説明

圧力測定器の製造方法

【課題】圧力測定器を効率的に製造可能な圧力測定器の製造方法を提供する。
【解決手段】貫通孔11、21が設けられた台座基板101、102を用意することと、貫通孔11、21を挟むようにして、少なくとも二つの切り込み溝111を、台座基板101、102の底面に、第1の刃を用いて形成することと、台座基板101、102の上面に、ダイアフラム30を備えるセンサウェハ103を、ダイアフラム30が貫通孔11、21を覆うように接合することと、接合されたセンサウェハ103及び台座基板101、102を、台座基板101、102の少なくとも二つの切り込み溝111の上方から、第1の刃より薄い第2の刃を用いて、切断することと、を含む、圧力測定器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力測定技術に係り、圧力測定器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体のピエゾ抵抗効果を利用した圧力測定器が、小型、軽量、及び高感度であることから、プラント等で広く利用されている(例えば、特許文献1、2参照。)。このような圧力測定器においては、半導体からなるダイアフラムに、歪ゲージが設けられている。ダイアフラムに加わる圧力によって歪ゲージが変形すると、ピエゾ抵抗効果によって歪ゲージの抵抗値が変化する。したがって、歪ゲージの抵抗値を測定することにより、圧力を測定することが可能となる。圧力測定器を製造する際には、ウェハ上に多数の圧力測定モジュールを形成した後、切削加工によって、個々の圧力測定モジュールを切り出している(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3307281号公報
【特許文献2】特開2006−170823号公報
【特許文献3】特開2001−153743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力測定器を製造する際には、1枚のウェハからより多くの圧力測定モジュールを切り出すことが、製造コストの削減につながる。そこで、本発明は、圧力測定器を効率的に製造可能な圧力測定器の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によれば、(a)貫通孔が設けられた台座基板を用意することと、(b)貫通孔を挟むようにして、少なくとも二つの切り込み溝を、台座基板の底面に、第1の刃を用いて形成することと、(c)台座基板の上面に、ダイアフラムを備えるセンサウェハを、ダイアフラムが台座基板の貫通孔を覆うように接合することと、(d)接合されたセンサウェハ及び台座基板を、台座基板の切り込み溝の上方から、第1の刃より薄い第2の刃を用いて、切断することと、を含む、圧力測定器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、圧力測定器を効率的に製造可能な圧力測定器の製造方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の上面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の図1のII−II方向から見た断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第1の工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第2の工程断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第3の工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第4の工程断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る圧力測定器の第5の工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
実施の形態に係る圧力測定器5は、図1、及びII−II方向から見た断面図である図2に示すように、ガラス台座1及びシリコン台座2からなり、貫通孔11、21が設けられた複合台座と、貫通孔11、21の上方に位置するダイアフラム30を有する、複合台座上に固定されたセンサチップ3と、を備える。
【0010】
センサチップ3は、ケイ素(Si)からなる第1のシリコン基板31、第1のシリコン基板31上に配置された酸化ケイ素(SiO2)からなる酸化ケイ素膜32、及び酸化ケイ素膜32上に配置されたケイ素(Si)からなる第2のシリコン基板33を含むSOI(Silicon Insulator)基板から製造される。センサチップ3には、第1のシリコン基板31の底面から、第2のシリコン基板33に到達する凹部34が設けられている。凹部34は、ウェットエッチング又はドライエッチングにより形成される。
【0011】
センサチップ3の凹部34は、ガラス台座1及びシリコン台座2からなる複合台座の貫通孔11、21の上方に位置する。センサチップ3の凹部34上のシリコン基板33の薄膜の部分が、ダイアフラム30として機能する。(100)面を主面とするダイアフラム30は、上面に加わる圧力と、底面に加わる圧力と、の差圧に従って撓む。
【0012】
図1に示すように、上方から見て円形のダイアフラム30には、90°間隔で(110)方向に4つの歪み抵抗ゲージ301,302,303,304が設けられている。差圧によってダイアフラム30が撓むことにより、歪み抵抗ゲージ301,302,303,304の電気抵抗値が変化する。歪み抵抗ゲージ301,302,303,304のそれぞれの電気抵抗値は、歪み抵抗ゲージ301,302,303,304をホイートストーンブリッジに接続することにより計測可能である。したがって、歪み抵抗ゲージ301,302,303,304の電気抵抗値を計測することにより、差圧の測定が可能となる。歪み抵抗ゲージ301,302,303,304は、例えば、シリコンからなるダイアフラム30に不純物イオンを注入することにより形成される。
【0013】
ガラス台座1は、パイレックス(登録商標)又はテンパックスガラス(登録商標)等の耐熱ガラスからなる。耐熱ガラスは、例えば、約3×10-6/K等の低い熱膨張率を有する。ガラス台座1に設けられた貫通孔11の断面は、例えば円形である。ガラス台座1上に配置されたシリコン台座2は、ケイ素(Si)からなる。シリコン台座2に設けられた貫通孔21は、ガラス台座1の貫通孔11に連通している。シリコン台座2の貫通孔21の断面は、例えばガラス台座1の貫通孔11の断面と同じ円形である。また、シリコン台座2の貫通孔21の断面積は、例えば、ガラス台座1の貫通孔11の断面積と同じである。ガラス台座1の貫通孔11及びシリコン台座2の貫通孔21は、ダイアフラム30の底面に流体を導入するための圧力導入孔として使用される。
【0014】
圧力測定器5は、ガラス台座1の底面を、ステンレス鋼等からなるパッケージに固定して使用される。ここで、パッケージに直接センサチップ3を固定すると、パッケージに加わった外力が、ダイアフラム30に伝播しうる。ダイアフラム30に伝播した外力は、測定対象である差圧とは無関係にダイアフラム30を撓ませるため、正確な差圧測定の妨げとなる。これに対し、実施の形態においては、センサチップ3の第1のシリコン基板31と同じ材料からなるシリコン台座2と、ガラス台座1と、を介して、センサチップ3がパッケージに固定される。そのため、パッケージに加わった外力が、ダイアフラム30に伝播することを抑制することが可能となる。なお、ガラス台座1及びシリコン台座2の厚みが増すほど、パッケージに加わった外力がダイアフラム30に伝播することをより抑制することが可能となる。
【0015】
次に、実施の形態に係る圧力測定器5の製造方法について説明する。
【0016】
(a)まず、図3に示すように、複数の貫通孔11が設けられたガラス台座基板101を用意する。上面から見たガラス台座基板101は、例えば円形である。また、ガラス台座基板101の材料は、図2に示したガラス台座1と同じである。複数の貫通孔11は、ドリル加工又はサンドブラスト加工により形成される。
【0017】
(b)図4に示すように、複数の貫通孔21が設けられたシリコン台座基板102を用意する。上面から見たシリコン台座基板102は、例えば円形である。また、シリコン台座基板102の材料は、図2に示したシリコン台座2と同じである。複数の貫通孔21は、ドリル加工又はドライエッチングにより形成される。さらに、ガラス台座基板101の複数の貫通孔11と、シリコン台座基板102の複数の貫通孔21と、が連通するように、ガラス台座基板101に、シリコン台座基板102を、陽極接合により接合する。
【0018】
(c)図5に示すように、接合されたガラス台座基板101及びシリコン台座基板102に、複数の切り込み溝111を、複数の貫通孔11のそれぞれを挟むようにして、ガラス台座基板101の底面からシリコン台座基板102に向かって形成する。このとき、ダイシングブレード等の第1の円形回転刃を用いて、複数の切り込み溝111を形成する。複数の切り込み溝111は、シリコン台座基板102の内部に到達する。その後、複数の貫通孔11、21内部を洗浄する。洗浄液が通り抜けるため、複数の貫通孔11、21の内部は容易に洗浄可能である。
【0019】
(d)図6に示すように、複数のダイアフラム30を備えるセンサウェハ103を用意する。上面から見たセンサウェハ103は、例えば円形である。また、センサウェハ103の材料は、図2に示したセンサチップ3と同じであり、SOI基板から製造される。複数のダイアフラム30のそれぞれには、図1に示した歪み抵抗ゲージ301,302,303,304が設けられている。また、複数のダイアフラム30のそれぞれの直径は、複数の切り込み溝111の間隔よりも短い。次に、シリコン台座基板102の上面に、複数のダイアフラム30が、複数の貫通孔21をそれぞれ覆うように、センサウェハ103を接合する。
【0020】
(e)第1の円形回転刃よりも薄い、ダイシングブレード等の第2の円形回転刃を用意する。次に、接合されたガラス台座基板101、シリコン台座基板102、及びセンサウェハ103を、ガラス台座基板101及びシリコン台座基板102からなる複合台座基板の切り込み溝111の上方から、切り込み溝111に向かって、第2の円形回転刃を用いて切断し、図7に示すように、複数の圧力測定器5を切り出し、実施の形態に係る圧力測定器の製造方法を終了する。
【0021】
上述したように、圧力測定器5においては、ガラス台座1及びシリコン台座2の厚みが厚いほど、差圧の測定精度が向上する傾向にある。しかし、厚みのあるガラス台座1及びシリコン台座2の元となるガラス台座基板101及びシリコン台座基板102と接合されたセンサウェハ103を、薄い刃を用いて1回で切断しようとすると、刃が割れる等の問題が生じる。そのため、ガラス台座基板101及びシリコン台座基板102と接合されたセンサウェハ103を1回で切断するためには、ブレードアスペクト比の低い、厚い刃を使用する必要がある。しかし、厚い刃を用いると、ダイシングストリートが幅広になる。そのため、ダイアフラム30の直径を一定に保とうとすると、ダイアフラム30の間隔を広くとらざるを得ず、1枚のウェハから切り出せる圧力測定器の数が、少なくなる。
【0022】
これに対し、実施の形態に係る圧力測定器5の製造方法によれば、まず、厚みのあるガラス台座基板101及びシリコン台座基板102に、厚い第1の刃で、複数の切り込み溝111を設ける。その後、センサウェハ103の切り込み溝111の上方の部分を、薄い第2の刃で切断する。これにより、センサウェハ103のダイシングストリートが狭くなるため、ダイアフラム30の直径を一定に保つことが可能となる。したがって、1枚のウェハから、多くの圧力測定器5を切り出すことが可能となる。さらに、厚みのあるガラス台座基板101及びシリコン台座基板102の総てを、薄い第2の刃で切断する必要がない。そのため、第2の刃の破損を抑制することも可能となる。
【0023】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施の形態及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図2ではガラス台座1を使用する例を示したが、ガラス台座1の代わりに、セラミック台座を用いてもよい。また、図2ではガラス台座1とシリコン台座2の複合台座を例に説明したが、単一の台座を用いる場合にも、本発明は適用可能である。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0024】
1 ガラス台座
2 シリコン台座
3 センサチップ
5 圧力測定器
11、12 貫通孔
30 ダイアフラム
31 第1のシリコン基板
32 酸化ケイ素膜
33 第2のシリコン基板
34 凹部
101 ガラス台座基板
102 シリコン台座基板
103 センサウェハ
111 切り込み溝
301,302,303,304 抵抗ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が設けられた台座基板を用意することと、
前記貫通孔を挟むようにして、少なくとも二つの切り込み溝を、前記台座基板の底面に、第1の刃を用いて形成することと、
前記台座基板の上面に、ダイアフラムを備えるセンサウェハを、前記ダイアフラムが前記貫通孔を覆うように接合することと、
前記接合されたセンサウェハ及び台座基板を、前記台座基板の切り込み溝の上方から、前記第1の刃より薄い第2の刃を用いて、切断することと、
を含む、圧力測定器の製造方法。
【請求項2】
前記台座基板が、ガラス台座基板と、シリコン台座基板と、の複合体である、請求項1に記載の圧力測定器の製造方法。
【請求項3】
前記第1の刃及び前記第2の刃のそれぞれが、円形刃である、請求項1又は2に記載の圧力測定器の製造方法。
【請求項4】
前記第1の刃及び前記第2の刃のそれぞれが、ダイシングブレードである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧力測定器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233708(P2012−233708A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100501(P2011−100501)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】