説明

地図表示装置、地図表示方法、及び地図表示プログラム

【課題】表示すべき地図における場面が変化した場合などにおいて、画面変化におけるレスポンスを適切に改善することが可能な地図表示装置を提供する。
【解決手段】地図表示装置は、例えば車載用のナビゲーション装置などに好適に適用され、表示部の表示画面上に地図を表示させる。具体的には、地図表示装置は、表示画面に表示すべき地図における場面が変化した場合に、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う。そして、場面が変化してから所定フレームが経過した後に、正規の描画を行う。これにより、画面内の概ね全てを新たに描画する必要があるような場合に、画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部の表示画面上に地図データを表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるナビゲーション装置などにおいては、都市景観などを3次元表示することが行われている。例えば、特許文献1には、予め建物の底面形状と高さ情報に応じて準備した複数の3次元モデルパターンにしたがって、建物の3次元モデルを生成する技術が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−298162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、画面のスクロールやアニメーションなどにおいては、画面内の一部分のみが変化する場合には、その一部分のみを再描画することによって画面描画の負担を軽減することが行われている。つまり、画面内で変化している部分のみ新たな描画を行い、画面内において変化していない部分については新たな描画を行わないことによって(即ち描画し直さないことによって)、無駄な描画を抑制することが行われている。
【0005】
しかしながら、例えばナビゲーション装置において表示すべき地図における場面が変化した場合に、画面内の全てが変化する傾向にあり、画面内の概ね全てを新たに描画する必要があった、つまり、上記したような画面内の一部分のみを再描画する描画方法を適切に用いることができなかった。このような場合、画面描画の負荷が重くなり、特に地図を3次元表示した場合には画面描画の負荷がかなり重くなり、画面変化における切り替えレスポンスが悪化する傾向にあった。前述した特許文献1に記載された技術においても、地図における場面が変化した場合に、画面変化のレスポンスが悪化する傾向にあった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、表示すべき地図における場面が変化した場合などにおいて、画面変化におけるレスポンスを適切に改善することが可能な地図表示装置、地図表示方法、及び地図表示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、表示画面上に地図を表示させる地図表示装置は、前記表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定手段と、前記場面変化判定手段によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画手段と、前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項11に記載の発明は、表示画面上に地図を表示させる地図表示装置において実行される地図表示方法は、前記表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定工程と、前記場面変化判定工程によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画工程と、前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項12に記載の発明は、コンピュータを備える地図表示装置において実行される地図表示プログラムは、表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定手段、前記場面変化判定手段によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画手段、前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の1つの観点では、表示画面上に地図を表示させる地図表示装置は、前記表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定手段と、前記場面変化判定手段によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画手段と、前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画手段と、を備える。
【0011】
上記の地図表示装置は、例えば車載用のナビゲーション装置などに好適に適用され、表示部の表示画面上に地図を表示させる。具体的には、地図表示装置は、表示画面に表示すべき地図における場面が変化した場合に、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う。つまり、画面内の概ね全てを新たに描画しなければならない場合に、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化した場面に応じた正規な表現を行わずに、描画負担を軽減した簡易的な表現を行う。そして、場面が変化してから所定フレームが経過した後に、正規の描画を行う。上記の地図表示装置によれば、画面内の概ね全てを新たに描画する必要があるような場合に、画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。したがって、ユーザのストレスを改善させることが可能となると共に、ナビゲーション装置などの操作感を向上させることが可能となる。
【0012】
上記の地図表示装置の一態様では、前記簡易描画手段は、前記正規の描画を行う場合よりも、前記表示画面内の対象描画物の詳細度を低くすることによって、前記簡易的な描画を行うことができる。
【0013】
上記の地図表示装置の他の一態様では、前記簡易描画手段は、地図において表示すべき描画物の優先度に基づき、前記優先度が高い描画物のみを描画し、前記優先度が低い描画物の描画を省略することによって、前記簡易的な描画を行う。これにより、描画する描画物を適切に削減することができるため、画面描画の負担を適切に軽減することが可能となる。
【0014】
好ましくは、前記簡易描画手段は、少なくとも、自車が走行すべき道路の脇に位置する描画物、前記表示画面において手前に位置する描画物、及び視野内に存在する前記自車を誘導するための描画物は、前記優先度が高い描画物として描画する。
【0015】
上記の地図表示装置において好適には、前記簡易描画手段は、描画物におけるテクスチャの部分の描画を省略することによって、前記簡易的な描画を行う。
【0016】
また好適には、前記簡易描画手段は、描画物における影及び飾りの少なくともいずれかの描画を省略することによって、前記簡易的な描画を行う。
【0017】
また好適には、前記簡易描画手段は、描画物を構成するポリゴン又はポリラインにおける座標点を間引くことによって、前記簡易的な描画を行う。
【0018】
上記の地図表示装置の他の一態様では、前記場面変化判定手段は、3次元表示された地図における交差点を自車が曲がる場合に、前記場面が変化したと判定する。この態様によれば、3次元表示された地図上の交差点(案内地)を自車が曲がる場合において、画面描画の負担を適切に軽減することができるので、自車が交差点を曲がるときに滑らかに画面を追随させることが可能となる。
【0019】
上記の地図表示装置の他の一態様では、前記場面変化判定手段は、昼画面と夜画面との切り替えが行われる場合に、前記場面が変化したと判定する。この態様によれば、昼画面と夜画面との切り替え時における画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面における昼夜の切り替わりを速やかに行うことが可能となる。
【0020】
好ましくは、前記所定フレームは、前記場面が変化してから前記正規描画を行うための処理が完了するまでに要するフレーム数に基づいて設定される。
【0021】
本発明の他の観点では、表示画面上に地図を表示させる地図表示装置において実行される地図表示方法は、前記表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定工程と、前記場面変化判定工程によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画工程と、前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画工程と、を備える。
【0022】
また、本発明の他の観点では、コンピュータを備える地図表示装置において実行される地図表示プログラムは、表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定手段、前記場面変化判定手段によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画手段、前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画手段、として前記コンピュータを機能させる。
【0023】
上記した地図表示方法及び地図表示プログラムによっても、地図における場面が変化した際に画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。なお、地図表示プログラムは、記録媒体に記録した状態で好適に取り扱うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。なお、以下の説明は、本発明を車両用のナビゲーション装置に適用した例を示す。
【0025】
[ナビゲーション装置]
図1に、ナビゲーション装置1の構成を示す。図1に示すように、ナビゲーション装置1は、自立測位装置10、GPS受信機18、システムコントローラ20、ディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、通信装置38、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60を備える。
【0026】
自立測位装置10は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13を備える。加速度センサ11は、例えば圧電素子からなり、車両の加速度を検出し、加速度データを出力する。角速度センサ12は、例えば振動ジャイロからなり、車両の方向変換時における車両の角速度を検出し、角速度データ及び相対方位データを出力する。距離センサ13は、車両の車輪の回転に伴って発生されているパルス信号からなる車速パルスを計測する。
【0027】
GPS受信機18は、複数のGPS衛星から、測位用データを含む下り回線データを搬送する電波19を受信する。測位用データは、緯度及び経度情報等から車両の絶対的な位置を検出するために用いられる。
【0028】
システムコントローラ20は、インタフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23及びRAM(Random Access Memory)24を含んでおり、ナビゲーション装置1全体の制御を行う。
【0029】
インタフェース21は、加速度センサ11、角速度センサ12及び距離センサ13並びにGPS受信機18とのインタフェース動作を行う。そして、これらから、車速パルス、加速度データ、相対方位データ、角速度データ、GPS測位データ、絶対方位データ等をシステムコントローラ20に入力する。CPU22は、システムコントローラ20全体を制御する。ROM23は、システムコントローラ20を制御する制御プログラム等が格納された図示しない不揮発性メモリ等を有する。RAM24は、入力装置60を介して使用者により予め設定された経路データ等の各種データを読み出し可能に格納したり、CPU22に対してワーキングエリアを提供したりする。
【0030】
システムコントローラ20、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブなどのディスクドライブ31、データ記憶ユニット36、通信用インタフェース37、表示ユニット40、音声出力ユニット50及び入力装置60は、バスライン30を介して相互に接続されている。
【0031】
ディスクドライブ31は、システムコントローラ20の制御の下、CD又はDVDといったディスク33から、音楽データ、映像データなどのコンテンツデータを読み出し、出力する。なお、ディスクドライブ31は、CD−ROMドライブ又はDVD−ROMドライブのうち、いずれか一方としてもよいし、CD及びDVDコンパチブルのドライブとしてもよい。データ記憶ユニット36は、例えば、HDDなどにより構成され、地図データなどのナビゲーション処理に用いられる各種データを記憶するユニットである。通信装置38は、例えば、FMチューナやビーコンレシーバ、携帯電話や専用の通信カードなどにより構成され、通信用インタフェース37を介して、VICS(Vehicle Information Communication System)センタなどから配信される情報(以下、「VICS情報」と呼ぶ。)を取得する。
【0032】
表示ユニット40は、システムコントローラ20の制御の下、各種表示データをディスプレイなどの表示装置に表示する。具体的には、システムコントローラ20は、データ記憶ユニット36から地図データを読み出す。表示ユニット40は、システムコントローラ20によってデータ記憶ユニット36から読み出された地図データなどを表示画面上に表示する。表示ユニット40は、バスライン30を介してCPU22から送られる制御データに基づいて表示ユニット40全体の制御を行うグラフィックコントローラ41と、VRAM(Video RAM )等のメモリからなり即時表示可能な画像情報を一時的に記憶するバッファメモリ42と、グラフィックコントローラ41から出力される画像データに基づいて、液晶、CRT(Cathode Ray Tube)等のディスプレイ44を表示制御する表示制御部43と、ディスプレイ44とを備える。ディスプレイ44は、画像表示部として機能し、例えば対角5〜10インチ程度の液晶表示装置等からなり、車内のフロントパネル付近に装着される。
【0033】
音声出力ユニット50は、システムコントローラ20の制御の下、CD−ROMドライブ31又はDVD−ROM32、若しくはRAM24等からバスライン30を介して送られる音声デジタルデータのD/A(Digital to Analog)変換を行うD/Aコンバータ51と、D/Aコンバータ51から出力される音声アナログ信号を増幅する増幅器(AMP)52と、増幅された音声アナログ信号を音声に変換して車内に出力するスピーカ53とを備えて構成されている。
【0034】
入力装置60は、各種コマンドやデータを入力するための、キー、スイッチ、ボタン、リモコン、音声入力装置等から構成されている。入力装置60は、車内に搭載された当該車載用電子システムの本体のフロントパネルやディスプレイ44の周囲に配置される。また、ディスプレイ44がタッチパネル方式である場合には、ディスプレイ44の表示画面上に設けられたタッチパネルも入力装置60として機能する。
【0035】
なお、図1におけるCPU22などは、本発明における地図表示装置に相当する。具体的には、場面変化判定手段、簡易描画手段、及び正規描画手段に相当する。
【0036】
[地図表示方法]
以下で、CPU22が行う、本実施例に係る地図表示方法について具体的に説明する。
【0037】
本実施例では、CPU22は、表示画面に表示すべき地図における場面が変化した場合に、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の場面に応じた正規の描画(以下、「正規描画」と呼ぶ。)を行わずに、正規描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画(以下、「簡易描画」と呼ぶ。)を行う。つまり、CPU22は、地図における場面が変化した場合、即ち画面内の概ね全てを新たに描画しなければならない場合に、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化した場面に応じた正規な表現を行わずに描画負担を軽減した簡易的な表現を行う。具体的には、CPU22は、正規描画を行う場合よりも、表示画面内の対象描画物の詳細度をあえて低くすることによって簡易描画を行う。また、上記した所定フレームは、例えば、場面が変化してから正規描画を行うための処理が完了するまでに要するフレーム数に基づいて設定される。つまり、CPU22は、少なくとも、場面が変化してから正規描画を行うための処理が完了するまでの間、簡易描画を行い、正規描画を行うための処理が完了した後において正規描画を行う。
【0038】
より具体的には、CPU22は、3次元表示された地図における交差点(案内地)を自車が曲がる場合や、昼画面と夜画面との切り替えが行われる場合などに、表示すべき地図における場面が変化したものと判定して、簡易描画を行う。詳しくは、このように場面が変化した場合に、CPU22は、地図において表示すべき描画物の優先度に基づき、優先度が高い描画物のみを描画し、優先度が低い描画物の描画を省略することによって、簡易描画を行う。また、CPU22は、描画物におけるテクスチャの部分の描画を省略することによって簡易描画を行う。更に、CPU22は、描画物における影及び飾りの少なくともいずれかの描画を省略したり、描画物を構成するポリゴン又はポリラインにおける座標点を間引いたりすることによって、簡易描画を行う。以上説明した地図表示方法によれば、画面内の概ね全てを新たに描画する必要があるような場合において、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。
【0039】
図2は、本実施例に係る簡易描画を具体的に説明するための図である。なお、図2では、説明の便宜上、ナビゲーション装置1において実際に表示される画像とは直接関係のない画像を用いている。
【0040】
図2(a)は変化前における元の画像の一例を示しており、図2(b)及び図2(c)は変化後における画像の一例を示している。具体的には、図2(b)は、表示すべき変化後の画像を簡易描画した図を示しており、図2(c)は、表示すべき変化後の画像を正規描画した図を示している(つまり表示すべき変化後の画像そのものを示している)。この場合には、画面内の全てが変化して、画面内の概ね全てを新たに描画しなければならない状況となっていると言える。つまり、画面内の一部分のみを再描画する描画方法を用いることができない状況であると言える。そのため、画像の変化後直ちに図2(c)に示すような正規描画を行わずに、図2(b)に示すような簡易描画を行っている。この例では、描画物におけるテクスチャの部分を描画する代わりに(つまりテクスチャの部分を正規に描画する代わりに)、このテクスチャの部分を単一色を用いて表現することによって、簡易描画が行われている。これにより、画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。
【0041】
図2(b)に示すような簡易描画は、表示すべき画像が変化してから所定フレームが経過するまで行われる。そして、このような所定フレームが経過した後に、図2(c)に示すような正規描画が行われる。つまり、簡易描画から正規描画に切り替えられる。図2(c)より、簡易描画において単一色で表現されたテクスチャの部分が、正規に表現されていることがわかる。
【0042】
図3は、昼画面と夜画面との切り替え時に行われる簡易描画の例を示す図である。図3(a)は、昼画面において表示される画像の一例を示しており、図3(b)及び図3(c)は夜画面において表示される画像の一例を示している。具体的には、図3(b)は、昼画面から夜画面への切り替え後に表示すべき画像を簡易描画した図を示しており、図3(c)は、昼画面から夜画面への切り替え後に表示すべき画像を正規描画した図を示している(つまり昼画面から夜画面への切り替え後に表示すべき画像そのものを示している)。
【0043】
図3(a)に示すように、昼画面においては、比較的明るめの色によって画面が表現されると共に、文字に文字飾り(影など)が付されていることがわかる。このような昼画面を用いて表示を行っている場合において、例えば車両におけるイルミネーションがオフからオンに切り替えられた際に、昼画面から夜画面へ切り替えられる。夜画面は、昼画面に比して暗めの色によって背景などが表現されると共に、文字や文字飾りなどの色も昼画面とは異なる色が用いられることとなる。よって、昼画面から夜画面へ切り替わった場合には、画面内の描画物における概ね全ての色味(配色)が変化するため、即ち画面内の概ね全てが変化するため、画面内の概ね全てを新たに描画しなければならない状況であると言える。つまり、画面内の一部分のみを再描画する描画方法を用いることができない状況であると言える。
【0044】
そのため、昼画面から夜画面へ切り替わった後直ちに、図3(c)に示すような正規描画を行わずに、図3(b)に示すような簡易描画を行っている。この例では、文字に付すべき文字飾り(影など)の描画を省略して、文字の部分のみを描画することによって、簡易描画が行われている(なお、道路自体は描画するものとする)。こうすることにより、昼画面から夜画面への切り替え時における画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面における昼夜の切り替わりを速やかに行うことが可能となる。
【0045】
図3(b)に示すような簡易描画は、表示すべき画像が変化してから所定フレームが経過するまで行われる。そして、所定フレームが経過した後に、図3(c)に示すような正規描画が行われる。つまり、簡易描画から正規描画に切り替えられる。図3(c)より、簡易描画において描画が省略された文字飾りなどが、正規に表現されていることがわかる。なお、上記した図3では、昼画面から夜画面へ切り替わった場合に行う簡易描画を示したが、昼画面から夜画面へ切り替わった場合にも、同様の簡易描画が行われる。
【0046】
図4は、3次元表示された地図における交差点(案内地)を自車が曲がる場合において行われる、簡易描画の例を示す図である。
【0047】
図4(a)は、自車が交差点を曲がる前において表示される画像の一例を示しており、図4(b)は自車が交差点を曲がった後において表示される画像の一例を示している。具体的には、図4(b)は、自車が交差点を曲がった後に表示すべき画像を簡易描画した図を示している。この場合、図4(a)及び図4(b)に示す「A」→「B」→「C」の順に、自車が走行するものとする。具体的には、「B」で示す地点において、自車は右に曲がるものとする。このように3次元表示された地図における交差点を自車が曲がった場合には、画面内の概ね全てが変化する傾向にあるので、画面内の概ね全てを新たに描画する必要がある状況であると言える。つまり、画面内の一部分のみを再描画する描画方法を用いることができない状況であると言える。
【0048】
そのため、交差点を曲がった後直ちに、自車が交差点を曲がった後に表示すべき画像を正規描画しないで、図4(b)に示すような簡易描画を行っている。この例では、地図において表示すべき描画物の優先度が高い描画物のみを描画し、優先度が低い描画物の描画を省略することによって、簡易描画が行われている。具体的には、自車が走行中の道路及び走行すべき道路の脇に位置する建物や画面の手前に位置する建物(図4(b)においてハッチングして表した建物)は優先度が高いものとして描画し、それ以外の建物(図4(b)において破線で表した建物)は優先度が低いものとして描画を省略している。つまり、道路沿いや画面の手前に位置しない建物に対しての描画を省略している。更に、視野内に存在する信号機や案内地旗等の車両の誘導に必要な描画物や、道路自体などについては、描画する優先度が高いものとして描画している。これにより、3次元表示された地図における交差点を自車が曲がる場合において、描画する描画物を適切に削減することができるため、画面描画の負担を適切に軽減することが可能となる。したがって、比較的高速に描画を行うことができ、自車が案内地を曲がるときに、これに伴って、滑らかに画面を追随させることが可能となる。
【0049】
図4(b)に示すような簡易描画は、自車が交差点を曲がってから所定フレームが経過するまで行われる。具体的には、図4(b)中の「B」で示す地点から「C」で示す地点までを自車が走行している間、簡易描画が行われる。そして、「C」で示す地点に自車が到達した際に、正規描画が行われる。つまり、簡易描画から正規描画に切り替えられる。具体的には、簡易描画において描画が省略された描画物を含む全ての描画物が、描画されることとなる。即ち、図4(b)において破線で表した建物などが正規描画される。
【0050】
なお、上記した図4では、3次元表示された地図における交差点を自車が曲がる場合において、優先度が高い描画物のみを描画して、優先度が低い描画物の描画を省略することによって、簡易描画を行う例を示したが、これに限定はされない。他の例では、交差点を自車が曲がる場合に、このように優先度に基づいて描画したり描画を省略したりすると共に、描画物におけるテクスチャの部分を省略したり、描画物における影や飾りなどの描画を省略したり、描画物を構成するポリゴン又はポリラインにおける座標点を間引いたりすることによって、簡易描画を行うことができる。
【0051】
図5は、本実施例に係る地図表示処理を示すフローチャートである。なお、この処理は、CPU22が繰り返し実行する。具体的には、CPU22が予め用意されたプログラムを実行することにより行われる。
【0052】
まず、ステップS101では、CPU22は、表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する。即ち、CPU22は、画面内の概ね全てを新たに描画する必要がある状況であるか否かを判定する。例えば、CPU22は、3次元表示された地図における交差点(案内地)を自車が曲がる場合や、昼画面と夜画面との切り替えが行われる場合などに該当するか否かを判定する。場面が変化した場合(ステップS101;Yes)、処理はステップS102に進み、場面が変化していない場合(ステップS101;No)、処理は当該フローを抜ける。
【0053】
ステップS102では、CPU22は、場面が変化した後(つまり簡易描画の開始後)、所定フレームが経過したか否かを判定する。言い換えると、場面が変化した後における所定フレーム目の描画であるか否かを判定する。ここで、判定に用いる所定フレームは、例えば、場面が変化してから正規描画を行うための処理が完了するまでに要するフレーム数に基づいて設定される。つまり、このような所定フレームを用いて判定を行うことによって、現在、正規描画を適切に実行することが可能な状況であるか否かを判定している。即ち、簡易描画から正規描画に切り替えても良い状況であるか否かを判定している。所定フレーム目の描画である場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS104に進み、所定フレーム目の描画でない場合(ステップS102;No)、処理はステップS103に進む。
【0054】
ステップS103では、所定フレーム目の描画でないため、CPU22は、簡易描画を行う。つまり、変化後の場面に応じた正規の描画を行わずに、正規描画よりも画面描画の負担が軽い簡易描画を行う。具体的には、CPU22は、正規描画を行う場合よりも、表示画面内の対象描画物の詳細度をあえて低くすることによって簡易描画を行う。より詳しくは、CPU22は、以下の(a)〜(d)に示すような描画方法の少なくともいずれか1つを用いることによって、簡易描画を行う。この場合、CPU22は、場面の変化などに基づいて、簡易描画において用いる描画方法を切り替えることができる。
【0055】
(a)地図において表示すべき描画物の優先度に基づき、優先度が高い描画物のみを描画し、優先度が低い描画物の描画を省略する。
【0056】
(b)描画物におけるテクスチャの部分の描画を省略する。
【0057】
(c)描画物における影及び飾りの少なくともいずれかの描画を省略する。
【0058】
(d)描画物を構成するポリゴン又はポリラインにおける座標点を間引く。
【0059】
以上のステップS103の処理が終了すると、処理はステップS102に戻って再度判定を行う。このようにしてステップS102及びS103の処理を繰り返すことによって、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、簡易描画を継続して行う。
【0060】
一方、ステップS104では、所定フレーム目の描画であるため、CPU22は、正規描画を行う。つまり、CPU22は、簡易描画の実行を終了して、変化後の場面に応じた正規描画を行う。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
【0061】
上記した地図表示処理によれば、地図における場面が変化して、画面内の概ね全てを新たに描画する必要があるような場合において、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。例えば、昼画面と夜画面との切り替え時においては、画面における昼夜の切り替わりを速やかに行うことが可能となる。また、3次元表示された地図における交差点を自車が曲がる場合においては、自車の右折や左折などに伴って滑らかに画面を追随させることが可能となる。このようにして画面変化におけるレスポンスを適切に改善することができるため、ユーザのストレスを改善させることが可能となると共に、ナビゲーション装置1の操作感を向上させることが可能となる。
【0062】
以上説明したように、本実施例においては、ナビゲーション装置内のCPUは、表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定手段と、場面変化判定手段によって場面が変化したと判定された場合に、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の場面に応じた正規の描画を行わずに、正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画手段と、場面が変化してから所定フレームが経過した後に、正規の描画を行う正規描画手段と、を備える。これにより、地図における場面が変化した際に、画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。
【0063】
[変形例]
上記では、場面が変化してから所定フレームが経過した時点で、簡易描画から正規描画に切り替える実施例を示したが、これに限定はされない。つまり、1つの簡易描画した画像から正規描画した画像へと、瞬時に切り替えなくても良い。他の例では、このように簡易描画から正規描画に切り替える代わりに、場面が変化してから所定フレームが経過するまでの間に、簡易描画した画像から正規描画した画像へと徐々に変化するように画面描画を行うことができる。具体的には、場面が変化してから所定フレームが経過するまで、画面内の対象描画物の詳細度が徐々に高くなるように、簡易描画を変化させる画面描画を行うことができる。これによっても、地図における場面が変化した際に画面描画の負担を適切に軽減することができるので、画面変化におけるレスポンスを改善することが可能となる。
【0064】
なお、上記した地図表示処理は、CPU22が予め用意されたプログラム(地図表示プログラム)を実行することによって行うことを想定しているが、この代わりに、回路などにおけるハードウェア処理によって行うこととしても良い。また、地図表示プログラムは、予めROM23に格納されていることとしても良いし、地図表示プログラムが記憶されたCDやDVDなどの記録媒体によって外部から供給され、ディスクドライブ31が読み取ったプログラムをROM23に格納するものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例に係るナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例に係る簡易描画を具体的に説明するための図である。
【図3】昼画面と夜画面との切り替え時に行われる簡易描画の例を示す図である。
【図4】3次元表示された地図における交差点を自車が曲がる場合に行われる簡易描画の例を示す図である。
【図5】本実施例に係る地図表示処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1 ナビゲーション装置
10 自立測位装置
18 GPS受信機
20 システムコントローラ
22 CPU
36 データ記憶ユニット
38 通信装置
40 表示ユニット
44 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面上に地図を表示させる地図表示装置であって、
前記表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定手段と、
前記場面変化判定手段によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画手段と、
前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画手段と、を備えることを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
前記簡易描画手段は、前記正規の描画を行う場合よりも、前記表示画面内の対象描画物の詳細度を低くすることによって、前記簡易的な描画を行うことを特徴とする請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記簡易描画手段は、地図において表示すべき描画物の優先度に基づき、前記優先度が高い描画物のみを描画し、前記優先度が低い描画物の描画を省略することによって、前記簡易的な描画を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記簡易描画手段は、少なくとも、自車が走行すべき道路の脇に位置する描画物、前記表示画面において手前に位置する描画物、及び視野内に存在する前記自車を誘導するための描画物は、前記優先度が高い描画物として描画することを特徴とする請求項3に記載の地図表示装置。
【請求項5】
前記簡易描画手段は、描画物におけるテクスチャの部分の描画を省略することによって、前記簡易的な描画を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の地図表示装置。
【請求項6】
前記簡易描画手段は、描画物における影及び飾りの少なくともいずれかの描画を省略することによって、前記簡易的な描画を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の地図表示装置。
【請求項7】
前記簡易描画手段は、描画物を構成するポリゴン又はポリラインにおける座標点を間引くことによって、前記簡易的な描画を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の地図表示装置。
【請求項8】
前記場面変化判定手段は、3次元表示された地図における交差点を自車が曲がる場合に、前記場面が変化したと判定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の地図表示装置。
【請求項9】
前記場面変化判定手段は、昼画面と夜画面との切り替えが行われる場合に、前記場面が変化したと判定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の地図表示装置。
【請求項10】
前記所定フレームは、前記場面が変化してから前記正規描画を行うための処理が完了するまでに要するフレーム数に基づいて設定されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の地図表示装置。
【請求項11】
表示画面上に地図を表示させる地図表示装置において実行される地図表示方法であって、
前記表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定工程と、
前記場面変化判定工程によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画工程と、
前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画工程と、を備えることを特徴とする地図表示方法。
【請求項12】
コンピュータを備える地図表示装置において実行される地図表示プログラムであって、
表示画面に表示すべき地図における場面が変化したか否かを判定する場面変化判定手段、
前記場面変化判定手段によって前記場面が変化したと判定された場合に、前記場面が変化してから所定フレームが経過するまで、変化後の前記場面に応じた正規の描画を行わずに、前記正規の描画よりも画面描画の負担が軽い簡易的な描画を行う簡易描画手段、
前記場面が変化してから前記所定フレームが経過した後に、前記正規の描画を行う正規描画手段、として前記コンピュータを機能させることを特徴とする地図表示プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の地図表示プログラムを記録したことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58576(P2009−58576A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223599(P2007−223599)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】