しながらも、ゲル部材13をステム30の貫通孔33までの充填に止め、これによりゲル部材13の厚さが薄くなるようにしている。このため、ケース40までのゲル部材13が充填される構成に較べて、ダイアフラム23に作用する応力、特に酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなったときの応力、を抑制することができる。また、ゲル部材13の厚さよりも、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。なお、ゲル部材13の厚さとは、上記直交方向に沿う最大長さである。これによれば、ゲル部材13の厚さが、開口径以上とされた構成に較べて、ダイアフラム23に作用する応力、特に酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなったときの応力、を抑制することができる。また、本実施形態では、ステム30としてセラミック多層基板を採用している。このように、セラミック多層基板を採用すると、例えばセラミック単体によるステム30に較べて、上記した開口形状の貫通孔33を形成しやすい。
【0079】
(変形例)
上記例では、ステム30の貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分が階段状とされる例を示した。しかしながら、例えば図8に示すように、貫通孔33におけるゲル部材13との接触部分は、ダイアフラム23から遠ざかるほど開口面積が大きくされた構成としても良い。図8に示す例では、センサチップ搭載面31に直交する直交方向(以下、単に直交方向と示す)において、貫通孔33全域で、貫通孔33の開口面積の変化量が一定のテーパ形状となっている。このように、貫通孔33のゲル部材13との接触部分において、ダイアフラム23から遠ざかるほど開口面積が大きいと、ステム30において、ダイアフラム23と反対の方向にゲル部材13が移動しやすくなる。これにより、ダイアフラム23に作用する応力をさらに効果的に抑制することができる。また、ゲル部材13の表層が酸成分により硬くなった場合でも、上記構成により、例えば開口面積が一定のステム30に較べて、センサチップ11の体格増大を抑制しつつダイアフラム23に作用する応力を抑制することができる。なお、図8に示すステム30は、セラミック、樹脂、金属などの単体であるが、セラミック多層基板を構成する各セラミック基板の端面をテーパ加工することで、セラミック多層基板でも実現することができる。
【0080】
また、図8に示す例では、凹部22の内壁面22aと貫通孔33の内壁面33aの、直交する方向に対する傾きが異なる例を示した。すなわち、凹部22の内壁面22aの直交方向に対するテーパ角度θ1と、貫通孔33の内壁面33aの直交方向に対するテーパ角度θ2とが異なる例(θ2>θ1)を示した。しかしながら、図9に示すように、テーパ角度θ1,θ2が一致し、センサチップ11の凹部22の内壁面22aと、貫通孔33の内壁面33aにおけるゲル部材13との接触部分が、面一とされた構成としても良い。換言すれば、段差(凹凸)のないフラットな状態で、センサチップ11とステム30が接着された構成としても良い。このように、凹部22の内壁面22aと貫通孔33の内壁面33aのうちゲル部材13との接触部分とをフラットな状態とすると、ダイアフラム23と反対の方向にゲル部材13が移動しやすい。このため、ダイアフラム23に作用する応力をさらに効果的に抑制することができる。図9では、接着層50も含めて面一となっており、接着層50の内周面がテーパ形状を有している。なお、テーパ角度θ1,θ2が互いに等しいながらも、内壁面22a,33a同士が面一でない構成を採用することもできる。
【0081】
上記例では、ステム30の第1内縁部34が、センサチップ11の第2内縁部25よりも外側に位置する例を示した。しかしながら、例えば図10に示すように、センサチップ搭載面31に平行な方向において、第1内縁部34と第2内縁部25が全周で一致する構成としても良い。例えば図10に示す例では、ステム30の貫通孔33のうち、センサチップ搭載面31側の端部から深さ方向真ん中までを開口面積一定とし、それよりも裏面32側の部分を、ダイアフラム23から離れるほど開口面積が大きくなるようにしている。このようにすると、センサチップ11とステム30の接着部分に、裏面21の第2内縁部25から一部範囲が露出してなる段差(凹凸)が無いため、ゲル部材13が移動する際に凹部22からダイアフラム23と反対の方向へ移動しやすい。したがって、ダイアフラム23に作用する応力を、より効果的に抑制することができる。
【0082】
なお、図9に示すように、凹部22の内壁面22a、接着層50の内周面、及び貫通孔33の内壁面33aが面一とされた構成において、接着層50の厚さを薄くすると、第1内縁部34が第2内縁部25近づき、両者25,34がほぼ一致する状態となる。また、図8〜図10では、ゲル部材13の変形状態を示しており、ゲル部材13中の矢印は、ゲル部材13が凹部22から貫通孔33側へ移動しやすいことを示している。また、図8〜図10においても、ゲル部材13の厚さより、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。
【0083】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した圧力センサ10と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、凹部22から連続してステム30の貫通孔33までゲル部材13が充填される例を示した。
【0084】
これに対し、本実施形態では、図11に示すように、凹部22から連続してケース40の貫通孔43までゲル部材13が充填されている点を第1の特徴とする。そして、ケース40のステム搭載面41において、貫通孔43を取り囲む第3内縁部44が、ステム30の裏面32と対向している点を第2の特徴とする。なお、図11に示す圧力センサ10は、ゲル部材13の充填範囲を除いて、第1実施形態の図1に示す圧力センサ10と同じ構成となっている。すなわち、第3内縁部44が、ステム30の裏面32において貫通孔33を取り囲む第4内縁部35よりも外側に位置している。なお、図11では、ゲル部材13の変形状態を示しており、ゲル部材13中の矢印は、ゲル部材13が凹部22から貫通孔33側、ひいては貫通孔43側へ移動しやすいことを示している。
【0085】
このように、本実施形態では、センサチップ11に対するステム30同様、ケース40が、ステム30の貫通孔33の内側に張り出す肩部を有していない。このため、ゲル部材13がステム30からケース40に向けて移動しやすい。したがって、ダイアフラム23と反対の方向へのゲル部材13の移動によりゲル部材13の応力が緩和される。そして、ゲル部材13の変形による応力が、ダイアフラム23、ひいてはゲージ抵抗24に作用するのを効果的に抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態においては、ケース40の貫通孔43が、ステム30の貫通孔33よりも開口面積が大きく、且つ、開口面積一定のストレート形状となっている。これにより、第1実施形態同様、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分の開口面積が、ステム30の第1内縁部34で最小となっている。また、接触部分の開口面積は、ダイアフラム23から最も離れた部分で第1内縁部34の開口面積よりも大きく且つ最大となっている。さらには、接触部分において、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっている。このため、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0087】
また、第1実施形態同様、ゲル部材13の厚さよりも、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。これにより、ダイアフラム23に作用する応力、特に酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなったときの応力、を抑制することができる。
【0088】
(変形例)
上記例では、貫通孔43の開口面積が一定のケース40を示した。しかしながら、ケース40の貫通孔43は、ゲル部材13の接触部分において、任意位置の開口面積が、該任意位置よりもダイアフラム23に近い位置の開口面積以上となっていれば良い。例えば図12に示す例では、貫通孔43の内壁面43aにおけるゲル部材13との接触部分は、ダイアフラム23から離れるほど貫通孔43の開口面積が大きくなっている。詳しくは、ゲル部材13との接触部分で、貫通孔43の開口面積の変化量が一定のテーパ形状となっている。また、貫通孔43の内壁面43aにおけるゲル部材13との接触部分の直交方向に対するテーパ角度θ3が、上記したテーパ角度θ1,θ2と一致している。換言すれば、支持部材12において、ゲル部材13との接触部分のテーパ角度がθ2(=θ3)であり、このテーパ角度θ2が、センサチップ11のテーパ角度θ1と一致している。そして、センサチップ11の凹部22の内壁面22a、接着層50の内周面、支持部材12を構成するステム30の貫通孔33の内壁面33aが面一とされるとともに、貫通孔33の内壁面33a、接着層51、ケース40の貫通孔43の内壁面43aにおけるゲル部材13との接触部分が面一となっている。このような構成とすると、第1実施形態の変形例(図9参照)同様、テーパ形状の効果と、面一の効果とにより、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。また、開口面積が一定の貫通孔43に較べて、ゲル部材13の表面積が大きくなるので、酸成分によりゲル部材13の表層が硬くなった状態で、ダイアフラム23に作用する応力を抑制することができる。なお、図12では、ゲル部材13の変形状態を示しており、ゲル部材13中の矢印は、ゲル部材13が凹部22から貫通孔33側、ひいては貫通孔43側へ移動しやすいことを示している。また、図12でも、ゲル部材13の厚さより、圧力伝達路33,43におけるゲル部材13との接触部分であってダイアフラム23から最も離れた部分の開口径のほうが長くなっている。
【0089】
図12では、貫通孔43の内壁面43aが貫通孔43の途中までテーパ形状をなし、残りの部分が開口面積一定のストレート形状をなす例を示した。しかしながら、貫通孔43の途中までゲル部材13が充填される構成において、貫通孔43の内壁面43a全体を、ダイアフラム23から離れるほど貫通孔43の開口面積が大きくなる形状としても良い。
【0090】
また、図12では、テーパ角度θ1,θ2,θ3が互いに等しい例を示したが、互いに異なる角度とされた構成としても良い。さらには、3つのテーパ角度θ1,θ2,θ3のうち、2つが等しく、残りの1つが異なる構成としても良い。また、テーパ角度θ1,θ2,θ3が互いに等しいものの、内壁面22a,33a,43a同士が面一でない構成を採用することもできる。さらには、テーパ角度θ1,θ2,θ3が互いに等しいものの、内壁面22a,33a同士が面一で、内壁面33a,43a同士が面一でない構成を採用することもできる。
【0091】
また、第3内縁部44が、第4内縁部35よりも外側に位置する例を示したが、第3内縁部44と第4内縁部35が全周で一致する構成としても良い。
【0092】
(第3実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した圧力センサ10と共通する部分についての説明は割愛する。上記実施形態では、室温状態で、ゲル部材13の表面が、ダイアフラム23と反対側に凹のメニスカス形状となっている例(図1参照)を示した。
【0093】
これに対し、本実施形態では、図13に示すように、室温状態で、ゲル部材13の表面が、ダイアフラム23と反対側に凸の屈曲形状、所謂メニスカス形状となっている点を特徴とする。なお、図13に示す圧力センサ10は、ゲル部材13の表面形状が異なる点を除けば、第1実施形態(図1参照)に示した構成と同じである。
【0094】
このように、ゲル部材13の表面を、ダイアフラム23と反対側に凸のメニスカス形状としておくと、ダイアフラム23と反対に凹のメニスカス形状、表面が平坦な形状に較べて、ゲル部材13がダイアフラム23と反対側に移動しやすい。例えば排気ガス中の酸成分により、ゲル部材13の表層が硬くなり、ゲル部材13の膨張により、表層の硬い部分がダイアフラム23と反対の方向に変形する場合を考える。この場合、表層の硬い部分は、ダイアフラム23と反対側に凸のメニスカス形状のほうが、凹のメニスカス形状、平坦形状よりも、ダイアフラム23と反対側に変形しやすい。したがって、ダイアフラム23に作用する応力をより効果的に抑制することができる。
【0095】
なお、図13に示すようなゲル部材13を形成するには、例えば以下の方法が考えられる。図14に示すように、ゲル部材13を、ケース40の貫通孔43を通じて、センサチップ11の凹部22からステム30の貫通孔33の途中まで注入する。次いで、ゲル部材13を表面13a側から加圧した状態、具体的には外部雰囲気の圧力を大気圧よりも高めた状態で、例えば加熱によりゲル部材13を硬化させる。この硬化処理後、圧力を開放して、ゲル部材13の表面13aに大気圧がかかるようにすると、図13に示すように、ダイアフラム23と反対側に凸のメニスカス形状を有するゲル部材13を得ることができる。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0097】
本実施形態では、支持部材12が、第1支持部材としてのステム30と、第2支持部材としてのケース40の2つの部材からなる例を示した。しかしながら、支持部材12の構成は上記例に限定されるものではない。少なくとも第1支持部材を備えればよい。例えば第1支持部材としてケース40を有し、ステム30を有さない構成、所謂台座レスの構成を採用することもできる。また、3つ以上の部材により支持部材12が構成されても良い。
【符号の説明】
【0098】
10・・・圧力センサ
11・・・センサチップ
12・・・支持部材
13・・・ゲル部材
21・・・裏面(一面)
22・・・凹部
23・・・ダイアフラム
24・・・ゲージ抵抗
25・・・第1内周部
30・・・ステム(第1支持部材)
31・・・センサチップ搭載面(搭載面)
33・・・貫通孔(第1圧力伝達路)
40・・・ケース(第2支持部材)
43・・・貫通孔(第2圧力伝達路)
50・・・接着層(接着材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(21)に開口する凹部(22)と、該凹部(22)の底をなすダイアフラム(23)と、該ダイアフラム(23)に形成されたゲージ抵抗(24)と、を有するセンサチップ(11)と、
前記センサチップ(11)の一面と対向し、前記センサチップが固定される搭載面(31)と、該搭載面に開口し、前記凹部(22)に連通する圧力伝達路(33,43)と、を有する支持部材(12)と、
前記凹部(22)から連続して前記圧力伝達路(33,43)における少なくとも一部まで充填され、前記ダイアフラム(23)を保護するゲル部材(13)と、を備え、
検出対象の圧力媒体の圧力が、前記ゲル部材(13)を介して前記ダイアフラム(23)に伝達され、前記ダイアフラムが変形することで前記ゲージ抵抗(24)の抵抗値が変化する圧力センサであって、
前記支持部材(12)のセンサチップ搭載面(31)における前記圧力伝達路(33,43)の縁部(34)は、前記センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)を取り囲む領域(21a)と対向しており、
前記圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、前記センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、前記ダイアフラム(23)から最も離れた部分で前記端部の開口面積よりも大きく且つ最大とされるとともに、任意位置の開口面積が、該任意位置よりも前記ダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上とされており、
前記支持部材(12)は、前記センサチップ搭載面(31)からその裏面(32)にわたって貫通するとともに、前記圧力伝達路(33,43)の少なくとも一部をなす第1圧力伝達路(33)を備え、接着材(50)を介して前記センサチップ搭載面(31)に前記センサチップ(11)が固定された第1支持部材(30)を有し、
前記第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、前記ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、前記センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくされており、
前記第1支持部材は、前記接着材(50)のみを介して前記センサチップ(11)が固定された部品(30)で構成されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分のうち、少なくとも前記第1圧力伝達路(33)は、前記ダイアフラム(23)から遠ざかるほど開口面積が大きくされていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記センサチップ(11)の内壁面(22a)は、前記センサチップ搭載面(31)に直交する直交方向において、前記ダイアフラム(23)から離れるほど前記凹部(22)の開口面積が大きいテーパ形状を有しており、
前記圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材との接触部分の前記直交方向に対するテーパ角度(θ2)と、前記凹部(22)の内壁面(22a)の前記直交方向に対するテーパ角度(θ1)が一致しており、
前記センサチップ(11)の凹部(22)の内壁面(22a)と、前記圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材との接触部分が、面一となっていることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記第1圧力伝達路(33)の内壁面(33a)におけるゲル部材との接触部分は、階段状となっていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記第1支持部材(30)は、セラミック多層基板であることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記ゲル部材(13)の表面(13a)は、室温において、前記ダイアフラム(23)と反対に凸のメニスカス形状をなしていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記支持部材(12)は、前記第1圧力伝達路(33)に連通して前記第1圧力伝達路(33)とともに前記圧力伝達路(33,43)をなす第2圧力伝達路(43)を備え、前記第1支持部材(30)を支持する第2支持部材(40)を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記ゲル部材(13)は、前記凹部(22)から連続して前記第1圧力伝達路(33)の少なくとも一部まで充填され、前記第2圧力伝達路(43)には充填されていないことを特徴とする請求項7に記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記ゲル部材(13)の厚さよりも、前記圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分であって前記ダイアフラム(23)から最も離れた部分の開口径のほうが長いことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項1】
一面(21)に開口する凹部(22)と、該凹部(22)の底をなすダイアフラム(23)と、該ダイアフラム(23)に形成されたゲージ抵抗(24)と、を有するセンサチップ(11)と、
前記センサチップ(11)の一面と対向し、前記センサチップが固定される搭載面(31)と、該搭載面に開口し、前記凹部(22)に連通する圧力伝達路(33,43)と、を有する支持部材(12)と、
前記凹部(22)から連続して前記圧力伝達路(33,43)における少なくとも一部まで充填され、前記ダイアフラム(23)を保護するゲル部材(13)と、を備え、
検出対象の圧力媒体の圧力が、前記ゲル部材(13)を介して前記ダイアフラム(23)に伝達され、前記ダイアフラムが変形することで前記ゲージ抵抗(24)の抵抗値が変化する圧力センサであって、
前記支持部材(12)のセンサチップ搭載面(31)における前記圧力伝達路(33,43)の縁部(34)は、前記センサチップ(11)の一面(21)における凹部(22)を取り囲む領域(21a)と対向しており、
前記圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、前記センサチップ搭載面(31)側の端部で最小、前記ダイアフラム(23)から最も離れた部分で前記端部の開口面積よりも大きく且つ最大とされるとともに、任意位置の開口面積が、該任意位置よりも前記ダイアフラム(23)に近い位置の開口面積以上とされており、
前記支持部材(12)は、前記センサチップ搭載面(31)からその裏面(32)にわたって貫通するとともに、前記圧力伝達路(33,43)の少なくとも一部をなす第1圧力伝達路(33)を備え、接着材(50)を介して前記センサチップ搭載面(31)に前記センサチップ(11)が固定された第1支持部材(30)を有し、
前記第1圧力伝達路(33)におけるゲル部材との接触部分の開口面積は、前記ダイアフラム(23)から最も離れた部分のほうが、前記センサチップ搭載面(31)側の端部よりも大きくされており、
前記第1支持部材は、前記接着材(50)のみを介して前記センサチップ(11)が固定された部品(30)で構成されていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分のうち、少なくとも前記第1圧力伝達路(33)は、前記ダイアフラム(23)から遠ざかるほど開口面積が大きくされていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記センサチップ(11)の内壁面(22a)は、前記センサチップ搭載面(31)に直交する直交方向において、前記ダイアフラム(23)から離れるほど前記凹部(22)の開口面積が大きいテーパ形状を有しており、
前記圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材との接触部分の前記直交方向に対するテーパ角度(θ2)と、前記凹部(22)の内壁面(22a)の前記直交方向に対するテーパ角度(θ1)が一致しており、
前記センサチップ(11)の凹部(22)の内壁面(22a)と、前記圧力伝達路(33,43)の内壁面(33a,43a)におけるゲル部材との接触部分が、面一となっていることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記第1圧力伝達路(33)の内壁面(33a)におけるゲル部材との接触部分は、階段状となっていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記第1支持部材(30)は、セラミック多層基板であることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記ゲル部材(13)の表面(13a)は、室温において、前記ダイアフラム(23)と反対に凸のメニスカス形状をなしていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記支持部材(12)は、前記第1圧力伝達路(33)に連通して前記第1圧力伝達路(33)とともに前記圧力伝達路(33,43)をなす第2圧力伝達路(43)を備え、前記第1支持部材(30)を支持する第2支持部材(40)を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記ゲル部材(13)は、前記凹部(22)から連続して前記第1圧力伝達路(33)の少なくとも一部まで充填され、前記第2圧力伝達路(43)には充填されていないことを特徴とする請求項7に記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記ゲル部材(13)の厚さよりも、前記圧力伝達路(33,43)におけるゲル部材との接触部分であって前記ダイアフラム(23)から最も離れた部分の開口径のほうが長いことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の圧力センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−211892(P2012−211892A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15640(P2012−15640)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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