説明

基板の液処理装置および液処理方法

【課題】基板の周縁部分の処理を行う場合において、基板の高温処理を十分に行うことができるとともに基板の表面にパーティクルが付着することを十分に抑制することができる基板の液処理装置および液処理方法を提供する。
【解決手段】基板の液処理装置1は、基板Wを保持する保持部10と、保持部10を回転させる回転駆動部20と、遮蔽ユニット39とを備えている。遮蔽ユニット39は、保持部10により保持された基板Wに対向する対向板32と、対向板32を介して基板Wを加熱する加熱部分31と、加熱されたガスを保持された基板Wの表面に供給する加熱ガス供給部分32aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板の周縁部分に処理液を供給することにより当該基板の処理を行う基板の液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ等の基板(以下、ウエハともいう)に処理液を供給することにより当該基板の処理を行うような基板の液処理装置が知られている。このような基板の液処理装置は、1枚のウエハを略水平状態に保持する保持部と、鉛直方向に延びる軸線を中心として保持部を回転させる回転駆動部とを備えており、回転駆動部が保持部を回転させることによりこの保持部により略水平状態に保持されたウエハが鉛直方向に延びる軸線を中心として回転するようになっている。また、上述のような液処理装置には、保持部により保持されたウエハの表面や裏面に洗浄液や薬液等の処理液を供給する処理液供給部が設けられている。ウエハを回転させながら処理液供給部によりウエハに処理液を供給することにより、ウエハの洗浄処理や薬液処理等の処理を行うことができる。
【0003】
また、従来の基板の液処理装置においては、ウエハの処理を行う際にパーティクルがウエハの表面に付着することを防止するために、保持部により保持されたウエハの表面にクリーンエアやN2ガス(窒素ガス)等のガスをダウンフローで供給し、ウエハの表面にパーティクルが付着することを抑制するようになっている。
【0004】
また、ウエハの高温処理を行う場合は、処理液供給部によりウエハに供給される処理液を予め加熱しておくことが知られている(例えば、特許文献1参照)。処理液供給部により高温の処理液をウエハに供給すると、この処理液からウエハに熱が伝達されることにより、ウエハを加熱しながら当該ウエハの処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−115474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の基板の液処理装置において、保持部により保持されたウエハの表面にクリーンエアやN2ガス等のガスをダウンフローで供給し、ウエハの表面にパーティクルが付着することを抑制する際に、ウエハの表面に供給されるガスの流量が多ければ多いほどウエハの表面に対するパーティクルの付着をより一層抑制することができる。しかしながら、ウエハの高温処理を行う際に、ウエハの表面に供給されるガスが常温ガスなので、ウエハ全体の温度が上がりにくいという問題がある。
【0007】
特に、従来の基板の液処理装置によりウエハの処理を行う際に、ウエハの周縁部分の処理を行う場合には、ウエハを回転させてこのウエハの表面に常温のクリーンエアやN2ガス等のガスを供給しながら処理液供給部によりウエハの周縁部分に処理液を供給する。ここで、ウエハの周縁部分とは、ウエハにおける半導体の製品を取ることができないような外周縁近傍の部分のことをいう。しかしながら、ウエハの高温処理を行う際に、ウエハの周縁部分に高温の処理液を供給したとしても、ウエハの中心部分近傍は処理液により加熱されないため、ウエハ全体の温度が上がりにくいという問題がある。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ウエハの周縁部分の処理を行う場合において、ウエハの高温処理を十分に行うことができ、また、ウエハの表面にパーティクルが付着することを十分に抑制することができる基板の液処理装置および液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板の液処理装置は、基板を保持する保持部と、前記保持部を回転させる回転駆動部と、前記保持部により保持された基板の周縁部分に処理液を供給する処理液供給部と、前記保持部により保持された基板に対向する対向板と、前記対向板を介して基板を加熱する加熱部分と、加熱されたガスを保持された基板の表面に供給する加熱ガス供給部分と、を有する遮蔽ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の基板の液処理装置においては、前記遮蔽ユニットは、ガスを当該遮蔽ユニット内に導入するためのガス導入部分を更に有し、前記遮蔽ユニットにおいて、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが当該遮蔽ユニット内で加熱され、この加熱されたガスが前記加熱ガス供給部分によって基板に供給されるようになっていてもよい。
【0011】
本発明の基板の液処理装置においては、前記遮蔽ユニットにおいて、前記加熱部分は、前記対向板を介して基板を加熱する際に基板の周縁部分を加熱するようになっており、前記加熱ガス供給部分は、加熱されたガスを、基板の表面における前記処理液供給部により処理液が供給される箇所よりも内側であって前記保持部に接触する領域よりも外側に供給するようになっていてもよい。
【0012】
この場合、前記対向板の直径は前記保持部の直径よりも大きくなっており、前記保持部により保持された基板と、前記対向板との間には、基板より直径が小さく前記保持部よりも直径が大きい断熱部材が設けられていてもよい。
【0013】
また、前記遮蔽ユニットは、前記ガス導入部分により当該遮蔽ユニット内に導入されたガスを迂回させる迂回板を更に有し、前記遮蔽ユニットにおいて、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが前記迂回板により迂回され、前記加熱ガス供給部分から基板に供給されるようになっていてもよい。
【0014】
また、前記遮蔽ユニットは、前記加熱部分により加熱され、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが接触する加熱部材を有し、前記遮蔽ユニットにおいて、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが、前記加熱部分により加熱された前記加熱部材に接触することにより加熱されるようになっていてもよい。
【0015】
この場合、前記加熱部材は、前記保持部により保持された基板の中心部分から周縁部分に向かう方向に沿って複数段設けられたフィン部分を有する加熱フィンであり、前記加熱フィンの前記各フィン部分に沿ってガスが流れることにより当該ガスが前記加熱フィンにより加熱されるようになっていてもよい。
【0016】
この際に、前記加熱フィンの各フィン部分は、前記保持部により保持された基板の周方向に沿って延びるよう設けられていてもよい。
【0017】
本発明の基板の液処理装置においては、前記遮蔽ユニットの前記加熱ガス供給部分は、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面の中心部分に供給するようになっていてもよい。
【0018】
本発明の基板の液処理装置においては、前記遮蔽ユニットの前記加熱ガス供給部分によって前記保持部により保持された基板の表面に供給された、加熱されたガスを排気するための排気部を更に備えていてもよい。
【0019】
本発明の基板の液処理方法は、保持部により基板を保持させることと、基板を保持する前記保持部を回転させることと、前記保持部により保持された基板の周縁部分に処理液を供給することと、前記保持部により保持された基板に対向して配置された対向板を介して、遮蔽ユニットの加熱部分により基板を加熱することと、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給することと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の基板の液処理方法においては、前記遮蔽ユニットは、ガスを当該遮蔽ユニット内に導入するためのガス導入部分を更に有し、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスを当該遮蔽ユニット内で加熱し、この加熱されたガスを基板に供給するようになっていてもよい。
【0021】
本発明の基板の液処理方法においては、前記保持部により保持された基板に対向して配置された対向板を介して、遮蔽ユニットの加熱部分により基板を加熱する際に、基板の周縁部分を加熱し、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、加熱されたガスを、基板の表面における前記処理液供給部により処理液が供給される箇所よりも内側であって前記保持部に接触する領域よりも外側に供給するようになっていてもよい。
【0022】
この場合、前記対向板の直径は前記保持部の直径よりも大きくなっており、前記保持部により保持された基板と、前記対向板との間には、基板より直径が小さく前記保持部よりも直径が大きい断熱部材が設けられていてもよい。
【0023】
また、前記遮蔽ユニットは、前記ガス導入部分により当該遮蔽ユニット内に導入されたガスを迂回させる迂回板を更に有し、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスを前記迂回板により迂回させ、その後基板に供給するようになっていてもよい。
【0024】
また、前記遮蔽ユニットは、前記加熱部分により加熱され、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが接触する加熱部材を有し、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスを、前記加熱部分により加熱された前記加熱部材に接触させることにより加熱するようになっていてもよい。
【0025】
本発明の基板の液処理方法においては、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面に供給する際に、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面の中心部分に供給するようになっていてもよい。
【0026】
本発明の基板の液処理方法においては、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面に供給する際に、前記保持部により保持された基板の表面に供給された、加熱されたガスを排気部により排気するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の基板の液処理装置および液処理方法によれば、基板の周縁部分の処理を行う場合において、基板の高温処理を十分に行うことができるとともに基板の表面にパーティクルが付着することを十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態における基板の液処理装置の概略縦断面図である。
【図2】図1に示す基板の液処理装置におけるガス加熱フィンのA−Aライン矢視図である。
【図3】本発明の実施の形態における他の液処理装置の概略縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における更に他の液処理装置を示す概略縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における更に他の液処理装置を示す概略縦断面図である。
【図6】本発明の実施の形態における基板の液処理装置において、保持部により保持されたウエハの表面の周縁部分に処理液を供給するための他の構成を示す概略縦断面図である。
【図7】本発明の実施の形態における基板の液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上方平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。まず、図7を用いて、本実施の形態における基板の液処理装置を含む液処理システムについて説明する。
【0030】
図7に示すように、液処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハ等の基板W(以下、ウエハWともいう)を収容したキャリアを載置するための載置台101と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すための搬送アーム102と、搬送アーム102によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット103と、棚ユニット103に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置1内に搬送する搬送アーム104と、を備えている。図7に示すように、液処理システムには、複数(図7に示す態様では12個)の液処理装置1が組み込まれている。
【0031】
図1および図2は、本実施の形態による基板の液処理装置1を示す図である。より詳細には、図1は、本実施の形態における基板の液処理装置1の概略縦断面図であり、図2は、図1に示す基板の液処理装置1におけるガス加熱フィンのA−Aライン矢視図である。
【0032】
図1に示すように、基板の液処理装置1は、ケーシング2と、ウエハWを略水平状態に保持する保持部10と、保持部10から下方に延びる回転軸12と、回転軸12を介して保持部10を回転させる回転駆動部20とを備えている。保持部10は、当該保持部10上に載置されたウエハWを例えば真空吸着等により保持するようになっている。また、保持部10および回転駆動部20はケーシング2内に配置されている。
【0033】
図1に示すように、回転軸12は鉛直方向に延びるようになっている。回転駆動部20は、回転軸12の下端部の周縁外方に配置されたプーリ24と、プーリ24に巻き掛けられた駆動ベルト26と、この駆動ベルト26に駆動力を付与することによってプーリ24を介して回転軸12を回転させるモータ22とを有している。また、プーリ24よりも上方の箇所における回転軸12の周縁外方にはベアリング14が配置されている。
【0034】
ケーシング2内において、保持部10により保持されたウエハWの上方には上方カップ30が配置されている。上方カップ30は、ウエハWを保持部10に保持させたり保持部10から取り外したりする際に図1に示すような位置から上方に移動することができるようになっている。より詳細には、上方カップ30にはアーム44aを介して上方カップ昇降機構44が取り付けられており、この上方カップ昇降機構44により上方カップ30が図1における矢印方向に昇降させられるようになっている。上方カップ30は、保持部10により保持されたウエハWに対向する対向板32と、対向板32を介してウエハWを加熱するヒータ(加熱部分)31と、ヒータ31の上部に設けられたガス加熱フィン34と、ガス加熱フィン34の上方に配置された略円盤形状の天板部材36とを有している。
【0035】
対向板32は、前述のように、保持部10により保持されたウエハWに対向するようになっている。より詳細には、対向板32は、保持部10により保持されたウエハWの上方において当該ウエハWとわずかな間隔を隔てて配置されている。対向板32は導熱性を有する材料から構成されている。この対向板32は、例えば、金属材料に耐薬性コーティングが行われたものからなる。具体的には、対向板32は、例えばアルミニウムにテフロン(登録商標)がコーティングされたものからなる。図1に示すように、対向板32の中心部分には開口32aが形成されている。また、対向板32の上部にはヒータ31が設けられており、ヒータ31から発せられた熱が対向板32に伝達される。そして、加熱された対向板32により、保持部10により保持されたウエハWと対向板32との間の隙間が加熱され、このことによりウエハWの表面が加熱されるようになっている。
【0036】
また、ヒータ31の上部には導熱性を有する材料から形成される加熱部材が設けられている。この加熱部材として、例えばガス加熱フィン34が用いられるようになっている。そして、ヒータ31から発せられた熱がガス加熱フィン34に伝達されるようになっている。図1および図2に示すように、ガス加熱フィン34は、保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かう方向に沿って複数段設けられたフィン部分34aを有している。ガス加熱フィン34がこのようなフィン部分34aを複数有していることにより、ガス加熱フィン34におけるガスに対する伝熱面積を増加させることができる。図2に示すように、各フィン部分34aは、保持部10により保持されたウエハWの周方向に沿って延びるよう設けられている。なお、図2において、参照のため保持部10により保持されたウエハWを二点鎖線で示している。また、図2において、後述する天板部材36に形成された複数の貫通穴36aを点線で示している。
【0037】
図1に示すように、ガス加熱フィン34の上方には略円盤形状の天板部材36が配置されている。天板部材36の内部は中空となっており、この天板部材36の上部における中心部分に設けられた上部開口36bから当該天板部材36の内部にクリーンエアやN2ガス等のガスが送られるようになっている。より詳細には、後述する送風機構48によりケーシング2内にガスが送られ、このガスはケーシング2内でダウンフローとなるが、後述する排気部42により上方カップ30内のガスが吸引されることにより、ケーシング2内のダウンフローのガスの一部が上部開口36b内に取り込まれるようになっている。また、天板部材36の底部36cにおける周縁部分の箇所には複数の貫通穴36aが周方向に等間隔で形成されており(図2参照)、天板部材36の内部に送られたガスは各貫通穴36aを介して天板部材36の下方に流れるようになっている。
【0038】
ここで、天板部材36、ガス加熱フィン34、ヒータ31および対向板32により、遮蔽ユニット39が構成されている。また、天板部材36の上部開口36bは、ガスを遮蔽ユニット39に導入するためのガス導入部分を構成している。また、天板部材36の底部36cは、上部開口36bにより遮蔽ユニット39内に導入されたガスを迂回させる迂回板を構成している。より詳細には、天板部材36の底部36cは、遮蔽ユニット39内に導入されたガスをウエハWの中心部分から周縁部分に向かう方向に流れるようにし、次に逆方向に流れるようにするよう、遮蔽ユニット39内でガスを迂回させている。このことにより、ガス加熱フィン34におけるガスに対する伝熱面積を確実に増加させることができる。
【0039】
図1に示すように、貫通穴36aを介して天板部材36の下方に流れたガスはガス加熱フィン34の上方において当該ガス加熱フィン34の周縁部分から中心部分に向かって流れるようになっている。この際に、ヒータ31から発せられた熱がガス加熱フィン34に伝達され、ガス加熱フィン34自体が加熱されているので、ガスがガス加熱フィン34に沿って流れることにより当該ガスが加熱される。
【0040】
ガス加熱フィン34により加熱されたガスは、対向板32の中心部分に形成された開口32aを介して下方に流れ、この加熱されたガスは保持部10により保持されたウエハWの表面の中心部分に送られる。このようにして、加熱されたガスが保持部10により保持されたウエハWの表面に供給される。なお、対向板32の中心部分に形成された開口32aは、加熱されたガスを保持されたウエハWの表面に供給するための加熱ガス供給部分を構成している。保持部10により保持されたウエハWの表面の中心部分に送られたガスは、当該ウエハWの表面と対向板32の下面との間の隙間を通って、保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かって流れる。
【0041】
保持部10や回転軸12の径方向外方には下方カップ40が設けられている。この下方カップ40は上方カップ30の対向板32の下方に配置され、当該対向板32と下方カップ40との間はシール部材38によりシールされるようになっている。また、下方カップ40の内部にはガスの流路40aが設けられており、保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かって流れたガスは、下方カップ40の流路40aに送られるようになっている。また、下方カップ40の下面には排気部42が接続されており、下方カップ40の流路40aに送られたガスは排気部42により排気されるようになっている。下方カップ40は、ウエハWを保持部10に保持させたり保持部10から取り外したりする際に図1に示すような位置から下方に移動することができるようになっている。より詳細には、下方カップ40にはアーム46aを介して下方カップ昇降機構46が取り付けられており、この下方カップ昇降機構46により下方カップ40が図1における矢印方向に昇降させられるようになっている。
【0042】
また、図1に示すように、対向板32の内部には、保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分に洗浄液や薬液等の処理液を供給するための処理液流路52が形成されており、この処理液流路52には処理液供給部50が接続されている。そして、処理液供給部50から処理液流路52に処理液が供給され、この処理液が処理液流路52から保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分に吐出されるようになっている。なお、保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分に処理液を供給する方法は、図1に示すような処理液流路52によるものに限定されることはない。他の例としては、例えば、図6に示すように、対向板32に貫通穴54を設け、この貫通穴54を通るよう処理液供給管56を処理液供給部50に接続し、処理液供給管56の先端部分にノズル58を設けてもよい。この場合、処理液供給部50から処理液供給管56に処理液が供給され、この処理液供給管56の先端部分に設けられたノズル58からウエハWの表面の周縁部分に処理液が噴射される。また、図6に示すような態様において、ノズル58は貫通穴54内においてウエハWの径方向に移動自在となっていてもよい。
【0043】
また、ケーシング2の内壁における上部位置には送風機構48が取り付けられている。この送風機構48によりクリーンエアやN2ガス(窒素ガス)等のガスがケーシング2内に送られるようになっている。送風機構48によりケーシング2内に送られたガスは、ケーシング2内でダウンフローとなる。そして、前述のように、排気部42により上方カップ30内のガスが吸引されることにより、ケーシング2内のダウンフローのガスの一部が上部開口36b内に取り込まれるようになっている。
【0044】
また、図1に示すように、ケーシング2にはウエハWの搬出入用の開口2aが設けられており、この開口2aには当該開口2aの開閉を行うシャッター18が設けられている。ケーシング2内にウエハWを搬入したり、ケーシング2内からウエハWを搬出したりする際には、シャッター18が開口2aを開き、搬送アーム104(図7参照)がこの開口2aを介してケーシング2内に進入することにより、搬送アーム104から保持部10にウエハWが受け渡されたり、保持部10に保持されたウエハWが搬送アーム104により取り出されたりするようになっている。
【0045】
次に、このような構成からなる基板の液処理装置1の動作(基板の液処理方法)について説明する。
【0046】
まず、上方カップ昇降機構44により上方カップ30が図1に示すような位置から上方に移動させられるとともに下方カップ昇降機構46により下方カップ40が図1に示すような位置から下方に移動させられた状態で、液処理装置1のケーシング2の外方から搬送アーム104(図7参照)により開口2aを介してケーシング2の内部にウエハWが搬送され、保持部10上にこのウエハWが載置される。そして、例えば真空吸着によりウエハWを保持部10に保持させる。その後、上方カップ昇降機構44により上方カップ30を下方に移動させるとともに下方カップ昇降機構46により下方カップ40を上方に移動させ、上方カップ30および下方カップ40をそれぞれ図1に示すような位置とする。この際に、上方カップ30と下方カップ40との間がシール部材38によりシールされる。また、この際に、ヒータ31は対向板32やガス加熱フィン34を加熱している。対向板32がヒータ31により加熱されることにより、加熱された対向板32によりこの対向板32とウエハWとの間の隙間が加熱され、このことによりウエハWが加熱される。
【0047】
次に、回転駆動部20により、鉛直方向に延びる軸線を中心として回転軸12を回転させる。このことにより、保持部10により保持されたウエハWが回転される。このときに、モータ22から駆動ベルト26を介してプーリ24に駆動力が付与されることによって回転軸12が回転される。
【0048】
そして、保持部10により保持されたウエハWが回転している状態で、処理液供給部50から処理液流路52に洗浄液や薬液等の処理液を供給し、この処理液が処理液流路52からウエハWの表面の周縁部分に吐出される。このことにより、ウエハWの周縁部分の洗浄処理や薬液処理等の処理が行われる。なお、処理液供給部50から処理液流路52を介してウエハWの周縁部分に供給される処理液は、加熱された処理液であることが好ましい。
【0049】
また、送風機構48によりケーシング2内に生成されるダウンフローのガスの一部が、排気部42による吸引によって上部開口36b内に取り込まれる。そして、上部開口36bから天板部材36の内部にガスが送られ、各貫通穴36aを介してこのガスは天板部材36の下方に流れる。その後、このガスはガス加熱フィン34の上方において当該ガス加熱フィン34の周縁部分から中心部分に向かって流れ、そして開口32aを介して下方に流れ、保持部10により保持されたウエハWの表面の中心部分に送られる。そして、保持部10により保持されたウエハWの表面の中心部分に送られたガスは、当該ウエハWの表面と対向板32の下面との間の隙間を通って、保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かって流れる。このことにより、処理液供給部50から処理液流路52を介してウエハWの周縁部分に供給された処理液が、ウエハWの中心方向に向かって流れることを防止することができる。また、ウエハWの中心部分から周縁部分に向かって流れるガスにより、ウエハWの表面にパーティクルが付着することを十分に抑制することができる。保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かって流れたガスは、下方カップ40の流路40aに送られ、最終的に排気部42により排気される。
【0050】
また、前述のように、ヒータ31がガス加熱フィン34を加熱しているので、天板部材36から各貫通穴36aを介して下方に流れたガスがガス加熱フィン34により加熱され、保持部10により保持されたウエハWの上面に加熱されたガスが送られる。このように、保持部10により保持されたウエハWは、対向板32を介してヒータ31により加熱されるとともに、加熱されたガスがウエハWの表面に送られるので、ウエハWの高温処理を行うことができる。
【0051】
以上のように本実施の形態の基板の液処理装置1によれば、保持部10により保持されたウエハWの周縁部分に処理液を供給する処理液供給部50と、遮蔽ユニット39とを備え、遮蔽ユニット39は、保持部10により保持されたウエハWに対向する対向板32と、対向板32を介してウエハWを加熱するヒータ31と、加熱されたガスを保持されたウエハWの表面に供給する加熱ガス供給部分(対向板32の開口32a)とを備えている。このことにより、保持部10により保持されたウエハWを、対向板32を介してヒータ31により加熱するとともに、保持部10により保持されたウエハWの表面に加熱されたガスを供給することにより、ウエハW全体の温度を高温に維持することができ、このためウエハWの高温処理を十分に行うことができる。また、加熱ガス供給部分によって、保持部10により保持されたウエハWの表面に加熱されたガスが供給されるので、ウエハWの温度を下げることなく、ウエハWの表面にパーティクルが付着することを十分に抑制することができる。
【0052】
また、本実施の形態の基板の液処理装置1においては、図1に示すように、遮蔽ユニット39は、ガスを当該遮蔽ユニット39内に導入するためのガス導入部分(天板部材36の上部開口36b)を更に有している。そして、遮蔽ユニット39において、天板部材36の上部開口36bにより遮蔽ユニット39内に導入されたガスが当該遮蔽ユニット39内で加熱され、この加熱されたガスが対向板32の開口32aによってウエハWに供給されるようになっている。
【0053】
また、遮蔽ユニット39は、天板部材36の上部開口36bから遮蔽ユニット39内に導入されたガスを迂回させる迂回板(天板部材36の底部36c)を更に有している。そして、遮蔽ユニット39において、天板部材36の上部開口36bにより遮蔽ユニット39内に導入されたガスが底部36cにより迂回され、対向板32の開口32aからウエハWに供給されるようになっている。
【0054】
また、遮蔽ユニット39は、ヒータ31により加熱され、天板部材36の上部開口36bにより遮蔽ユニット39内に導入されたガスが接触するガス加熱フィン34を有しており、天板部材36の上部開口36bにより遮蔽ユニット39内に導入されたガスがガス加熱フィン34に接触することにより加熱されるようになっている。このように、一つのヒータ31でウエハW自体とガスを同時に温調できるので、別途ガス温調機構を設ける必要がない。このため、省スペース化や省コスト化を図ることができる。
【0055】
より詳細には、図2に示すように、ガス加熱フィン34は、保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かう方向に沿って複数段設けられたフィン部分34aを有している。各フィン部分34aは、保持されたウエハWの周方向に沿って延びるよう設けられている。そして、ガス加熱フィン34の各フィン部分34aに沿って、保持部10により保持されたウエハWの周縁部分から中心部分に向かってガスが流れることにより、当該ガスがガス加熱フィン34により加熱されるようになっている。
【0056】
また、図1に示すように、ケーシング2内においてダウンフローでガスを流すようにし、排気部42による吸引により遮蔽ユニット39内にガスを取り込み、この遮蔽ユニット39内でガスを加熱するようにした場合には、加熱されるガスの量が比較的少なくなるので、ガスの加熱を必要最小限とすることができるという利点がある。
【0057】
なお、本実施の形態による基板の液処理装置1は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0058】
例えば、基板の液処理装置1に送風機構48を設ける代わりに、図7に示す液処理システムにおいて各液処理装置1の上方(図7の紙面における手前側)にファン・フィルター・ユニット(FFU)を設けるようにしてもよい。このとき、液処理装置1のケーシング2の上方部分に、FFUからのガスを導入するためのガス導入口が設けられる。この場合には、FFUから各液処理装置1にクリーンエアやN2ガス等のガスが送られ、このガスはケーシング2の上方部分に設けられたガス導入口を介してケーシング2内に取り込まれ、ケーシング2内でダウンフローの流れとなる。
【0059】
また、対向板32およびガス加熱フィン34の両方を加熱するようなヒータ31を設ける代わりに、保持部10により保持されたウエハWを加熱するためのウエハ加熱部分、および保持部10により保持されたウエハWの表面に供給されるガスを加熱するためのガス加熱部分の両方を設けてもよい。この場合、保持部10により保持されたウエハWを加熱するためのウエハ加熱部分は、当該ウエハWの表面側(図1におけるウエハWの上方側)ではなく、ウエハWの裏面側(図1におけるウエハWの下方側)に設けられていてもよい。
【0060】
また、対向板32を介してウエハWを加熱する加熱部分は、ヒータ31に限定されることはない。対向板32を介してウエハWを加熱することができるものであれば、ヒータ31以外の他の機構を加熱部分として用いてもよい。具体的には、例えば、ヒータ31を設ける代わりに、加熱された温水を対向板32内で循環させ、このことにより対向板32を加熱するようにしてもよい。
【0061】
また、保持部10により保持されたウエハWの周縁部分に処理液を供給する処理液供給部は、ウエハWの表面側の周縁部分ではなく、ウエハWの裏面側の周縁部分に処理液を供給するようになっていてもよい。この場合、ウエハWの裏面側の周縁部分に処理液を供給するための処理液供給部および処理液流路が別途設けられることとなる。あるいは、ウエハWの表面側および裏面側のそれぞれの周縁部分に処理液が供給されるようになっていてもよい。
【0062】
また、基板の液処理装置1に設けられる遮蔽ユニットは、単に、対向板32、この対向板32を介してウエハWを加熱するヒータ31、および加熱されたガスをウエハWの表面に供給する加熱ガス供給部分(対向板32の開口32a)のみを備えたものであってもよい。すなわち、図1に示すような遮蔽ユニット39と比較して、天板部材36およびガス加熱フィン34が省略された遮蔽ユニットを用いてもよい。この場合、基板の液処理装置1とは別の装置で予め加熱されたガスを、対向板32の開口32aから保持部10により保持されたウエハWの表面に供給してもよい。あるいは、基板の液処理装置1にガス加熱フィン34以外のガス加熱機構(図示せず)が設けられており、このガス加熱機構によりガスを加熱し、加熱されたガスを対向板32の開口32aからウエハWの表面に供給するようになっていてもよい。基板の液処理装置1とは別の装置で予め加熱されたガスや、ガス加熱フィン34以外のガス加熱機構等により予め加熱されたガスをウエハWの表面に供給する場合には、ガスを保温するための保温機構を設けることとなる。
【0063】
また、ヒータ31、対向板32およびガス加熱フィン34を含む遮蔽ユニット39は図1に示すような構成のものとなっていなくともよい。本実施の形態の基板の液処理装置に設けられる遮蔽ユニット39の他の例を、図3を用いて説明する。なお、図3に示す基板の液処理装置1aにおいて、図1に示す基板の液処理装置1と同一の構成要素については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図3に示すような基板の液処理装置1aにおいて、保持部10により保持されたウエハWの上方には上方カップ70が配置されている。上方カップ70は、上方カップ昇降機構44により、ウエハWを保持部10に保持させたり保持部10から取り外したりする際に図3に示すような位置から上方に移動することができるようになっている。上方カップ70は、保持部10により保持されたウエハWに対向する対向板72と、対向板72の上部に接続されたヒータ71と、ヒータ71の上部に設けられた加熱部材と、加熱部材の上方に配置された略円盤形状の天板部材76とを有している。加熱部材として、例えばガス加熱フィン74が用いられるようになっている。
【0065】
対向板72は、前述のように、保持部10により保持されたウエハWに対向するようになっている。より詳細には、対向板72は、保持部10により保持されたウエハWの上方において当該ウエハWとわずかな間隔を隔てて配置されている。対向板72は導熱性を有する材料から構成されている。図3に示すように、この対向板72には、保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分近傍にガスを送るためのガスの流路72aが形成されている。また、対向板72の上部にはヒータ71が接続されており、ヒータ71から発せられた熱が対向板72に伝達され、この対向板72によりウエハWの表面が加熱されるようになっている。
【0066】
また、ヒータ71の上部には導熱性を有する材料から形成されるガス加熱フィン74が接続されており、ヒータ71から発せられた熱がガス加熱フィン74に伝達されるようになっている。ガス加熱フィン74は、保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かう方向に沿って複数段設けられたフィン部分74aを有している。
【0067】
図3に示すように、ガス加熱フィン74の上方には略円盤形状の天板部材76が配置されている。天板部材76の中心部分には貫通穴76aが形成されている。そして、送風機構48により生成される、クリーンエアやN2ガス(窒素ガス)等のガスのダウンフローの一部が、排気部42による吸引によって、貫通穴76aを介して天板部材76の下方に送られるようになっている。
【0068】
ここで、天板部材76、ガス加熱フィン74、ヒータ71および対向板72により、遮蔽ユニット79が構成されている。また、天板部材76の貫通穴76aは、ガスを遮蔽ユニット79に導入するためのガス導入部分を構成している。
【0069】
図3に示すように、貫通穴76aを介して天板部材76の下方に流れたガスはガス加熱フィン74の上方において当該ガス加熱フィン74の中心部分から周縁部分に向かって流れるようになっている。この際に、ヒータ71から発せられた熱がガス加熱フィン74に伝達され、ガス加熱フィン74自体が加熱されているので、ガスがガス加熱フィン74に沿って流れることにより当該ガスが加熱される。
【0070】
ガス加熱フィン74により加熱されたガスは、対向板72に形成されたガスの流路72aを介して下方に流れ、この加熱されたガスは保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分近傍に送られる。このようにして、加熱されたガスが保持部10により保持されたウエハWの表面に供給される。このガスにより、処理液供給部50から処理液流路52を介してウエハWの周縁部分に供給された処理液が、ウエハWの中心方向に向かって流れることを防止することができる。また、保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分に送られたガスにより、ウエハWの周縁部分が加熱される。保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分に送られたガスは、下方カップ40のガスの流路40aに送られる。
【0071】
図3に示すような遮蔽ユニット79を用いた場合でも、図1に示すような遮蔽ユニット39を用いた場合と同様に、保持部10により保持されたウエハWを加熱部分により加熱するとともに、加熱されたガスを保持部10により保持されたウエハWの表面に供給することにより、処理液が供給される箇所であるウエハWの周縁部分の温度を少なくとも高温に維持することができ、このためウエハWの高温処理を十分に行うことができる。
【0072】
また、本実施の形態の基板の液処理装置の更に他の態様について、図4を用いて説明する。なお、図4に示す基板の液処理装置1bにおいて、図1に示す基板の液処理装置1と同一の構成要素については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0073】
一般的に、ウエハWを加熱しながら当該ウエハWの液処理を行う際に、ウエハWが高温になり過ぎると、ウエハWが反ってしまう等、ウエハWが変形してしまい、保持部10によるウエハWの真空吸着等における吸着力が弱くなってしまう。このように、ウエハWの変形を引き起こす可能性のあるような高温処理を行う場合には、ウエハWに対して安定的に液処理を行うことができないという問題がある。これに対して、図4に示す基板の液処理装置1bのように、ウエハWの表面における周縁部分のみを加熱した場合には、ウエハWが高温になり過ぎてしまうということを防止することができ、ウエハWが変形してしまうことを抑止することができる。
【0074】
より詳細には、図4に示す基板の液処理装置1bでは、図1に示す基板の液処理装置1と比較して、対向板32の下部に断熱部材33が追加的に設置されている。この断熱部材33は略円盤形状のものからなり、保持部10により保持されたウエハWの上面の大部分を覆うようになっている。具体的には、図4に示す基板の液処理装置1bでは、対向板32の直径は保持部10の直径よりも大きくなっている。また、断熱部材33の直径は、ウエハWの直径よりも小さく、保持部10の直径よりも大きくなっている。また、対向板32の開口32aから下方に流れるガスは、この対向板32と断熱部材33との間の隙間を通ってウエハWの半径方向外方に流れ、ウエハWの表面における処理液流路52により処理液が供給される箇所よりも内側であって保持部10に接触する領域よりも外側にこのガスが供給されるようになる。
【0075】
図4に示す基板の液処理装置1bでは、断熱部材33が設けられていることにより、ヒータ31により加熱された対向板32は、ウエハWの表面における保持部10に接触する領域よりも外側部分のみを加熱するようになり、ウエハWの表面における保持部10に接触する領域は対向板32により直接加熱させられることはない。また、ウエハWの表面における少なくとも保持部10に接触する領域は断熱部材33により覆われているので、ガス加熱フィン34により加熱されたガスは、ウエハWの表面における保持部10に接触する領域よりも外側部分のみに送られるようになる。このため、加熱されたガスによっても、ウエハWの表面における保持部10に接触する領域は直接加熱させられることはない。このように、図4に示す基板の液処理装置1bでは、ウエハWの表面における保持部10に接触する領域よりも外側部分のみが加熱させられるようになる。
【0076】
また、本実施の形態の基板の液処理装置の更に他の態様について、図5を用いて説明する。なお、図5に示す基板の液処理装置1cにおいて、図1に示す基板の液処理装置1と同一の構成要素については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0077】
図5に示す基板の液処理装置1cでも、図4に示す基板の液処理装置1bと同様に、ウエハWの高温処理を行う際に、ウエハWの表面における周縁部分のみを加熱することにより、ウエハWが高温になり過ぎてしまうということを防止することができ、ウエハWが変形してしまうことを抑止することができる。
【0078】
より詳細には、図5に示すような基板の液処理装置1cにおいて、保持部10により保持されたウエハWの上方には上方カップ80が配置されている。上方カップ80は、上方カップ昇降機構44により、ウエハWを保持部10に保持させたり保持部10から取り外したりする際に図5に示すような位置から上方に移動することができるようになっている。上方カップ80は、略円盤形状の本体部分82と、本体部分82の上方に設置された略円盤形状の天板部材86とを有している。本体部分82は、導熱性を有する部材から形成されている。天板部材86の中心部分には貫通穴86aが形成されており、排気部42による吸引によって、この貫通穴86aの上方からクリーンエアやN2ガス(窒素ガス)等のガスが天板部材86の下方に送られるようになっている。
【0079】
上方カップ80の本体部分82の内部には、天板部材86の下面に取り付けられた断熱部材82aと、断熱部材82aの下面に取り付けられたヒータ82bとがそれぞれ設けられている。また、本体部分82の内部において、ヒータ82bの下方にはわずかな間隔を隔てて加熱部材が設けられている。加熱部材として、例えばガス加熱フィン84が用いられるようになっている。また、このガス加熱フィン84の下面には断熱部材88が取り付けられている。本体部分82の直径は保持部10の直径よりも大きくなっている。また、断熱部材88の直径も保持部10の直径よりも大きくなっているが、この断熱部材88の直径はウエハWの直径よりも小さくなっている。また、本体部分82には、保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分近傍にガスを送るためのガスの流路82cが設けられている。このようにして、天板部材86の下方に送られたガスは、ガス加熱フィン84に沿ってウエハWの半径方向外方に流れ、流路82cを介して、保持部10により保持されたウエハWの表面における処理液流路52により処理液が供給される箇所よりも内側であって保持部10に接触する領域よりも外側に供給されるようになる。このガスにより、処理液供給部50から処理液流路52を介してウエハWの周縁部分に供給された処理液が、ウエハWの中心方向に向かって流れることを防止することができる。
【0080】
図5に示すような基板の液処理装置1cでは、ヒータ82bから発せられた熱が本体部分82に伝達され、この加熱された本体部分82により、保持部10により保持されたウエハWの表面における周縁部分と本体部分82と間の隙間が加熱され、このことによりウエハWの表面における周縁部分が加熱させられる。
【0081】
また、ヒータ82bの近傍には導熱性を有する材料から形成されるガス加熱フィン84が設けられており、ヒータ82bから発せられた熱がガス加熱フィン84に伝達されるようになっている。ガス加熱フィン84は、保持部10により保持されたウエハWの中心部分から周縁部分に向かう方向に沿って複数段設けられたフィン部分84aを有している。
【0082】
ここで、本体部分82、断熱部材82a、ヒータ82b、ガス加熱フィン84、天板部材86、断熱部材88により、遮蔽ユニット89が構成されている。また、天板部材86の貫通穴86aは、ガスを遮蔽ユニット89に導入するためのガス導入部分を構成している。
【0083】
図5に示すように、貫通穴86aを介して天板部材86の下方に流れたガスはガス加熱フィン84の上方において当該ガス加熱フィン84の中心部分から周縁部分に向かって流れるようになっている。この際に、ヒータ82bから発せられた熱がガス加熱フィン84に伝達され、ガス加熱フィン84自体が加熱されているので、ガスがガス加熱フィン84に沿って流れることにより当該ガスが加熱される。
【0084】
ガス加熱フィン84により加熱されたガスは、本体部分82に形成されたガスの流路82cを介して下方に流れ、この加熱されたガスは保持部10により保持されたウエハWの表面における処理液流路52により処理液が供給される箇所よりも内側であって保持部10に接触する領域よりも外側に送られる。そして、保持部10により保持されたウエハWの表面に送られたガスにより、ウエハWにおける保持部10に接触する領域よりも外側の領域が加熱される。保持部10により保持されたウエハWの表面の周縁部分に送られたガスは、下方カップ40のガスの流路40aに送られる。
【0085】
また、前述のように、ヒータ82bから発せられた熱が本体部分82に伝達され、この加熱された本体部分82により、保持部10により保持されたウエハWの表面における周縁部分と本体部分82と間の隙間が加熱され、このことによりウエハWの表面における周縁部分が加熱させられる。一方、保持部10により保持されたウエハWの表面における少なくとも保持部10に接触する領域を覆うよう断熱部材88が設けられているため、ウエハWの表面における保持部10に接触する領域が直接加熱させられることはない。
【0086】
図5に示すような遮蔽ユニット89を用いた場合には、図1に示すような遮蔽ユニット39を用いた場合と同様に、保持部10により保持されたウエハWを加熱部分により加熱するとともに、加熱されたガスを保持部10により保持されたウエハWの表面に供給することにより、処理液が供給される箇所であるウエハWの周縁部分の温度を少なくとも高温に維持することができ、このためウエハWの高温処理を十分に行うことができる。
【0087】
さらに、図5に示す基板の液処理装置1cでは、図4に示す基板の液処理装置1bと同様に、ウエハWの表面における周縁部分のみが加熱させられるようになる。このため、ウエハWが高温になり過ぎてしまうということを防止することができ、ウエハWが変形してしまうことを抑止することができる。
【符号の説明】
【0088】
1、1a、1b、1c 液処理装置
2 ケーシング
2a 開口
10 保持部
12 回転軸
14 ベアリング
18 シャッター
20 回転駆動部
22 モータ
24 プーリ
26 駆動ベルト
30 上方カップ
31 ヒータ
32 対向板
32a 開口
33 断熱部材
34 ガス加熱フィン
34a フィン部分
36 天板部材
36a 貫通穴
36b 上部開口
36c 底部
38 シール部材
39 遮蔽ユニット
40 下方カップ
40a 流路
42 排気部
44 上方カップ昇降機構
44a アーム
46 下方カップ昇降機構
46a アーム
48 送風機構
50 処理液供給部
52 処理液流路
54 貫通穴
56 処理液供給管
58 ノズル
70 上方カップ
71 ヒータ
72 対向板
72a 流路
74 ガス加熱フィン
74a フィン部分
76 天板部材
76a 貫通穴
79 遮蔽ユニット
80 上方カップ
82 本体部分
82a 断熱部材
82b ヒータ
82c 流路
84 ガス加熱フィン
86 天板部材
86a 貫通穴
88 断熱部材
89 遮蔽ユニット
101 載置台
102 搬送アーム
103 棚ユニット
104 搬送アーム
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する保持部と、
前記保持部を回転させる回転駆動部と、
前記保持部により保持された基板の周縁部分に処理液を供給する処理液供給部と、
前記保持部により保持された基板に対向する対向板と、前記対向板を介して基板を加熱する加熱部分と、加熱されたガスを保持された基板の表面に供給する加熱ガス供給部分と、を有する遮蔽ユニットと、
を備えたことを特徴とする基板の液処理装置。
【請求項2】
前記遮蔽ユニットは、ガスを当該遮蔽ユニット内に導入するためのガス導入部分を更に有し、
前記遮蔽ユニットにおいて、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが当該遮蔽ユニット内で加熱され、この加熱されたガスが前記加熱ガス供給部分によって基板に供給されることを特徴とする請求項1記載の基板の液処理装置。
【請求項3】
前記遮蔽ユニットにおいて、前記加熱部分は、前記対向板を介して基板を加熱する際に基板の周縁部分を加熱するようになっており、前記加熱ガス供給部分は、加熱されたガスを、基板の表面における前記処理液供給部により処理液が供給される箇所よりも内側であって前記保持部に接触する領域よりも外側に供給するようになっていることを特徴とする請求項1または2記載の基板の液処理装置。
【請求項4】
前記対向板の直径は前記保持部の直径よりも大きくなっており、
前記保持部により保持された基板と、前記対向板との間には、基板より直径が小さく前記保持部よりも直径が大きい断熱部材が設けられていることを特徴とする請求項3記載の基板の液処理装置。
【請求項5】
前記遮蔽ユニットは、前記ガス導入部分により当該遮蔽ユニット内に導入されたガスを迂回させる迂回板を更に有し、
前記遮蔽ユニットにおいて、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが前記迂回板により迂回され、前記加熱ガス供給部分から基板に供給されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の基板の液処理装置。
【請求項6】
前記遮蔽ユニットは、前記加熱部分により加熱され、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが接触する加熱部材を有し、
前記遮蔽ユニットにおいて、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが、前記加熱部分により加熱された前記加熱部材に接触することにより加熱されることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載の基板の液処理装置。
【請求項7】
前記加熱部材は、前記保持部により保持された基板の中心部分から周縁部分に向かう方向に沿って複数段設けられたフィン部分を有する加熱フィンであり、
前記加熱フィンの前記各フィン部分に沿ってガスが流れることにより当該ガスが前記加熱フィンにより加熱されることを特徴とする請求項6記載の基板の液処理装置。
【請求項8】
前記加熱フィンの各フィン部分は、前記保持部により保持された基板の周方向に沿って延びるよう設けられていることを特徴とする請求項7記載の基板の液処理装置。
【請求項9】
前記遮蔽ユニットの前記加熱ガス供給部分は、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面の中心部分に供給するようになっていることを特徴とする請求項1または2記載の基板の液処理装置。
【請求項10】
前記遮蔽ユニットの前記加熱ガス供給部分によって前記保持部により保持された基板の表面に供給された、加熱されたガスを排気するための排気部を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の基板の液処理装置。
【請求項11】
保持部により基板を保持させることと、
基板を保持する前記保持部を回転させることと、
前記保持部により保持された基板の周縁部分に処理液を供給することと、
前記保持部により保持された基板に対向して配置された対向板を介して、遮蔽ユニットの加熱部分により基板を加熱することと、
加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給することと、
を備えたことを特徴とする基板の液処理方法。
【請求項12】
前記遮蔽ユニットは、ガスを当該遮蔽ユニット内に導入するためのガス導入部分を更に有し、
加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスを当該遮蔽ユニット内で加熱し、この加熱されたガスを基板に供給することを特徴とする請求項11記載の基板の液処理方法。
【請求項13】
前記保持部により保持された基板に対向して配置された対向板を介して、遮蔽ユニットの加熱部分により基板を加熱する際に、基板の周縁部分を加熱し、
加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、加熱されたガスを、基板の表面における前記処理液供給部により処理液が供給される箇所よりも内側であって前記保持部に接触する領域よりも外側に供給することを特徴とする請求項11または12記載の基板の液処理方法。
【請求項14】
前記対向板の直径は前記保持部の直径よりも大きくなっており、
前記保持部により保持された基板と、前記対向板との間には、基板より直径が小さく前記保持部よりも直径が大きい断熱部材が設けられていることを特徴とする請求項13記載の基板の液処理方法。
【請求項15】
前記遮蔽ユニットは、前記ガス導入部分により当該遮蔽ユニット内に導入されたガスを迂回させる迂回板を更に有し、
加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスを前記迂回板により迂回させ、その後基板に供給することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の基板の液処理方法。
【請求項16】
前記遮蔽ユニットは、前記加熱部分により加熱され、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスが接触する加熱部材を有し、
加熱されたガスを前記保持部により保持された基板に供給する際に、前記ガス導入部分により前記遮蔽ユニット内に導入されたガスを、前記加熱部分により加熱された前記加熱部材に接触させることにより加熱することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の基板の液処理方法。
【請求項17】
加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面に供給する際に、加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面の中心部分に供給することを特徴とする請求項11または12記載の基板の液処理方法。
【請求項18】
加熱されたガスを前記保持部により保持された基板の表面に供給する際に、前記保持部により保持された基板の表面に供給された、加熱されたガスを排気部により排気することを特徴とする請求項11乃至17のいずれか一項に記載の基板の液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−54932(P2011−54932A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122999(P2010−122999)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】