圧電振動素子、表面実装型圧電振動子及び表面実装型圧電発振器
【課題】マウントに起因する応力(歪)を低減した小型の表面実装型厚み滑り圧電振動子を得る。
【解決手段】圧電振動素子4は、振動領域を備えた四角形の圧電基板5と、圧電基板5の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極15a、15bと、圧電基板5の一つの角隅部に中間部7を連接一体化されてこの中間部から圧電基板5の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕9a、9bを備えたL字状の支持部9と、各励振電極15a、15bから支持腕9a、9bに沿って夫々延びるリード電極17a、17bと、を備えている。
【解決手段】圧電振動素子4は、振動領域を備えた四角形の圧電基板5と、圧電基板5の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極15a、15bと、圧電基板5の一つの角隅部に中間部7を連接一体化されてこの中間部から圧電基板5の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕9a、9bを備えたL字状の支持部9と、各励振電極15a、15bから支持腕9a、9bに沿って夫々延びるリード電極17a、17bと、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み滑り振動モードを用いた圧電振動素子、表面実装型圧電振動子及び表面実装型圧電発振器の改良に関し、特に小型化、低背化を達成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子、例えば表面実装型水晶振動子は小型であること、高精度、高安定な周波数が得られ、経年変化が少ない等の電気的諸特性を有することから、通信用機器から民生用機器の基準周波数源として広く用いられている。近年、機器の小型化、軽量化と共に、表面実装型水晶振動子の更なる小型化、低背化が進められている。中でも周波数−温度特性が3次曲線を呈し、厚み滑りモードのATカット水晶振動子の小型化は、各方面から求められている。
【0003】
特許文献1には、水晶片の保持構造に起因する歪を抑止し、振動特性及び耐衝撃性を改善したATカット水晶振動子が開示されている。図11(a)及び(b)は、特許文献1に開示された水晶振動子の構成を示す図であり、同図(a)は水晶片52の平面図、同図(b)は組立分解図である。水晶片52は、高周波化を図るため平板状圧電基板の板面の一部に凹部54を形成し、凹部54内の平坦部を振動部としている。この振動部の表裏には励振電極55が形成され、各励振電極からは引出電極56が延びている。
水晶振動子は、上面が凹陥した容器本体51の凹陥内部に形成した段部に設けられた水晶端子53に、水晶片52の励振電極55から延出した引出電極56を搭載して導電性接着剤57によって接着することにより、水晶片52の一端部両側を保持して構成される。
水晶片52は、引出電極56を延出した2つの端縁にスリット状の切り欠き58を設けている。そして、両主面の励振電極55から延出した引出電極56は、切欠き58を跨るように両主面上に展開されている。
【0004】
以上のように水晶振動子を構成すると、容器本体51と水晶片52との熱膨張差に起因する応力は、導電性接着剤57の塗布される一端部に集中して歪み(湾曲)を生じる。そして、振動領域を含む切り欠き58部から他端部までは、切り欠き58によって応力が遮断されて、歪みが生じない。従って、周波数温度特性を含めた振動特性を良好に維持することができると開示されている。
【0005】
特許文献2には、水晶振動部と、これを保持する保持部材と、両者間を連結する柱状のサポート部材と、から成り、サポート部材の一端を水晶振動部に、他端を保持部材に夫々連結して構成したATカット水晶振動子が開示されている。
また、特許文献3には、円形状の振動部と、この振動部と同心のリング状の支持部と、振動部と支持部とを連結する橋梁部と、からなる水晶振動子が開示されている。
特許文献4には、矩形状の振動部と、これを保持する矩形状の支持フレームと、両者間を連結する連結材とからなり、振動部の4節点と支持フレームの夫々の角部と、を連結材で連結して構成したラーメモードの輪郭水晶振動片が開示されている。
また、特許文献5には、矩形状の振動部と、これを保持する逆L字状の支持部と、両者間を連結する連結材とからなり、振動部の対角状の2節点と支持部の両先端部と、を夫々連結材で連結して構成したラーメモードの輪郭水晶振動片が開示されている。
特許文献6には、振動漏れを低減した音叉型圧電振動片が開示されている。図12に示すように、音叉型圧電振動片80は、基部82と基部82の一端から平行して延びる2つの振動腕84、84とを有するコ字状の圧電振動片本体86と、L字状の支持部88と、を備えている。支持部88は、基部82の他端に沿って形成された短辺部90と、この短辺部90の一側端部から圧電振動片本体86の長辺に沿って延びる長辺部92とから構成されている。支持部88は、短辺部90及び長辺部92によりL型の形状を成している。そして、基部82の他端と短辺部90とが接続されている。この接続する箇所の幅は両側に形成した切り込み溝94によって狭めてあり、圧電振動片本体86の振動漏れを低減するようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−88138公報
【特許文献2】特開昭59−218019号公報
【特許文献3】特開2007−36969公報
【特許文献4】特開2008−206079公報
【特許文献5】特開2009−105509公報
【特許文献6】特許第4508204号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のATカット水晶振動子を、図13(b)に示すように小型化する場合、水晶基板と実装する絶縁基板の線膨張係数の差に起因する応力が、振動領域に影響を及ぼさないようにするためには、二つの切欠き58に挟まれた首部分が可能な限り細くなるように加工する必要があり、このような水晶振動子では対衝撃性に問題が生じるという虞があった。また、実装する絶縁基板に設けられた内部電極に、ディスペンサー装置等を用いて導電性接着剤を塗布する場合、導電性接着剤の大きさは、接着剤供給部の径により決まる。接着剤の粘性を考慮すると接着剤供給部の径には限界があり、導電性接着剤の大きさを小さくするには限度がある。塗布した導電性接着剤が振動領域に影響を及ぼさないようにするためには、二つの切欠き58に挟まれた首部分の長さを振動領域に対し相対的に長くする必要があり、耐衝撃性が弱くなる虞がある。
【0008】
また、特許文献2、又は3に開示された構成を用い、図14(a)に示すような水晶振動素子を、同図(b)に示すように小型化を図る場合、水晶基板に振動部を囲むコ字状のスリットを形成することになるが、スリットを形成するには、おおよそ基板の板厚以上のスリット幅が必要であり、コ字状のスリットを形成するために振動部が小さくなり、水晶振動素子のCI値(クリスタルインピーダンス)が大きくなるという問題があった。
特許文献4、又は5に開示された構成は、振動部が正方形の4つの角部と中心とを節点として、面内で対向する一方の2辺と他方の2辺とが交互に外向き又は内向き伸縮するラーメモードの輪郭振動に関するものであり、この構成をそのまま厚み滑り振動モードの応力低減に適用するには問題がある。
【0009】
また、特許文献6は、音二つの振動腕が互いに逆位相で振動するモード、つまり中心線に対し二つの振動腕が対象に振動する音叉型圧電振動素子に関するものである。この構成をそのまま厚み滑り振動モードに適用して、応力低減を図るには問題がある。
また、特許文献1〜6には、歪の抑圧、振動漏れの低減が可能であると記されているが、水晶基板と実装する絶縁基板との線膨張係数の差に起因する応力(∝歪)が、支持部及び振動部にどのように分布するかのシミュレーション結果が開示されておらず、効果の程度に問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、厚み滑りモード圧電振動子を小型化する際、優れた周波数温度特性、耐侯性(耐リフロー性、エージング特性)を有する圧電振動素子、圧電振動子及び圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備えた四角形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0012】
圧電振動素子を絶縁基板に固定する際に、絶縁基板の線膨張係数と圧電振動素子の線膨張係数との差により圧電振動素子に応力が生ずる。本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の二つの端縁と並行に延びる二つの振動腕を有するL字状の支持部の二つの振動腕の交差部と、に中間部を連接して一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、中間部の振動領域寄りでは応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例2]また、本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記短辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0014】
本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部近傍の長辺部位と、支持部の中間部とを、短辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力が生じるが、中間部の中央部で応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例3]また、本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記長辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0016】
本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部近傍の短辺部位と、支持部の中間部とを、長辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、中間部の振動領域寄りの端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0017】
[適用例4]また、本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備え、前記長辺方向と並行に延びる前記支持腕の長さを前記圧電基板の長辺の長さの1/2以上としたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0018】
本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の2つの端縁と並行に延びる2つの振動腕を有するL字状の支持部の中間部(交差部)と、を連接して一体化し、且つ長辺方向に延びる振動腕の長さを圧電基板の長辺の長さの1/2以上とした構成である。このような構成の圧電振動素子に発生する応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、振動領域の端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例5]本発明に係る表面実装型圧電振動子は、前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッドを上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、該素子搭載パッド上に搭載される適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電振動子である。
【0020】
パッケージ内に適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子を収容して構成した表面実装型圧電振動子は、小型で低背であると共に、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある
【0021】
[適用例6]また、本発明に係る表面実装型圧電振動子は、前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備え、前記圧電振動素子のL字状の支持部の中間部を前記枕部材と対向するように配置したことを特徴とする表面実装型圧電振動子である。
【0022】
適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の中間部に対応する絶縁基板上に、中間部と接する枕部材を設けることにより、圧電振動素子と絶縁基板との平行度が容易に保たれ、圧電振動素子4の先端部が絶縁基板に触れる虞がなくなり、圧電振動子の歩留まりが改善されるという効果がある。
【0023】
[適用例7]また、本発明に係る表面実装型圧電振動子は、前記各支持腕の先端部を前記素子搭載パッドと電気的に接着・固定したことを特徴とする適用例5又は6に記載の表面実装型圧電振動子である。
【0024】
適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の2つの支持腕の先端部と、絶縁基板に設けた素子搭載パッドとを接着・固定することにより、圧電振動素子の振動領域における応力レベルは極めて小さく、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0025】
[適用例8]本発明に係る表面実装型圧電発振器は、適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備えると共に他の部位にIC部品搭載パッドを備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記IC部品搭載パッドに電気的に接続され且つ発振回路を搭載したIC部品と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドと前記IC部品搭載パッドとの間を導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電発振器である。
【0026】
適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、発振回路及び補償回路等を有するIC部品と、前記圧電振動素子及び前記IC部品を収容するパッケージと、を備えた表面実装型圧電発振器を構成することにより、周波数温度補償された出力が得られると共に、エージング特性も良好であり、且つ小型化、低背化に適した表面実装型圧電発振器がえられるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る圧電振動子の構成を示した概略図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)圧電振動素子の平面図。
【図2】パッケージの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図3】本発明と従来例とを比較する概略図であり、(a)、(b)は従来例の圧電振動素子の平面図、(c)、(d)は本発明の圧電振動素子の平面図。
【図4】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は応力分布を示す概略斜視図。
【図5】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は応力分布を示す概略斜視図。
【図6】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は応力分布を示す概略斜視図。
【図7】(a)は圧電振動素子の平面図であり、(b)はシミュレーションより求めた応力分布を示す概略斜視図。
【図8】(a)は圧電振動素子の平面図であり、(b)はシミュレーションより求めた応力分布を示す概略斜視図。
【図9】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)はシミュレーションより求めた応力分布を示す概略斜視図。
【図10】本発明の圧電発振器の構成を示す断面図。
【図11】(a)は従来例の水晶片の構成を示す平面図、(b)は組立分解図。
【図12】従来例の音叉型圧電振動片の構成を示す平面図。
【図13】(a)は従来例の水晶振動素子、(b)は小型化した水晶振動素子の平面図。
【図14】(a)は従来例の水晶振動素子、(b)は小型化した水晶振動素子の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る厚み滑り振動圧電振動子(以降、圧電振動子と称す)1の構成を示す図であり、同図(a)は蓋部材を除いた斜視図、同図(b)はP−P断面図、同図(c)は厚み滑り振動圧電振動素子(以降、圧電振動素子と称す)4の平面図である。
圧電振動子1は、水晶基板等の圧電基板の表裏面に励振電極が形成された圧電振動素子4と、圧電振動素子4を収容するパッケージ(絶縁基板)本体20と、パッケージ本体20を気密封止するための蓋部材35と、を備えている。
【0029】
圧電振動素子4は、図1(c)に示すように、振動領域を備えた四角形(本例では矩形)の圧電基板5と、圧電基板5の振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極15a、15b(励振電極15bは圧電基板5の裏面に形成)と、を備えている。更に、圧電基板5の一つの角隅部に中間部(屈曲部)7が連接一体化され、この中間部7から圧電基板5の2つの端縁5a、5bと離間しつつ並行に延びる2本の支持腕9a、9bを備えたL字状の支持部9と、各励振電極15a、15bから支持腕9a、9bの表裏面に沿って夫々延びるリード電極17a、17b(リード電極17bは支持腕9bの裏面に形成)と、を備えている。
【0030】
圧電基板5は、例えば水晶の電気軸(X軸)の回りに約35°回転して切り出したATカット水晶基板を用いる。ATカットウエハーをラッピング装置で所定の周波数まで研磨し、フッ化アンモニウムのエッチング液を用いて周波数を微調整した後、蒸着、或いはスパッタリングで金属膜(例えばクロムを下地とした金の薄膜)を両面に形成する。このウエハーにフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工を適用して、圧電基板5と、2本の支持腕9a、9bがほぼ直角に交わるL字状の支持部9と、圧電基板5との一つの角隅部とL字状の支持部9の角隅部(支持腕9a、9bの交差部)とを連接する中間部7と、を一体的に形成する。形成された基板に蒸着、或いはスパッタリングで励振電極15a、15b及びリード電極17a、17bを成膜して圧電振動素子4を構成する。
【0031】
図2は、パッケージ本体20の構成を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)はQ−Q断面図である。
パッケージ本体20は、例えば、図2(b)に示すように、矩形の箱状に形成されている。具体的には、パッケージ本体(絶縁基板)20は、絶縁材料から成る板状の第1の基板21と、板状の第2の基板22と、環状の第3の基板23とを積層して形成されている。例えば、各基板21、22、23を酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートから構成し、これらを積層してから焼結することにより製造する。図2(b)に示した例では、第1の基板21の外部底面に複数の実装端子25が形成されている。
第3の基板23は中央部が除去された環状をなしており、第3の基板23の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング24が形成されている。
【0032】
第3の基板23と第2の基板22とにより、圧電振動素子4を収容する凹部が絶縁基板上面に形成されている。第2の基板22の上面の所定の位置には、実装端子25と導体26により電気的に導通する複数の素子搭載パッド27a、27bと、何れの実装端子25とも非導通の枕部材28が設けられている。
素子搭載パッド27a、27bは、圧電振動素子4を載置した際に支持腕9a、9bの先端部と対応するように配置されている。また、枕部材28は、圧電基板5の一つの角隅部と、L字状の支持部9の中間部7と対応するように配置されている。
【0033】
圧電振動子1は、パッケージ本体20の素子搭載パッド27a、27b上に導電性接着剤30、例えばエポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ビスマレイミド系接着剤の何れかを適量塗布し、その上に圧電振動素子4を載置して軽く押さえることにより組み立てる。
この際、枕部材28に中間部7が接するようになるため、パッケージ本体20の第2の基板22の上面と、圧電振動子1の圧電基板5の主面とがほぼ平行に保たれる。
パッケージ本体20に圧電振動素子4を搭載した状態で導電性接着剤30を硬化させるために、所定温度の高温炉に所定の時間入れる。その後、真空装置の中で圧電振動子1の周波数を微調整し、アニール処理を施した後、蓋部材35、例えばNiメッキのコバール材を用い、パッケージ本体20の上面に形成したシールリング24にシーム溶接してパッケージ内部を気密とし、圧電振動子1を構成する。
パッケージ内は不活性ガス、例えば窒素を封入してよいし、真空にしてもよい。
【0034】
図1では四角形の圧電基板5の例を示したが、平面の形状は四角形に限る必要はなく、多角形、円形、楕円形、矩形の両端に半円形を2つ付加した長円形であってもよい。また、圧電基板5にC面取りが施されていてもよい。
また、厚み方向の形状は、平板状に限るものではなく、メサ型、逆メサ型でもよい。ただ、逆メサ型の矩形圧電基板を形成する際には、基板の長辺方向が水晶のZ’軸となるように設定するとよい。
また、圧電基板5の振動領域に形成した励振電極15a、15bの形状として、矩形電極の例を示したが、円形、楕円形、長円形であってもよい。
【0035】
次に、厚み振動の圧電振動素子4を小型化する際に問題になるのは、支持に起因する応力を如何に低減するかと、長辺(X軸)方向の長さ寸法に起因する高次屈曲振動を如何に避けるかである。
本発明に係る圧電振動素子4の特徴を、図3を用いて説明する。図3(a)は従来一般的に用いられている圧電基板5の形状(矩形)であり、圧電基板5の隣接する2つの角隅部を導電性接着剤30で接着・固定した構造である。この構造は、接着剤30の固定に起因して圧電基板5に応力が生じ、小型化を図る場合に問題がある。
図3(b)は、特許文献1に開示された構造であり、圧電基板5の端部寄りの対向する2つの端縁に夫々対向するように両側から切り込みを入れた構成である。この構造では、長辺(X軸)方向の寸法A、Bに起因する二種類の高次屈曲振動が励起されるため、このスプリアスを抑圧するのに難がある。
【0036】
図3(c)、(d)は本発明の一例にかかる構造である。図3(c)では圧電基板5の一つの角隅部と、L字状の支持部9の中間部(屈曲部)7、つまり支持腕9aと9bとの交差部とを一体的に連結した構造である。この構造では圧電基板のX軸方向の長さAに起因する高次屈曲振動はほぼ1種類となる。
また、図3(d)では圧電基板5の角隅部と、L字状の支持部9の中間部7とが、角隅部寄りの短辺(Z’軸方)5bの部位と一体的に連結された構造をしている。この構造ではX軸方向の長さに起因する高次屈曲振動は1種類となる。
【0037】
図3(c)、(d)に示した構造を採用することにより、X軸方向の長さに起因する高次屈曲振動は1種類となり、圧電振動素子4を小型化する際に、主振動と高次屈曲振動との結合が比較的避け易くなる。
次に、圧電振動素子4の支持腕9a、9bの先端部(自由端側)を、絶縁基板上で導電性接着剤30を用いて接着・固定した際に生じる応力(∝歪)を求めるために、有限要素法を用いてシミュレーションした。接着剤30を硬化させるには高温、例えば180℃に所定の時間保持する必要がある。高温状態では圧電基板5も絶縁基板も共に膨張し、接着剤30も軟化するので、圧電基板5には応力は生じていない。圧電基板5と絶縁基板との温度が、常温(25℃)に戻ると、絶縁基板の線膨張係数と、圧電基板5の線膨張係数との差により、接着・固定部より生じる応力が支持部9を経由して圧電基板5にまで広がる。
【0038】
図4(a)は、圧電振動素子4を絶縁基板上にマウントした状態を示す平面図であり、圧電振動素子4は、支持腕9a、9bの先端部で絶縁基板に固定されている。以下、圧電振動素子4に生じる応力分布を求めるシミュレーションでは、一例として矩形の圧電基板5を用い、長辺(X軸方向)5aの長さを850μm、短辺(Z’軸方向)5bの長さを400μm、厚さ(Y’軸方向)を64μmとした。
図4(b)は圧電振動素子4の形状と、それに生じた応力の分布とを示す斜視図である。圧電振動素子4は、長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板5と、L字状の支持部9と、圧電基板5の一つの角隅部とL字状の支持部9の中間部(支持腕9a、9bの交差部)7と、を一体的に形成した圧電振動素子4である。
また、図4(b)では、励振電極15a、15bと、リード電極17a、17bを省略しており、厚み方向の応力分布を示すために、厚み寸法を誇張して描いている。支持腕9a、9bの長さは、夫々圧電基板5の長辺、短辺の長さとほぼ等しく設定されている。また、各部材に生じる応力の大きさ(応力レベル)は、図の複雑化を避けるため、最大応力レベルIから最小応力レベルVの五段階(I、II、III、IV、V)で表示してある。
【0039】
図4(b)に示すような形状の圧電振動素子4の場合、支持腕9a、9bに生じる応力レベルは、最大応力レベルIであり、長辺方向(X軸方向)に延びる支持腕9aの先端部寄りの部位で、応力レベルがIIIからIVに変わる菱形状の小領域S1が存在する。
また、L字状の支持部9の中間部7(C2)では先端に向け、応力レベルIから応力レベルVに急激に減少している。中間部7の中央領域Jでは同心円状に応力レベルIからVに急激に変化する小さな領域が存在する。また、中間部7の中央部に応力レベルが最大応力レベルIから最小応力レベルVに急激に変化する小さな円形状の領域がある。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7から圧電基板5にかけて、最大応力レベルIから最小応力レベルVに急激に変化する。そのため、圧電基板5の振動領域では応力レベルが最小応力レベルVとなることがシミュレーションの結果、判明した。つまり、図4に示す形状の圧電振動素子4は、振動領域に発生する応力は極めて小さく、優れた振動素子であることが判明した。
【0040】
次に、図5(a)は、他の実施形態に係る圧電振動素子4のマウント状態を示す平面図であり、圧電振動素子4は、支持腕9a、9bの先端部で絶縁基板上の素子搭載パッド上に固定されている。図5(b)は圧電振動素子4の形状と、それに生じた応力の分布とを示す斜視図である。圧電振動素子4は、圧電基板5の一つの角隅部と、短辺方向(Z’軸方向)に並行な支持腕9bとが、長辺(X軸)と並行に延びる連接部8により支持部9の中間部7と連接され一体的に形成された圧電振動素子4である。支持腕9a、9bは夫々圧電基板5の長辺、短辺の長さとほぼ等しく設定されている。
【0041】
長辺(X軸)方向に並行に延びる連接部8により、圧電基板の一つの角隅部と支持腕9bとが連結された構造の圧電振動素子4の場合、支持腕9a、9bはほぼ最大応力レベルIであるが、長尺の支持腕9aの中央部より先端部寄りの部位で、応力レベルがからVに変化する大きな菱形状の領域S2が存在する。また中間部7と短尺の支持腕9bとが連接する領域S3では、応力レベルがIからIVに変化する領域が存在する。L字状の支持部9の中間部7(C2)では先端に向け、応力レベルIから応力レベルVに急激に減少しているが、図4(b)に示す構造のものより変化する領域は小さい。
圧電基板5の一つの端縁と連結部8とが連接する領域C1では、連結部8から圧電基板5にかけて、最大応力レベルIからIVに複雑に変化している。連結部8と圧電基板5との境界近辺では応力レベルがIVになり、圧電基板5の振動領域では応力レベルは最小応力レベルVである。図5に示す形状の圧電振動素子4は、振動領域に発生する応力は極めて小さく、優れた振動素子であるが、長辺(X軸)方向の二つの長さに起因する高次屈曲振動を避けるように設計する必要がある。
【0042】
図6(a)は、他の実施形態に係る圧電振動素子4のマウントの状態を示す平面図であり、圧電振動素子4は、支持腕9a、9bの先端部で絶縁基板に固定されている。図6(b)は、圧電振動素子4の形状と、それに生じた応力の分布とを示す斜視図である。長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電振動素子4は、圧電基板5の一つの角隅部と、長辺方向(X軸方向)に延びる長尺の支持腕9aとが、短辺(Z’軸)5bと並行に延びる連結部8によって連接され一体的に形成された圧電振動素子4である。支持腕9a、9bは夫々圧電基板5の長辺5a、短辺5bの長さとほぼ等しく設定されている。
【0043】
圧電基板5と支持部9とを連結する連結部8が短辺(Z’軸)方向と並行に形成された圧電振動素子4の場合、支持腕9a、9bに生じる応力は、ほぼ最大応力レベルIの領域であるが、支持腕9aの中央部より先端部寄りの部位で、応力レベルがIIIからVに変化する菱形状の領域S2が存在する。L字状の支持部9の中間部7(C2)では先端に向け、応力レベルIから応力レベルVに急激に減少する極めて小さい領域がある。また、支持腕9bの中央部には応力レベルIからIVまで急激に変化する菱形状の領域S3が存在する。
圧電基板5の一つの端縁と連結部8とが連接する部位では、連結部8のほぼ中央で長辺(X軸)方向に沿って、応力レベルが最大応力レベルIから急激に最小応力レベルVに変化している。圧電基板5の振動領域では応力レベルは最小応力レベルVである。図6に示す形状の圧電振動素子4では、振動領域に生ずる応力レベルは最小レベルのVであり、優れた振動素子であることが判明した。
【0044】
次に、図7、図8及び図9に示すように、長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板5の一つの角隅部と、圧電基板5の2つの端縁と並行に延びる2つの振動腕9a、9bを有するL字状の支持部9の中間部(交差部)7と、を連接して一体化した圧電振動素子4において、支持腕9aの長さを変化させた場合の応力分布の変化についてシミュレーションにより求めた。支持腕9bの長さは圧電基板5の短辺(Z’軸)長さとほぼ等しくし、支持腕9aの長さを、長辺の長さより短く、100μm、200μm、300μmと変化させた絶縁基板上に圧電振動素子4をマウントする部位は、図7(a)、図8(a)、図9(a)の平面図に示すように支持腕9a、9bの先端部とした。
【0045】
図7(b)は支持腕9aの長さを100μmとした場合に、圧電振動素子4上に生じる応力分布を示した斜視図である。支持腕9a、9bのほとんどの部位に最大応力Iの領域が広がり、L字状支持部9の角隅領域C2では先端部に向けて最大応力Iから最小応力Vまで変化している。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7から圧電基板5の角隅部にかけて、最大応力レベルIから応力レベルII、III、IVと緩やかに変化している。応力レベルIVの領域は圧電基板5の振動領域の一部まで広がっており、圧電振動素子4の振動変位に影響し、この形状の圧電振動素子を用いて振動子を構成した場合に電気的特性を劣化させる虞がある。
【0046】
図8(b)は、支持腕9aの長さを200μmとした場合、圧電振動素子4上に生じる応力分布を示した斜視図である。支持腕9a、9bのほとんどの部位に最大応力Iの領域が広がり、L字状支持部9の角隅領域C2では最大応力Iから最小応力Vまで変化していが、図7(b)の領域C2より小さくなっている。また、中間部7の中央部に応力レベルが円形に変化する小さな領域が存在する。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7から圧電基板5の角隅部にかけて、応力レベルが最大応力レベルIからII、IIIと急激に変化している。応力レベルIVは圧電基板5の振動領域の一部まで広がっている。
【0047】
図9(b)は、支持腕9aの長さを300μmとした場合、圧電振動素子4上に生じる応力分布を示した斜視図である。支持腕9a、9bのほとんどの領域に最大応力Iの領域が広がり、L字状支持部9の角隅領域C2では先端部に向かって最大応力Iから最小応力Vまで変化しているが、図8(b)の領域C2よりも小さくなっている。また、中間部7の中央部に応力レベルが円形に変化する小さな領域が存在する。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7と圧電基板5の角隅部とが接続する部位で、最大応力レベルIから応力レベルII、IIIと急激に変化している。応力レベルIVの領域は圧電基板5の一部まで広がっているが、振動領域にかかる応力レベルIVの部分は小さく、圧電振動素子4を振動子とした場合、電気的特性に及ぼす影響は極めて小さいと推定される。
以上の説明では、水晶基板を用いて説明したが、圧電基板としては、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板、ランガサイト基板等を用いてもよい。
【0048】
圧電振動素子4を材料が異なる絶縁基板5上に固定する際に、絶縁基板の線膨張係数と圧電振動素子の線膨張係数との差により圧電振動素子に応力が生ずる。本発明の圧電振動素子4は、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の二つの端縁と並行に延びる二つの振動腕を有するL字状の支持部の中間部(二つの腕部の交差部)とを連接して一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、中間部の振動領域寄りでは応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電振動素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0049】
本発明の一つの実施形態に係る圧電振動素子4は、図6に示すように、圧電基板の一つの角隅部近傍の長辺部位と、支持部の中間部とを、短辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力が生じるが、中間部の中央部で応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0050】
本発明の他の実施形態に係る圧電振動素子4は、図5に示すように、圧電基板の一つの角隅部近傍の短辺部位と、支持部の中間部とを、長辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、中間部の振動領域寄りの端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0051】
本発明の他の実施形態に係る圧電振動素子4は、図9に示すように、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の2つの端縁と並行に延びる2つの振動腕を有するL字状の支持部の中間部(交差部)と、を連接して一体化し、且つ長辺方向に延びる振動腕の長さを圧電基板の長辺の長さの1/2以上とした構成である。このような構成の圧電振動素子に発生する応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、振動領域の端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0052】
パッケージ内に圧電振動素子4を収容して構成した表面実装型厚み滑り圧電振動子は、小型で低背であると共に、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
上記の圧電振動素子4の中間部7に対応する絶縁基板上に、中間部7と接する枕部材28を設けることにより、圧電振動素子4と絶縁基板との平行度が容易に保たれ、圧電振動素子4の先端部が絶縁基板に触れる虞がなくなり、圧電振動子の歩留まりが改善されるという効果がある。
上記の圧電振動素子4の2つの支持腕の先端部と、絶縁基板に設けた素子搭載パッドとを接着・固定することにより、圧電振動素子4の振動領域における応力レベルは極めて小さくなり、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0053】
図10は本発明に係る表面実装型圧電発振器3の構成を示す断面図である。表面実装型圧電発振器3は、本発明の実施形態に係る圧電振動素子4と、パッケージ本体(絶縁基板)20aと、IC部品38と、蓋部材35と、を備えている。
パッケージ本体(絶縁基板)20aは、圧電振動素子4の各リード電極17a、17bと電気的に接続される素子搭載パッド27a、27b、及び何れの実装端子とも非導通の枕材28を上面に備えると共に、他の部位にIC部品搭載パッド29と、外部に実装端子を備えている。IC部品38は、発振回路、増幅回路、温度補償回路等を有している。
IC部品38は、IC部品搭載パッド29に金属バンプ等を用いて電気的に接続され、素子搭載パッド27a、27b、と、IC部品搭載パッド29と、実装端子25と、は導体26により導通が図られている。
上記の圧電振動素子4と、発振回路及び補償回路等を有するIC部品38と、圧電振動素子4及びIC部品38を収容するパッケージ20aと、を備えた表面実装型圧電発振器を構成することにより、周波数温度補償された出力が得られると共に、エージング特性も良好であり、且つ小型化、低背化に適した表面実装型圧電発振器が得られるという効果がある。
【符号の説明】
【0054】
1…圧電振動子、3…圧電発振器、4…圧電振動素子、5…圧電基板、7…中間部、8…連結部、9…支持部、9a、9b…支持腕、15a、15b…励振電極、17a、17b…リード電極、20…パッケージ本体、21、22、23…絶縁基板、24…シールリング、25…実装端子、26…導体、27a、27b…素子搭載パッド、28…枕部材、29…IC部品搭載パッド、30…導電性接着剤、35…蓋部材、36…金属バンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み滑り振動モードを用いた圧電振動素子、表面実装型圧電振動子及び表面実装型圧電発振器の改良に関し、特に小型化、低背化を達成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子、例えば表面実装型水晶振動子は小型であること、高精度、高安定な周波数が得られ、経年変化が少ない等の電気的諸特性を有することから、通信用機器から民生用機器の基準周波数源として広く用いられている。近年、機器の小型化、軽量化と共に、表面実装型水晶振動子の更なる小型化、低背化が進められている。中でも周波数−温度特性が3次曲線を呈し、厚み滑りモードのATカット水晶振動子の小型化は、各方面から求められている。
【0003】
特許文献1には、水晶片の保持構造に起因する歪を抑止し、振動特性及び耐衝撃性を改善したATカット水晶振動子が開示されている。図11(a)及び(b)は、特許文献1に開示された水晶振動子の構成を示す図であり、同図(a)は水晶片52の平面図、同図(b)は組立分解図である。水晶片52は、高周波化を図るため平板状圧電基板の板面の一部に凹部54を形成し、凹部54内の平坦部を振動部としている。この振動部の表裏には励振電極55が形成され、各励振電極からは引出電極56が延びている。
水晶振動子は、上面が凹陥した容器本体51の凹陥内部に形成した段部に設けられた水晶端子53に、水晶片52の励振電極55から延出した引出電極56を搭載して導電性接着剤57によって接着することにより、水晶片52の一端部両側を保持して構成される。
水晶片52は、引出電極56を延出した2つの端縁にスリット状の切り欠き58を設けている。そして、両主面の励振電極55から延出した引出電極56は、切欠き58を跨るように両主面上に展開されている。
【0004】
以上のように水晶振動子を構成すると、容器本体51と水晶片52との熱膨張差に起因する応力は、導電性接着剤57の塗布される一端部に集中して歪み(湾曲)を生じる。そして、振動領域を含む切り欠き58部から他端部までは、切り欠き58によって応力が遮断されて、歪みが生じない。従って、周波数温度特性を含めた振動特性を良好に維持することができると開示されている。
【0005】
特許文献2には、水晶振動部と、これを保持する保持部材と、両者間を連結する柱状のサポート部材と、から成り、サポート部材の一端を水晶振動部に、他端を保持部材に夫々連結して構成したATカット水晶振動子が開示されている。
また、特許文献3には、円形状の振動部と、この振動部と同心のリング状の支持部と、振動部と支持部とを連結する橋梁部と、からなる水晶振動子が開示されている。
特許文献4には、矩形状の振動部と、これを保持する矩形状の支持フレームと、両者間を連結する連結材とからなり、振動部の4節点と支持フレームの夫々の角部と、を連結材で連結して構成したラーメモードの輪郭水晶振動片が開示されている。
また、特許文献5には、矩形状の振動部と、これを保持する逆L字状の支持部と、両者間を連結する連結材とからなり、振動部の対角状の2節点と支持部の両先端部と、を夫々連結材で連結して構成したラーメモードの輪郭水晶振動片が開示されている。
特許文献6には、振動漏れを低減した音叉型圧電振動片が開示されている。図12に示すように、音叉型圧電振動片80は、基部82と基部82の一端から平行して延びる2つの振動腕84、84とを有するコ字状の圧電振動片本体86と、L字状の支持部88と、を備えている。支持部88は、基部82の他端に沿って形成された短辺部90と、この短辺部90の一側端部から圧電振動片本体86の長辺に沿って延びる長辺部92とから構成されている。支持部88は、短辺部90及び長辺部92によりL型の形状を成している。そして、基部82の他端と短辺部90とが接続されている。この接続する箇所の幅は両側に形成した切り込み溝94によって狭めてあり、圧電振動片本体86の振動漏れを低減するようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−88138公報
【特許文献2】特開昭59−218019号公報
【特許文献3】特開2007−36969公報
【特許文献4】特開2008−206079公報
【特許文献5】特開2009−105509公報
【特許文献6】特許第4508204号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のATカット水晶振動子を、図13(b)に示すように小型化する場合、水晶基板と実装する絶縁基板の線膨張係数の差に起因する応力が、振動領域に影響を及ぼさないようにするためには、二つの切欠き58に挟まれた首部分が可能な限り細くなるように加工する必要があり、このような水晶振動子では対衝撃性に問題が生じるという虞があった。また、実装する絶縁基板に設けられた内部電極に、ディスペンサー装置等を用いて導電性接着剤を塗布する場合、導電性接着剤の大きさは、接着剤供給部の径により決まる。接着剤の粘性を考慮すると接着剤供給部の径には限界があり、導電性接着剤の大きさを小さくするには限度がある。塗布した導電性接着剤が振動領域に影響を及ぼさないようにするためには、二つの切欠き58に挟まれた首部分の長さを振動領域に対し相対的に長くする必要があり、耐衝撃性が弱くなる虞がある。
【0008】
また、特許文献2、又は3に開示された構成を用い、図14(a)に示すような水晶振動素子を、同図(b)に示すように小型化を図る場合、水晶基板に振動部を囲むコ字状のスリットを形成することになるが、スリットを形成するには、おおよそ基板の板厚以上のスリット幅が必要であり、コ字状のスリットを形成するために振動部が小さくなり、水晶振動素子のCI値(クリスタルインピーダンス)が大きくなるという問題があった。
特許文献4、又は5に開示された構成は、振動部が正方形の4つの角部と中心とを節点として、面内で対向する一方の2辺と他方の2辺とが交互に外向き又は内向き伸縮するラーメモードの輪郭振動に関するものであり、この構成をそのまま厚み滑り振動モードの応力低減に適用するには問題がある。
【0009】
また、特許文献6は、音二つの振動腕が互いに逆位相で振動するモード、つまり中心線に対し二つの振動腕が対象に振動する音叉型圧電振動素子に関するものである。この構成をそのまま厚み滑り振動モードに適用して、応力低減を図るには問題がある。
また、特許文献1〜6には、歪の抑圧、振動漏れの低減が可能であると記されているが、水晶基板と実装する絶縁基板との線膨張係数の差に起因する応力(∝歪)が、支持部及び振動部にどのように分布するかのシミュレーション結果が開示されておらず、効果の程度に問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、厚み滑りモード圧電振動子を小型化する際、優れた周波数温度特性、耐侯性(耐リフロー性、エージング特性)を有する圧電振動素子、圧電振動子及び圧電発振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備えた四角形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0012】
圧電振動素子を絶縁基板に固定する際に、絶縁基板の線膨張係数と圧電振動素子の線膨張係数との差により圧電振動素子に応力が生ずる。本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の二つの端縁と並行に延びる二つの振動腕を有するL字状の支持部の二つの振動腕の交差部と、に中間部を連接して一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、中間部の振動領域寄りでは応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0013】
[適用例2]また、本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記短辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0014】
本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部近傍の長辺部位と、支持部の中間部とを、短辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力が生じるが、中間部の中央部で応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例3]また、本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記長辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0016】
本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部近傍の短辺部位と、支持部の中間部とを、長辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、中間部の振動領域寄りの端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0017】
[適用例4]また、本発明に係る圧電振動素子は、振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備え、前記長辺方向と並行に延びる前記支持腕の長さを前記圧電基板の長辺の長さの1/2以上としたことを特徴とする圧電振動素子である。
【0018】
本発明の圧電振動素子は、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の2つの端縁と並行に延びる2つの振動腕を有するL字状の支持部の中間部(交差部)と、を連接して一体化し、且つ長辺方向に延びる振動腕の長さを圧電基板の長辺の長さの1/2以上とした構成である。このような構成の圧電振動素子に発生する応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、振動領域の端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例5]本発明に係る表面実装型圧電振動子は、前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッドを上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、該素子搭載パッド上に搭載される適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電振動子である。
【0020】
パッケージ内に適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子を収容して構成した表面実装型圧電振動子は、小型で低背であると共に、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある
【0021】
[適用例6]また、本発明に係る表面実装型圧電振動子は、前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備え、前記圧電振動素子のL字状の支持部の中間部を前記枕部材と対向するように配置したことを特徴とする表面実装型圧電振動子である。
【0022】
適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の中間部に対応する絶縁基板上に、中間部と接する枕部材を設けることにより、圧電振動素子と絶縁基板との平行度が容易に保たれ、圧電振動素子4の先端部が絶縁基板に触れる虞がなくなり、圧電振動子の歩留まりが改善されるという効果がある。
【0023】
[適用例7]また、本発明に係る表面実装型圧電振動子は、前記各支持腕の先端部を前記素子搭載パッドと電気的に接着・固定したことを特徴とする適用例5又は6に記載の表面実装型圧電振動子である。
【0024】
適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の2つの支持腕の先端部と、絶縁基板に設けた素子搭載パッドとを接着・固定することにより、圧電振動素子の振動領域における応力レベルは極めて小さく、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0025】
[適用例8]本発明に係る表面実装型圧電発振器は、適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備えると共に他の部位にIC部品搭載パッドを備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記IC部品搭載パッドに電気的に接続され且つ発振回路を搭載したIC部品と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドと前記IC部品搭載パッドとの間を導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電発振器である。
【0026】
適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、発振回路及び補償回路等を有するIC部品と、前記圧電振動素子及び前記IC部品を収容するパッケージと、を備えた表面実装型圧電発振器を構成することにより、周波数温度補償された出力が得られると共に、エージング特性も良好であり、且つ小型化、低背化に適した表面実装型圧電発振器がえられるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る圧電振動子の構成を示した概略図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図、(c)圧電振動素子の平面図。
【図2】パッケージの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図3】本発明と従来例とを比較する概略図であり、(a)、(b)は従来例の圧電振動素子の平面図、(c)、(d)は本発明の圧電振動素子の平面図。
【図4】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は応力分布を示す概略斜視図。
【図5】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は応力分布を示す概略斜視図。
【図6】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は応力分布を示す概略斜視図。
【図7】(a)は圧電振動素子の平面図であり、(b)はシミュレーションより求めた応力分布を示す概略斜視図。
【図8】(a)は圧電振動素子の平面図であり、(b)はシミュレーションより求めた応力分布を示す概略斜視図。
【図9】本発明の圧電振動素子の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)はシミュレーションより求めた応力分布を示す概略斜視図。
【図10】本発明の圧電発振器の構成を示す断面図。
【図11】(a)は従来例の水晶片の構成を示す平面図、(b)は組立分解図。
【図12】従来例の音叉型圧電振動片の構成を示す平面図。
【図13】(a)は従来例の水晶振動素子、(b)は小型化した水晶振動素子の平面図。
【図14】(a)は従来例の水晶振動素子、(b)は小型化した水晶振動素子の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る厚み滑り振動圧電振動子(以降、圧電振動子と称す)1の構成を示す図であり、同図(a)は蓋部材を除いた斜視図、同図(b)はP−P断面図、同図(c)は厚み滑り振動圧電振動素子(以降、圧電振動素子と称す)4の平面図である。
圧電振動子1は、水晶基板等の圧電基板の表裏面に励振電極が形成された圧電振動素子4と、圧電振動素子4を収容するパッケージ(絶縁基板)本体20と、パッケージ本体20を気密封止するための蓋部材35と、を備えている。
【0029】
圧電振動素子4は、図1(c)に示すように、振動領域を備えた四角形(本例では矩形)の圧電基板5と、圧電基板5の振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極15a、15b(励振電極15bは圧電基板5の裏面に形成)と、を備えている。更に、圧電基板5の一つの角隅部に中間部(屈曲部)7が連接一体化され、この中間部7から圧電基板5の2つの端縁5a、5bと離間しつつ並行に延びる2本の支持腕9a、9bを備えたL字状の支持部9と、各励振電極15a、15bから支持腕9a、9bの表裏面に沿って夫々延びるリード電極17a、17b(リード電極17bは支持腕9bの裏面に形成)と、を備えている。
【0030】
圧電基板5は、例えば水晶の電気軸(X軸)の回りに約35°回転して切り出したATカット水晶基板を用いる。ATカットウエハーをラッピング装置で所定の周波数まで研磨し、フッ化アンモニウムのエッチング液を用いて周波数を微調整した後、蒸着、或いはスパッタリングで金属膜(例えばクロムを下地とした金の薄膜)を両面に形成する。このウエハーにフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工を適用して、圧電基板5と、2本の支持腕9a、9bがほぼ直角に交わるL字状の支持部9と、圧電基板5との一つの角隅部とL字状の支持部9の角隅部(支持腕9a、9bの交差部)とを連接する中間部7と、を一体的に形成する。形成された基板に蒸着、或いはスパッタリングで励振電極15a、15b及びリード電極17a、17bを成膜して圧電振動素子4を構成する。
【0031】
図2は、パッケージ本体20の構成を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)はQ−Q断面図である。
パッケージ本体20は、例えば、図2(b)に示すように、矩形の箱状に形成されている。具体的には、パッケージ本体(絶縁基板)20は、絶縁材料から成る板状の第1の基板21と、板状の第2の基板22と、環状の第3の基板23とを積層して形成されている。例えば、各基板21、22、23を酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートから構成し、これらを積層してから焼結することにより製造する。図2(b)に示した例では、第1の基板21の外部底面に複数の実装端子25が形成されている。
第3の基板23は中央部が除去された環状をなしており、第3の基板23の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング24が形成されている。
【0032】
第3の基板23と第2の基板22とにより、圧電振動素子4を収容する凹部が絶縁基板上面に形成されている。第2の基板22の上面の所定の位置には、実装端子25と導体26により電気的に導通する複数の素子搭載パッド27a、27bと、何れの実装端子25とも非導通の枕部材28が設けられている。
素子搭載パッド27a、27bは、圧電振動素子4を載置した際に支持腕9a、9bの先端部と対応するように配置されている。また、枕部材28は、圧電基板5の一つの角隅部と、L字状の支持部9の中間部7と対応するように配置されている。
【0033】
圧電振動子1は、パッケージ本体20の素子搭載パッド27a、27b上に導電性接着剤30、例えばエポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ビスマレイミド系接着剤の何れかを適量塗布し、その上に圧電振動素子4を載置して軽く押さえることにより組み立てる。
この際、枕部材28に中間部7が接するようになるため、パッケージ本体20の第2の基板22の上面と、圧電振動子1の圧電基板5の主面とがほぼ平行に保たれる。
パッケージ本体20に圧電振動素子4を搭載した状態で導電性接着剤30を硬化させるために、所定温度の高温炉に所定の時間入れる。その後、真空装置の中で圧電振動子1の周波数を微調整し、アニール処理を施した後、蓋部材35、例えばNiメッキのコバール材を用い、パッケージ本体20の上面に形成したシールリング24にシーム溶接してパッケージ内部を気密とし、圧電振動子1を構成する。
パッケージ内は不活性ガス、例えば窒素を封入してよいし、真空にしてもよい。
【0034】
図1では四角形の圧電基板5の例を示したが、平面の形状は四角形に限る必要はなく、多角形、円形、楕円形、矩形の両端に半円形を2つ付加した長円形であってもよい。また、圧電基板5にC面取りが施されていてもよい。
また、厚み方向の形状は、平板状に限るものではなく、メサ型、逆メサ型でもよい。ただ、逆メサ型の矩形圧電基板を形成する際には、基板の長辺方向が水晶のZ’軸となるように設定するとよい。
また、圧電基板5の振動領域に形成した励振電極15a、15bの形状として、矩形電極の例を示したが、円形、楕円形、長円形であってもよい。
【0035】
次に、厚み振動の圧電振動素子4を小型化する際に問題になるのは、支持に起因する応力を如何に低減するかと、長辺(X軸)方向の長さ寸法に起因する高次屈曲振動を如何に避けるかである。
本発明に係る圧電振動素子4の特徴を、図3を用いて説明する。図3(a)は従来一般的に用いられている圧電基板5の形状(矩形)であり、圧電基板5の隣接する2つの角隅部を導電性接着剤30で接着・固定した構造である。この構造は、接着剤30の固定に起因して圧電基板5に応力が生じ、小型化を図る場合に問題がある。
図3(b)は、特許文献1に開示された構造であり、圧電基板5の端部寄りの対向する2つの端縁に夫々対向するように両側から切り込みを入れた構成である。この構造では、長辺(X軸)方向の寸法A、Bに起因する二種類の高次屈曲振動が励起されるため、このスプリアスを抑圧するのに難がある。
【0036】
図3(c)、(d)は本発明の一例にかかる構造である。図3(c)では圧電基板5の一つの角隅部と、L字状の支持部9の中間部(屈曲部)7、つまり支持腕9aと9bとの交差部とを一体的に連結した構造である。この構造では圧電基板のX軸方向の長さAに起因する高次屈曲振動はほぼ1種類となる。
また、図3(d)では圧電基板5の角隅部と、L字状の支持部9の中間部7とが、角隅部寄りの短辺(Z’軸方)5bの部位と一体的に連結された構造をしている。この構造ではX軸方向の長さに起因する高次屈曲振動は1種類となる。
【0037】
図3(c)、(d)に示した構造を採用することにより、X軸方向の長さに起因する高次屈曲振動は1種類となり、圧電振動素子4を小型化する際に、主振動と高次屈曲振動との結合が比較的避け易くなる。
次に、圧電振動素子4の支持腕9a、9bの先端部(自由端側)を、絶縁基板上で導電性接着剤30を用いて接着・固定した際に生じる応力(∝歪)を求めるために、有限要素法を用いてシミュレーションした。接着剤30を硬化させるには高温、例えば180℃に所定の時間保持する必要がある。高温状態では圧電基板5も絶縁基板も共に膨張し、接着剤30も軟化するので、圧電基板5には応力は生じていない。圧電基板5と絶縁基板との温度が、常温(25℃)に戻ると、絶縁基板の線膨張係数と、圧電基板5の線膨張係数との差により、接着・固定部より生じる応力が支持部9を経由して圧電基板5にまで広がる。
【0038】
図4(a)は、圧電振動素子4を絶縁基板上にマウントした状態を示す平面図であり、圧電振動素子4は、支持腕9a、9bの先端部で絶縁基板に固定されている。以下、圧電振動素子4に生じる応力分布を求めるシミュレーションでは、一例として矩形の圧電基板5を用い、長辺(X軸方向)5aの長さを850μm、短辺(Z’軸方向)5bの長さを400μm、厚さ(Y’軸方向)を64μmとした。
図4(b)は圧電振動素子4の形状と、それに生じた応力の分布とを示す斜視図である。圧電振動素子4は、長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板5と、L字状の支持部9と、圧電基板5の一つの角隅部とL字状の支持部9の中間部(支持腕9a、9bの交差部)7と、を一体的に形成した圧電振動素子4である。
また、図4(b)では、励振電極15a、15bと、リード電極17a、17bを省略しており、厚み方向の応力分布を示すために、厚み寸法を誇張して描いている。支持腕9a、9bの長さは、夫々圧電基板5の長辺、短辺の長さとほぼ等しく設定されている。また、各部材に生じる応力の大きさ(応力レベル)は、図の複雑化を避けるため、最大応力レベルIから最小応力レベルVの五段階(I、II、III、IV、V)で表示してある。
【0039】
図4(b)に示すような形状の圧電振動素子4の場合、支持腕9a、9bに生じる応力レベルは、最大応力レベルIであり、長辺方向(X軸方向)に延びる支持腕9aの先端部寄りの部位で、応力レベルがIIIからIVに変わる菱形状の小領域S1が存在する。
また、L字状の支持部9の中間部7(C2)では先端に向け、応力レベルIから応力レベルVに急激に減少している。中間部7の中央領域Jでは同心円状に応力レベルIからVに急激に変化する小さな領域が存在する。また、中間部7の中央部に応力レベルが最大応力レベルIから最小応力レベルVに急激に変化する小さな円形状の領域がある。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7から圧電基板5にかけて、最大応力レベルIから最小応力レベルVに急激に変化する。そのため、圧電基板5の振動領域では応力レベルが最小応力レベルVとなることがシミュレーションの結果、判明した。つまり、図4に示す形状の圧電振動素子4は、振動領域に発生する応力は極めて小さく、優れた振動素子であることが判明した。
【0040】
次に、図5(a)は、他の実施形態に係る圧電振動素子4のマウント状態を示す平面図であり、圧電振動素子4は、支持腕9a、9bの先端部で絶縁基板上の素子搭載パッド上に固定されている。図5(b)は圧電振動素子4の形状と、それに生じた応力の分布とを示す斜視図である。圧電振動素子4は、圧電基板5の一つの角隅部と、短辺方向(Z’軸方向)に並行な支持腕9bとが、長辺(X軸)と並行に延びる連接部8により支持部9の中間部7と連接され一体的に形成された圧電振動素子4である。支持腕9a、9bは夫々圧電基板5の長辺、短辺の長さとほぼ等しく設定されている。
【0041】
長辺(X軸)方向に並行に延びる連接部8により、圧電基板の一つの角隅部と支持腕9bとが連結された構造の圧電振動素子4の場合、支持腕9a、9bはほぼ最大応力レベルIであるが、長尺の支持腕9aの中央部より先端部寄りの部位で、応力レベルがからVに変化する大きな菱形状の領域S2が存在する。また中間部7と短尺の支持腕9bとが連接する領域S3では、応力レベルがIからIVに変化する領域が存在する。L字状の支持部9の中間部7(C2)では先端に向け、応力レベルIから応力レベルVに急激に減少しているが、図4(b)に示す構造のものより変化する領域は小さい。
圧電基板5の一つの端縁と連結部8とが連接する領域C1では、連結部8から圧電基板5にかけて、最大応力レベルIからIVに複雑に変化している。連結部8と圧電基板5との境界近辺では応力レベルがIVになり、圧電基板5の振動領域では応力レベルは最小応力レベルVである。図5に示す形状の圧電振動素子4は、振動領域に発生する応力は極めて小さく、優れた振動素子であるが、長辺(X軸)方向の二つの長さに起因する高次屈曲振動を避けるように設計する必要がある。
【0042】
図6(a)は、他の実施形態に係る圧電振動素子4のマウントの状態を示す平面図であり、圧電振動素子4は、支持腕9a、9bの先端部で絶縁基板に固定されている。図6(b)は、圧電振動素子4の形状と、それに生じた応力の分布とを示す斜視図である。長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電振動素子4は、圧電基板5の一つの角隅部と、長辺方向(X軸方向)に延びる長尺の支持腕9aとが、短辺(Z’軸)5bと並行に延びる連結部8によって連接され一体的に形成された圧電振動素子4である。支持腕9a、9bは夫々圧電基板5の長辺5a、短辺5bの長さとほぼ等しく設定されている。
【0043】
圧電基板5と支持部9とを連結する連結部8が短辺(Z’軸)方向と並行に形成された圧電振動素子4の場合、支持腕9a、9bに生じる応力は、ほぼ最大応力レベルIの領域であるが、支持腕9aの中央部より先端部寄りの部位で、応力レベルがIIIからVに変化する菱形状の領域S2が存在する。L字状の支持部9の中間部7(C2)では先端に向け、応力レベルIから応力レベルVに急激に減少する極めて小さい領域がある。また、支持腕9bの中央部には応力レベルIからIVまで急激に変化する菱形状の領域S3が存在する。
圧電基板5の一つの端縁と連結部8とが連接する部位では、連結部8のほぼ中央で長辺(X軸)方向に沿って、応力レベルが最大応力レベルIから急激に最小応力レベルVに変化している。圧電基板5の振動領域では応力レベルは最小応力レベルVである。図6に示す形状の圧電振動素子4では、振動領域に生ずる応力レベルは最小レベルのVであり、優れた振動素子であることが判明した。
【0044】
次に、図7、図8及び図9に示すように、長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板5の一つの角隅部と、圧電基板5の2つの端縁と並行に延びる2つの振動腕9a、9bを有するL字状の支持部9の中間部(交差部)7と、を連接して一体化した圧電振動素子4において、支持腕9aの長さを変化させた場合の応力分布の変化についてシミュレーションにより求めた。支持腕9bの長さは圧電基板5の短辺(Z’軸)長さとほぼ等しくし、支持腕9aの長さを、長辺の長さより短く、100μm、200μm、300μmと変化させた絶縁基板上に圧電振動素子4をマウントする部位は、図7(a)、図8(a)、図9(a)の平面図に示すように支持腕9a、9bの先端部とした。
【0045】
図7(b)は支持腕9aの長さを100μmとした場合に、圧電振動素子4上に生じる応力分布を示した斜視図である。支持腕9a、9bのほとんどの部位に最大応力Iの領域が広がり、L字状支持部9の角隅領域C2では先端部に向けて最大応力Iから最小応力Vまで変化している。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7から圧電基板5の角隅部にかけて、最大応力レベルIから応力レベルII、III、IVと緩やかに変化している。応力レベルIVの領域は圧電基板5の振動領域の一部まで広がっており、圧電振動素子4の振動変位に影響し、この形状の圧電振動素子を用いて振動子を構成した場合に電気的特性を劣化させる虞がある。
【0046】
図8(b)は、支持腕9aの長さを200μmとした場合、圧電振動素子4上に生じる応力分布を示した斜視図である。支持腕9a、9bのほとんどの部位に最大応力Iの領域が広がり、L字状支持部9の角隅領域C2では最大応力Iから最小応力Vまで変化していが、図7(b)の領域C2より小さくなっている。また、中間部7の中央部に応力レベルが円形に変化する小さな領域が存在する。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7から圧電基板5の角隅部にかけて、応力レベルが最大応力レベルIからII、IIIと急激に変化している。応力レベルIVは圧電基板5の振動領域の一部まで広がっている。
【0047】
図9(b)は、支持腕9aの長さを300μmとした場合、圧電振動素子4上に生じる応力分布を示した斜視図である。支持腕9a、9bのほとんどの領域に最大応力Iの領域が広がり、L字状支持部9の角隅領域C2では先端部に向かって最大応力Iから最小応力Vまで変化しているが、図8(b)の領域C2よりも小さくなっている。また、中間部7の中央部に応力レベルが円形に変化する小さな領域が存在する。
圧電基板5の角隅部と中間部7とが連接する領域C1では、中間部7と圧電基板5の角隅部とが接続する部位で、最大応力レベルIから応力レベルII、IIIと急激に変化している。応力レベルIVの領域は圧電基板5の一部まで広がっているが、振動領域にかかる応力レベルIVの部分は小さく、圧電振動素子4を振動子とした場合、電気的特性に及ぼす影響は極めて小さいと推定される。
以上の説明では、水晶基板を用いて説明したが、圧電基板としては、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板、ランガサイト基板等を用いてもよい。
【0048】
圧電振動素子4を材料が異なる絶縁基板5上に固定する際に、絶縁基板の線膨張係数と圧電振動素子の線膨張係数との差により圧電振動素子に応力が生ずる。本発明の圧電振動素子4は、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の二つの端縁と並行に延びる二つの振動腕を有するL字状の支持部の中間部(二つの腕部の交差部)とを連接して一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、中間部の振動領域寄りでは応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電振動素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0049】
本発明の一つの実施形態に係る圧電振動素子4は、図6に示すように、圧電基板の一つの角隅部近傍の長辺部位と、支持部の中間部とを、短辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力が生じるが、中間部の中央部で応力レベルは急激に減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0050】
本発明の他の実施形態に係る圧電振動素子4は、図5に示すように、圧電基板の一つの角隅部近傍の短辺部位と、支持部の中間部とを、長辺と並行な連結部で連接一体化した構成である。このような構成の圧電振動素子に生ずる応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、中間部の振動領域寄りの端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0051】
本発明の他の実施形態に係る圧電振動素子4は、図9に示すように、圧電基板の一つの角隅部と、圧電基板の2つの端縁と並行に延びる2つの振動腕を有するL字状の支持部の中間部(交差部)と、を連接して一体化し、且つ長辺方向に延びる振動腕の長さを圧電基板の長辺の長さの1/2以上とした構成である。このような構成の圧電振動素子に発生する応力分布をシミュレーションにより求めると、支持部には大きな応力レベルが生じるが、振動領域の端部までに応力レベルが減少し、圧電基板の振動領域に生じる応力レベルは極めて小さくなる。このような構成の圧電素子を用いて圧電振動子を構成すると、例えば周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0052】
パッケージ内に圧電振動素子4を収容して構成した表面実装型厚み滑り圧電振動子は、小型で低背であると共に、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
上記の圧電振動素子4の中間部7に対応する絶縁基板上に、中間部7と接する枕部材28を設けることにより、圧電振動素子4と絶縁基板との平行度が容易に保たれ、圧電振動素子4の先端部が絶縁基板に触れる虞がなくなり、圧電振動子の歩留まりが改善されるという効果がある。
上記の圧電振動素子4の2つの支持腕の先端部と、絶縁基板に設けた素子搭載パッドとを接着・固定することにより、圧電振動素子4の振動領域における応力レベルは極めて小さくなり、周波数温度特性、CI(クリスタルインピーダンス)、周波数再現性、エージング等の優れた電気的特性を有する圧電振動子が得られるという効果がある。
【0053】
図10は本発明に係る表面実装型圧電発振器3の構成を示す断面図である。表面実装型圧電発振器3は、本発明の実施形態に係る圧電振動素子4と、パッケージ本体(絶縁基板)20aと、IC部品38と、蓋部材35と、を備えている。
パッケージ本体(絶縁基板)20aは、圧電振動素子4の各リード電極17a、17bと電気的に接続される素子搭載パッド27a、27b、及び何れの実装端子とも非導通の枕材28を上面に備えると共に、他の部位にIC部品搭載パッド29と、外部に実装端子を備えている。IC部品38は、発振回路、増幅回路、温度補償回路等を有している。
IC部品38は、IC部品搭載パッド29に金属バンプ等を用いて電気的に接続され、素子搭載パッド27a、27b、と、IC部品搭載パッド29と、実装端子25と、は導体26により導通が図られている。
上記の圧電振動素子4と、発振回路及び補償回路等を有するIC部品38と、圧電振動素子4及びIC部品38を収容するパッケージ20aと、を備えた表面実装型圧電発振器を構成することにより、周波数温度補償された出力が得られると共に、エージング特性も良好であり、且つ小型化、低背化に適した表面実装型圧電発振器が得られるという効果がある。
【符号の説明】
【0054】
1…圧電振動子、3…圧電発振器、4…圧電振動素子、5…圧電基板、7…中間部、8…連結部、9…支持部、9a、9b…支持腕、15a、15b…励振電極、17a、17b…リード電極、20…パッケージ本体、21、22、23…絶縁基板、24…シールリング、25…実装端子、26…導体、27a、27b…素子搭載パッド、28…枕部材、29…IC部品搭載パッド、30…導電性接着剤、35…蓋部材、36…金属バンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動領域を備えた四角形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記短辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項3】
振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記長辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項4】
振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備え、前記長辺方向と並行に延びる前記支持腕の長さを前記圧電基板の長辺の長さの1/2以上としたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項5】
前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッドを上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、該素子搭載パッド上に搭載される請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電振動子。
【請求項6】
前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備え、
前記圧電振動素子のL字状の支持部の中間部を前記枕部材と対向するように配置したことを特徴とする表面実装型圧電振動子。
【請求項7】
前記各支持腕の先端部を前記素子搭載パッドと電気的に接着・固定したことを特徴とする請求項5又は6に記載の表面実装型圧電振動子。
【請求項8】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備えると共に他の部位にIC部品搭載パッドを備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記IC部品搭載パッドに電気的に接続され且つ発振回路を搭載したIC部品と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドと前記IC部品搭載パッドとの間を導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項1】
振動領域を備えた四角形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記短辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項3】
振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に近い前記長辺に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項4】
振動領域を備え長辺方向をX軸、短辺方向をZ’軸とした矩形の圧電基板と、該圧電基板の前記振動領域の表裏両面に夫々成膜された励振電極と、前記圧電基板の一つの角隅部に中間部を連接一体化されて該中間部から前記圧電基板の2つの端縁と離間しつつ並行に延びる2本の支持腕を備えたL字状の支持部と、各励振電極から前記各支持腕に沿って夫々延びるリード電極と、を備え、前記長辺方向と並行に延びる前記支持腕の長さを前記圧電基板の長辺の長さの1/2以上としたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項5】
前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッドを上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、該素子搭載パッド上に搭載される請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電振動子。
【請求項6】
前記圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドとを導通する導体と、を備え、
前記圧電振動素子のL字状の支持部の中間部を前記枕部材と対向するように配置したことを特徴とする表面実装型圧電振動子。
【請求項7】
前記各支持腕の先端部を前記素子搭載パッドと電気的に接着・固定したことを特徴とする請求項5又は6に記載の表面実装型圧電振動子。
【請求項8】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子の各リード電極と電気的に接続される素子搭載パッド、及び何れの前記実装端子とも非導通の枕部材を上面に備えると共に他の部位にIC部品搭載パッドを備え、且つ外部に実装端子を備えた絶縁基板と、前記素子搭載パッド上に搭載される請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を気密封止する蓋部材と、前記IC部品搭載パッドに電気的に接続され且つ発振回路を搭載したIC部品と、前記各実装端子と前記各素子搭載パッドと前記IC部品搭載パッドとの間を導通する導体と、を備えたことを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−74807(P2012−74807A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216559(P2010−216559)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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