説明

圧電発振器、センサ及びマルチセンサ

【課題】生産性に優れるとともに、さらなる小型化が可能な、圧電発振器及びセンサ並びにマルチセンサの提供。
【解決手段】生産性に優れるとともに、さらなる小型化が可能な、圧電発振器及びセンサ並びにマルチセンサは、少なくとも振動部11と基部12とを有する水晶基板10と、振動部11に形成された励振電極14と、基部12に形成された発振回路15とを備え、発振回路15は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンからなる薄膜トランジスタを含んで形成されるとともに、励振電極14と接続していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電発振器及び圧電発振器を用いたセンサ、並びにマルチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化の進展に伴ない、電子機器に搭載される水晶発振器などの圧電発振器に対して小型化の要求が高まっている。
この要求にこたえるべく、水晶振動体と発振回路を構成する電子部品とを一つの容器体に収容した水晶発振器の構成が知られている(特許文献1参照)。
また、圧電発振器を用いたセンサについても同様に小型化の要求があり、小型化を達成すべく、圧電振動片とICチップとを一つの平板に接合するとともに両者を電気的に接続し、圧電振動片に吸着された特定物質を周波数の変化量で検出する質量測定チップの構成が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−75120号公報
【特許文献2】特開2004−264255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている水晶発振器(以下、圧電発振器という)では、水晶振動体(以下、圧電基板という)と発振回路を構成する電子部品とが一つの容器体(以下、パッケージという)に収容されているものの、圧電基板と電子部品とがパッケージ内の別々のキャビティに収容されている。つまりこの構成では、圧電基板を収納するスペースと電子部品を収納するスペースとがパッケージ内に別々に必要なことから、さらなる小型化が困難である。
また、電子部品がディスクリート部品であるとともに、多数備えられているため製造工数が増え、生産性が悪かった。また、一般的にディスクリート部品は厚く、薄型化が困難であった。
さらに、複数のディスクリート部品を配線するための回路パターンも複雑化してしまうため、回路パターン間で電磁気的な結合を生じ、性能が劣化してしまう恐れがあった。
【0005】
また、上記特許文献2に開示されている質量測定チップ(以下、センサという)についても、圧電振動片と発振回路を構成するICチップとが、別々に平板に接合されている構成であるため、製造効率が良いとはいい難かった。また、平板上に、圧電振動片を搭載する構成であるため、薄型化が困難であった。
【0006】
本発明は、上記の課題に着目したものであり、生産性に優れた圧電発振器、センサ及びマルチセンサを提供することを目的の一つとする。また、小型の圧電発振器、センサ、及びマルチセンサを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る圧電発振器は、少なくとも振動部と基部とを有する圧電基板と、前記振動部に形成された励振電極と、前記基部に形成された発振回路とを備え、前記発振回路は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンからなる薄膜トランジスタを含んで形成されるとともに、前記励振電極と接続していることを特徴とする。
【0008】
上記によれば、圧電発振器は、圧電基板に励振電極と発振回路とが形成されたことにより、圧電基板と発振回路とが一体化されるので、スペース効率が向上し小型化できる。
また、圧電発振器は、圧電基板と発振回路とが一体化されることにより、部品点数が少なくなり製造工数が減少するので生産性が向上する。
さらに、圧電発振器は、圧電基板と発振回路とが一体化されることにより、励振電極と発振回路とが短い距離で接続されるので、接続パターン間の電磁気的な障害が抑制され高性能化が可能である。
【0009】
上記の発明に係る圧電発振器は、前記圧電基板が、ATカット水晶基板であることを特徴とする。
【0010】
上記によれば、圧電発振器は、圧電基板がATカット水晶基板であることにより、周囲の温度変化に対する周波数変化が少なく、厚さを薄くすることで高周波数化が可能なので、温度特性が良好な高周波数発振器を容易に実現できる。
【0011】
上記の発明に係る圧電発振器は、前記圧電基板における一方の主面側には、前記発振回路と前記励振電極とが形成され、他方の主面側には、前記励振電極と対向する共通電極が形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記によれば、圧電発振器は、圧電基板の一方の主面側に発振回路と励振電極とが形成されたことにより、発振回路と励振電極との接続が片面配線で済むので配線が容易である。
また、圧電発振器は、発振回路と励振電極とが片面配線により短い距離で接続されるので、配線パターン間の電磁気的な障害がより抑制され高性能化が可能である。
【0013】
上記の発明に係る圧電発振器は、前記圧電基板の、前記一方の主面側において前記振動部が凹状に形成されたことを特徴とする。
【0014】
上記によれば、圧電発振器は、圧電基板の振動部が凹状に形成されたことにより、振動部の外周の厚さは変えずに内側の厚さを薄くできるので、圧電基板の強度を維持しつつ高周波数化が可能となる。
【0015】
本発明に係るセンサは、少なくとも振動部と基部とを有する圧電基板と、前記振動部に形成された励振電極と、前記基部に形成された発振回路と、前記振動部に形成され、選択された物質の吸着により質量が増加する感応膜とを備え、前記発振回路は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンからなる薄膜トランジスタを含んで形成され、前記励振電極と接続していることを特徴とする。
【0016】
上記によれば、センサは、圧電基板に励振電極と発振回路とが形成され、圧電基板の振動部に感応膜が形成されていることにより、選択された物質の吸着による感応膜の質量増加で振動部の周波数が変化するので、選択された物質を検出することができる。
また、センサは、圧電基板に励振電極と発振回路と感応膜とが形成されていることにより、圧電基板と励振電極と発振回路と感応膜とが一体化されるので、スペース効率が向上し小型化できる。
また、センサは、圧電基板と励振電極と発振回路と感応膜とが一体化されることにより、部品点数が少なくなり製造工数が減少するので生産性が向上する。
さらに、センサは、圧電基板と励振電極と発振回路と感応膜とが一体化されることにより、励振電極と発振回路とが短い距離で接続されるので、接続パターン間の電磁気的な障害が抑制され高性能化が可能である。
【0017】
上記の発明に係るセンサは、前記圧電基板が、ATカット水晶基板であることを特徴とする。
【0018】
上記によれば、センサは、圧電基板がATカット水晶基板であることで、厚さを薄くすることにより高周波数化が可能で温度特性も良い。これにより、センサは、選択された物質の吸着による周波数の変化範囲を広くできるとともに、周囲の温度変化に伴なう周波数の変化量を抑制できるので、選択された物質の検出感度、検出精度が向上する。
【0019】
上記の発明に係るセンサは、前記圧電基板における一方の主面側には、前記発振回路と前記励振電極とが形成され、他方の主面側には、前記励振電極と対向する共通電極が形成され、前記感応膜は、前記共通電極を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0020】
上記によれば、センサは、感応膜が共通電極を覆うように形成されていることにより、選択された物質が広範囲に吸着されるので、周波数の変化量が大きくなり選択された物質の検出感度が向上する。
また、センサは、発振回路が形成された一方の主面側に励振電極が形成されたことにより、発振回路と励振電極との接続が片面配線で済むので配線が容易である。
また、センサは、発振回路と励振電極とが片面配線により短い距離で接続されるので、配線パターン間の電磁気的な障害がより抑制され高性能化が可能である。
【0021】
上記の発明に係るセンサは、前記一方の主面側において前記振動部が凹状に形成されていることを特徴とする。
【0022】
上記によれば、センサは、圧電基板の振動部が凹状に形成されたことにより、振動部の外周の厚さは変えずに内側の厚さを薄くできるので、圧電基板の強度を維持しつつ高周波数化が可能となる。これにより、センサは、選択された物質の吸着による周波数の変化量が大きくなるので、選択された物質の検出感度が向上する。
【0023】
上記の発明に係るセンサは、前記圧電基板を保護するための蓋部材をさらに備え、前記蓋部材は、前記振動部と前記発振回路の一部とを覆うとともに、少なくとも周縁部が前記圧電基板に対して接着され、前記蓋部材と、前記振動部の凹状部とにより形成された空間は、密閉されていることを特徴とする。
【0024】
上記によれば、センサは、圧電基板の振動部と発振回路とが、蓋部材により覆われている。これにより、センサは、振動部の励振電極及び発振回路が外気に触れることを回避できるので、外気中に含まれる酸素または水分などによる性能劣化を抑制できる。このことから、センサは、パッケージが不要となり小型化できる。
また、センサは、振動部の凹状部が密閉されていることにより、選択された物質の吸着による周波数の変化量に、凹状部における外気物質の吸着による周波数の変化量が加わることはないので、選択された物質の検出精度が向上する。
また、センサは、振動部の凹状部と蓋部材との間に空間が形成されていることにより、振動部の振動が妨げられないので、選択された物質の検出感度を維持できる。
【0025】
上記の発明に係るセンサは、前記発振回路における外部との入出力用の接続端子が、露出していることを特徴とする。
【0026】
上記によれば、センサは、発振回路の接続端子が露出していることにより、外部機器との接続が容易に行える。
【0027】
上記の発明に係るマルチセンサは、前記センサが、大判の圧電基板に複数形成されていることを特徴とする。
【0028】
上記によれば、センサが大判の圧電基板に複数形成されることにより、マルチセンサとすることができる。また、当該マルチセンサは、大判の圧電基板を分割することにより、単一のセンサとして一括して複数製造できるので生産性が向上する。
【0029】
上記の発明に係るマルチセンサは、複数の前記センサが、それぞれに前記感応膜を備え、複数の前記感応膜は、選択的に吸着する物質がそれぞれ異なることを特徴とする。
【0030】
上記によれば、マルチセンサは、複数の感応膜が、選択的に吸着する物質がそれぞれ異なる。これにより、複数の選択された物質を一つの圧電基板で検出する小型化されたマルチセンサを提供できる。
【0031】
上記の発明に係るマルチセンサは、複数の前記センサが、それぞれに前記感応膜を備え、複数の前記感応膜には、選択的に吸着する物質が異なる感応膜が含まれていることを特徴とする。
【0032】
上記によれば、マルチセンサは、複数の感応膜が、選択的に吸着する物質が異なる感応膜が含まれている。これにより、複数の選択された物質を一つの圧電基板で検出する小型化されたマルチセンサを提供できる。また、選択された一つの物質を複数の感応膜で吸着することにより、選択された一つの物質の検出感度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る圧電発振器及び圧電発振器を用いたセンサの実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧電発振器としての水晶発振器の概略構成を示す構成図である。図1(a)は透視平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線での断面図、図1(c)は図1(a)における要部裏面図である。
図2は、水晶発振器の発振回路構成図である。
なお、図1を含む以下の各図では、構成を分かり易くするために、各構成要素の寸法比率を異ならせて表している。
【0034】
《構成》
図1に示すように、水晶発振器1は、圧電基板としての水晶基板10、パッケージ20、リッド21などを備えている。
水晶基板10は、パッケージ20の内部において基部12側が接着剤23によりパッケージ20に固定されている。接着剤23は、振動部11における振動(発振)を阻害しないように、基部12側に塗布されている。
また、リッド21は、外縁部に形成された接合材24によって、パッケージ20に固定されている。これにより、パッケージ20の内部は、気密に封止されている。
【0035】
水晶基板10は、水晶の原石を光軸に対して約35度の方向で切断して形成されたATカット水晶基板であり、振動部11と基部12とを有する。本実施形態では、好適な態様として水晶基板10の厚さを500μmとした。
水晶基板10の一方の主面13における振動部11には、一対の励振電極14が形成されている。また、基部12には、発振回路15が形成されている。
また、励振電極14と発振回路15とは、短い接続電極16により接続されている。
他方の主面17における振動部11には、一対の励振電極14に対向して共通電極18が形成されている。
なお、図1において、共通電極18は、無接続のフローティング状態(図示せず)としているが、接地しても良い。振動部11における発振の安定性を確保するためには、接地した方が良い。
【0036】
発振回路15は、水晶基板10上に低温ポリシリコンの半導体プロセスによって形成された薄膜トランジスタ(以下、TFT(Thin Film Transistor)という)を含む発振回路である。
また、発振回路15の配線パターン形成工程において、励振電極14、接続電極16が一緒に形成される。なお、励振電極14及び接続電極16は、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などを用いて形成することであっても良い。これらの電極の材質としては、金、アルミニウム、タングステン、銅などの金属薄膜、または、これらの金属の合金による金属薄膜などを用いることができる。
また、共通電極18も、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などを用いて同様に形成される。
図2は、発振回路15の回路構成の一態様を示す回路図である。
発振回路15は、2つのインバータ、2つのコンデンサ、1つの抵抗を含んで構成されている。また、図2に示された水晶振動子は、一対の励振電極14を含む振動部11を指している。なお、図2では、インバータに供給される電源ラインを省略している。
【0037】
パッケージ20は、熱膨張係数が水晶基板10に近いグリーンシートなどのセラミックから形成されている。パッケージ20には、水晶基板10の基部12の近傍に内部電極22が形成され、AuまたはAlなどの金属からなる接続ワイヤ25を用いて、ワイヤボンディングにより発振回路15と接続されている。内部電極22は、パッケージ20の底面に形成された外部電極26と接続されている。
【0038】
リッド21は、コバールなどの金属、セラミック、ガラスなど、熱膨張係数が水晶基板10に近い材質で形成されている。リッド21は、コバールリング、低融点ガラスなどからなる接合材24によりパッケージ20に接合されている。これにより、パッケージ20の内部は気密に封止されている。
【0039】
水晶発振器1は、上記のように、水晶基板10に励振電極14と発振回路15と共通電極18とが形成され、励振電極14と発振回路15とが接続電極16により接続されていることで発振器として構成されている。
なお、水晶発振器1は、共通電極18の代わりに励振電極14の一方が他方の主面17側に形成されていてもよい。
【0040】
《作用・効果》
ここで、上記のように構成された水晶発振器1の作用・効果を説明する。
まず、図示しない外部の機器などから外部電極26に電源が供給される。外部電極26に供給された電力が、内部電極22、接続ワイヤ25を介して水晶基板10の基部12に形成された発振回路15に入力される。
これにより、図2の発振回路において、励振電極14及び共通電極18に電圧が印加され、振動部11が厚みすべり振動を発振する。
【0041】
ここで、ATカット水晶基板の厚みすべり振動の場合、発振周波数は水晶基板10の振動部11の厚さtにより決まる。
振動モード次数がn(n=1,3,5,7,9,・・・)の場合、その関係式は以下のように表される。
ω=1.67×n/t(単位 ω:MHz,t:mm,n=1,3,5,7,9,・・・)
好適な態様として、水晶基板10の振動部11の厚さtを500μmとした場合について説明する。
この場合、振動モード次数が1の基本発振モードでの発振が観測されたことから、発振周波数は約3.3MHzであった。
なお、発振周波数は、3.3MHzに限定されるものではなく、振動部11の厚さtを調整することにより、所望の発振周波数を得ることができる。
【0042】
水晶発振器1にて発振した電気信号は、図2における後段のインバータの出力端子と接続する外部電極26から外部の機器などに出力される。
【0043】
上述したように、第1の実施形態の水晶発振器1は、水晶基板10に励振電極14と発振回路15とが同一プロセスによって形成されているため、振動部11を含む水晶基板10と発振回路15とが一体化され、スペース効率が向上し小型化できる。特に、発振回路15がTFTを主体とした薄膜によって形成されているため、従来技術のようにディスクリート部品を用いる必用がなく、薄型の水晶発振器1を提供することができる。
さらに、水晶基板10の振動部11自体が圧電振動片(水晶振動子)として機能するため、従来技術のように平板上に圧電振動片を搭載する必用がなく、薄型化を実現することができる。
また、水晶発振器1は、水晶基板10と発振回路15とが一体化されることにより、部品点数が少なくなり製造工数が減少するので生産性が向上する。
【0044】
さらに、水晶基板10と発振回路15とが一体化されることにより、励振電極14と発振回路15とが短い距離で接続されるので、接続電極16間のインピーダンスのアンマッチングなどの電磁気的な障害が抑制され性能が向上する。
また、水晶基板10の一方の主面13側に発振回路15と一対の励振電極14とを形成したことにより、発振回路15と励振電極14との接続が片面配線で済むので配線が容易である。
【0045】
また、発振回路15と励振電極14と接続電極16とを、同一の半導体プロセスによって形成することが可能なため、生産効率が高く、生産性に優れている。
【0046】
また、水晶基板10としてATカット水晶基板を用いたことにより、常温付近に変極点をもった3次関数の周波数−温度特性を有し、振動部11の厚さを薄くすることで高周波数化が可能なことから、厚さの設定によって所期の発振周波数を得られるとともに、温度特性が良好な高周波数発振器を容易に実現することができる。
【0047】
また、水晶発振器1は、パッケージ20とリッド21とによる収納空間に密閉されているため、外部環境による影響を受け難く、励振電極14の劣化を防止することができるため、常に安定した発振をすることができる。
さらに、当該収納空間を真空にするか、または、窒素や、ヘリウム、アルゴンガスなどの不活性ガスを封入することにより、外部環境の影響による励振電極14の劣化をより抑制することができる。
【0048】
なお、第1の実施形態の水晶発振器1は、発振器が組み込まれた小型発振モジュールとしての応用が可能である。
【0049】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る圧電発振器を用いたセンサとしての、気相中の有機溶媒分子を検出する化学センサの概略構成を示す構成図である。図3(a)は表平面図、図3(b)は図3(a)のB−B線での断面図、図3(c)は裏平面図である。なお、図3(a)では、図面を分かり易くするために一部の構成要素を省略してある。
【0050】
《構成》
図3に示すように、化学センサ101は、圧電基板としての水晶基板110、蓋部材としての封止板121、接着剤122などを備えている。
なお、第2の実施形態の化学センサ101は、第1の実施形態の水晶発振器1と略同様の構成を有する水晶基板110において、共通電極118上に感応膜30を形成したものであり、水晶基板110は、水晶基板10と同様の半導体プロセスによって製造されている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0051】
図3(b)において水晶基板110の一方の主面113側には、接着剤122により封止板121が固定されている。接着剤122は、振動部111における振動(発振)を阻害しないように、基部12側及び封止板121の周縁部を中心に塗布されている。
【0052】
水晶基板110は、水晶の原石を光軸に対して約35度の方向で切断して形成されたATカット水晶基板であり、振動部111と基部112とを有する。本実施形態では、好適な態様として水晶基板110の厚さを500μmとした。
また、水晶基板110は、一方の主面113側において、振動部111が凹状に形成されている。本実施形態では、好適な態様として振動部111の厚さt1を、55μmとした。
【0053】
水晶基板110の一方の主面113における振動部111には、一対の励振電極114が形成されている。また、基部112には、発振回路115が形成されている。
ここで実施形態1の水晶基板10との相違点は、水晶基板110における振動部111が、一方の主面113において凹状に形成されていることである。つまり、振動部111を励振電極114付近のみを薄くした「逆メサ構造」としている。なお、凹形状は、フォトリソグラフィ技術や、エッチング技術などを用いて形成することができる。
【0054】
また、一対の励振電極114は、凹状に形成された振動部111の底面111aに形成され、励振電極114と発振回路115とを接続する接続電極116は、底面111aから発振回路115に向かう傾斜面(図3(b))に沿って形成されている。
他方の主面117における振動部111には、一対の励振電極114に対向して共通電極118が形成されている。なお、共通電極118は、無接続のフローティング状態でもかまわないが、接地させた方が振動部111の発振の安定性の点で好ましい。
【0055】
発振回路115は、水晶基板110上に低温ポリシリコンの半導体プロセスによって形成されたTFTを含む発振回路である。
また、発振回路115の配線パターン形成工程において、励振電極114、接続電極116が一緒に形成される。また、発振回路115には、外部の機器などとの入出力用の接続端子119が形成されている。
【0056】
なお、励振電極114及び接続電極116は、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などを用いて形成することであっても良い。これらの電極の材質としては、金、アルミニウム、タングステン、銅などの金属薄膜、または、これらの金属の合金による金属薄膜などを用いることができる。
また、共通電極118も、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術などを用いて同様に形成される。
【0057】
共通電極118の上には、選択された物質の吸着により質量が変化する感応膜30が共通電極118を覆うように形成されている。
感応膜30は、例えば、感応膜成分を溶剤によって希釈した液体をディスペンサを用いて塗布することによって形成する。または、当該液体をインクジェット法を用いて吐出して形成することであっても良い。また、感応膜成分をジェル状にすることにより、シルク印刷や、タンポン印刷などの印刷法によっても感応膜30を形成することができる。
【0058】
本実施形態では、感応膜30は、ポリスチレンにより形成している。ポリスチレンは、気相中のトルエン、酢酸、酢酸ブチル、アセトン、アセトアルデヒド、プロパナール、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、アンモニアなどの有機溶媒分子を吸着する性質を有しているため、感応膜30によってこれらの物質を検出することができる。
また、感応膜30は、ポリスチレンによって形成することに限定するものではなく、所望の他の物質を選択的に吸着する材質を用いても良い。
例えば、感応膜30としてポリプロピレンを用いた場合には、気相中のトルエンや、キシレンなどの分子を吸着することができる。また、感応膜30としてポリカーボネートを用いた場合には、気相中のアルデヒド分子を吸着することができる。
【0059】
封止板121は、セラミック、ガラスなど、熱膨張係数が水晶基板110に近い材質で平板状に形成されている。封止板121により、水晶基板110の一方の主面113側において、凹状部分111b及び発振回路115が接着剤122を介して封止(密閉)されている。 この際、封止板121が平板状に形成されているので、凹状部分111bと封止板121との間には空間がある。また、発振回路115に形成されている接続端子119は、封止されずに外部に露出している。
【0060】
接着剤122には、アクリル系接着剤、紫外線硬化型接着剤、低融点ガラスなどの絶縁性を有するものが用いられている。接着剤122により、水晶基板110の一方の主面113側において、凹状部分111bの周囲及び発振回路115が被覆されている。
【0061】
化学センサ101は、上記のように、水晶基板110の振動部111の凹状部分111bと発振回路115の一部とが、凹状部分111bの周囲及び発振回路115を被覆する接着剤122を介して、凹状部分111bとの間に空間を有するように形成された封止板121により封止されている。
なお、上記の空間は、窒素ガスなどの不活性ガスが封入されていてもよいし、真空でもよい。
【0062】
《作用・効果》
ここで、上記のように構成された化学センサ101の作用・効果を説明する。
まず、図示しない外部の機器などから接続端子119に電源が供給される。接続端子119に供給された電力が、水晶基板110の基部112に形成された発振回路115に入力される。
これにより、図2の発振回路において、励振電極114及び共通電極118に電圧が印加され、振動部111が厚みすべり振動を発振する。なお、この発振周波数は、随時または定期的に外部の計測機器に出力される。
【0063】
本実施形態では、好適な事例として、水晶基板110の振動部111の厚さt1を55μmに設定した。
この場合、振動モード次数が1の基本発振モードにおける発振が観測されたことから、第1の実施形態で述べた計算式により、発振周波数は約30MHzとなる。
このように、化学センサ101では、第1の実施形態の水晶発振器1と比較して高い周波数を用いている。
【0064】
ここで、ポリスチレンにより形成された感応膜30に、気相中のアルコールなどの有機溶媒分子が吸着した場合には、有機溶媒分子の吸着により感応膜30の質量が増加する。この感応膜30の質量の増加により振動部111全体の質量が増加し、発振周波数が低周波数側に変化することになる。
つまり、この発振周波数の変化を検出することにより、気相中におけるアルコールなどの検出物質の有無、または、含有量を検出することができる。
【0065】
具体的には、例えば、予め外部機器に出力周波数と検出物質の含有量との相対関係を示したLUT(Look Up Table)を記憶させておき、図2における後段のインバータの出力端子と接続する接続端子119からの出力信号の周波数(出力周波数)を測定する。そして、測定した出力周波数を当該LUTにおいて参照することにより、検出物質の含有量を引き当てる。なお、検出物質の検出方法は、この方法に限定するものではない。
【0066】
また、感応膜30の質量の変化量が同じ場合でも、振動部111の厚さt1が薄いほど、振動部111の厚さt1に対する感応膜30の質量変化の影響が大きくなり、周波数の変化量が大きくなる。このことから、本実施形態では、水晶基板110の振動部111の厚さt1を55μmまで薄くして高周波数化することにより、有機溶媒分子の検出感度を高めている。
【0067】
上述したように、第2の実施形態の化学センサ101は、水晶基板110に励振電極114と発振回路115とが形成され、水晶基板110の振動部111に感応膜30が形成されていることにより、気相中のアルコールなどの有機溶媒分子の吸着による感応膜30の質量増加で振動部111の周波数が変化する。これにより、化学センサ101は、気相中のアルコールなどの選択された物質を検出することができる。
【0068】
また、化学センサ101によれば、水晶基板110に励振電極114と発振回路115と感応膜30とが形成されていることにより、水晶基板110と励振電極114と発振回路115と感応膜30とが一体化されるので、スペース効率が向上し小型化できる。
また、化学センサ101は、水晶基板110と励振電極114と発振回路115と感応膜30とが一体化されることにより、部品点数が少なくなり製造工数が減少するので生産性が向上する。
【0069】
さらに、化学センサ101によれば、水晶基板110と励振電極114と発振回路115と感応膜30とが一体化されることにより、励振電極114と発振回路115とが短い距離で接続されるので、接続電極116間のインピーダンスのアンマッチングなどの電磁気的な障害が抑制され高性能化が可能である。
【0070】
また、化学センサ101によれば、発振回路115がTFTにより形成されているので、半導体プロセスを利用した発振回路115の製造が可能である。これにより、化学センサ101は、発振回路115の配線工程で励振電極114及び接続電極116を一緒に形成できるので生産性が向上する。
特に、発振回路115がTFTを主体とした薄膜によって形成されているため、従来技術のようにディスクリート部品を用いる必用がなく、薄型の化学センサ101を提供することができる。
さらに、水晶基板110の振動部111自体が圧電振動片(水晶振動子)として機能するため、従来技術のように平板上に圧電振動片を搭載する必用がなく、薄型化を実現することができる。
【0071】
また、化学センサ101によれば、水晶基板110がATカット水晶基板であることで、厚さを薄くすることにより高周波数化が可能で温度特性も良い。これにより、化学センサ101は、アルコールなどの有機溶媒分子の吸着による周波数の変化範囲を広くできるとともに、周囲の温度変化に伴なう周波数の変化量を抑制できるので、選択されたアルコールなどの物質の検出感度、検出精度が向上する。
【0072】
また、化学センサ101によれば、感応膜30が共通電極118を覆うように形成されたことにより、アルコールなどの有機溶媒分子が広範囲に吸着されるので、周波数の変化量が大きくなり検出感度が向上する。
また、化学センサ101によれば、発振回路115が形成された一方の主面113側に励振電極114が形成されたことにより、発振回路115と励振電極114との接続が片面配線で済むので配線が容易である。
【0073】
また、化学センサ101によれば、水晶基板110の振動部111が凹状(逆メサ構造)に形成されたことにより、振動部111の外周の厚さは変えずに内側の厚さt1を薄くできるので、水晶基板110の強度を維持しつつ高周波数化が可能である。これにより、化学センサ101は、アルコールなどの有機溶媒分子の吸着による周波数の変化量が大きくなるので、検出感度が向上する。
【0074】
また、化学センサ101によれば、水晶基板110の凹状部分111bと発振回路115とが、接着剤122を介して封止板121により封止されている。これにより、化学センサ101は、凹状部分111bの励振電極114及び発振回路115が気相に触れることを回避できるので、気相中に含まれる酸素または水分などによる性能劣化を抑制できる。このことから、化学センサ101は、特許文献2の図4に開示されているような筐体(パッケージ)が不要となる。これにより、化学センサ101は、さらに生産性が向上し小型化が可能である。
【0075】
また、化学センサ101によれば、水晶基板110の凹状部分111bが封止されていることにより、アルコールなどの有機溶媒分子の吸着による周波数の変化量に、凹状部分111bにおける気相中の他分子の吸着による周波数の変化量が加わることはないので、検出精度が向上する。
また、化学センサ101によれば、水晶基板110の凹状部分111bが、凹状部分111bとの間に空間を有するように形成された封止板121で封止されていることにより、振動部111の振動が妨げられないので、検出感度を維持できる。
【0076】
また、化学センサ101によれば、水晶基板110の凹状部分111bと封止板121との間の空間が、窒素ガスなどの不活性ガスを封入されていたり、真空になっていたりすることにより、励振電極114の劣化を抑制することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、化学センサ101を気相中のアルコールなどの有機溶媒分子の検出に用いたが、これに限定するものではなく、感応膜30の成分を適宜設定することにより、水道水、排水、水溶液などの各種液体に浸漬して、検出対象となる選択された物質の検出に用いてもよい。
この際、化学センサ101は、水晶基板110の振動部111の凹状部分111bと発振回路115とが、接着剤122及び封止板121により封止されているので、各種液体に浸漬されても振動部111と発振回路115とに影響を受けることなく、選択された物質が検出できる。
【0078】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係る圧電発振器を用いたセンサとしての、気相中の分子を検出する化学センサを、大判の圧電基板としての水晶基板に複数形成したマルチセンサの概略構成を示す構成図である。
図4(a)は表平面図、図4(b)は図4(a)のC−C線での断面図、図4(c)は裏平面図である。なお、図4(a)では、図面を分かり易くするために一部の構成要素を省略してある。
【0079】
《構成》
図4に示すように、第3の実施形態のマルチセンサ201は、第2の実施形態で説明した化学センサ101が、一つの水晶基板210に二つ形成された構成となっている。このことから、ここでは、第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0080】
マルチセンサ201は、ATカット水晶基板である水晶基板210において、振動部211に二つの凹状部分211a,211b(逆メサ構造)と二つの励振電極114a,114bと二つの共通電極118a,118bとが形成され、基部212に二つの発振回路115a,115bが形成されている。
二つの励振電極114a,114bと二つの発振回路115a,115bとは、接続電極116aにより励振電極114aが発振回路115aと接続され、接続電極116bにより励振電極114bが発振回路115bと接続されている。
【0081】
マルチセンサ201は、水晶基板210の一方の主面213側の凹状部分211a,211bと発振回路115a,115bとが、凹状部分211a,211bの周囲及び発振回路115a,115bを被覆する接着剤222を介して凹状部分211a,211bとの間に空間を有するように形成された封止板221により封止(密閉)されている。この際、接続端子119a,119bは、外部に露出している。
【0082】
マルチセンサ201は、水晶基板210の他方の主面217側の、共通電極118aを覆うように形成されている感応膜130と共通電極118bを覆うように形成されている感応膜131とが、第2の実施形態と異なる。
本実施形態では、感応膜130は、ポリプロピレンにより形成されている。ポリプロピレンは、気相中のトルエン、キシレンなどの分子を吸着する性質を有する。
また、感応膜131は、ポリカーボネートにより形成されている。ポリカーボネートは、気相中のアセトアルデヒドの分子を吸着する性質を有する。
【0083】
なお、マルチセンサ201は、図4(a)に示した2点鎖線に沿って切断することにより、二つの化学センサに分離することもできる。
また、封止板221は、予め二つに分割されて形成されていてもよい。
【0084】
《作用・効果》
ここで、上記のように構成されたマルチセンサ201の作用・効果を、図4、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態のマルチセンサ201を制御する制御回路の一例を示すブロック図である。
まず、図示しない外部の機器などから接続端子119a,119bに電源が供給される。接続端子119a,119bに供給された電力が、水晶基板210の基部112に形成された発振回路115a,115bに入力される。
【0085】
これにより、図2の発振回路において、励振電極114a,114b及び共通電極118a,118bに電圧が印加され、振動部211が厚みすべり振動を発振する。
この際、この発振周波数は、随時または定期的に接続端子119a,119bを介して発振回路115a,115bと接続されている周波数カウンタA40、周波数カウンタB41でそれぞれ計測され、メモリA42、メモリB43にそれぞれ蓄積される。
【0086】
ついで、ポリプロピレンにより形成された感応膜130に、気相中のトルエンの分子が吸着され、ポリカーボネートにより形成された感応膜131に、気相中のアセトアルデヒドの分子が吸着される。
ついで、吸着されたトルエンの分子に応じて感応膜130の質量が増加し、吸着されたアセトアルデヒドの分子に応じて感応膜131の質量が増加する。
【0087】
ついで、感応膜130の質量増加により、感応膜130が形成されている振動部211の凹状部分211aの発振周波数が低周波数側に変化し、感応膜131の質量増加により、感応膜131が形成されている振動部211の凹状部分211bの発振周波数が低周波数側に変化する。
この際、低周波数側に変化したそれぞれの発振周波数が、前述のように周波数カウンタA40、周波数カウンタB41でそれぞれ計測され、メモリA42、メモリB43にそれぞれ蓄積される。
【0088】
これにより、比較判定回路44はメモリA42、メモリB43に蓄積された周波数の経時変化からメモリA42とメモリB43に蓄えられた周波数変化量を比較し、その特徴をデータベース45に照らし合わせて気相中のトルエン及びアセトアルデヒドの検出結果を出力する。
また、データベース45には、感応膜130、感応膜131ごとに前述した出力周波数と各検出物質の含有量との相対関係を示したLUT(Look Up Table)を記憶させておいても良い。
これによれば、気相中におけるトルエン、または、アセトアルデヒドの有無に加えて、それぞれの含有量も検出することができる。
【0089】
上述したように、第3の実施形態のマルチセンサ201は、第2の実施形態で説明した効果とともに、次のような効果がある。
マルチセンサ201は、励振電極114a,114bと発振回路115a,115bと共通電極118a,118bと感応膜130,131とが一つの水晶基板210に二つ形成されることにより、一つの水晶基板210に二つのセンサが形成されたマルチセンサとすることができる。
【0090】
また、マルチセンサ201は、二つの感応膜130,131が、それぞれの感応膜130,131ごとに種類が異なる。これにより、マルチセンサ201は、それぞれの感応膜130,131ごとに吸着する物質を異ならせられるので、二つの選択された物質を一つの水晶基板210に形成された二つのセンサで検出する、小型化されたマルチセンサを提供できる。
【0091】
また、マルチセンサ201は、センサ形成後に一つの水晶基板210を二つに分割することにより、二つのセンサを一括して製造できるので生産性が向上する。
【0092】
なお、第3の実施形態のマルチセンサ201は、二つのセンサからなるマルチセンサとしたが、これに限定するものではなく、一つの水晶基板210に三つ、四つなど、さらに多くのセンサを形成してもよい。これによれば、複数の物質を1つのマルチセンサによって検出することができる。
【0093】
また、2つ以上の複数のセンサを備えるマルチセンサにおいて、同一の感応膜を有するセンサを複数設ける構成であっても良い。このマルチセンサによれば、特定の物質をより精度良く検出することが可能となる。具体的には、特に検出したい物質に対応した感応膜を持つセンサを複数設ける。これにより、例えば、複数の感応膜による検出周波数の平均値を取ることが可能となり、検出精度が向上する。また、万一、1つのセンサが壊れていたとしても、平均値を取ることにより、物質の有無を確実に検出することができる。
また、感応膜の設置位置を、例えば、マルチセンサにおける対角位置に配することにより、設置位置ごとにおける物質の含有量を検出することができる。
【0094】
前記第1の実施形態において、発振回路15と励振電極14と接続電極16とは、水晶基板10上に低温ポリシリコンの半導体プロセスによって形成されるものとしたが、これに限定するものではない。
半導体プロセスは、水晶基板10上に発振回路15を含む各部位を形成可能なプロセスであれば良く、例えば、周知のフォトリソグラフィ技術や、エッチング技術、または薄膜形成技術などを組み合わせたものであっても良い。また、これは、前記第2の実施形態及び前記第3の実施形態においても同様である。
【0095】
前記第1の実施形態において、発振回路は図2に示すような電源を印加することにより、単一の周波数を発振する発振回路15として説明したが、これに限定するものではない。
発振回路15は、水晶基板10上に低温ポリシリコンなどの所定の半導体プロセスによって形成可能な回路であれば良く、例えば、分周回路や、PLL(Phase locked loop)回路を含んだ回路により発振回路15を構成しても良い。この構成によれば、より高周波を簡便に得ることができる。また、出力周波数をプログラミング可能な水晶発信器1を提供することができる。また、これは、前記第2の実施形態及び前記第3の実施形態においても同様である。
【0096】
なお、第2の実施形態の化学センサ101、第3の実施形態のマルチセンサ201は、化学センサの他に、ニオイセンサ、ガスセンサ、バイオセンサなどとして応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施形態における水晶発振器の概略構成を示す構成図。
【図2】本発明の第1の実施形態における水晶発振器の発振回路構成図。
【図3】本発明の第2の実施形態における化学センサの概略構成を示す構成図。
【図4】本発明の第3の実施形態におけるマルチセンサの概略構成を示す構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態におけるマルチセンサの制御回路のブロック図。
【符号の説明】
【0098】
1…圧電発振器としての水晶発振器、10…圧電基板としての水晶基板、11…水晶基板の振動部、12…水晶基板の基部、13…水晶基板の一方の主面、14…励振電極、15…発振回路、16…接続電極、17…水晶基板の他方の主面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも振動部と基部とを有する圧電基板と、
前記振動部に形成された励振電極と、
前記基部に形成された発振回路とを備え、
前記発振回路は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンからなる薄膜トランジスタを含んで形成されるとともに、前記励振電極と接続していることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記圧電基板は、ATカット水晶基板であることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記圧電基板における一方の主面側には、前記発振回路と前記励振電極とが形成され、
他方の主面側には、前記励振電極と対向する共通電極が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧電発振器。
【請求項4】
前記圧電基板は、前記一方の主面側において前記振動部が凹状に形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の圧電発振器。
【請求項5】
少なくとも振動部と基部とを有する圧電基板と、
前記振動部に形成された励振電極と、
前記基部に形成された発振回路と、
前記振動部に形成され、選択された物質の吸着により質量が増加する感応膜とを備え、
前記発振回路は、ポリシリコンまたは単結晶シリコンからなる薄膜トランジスタを含んで形成され、前記励振電極と接続していることを特徴とするセンサ。
【請求項6】
前記圧電基板は、ATカット水晶基板であることを特徴とする請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記圧電基板における一方の主面側には、前記発振回路と前記励振電極とが形成され、他方の主面側には、前記励振電極と対向する共通電極が形成され、
前記感応膜は、前記共通電極を覆うように形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記一方の主面側において前記振動部が凹状に形成されていることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記圧電基板を保護するための蓋部材をさらに備え、
前記蓋部材は、前記振動部と前記発振回路の一部とを覆うとともに、少なくとも周縁部が前記圧電基板に対して接着され、
前記蓋部材と、前記振動部の凹状部とにより形成された空間は、密閉されていることを特徴とする請求項8に記載のセンサ。
【請求項10】
前記発振回路における外部との入出力用の接続端子は、露出していることを特徴とする請求項5〜請求項9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
請求項5〜請求項10のいずれか一項に記載のセンサが、大判の圧電基板に複数形成されていることを特徴とするマルチセンサ。
【請求項12】
複数の前記センサは、それぞれが前記感応膜を備え、
複数の前記感応膜は、選択的に吸着する物質がそれぞれ異なることを特徴とする請求項11に記載のマルチセンサ。
【請求項13】
複数の前記センサは、それぞれが前記感応膜を備え、
複数の前記感応膜には、選択的に吸着する物質が異なる感応膜が含まれていることを特徴とする請求項11に記載のマルチセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−236460(P2008−236460A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74126(P2007−74126)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】