説明

圧力波過給機

【課題】内燃機関の運転状態が変化した場合でもロータとバルブプレートとの隙間を適正化できる圧力波過給機を提供する。
【解決手段】圧力波過給機20は、軸線Ax方向に関するロータ22の端面に対向し、ロータ22側へ排気を導入させ、かつロータ22側から排気を吐出させる排気側バルブプレート26と、内燃機関1の負荷に基づいて排気側バルブプレートを軸線Ax回りに回転させることによって排気の導入位置に対する吸気の吐出位置を変更可能なモータ30と、排気側バルブプレート26の回転に連動させて排気側バルブプレート26を軸線Ax方向に移動させるねじ機構35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気の圧力波を利用して過給を行う圧力波過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のセルが形成され、ケース内を回転するロータに内燃機関の吸気と排気とを交互に導入し、導入した排気でセル内の吸気を加圧して内燃機関の過給を行う圧力波過給機が知られている。例えば、吸気の吐出位置を規定する吸気側バルブプレートと、排気の導入位置を規定する排気側バルブプレートとがロータを挟み込むように配置され、これらのバルブプレートが吸気の吐出位置と排気の導入位置との位置関係を調整できるように回転可能に支持された圧力波過給機が提案されている(特許文献1)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−19327号公報
【特許文献2】特開昭60−159338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の過給機のようにロータを2つのバルブプレートで挟み込む構成の場合、ロータの熱膨張によってロータとバルブプレートとが接触することを回避するため、バルブプレートとロータとの間に隙間を設けておくことが必要である。その隙間の大きさはロータの熱膨張の上限を基準として定められる。つまり、ロータの熱膨張が想定され得る最大値になった場合でもロータとバルブプレートとの接触を回避できる大きさを持つ隙間が設定される。こうした隙間の大きさは過給機の効率の観点からは小さければ小さいほどよいが、ロータの熱膨張が少ない運転領域においては隙間の大きさが過剰になって過給機の効率が低下する問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、内燃機関の運転状態が変化した場合でもロータとバルブプレートとの隙間を適正化できる圧力波過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力波過給機は、軸線回りに回転可能でかつ前記軸線方向に貫通する複数のセルが設けられたロータを備え、内燃機関の排気を前記セルへ導入することによって発生する排気の圧力波を利用して前記セルに導入した吸気を加圧する圧力波過給機において、前記軸線方向に関する前記ロータの端面に対向し、前記ロータ側へ排気を導入させ、かつ前記ロータ側から排気を吐出させる排気側バルブプレートと、前記内燃機関の負荷に基づいて前記排気側バルブプレートを前記軸線回りに回転させることによって排気の導入位置に対する吸気の吐出位置を変更可能な位相変更手段と、前記排気側バルブプレートの回転に連動させて前記排気側バルブプレートを前記軸線方向に移動させる移動機構と、を備えるものである(請求項1)。
【0007】
この圧力波過給機によれば、排気側バルブプレートが内燃機関の負荷に基づいて回転した際に、その回転に連動して排気側バルブプレートが軸線方向に移動する。内燃機関の負荷は排気温度に相関し、排気温度はロータの熱膨張量に相関する。従って、ロータの熱膨張と関連させて排気側バルブプレートを軸線方向に移動させることが可能になる。これにより、排気側バルブプレートを軸線方向に移動させる移動機構に対して格別な制御を行わなくてもロータと排気側バルブプレートとの隙間をロータの熱膨張に関連して定めることができる。そのため、内燃機関の運転状態(負荷)が変化した場合でもロータと排気側バルブプレートとの隙間を適正化できる。
【0008】
例えば、前記内燃機関の負荷が高いときに前記排気側バルブプレートの回転に伴って前記ロータから離れる方向に移動するように、前記位相変更手段による前記排気側バルブプレートの回転方向と前記移動機構による前記排気側バルブプレートの移動方向との対応関係が設定されてもよい(請求項2)。これにより、ロータの熱膨張が大きい高負荷時にロータから離れる方向に排気側バルブプレートが移動するので、高負荷時を基準としてロータと排気側バルブプレートとの隙間を定めなくても、排気側バルブプレートの移動量を適宜設定することで高負荷時にロータと排気側バルブプレートとの接触を回避できる。従って、高負荷時以外の運転領域において隙間が過剰にならないので、こうした運転領域における効率低下を抑制できる。
【0009】
また、前記位相変更手段による前記排気側バルブプレートの回転量が前記内燃機関の負荷に応じて設定されてもよい(請求項3)。この場合は、排気側バルブプレートの軸線方向の移動量が負荷の変化に応じて定まるので、ロータと排気側バルブプレートとの隙間を低負荷から高負荷の範囲内において一定とすることも可能である。
【0010】
ロータと排気側バルブプレートとの隙間を内燃機関の暖機完了後の温間時を基準として定めた場合、暖機完了前の冷間時は温間時と比べてロータと排気側バルブプレートとの隙間が拡大する。そこで、本発明の圧力波過給機の一態様においては、前記内燃機関の暖機完了前の冷間時において排気温度が上昇するように前記内燃機関を制御する排気昇温制御手段を更に備えてもよい(請求項4)。この態様によれば、冷間時における排気温度の昇温によりロータと排気側バルブプレートとの隙間の大きさを温間時の基準に速やかに近づけることができる。これにより冷間時の効率低下を抑制できる。排気昇温制御手段による排気温度の昇温方法としては公知の手法を採用してよい。例えば、排気通路内に燃料を添加してもよい。また、排気温度を昇温させるため、ディーゼル機関の場合にあっては燃料噴射時期を遅角させてもよいし、ガソリン機関にあっては点火時期を遅角させてもよい。
【0011】
冷間時におけるロータの温度を高めるため、本発明の圧力波過給機の一態様においては、前記内燃機関の暖機完了前の冷間時において前記ロータの回転数が低下するように前記ロータの回転数を制御する回転制御手段を更に備えてもよい(請求項5)。この態様によれば、ロータの回転数の低下によってロータに設けられたセルに排気が留まる時間が長くなるのでロータがより暖まり易くなる。これにより、冷間時においてロータと排気側バルブプレートとの隙間の大きさを温間時の基準に速やかに近づけることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の圧力波過給機によれば、排気側バルブプレートを軸線方向に移動させる移動機構に対して格別な制御を行わなくてもロータと排気側バルブプレートとの隙間をロータの熱膨張に関連して定めることができるので、内燃機関の運転状態(負荷)が変化した場合でもロータと排気側バルブプレートとの隙間を適正化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の形態に係る圧力波過給機が組み込まれた内燃機関の全体構成を概略的に示した図。
【図2】図1に示した圧力波過給機を拡大して模式的に示した図。
【図3】排気側バルブプレートのオフセット量とEGR率との関係を示す説明図。
【図4】内燃機関の運転状態に対するEGR率の対応関係を示した説明図。
【図5】本形態の圧力波過給機の作用効果を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の形態)
図1は本発明の第1の形態に係る圧力波過給機が組み込まれた内燃機関の全体構成を概略的に示している。内燃機関1は、車両に走行用動力源として搭載されるディーゼルエンジンであり、4つの気筒2aを有する機関本体2を備えている。各気筒2aには、吸気通路3及び排気通路4がそれぞれ接続されている。
【0015】
吸気通路3は、共通通路5と、共通通路5から分岐する第1分岐通路6及び第2分岐通路7と、これら分岐通路6、7が合流する合流通路8とを備えている。共通通路5には吸気を濾過するためのエアクリーナ9が設けられている。第1分岐通路6には、圧力波過給機20の吸気側アタッチメント20aが設けられている。第2分岐通路7には、ターボ過給機10のコンプレッサ10aと、この第2分岐通路7を開閉可能な第1制御弁11とが設けられている。合流通路8には、吸気を冷却するためのインタークーラ12と、合流通路8を開閉可能な第2制御弁13とが設けられている。
【0016】
排気通路4には、排気の流れ方向上流側から順にターボ過給機10のタービン10bと、圧力波過給機20の排気側アタッチメント20bと、排気浄化用の触媒14とが設けられている。また、排気通路4には、圧力波過給機20をバイパスして排気を触媒14に導くためのバイパス通路15と、バイパス通路15を開閉可能なバイパス弁16とが設けられている。
【0017】
ターボ過給機10及び圧力波過給機20について説明する。ターボ過給機10は、排気通路4に設けられたタービン10bを排気で回転させてコンプレッサ10aを回転駆動し、これにより過給を行う周知のものである。圧力波過給機20は、吸気側アタッチメント20aを介して内部に導入した吸気の圧力を排気側アタッチメント20bを介して内部に導入した排気の圧力波で高め、これにより過給を行う過給機である。
【0018】
圧力波過給機20は、吸気側アタッチメント20aが吸気通路3に接続されるとともに排気側アタッチメント20bが排気通路4に接続されていて、これらアタッチメント20a、20bにてケース21の両端が塞がれている。図2に示したように、ケース21内には、ケース21に軸線Ax回りに回転自在に支持されたロータ22が設けられている。ロータ22には、その一端から他端まで軸線Ax方向に延びる複数の隔壁22aが設けられている。ケース21内は、これら隔壁22aにて軸線Ax方向に貫通する複数のセル23に区分されている。
【0019】
各アタッチメント20a、20bは吸排気の導入位置及び吐出位置を規定するバルブプレート25、26を含んでおり、これらのバルブプレート25、26はロータ22の軸線Ax方向に関する各端面に対向するようにして配置されている。詳しい図示は省略したが、吸気側バルブプレート25には2個の吸気導入口及び2個の吸気吐出口が形成されていて、これら吸気導入口及び吸気吐出口は、吸気側バルブプレート25の周方向に交互に並ぶように所定位置に配置されている。これにより、吸気側バルブプレート25はロータ22側に吸気を導入させ、かつロータ22側から吸気を吐出させる。排気側バルブプレート26も同様に、2個の排気導入口及び2個の排気吐出口が形成されていて、これら排気導入口及び排気吐出口は、排気側バルブプレート26の周方向に交互に並ぶように所定位置に配置されている。これにより、排気側バルブプレート26はロータ22側に排気を導入させ、かつロータ22側から排気を吐出させる。
【0020】
圧力波過給機20は、各セル23が上述した吸気導入口、排気導入口、吸気吐出口、排気吐出口の順に接続されるようにロータ22を所定方向に回転駆動する第1モータ29と、排気側アタッチメント20bに内蔵された排気側バルブプレート26を回転させる第2モータ30とを備えている。第1モータ29は公知の電動モータである。第1モータ29は固定部31にてロータ22に固定されており、そのモータ軸29aは不図示の軸受にて吸気側アタッチメント20aに対して回転自在に支持されている。
【0021】
第2モータ30は、排気側バルブプレート26を軸線Axに関して右回り及び左回りにそれぞれ回転駆動し、これにより排気の導入位置に対する吸気の吐出位置を変更できる。第2モータ30はモータ軸30aを介して排気側バルブプレート26に結合されており、そのモータ軸30aは不図示の軸受にて排気側アタッチメント20bに対して回転自在に支持されている。第2モータ30としては、例えば公知のステッピングモータが使用される。このように、第2モータ30によって排気側バルブプレート26が回転されることにより排気の導入位置に対する吸気の吐出位置を変更できる。
【0022】
圧力波過給機20はその稼働時にロータ22が高速回転するので、ロータ22を挟むように配置された各バルブプレート25、26とロータ22との接触を回避することが必要である。そのため、各バルブプレート25、26とロータ22との間には隙間Sa、Sbが設定される。各隙間Sa、Sbの大きさは可能な限り小さいほうがロータ22からのガス漏れを抑制できるので、圧力波過給機20の効率は各隙間Sa、Sbが小さいほど高くなる。但し、圧力波過給機20はその稼働時にロータ22に排気が直接曝される一方で、ケース21には排気が直接曝されないため、ロータ22とケース21との間に温度差が生じ特に排気温度が高い高温時にはその温度差が大きくなる。その温度差によってロータ22とケース21の膨張度合いが異なるため、内燃機関1の運転状態によって隙間Sa、Sbが影響を受ける。本形態の圧力波過給機20は、特に温度差の影響を受け易い排気側の隙間Sbを運転状態の変化に拘わらず適正に保持し得る構成を持つことに特徴を有している。
【0023】
ところで、第2モータ30による排気側バルブプレート26の回転は主として排気再循環を実施するために行われている。周知のように、排気の導入位置に対する吸気の吐出位置が基準位置から所定角度オフセットされることにより、排気の到達とその圧力波の到達にずれが生まれるため、圧力波過給機20を利用して排気を吸気系に導入することができる。図3はオフセット量とEGR率との関係を示す説明図である。この図から明らかなように、排気側バルブプレート26のオフセット量が大きくなるほどEGR率が大きくなる関係が成立している。そして、EGR率は内燃機関1の運転状態(トルク及び回転数)に応じてその要求が変化する。図4は内燃機関1の運転状態に対するEGR率の対応関係を示した説明図である。図示の各曲線は等EGR率線を示している。この図に示すように、低負荷時には要求されるEGR率が高く、逆に高負荷時には要求されるEGR率が低い。従って、内燃機関1の負荷と排気側バルブプレート26のオフセットとの関係としては、内燃機関1の負荷が低いほどオフセット量が大きくなり、逆に負荷が高いほどオフセット量が小さくなる関係が成立する。
【0024】
上述したように、ロータ22と排気側バルブプレート26との隙間Sbは排気温度の影響を受けるが、具体的には排気温度が高いほど隙間Sbを狭める方向に影響し、逆に排気温度が低いほど隙間Saを広げる方向に影響する。従って、排気温度(負荷)が高いほど排気側バルブプレート26がロータから離れるように軸線Ax方向に移動すれば、ロータ22と排気側バルブプレート26との接触を回避しつつ隙間Sbを排気温度に拘わらずに適正値に保持できる。そこで、圧力波過給機20は負荷に応じて回転(オフセット)される排気側バルブプレート26をその回転に連動して軸線Ax方向に移動させるため、排気側アタッチメント20bに移動機構としてのねじ機構35が設けられている。
【0025】
ねじ機構35はモータ軸30aに形成された雄ねじ(不図示)と、その雄ねじに噛み合うナット35aとを有し、ナット35aは排気側アタッチメント20bに固定されている。換言すれば、ナット35aはケース21に対して固定される。そのため、排気側バルブプレート26の回転と連動して排気側バルブプレート26が軸線Ax方向に移動することができる。ねじ機構35のねじの向きは、オフセットが小さくなる方向に排気側バルブプレート26が回転したときに排気側バルブプレート26がロータ22から離れる方向(図2の右方向)に移動するように設定されている。つまり、排気側バルブプレート26の回転方向と軸線Axに関する移動方向との対応関係は、内燃機関1の負荷が高いときに排気側バルブプレート26の回転に伴ってロータ22から離れる方向に移動するように設定されている。
【0026】
従って、排気側バルブプレート26を軸線Ax方向に移動させるために、格別な制御を行わなくても、EGR率の制御が行われる結果として排気側バルブプレート26に対して所望の動作を与えることができる。図5は本形態の圧力波過給機20の作用効果を説明する説明図であり、その横軸は排気温度を、縦軸は排気側の隙間Sbの大きさをそれぞれ示している。また、図5には比較例として、排気側バルブプレート26が軸線Ax方向に移動しない例を破線で示している。破線で示した比較例から理解できるように、ロータ22の熱膨張を考慮した場合、想定された運転状態の範囲でロータ22と排気側バルブプレート26との接触を回避しなければならないため、温度の上限時(高温時)を基準として隙間Sbが適正値Stとなるように設定する必要がある。従って、比較例はこのような設定の結果、低温時に隙間Sbの大きさが過剰になってしまい効率が低下することが避けられない。これに対して、実線で示した本形態の場合、上述のように排気温度が高くなるにつれて、言い換えれば負荷が高くなるにつれて、排気側バルブプレート26はオフセットが小さくなる方向に回転しつつロータ22から離れる方向に移動する。このため、内燃機関1の運転状態に拘わらずに排気側の隙間Sbを適正値Stに保持することができる。従って、図5に矢印で示したように、低温時(低負荷時)に隙間Sbが過剰とならずに効率の低下を抑制することができる。
【0027】
図1に示したように、圧力波過給機20の各モータ29、30の動作は内燃機関1の運転状態を制御するコンピュータとして構成された制御手段としてのエンジンコントロールユニット(ECU)40にて制御される。図示は省略したが、ECU40はマイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を備えている。ECU40は、第1ドライバ41を介して第1モータ29を、第2ドライバ42を介して第2モータ30をそれぞれ制御する。ECU40には、エンジン1の機関回転速度(回転数)に対応する信号を出力するクランク角センサ51、アクセルペダルの開度に対応する信号を出力するアクセル開度センサ52等が接続されている。この他にもECU40には各種センサが接続されているが、それらの図示は省略した。
【0028】
ECU40は、内燃機関1の運転状態に応じて適切な量の排気が吸気通路3に再循環され、かつ過給圧が目標過給圧になるように第1モータ29及び第2モータ30の各動作を制御する。ECU40による排気再循環の制御は概略次の通りに実行される。まず、内燃機関1の回転数をクランク角センサ51から、負荷をアクセル開度センサ52からそれぞれ取得し、図4に示したような特性を持つマップを参照して内燃機関1が要求するEGR率を特定する。次に、その特定されたEGR率に対応する排気側バルブプレート26のオフセットを図3に示したような特性を持つマップを参照して特定する。そして、その特定されたオフセットが実現されるように第2モータ30を制御することにより排気側バルブプレート26を回転させて運転状態に応じたEGR率を達成している。このような制御をECU40が行うことにより、第2モータ30とECU40との組み合わせによって本発明に係る位相変更手段が構成される。
【0029】
また、ECU40は内燃機関1の暖機完了前の冷間時において以下に説明する排気昇温制御を行っている。ロータ22と排気側バルブプレート26との隙間Sbを内燃機関1の暖機完了後の温間時を基準として定めた場合、暖機完了前の冷間時は温間時と比べて隙間Sbが拡大する。そこで、ECU40は、内燃機関1の暖機完了前の冷間時において排気温度が上昇するように内燃機関1を制御している。この内燃機関1に対する具体的な制御方法としては、燃料噴射時期を遅角させることにより実現している。なお、他の方法を利用して排気温度を昇温させても構わない。例えば、排気通路4に燃料を噴射する燃料添加弁を設け、その燃料添加弁による燃料噴射を制御することにより排気温度を昇温させてもよい。また、ガソリン機関の場合には、点火時期を遅角させることにより排気温度を昇温させることもできる。この昇温制御を実行することにより、冷間時において排気温度が昇温するため、ロータ22と排気側バルブプレート26との隙間Sbの大きさを温間時の基準(適正値St)に速やかに近づけることができる。これにより冷間時の効率低下を抑制できる。以上の昇温制御をECU40が実行することにより、ECU40は本発明に係る排気昇温制御手段として機能する。
【0030】
(第2の形態)
次に本発明に係る第2の形態を説明する。本形態はECU40による制御内容を除き物理的な構成は第1の形態と同一である。即ち、ECU40は、第1の形態の排気昇温制御の代わりに又はその制御とともに、冷間時において以下に説明するロータ22の回転制御を実行する。ECU40は内燃機関1の暖機完了前の冷間時においてロータ22の回転数が低下するように第1モータ29を制御している。ロータ22の回転数を低下させることにより、ロータ22のセル23に排気が留まる時間が長くなるので、ロータ22が回転数を低下させない場合に比べてより暖まり易くなる。そのため、冷間時においてロータ22と排気側バルブプレート26との隙間Sbの大きさを温間時の基準(適正値)に速やかに近づけることが可能になる。ロータ22の回転数の低下幅は機関温度に応じて適宜定めればよい。この回転制御をECU40が実行することにより、ECU40は本発明に係る回転制御手段として機能する。
【0031】
本発明は、上記形態に限定されず種々の形態にて実施することができる。上記各形態では、移動機構としてねじ機構35を採用したがねじ機構に拘わらず、回転運動を直線運動に変換できる機構であればどのような機構で実現してもよい。例えば、軸線方向に向かってカム面が形成された端面カムや溝カム等の立体カム機構を利用して排気側バルブプレートの回転に連動して軸線方向に排気側バルブプレートを移動させることもできる。また、上記各形態は排気側バルブプレートの回転に対して連続的に排気側バルブプレートが直線移動するものであるが、連続的に移動するものでなくステップ状に排気側バルブプレートが移動する形態で本発明を実施してもよい。この場合においても低負荷(低排気温時)における効率低下をある程度抑制することは可能である。
【0032】
また、上記各形態では排気側バルブプレートの回転は排気再循環のために行われたものであるが、内燃機関の負荷に基づく限りにおいて他の目的のために排気側バルブプレートを回転させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 内燃機関
20 圧力波過給機
22 ロータ
23 セル
26 排気側バルブプレート
30 第2モータ(位相変更手段)
35 ねじ機構(移動機構)
40 ECU(位相変更手段、排気昇温制御手段、回転制御手段)
Ax 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転可能でかつ前記軸線方向に貫通する複数のセルが設けられたロータを備え、内燃機関の排気を前記セルへ導入することによって発生する排気の圧力波を利用して前記セルに導入した吸気を加圧する圧力波過給機において、
前記軸線方向に関する前記ロータの端面に対向し、前記ロータ側へ排気を導入させ、かつ前記ロータ側から排気を吐出させる排気側バルブプレートと、前記内燃機関の負荷に基づいて前記排気側バルブプレートを前記軸線回りに回転させることによって排気の導入位置に対する吸気の吐出位置を変更可能な位相変更手段と、前記排気側バルブプレートの回転に連動させて前記排気側バルブプレートを前記軸線方向に移動させる移動機構と、を備えることを特徴とする圧力波過給機。
【請求項2】
前記内燃機関の負荷が高いときに前記排気側バルブプレートの回転に伴って前記ロータから離れる方向に移動するように、前記位相変更手段による前記排気側バルブプレートの回転方向と前記移動機構による前記排気側バルブプレートの移動方向との対応関係が設定されている、請求項1に記載の圧力波過給機。
【請求項3】
前記位相変更手段による前記排気側バルブプレートの回転量が前記内燃機関の負荷に応じて設定されている、請求項1又は2に記載の圧力波過給機。
【請求項4】
前記内燃機関の暖機完了前の冷間時において排気温度が上昇するように前記内燃機関を制御する排気昇温制御手段を更に備える、請求項2又は3に記載の圧力波過給機。
【請求項5】
前記内燃機関の暖機完了前の冷間時において前記ロータの回転数が低下するように前記ロータの回転数を制御する回転制御手段を更に備える、請求項2又は3に記載の圧力波過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169300(P2011−169300A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36462(P2010−36462)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】