説明

圧電薄膜デバイスおよびその製造方法

【課題】支持基板の小型化が可能な圧電薄膜デバイス、および、その製造方法を提供する。
【解決手段】矩形板状の単結晶基板からなる支持基板1と、支持基板1の一表面側に形成された可動部10とを備え、可動部10が、支持基板1の一表面側に立設され、支持基板1の厚み方向に直交する規定方向において離間した一対の短冊状の電極12,12と、支持基板1の一表面側に形成した圧電薄膜を用いて形成され、規定方向において一対の電極12,12間に介在する短冊状の圧電層11とを有する。また、可動部10は、一対の電極12,12および圧電層11を覆う形で支持基板1の厚み方向に板状の変位量増大部14が立設されている。一対の電極12,12間に電圧を印加していない状態で、発光デバイス(例えば、半導体レーザなど)からの光を阻止し、一対の電極12,12間に電圧を印加した状態で光を通過させることができる光スイッチを構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電薄膜デバイスおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電薄膜を用いた種々の圧電薄膜デバイス(例えば、光偏向装置、光スイッチ、流体制御デバイス、MEMSスイッチ、マイクロアクチュエータ、マイクロセンサなど)が各所で研究開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここにおいて、上記特許文献1には、図15(a)に示すように、半導体基板を用いて形成された支持基板101と、支持基板101の一表面側に形成され支持基板101に片持ち支持された可動部である圧電素子110とを備え、支持基板101に当該支持基板101の厚み方向への圧電素子110の変位空間を確保するための窓孔101aが形成され、圧電素子110のうち支持基板101の上記一表面側における窓孔101aの周部上に固定されている部位が半導体レーザ120を搭載するオプティカルベンチを構成している。
【0004】
ここにおいて、図15(a)に示す構成の光偏向装置は、圧電素子110が、支持基板101の上記一表面側に形成された下部電極111と、下部電極111における支持基板101側とは反対側に形成された圧電薄膜からなる圧電層112と、圧電層112における下部電極111側とは反対側に形成された上部電極113とで構成されており、圧電素子110のうち窓孔101の投影領域内に形成されている部位における上部電極113が半導体レーザ120からの光を偏向するミラーを兼ねている。
【0005】
しかして、図15(a)に示した構成の光偏向装置では、圧電素子110の上部電極113と下部電極111との間に電圧を印加して図15(b)に示すように圧電素子110を湾曲変形させることにより、半導体レーザ120からの光を偏向することができる(図15(b)中の一点鎖線は半導体レーザ120からの光の進行方向を示している)。なお、上記特許文献1には、圧電層112の圧電材料として、ZnOやPZTなどが例示されている。
【特許文献1】特開2002−131680号公報(段落〔0016〕−〔0028〕、および図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に開示された圧電薄膜デバイスに限らず、従来の圧電薄膜デバイスは、支持基板の厚み方向へ圧電素子を変位させる必要があるので、支持基板の厚み方向に直交する面内における圧電素子の面積および支持基板の外形サイズが大きくなり、変位量を増大させるためには上記面内における圧電素子の面積および支持基板の外形サイズを更に大きくする必要があり、マイクロマシニング技術を利用したMEMSプロセスなどを利用して製造する際のウェハ1枚当たりの収量が低下してコストアップの原因となってしまう。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、支持基板の小型化が可能な圧電薄膜デバイスおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、支持基板と、支持基板の一表面側に形成された可動部とを備え、可動部は、支持基板の前記一表面側に立設され支持基板の厚み方向に直交する規定方向において離間した一対の電極と、支持基板の前記一表面側に形成した圧電薄膜を用いて形成され前記規定方向において前記一対の電極間に介在する圧電層とを有し、前記一対の電極間に電圧を印加することにより圧電層が前記規定方向に振動もしくは変位することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、支持基板の一表面側に形成された可動部が、支持基板の一表面側に立設され支持基板の厚み方向に直交する規定方向において離間した一対の電極と、支持基板の前記一表面側に形成した圧電薄膜を用いて形成され前記規定方向において前記一対の電極間に介在する圧電層とを有し、前記一対の電極間に電圧を印加することにより圧電層が前記規定方向に振動もしくは変位するので、支持基板の厚み方向に振動もしくは変位する圧電素子を用いた圧電薄膜デバイスに比べて支持基板の小型化が可能になる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記圧電薄膜が、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した多結晶薄膜、あるいは、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した単結晶薄膜であることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前記圧電薄膜の結晶性が良く、前記規定方向への前記圧電層の変位量を大きくすることができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記圧電層は、前記一対の電極間に電圧を印加したときの変位が圧電定数d15で規定されることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、前記一対の電極間に電圧を印加したときの前記圧電層の変位が圧電定数d31や圧電定数d33で規定される場合に比べて、前記規定方向への前記圧電層の変位量を大きくすることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記支持基板は、SiもしくはMgOもしくはSrTiOからなり、前記圧電層は、鉛系圧電材料からなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記圧電層が鉛系圧電材料からなるので、前記圧電層の材料としてZnOを採用する場合に比べて前記圧電層の変位量を大きくすることが可能となり、また、前記支持基板がSiもしくはMgOもしくはSrTiOからなるので、マイクロマシニング技術を利用して製造することが可能となる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記支持基板の前記厚み方向において前記圧電層の両側に形成された一対のポーリング処理用電極を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、一対のポーリング処理用電極間に電圧を印加することにより前記圧電層の分極方向を揃えることができるので、前記圧電層の基礎となる前記圧電薄膜の成膜方法の選択肢が多くなって製造プロセスのプロセス設計が容易になり、また、前記圧電層の分極状態が経時変化した場合でも一対のポーリング処理用電極間に電圧を印加してポーリング処理を行うことにより前記圧電層の分極方向を揃えることができるので、長寿命化を図れる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5の発明において、前記可動部は、前記支持基板の前記一表面側に変位量を増大させる変位量増大部が立設されてなることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、前記圧電層が変位する際に変位量増大部も変位するので、前記一対の電極間に印加する電圧を増加させることなく前記可動部の変位量を増大させることができる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の圧電薄膜デバイスの製造方法であって、支持基板として一表面が(001)面もしくは(111)面の単結晶基板を用い、圧電層の基礎となる圧電薄膜をスパッタ法により支持基板の前記一表面側にエピタキシャル成長させ、その後、圧電薄膜をパターニングすることにより当該圧電薄膜の一部からなる圧電層を形成し、その後、圧電層における前記規定方向の両側それぞれに前記電極を形成することを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、支持基板として一表面が(001)面もしくは(111)面の単結晶基板を用い、圧電層の基礎となる圧電薄膜をスパッタ法により支持基板の前記一表面側にエピタキシャル成長させることにより、分極方向の揃った結晶性の良い圧電薄膜を形成することができるので、ポーリング処理が不要であり、ゾルゲル法やCVD法により圧電薄膜を形成する場合に比べて製造プロセスの簡略化を図れ、圧電薄膜をパターニングすることにより当該圧電薄膜の一部からなる圧電層を形成し、その後、圧電層における前記規定方向の両側それぞれに前記電極を形成するので、支持基板の小型化が可能な圧電薄膜デバイスを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明では、支持基板の厚み方向に振動もしくは変位する圧電素子を用いた圧電薄膜デバイスに比べて支持基板の小型化が可能になるという効果がある。
【0023】
請求項7の発明では、支持基板の小型化が可能な圧電薄膜デバイスを提供することが可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
本実施形態では、圧電薄膜デバイスとして、光通信装置やカラーディスプレイなどに適用可能な光スイッチを例示する。
【0025】
本実施形態の光スイッチは、図1(a),(b)に示すように、矩形板状の単結晶基板からなる支持基板1と、支持基板1の一表面側に形成された可動部10とを備え、可動部10が、支持基板1の上記一表面側に立設され支持基板1の厚み方向に直交する規定方向(図1(b)の左右方向)において離間した一対の短冊状の電極12,12と、支持基板1の上記一表面側に形成した圧電薄膜を用いて形成され上記規定方向において一対の電極12,12間に介在する短冊状の圧電層11とを有し、一対の電極12,12間に電圧を印加することにより圧電層11が上記規定方向に変位するように構成されている。また、本実施形態の光スイッチは、支持基板1の上記一表面側に各電極12,12それぞれに電気的に接続された導体パターン13,13が形成されている。また、可動部10は、支持基板1の上記一表面側に変位量を増大させる変位量増大部14が立設されている。ここで、変位量増大部14は、支持基板1の厚み方向を長手方向、圧電層11の厚さ方向(一対の電極12,12の並設方向)を短手方向とする細長の板状の形状に形成されている。しかして、本実施形態の光スイッチでは、一対の電極12,12間に電圧を印加していない状態で図示しない発光デバイス(例えば、半導体レーザなど)からの光LBを阻止し、一対の電極12,12間に電圧を印加した状態で上記光を通過させることができる。なお、本実施形態における変位量増大部14は、支持基板1の上記一表面側において一対の電極12,12および圧電層11を覆う形で支持基板1の厚み方向に立設されているが、圧電層11上のみに立設してもよい。また、本実施形態では、一対の電極12,12と圧電層11とで圧電素子を構成している。
【0026】
本実施形態の光スイッチは、圧電層11の圧電材料として鉛系圧電材料の一種であるPZTを採用しており、単結晶基板からなる支持基板1として、上記一表面である主表面が(001)面のMgO基板を用いているが、これに限らず、例えば、主表面が(001)面のSrTiO基板や、主表面が(111)面のMgO基板もしくは主表面が(111)面のSrTiO基板などを用いてもよい。また、支持基板1としては、主表面が(001)面のSi基板を用いてもよいが、この場合は、支持基板1と可動部10との間に一対の電極12,12が電気的に接続されるのを防止するための絶縁層を形成する必要があり、可動部10の形成前に当該絶縁層として、支持基板1の上記一表面側にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)薄膜や、CeO薄膜とYSZ薄膜との積層膜や、Al薄膜をスパッタ法などによりエピタキシャル成長させればよい。なお、本実施形態の光スイッチは、支持基板1が上述のようにMgO、SrTiO、Siのいずれかからなるので、マイクロマシニング技術を利用して製造することができる。
【0027】
なお、当該絶縁層は、支持基板1の上記一表面側の全面に残すようにしてもよいが、少なくとも各導体パターン13,13および各電極12,12と支持基板1との間に介在する形で残るようにパターニングしてもよい。
【0028】
上述の圧電層11は、支持基板1の上記一表面側にエピタキシャル成長したPZT薄膜からなる圧電薄膜11a(図3(b)参照)をパターニングすることにより形成されている。ここにおいて、圧電薄膜11aは、(001)配向の単結晶薄膜により構成されているが、(001)配向の多結晶薄膜により構成してもよいし、(111)配向の単結晶薄膜もしくは多結晶薄膜により構成してもよい。なお、圧電薄膜11aは、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した単結晶薄膜、あるいは、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した多結晶薄膜であればよい。
【0029】
圧電層11の圧電材料(つまり、圧電薄膜11aの圧電材料)は、PZTに限らず、不純物を添加したPZTやPMN−PZTなどの鉛系圧電材料であればよく、圧電材料がZnOである場合に比べて圧電層12の先端部の変位量を大きくすることが可能となる。また、圧電層11の圧電材料は、鉛系圧電材料に限らず、例えば、鉛フリーのKNN(K0.5Na0.5NbO)や、KN(KNbO)、NN(NaNbO)、KNNに不純物(例えば、Li,Nb,Ta,Sb,Cuなど)を添加したものでもよい。
【0030】
また、各電極11および各導体パターン13の材料としてAuを採用しているが、これらの材料はAuに限定するものではなく、例えば、Pt、Al、W、Moなどを採用してもよい。
【0031】
また、変位量増大部14は、電気絶縁性を有する感光性樹脂組成物の硬化物により構成されている。なお、変位量増大部14用の感光性樹脂組成物としては、5〜700μm厚の厚膜に成膜が可能で、耐薬品性および耐熱性が高く、露光・現像により、高アスペクト比のパターニングが可能なもの(永久レジストと呼ばれ、露光・現像によるパターニング後に永久膜として利用可能なフォトレジスト)を用いている。また、変位量増大部14を板状の形状としてあるが、変位量増大部14の形状は特に限定するものではない。
【0032】
ところで、本実施形態の光スイッチは、一対の電極12,12間に電圧を印加したときの圧電層11の変位が圧電定数d15〔m/V〕で規定される。要するに、本実施形態の光スイッチは、圧電層11がd31モードではなくd15モードで変形する。ここで、図2(a)に示すように上記規定方向における圧電層11の厚さをt〔μm〕、支持基板1の厚み方向における圧電層11の高さをl〔μm〕、上記規定方向における可動部10の厚さをt、支持基板1の厚み方向における可動部10の高さをl〔μm〕とし、一対の電極12,12間に電圧Viを印加して圧電層11に電界E〔V/m〕をかけたときに変位量増大部14の先端部が図2(b)に示すように上記規定方向へΔx〔μm〕の変位量だけ変位するものとし、例えば、t=5〔μm〕、l=3〔μm〕、t=7〔μm〕、l=50〔μm〕、Vi=10〔V〕とし、圧電層11の材料をPZT−5Hとして、圧電定数をeyx=−6.5、eyy=23.3、ex−xy=17とし、弾性率や誘電率などの他の物性定数はPZT−5Hの値を用い、また、変位量増大部14の材料を化薬マイクロケム株式会社製のSU8(商品名)として当該SU8の物性定数を用い、有限要素法によるシミュレーションを行った結果、Δx=8〔nm〕となり、圧電層11の先端部の変位量に比べて大きな変位量を得ることができるという結果が得られた。要するに、可動部10に変位量増大部14を設けたことにより、変位量増大部14を設けていない場合に比べて可動部10の先端部の変位量を増大させることができる。
【0033】
上記規定方向における電極12の厚さは、上記規定方向において、圧電層11の厚さ:電極12の厚さ=50:1となるように20nmに設定してあるが、これらの値は特に限定するものではない。また、支持基板1の厚み方向における圧電層11の高さl〔μm〕もおよび上記規定方向における圧電層11の厚さtも特に限定するものではなく、高さ1は10μm以下、厚さtは500μm以下で適宜設定することが好ましい。なお、圧電層11の高さlは上述の圧電薄膜11aの膜厚により決まるので、圧電層11の高さlが高すぎると圧電薄膜11aの形成時にクラックが生じる恐れがあり、圧電層11の高さlが低すぎると圧電薄膜11aの結晶性が悪く圧電定数d15が低くなってしまうので、これらの問題を考慮して適宜設定すればよい。また、圧電層11の厚さtについては、厚すぎると一対の電極12,12間に印加する電圧が大きくなって消費電力が増加し、薄すぎると一対の電極12,12間にリーク電流が流れてしまうので、これらの問題を考慮して適宜設定すればよい。
【0034】
以下、本実施形態の光スイッチの製造方法について図3および図4に基づいて説明するが、(a)〜(e)それぞれは上段が概略断面図、下段が概略平面図を示している。
【0035】
まず、図3(a)に示すMgO基板からなる支持基板1の上記一表面側の全面に圧電層11の基礎となるPZT薄膜からなる圧電薄膜11aをスパッタ法(RFスパッタ法など)によりエピタキシャル成長させる圧電薄膜形成工程を行うことによって、図3(b)に示す構造を得る。なお、圧電薄膜11aは、スパッタ法に限らず、CVD法やゾルゲル法などにより形成してもよいが、スパッタ法によりエピタキシャル成長させることにより、分極方向の揃った結晶性の良い圧電薄膜11aを形成することができるので、ポーリング処理が不要であり、ゾルゲル法やCVD法により圧電薄膜11aを形成する場合に比べて製造プロセスの簡略化を図れる。
【0036】
上述の圧電薄膜形成工程の後、圧電薄膜11aの一部からなる圧電層11を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第1のレジスト層と称する)21をフォトリソグラフィ技術を利用して圧電薄膜11a上に形成する第1のレジスト層形成工程を行うことによって、図3(c)に示す構造を得る。なお、第1のレジスト層21における上記規定方向(図3(c)上段での左右方向)の幅は、圧電層11の上記厚さt(図2(a)参照)よりもやや大きな値に設定してある。
【0037】
第1のレジスト層形成工程の後、第1のレジスト層21をマスクとして、圧電薄膜11aをエッチングすることで圧電層11を形成する圧電薄膜パターニング工程を行うことによって、図3(d)に示す構造を得る。ここで、圧電薄膜パターニング工程では、サイドエッチングが起こるようなエッチング条件で圧電薄膜11aをエッチングする。なお、圧電薄膜パターニング工程は、ウェットエッチングでパターニングするようにしてもよいし、ドライエッチングによりパターニングするようにしてもよい。上述のように圧電薄膜11aの圧電材料がPZTの場合にウェットエッチングでパターニングする際のエッチング条件としては、例えば、フッ酸(50%):硝酸(65%):水=1:1:1000のエッチング液を用いればよく、ドライエッチングでパターニングする際のエッチング条件としては、例えば、反応性ドライエッチング装置において、エッチングガスとしてClガスとCFガスとを用い、トータルのガス流量を標準状態で0.02L/min(20sccm)、エッチング圧力を2.7〜21.3Pa(2〜16mTorr)、入力電力を800W程度とすればよい。
【0038】
上述の圧電薄膜パターニング工程の後、支持基板1の上記一表面側に各電極12,12および各導体パターン13,13の基礎となる導電性膜(例えば、Au膜など)12aをスパッタ法などにより形成する導電性膜形成工程を行うことによって、図3(e)に示す構造を得る。なお、導電成膜12aをスパッタ法により形成する場合には、いわゆる斜めスパッタ法により導電性膜12aを形成することにより、第1のレジスト層21下の圧電薄膜11aの側面にも導電性膜12aを略均一に被着させることができる。
【0039】
上述の導電性膜形成工程の後、第1のレジスト層21と導電性膜12aのうち当該第1のレジスト層21に被着されている部位を除去するリフトオフ工程(第1のレジスト層除去工程)を行うことによって、図4(a)に示す構造を得る。
【0040】
その後、圧電層11をパターニングするとともにそれぞれ導電性膜12aの一部からなる各電極12,12および各導体パターン13,13を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第2のレジスト層と称する)22をフォトリソグラフィ技術を利用して支持基板の上記一表面側に形成する第2のレジスト層形成工程を行うことによって、図4(b)に示す構造を得る。
【0041】
その後、第2のレジスト層22をマスクとして、圧電層11をエッチングする圧電層パターニング工程と、導電性膜12aをエッチングすることで各電極12,12および各導体パターン13,13を形成する導電性膜パターニング工程とを順次行うことによって、図4(c)に示す構造を得る。
【0042】
その後、第2のレジスト層22を除去する第2のレジスト層を除去する第2のレジスト層除去工程を行うことによって、図4(d)に示す構造を得る。
【0043】
その後、支持基板1の上記一表面側に変位量増大部14を形成する変位量増大部形成工程を行うことによって、図4(e)に示す構造の光スイッチを得る。なお、変位量増大部形成工程では、支持基板1の上記一表面側に変位量増大部14の基礎となる上述の感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布して感光性樹脂層を形成してから、当該感光性樹脂層を露光して現像することにより変位量増大部14を形成する。
【0044】
上述の光スイッチの製造にあたっては、上述の支持基板1としてウェハを用いてウェハレベルで多数の光スイッチを形成した後、ダイシング工程で個々の光スイッチに分割すればよい。
【0045】
以上説明した本実施形態の圧電薄膜デバイス(光スイッチ)によれば、支持基板1の上記一表面側に形成された可動部10が、支持基板1の上記一表面側に立設され支持基板1の厚み方向に直交する上記規定方向において離間した一対の電極12,12と、支持基板1の上記一表面側に形成した圧電薄膜11aを用いて形成され上記規定方向において一対の電極12,12間に介在する圧電層11とを有し、一対の電極12,12間に電圧を印加することにより圧電層11が上記規定方向に振動もしくは変位するので、支持基板1の厚み方向に振動もしくは変位する圧電素子を用いた圧電薄膜デバイスに比べて支持基板1の小型化が可能になる。
【0046】
また、本実施形態の圧電薄膜デバイスでは、上述の圧電薄膜11aが、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した多結晶薄膜、あるいは、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した単結晶薄膜なので、圧電薄膜11aの結晶性が良く、上記規定方向への圧電層11の変位量を大きくすることができる。また、本実施形態では、一対の電極12,12間に電圧を印加したときの変位が圧電定数d15で規定されるので、圧電層11の変位が圧電定数d31や圧電定数d33で規定される場合に比べて、上記規定方向への圧電層11の変位量を大きくすることができる。
【0047】
また、上述の圧電薄膜デバイス(光スイッチ)の製造方法によれば、支持基板1として一表面が(001)面もしくは(111)面の単結晶基板を用い、圧電層11の基礎となる圧電薄膜11aをスパッタ法により支持基板1の上記一表面側にエピタキシャル成長させることにより、分極方向の揃った結晶性の良い圧電薄膜11aを形成することができるので、ポーリング処理が不要であり、ゾルゲル法やCVD法により圧電薄膜11aを形成する場合に比べて製造プロセスの簡略化を図れ、圧電薄膜11aをパターニングすることにより当該圧電薄膜11aの一部からなる圧電層11を形成し、その後、圧電層11における上記規定方向の両側それぞれに電極12,12を形成するので、支持基板1の小型化が可能な圧電薄膜デバイスを提供することが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態では、可動部10に変位量増大部14を設けてあるが、変位量増大部14は必ずしも設ける必要はない。
【0049】
(実施形態2)
本実施形態では、圧電薄膜デバイスとして、光通信装置やカラーディスプレイなどに適用可能な光スイッチを例示する。
【0050】
本実施形態の光スイッチの基本構成は実施形態1と略同じであって、図5に示すように、複数個(図示例では、4個)の可動部10が支持基板1の上記一表面側に形成され、支持基板1の上記一表面側に可動部10の一対の電極12,12に電気的に接続される一対の導体パターン13,13が複数対(図示例では、4対)形成されている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施形態の光スイッチの製造方法は、実施形態1と同様なので説明を省略する。
【0051】
複数個の可動部10は、支持基板1の上記一表面側において電極12,12間に電圧が印加されていない状態で互いに平行し且つ圧電層11の厚み方向において互いに重ならないように配置されている。なお、各可動部10の変位量増大部14は、実施形態1と同様、支持基板1の厚み方向を長手方向、圧電層11の厚さ方向(一対の電極12,12の並設方向)を短手方向とする細長の板状(帯板状)の形状に形成されている。
【0052】
しかして、本実施形態の圧電薄膜デバイスは、複数の光LBのスイッチングが可能な複数入力複数出力の光スイッチとして用いることができる。
【0053】
(実施形態3)
本実施形態では、圧電薄膜デバイスとして、光通信装置や光偏向装置などに適用可能な光スイッチを例示する。
【0054】
本実施形態の光スイッチの基本構成は実施形態2と略同じであって、各変位量増大部14の側面に反射率の高い材料(例えば、Alなど)からなる反射膜(図示せず)が形成されており、図6に示すように、複数の光LBそれぞれを各別に偏向することができる。なお、実施形態2と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
しかして、本実施形態の圧電薄膜デバイスは、複数の光LBそれぞれを各別に偏向することが可能な光スイッチとして用いることができる。
【0056】
(実施形態4)
本実施形態では、圧電薄膜デバイスとして光スイッチを例示する。
【0057】
本実施形態の光スイッチの基本構成は実施形態1と略同じであって、図7および図8に示すように、支持基板1の厚み方向において圧電層11の両側に形成された一対のポーリング処理用電極15b,15aを備えている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
また、本実施形態の光スイッチは、支持基板1の上記一表面側に、圧電層11における支持基板1側のポーリング処理用電極15aに電気的に接続された導体パターン16が形成されている。
【0059】
しかして、本実施形態の光スイッチによれば、一対のポーリング処理用電極15b,1a間に例えば圧電層11における支持基板1側とは反対側のポーリング処理用電極15bを高電位側として直流の電圧を印加することにより圧電層11の分極方向を揃えることができるので、圧電層11の基礎となる圧電薄膜11aの成膜方法の選択肢が多くなって製造プロセスのプロセス設計が容易になり、また、圧電層11の分極状態が経時変化した場合でも一対のポーリング処理用電極15b,15a間に電圧を印加してポーリング処理を行うことにより圧電層11の分極方向を揃えることができるので、長寿命化を図れる。
【0060】
以下、本実施形態の光スイッチの製造方法について図9および図10に基づいて説明するが、(a)〜(e)それぞれは上段が概略断面図、下段が概略平面図を示している。また、実施形態1で説明した工程と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0061】
まず、MgO基板からなる支持基板1の上記一表面側に一方のポーリング処理用電極15aおよび導体パターン16を形成する第1のポーリング処理用電極形成工程を行うことによって、図9(a)に示す構造を得る。なお、第1のポーリング処理用電極形成工程では、支持基板1の上記一表面側の全面にポーリング処理用電極15aの基礎となる金属膜(例えば、Pt膜など)をスパッタ法などにより形成してから、当該金属膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してパターニングすることによりポーリング処理用電極15aを形成する。
【0062】
第1のポーリング処理用電極形成工程の後、支持基板1の上記一表面側の全面に圧電層11の基礎となるPZT薄膜からなる圧電薄膜11aをスパッタ法(RFスパッタ法など)によりエピタキシャル成長させる圧電薄膜形成工程を行うことによって、図9(b)に示す構造を得る。
【0063】
その後、圧電薄膜11aの一部からなる圧電層11を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第1のレジスト層と称する)21をフォトリソグラフィ技術を利用して圧電薄膜11a上に形成する第1のレジスト層形成工程を行うことによって、図9(c)に示す構造を得る。
【0064】
第1のレジスト層形成工程の後、第1のレジスト層21をマスクとして、圧電薄膜11aをエッチングすることで圧電層11を形成する圧電薄膜パターニング工程を行うことによって、図9(d)に示す構造を得る。
【0065】
その後、支持基板1の上記一表面側に各電極12,12および各導体パターン13,13の基礎となる導電性膜(例えば、Au膜など)12aをスパッタ法などにより形成する導電性膜形成工程を行うことによって、図9(e)に示す構造を得る。
【0066】
上述の導電性膜形成工程の後、第1のレジスト層21と導電性膜12aのうち当該第1のレジスト層21に被着されている部位を除去するリフトオフ工程(第1のレジスト層除去工程)を行うことによって、図10(a)に示す構造を得る。
【0067】
その後、それぞれ導電性膜12aの一部からなる各電極12,12および各導体パターン13,13を形成するためにパターニングされたレジスト層(以下、第2のレジスト層と称する)22をフォトリソグラフィ技術を利用して支持基板1の上記一表面側に形成する第2のレジスト層形成工程を行うことによって、図10(b)に示す構造を得る。
【0068】
その後、第2のレジスト層22をマスクとして、導電性膜12aをエッチングすることで各電極12,12および各導体パターン13,13を形成する導電性膜パターニング工程を行うことによって、図10(c)に示す構造を得る。
【0069】
その後、第2のレジスト層22を除去する第2のレジスト層を除去する第2のレジスト層除去工程を行うことによって、図10(d)に示す構造を得る。
【0070】
その後、圧電層11における支持基板1側とは反対側の表面上に他方のポーリング処理用電極15bを形成する第2のポーリング処理用電極形成工程を行うことによって、図10(e)に示す構造の光スイッチを得る。
【0071】
上述の光スイッチの製造にあたっては、上述の支持基板1としてウェハを用いてウェハレベルで多数の光スイッチを形成した後、ダイシング工程で個々の光スイッチに分割すればよい。
【0072】
以上説明した本実施形態の圧電薄膜デバイス(光スイッチ)の製造方法によれば、支持基板1として一表面が(001)面もしくは(111)面の単結晶基板を用い、圧電層11の基礎となる圧電薄膜11aをスパッタ法により支持基板1の上記一表面側にエピタキシャル成長させることにより、分極方向の揃った結晶性の良い圧電薄膜11aを形成することができるので、製造時のポーリング処理が不要であり、ゾルゲル法やCVD法により圧電薄膜11aを形成する場合に比べて製造プロセスの簡略化を図れ、圧電薄膜11aをパターニングすることにより当該圧電薄膜11aの一部からなる圧電層11を形成し、その後、圧電層11における上記規定方向の両側それぞれに電極12,12を形成するので、支持基板1の小型化が可能な圧電薄膜デバイスを提供することが可能となる。
【0073】
(実施形態5)
本実施形態では、圧電薄膜デバイスとして、マイクロピンセットを例示する。
【0074】
本実施形態のマイクロピンセットの基本構成は実施形態1の圧電薄膜デバイスと略同じであり、図11に示すように、支持基板1の上記一表面側に2個の可動部10が圧電層11の厚さ方向に所定距離だけ離間して対向配置されており、2個の可動部10の変位量増大部14が、圧電層11の厚さ方向を厚み方向とする板状(帯板状)に形成され、微細な対象物(例えば、細胞など)を摘むための摘み片を構成している。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。また、本実施形態のマイクロピンセットの製造方法は実施形態1の圧電薄膜デバイスの製造方法と同様なので説明を省略する。
【0075】
(実施形態6)
本実施形態では、圧電薄膜デバイスとして、流体制御デバイスを例示する。
【0076】
本実施形態の流体制御デバイスの基本構成は実施形態1の圧電薄膜デバイスと略同じであり、図12に示すように、支持基板1の上記一表面側に可動部10を全周に亘って囲むフレーム部17が形成され、フレーム部17に流体の流入口18が1つ形成されるとともに流体の流出口19a,19bが2つ形成されている点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0077】
可動部10は、フレーム部17から離間して配置されており、可動部10の所望の変位量に応じて各電極12,12とフレーム部17との間の距離を設定してある。ここにおいて、可動部10は、一対の電極12,12間に電圧が印加されていない状態では、圧電層11において支持基板1の厚み方向に沿った一側面が流入口18からの流体の流入を阻止するように位置しており(なお、図12中の矢印は流体の流れを模式的に示している)、一対の電極12,12間に電圧が印加された状態では、図13(a)や図13(b)に示すように流入口18から流体が流入して2つの流出口19a,19bのいずれか一方から流体が流出するように変位する壁を構成している。フレーム部17は、圧電層11と同じ圧電材料により形成されている。なお、本実施形態では、圧電層11について、高さを2μm、厚さを0.5μm、幅を5〜10μmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。
【0078】
また、本実施形態では、各電極12,12それぞれに電気的に接続された導体パターン13,13が支持基板1の上記一表面とフレーム部17における内側面とフレーム部17における支持基板1側とは反対側の表面とに跨って形成されている。
【0079】
本実施形態の圧電薄膜デバイス(流体制御デバイス)によれば、支持基板1の上記一表面側に形成された可動部10が、支持基板1の上記一表面側に立設され支持基板1の厚み方向に直交する上記規定方向において離間した一対の電極12,12と、支持基板1の上記一表面側に形成した圧電薄膜11aを用いて形成され上記規定方向において一対の電極12,12間に介在する圧電層11とを有し、一対の電極12,12間に電圧を印加することにより圧電層11が上記規定方向に振動もしくは変位するので、支持基板1の厚み方向に振動もしくは変位する圧電素子を用いた流体制御デバイスに比べて支持基板1の小型化が可能になる。
【0080】
以下、本実施形態の流体制御デバイスの製造方法について図14に基づいて説明するが、実施形態1と同様の工程については説明を適宜省略する。
【0081】
まず、MgO基板からなる支持基板1の上記一表面側の全面に圧電層11およびフレーム部17の基礎となるPZT薄膜からなる圧電薄膜11aをスパッタ法(RFスパッタ法など)によりエピタキシャル成長させる圧電薄膜形成工程を行うことによって、図14(a)に示す構造を得る。
【0082】
その後、支持基板1の上記一表面側に所定厚さ(例えば、0.5μm)のレジスト層41をスピンコート法により形成するレジスト塗布工程を行うことによって、図14(b)に示す構造を得る。
【0083】
その後、それぞれ圧電薄膜11aの一部からなる圧電層11およびフレーム部17を形成するためにフォトリソグラフィ技術を利用してレジスト層41をパターニングするレジスト層パターニング工程を行うことでパターニングされたレジスト層41aを形成することによって、図14(c)に示す構造を得る。
【0084】
その後、圧電薄膜11aをエッチングすることにより圧電層11およびフレーム部17を形成する圧電薄膜パターニング工程を行うことによって、図14(d)に示す構造を得る。ここで、圧電薄膜パターニング工程では、GaイオンのFIBにより圧電薄膜11aをエッチングしている。また、本実施形態では、レジスト層41aのうち圧電薄膜11aにおいて圧電層11となる部位の幅が圧電層11の所定厚さよりも大きく設定されており、レジスト層41aと圧電薄膜11aとをまとめてFIBによりエッチングしている。なお、圧電層11の上記所定厚さによっては、レジスト層41aの上記幅を上記所定厚さと略同じ値に設定して、反応性イオンエッチングにより圧電薄膜11aのみをエッチングするようにしてもよい。
【0085】
その後、支持基板1の上記一表面側に各電極12,12および各導体パターン13,13の基礎となる導電性膜(例えば、Au膜など)12aをスパッタ法などにより形成する導電性膜形成工程を行うことによって、図14(e)に示す構造を得る。
【0086】
上述の導電性膜形成工程の後、レジスト層41aと導電性膜12aのうち当該レジスト層41aに被着されている部位を除去するリフトオフ工程(レジスト層除去工程)を行うことで各電極12,12および各導体パターン13,13を形成することによって、図14(f)に示す構造を得る。
【0087】
その後、圧電層11および各電極12,12それぞれにおけるフレーム部17との連結部位をFIBによりエッチングする分離工程を行うことによって、図14(g)に示す構造を得る。ここで、分離工程では、GaイオンのFIBにより圧電層11および各電極12,12それぞれにおけるフレーム部17との連結部位をエッチングしている。
【0088】
上述の分離工程までは支持基板1としてウェハを用いてウェハレベルで図14(g)に示す構造を多数形成して、分離工程の後でダイシング工程を行い、その後、フレーム部17に流入口18および各流出口19a,19bをFIBによるエッチングにより形成する加工工程を行うことによって、図12に示す構造の流体制御デバイスを得る。
【0089】
以上説明した本実施形態の圧電薄膜デバイス(光スイッチ)の製造方法によれば、支持基板1として一表面が(001)面もしくは(111)面の単結晶基板を用い、圧電層11の基礎となる圧電薄膜11aをスパッタ法により支持基板1の上記一表面側にエピタキシャル成長させることにより、分極方向の揃った結晶性の良い圧電薄膜11aを形成することができるので、製造時のポーリング処理が不要であり、ゾルゲル法やCVD法により圧電薄膜11aを形成する場合に比べて製造プロセスの簡略化を図れ、圧電薄膜11aをパターニングすることにより当該圧電薄膜11aの一部からなる圧電層11を形成し、その後、圧電層11における上記規定方向の両側それぞれに電極12,12を形成するので、支持基板1の小型化が可能な圧電薄膜デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施形態1の圧電薄膜デバイスを示し、(a)は概略斜視図、(b)は概略横断面図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上の圧電薄膜デバイスの製造方法の説明図である。
【図4】同上の圧電薄膜デバイスの製造方法の説明図である。
【図5】実施形態2の圧電薄膜デバイスを示す概略斜視図である。
【図6】実施形態3の圧電薄膜デバイスを示す概略斜視図である。
【図7】実施形態4の圧電薄膜デバイスを示す概略斜視図である。
【図8】同上の圧電薄膜デバイスを示す概略断面図である。
【図9】同上の圧電薄膜デバイスの製造方法の説明図である。
【図10】同上の圧電薄膜デバイスの製造方法の説明図である。
【図11】実施形態5の圧電薄膜デバイスの概略斜視図である。
【図12】実施形態6の圧電薄膜デバイスの概略斜視図である。
【図13】同上の圧電薄膜デバイスの動作説明図である。
【図14】同上の圧電薄膜デバイスの製造方法の説明図である。
【図15】従来例の圧電薄膜デバイスを示し、(a)は概略断面図、(b)は動作説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 支持基板(単結晶基板)
10 可動部
11 圧電層
11a 圧電薄膜
12 電極
13 導体パターン
14 変位量増大部
15a,15b ポーリング処理用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、支持基板の一表面側に形成された可動部とを備え、可動部は、支持基板の前記一表面側に立設され支持基板の厚み方向に直交する規定方向において離間した一対の電極と、支持基板の前記一表面側に形成した圧電薄膜を用いて形成され前記規定方向において前記一対の電極間に介在する圧電層とを有し、前記一対の電極間に電圧を印加することにより圧電層が前記規定方向に振動もしくは変位することを特徴とする圧電薄膜デバイス。
【請求項2】
前記圧電薄膜が、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した多結晶薄膜、あるいは、〔001〕方向もしくは〔111〕方向に優先配向した単結晶薄膜であることを特徴とする請求項1記載の圧電薄膜デバイス。
【請求項3】
前記圧電層は、前記一対の電極間に電圧を印加したときの変位が圧電定数d15で規定されることを特徴とする請求項2記載の圧電薄膜デバイス。
【請求項4】
前記支持基板は、SiもしくはMgOもしくはSrTiOからなり、前記圧電層は、鉛系圧電材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の圧電薄膜デバイス。
【請求項5】
前記支持基板の前記厚み方向において前記圧電層の両側に形成された一対のポーリング処理用電極を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の圧電薄膜デバイス。
【請求項6】
前記可動部は、前記支持基板の前記一表面側に変位量を増大させる変位量増大部が立設されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の圧電薄膜デバイス。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の圧電薄膜デバイスの製造方法であって、支持基板として一表面が(001)面もしくは(111)面の単結晶基板を用い、圧電層の基礎となる圧電薄膜をスパッタ法により支持基板の前記一表面側にエピタキシャル成長させ、その後、圧電薄膜をパターニングすることにより当該圧電薄膜の一部からなる圧電層を形成し、その後、圧電層における前記規定方向の両側それぞれに前記電極を形成することを特徴とする圧電薄膜デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−302381(P2009−302381A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156650(P2008−156650)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】