説明

基板の熱処理装置

【課題】 ガラス基板等の基板全体を処理温度まで迅速に加熱することができる基板の熱処理装置を提供する。
【解決手段】 熱処理炉2の炉口6からプロセスチューブ4内に搬入・搬出されるボート7に保持されたガラス基板Wの中央部と、プロセスチューブ4の外側に配置されたヒータ5による輻射熱を断熱する遮熱板13aとの間に、輻射熱を吸収する吸熱フィン14を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ等に使用されるガラス基板や半導体ウェハ等の基板の表面にCVD処理、酸化処理及び拡散処理等を施すために使用される基板の熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の表面にCVD処理を施すために、例えば図3に示す縦型の熱処理装置が使用されている。
この熱処理装置は、縦型の熱処理炉100と、この熱処理炉100の下方に設けられたロード空間110と、ガラス製の基板Wを搬送するための昇降リフト120とを備えている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記熱処理炉100は、加熱ヒータ101及び石英製のプロセスチューブ103を有しており、その底部には、基板Wをプロセスチューブ103の内部に対して出し入れするための炉口104が設けられている。この炉口104は、開閉扉105によって開放可能に閉塞されている。
前記昇降リフト120は、基板Wを保持するためのボート121を備えており、このボート121に保持された基板Wを、前記ロード空間110からプロセスチューブ103内に搬入するとともに、プロセスチューブ103内からロード空間110に搬出する。
また、前記昇降リフト120には、石英等で形成された基板Wよりも外径が大きい複数枚の遮熱板122aからなるヒートバリア122が搭載されている。このヒートバリア122によってプロセスチューブ103内の熱を断熱し、当該プロセスチューブ103内の熱がロード空間110に逃げるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−97360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記の熱処理装置にあっては、基板Wの外周外方に加熱ヒータ101が配置されているので、基板Wの中央部は、その外周部(中央部以外の部分)に比べて処理温度まで加熱するのに時間がかかる。このため、基板の熱処理を効率良く行うことができないという問題があった。
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、基板全体を処理温度まで迅速に加熱することができる基板の熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の基板の熱処理装置は、底部に設けられた炉口を通してプロセスチューブ内に搬入された基板を、当該プロセスチューブの外側に配置されたヒータにより熱処理する熱処理炉と、前記基板を保持した状態で前記炉口から前記プロセスチューブ内に搬入および搬出するためのボートと、前記ボートの下方に配置され、前記ヒータによる輻射熱を断熱するヒートバリアと、前記ボートに保持された基板の中央部と前記ヒートバリアとの間に配置され、前記輻射熱を吸収する吸熱部材と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
このような構成の基板の熱処理装置によれば、基板の中央部とヒートバリアとの間に配置された吸熱部材がヒータによる輻射熱を吸収するので、吸熱部材の熱によって基板の中央部を処理温度まで迅速に加熱することができる。このため、基板全体を処理温度まで迅速に加熱することができる。
【0008】
また、前記熱処理装置は、前記吸熱部材を複数保持するとともに、各吸熱部材をそれぞれ着脱可能に保持する保持部材をさらに備えていることが好ましい。この場合には、基板の処理温度に応じて吸熱部材の個数を変更することができる。したがって、基板の処理温度が異なる場合であっても使用される吸熱部材を共通化することができるので、部品点数を減少させることができ、ひいては吸熱部材のコストを安くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る基板の熱処理装置によれば、輻射熱を吸収する吸熱部材によって基板の中央部を処理温度まで迅速に加熱することができるので、基板の熱処理を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板の熱処理装置を示す概略縦断面図である。
【図2】吸熱部材の斜視図である。
【図3】従来の熱処理装置を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はこの発明の一実施形態に係る基板の熱処理装置を示す概略縦断面図である。
この熱処理装置は、筐体1の内部に、基板としての円板状のガラス基板Wに熱処理を施す熱処理炉2を設け、その下方にロード空間3を設けているとともに、このロード空間3に隣設させて、ガラス基板Wをロード空間3に搬送するための搬送空間Aを設けている。前記ロード空間3及び搬送空間Aは、必ずしも閉鎖空間である必要はなく、開放空間である場合も含まれる。
【0012】
前記熱処理炉2は、底部が開口した石英製のプロセスチューブ4の周囲に、ヒータ5を配置した縦型のものである。前記プロセスチューブ4は、ドーム状の天井部を有するアウターチューブ4aの内部に、円筒形のインナーチューブ4bを配置したものである。この熱処理炉2の底部には、ガラス基板Wをプロセスチューブ4内に搬入したり、プロセスチューブ4内から搬出したりするための炉口6が設けられている。なお、前記アウターチューブ4aの周壁とインナーチューブ4bの周壁との間の空間は、プロセスガスの排気路として構成されている。
【0013】
前記ロード空間3の内部には、ガラス基板Wを保持するためのボート7が配置されているとともに、このボート7を熱処理炉2のプロセスチューブ4内に導入するための昇降リフト8が配置されている。前記ボート7は、複数枚のガラス基板Wを互いに隙間を設けた状態で水平に保持するものであり、図示しないフレームを介して前記昇降リフト8に設けられた昇降テーブル9に支持されている。
【0014】
前記昇降テーブル9は、ロード空間3に立設された複数対のボールねじ10に、ボールナット11を介して連結されている。この昇降テーブル9は、回転駆動機構12によって前記ボールねじ10を回転駆動することにより昇降させることができ、これにより、ボート7に保持されたガラス基板Wを、プロセスチューブ7内に搬入したり、プロセスチューブ7内から搬出したりすることができる。
前記昇降テーブル9は、その上昇端において前記熱処理炉2の炉口6を閉塞し、その下降に伴って当該炉口6を開放する開閉扉を兼ねている。
【0015】
前記昇降テーブル9の上方には、ヒートバリア13が設けられている。このヒートバリア13は、石英からなる円板状の遮熱板13aを、所定隙間を設けて複数段積み重ねたものであり、ヒータによるプロセスチューブ7内の輻射熱を断熱して当該輻射熱がロード空間3へ伝わるのを抑制している。また、ヒートバリア13の上方であって、かつボート7の下部領域に保持されたガラス基板Wの中央部の下方には、円板状に形成された複数の吸熱フィン14(吸熱部材)が設けられている。なお、本発明におけるガラス基板Wの「中央部」とは、例えば、ガラス基板Wの中心軸と同心で、かつ直径がガラス基板Wの直径の1/2〜1/3の円形領域をいう。
【0016】
図2は、吸熱フィン14を示す斜視図である。吸熱フィン14は、熱伝導率および熱放射率が高い部材(例えばSi,SiC(炭化ケイ素)またはカーボン等)からなり、前記輻射熱を効率良く吸収するものである。また、各吸熱フィン14は、石英からなる保持部材15によりそれぞれ着脱可能に保持されている。保持部材15は、鉛直方向に延びる3本の柱部15aと、これらの各柱部15aに上下方向に所定間隔をあけて固定された複数(本実施形態では5個)の環状部15bとを備えており、各環状部15bに吸熱フィン14が着脱可能に載置されている。
【0017】
前記搬送空間Aの内部には、カセットストッカや移載ロボットが配置されており(図示せず)、この移載ロボットによって、扉(図示せず)を通してガラス基板Wを前記カセットストッカからボート7に移載したり、ボート7から搬送空間Aへ取り出したりすることができる。
【0018】
以上の構成の熱処理装置は、昇降リフト8をロード空間3に下降させ、搬送空間Aからボート7に複数枚のガラス基板Wを移載した状態で、昇降リフト8を上昇させることにより、炉口6を通してボート7とともにガラス基板Wをプロセスチューブ4内に導入する。このガラス基板Wの導入が完了すると同時に、昇降テーブル51によって炉口6が閉塞されてプロセスチューブ4内が密閉され、この状態でガラス基板WにCVD処理等の熱処理が施される。
【0019】
熱処理中において、ヒータ5の輻射熱がプロセスチューブ4内のガラス基板Wに継続的に供給される。その際、ガラス基板Wの中央部の下方に配置された吸熱フィン14が輻射熱を吸収するため、この吸熱フィン14の熱によって、ガラス基板Wの中央部を迅速に加熱することができる。この結果、ガラス基板Wの熱処理を効率良く行うことができる。
また、各吸熱フィン14は保持部材15に着脱可能に取り付けられているので、処理温度を変更する際に、その処理温度に応じて吸熱フィン14の取り付け枚数を変更することができる。このため、ガラス基板Wの処理温度が異なる場合であっても、使用される吸熱フィン14を共通化することができるので、部品点数を減少させることができ、ひいては吸熱フィン14のコストを安くすることができる。
【0020】
ガラス基板Wの熱処理が完了すると、昇降リフト8を駆動してボート7とともにガラス基板Wをロード空間3に下降させて冷却する。そして、ガラス基板Wが所定温度まで冷却すると、移載ロボットにより当該ガラス基板Wを搬送空間Aに移送する。以上により熱処理の1サイクルが完了する。
【0021】
なお、この発明に係る基板の熱処理装置は、前記実施の形態に限定されるものでない。例えば、吸熱フィン14やガラス基板Wの形状としては、円板に限らず、多角形板であってもよい。この場合、ガラス基板Wの「中央部」とは、例えば、ガラス基板Wの中心軸と同心で、かつ面積がガラス基板Wの面積の1/4〜1/9の外形領域をいう。
また、基板としては、ガラス基板Wに限らず、半導体ウェハ等の各種の板状ワークを挙げることができる。さらに、ヒートバリア13としては、複数枚の遮熱板13aに限らず、石英製の容器内に石英ウールを所定密度で充填したものであってもよい。
【符号の説明】
【0022】
2 熱処理炉
4 プロセスチューブ
5 ヒータ
6 炉口
7 ボート
13 ヒートバリア
14 吸熱フィン(吸熱部材)
15 保持部材
W ガラス基板(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に設けられた炉口を通してプロセスチューブ内に搬入された基板を、当該プロセスチューブの外側に配置されたヒータにより熱処理する熱処理炉と、
前記基板を保持した状態で前記炉口から前記プロセスチューブ内に搬入および搬出するためのボートと、
前記ボートの下方に配置され、前記ヒータによる輻射熱を断熱するヒートバリアと、
前記ボートに保持された基板の中央部と前記ヒートバリアとの間に配置され、前記輻射熱を吸収する吸熱部材と、
を備えていることを特徴とする基板の熱処理装置。
【請求項2】
前記吸熱部材を複数保持するとともに、各吸熱部材をそれぞれ着脱可能に保持する保持部材をさらに備えている請求項1に記載の基板の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−205820(P2010−205820A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47893(P2009−47893)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】