説明

圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置

【課題】弁体を、円滑且つ精度良く開閉動作させることができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することである。
【解決手段】隔壁を隔ててバルブハウジング内に形成され、機能液供給装置に連通する1次室75および機能液滴吐出ヘッドに連通する2次室76と、隔壁77に直線状に貫通形成され、1次室75と2次室76とを連通すると共に、少なくとも1次室75側の一部に同軸上に弁座83を形成した連通流路78と、同軸上において1次室75側から弁座83に進退自在に臨み、連通流路78を開閉する弁体84と、2次室76の1の面を構成すると共に弁体84を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体73と、を備え、弁体84は、先細りのテーパー形状に形成され、弁座83は、弁体に対し相補的形状に形成されている圧力調整弁である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液供給手段から供給された機能液を、圧力調整してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サブタンクの機能液を、所定の圧力に減圧して機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁が知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、バルブハウジング内に形成された流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、1次室と2次室との間の隔壁を連通する連通流路と、1次室側の連通流路開口縁部を弁座として連通流路を1次室側から開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に、弁体を大気圧基準で開閉するダイヤフラム(受圧膜体)と、弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備えている。
一方、弁体は、弁座に直接接触するゴム製のOリングと、Oリングを保持する保持部、および保持部から連通流路を挿通してダイヤフラムに当接する軸部から成る弁ホルダーと、を有している。すなわち、ダイヤフラムと弁体ばねが拮抗した状態で、ダイヤフラムの挙動を受けて弁体が開閉するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−163733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゴム製のОリングは、その弁座への接触面を金属製の弁座のように高精度の平面度に形成することができない。このため、上記の圧力調整弁では、Оリングと弁座との開弁時の微少間隙により、2次室への機能液の供給量を精度良く管理することができない。すなわち、弁体の開閉ストロークと2次室への機能液の流量との関係を標準化することができず、2次室への機能液の供給量を精度良く管理することができない問題があった。
また、開閉の際に、Оリングにその平面視面積分の1次側水頭が作用するため、2次室に脈動(圧力変動)が発生しやすくなる問題があった。
【0005】
本発明は、弁体を、円滑且つ精度良く開閉動作させることができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁は、機能液供給手段から供給された機能液を、圧力調整してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、隔壁を隔ててバルブハウジング内に形成され、機能液供給手段に連通する1次室および機能液滴吐出ヘッドに連通する2次室と、隔壁に直線状に貫通形成され、1次室と2次室とを連通すると共に、少なくとも1次室側の一部に同軸上に弁座を形成した連通流路と、同軸上において1次室側から弁座に進退自在に臨み、連通流路を開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、を備え、弁体は、先細りのテーパー形状に形成され、弁座は、弁体に対し相補的形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、隔壁に対向する1次室の1の壁面を受けとして、受圧膜体と拮抗しつつ弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねを、更に備えたことが、好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、弁体が先細りのテーパー形状に形成され、且つ弁座が弁体に対し相補的形状に形成されているため、弁体と弁座との開弁時の微少間隙に対し弁ストロークを長く取ることができ、2次室への機能液の供給量を精度良く管理することができる。また、1次側水頭に対する弁体の受圧面積を小さくすることができるため、弁体の開閉動作を円滑に且つソフトに行わせることができ、開閉動作に伴う2次室側の脈動を抑制することができる。
【0009】
また、隔壁が金属で構成され、且つ弁体が金属で構成されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、弁座および弁体を、比較的簡単に精度良く形成することができる。これにより、2次室への機能液の供給量を、より一層精度良く管理することができる。
【0011】
これらの場合、弁体は、弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、弁体本体から同軸上に延在し受圧膜体に当接する作動軸部と、を有していることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、弁体は、受圧膜体から直接押圧を受けるため、受圧膜体の動きに対応してさらに精度良く開閉動作させることができる。
【0013】
本発明の液滴吐出装置は、上記の圧力調整弁と、機能液供給手段と、機能液滴吐出ヘッドと、を備え、ワークに対し機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、機能液供給手段から機能液滴吐出ヘッドに機能液を適正圧力で安定して供給することができ、機能液滴吐出ヘッドのワークへの描画品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】キャリッジの外観斜視図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の模式図である。
【図7】圧力調整弁の平面図である。
【図8】圧力調整弁のA−A断面図である。
【図9】弁体廻りの拡大図である。
【図10】圧力調整弁の開閉動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る圧力調整弁を備えた液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。また、圧力調整弁は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を一定圧力で減圧供給するものである。
【0017】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース11上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱12を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース13上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、Y軸テーブル3に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド14が搭載された13個のキャリッジユニット4と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を供給する機能液供給ユニット6と、を備えている。また、チャンバ5の側壁の一部には、機能液を貯留するメインタンク51等を収納するタンクキャビネット7が設けられている。液滴吐出装置1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して、機能液滴吐出ヘッド14を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給された機能液を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンを描画する。
【0018】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット15、吸引ユニット16、ワイピングユニット17および吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置8を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド14の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2とY軸テーブル3とが交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル3とメンテナンス装置8(吸引ユニット16、ワイピングユニット17)が交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を行う。
【0019】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダー22と、上記したフラッシングユニット15および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダー23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダー22およびX軸第2スライダー23をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。
【0020】
Y軸テーブル3は、13個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した13個のブリッジプレート24と、各ブリッジプレート24を両持ちで支持する13組のY軸スライダー(図示省略)と、一対のY軸支持ベース13上に設置され、ブリッジプレート24をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド14を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド14を吸引ユニット16およびワイピングユニット17に臨ませる。この場合、各キャリッジユニット4を独立させて個別に移動させることも可能であるし、13個のキャリッジユニット4を一体として移動させることも可能である。
【0021】
図4に示すように、各キャリッジユニット4は、R・G・Bの3色、各4個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド14と、12個の機能液滴吐出ヘッド14を6個ずつ2群に分けて、各機能液滴吐出ヘッド14が同一の水平面内に配設されるように支持するヘッドプレート25と、から成るヘッドユニット26を備えている。また、各キャリッジユニット4は、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を大気圧基準で減圧供給する圧力調整弁27(詳細は後述する。)と、ヘッドユニット26をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構28と、θ回転機構28を介して、ヘッドユニット26をブリッジプレート24に支持させる吊設部材29(共に図3参照)と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、機能液を一時的に貯留するサブタンク46(図1参照)が配設されており(実際には、ブリッジプレート24上に配設)、このサブタンク46および圧力調整弁27により、各機能液滴吐出ヘッド14に対して一定圧力で機能液が供給されるようになっている。
【0022】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド14は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針34を有する機能液導入部31と、機能液導入部31に連なる2連のヘッド基板32と、ヘッド基板32の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体33と、を備えている(図5(a)参照)。機能液導入部31は、ノズル列39の数に対応した2連の接続針34を有しており、サブタンク46からの機能液を、機能液供給システム48(図6参照)を介して供給されるようになっている。また、ヘッド本体33は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部35と、複数の吐出ノズル37が形成されたノズル面38を有するノズルプレート36と、を有している。ノズルプレート36のノズル面38に形成された多数の吐出ノズル37は、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列39を構成しており、各ノズル列39は、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル37で構成されている(図5(b)参照)。そして、この制御装置から出力された駆動波形が各ポンプ部35(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル37から機能液が吐出される。
【0023】
次に、図6を参照して、機能液供給ユニット6について説明する。機能液供給ユニット6は、上記した3色に対応した3組の機能液供給装置(機能液供給手段)41と、メインタンク51およびサブタンク46等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備42と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備43と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備44と、を備えている。3組の機能液供給装置41は、それぞれ3色に対応した機能液滴吐出ヘッド14に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド14には、対応する色の機能液が供給される。
【0024】
各機能液供給装置41は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク51,51を有するメインタンクユニット45と、各キャリッジユニット4に対応した13個のサブタンク46と、メインタンクユニット45および各サブタンク46を接続する上流側機能液流路47と、サブタンク46からの機能液を機能液滴吐出ヘッド14に減圧供給する圧力調整弁27と、各サブタンク46および各圧力調整弁27を接続する13組の下流側機能液流路49と、を備えている。各メインタンク51内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備42からの圧縮窒素ガスにより加圧され、ガス排気設備44を介して大気開放された13個のサブタンク46に上流側機能液流路47を介して選択的に供給される。そして、サブタンク46の機能液は、下流側機能液流路49および圧力調整弁27を介して、各機能液滴吐出ヘッド14に一定圧力で供給される。
【0025】
上流側機能液流路47は、上流端がメインタンクユニット45に接続されており、13分岐流路52を介して、下流端がサブタンク46にそれぞれ接続されている。また、上流側機能液流路47には、上流側から、機能液中の気泡を除去する気泡除去ユニット53と、上流側の上流側機能液流路47内に混入した気泡を除去するエアー抜きユニット54と、が介設されている。メインタンクユニット45から供給された機能液は、13分岐流路52により13個に分流して各サブタンク46に供給される。
【0026】
次に、図7ないし図9を参照して、圧力調整弁27について説明する。圧力調整弁27は、主要部を成す調整弁本体61と、調整弁本体61の流入側に差込み接合した流入コネクター62と、調整弁本体61の流出側に差込み接合した流出コネクター63と、を備えている。そして、流入コネクター62には、流入側押えナット64を介して、サブタンク46に接続した下流側機能液流路49が接続され、流出コネクター63には、流出側押えナット65を介して、機能液滴吐出ヘッド14に連なるヘッド接続チューブ100が接続されている。
【0027】
調整弁本体61(圧力調整弁27)は、前面および後面の中央部が凹型形成されたステンレス製のバルブハウジング71と、バルブハウジング71と共に1次室75を画成する蓋体72と、バルブハウジング71に受圧膜体73を固定することでバルブハウジング71と共に2次室76を画成する膜体押え部材74と、で構成されている。また、1次室75および2次室76は、バルブハウジング71の一部を構成する隔壁77を隔てて同軸上に配設されており、隔壁77の中心部(軸心)には、1次室75および2次室76を連通する連通流路78が貫通形成されている。詳細は後述するが、連通流路78の内周面は弁座83を兼ねており、同軸上において連通流路78に1次室75側から進退自在に臨むように弁体84が配設されている。
【0028】
1次室75は、隔壁77を主体とするバルブハウジング71の後面および蓋体72により形成されている。また、1次室75の上部には、1次室75から径方向斜めに延びる流入ポート81が形成され、中心部には、連通流路78に連なる1次室側開口部82が開口している。さらに、1次室75には、蓋体72を受けにして弁体84を閉弁方向に付勢する弁体ばね85が配設されており、弁体ばね85の先端部は弁体84の背面部分に係合している。すなわち、弁体84は、係合した弁体ばね85によって、閉弁方向(2次室76側)に弱い力で付勢されている。
【0029】
2次室76は、バルブハウジング71の前面および受圧膜体73により形成されている。また、2次室76の下部には、真下に延びる流出ポート86が形成され、中心部には、連通流路78に連なる2次室側開口部87が開口している。そして、この2次室側開口部87の周縁部と受圧膜体73との間には、受圧膜体73を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね88が介設されている。
【0030】
受圧膜体73は、樹脂フィルムで構成した膜体本体91と、膜体本体91の中央部に接着した樹脂製の受圧板92と、で構成されている。受圧板92は、膜体本体91と同心の円板状に、且つ膜体本体91に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に弁体84が当接するようになっている。そして、膜体本体91、受圧板92および上記の弁体84は、同軸上に配設されている。
【0031】
連通流路78は、上記したように、バルブハウジング71の中央部分を構成する隔壁77を直交方向から直線状に貫通形成されている。連通流路78は、その1次室側開口部82が大径で、2次室側開口部87が小径となる、先細りのいわゆるテーパー形状に形成されている。詳細は後述するが、連通流路78に挿通する弁体84の弁体本体94が先細りのテーパー形状に形成されており、連通流路78は、この弁体本体94と相補的形状に形成されている。すなわち、連通流路78は、その流路壁により弁体84が離接する弁座83として機能するようになっている。
【0032】
図9に示すように、弁体84は、金属素材(好ましくは、軽金属)で形成されており、同軸上において軸線方向の後方から、弁体ばね85が係合する厚肉円板状のホルダーベース96と、ホルダーベース96に連なり、弁機能を奏する弁体本体94と、弁体本体94の先端から延在し受圧膜体73に当接する作動軸部99と、から構成されている。弁体84は、受圧膜体73による大気圧基準で、弁座83となる連通流路78の流路壁に離接することで開閉する。すなわち、大気圧と2次室76との圧力バランスに従って挙動する受圧膜体73から、作動軸部99が押圧力を受けることにより弁体84が開弁し、弁体ばね85からホルダーベース96がばね力を受けることにより弁体84が閉弁する。なお、上記したように弁体84および上記したバルブハウジング71(連通流路78の流路壁)は、共に金属素材で構成されているため、比較的精度よく(形状精度よく)形成することができる。
【0033】
ホルダーベース96は、円形の板状に形成されており、1次室75側の受圧部を構成する。また、ホルダーベース96の後面周縁部には弁体ばね85が係合する環状のばね受け部102が形成されている。そして、ホルダーベース96の前面中央部には弁体本体94が前方に延設されている。ホルダーベース96は、その背面で1次室75の圧力を受けると共に、弁体ばね85により閉弁方向に弱い力で付勢されている。なお、弁体84の閉弁状態において、ホルダーベース96の前面は、1次室側開口部82の周縁部に当接しないように構成されている。
【0034】
弁体本体94と作動軸部99とは、作動軸部99が弁体本体94から同軸上に延設された形態となっているが、これらは一体としてホルダーベース96の前面中央部から先細りのテーパー形状に形成されている。そして、作動軸部99の先端は、受圧板92からの押圧を受けるように平坦面、あるいは半球状(図示省略)に形成されている。
【0035】
上述のように、弁体本体94は、ホルダーベース96の前面中央部から先細りのテーパー形状に形成されている。また、弁体本体94(および作動軸部99)は、上記の連通流路78に1次室75側から挿通しており、上記の連通流路78(弁座83)は、弁体本体94に対して相補的形状に形成されている。弁体本体94が弁座83に当接している閉弁状態から弁体84が開弁し、弁体本体94が後退すると、弁体本体94と連通流路78の流路壁との間に間隙が生じ、機能液が2次室76に流入するための流路が確保される。この場合、弁体本体94と流路壁との間の流路面積は、弁体84のストロークに比例して大小変化することになる。
【0036】
具体的には、弁体本体94が後退すると、連通流路78の流路面積は徐々に大きくなるが、弁体本体94が微少移動した場合(弁開度が小さい場合)には、流路面積は小さいものとなり、機能液を少量ずつ供給することができる。一方、弁体本体94が大きく移動した場合(弁開度が大きい場合)には、流路面積は大きくなり、多量の機能液を供給することができる。したがって、弁体本体94のテーパー角度と弁体84のストロークとの関係(簡単に数値化できる)に基づいて、2次室76への機能液の供給量を精度よく管理することができる。特に、弁体本体94のテーパー角度を小さくすれば、精度は高まる。また同時に、1次側水頭に対する弁体84の受圧面積が小さくなるため、弁体84の開閉動作を円滑に且つソフトに行うことができると共に、開閉動作に伴う2次室76側の脈動を抑制することができる。
【0037】
一方、弁体本体94のテーパー角度が大きい場合、弁体84のストロークに対して弁体本体94と弁座83との間の微少間隙(面積)の変化率を大きくすることができる。特に、強制吸引により圧力調整弁27に初期充填を行う場合、多量の機能液を瞬時に流すことが可能となるため、エアー混じりの機能液を、エアーを残留させることなく流し去ることができる。
【0038】
次に、図10を参照して、弁体84の開閉動作について説明する。上記のように構成された圧力調整弁27では、例えば機能液滴吐出ヘッド14の液滴吐出により2次室76の圧力が下がってゆくと(図10(a)参照)、大気圧により受圧膜体73が凹変形してゆき、受圧板92が作動軸部99を介して弁体84を1次室75側に押圧する。このとき、弁体本体94は、その周面が連通流路78の流路壁(弁座83)から離れるように後退して開弁状態となる(図10(b)参照)。このようにして、弁体84が開弁すると、連通流路78を介して1次室75の機能液が2次室76に流入し、2次室76の圧力が高くなり、受圧膜体73が外部に向かって凸変形する。このとき、弁体本体94は、その周面が連通流路78の流路壁に近づくように、弁体ばね85の付勢力により前進し、弁体本体94が、弁体ばね85のばね力で弁座83に当接することにより、弁体84は閉弁状態となる(図10(a)参照)。
【0039】
このように、圧力調整弁27は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド14に連なる2次室76との内部圧力のバランスにより受圧膜体73が変形することで連通流路78を開閉する。その際、弁体ばね85および膜体付勢ばね88に力が分散して作用し、弁体84は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体84の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド14の吐出駆動に影響を与えないようになっている。
【0040】
以上の構成によれば、弁体84および弁座83が共に受圧膜体73に向ってテーパー形状に形成されているため、2次室76への機能液の供給量を精度良く管理することができる。また、1次側水頭に対する弁体84の受圧面積を小さくすることができるため、開閉動作に伴う2次室76側の脈動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…液滴吐出装置 14…機能液滴吐出ヘッド 27…圧力調整弁 41…機能液供給装置 71…バルブハウジング 73…受圧膜体 75…1次室 76…2次室 77…隔壁 78…連通流路 83…弁座 84…弁体 85…弁体ばね 94…弁体本体 99…作動軸部 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液供給手段から供給された機能液を、圧力調整してインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、
隔壁を隔ててバルブハウジング内に形成され、前記機能液供給手段に連通する1次室および前記機能液滴吐出ヘッドに連通する2次室と、
前記隔壁に直線状に貫通形成され、前記1次室と前記2次室とを連通すると共に、少なくとも前記1次室側の一部に同軸上に弁座を形成した連通流路と、
同軸上において前記1次室側から前記弁座に進退自在に臨み、前記連通流路を開閉する弁体と、
前記2次室の1の面を構成すると共に前記弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、を備え、
前記弁体は、先細りのテーパー形状に形成され、
前記弁座は、前記弁体に対し相補的形状に形成されていることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記隔壁に対向する前記1次室の1の壁面を受けとして、前記受圧膜体と拮抗しつつ前記弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねを、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記隔壁が金属で構成され、且つ前記弁体が金属で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
前記弁体は、前記弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、
前記弁体本体から同軸上に延在し前記受圧膜体に当接する作動軸部と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の圧力調整弁。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の圧力調整弁と、
前記機能液供給手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドと、を備え、
ワークに対し前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−198297(P2010−198297A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42155(P2009−42155)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】