垂直磁気記録媒体の製造方法及び垂直磁気記録媒体、磁気ディスク装置
【課題】高記録密度を有する垂直磁気記録媒体の量産を安定して行うためには、軟磁性下地層の特性を劣化させることなく成膜を行う技術が必要である。
【解決手段】基板1上に密着層2を形成し、次に第一軟磁性層31及び第二軟磁性層32をそれぞれ25nm形成し、非磁性層33であるRuを形成し、第三軟磁性層34及び第四軟磁性層35をそれぞれ25nm形成して軟磁性下地層3を作製した。第一軟磁性層31と第二軟磁性層32及び第三軟磁性層34と第四軟磁性層35はそれぞれ強磁性的に結合しており、第二軟磁性層32と第三軟磁性層34はRu非磁性層33を介して反強磁性的に結合している。その後、基板半径方向に磁界を印加しながら冷却を行い、次に、中間層4であるRuを形成し、記録層5を形成し、保護膜6を形成した。
【解決手段】基板1上に密着層2を形成し、次に第一軟磁性層31及び第二軟磁性層32をそれぞれ25nm形成し、非磁性層33であるRuを形成し、第三軟磁性層34及び第四軟磁性層35をそれぞれ25nm形成して軟磁性下地層3を作製した。第一軟磁性層31と第二軟磁性層32及び第三軟磁性層34と第四軟磁性層35はそれぞれ強磁性的に結合しており、第二軟磁性層32と第三軟磁性層34はRu非磁性層33を介して反強磁性的に結合している。その後、基板半径方向に磁界を印加しながら冷却を行い、次に、中間層4であるRuを形成し、記録層5を形成し、保護膜6を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体の製造方法及び垂直磁気記録媒体に係わり、特に垂直磁気記録ディスクを量産するための製造方法に関する。また、垂直磁気記録ディスクを搭載した磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進行により日常的に扱う情報量が増加し、これに伴って磁気記憶装置に対する大容量化の要求が強くなっている。これに対応すべく、高感度の磁気ヘッドや低ノイズの磁気記録媒体などの開発が精力的に行われている。現在実用化されている面内磁気記録方式の場合は媒体に記録された磁化が互いに逆向きに向き合って隣接するので、線記録密度を高めるためには記録層の保磁力を増大させるとともに膜厚を減少させることが必要である。
【0003】
ところが、記録層の保磁力が大きくなると記録ヘッドの書き込み能力が不足する問題が生じ、記録層の膜厚が小さくなると熱減磁により記録情報が失われる問題が生じる。このような問題のために現在の面内磁気記録方式を用いて記録密度を向上させることが困難となってきている。
【0004】
これらの問題を克服する手段として垂直磁気記録方式が検討されている。垂直磁気記録方式の場合は隣接する磁化が向き合わないために高密度記録状態が安定であり、本質的に高密度記録に適した方式であると考えられる。また、単磁極型の記録ヘッドと軟磁性裏打層(軟磁性下地層)を有する2層垂直磁気記録媒体とを組合せることにより、記録効率を上げることができ、記録膜の保磁力増加に対応することも可能であると考えられる。
【0005】
軟磁性下地層(SUL)に求められる特性は、記録層の書き込み補助を行うために十分な飽和磁束密度と膜厚の積、スパイクノイズの原因になる磁壁の除去、浮遊磁界耐性と隣接消去に対する耐性である。これらを兼ね備えたSULとして、軟磁性層と軟磁性層の間にRuを挟み込み、それぞれの軟磁性層を反強磁性結合(APC)させて、磁壁の発生を防ぎ、浮遊磁界耐性を向上させるものが知られている(以下、この構成のSULのことをAPC-SULと呼ぶ)。安定して量産を行うことを考慮すると、面内媒体の量産に用いられているように、基板を加熱するのが好ましい。または、特許文献1や特許文献2に記載されているように、一度加熱を行い、冷却を行うことにより、常に基板温度をある温度で一定にしておくことが好ましい。
【0006】
【特許文献1】特開2005-93040号公報
【特許文献2】特開2002-367160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、APC-SULは熱に弱いため、基板を加熱してAPC-SULを形成すると、後に冷却を行っても反強磁性結合が失われてしまうという問題がある。また、軟磁性層の膜厚が厚いため、スパッタプラズマによる基板温度上昇がAPC−SULの特性を下げるという問題がある。さらに、成膜枚数が増えるにつれて、軟磁性層のターゲットが熱を帯び、それが成膜中に基板に伝わり、基板温度上昇を招き、APC−SULの特性を下げるという問題がある。これまでは、このような問題のあるなか、APC-SULの量産についての検討が十分に行われていなかった。垂直磁気記録媒体が製品化され、量産を行うためには、性能を満たした垂直磁気記録媒体を、一枚のみではなく、大量に安定して製造を行わなくてはならない。
【0008】
本発明の目的は、反強磁性結合を失わせることなく、軟磁性下地層の成膜が可能な垂直磁気記録媒体の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、磁気特性を劣化させることなく量産に適した垂直磁気記録媒体を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、信頼性の高い垂直磁気記録ディスクを搭載した磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成ための本発明の代表的な発明は、
基板の上に密着層と、第一の軟磁性層と、第二の軟磁性層と、非磁性層と、第三の軟磁性層と、第四の軟磁性層と、中間層と、記録層と、保護膜とをスパッタリングにより順次積層してなる垂直記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層を積層する前か後に、磁界中冷却を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟磁性下地層あるいは記録層を形成する際の温度上昇を抑制でき、従来技術では困難とされていた垂直磁気記録媒体の量産を、軟磁性下地層の特性や、記録層の記録再生特性をいずれも劣化させることなく安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例の垂直磁気記録媒体は、高速スパッタ装置(ANELVA株式会社製、C3040-P22)を用いて作製した。本装置は22個のプロセスチャンバ(P1〜P22)、基板ロードチャンバ(以下LCと記す)、基板アンロードチャンバ(以下ULCと記す)、ホルダ・アッシング・チャンバ(P0)、4個のコーナーチャンバ(C1〜C4)、VTC(Vacuum Tunnel Chamber)から構成されている。それぞれのチャンバは独立に排気されており、到達真空度は5×10−5Pa以下である。各成膜チャンバにはロータリー・マグネトロン・カソードが片面に2個ずつ付いており、各チャンバに合計4個付いている。そして、各キャリアには、ホルダが2つ付いており、同時に2枚の基板を搭載できる。各チャンバ毎にキャリアは停止し、スパッタリングにより各層が形成される。この工程を、キャリアがP1〜P22まで順に搬送しながら行うことで、基板上に膜が積層される。
【0014】
チャンバには図3のようにターゲットを取り付けた。まず、各チャンバの真空度が1×10-4Pa以下の状態まで真空排気を行ったあと、ターゲット表面の付着物や、酸化物等を取り除き、清浄表面を現す目的で、図3に示す条件で1000枚の成膜を2回に分けて行った。その後、各チャンバの真空度が5×10-5Pa以下の状態まで再度真空排気を行ったあと、目的とする媒体を作製した。
【0015】
軟磁性下地層の磁気特性は振動試料型磁力計VSM(VSM1600, DMS社製)を用いて測定した。作製した垂直磁気記録媒体を6mm角に切り出し、ホルダにセットし、基板半径方向および周方向に磁界を±20kA/m印加して測定を行った。
【0016】
記録再生特性はスピンスタンドによって評価した。評価に用いたヘッドはシールドギャップ長55nm、トラック幅120nmの巨大磁気抵抗効果を利用した再生素子と、トラック幅170nmの単磁極書き込み素子からなる複合磁気ヘッドである。周速10m/sec、スキュー角0度、磁気スペーシング約15nmの条件で再生出力とノイズを測定し、媒体S/Nは線記録密度1970fr/mmの信号を記録したときの孤立波再生出力と線記録密度23620fr/mmの信号を記録したときの積分ノイズとの比として求めた。
【0017】
以下、本発明の具体的な実施例について、図面を参照して説明する。
<実施例1>
図1に実施例1の垂直磁気記録媒体(垂直磁気記録ディスク)100の構成を示す。基板1には外形65mm、内径20mm、厚さ0.635mmのガラスディスクを用い、スパッタリング法により順次積層した、密着層2、軟磁性下地層3、中間層4、記録層5、保護膜6を有する。図4に各層の作製に用いたターゲットとArガス圧、成膜レート及び膜厚を示す。
【0018】
本実施例の媒体の製造プロセスを図2に示す。まず、ガラス基板1上に密着層2であるAl−Tiを10nm形成し、次に第一軟磁性層31及び第二軟磁性層32であるCo−Ta−Zr合金(Co系合金)をそれぞれ25nm形成し、非磁性層33であるRuを0.7nm、第三軟磁性層34及び第四軟磁性層35であるCo−Ta−Zrをそれぞれ25nm形成して軟磁性下地層3を作製した。ここで第一軟磁性層31と第二軟磁性層32及び第三軟磁性層34と第四軟磁性層35はそれぞれ強磁性的に結合しており、第二軟磁性層32と第三軟磁性層34はRu非磁性層33を介して反強磁性的に結合している。その後、後述する方法で、基板半径方向に磁界を印加しながら冷却を行った。次に、中間層4であるRuを20nm形成した。そして、記録層5であるCo−Cr−Pt-SiO2合金(Co−Cr−Pt系合金)を14nm形成し、保護膜6であるカーボンをCVD法を用いて4nm形成した。その後、パーフルオロアルキルポリエーテル系の材料をフルオルカーボン材で希釈した潤滑剤を塗布し、表面にバニッシュをかけて本実施例である垂直磁気記録ディスク100を作製した。スパッタガスとしてはArを使用し、記録層5を形成する際には酸素を20mPaの分圧で添加した。保護膜6を形成する時は、C2H4ガスを使用した。
【0019】
ここで、冷却機構について説明する。図5に示すように、冷却チャンバにはガス導入管13及び排気口16が設けられ、内部に断面がコの字型の冷却器14がキャリア15に保持された基板を所定の距離をあけて囲むように設けられている。ガス導入管13は、バルブを介して容器12に繋がっている。容器12はバルブを介してガス供給源11から水素ガスを充填できるようになっている。冷却器14は冷凍機(図示せず)と連結され、循環する冷媒により、−140℃に保たれている。排気口16が開いたときに真空ポンプ17により水素ガスの排気を行う。
【0020】
次に冷却プロセスについて説明する。図6(a)のように、キャリア15を冷却チャンバに搬入し、冷却器14の間に挿入する。この状態で図6(b)のように排気口16を閉めて冷却チャンバを密閉する。次にガス導入管13側のバルブを開き、容器12に溜め込んだ水素ガスをガス導入管13を介して冷却チャンバ内に一気に導入し、冷却チャンバの内部圧力を80Pa以上にする(図6(c))。この状態で3sec間保持し、水素ガスにより、冷却器14と基板との間の熱交換を行う。その後、バルブを閉じ、排気口16を開け、溜め込んでいた水素ガスを排気する。同時にガス供給源11側のバルブを開き、ガス供給源11から容器12に水素ガスを充填する。水素ガスの溜め込みから排気までを1サイクルとして、軟磁性下地層3の膜厚によってサイクル数を変更し、基板1を所定の温度に冷却している。基板1の温度は、キャリア15が冷却チャンバから次のチャンバに移動する際に測定している。基板温度は少なくとも120°Cまで下げることが望ましい。
【0021】
冷却中は基板半径方向に磁界を印加することが望ましい。ここで軟磁性下地層3の半径方向の磁化が飽和する必要があり、磁界の大きさは少なくとも基板上で2kA/m以上の磁界が印加されていれば良い。また、キャリア15の移動中に基板1に磁界が印加されないようにすることが望ましく、キャリア15が冷却チャンバに入り停止した後、チャンバに設置された電磁石により基板半径方向に磁界を印加して、キャリア15が搬送を開始する0.5秒前に磁界をゼロにしている。このような磁界中冷却工程を行うことにより、軟磁性下地層3に、より確実に一軸異方性を付与することができる。
【0022】
本実施例の媒体Aを図4の成膜プロセス条件で作製し、2000枚の連続成膜を行った。比較例として、図7に示すように、冷却を行わない媒体Bと、第一軟磁性層31と第三軟磁性層34をそれぞれ50nm形成した媒体Cを用意した。比較例の媒体B、Cの他の層構成や成膜条件は本実施例の媒体Aと同じである。100枚目に作製した本実施例の媒体Aの磁化曲線を図8に示す。基板半径方向に磁界を印加して測定した磁化曲線は、ゼロ磁界を含む磁界範囲で安定な磁化状態を有するステップ状の形状をしている。この安定な領域では第一及び第二軟磁性層と第三及び第四軟磁性層の磁化は互いに反平行を向いており、Ru非磁性層を介して反強磁性的に結合している。安定な領域から、正磁界側の飽和磁化状態へ遷移する磁界の絶対値は上記軟磁性層間に働く反強磁性的な結合の大きさを示しており、以下Hexと記す。Hexが大きいということは、その磁界範囲で外部磁界に対する磁化状態の変化を抑制することが出来るため、軟磁性下地層の課題の一つである外部浮遊磁界耐力を改善することに有効である。
【0023】
図9の(a)に本実施例の媒体Aの成膜枚数に対するHexの変化を、(b)及び(c)に比較例の媒体B及びCのHexの変化を示す。(a)では、2000枚目までHexの値は殆ど変わらず、安定した特性が得られている。しかし(b)では、成膜開始は(a)と同等のHexを示しているが、成膜枚数と共にその値が減少していることがわかる。さらに(c)では、成膜開始よりHexの値が小さく、成膜枚数と共にさらに減少していくことがわかる。
【0024】
次に上記媒体の記録再生特性を評価し、Hexとの関係を調べた。図10の(a)は本実施例の媒体Aの媒体S/Nを、(b)及び(c)は比較例の媒体B及びCの媒体S/Nを示す。本実施例の媒体Aは、作成枚数によらず高くて安定したS/Nが得られた。一方、比較例の媒体B及びCは、Hexの変化と同様に成膜枚数とともに低下している。(b)では1500枚目以上で、媒体Aに比較して約-1dB劣化し、(c)では成膜開始ですでに-2dB程度劣化していることがわかる。図9のHexとの関係を調べると、Hexが2.2kA/m以上で高い媒体S/Nを示すことがわかる。
【0025】
これらのことから、本実施例のように、軟磁性下地層3を少なくとも4工程に分けて成膜し、冷却を行うことで、HexやS/Nを低下させることなく、安定に連続成膜を行うことができることが分かった。
【0026】
本実施例の媒体Aと同じ層構成及び成膜プロセスで形成された媒体を用いて、冷却中の磁界の大きさとHexの関係を調べた。その結果を図11に示す。磁界の大きさが2kA/m以上の場合に2.2kA/m以上の大きなHexが得られることが分かった。より安定した高Hexを得るためには磁界の大きさが4kA/m以上であることが望ましい。
【0027】
次に、冷却時間を変えて冷却後の基板温度とHexの関係を調べた。その結果を図12に示す。印加磁界の大きさは4kA/mとし、熱交換時間と排気時間は同じにしている。基板温度が120°C以上の場合に、Hexは急激に低下することが分かった。また、より高いHexを得るためには基板温度は80°Cまで下げることが望ましいことが分かった。図12に示す結果から、基板の冷却温度は50°C〜120°Cの範囲にするのが好適である。
【0028】
冷却時の熱交換時間と排気時間がHexに及ぼす影響を調べた。媒体の層構成及び成膜条件は本実施例の媒体Aと同じである。ここで熱交換時間と排気時間の和は5.9secと一定にしている。図13に熱交換時間と排気時間、連続で成膜した100枚目と2000枚目のHexを示す。熱交換時間が2secの媒体Dは、100枚目でもHexは他と比べて小さく、成膜枚数が増えるとHexは低下する。熱交換時間を2.5secにすると2000枚目まで安定して高いHexが得られる。さらに熱交換時間を4secまで長くすると、100枚目のHexも逆に小さくなることが分かった。熱交換時間が2.5secまでは時間が長いほど基板温度は低下するが、2.5sec以上長くしても基板温度は殆ど変わらないと考えられる。熱交換時間が4sec以上でHexが低下したのは、排気時間が短くなって、注入している水素ガスが十分に排気されないためと考えられる。このことから、安定して高いHexを得るためには熱交換時間は2.5sec以上で、かつ排気時間が2.0sec以上であることが望ましいことが分かった。
【0029】
実施例1と同じ層構成の媒体を用いて冷却のタイミングとHexの大きさと安定性の関係を調べた。冷却の工程箇所以外は実施例1の成膜プロセスと同じである。図14に、成膜工程の概略図を示す。図15に作製した媒体K〜NのHexと媒体S/Nについてまとめた。
媒体Kを作製するための成膜工程(1)は、冷却工程が非磁性層を形成する工程と第三軟磁性層を形成する工程の間に設けられている。
媒体Lを作製するための成膜工程(2)は、冷却工程が第二軟磁性層を形成する工程と非磁性層を形成する工程の間に設けられている。
比較例の媒体Mを作製するための成膜工程(3)は、冷却工程が密着層を形成する工程と第一軟磁性層を形成する工程の間に設けられている。
比較例の媒体Nを作製するための成膜工程(4)は、冷却工程が中間層を形成する工程と記録層を形成する工程の間に設けられている。
【0030】
媒体KおよびLは、実施例1で作成した媒体Aよりも大きいHexと高い媒体S/Nが得られ、2000枚目も同等の特性を持つ媒体を作製できる。また、比較例の媒体M及びNは、100枚目のHex、媒体S/Nともに実施例1の媒体Aより小さく、2000枚目の値は減少している。このことから、冷却を行う個所は非磁性層を形成する前か後が良く、第二軟磁性層を形成する工程と非磁性層を形成する工程の間か、非磁性層を形成する工程と第三軟磁性層を形成する工程の間か、或いは実施例1で示したように第四軟磁性層を形成する工程と中間層を形成する工程の間に行うことが望ましいことがわかる。特に第二軟磁性層を形成する工程と、非磁性層を形成する工程との間に冷却工程を行うことが、高いHexと媒体S/Nを得る上で最も効果があることがわかる。
【0031】
<実施例2>
図16に実施例2の垂直磁気記録媒体(垂直磁気記録ディスク)200の構成を示す。基板21には外形65mm、内径20mm、厚さ0.635mmのガラスディスクを用い、スパッタリング法により、密着層22、軟磁性下地層23、中間層24、記録層25、保護膜26を順次形成した。図17に本実施例の媒体の製造プロセスを示す。まず、ガラス基板21上に密着層22であるAl−Tiを10nm形成し、次に第一軟磁性層231であるCo−Ta−Zrを50nm形成し、その上に非磁性層232であるRuを0.7nm、第二軟磁性層233であるCo−Ta−Zr合金をそれぞれ50nm形成して軟磁性下地層23を作製した。ここで第一軟磁性層231と第二軟磁性層233はRu非磁性層232を介して反強磁性的に結合している。その後、基板半径方向に磁界を印加しながら基板を所定の温度まで冷却した。次に、第一中間層241であるTaを2nm、第二中間層242であるRuを20nm形成した。その後、2回目の冷却を行い、記録層25であるCo−Cr−Pt-SiO2合金を14nm形成し、保護膜26であるカーボンをCVD法を用いて4nm形成した。その後、パーフルオロアルキルポリエーテル系の材料をフルオルカーボン材で希釈した潤滑剤を塗布し、表面にバニッシュをかけて垂直磁気記録ディスク200を作製した。スパッタガスとしてはArを使用し、記録層25を形成する際には酸素を20mPaの分圧で添加した。保護膜26を形成する時は、C2H4ガスを使用した。本実施例2の冷却条件は実施例1と同じである。
【0032】
実施例1の媒体と同様に、2000枚の連続成膜を行い、100枚目と2000枚目のHexと媒体S/Nを評価した。比較のために実施例1の媒体Aの結果をあわせて図18に示す。本実施例2の媒体Oは上記実施例1で作成した媒体Aと同程度の特性が得られた。このことから、冷却工程を2回行うことにより、軟磁性下地層の4分割成膜と同様の効果が得られることがわかった。
【0033】
図19に上記実施例1及び2の垂直記録媒体(垂直磁気記録ディスク)100,200を搭載した磁気ディスク装置の一例を示す。磁気ディスク装置1000は、垂直磁気記録ディスク100、垂直磁気記録ディスク100を装着し回転させるスピンドルモータ300、垂直磁気記録ディスク100に対して磁気記録あるいは再生を行う磁気ヘッド400、磁気ヘッド400を支持するサスペンション500、サスペンション500が取り付けられボイスコイル700を保持するキャリッジ600、ボイスコイル700の上下に配置された磁気回路800、磁気ヘッド400のアンロード時に磁気ヘッド400が退避するランプ機構900とを備えている。ボイスコイル700に通電することにより、キャリッジ600が回転し、サスペンション500に支持されている磁気ヘッド400が、垂直磁気記録ディスク100,200の半径方向に移動されて位置決めされ、磁気記録あるいは再生を行う。この磁気ディスク装置は、上記実施例の垂直磁気記録ディスクを搭載しているので、磁気特性に優れた高信頼性の磁気ディスク装置である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1による垂直磁気記録媒体の断面図である。
【図2】実施例1による垂直磁気記録媒体の製造プロセスを示す図である。
【図3】ターゲット表面の清浄表面を現す目的で行う成膜の条件を示す図である。
【図4】実施例1による垂直磁気記録媒体の成膜条件を示す図である。
【図5】冷却機構の構成を示す図である。
【図6】冷却機構の動作を示す図である。
【図7】実施例1の媒体と比較例の媒体の層構成を示す図である。
【図8】実施例1の垂直磁気記録媒体の磁化曲線を示す図である。
【図9】連続成膜時の成膜枚数と反強磁性結合磁界Hexの関係を示す図である。
【図10】連続成膜時の成膜枚数と媒体S/Nの関係を示す図である。
【図11】冷却時の磁界の大きさと反強磁性結合磁界Hexの関係を示す図である。
【図12】冷却後の基板温度と反強磁性結合磁界Hexの関係を示す図である。
【図13】熱交換時間と排気時間、連続成膜した100枚目と2000枚目のHexを示す図である。
【図14】実施例1と比較例の垂直磁気記録媒体の製造プロセスを示す図である。
【図15】図14に示したプロセスで作成した媒体のHexと媒体S/Nを示す図である。
【図16】本発明の実施例2による垂直磁気記録媒体の断面図である。
【図17】実施例2による垂直磁気記録媒体の製造プロセスを示す図である。
【図18】図17のプロセスで作成した実施例2による垂直磁気記録媒体のHexと媒体S/Nを示す図である。
【図19】実施例1及び2による垂直磁気記録ディスクを搭載した磁気ディスク装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1,21…基板、
2,22…密着層、
3,23…軟磁性下地層、
31,231…第一の軟磁性層、
32,233…第二の軟磁性層、
33,232…非磁性層、
34…第三の軟磁性層、
35…第四の軟磁性層、
4,24…中間層、
5,25…記録層、
6,26…保護膜、
11…ガス供給源、
12…容器、
13…ガス導入管、
14…冷却器、
15…キャリア、
16…排気口、
17…真空ポンプ、
100,200…垂直磁気記録媒体(垂直磁気記録ディスク)、
300…スピンドルモータ、
400…磁気ヘッド、
500…サスペンション、
600…キャリッジ、
700…ボイスコイル、
800…磁気回路、
900…ランプ機構、
1000…磁気ディスク装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録媒体の製造方法及び垂直磁気記録媒体に係わり、特に垂直磁気記録ディスクを量産するための製造方法に関する。また、垂直磁気記録ディスクを搭載した磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進行により日常的に扱う情報量が増加し、これに伴って磁気記憶装置に対する大容量化の要求が強くなっている。これに対応すべく、高感度の磁気ヘッドや低ノイズの磁気記録媒体などの開発が精力的に行われている。現在実用化されている面内磁気記録方式の場合は媒体に記録された磁化が互いに逆向きに向き合って隣接するので、線記録密度を高めるためには記録層の保磁力を増大させるとともに膜厚を減少させることが必要である。
【0003】
ところが、記録層の保磁力が大きくなると記録ヘッドの書き込み能力が不足する問題が生じ、記録層の膜厚が小さくなると熱減磁により記録情報が失われる問題が生じる。このような問題のために現在の面内磁気記録方式を用いて記録密度を向上させることが困難となってきている。
【0004】
これらの問題を克服する手段として垂直磁気記録方式が検討されている。垂直磁気記録方式の場合は隣接する磁化が向き合わないために高密度記録状態が安定であり、本質的に高密度記録に適した方式であると考えられる。また、単磁極型の記録ヘッドと軟磁性裏打層(軟磁性下地層)を有する2層垂直磁気記録媒体とを組合せることにより、記録効率を上げることができ、記録膜の保磁力増加に対応することも可能であると考えられる。
【0005】
軟磁性下地層(SUL)に求められる特性は、記録層の書き込み補助を行うために十分な飽和磁束密度と膜厚の積、スパイクノイズの原因になる磁壁の除去、浮遊磁界耐性と隣接消去に対する耐性である。これらを兼ね備えたSULとして、軟磁性層と軟磁性層の間にRuを挟み込み、それぞれの軟磁性層を反強磁性結合(APC)させて、磁壁の発生を防ぎ、浮遊磁界耐性を向上させるものが知られている(以下、この構成のSULのことをAPC-SULと呼ぶ)。安定して量産を行うことを考慮すると、面内媒体の量産に用いられているように、基板を加熱するのが好ましい。または、特許文献1や特許文献2に記載されているように、一度加熱を行い、冷却を行うことにより、常に基板温度をある温度で一定にしておくことが好ましい。
【0006】
【特許文献1】特開2005-93040号公報
【特許文献2】特開2002-367160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、APC-SULは熱に弱いため、基板を加熱してAPC-SULを形成すると、後に冷却を行っても反強磁性結合が失われてしまうという問題がある。また、軟磁性層の膜厚が厚いため、スパッタプラズマによる基板温度上昇がAPC−SULの特性を下げるという問題がある。さらに、成膜枚数が増えるにつれて、軟磁性層のターゲットが熱を帯び、それが成膜中に基板に伝わり、基板温度上昇を招き、APC−SULの特性を下げるという問題がある。これまでは、このような問題のあるなか、APC-SULの量産についての検討が十分に行われていなかった。垂直磁気記録媒体が製品化され、量産を行うためには、性能を満たした垂直磁気記録媒体を、一枚のみではなく、大量に安定して製造を行わなくてはならない。
【0008】
本発明の目的は、反強磁性結合を失わせることなく、軟磁性下地層の成膜が可能な垂直磁気記録媒体の製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、磁気特性を劣化させることなく量産に適した垂直磁気記録媒体を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、信頼性の高い垂直磁気記録ディスクを搭載した磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成ための本発明の代表的な発明は、
基板の上に密着層と、第一の軟磁性層と、第二の軟磁性層と、非磁性層と、第三の軟磁性層と、第四の軟磁性層と、中間層と、記録層と、保護膜とをスパッタリングにより順次積層してなる垂直記録媒体の製造方法において、
前記非磁性層を積層する前か後に、磁界中冷却を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟磁性下地層あるいは記録層を形成する際の温度上昇を抑制でき、従来技術では困難とされていた垂直磁気記録媒体の量産を、軟磁性下地層の特性や、記録層の記録再生特性をいずれも劣化させることなく安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例の垂直磁気記録媒体は、高速スパッタ装置(ANELVA株式会社製、C3040-P22)を用いて作製した。本装置は22個のプロセスチャンバ(P1〜P22)、基板ロードチャンバ(以下LCと記す)、基板アンロードチャンバ(以下ULCと記す)、ホルダ・アッシング・チャンバ(P0)、4個のコーナーチャンバ(C1〜C4)、VTC(Vacuum Tunnel Chamber)から構成されている。それぞれのチャンバは独立に排気されており、到達真空度は5×10−5Pa以下である。各成膜チャンバにはロータリー・マグネトロン・カソードが片面に2個ずつ付いており、各チャンバに合計4個付いている。そして、各キャリアには、ホルダが2つ付いており、同時に2枚の基板を搭載できる。各チャンバ毎にキャリアは停止し、スパッタリングにより各層が形成される。この工程を、キャリアがP1〜P22まで順に搬送しながら行うことで、基板上に膜が積層される。
【0014】
チャンバには図3のようにターゲットを取り付けた。まず、各チャンバの真空度が1×10-4Pa以下の状態まで真空排気を行ったあと、ターゲット表面の付着物や、酸化物等を取り除き、清浄表面を現す目的で、図3に示す条件で1000枚の成膜を2回に分けて行った。その後、各チャンバの真空度が5×10-5Pa以下の状態まで再度真空排気を行ったあと、目的とする媒体を作製した。
【0015】
軟磁性下地層の磁気特性は振動試料型磁力計VSM(VSM1600, DMS社製)を用いて測定した。作製した垂直磁気記録媒体を6mm角に切り出し、ホルダにセットし、基板半径方向および周方向に磁界を±20kA/m印加して測定を行った。
【0016】
記録再生特性はスピンスタンドによって評価した。評価に用いたヘッドはシールドギャップ長55nm、トラック幅120nmの巨大磁気抵抗効果を利用した再生素子と、トラック幅170nmの単磁極書き込み素子からなる複合磁気ヘッドである。周速10m/sec、スキュー角0度、磁気スペーシング約15nmの条件で再生出力とノイズを測定し、媒体S/Nは線記録密度1970fr/mmの信号を記録したときの孤立波再生出力と線記録密度23620fr/mmの信号を記録したときの積分ノイズとの比として求めた。
【0017】
以下、本発明の具体的な実施例について、図面を参照して説明する。
<実施例1>
図1に実施例1の垂直磁気記録媒体(垂直磁気記録ディスク)100の構成を示す。基板1には外形65mm、内径20mm、厚さ0.635mmのガラスディスクを用い、スパッタリング法により順次積層した、密着層2、軟磁性下地層3、中間層4、記録層5、保護膜6を有する。図4に各層の作製に用いたターゲットとArガス圧、成膜レート及び膜厚を示す。
【0018】
本実施例の媒体の製造プロセスを図2に示す。まず、ガラス基板1上に密着層2であるAl−Tiを10nm形成し、次に第一軟磁性層31及び第二軟磁性層32であるCo−Ta−Zr合金(Co系合金)をそれぞれ25nm形成し、非磁性層33であるRuを0.7nm、第三軟磁性層34及び第四軟磁性層35であるCo−Ta−Zrをそれぞれ25nm形成して軟磁性下地層3を作製した。ここで第一軟磁性層31と第二軟磁性層32及び第三軟磁性層34と第四軟磁性層35はそれぞれ強磁性的に結合しており、第二軟磁性層32と第三軟磁性層34はRu非磁性層33を介して反強磁性的に結合している。その後、後述する方法で、基板半径方向に磁界を印加しながら冷却を行った。次に、中間層4であるRuを20nm形成した。そして、記録層5であるCo−Cr−Pt-SiO2合金(Co−Cr−Pt系合金)を14nm形成し、保護膜6であるカーボンをCVD法を用いて4nm形成した。その後、パーフルオロアルキルポリエーテル系の材料をフルオルカーボン材で希釈した潤滑剤を塗布し、表面にバニッシュをかけて本実施例である垂直磁気記録ディスク100を作製した。スパッタガスとしてはArを使用し、記録層5を形成する際には酸素を20mPaの分圧で添加した。保護膜6を形成する時は、C2H4ガスを使用した。
【0019】
ここで、冷却機構について説明する。図5に示すように、冷却チャンバにはガス導入管13及び排気口16が設けられ、内部に断面がコの字型の冷却器14がキャリア15に保持された基板を所定の距離をあけて囲むように設けられている。ガス導入管13は、バルブを介して容器12に繋がっている。容器12はバルブを介してガス供給源11から水素ガスを充填できるようになっている。冷却器14は冷凍機(図示せず)と連結され、循環する冷媒により、−140℃に保たれている。排気口16が開いたときに真空ポンプ17により水素ガスの排気を行う。
【0020】
次に冷却プロセスについて説明する。図6(a)のように、キャリア15を冷却チャンバに搬入し、冷却器14の間に挿入する。この状態で図6(b)のように排気口16を閉めて冷却チャンバを密閉する。次にガス導入管13側のバルブを開き、容器12に溜め込んだ水素ガスをガス導入管13を介して冷却チャンバ内に一気に導入し、冷却チャンバの内部圧力を80Pa以上にする(図6(c))。この状態で3sec間保持し、水素ガスにより、冷却器14と基板との間の熱交換を行う。その後、バルブを閉じ、排気口16を開け、溜め込んでいた水素ガスを排気する。同時にガス供給源11側のバルブを開き、ガス供給源11から容器12に水素ガスを充填する。水素ガスの溜め込みから排気までを1サイクルとして、軟磁性下地層3の膜厚によってサイクル数を変更し、基板1を所定の温度に冷却している。基板1の温度は、キャリア15が冷却チャンバから次のチャンバに移動する際に測定している。基板温度は少なくとも120°Cまで下げることが望ましい。
【0021】
冷却中は基板半径方向に磁界を印加することが望ましい。ここで軟磁性下地層3の半径方向の磁化が飽和する必要があり、磁界の大きさは少なくとも基板上で2kA/m以上の磁界が印加されていれば良い。また、キャリア15の移動中に基板1に磁界が印加されないようにすることが望ましく、キャリア15が冷却チャンバに入り停止した後、チャンバに設置された電磁石により基板半径方向に磁界を印加して、キャリア15が搬送を開始する0.5秒前に磁界をゼロにしている。このような磁界中冷却工程を行うことにより、軟磁性下地層3に、より確実に一軸異方性を付与することができる。
【0022】
本実施例の媒体Aを図4の成膜プロセス条件で作製し、2000枚の連続成膜を行った。比較例として、図7に示すように、冷却を行わない媒体Bと、第一軟磁性層31と第三軟磁性層34をそれぞれ50nm形成した媒体Cを用意した。比較例の媒体B、Cの他の層構成や成膜条件は本実施例の媒体Aと同じである。100枚目に作製した本実施例の媒体Aの磁化曲線を図8に示す。基板半径方向に磁界を印加して測定した磁化曲線は、ゼロ磁界を含む磁界範囲で安定な磁化状態を有するステップ状の形状をしている。この安定な領域では第一及び第二軟磁性層と第三及び第四軟磁性層の磁化は互いに反平行を向いており、Ru非磁性層を介して反強磁性的に結合している。安定な領域から、正磁界側の飽和磁化状態へ遷移する磁界の絶対値は上記軟磁性層間に働く反強磁性的な結合の大きさを示しており、以下Hexと記す。Hexが大きいということは、その磁界範囲で外部磁界に対する磁化状態の変化を抑制することが出来るため、軟磁性下地層の課題の一つである外部浮遊磁界耐力を改善することに有効である。
【0023】
図9の(a)に本実施例の媒体Aの成膜枚数に対するHexの変化を、(b)及び(c)に比較例の媒体B及びCのHexの変化を示す。(a)では、2000枚目までHexの値は殆ど変わらず、安定した特性が得られている。しかし(b)では、成膜開始は(a)と同等のHexを示しているが、成膜枚数と共にその値が減少していることがわかる。さらに(c)では、成膜開始よりHexの値が小さく、成膜枚数と共にさらに減少していくことがわかる。
【0024】
次に上記媒体の記録再生特性を評価し、Hexとの関係を調べた。図10の(a)は本実施例の媒体Aの媒体S/Nを、(b)及び(c)は比較例の媒体B及びCの媒体S/Nを示す。本実施例の媒体Aは、作成枚数によらず高くて安定したS/Nが得られた。一方、比較例の媒体B及びCは、Hexの変化と同様に成膜枚数とともに低下している。(b)では1500枚目以上で、媒体Aに比較して約-1dB劣化し、(c)では成膜開始ですでに-2dB程度劣化していることがわかる。図9のHexとの関係を調べると、Hexが2.2kA/m以上で高い媒体S/Nを示すことがわかる。
【0025】
これらのことから、本実施例のように、軟磁性下地層3を少なくとも4工程に分けて成膜し、冷却を行うことで、HexやS/Nを低下させることなく、安定に連続成膜を行うことができることが分かった。
【0026】
本実施例の媒体Aと同じ層構成及び成膜プロセスで形成された媒体を用いて、冷却中の磁界の大きさとHexの関係を調べた。その結果を図11に示す。磁界の大きさが2kA/m以上の場合に2.2kA/m以上の大きなHexが得られることが分かった。より安定した高Hexを得るためには磁界の大きさが4kA/m以上であることが望ましい。
【0027】
次に、冷却時間を変えて冷却後の基板温度とHexの関係を調べた。その結果を図12に示す。印加磁界の大きさは4kA/mとし、熱交換時間と排気時間は同じにしている。基板温度が120°C以上の場合に、Hexは急激に低下することが分かった。また、より高いHexを得るためには基板温度は80°Cまで下げることが望ましいことが分かった。図12に示す結果から、基板の冷却温度は50°C〜120°Cの範囲にするのが好適である。
【0028】
冷却時の熱交換時間と排気時間がHexに及ぼす影響を調べた。媒体の層構成及び成膜条件は本実施例の媒体Aと同じである。ここで熱交換時間と排気時間の和は5.9secと一定にしている。図13に熱交換時間と排気時間、連続で成膜した100枚目と2000枚目のHexを示す。熱交換時間が2secの媒体Dは、100枚目でもHexは他と比べて小さく、成膜枚数が増えるとHexは低下する。熱交換時間を2.5secにすると2000枚目まで安定して高いHexが得られる。さらに熱交換時間を4secまで長くすると、100枚目のHexも逆に小さくなることが分かった。熱交換時間が2.5secまでは時間が長いほど基板温度は低下するが、2.5sec以上長くしても基板温度は殆ど変わらないと考えられる。熱交換時間が4sec以上でHexが低下したのは、排気時間が短くなって、注入している水素ガスが十分に排気されないためと考えられる。このことから、安定して高いHexを得るためには熱交換時間は2.5sec以上で、かつ排気時間が2.0sec以上であることが望ましいことが分かった。
【0029】
実施例1と同じ層構成の媒体を用いて冷却のタイミングとHexの大きさと安定性の関係を調べた。冷却の工程箇所以外は実施例1の成膜プロセスと同じである。図14に、成膜工程の概略図を示す。図15に作製した媒体K〜NのHexと媒体S/Nについてまとめた。
媒体Kを作製するための成膜工程(1)は、冷却工程が非磁性層を形成する工程と第三軟磁性層を形成する工程の間に設けられている。
媒体Lを作製するための成膜工程(2)は、冷却工程が第二軟磁性層を形成する工程と非磁性層を形成する工程の間に設けられている。
比較例の媒体Mを作製するための成膜工程(3)は、冷却工程が密着層を形成する工程と第一軟磁性層を形成する工程の間に設けられている。
比較例の媒体Nを作製するための成膜工程(4)は、冷却工程が中間層を形成する工程と記録層を形成する工程の間に設けられている。
【0030】
媒体KおよびLは、実施例1で作成した媒体Aよりも大きいHexと高い媒体S/Nが得られ、2000枚目も同等の特性を持つ媒体を作製できる。また、比較例の媒体M及びNは、100枚目のHex、媒体S/Nともに実施例1の媒体Aより小さく、2000枚目の値は減少している。このことから、冷却を行う個所は非磁性層を形成する前か後が良く、第二軟磁性層を形成する工程と非磁性層を形成する工程の間か、非磁性層を形成する工程と第三軟磁性層を形成する工程の間か、或いは実施例1で示したように第四軟磁性層を形成する工程と中間層を形成する工程の間に行うことが望ましいことがわかる。特に第二軟磁性層を形成する工程と、非磁性層を形成する工程との間に冷却工程を行うことが、高いHexと媒体S/Nを得る上で最も効果があることがわかる。
【0031】
<実施例2>
図16に実施例2の垂直磁気記録媒体(垂直磁気記録ディスク)200の構成を示す。基板21には外形65mm、内径20mm、厚さ0.635mmのガラスディスクを用い、スパッタリング法により、密着層22、軟磁性下地層23、中間層24、記録層25、保護膜26を順次形成した。図17に本実施例の媒体の製造プロセスを示す。まず、ガラス基板21上に密着層22であるAl−Tiを10nm形成し、次に第一軟磁性層231であるCo−Ta−Zrを50nm形成し、その上に非磁性層232であるRuを0.7nm、第二軟磁性層233であるCo−Ta−Zr合金をそれぞれ50nm形成して軟磁性下地層23を作製した。ここで第一軟磁性層231と第二軟磁性層233はRu非磁性層232を介して反強磁性的に結合している。その後、基板半径方向に磁界を印加しながら基板を所定の温度まで冷却した。次に、第一中間層241であるTaを2nm、第二中間層242であるRuを20nm形成した。その後、2回目の冷却を行い、記録層25であるCo−Cr−Pt-SiO2合金を14nm形成し、保護膜26であるカーボンをCVD法を用いて4nm形成した。その後、パーフルオロアルキルポリエーテル系の材料をフルオルカーボン材で希釈した潤滑剤を塗布し、表面にバニッシュをかけて垂直磁気記録ディスク200を作製した。スパッタガスとしてはArを使用し、記録層25を形成する際には酸素を20mPaの分圧で添加した。保護膜26を形成する時は、C2H4ガスを使用した。本実施例2の冷却条件は実施例1と同じである。
【0032】
実施例1の媒体と同様に、2000枚の連続成膜を行い、100枚目と2000枚目のHexと媒体S/Nを評価した。比較のために実施例1の媒体Aの結果をあわせて図18に示す。本実施例2の媒体Oは上記実施例1で作成した媒体Aと同程度の特性が得られた。このことから、冷却工程を2回行うことにより、軟磁性下地層の4分割成膜と同様の効果が得られることがわかった。
【0033】
図19に上記実施例1及び2の垂直記録媒体(垂直磁気記録ディスク)100,200を搭載した磁気ディスク装置の一例を示す。磁気ディスク装置1000は、垂直磁気記録ディスク100、垂直磁気記録ディスク100を装着し回転させるスピンドルモータ300、垂直磁気記録ディスク100に対して磁気記録あるいは再生を行う磁気ヘッド400、磁気ヘッド400を支持するサスペンション500、サスペンション500が取り付けられボイスコイル700を保持するキャリッジ600、ボイスコイル700の上下に配置された磁気回路800、磁気ヘッド400のアンロード時に磁気ヘッド400が退避するランプ機構900とを備えている。ボイスコイル700に通電することにより、キャリッジ600が回転し、サスペンション500に支持されている磁気ヘッド400が、垂直磁気記録ディスク100,200の半径方向に移動されて位置決めされ、磁気記録あるいは再生を行う。この磁気ディスク装置は、上記実施例の垂直磁気記録ディスクを搭載しているので、磁気特性に優れた高信頼性の磁気ディスク装置である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1による垂直磁気記録媒体の断面図である。
【図2】実施例1による垂直磁気記録媒体の製造プロセスを示す図である。
【図3】ターゲット表面の清浄表面を現す目的で行う成膜の条件を示す図である。
【図4】実施例1による垂直磁気記録媒体の成膜条件を示す図である。
【図5】冷却機構の構成を示す図である。
【図6】冷却機構の動作を示す図である。
【図7】実施例1の媒体と比較例の媒体の層構成を示す図である。
【図8】実施例1の垂直磁気記録媒体の磁化曲線を示す図である。
【図9】連続成膜時の成膜枚数と反強磁性結合磁界Hexの関係を示す図である。
【図10】連続成膜時の成膜枚数と媒体S/Nの関係を示す図である。
【図11】冷却時の磁界の大きさと反強磁性結合磁界Hexの関係を示す図である。
【図12】冷却後の基板温度と反強磁性結合磁界Hexの関係を示す図である。
【図13】熱交換時間と排気時間、連続成膜した100枚目と2000枚目のHexを示す図である。
【図14】実施例1と比較例の垂直磁気記録媒体の製造プロセスを示す図である。
【図15】図14に示したプロセスで作成した媒体のHexと媒体S/Nを示す図である。
【図16】本発明の実施例2による垂直磁気記録媒体の断面図である。
【図17】実施例2による垂直磁気記録媒体の製造プロセスを示す図である。
【図18】図17のプロセスで作成した実施例2による垂直磁気記録媒体のHexと媒体S/Nを示す図である。
【図19】実施例1及び2による垂直磁気記録ディスクを搭載した磁気ディスク装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1,21…基板、
2,22…密着層、
3,23…軟磁性下地層、
31,231…第一の軟磁性層、
32,233…第二の軟磁性層、
33,232…非磁性層、
34…第三の軟磁性層、
35…第四の軟磁性層、
4,24…中間層、
5,25…記録層、
6,26…保護膜、
11…ガス供給源、
12…容器、
13…ガス導入管、
14…冷却器、
15…キャリア、
16…排気口、
17…真空ポンプ、
100,200…垂直磁気記録媒体(垂直磁気記録ディスク)、
300…スピンドルモータ、
400…磁気ヘッド、
500…サスペンション、
600…キャリッジ、
700…ボイスコイル、
800…磁気回路、
900…ランプ機構、
1000…磁気ディスク装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に密着層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記密着層の上に第一の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第一の軟磁性層の上に第二の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第二の軟磁性層の上に非磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記非磁性層の上に第三の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第三の軟磁性層の上に第四の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第四の軟磁性層の上に中間層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記中間層の上に記録層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記記録層の上に保護膜をスパッタリングにより形成するステップと、を含み、
前記非磁性層を形成するステップの前か後に、磁界中冷却を行うステップをさらに含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記磁界中冷却を行うステップが、前記第四の軟磁性層を形成するステップと前記中間層を形成するステップの間にあることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記磁界中冷却を行うステップが、前記非磁性層を形成するステップと前記第三の軟磁性層を形成するステップの間にあることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記磁界中冷却を行うステップが、前記第二の軟磁性層を形成するステップと前記非磁性層を形成するステップの間にあることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記磁界中冷却を行うステップにおける磁界は、前記基板の半径方向に印加されることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記磁界中冷却を行うステップにおける磁界の大きさは、2kA/m以上であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記磁界中冷却を行うステップにおいて、前記基板の温度を50°C〜120°Cに冷却することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記磁界中冷却を行うステップは、ガス導入管と排気口と熱冷機に連結している冷却器が設けられた冷却チャンバ内で行われ、前記ガス導入管より導入された水素ガスを用いて前記冷却器と前記基板との熱交換を行うステップと、前記水素ガスを排気するステップと、を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記磁界中冷却を行うステップにおいて、前記熱交換を行うステップと前記水素ガスを排気するステップとを1サイクルとし、該1サイクル内での熱交換時間が2.5秒以上であり、排気時間が2秒以上であることを特徴とする請求項8記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記非磁性層と前記中間層がRuであることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
さらに前記保護膜の上に潤滑剤を塗布するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
基板の上に密着層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記密着層の上に第一の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第一の軟磁性層の上に非磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記非磁性層の上に第二の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第二の軟磁性層を形成した後の前記基板を磁界中冷却を行うステップと、
前記第二の軟磁性層の上に中間層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記中間層を形成した後の前記基板を冷却するステップと、
前記中間層の上に記録層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記記録層の上に保護膜をスパッタリングにより形成するステップと、
を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項13】
前記磁界中冷却を行うステップにおける磁界は、前記基板の半径方向に印加されることを特徴とする請求項12記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項14】
さらに前記保護膜の上に潤滑剤を塗布するステップを含むことを特徴とする請求項12記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項15】
基板と、
前記基板の上に設けられた密着層と、
前記密着層の上に設けられた第一の軟磁性層と、
前記第一の軟磁性層の上に設けられた第二の軟磁性層と、
前記第二の軟磁性層の上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層の上に設けられた第三の軟磁性層と、
前記第三の軟磁性層の上に設けられた第四の軟磁性層と、
前記第四の軟磁性層の上に設けられた中間層と、
前記中間層の上に設けられた記録層と、
前記記録層の上に設けられた保護膜と、を有し、
前記第一の軟磁性層と前記第二の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第三の軟磁性層と前記第四の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第二の軟磁性層と前記第三の軟磁性層は反強磁性的に結合しており、
前記反強磁性的な結合の大きさが2.2kA/m以上であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項16】
前記非磁性層と前記中間層がRuであることを特徴とする請求項15記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項17】
前記第一乃至第四の軟磁性層は、Co系合金であり、前記記録層はCo−Cr−Pt系合金であることを特徴とする請求項16記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項18】
前記第一乃至第四の軟磁性層は、Co−Ta−Zr合金であり、前記記録層はCo−Cr−Pt−SiO2合金であることを特徴とする請求項16記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項19】
基板と、
前記基板の上に設けられた密着層と、
前記密着層の上に設けられた第一の軟磁性層と、
前記第一の軟磁性層の上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層の上に設けられた第二の軟磁性層と、
前記第二の軟磁性層の上に設けられた中間層と、
前記中間層の上に設けられた記録層と、
前記記録層の上に設けられた保護膜と、を有し、
前記第一の軟磁性層と前記第二の軟磁性層は反強磁性的に結合しており、
前記反強磁性的な結合の大きさが2.2kA/m以上であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項20】
基板と、
前記基板の上に設けられた密着層と、
前記密着層の上に設けられた第一の軟磁性層と、
前記第一の軟磁性層の上に設けられた第二の軟磁性層と、
前記第二の軟磁性層の上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層の上に設けられた第三の軟磁性層と、
前記第三の軟磁性層の上に設けられた第四の軟磁性層と、
前記第四の軟磁性層の上に設けられた中間層と、
前記中間層の上に設けられた記録層と、
前記記録層の上に設けられた保護膜と、を有し、
前記第一の軟磁性層と前記第二の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第三の軟磁性層と前記第四の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第二の軟磁性層と前記第三の軟磁性層は反強磁性的に結合しており、
前記反強磁性的な結合の大きさが2.2kA/m以上である垂直磁気記録ディスクと、
前記垂直磁気記ディスクを装着し回転させるスピンドルモータと、
前記垂直磁気記録ディスクに対して磁気記録あるいは再生を行う磁気ヘッドと、
を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項1】
基板の上に密着層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記密着層の上に第一の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第一の軟磁性層の上に第二の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第二の軟磁性層の上に非磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記非磁性層の上に第三の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第三の軟磁性層の上に第四の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第四の軟磁性層の上に中間層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記中間層の上に記録層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記記録層の上に保護膜をスパッタリングにより形成するステップと、を含み、
前記非磁性層を形成するステップの前か後に、磁界中冷却を行うステップをさらに含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記磁界中冷却を行うステップが、前記第四の軟磁性層を形成するステップと前記中間層を形成するステップの間にあることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記磁界中冷却を行うステップが、前記非磁性層を形成するステップと前記第三の軟磁性層を形成するステップの間にあることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記磁界中冷却を行うステップが、前記第二の軟磁性層を形成するステップと前記非磁性層を形成するステップの間にあることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記磁界中冷却を行うステップにおける磁界は、前記基板の半径方向に印加されることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記磁界中冷却を行うステップにおける磁界の大きさは、2kA/m以上であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記磁界中冷却を行うステップにおいて、前記基板の温度を50°C〜120°Cに冷却することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記磁界中冷却を行うステップは、ガス導入管と排気口と熱冷機に連結している冷却器が設けられた冷却チャンバ内で行われ、前記ガス導入管より導入された水素ガスを用いて前記冷却器と前記基板との熱交換を行うステップと、前記水素ガスを排気するステップと、を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記磁界中冷却を行うステップにおいて、前記熱交換を行うステップと前記水素ガスを排気するステップとを1サイクルとし、該1サイクル内での熱交換時間が2.5秒以上であり、排気時間が2秒以上であることを特徴とする請求項8記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記非磁性層と前記中間層がRuであることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項11】
さらに前記保護膜の上に潤滑剤を塗布するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項12】
基板の上に密着層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記密着層の上に第一の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第一の軟磁性層の上に非磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記非磁性層の上に第二の軟磁性層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記第二の軟磁性層を形成した後の前記基板を磁界中冷却を行うステップと、
前記第二の軟磁性層の上に中間層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記中間層を形成した後の前記基板を冷却するステップと、
前記中間層の上に記録層をスパッタリングにより形成するステップと、
前記記録層の上に保護膜をスパッタリングにより形成するステップと、
を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項13】
前記磁界中冷却を行うステップにおける磁界は、前記基板の半径方向に印加されることを特徴とする請求項12記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項14】
さらに前記保護膜の上に潤滑剤を塗布するステップを含むことを特徴とする請求項12記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
【請求項15】
基板と、
前記基板の上に設けられた密着層と、
前記密着層の上に設けられた第一の軟磁性層と、
前記第一の軟磁性層の上に設けられた第二の軟磁性層と、
前記第二の軟磁性層の上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層の上に設けられた第三の軟磁性層と、
前記第三の軟磁性層の上に設けられた第四の軟磁性層と、
前記第四の軟磁性層の上に設けられた中間層と、
前記中間層の上に設けられた記録層と、
前記記録層の上に設けられた保護膜と、を有し、
前記第一の軟磁性層と前記第二の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第三の軟磁性層と前記第四の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第二の軟磁性層と前記第三の軟磁性層は反強磁性的に結合しており、
前記反強磁性的な結合の大きさが2.2kA/m以上であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項16】
前記非磁性層と前記中間層がRuであることを特徴とする請求項15記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項17】
前記第一乃至第四の軟磁性層は、Co系合金であり、前記記録層はCo−Cr−Pt系合金であることを特徴とする請求項16記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項18】
前記第一乃至第四の軟磁性層は、Co−Ta−Zr合金であり、前記記録層はCo−Cr−Pt−SiO2合金であることを特徴とする請求項16記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項19】
基板と、
前記基板の上に設けられた密着層と、
前記密着層の上に設けられた第一の軟磁性層と、
前記第一の軟磁性層の上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層の上に設けられた第二の軟磁性層と、
前記第二の軟磁性層の上に設けられた中間層と、
前記中間層の上に設けられた記録層と、
前記記録層の上に設けられた保護膜と、を有し、
前記第一の軟磁性層と前記第二の軟磁性層は反強磁性的に結合しており、
前記反強磁性的な結合の大きさが2.2kA/m以上であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項20】
基板と、
前記基板の上に設けられた密着層と、
前記密着層の上に設けられた第一の軟磁性層と、
前記第一の軟磁性層の上に設けられた第二の軟磁性層と、
前記第二の軟磁性層の上に設けられた非磁性層と、
前記非磁性層の上に設けられた第三の軟磁性層と、
前記第三の軟磁性層の上に設けられた第四の軟磁性層と、
前記第四の軟磁性層の上に設けられた中間層と、
前記中間層の上に設けられた記録層と、
前記記録層の上に設けられた保護膜と、を有し、
前記第一の軟磁性層と前記第二の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第三の軟磁性層と前記第四の軟磁性層は強磁性的に結合しており、
前記第二の軟磁性層と前記第三の軟磁性層は反強磁性的に結合しており、
前記反強磁性的な結合の大きさが2.2kA/m以上である垂直磁気記録ディスクと、
前記垂直磁気記ディスクを装着し回転させるスピンドルモータと、
前記垂直磁気記録ディスクに対して磁気記録あるいは再生を行う磁気ヘッドと、
を有することを特徴とする磁気ディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−66416(P2007−66416A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250732(P2005−250732)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
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