説明

基板の表面処理方法、配線形成方法、配線形成装置及び配線基板

【課題】手短で、高速であり、経済的に微細回路配線を形成することができる基板の表面処理方法、配線形成方法、配線形成装置及び配線基板が提示される。
【解決手段】本発明による基板の配線形成方法は、アルカリ金属化合物を含む表面処理液を吐出方式にてベースフィルム上の配線パターンに応じて選択的に吐出させる基板の表面処理段階、表面処理された配線に応じて金属ナノ粒子を含む導電性インクを吐出させる導電性インクの吐出段階、及び導電性インクが吐出されたベースフィルムを還元性雰囲気中で焼成させる焼成段階を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面処理方法、配線形成方法、配線形成装置及び配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板を製造するための基板の配線形成方法には腐蝕法がある。腐蝕法は、配線を形成しない銅箔をとり除き、役目を果たした腐蝕レジストを剥離することで銅箔の配線を形成する方法である。このような腐蝕法は、直接的に配線を形成しない銅箔も基板全面に導入が必要であるので高費用、低效率の方法である。
【0003】
また腐蝕法は、腐蝕レジストを導入してこれをまた剥離する段階を経なければならないので製造時間が長いし、煩わしくて非效率的であるという短所がある。また、微細回路配線を形成しにくいという問題がある。
【0004】
従来の配線基板を製造するための基板の配線形成方法の別の例としては、レーザ法がある。
【0005】
図1は、従来の一実施例による配線形成方法を示す模式図で、図1を参照して概略的内容を説明する。レーザ法は、ベースフィルム(110)全面に撥水性加工膜(130)を形成した後、レーザ光(150)にてこの撥水性加工膜(150)をとり除いて、この露出された領域に導電性インク(170)を噴射して導電性配線を形成する方法である。
【0006】
この方法によれば、レーザ光発生装置の具備が別に要求されて製造単価が上昇され、配線を直接的に構成しない撥水性加工膜(150)の導入と除去という段階を経なければならないので煩わしくて非效率的であるという短所がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、吐出方式であって、基板全面ではなく配線パターンにだけ選択的に表面処理を行って工程の段階を簡略化することで低い費用でも微細回路配線を形成することができる基板の表面処理方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記のような表面処理方法によって微細配線を形成する基板の配線形成方法及び装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記のような配線形成方法によって簡略化された工程で形成された微細配線を含む配線基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態によれば、アルカリ金属化合物を含む表面処理液を吐出方式でベースフィルム上の配線パターンに応じて吐出させる基板の表面処理方法を提供する。
【0011】
ここで、アルカリ金属化合物はKOH、NaOH及びLiOHの中の少なくとも一つであることができるし、吐出方式はインクジェット方式である。
【0012】
好ましい実施例によれば、インクジェット方式に使われるインクジェットプリンタヘッドのノズルの直径は1乃至80μmであり、ベースフィルムはポリイミドフィルムである。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、アルカリ金属化合物を含む表面処理液を吐出方式にてベースフィルム上の配線パターンに応じて選択的に吐出させる基板の表面処理段階、表面処理された配線に応じて金属ナノ粒子を含む導電性インクを吐出させる導電性インク吐出段階、及び導電性インクが吐出されたベースフィルムを還元性雰囲気中で焼成させる焼成段階を含む基板の配線形成方法を提供する。
【0014】
ここで表面処理段階と導電性インク吐出段階は同時に遂行される。
【0015】
好ましい実施例によれば、吐出方式はインクジェット方式であり、ベースフィルムはポリイミドフィルムである。
【0016】
ここで、インクジェット方式は複数のインクジェットプリンタヘッドを含んでおり、複数のインクジェットプリンタヘッドは、アルカリ金属化合物を含む表面処理液を吐出する表面処理用インクジェットプリンタヘッド及び金属ナノ粒子を含む導電性インクを吐出する導電性インク用インクジェットプリンタヘッドを含む。
【0017】
ここで、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと上記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドは、相互違う動作制御信号に応じて個別的に動きながらそれぞれ表面処理液と導電性インクを吐出する。
【0018】
ここで、上記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさは上記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさより小さいとか、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと上記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドの吐出振動数を異にする。
【0019】
好ましい実施例によれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径は上記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径より1乃至20μm小さくすることができ、アルカリ金属化合物はKOH、NaOH及びLiOHの中の少なくとも一つである。
【0020】
本発明のまた別の実施形態によれば、アルカリ金属化合物を含む表面処理液を吐出する表面処理液用インクジェットプリンタヘッド、金属ナノ粒子を含含む導電性インクを吐出する導電性インク用インクジェットプリンタヘッドを含んでおり、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと導電性インク用インクジェットプリンタヘッドがそれぞれ表面処理液と導電性インクを同時に吐出する基板の配線形成装置を提供する。
【0021】
ここで、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと上記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドは相互違う動作制御信号に応じて個別的に動く。
【0022】
ここで、上記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさは上記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさより小さいとか、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと導電性インク用インクジェットプリンタヘッドの吐出振動数を異にする。
【0023】
好ましい実施例によれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径は上記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径より1乃至20μm小さくする。
【0024】
本発明のまた別の実施形態によれば、上述した基板の配線形成方法によって形成された微細配線を含む配線基板を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
上述したように、本発明による基板の表面処理方法、基板の配線形成方法、基板の配線形成装置及び配線基板によれば、吐出方式によって配線パターンを形成させることができるので選択的な表面処理が可能である。
【0026】
したがって、工程が煩わしくなく、簡単で早い。また腐蝕レジストや撥水性加工膜の除去のような工程が不必要であるので、簡単で経済的な表面処理が可能である。また、インクジェットプリンタのノズルの大きさを調節して微細回路配線に応じて選択的な表面処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明による基板の表面処理方法、配線形成方法、配線形成装置及び配線基板の好ましい実施例を、添付図面を参照して詳しく説明する。添付図面を参照して説明するにおいて、図面符号に構わず同一の構成要素は同じ参照符号を付与してこれに対する重複される説明は略する。
【0028】
本発明の好ましい実施例を詳しく説明する前に、基板の表面処理方法の例と、表面処理の際起きられる反応に対して先に説明する。
【0029】
導電性配線を形成するための基板の表面処理方法には、乾式法と湿式法があるが、反応の容易さと低い費用のかかる湿式法が主に利用されている。この湿式法であって、表面処理の迅速性のためアルカリ溶液を使うアルカリ処理法に対して多い研究が遂行されている。
【0030】
好ましい実施例によって、ベースフィルムとしてポリイミドフィルムを使用し、表面処理液としてKOH溶液を使用する場合、基板の表面で起きられる反応に対して説明する。反応式(1)を参照すれば、ポリイミドフィルムをKOHのアルカリ溶液で処理すれば加水分解によってポリイミドの環が開環になる。
【0031】

【0032】
このように開環になったポリイミド環は不安定であって、またKOHと反応することになる。反応式(2)を参照すれば、酸-塩基反応によって反応式(1)から開環になったポリイミドがポリアメート(polyamate)状態になる。
【0033】

【0034】
ポリイミドフィルムの表面がポリアメート状態である時、その上にインクを吐出させる。その理由は、ポリイミドフィルム表面に極性期が導入された時にインクを吐出させればフィルムとインクとの接着力を向上させることができるからである。このようにインクを吐出させた後、基板を還元性雰囲気中で焼成させる。この還元性雰囲気中で塩酸を使う場合ポリイミドフィルムの表面では反応式(3)のような反応が起きる。反応式(3)を参照すれば、ポリアメートは塩酸によって陽性子添加反応(protonate)が起きて安定したポリアミック酸(polyamicacid)状態になる。
【0035】

【0036】
図2は、本発明の好ましい一実施例による基板の表面処理方法を示す図面である。図2を参照すれば、表面処理液は、ベースフィルム(210)に、前工程の転写段階によって形成された配線パターン(261)に応じて表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)を含むインクジェットプリンタから吐出される。その結果ベースフィルム(210)上には表面処理された配線(263)が形成される。フィルム全面に表面処理をする従来方式とは違って、本発明の表面処理方法は、インクジェット方式によって配線パターンを形成させることができるので選択的な表面処理が可能である。
【0037】
また、この方法によれば、腐蝕レジスタや撥水性加工膜の除去のような工程が不必要であるから簡単で経済的な表面処理が可能である。また、この方法によれば、インクジェットプリンタのノズルの大きさを調節するとか、インクジェットプリンタヘッドの吐出振動数を調節して微細回路配線に応じて選択的な表面処理が可能である。
【0038】
図3は、本発明の好ましい一実施例による基板の配線形成方法を示す図面である。図3を参照すれば、表面処理液は、ベースフィルム(210)に前工程の転写段階によって形成された配線パターン(261)に応じて表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)を含むインクジェットプリンタから吐出される。その結果ベースフィルム(210)上には表面処理になった配線(263)が形成される。
【0039】
この表面処理になった配線(263)に金属ナノ粒子を含む導電性インク(270)を、導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)を含むインクジェットプリンタから吐出させる。その結果ベースフィルム(210)上にはインクが吐出された配線(265)が形成される。
【0040】
図4は、本発明の好ましい一実施例によって形成された焼成前の配線の断面図であり、図5は、本発明の好ましい別の一実施例によって形成された焼成前の配線の断面図である。図4及び図5を参照すれば、ベースフィルム(210)上に表面処理液(280)層が形成され、その上に導電性インク(270)層が形成される。
【0041】
この表面処理液(280)層は表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)によって表面処理になった配線(263)を形成するし、導電性インク(270)層は導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)によってインクが吐出された配線(265)を形成する。
【0042】
図4においては、ベースフィルム(240)上に形成された表面処理液(280)の液滴の大きさが導電性インク(270)の液滴の大きさより大きい場合を示した。図5においては、ベースフィルム(240)上に形成された表面処理液(280)の液滴の大きさが導電性インク(270)の液滴の大きさより小さな場合を示した。
【0043】
上記のような段階によって表面処理になった後、導電性インクの吐出された配線(265)を含むベースフィルム(210)を還元性雰囲気中で焼成させれば、導電性の配線を形成することができる。
【0044】
好ましい実施例によれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)を連続的に配置して、表面処理段階と導電性インクの吐出段階を同時に遂行することができる。ここで、「同時に遂行することができる」ということは、同じ時間帯に表面処理液(280)と導電性インク(270)を吐出させられるという意味だけでなく、複数のインクジェットプリンタヘッドを利用してあらかじめ設定されたプログラムによって表面処理液と導電性インクを吐出させられることも意味する。
【0045】
好ましい別の実施例によって、図3を參照すれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)はベースフィルム(210)に対向して動きながらそれぞれ表面処理液と導電性インクを同時に吐出させる。ここで、表面処理になった配線上でアルカリ溶液とポリイミドが反応してポリアメートが形成される時間を付与するために、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)間の吐出時間に差を置くことができる。
【0046】
表面処理になった配線上でアルカリ溶液とポリイミドが反応してポリアメートが形成される時間を付与するために、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)間に一定距離を置いてそれぞれ表面処理液と導電性インクを同時に吐出させることもできる。このような表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)は吐出のためのインクジェットプリンタ装置のヘッドになることができる。
【0047】
例えばインクジェットプリンタ装置は、その装置を支持している受け台、あらかじめ転写された配線パターン(261)に応じてベースフィルム(210)上に表面処理液と導電性インクを吐出させるインクジェットプリンタヘッド、インクジェットプリンタヘッドをベースフィルム(210)上で移動させる移動装置、インクジェットプリンタヘッドがあらかじめ転写された配線パターン(261)に応じてインクを吐出させるように制御するプログラムを行う回路部などを含むことができる。
【0048】
好ましい実施例によれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)を一体に動きながらそれぞれ表面処理液と導電性インクを吐出させることができる。すなわち、あらかじめ転写された配線パターン(261)に応じて同じ経路上で一緒に動きながら表面処理液と導電性インクを吐出させることができる。ヘッドが動く場合、それぞれのヘッドから吐出される表面処理液や導電性インクの噴射時点、噴射される量などを調節することで、あらかじめ設定されたプログラムによって表面処理液または導電性インクを吐出させることができる。
【0049】
好ましい別の実施例によれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)は相互違う動作制御信号に応じて個別的に動きながらそれぞれ表面処理液または導電性インクを吐出させることができる。すなわち、それぞれのヘッドは一つの装置または別個の装置に具備されて、それぞれ異なるプログラムによって相互違う動作制御信号を受信して、ここに応ずる動作を遂行することができる。
【0050】
また、このような表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)は、複数個が同時に使われることもできる。ここで、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)と導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)のノズルの大きさは微細回路配線を形成するのに相応しくなければならない。
【0051】
最近、回路線の幅が数十μm以下の微細配線を形成するためには、吐出方式に使われるノズルの直径も数十μm以下であることが要求されている。本発明に使われるインクジェットプリンタヘッドのノズルの直径は、好ましくは1乃至80μmであって、より好ましくは20μm程度である。ノズルの直径が80μm以上であれば、微細回路配線を形成するのに相応しくなく、ノズルの直径が1μmより小さければ表面処理液や導電性インクを吐出させにくい。
【0052】
図4を参照すれば、表面処理液(280)の液滴の大きさと導電性インク(270)の液滴の大きさは違う。理想的なことは、表面処理液の液滴の大きさと導電性インクの液滴の大きさが同じ場合だが、一般的には表面処理液と導電性インクの粘度の差で表面処理液の液滴が導電性インクの液滴より大きい。表面処理液の液滴が導電性インクの液滴より過度に大きい場合、導電性インクがよく溜まらなくて好ましい配線を形成することができない。
【0053】
図5を参照すれば、表面処理液の液滴が導電性インクの液滴より過度に小さければ、導電性インクがベースフィルムに相応しく接着されることができない。表面処理液の液滴の直径は導電性インクの液滴の直径の0.6乃至1.5倍範囲内が好ましい。
【0054】
液滴の大きさの差が上のような範囲内になるための好ましい一実施例によれば、表面処理用インクジェットプリンタヘッド(230)のノズルの大きさは導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)のノズルの大きさより小さくすることができる。すなわち、一般的に大きい液滴を形成する表面処理液を吐出させる表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)のノズルの大きさ自体を小さくして、吐出される表面処理液の液滴の大きさを小さくする。
【0055】
好ましい実施例によれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッド(230)のノズルの直径が導電性インク用インクジェットプリンタヘッド(250)のノズルの直径より1乃至20μm小さければ表面処理液の液滴直径が導電性インクの液滴直径の0.6乃至1.5倍範囲内になる。液滴の大きさの差が上のような範囲内になるための好ましい別の実施例によれば、表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさは同一であるが、吐出振動数を異にして吐出される表面処理液や導電性インクの液滴の大きさを調節することができる。
【0056】
液滴の大きさの差が上のような範囲内になるためのまた別の方法には、インクジェットプリンタの吐出時の吐出圧力と吸入圧力の波形模様や波形段階を変動させて液滴の大きさの差を調節することができる。以外にも1インチ当たり吐出させるインクや表面処理液のドット数を調節して液滴の大きさの差を調節することもできる。
【0057】
図6は、本発明の好ましい一実施例による配線基板を示すフローチャートである。図6を参照すれば、段階S205で、ベースフィルム(210)の表面を、後の工程を遂行するのに適合するように洗浄する。
【0058】
段階S210で、上記のように準備されたベースフィルム(210)上に写真法やスクリーン印刷方法にてあらかじめ設計された配線パターン(261)を転写する。段階S215で、表面処理液を吐出方式にてベースフィルム(210)上の配線パターン(261)に応じて選択的に表面処理を行う。この段階は、上述の実施例で具体的に説明した。
【0059】
段階S220は、金属ナノ粒子を含む導電性インクを吐出させて、表面処理になった配線(263)にインクの吐出された配線(265)を形成する段階である。この段階に関しても上述の実施例で具体的に説明した。段階S225では、段階S215と段階S220から得られた配線の含まれた基板を還元性雰囲気中で焼成する。その結果、段階S215、S220、S225によって基板上に導電性配線が形成される。
【0060】
段階S230では、基板を積層する段階であって、多層基板を形成するための必須段階であり、段階S235から既形成された導電性パターンに被膜を着せて、部品の実装の際行われる半田付け(soldering)過程によって必要のない接触が起きないようにする。段階S240で、部品名、部品位置などのシンボルマークを印刷し、段階S245でHASLなどの工法にて仕上げの表面処理を行う。段階S250で、端子部をメッキして、段階S255で、ホール及び見掛け加工を行って完成の配線基板を得ることができる。
【0061】
本発明の配線基板はその用途が限定されないが、フレキシブル印刷配線基板(FPC)などのポリイミドフィルムを用いた配線基板の製造方法に使うことができる。
【0062】
以上のように、基板の表面処理方法、基板の配線形成方法、基板の配線形成装置及び配線基板の製造方法を一般的に示す図面を参照して説明したが、以下では具体的な実施例を基準にして説明する。
【0063】
1)ベースフィルム
ベースフィルム(210)は、一般的に有機絶縁体である。この有機絶縁体は弾性率が適当に高くて、吸湿膨脹係数及び線膨脹係数の小さなことが要望される。有機絶縁体の吸湿膨脹係数が大きければ、このような有機絶縁体を使って得られた基板は、使用環境の変化によって、すなわち、温度や湿度の変化によって撓みやカールが発生しやすいからである。特にPDP用軟性回路基板のように他の用途と比べて大面積を有する軟性回路基板の場合、ベースフィルムの寸法安全性が高くなければならない。有機絶縁体がベースフィルム(210)として使われるためには耐熱性、適当な弾性率、屈曲性、適当な線膨脹係数、適当な吸湿膨脹係数を有する有機絶縁体が好ましい。このような特性を有する有機絶縁体ではポリイミドが好ましい。PDP用軟性回路基板に使われるベースフィルムを例にあげたが、本発明の基板の表面処理方法はこの用途に限定されない。またこのようなベースフィルム(210)は、後に記述する基板の配線形成方法または配線基板に使われるベースフィルムにも該当される。
【0064】
2)表面処理条件
(1)表面処理液及び添加剤
表面処理液は、上述したようにアルカリ溶液の使用が活発に研究されている。アルカリ溶液はアルカリ金属化合物を含んでおり、好ましいアルカリ金属化合物としてはKOH、NaOHまたはLiOHが挙げられる。好ましい実施例によれば、表面処理液に40体積%まで添加剤が添加されられる。例えば、エチレングリコール、ジー(エチレングリコール)ブチルエーテル、1-ブタノール、α-テルピノル、プロピレングリコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-(イソプロピルアミノ)エタノール、エチレンジアメン、グリセロール、ヘキシルアルコール、2-メチル-2、4-ペンタンジオール、アセトニトリル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メチル-2-ピロ−ルリディノン、ジーエチレングリコールジーエチルエーテル、ジーエチレングリコール、プロエチレングリコール、テルピノル、キシレン、トルエン、テトラデカン、ドーデカン、プロピレングリコール、トリーエチレングリコール、ジ−プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、メチルエチルエーテルなどが添加されることができる。このような添加剤は、粘度調節、基板の表面との接着力調節、表面処理液の広がり調節、蒸発率調節などの機能を遂行するので願う条件にしたがって添加される。
【0065】
(2)表面処理液の濃度
ここで、KOH溶液の濃度は0.1乃至10Mが好ましくて、より好ましくは1Mである。濃度が0.1M以下の場合、ポリイミドフィルムに表面処理される效果がほとんどなく、濃度が10M以上の場合、ポリイミドフィルムの物性が変わることがあるから好ましくない。好ましい実施例によれば、ポリイミドフィルムの厚さが25μmの場合、表面処理するKOH溶液の濃度が10M以上の時ポリイミドフィルムが10μm以上表面改質になってポリイミドフィルムの制御が難しくなる。
【0066】
(3)表面処理時間
表面処理時間はKOH溶液がポリイミド表面で反応を起こしてポリイミドがポリアメート状態になるのにかかる時間であれば好ましい。ポリイミドがポリアメートになった後、導電性インクを吐出させると導電性配線の形成が可能である。このようなKOH溶液の処理時間は1乃至20分程度が好ましい。処理時間が1分以下の場合、ポリアメートが充分に形成されなく、処理時間が20分以上の場合、反応が安定化段階に入ってこれ以上ポリアメートが形成されない。より好ましい表面処理時間は3乃至10分である。
【0067】
(4)表面処理温度
フィルムを表面処理する温度は3乃至80℃が好ましい。処理温度が3℃以下の場合KOH溶液や導電性インクの粘度が低くなってノズルから表面処理液や導電性インクの吐出が難しくなることもある。処理温度が80℃以上の場合KOH溶液の化学的特性が変わることもあるし、特に、導電性インクを構成している化合物が互いに反応を起こす恐れがある。
【0068】
(5)表面処理気圧
表面処理のため吐出は、0.8乃至1.5atmの気圧下で遂行するのが好ましい。気圧がこの範囲を脱する場合、表面処理液の直進性保障や吐出大きさ(dropsize)の制御が難しくなる。また大気状態で表面処理することもできるし、窒素雰囲気下ですることもできる。窒素雰囲気下で表面処理する場合、表面処理液の流量調節が必要である。以上アルカリ溶液としてKOH溶液を基準にして説明したが、NaOH溶液やLiOH溶液の場合にも条件は同じである。
【0069】
3)導電性インク
微細回路配線を形成する導電性インクに含まれる金属ナノ粒子の種類は、特に限定されないが、一般的には金、銀、銅、白金、クロム、ニッケル、アルミニウム、チタン、パラジウム、すず(Sn)、バナジウム、亜鉛、マンガン、コバルト、ジルコニウムなどの金属を相応しく使うことができる。これらの金属は単独で使うことができるし、2種以上を適当に混合した合金で使うこともできる。上記金属の中で特に好ましくは、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などをあげられる。また、これらの好ましい2種以上を適当に混合した合金で使うこともできる。このような金属ナノ粒子が分散剤によってコロイド状態を成しながら分散されているものが導電性インクである。微細回路印刷に相応しい導電性インクの好ましい粘度は1乃至50cpsである。
【0070】
4)還元性雰囲気
導電性配線を形成するため還元性雰囲気中で焼成することが要求されるが、ここで、還元性雰囲気には、酢酸、ギ酸または塩酸などが使われることができる。このような還元性雰囲気でポリアメートはポリアミック酸の安定した形態を成すことになる。
【0071】
5)吐出方式
「吐出方式」は、ノズル(nozzle)やニードル(needle)を利用して願う低粘度の液体を目的対象物に噴射または吐出させて印刷する方式を言う。好ましくはインクジェット方式である。ここで、インクジェットプリンタヘッドの駆動方式にはピエゾ(Piezo)方式やサーマル(Thermal)方式があるが、このようなヘッド駆動方式に制限されることではない。表面処理液の濃度を調節すればOA用インクジェットプリンタも使用可能である。ここで、インクジェットプリンタヘッドの数や種類、インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさなどに関しては上述の実施例で具体的に説明したので、ここに関する説明を省略する。
【0072】
本発明は、上述した実施例に限定され乃至、本発明の思想内で当分野の通常の知識を持った者によって多くの変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】従来の一実施例による配線形成方法を示す。
【図2】本発明の好ましい一実施例による基板の表面処理方法を示す。
【図3】本発明の好ましい一実施例による基板の配線形成方法を示す。
【図4】本発明の好ましい一実施例によって形成された焼成前の配線の断面を示す。
【図5】本発明の好ましい別の一実施例によって形成された焼成前の配線の断面を示す。
【図6】本発明の好ましい一実施例による配線基板の製造方法のフローチャートを示す。
【符号の説明】
【0074】
110 ベースフィルム
130 撥水性加工膜
150 レーザ(laser)、光
170 導電性インク
210 ベースフィルム
230 表面処理液用インクジェットプリンタヘッド
250 導電性インク用インクジェットプリンタヘッド
261 配線パターン
263 表面処理された配線
265 インクが吐出された配線
270 導電性インク
280 表面処理液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属化合物を含む表面処理液を、吐出方式にてベースフィルム上の配線パターンに応じて選択的に吐出する基板の表面処理方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属化合物は、KOH、NaOH、及びLiOHの中の少なくとも一つである請求項1に記載の基板の表面処理方法。
【請求項3】
前記吐出方式はインクジェット方式である請求項1に記載の基板の表面処理方法。
【請求項4】
前記インクジェット方式に使われるインクジェットプリンタヘッドのノズルの直径、1乃至80μmである請求項3に記載の基板の表面処理方法。
【請求項5】
前記ベースフィルムはポリイミドフィルムである請求項1に記載の基板の表面処理方法。
【請求項6】
アルカリ金属化合物を含む表面処理液を、吐出方式にてベースフィルム上の配線パターンに応じて吐出する基板の表面処理段階、
前記表面処理になった配線に応じて金属ナノ粒子を含む導電性インクを吐出する導電性インク吐出段階、及び
前記導電性インクの吐出されたベースフィルムを還元性雰囲気中で焼成させる焼成段階
を含む基板の配線形成方法。
【請求項7】
前記表面処理段階と導電性インク吐出段階が同時に遂行されることができる請求項6に記載の基板の配線形成方法。
【請求項8】
前記ベースフィルムはポリイミドフィルムである請求項6に記載の基板の配線形成方法。
【請求項9】
前記吐出方式はインクジェット方式である請求項6に記載の基板の配線形成方法。
【請求項10】
前記インクジェット方式は、複数のインクジェットプリンタヘッドを含んでおり、前記複数のインクジェットプリンタヘッドは、アルカリ金属化合物を含む表面処理液を吐出する表面処理液用インクジェットプリンタヘッド、及び
金属ナノ粒子を含む導電性インクを吐出する導電性インク用インクジェットプリンタヘッド
を含む請求項9に記載の基板の配線形成方法。
【請求項11】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドは相互違う動作制御信号に応じて個別的に動きながらそれぞれ表面処理液と導電性インクを吐出する請求項10に記載の基板の配線形成方法。
【請求項12】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさは、前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさより小さな請求項10または11に記載の基板の配線形成方法。
【請求項13】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径は、前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径より1乃至20μm小さな請求項12に記載の基板の配線形成方法。
【請求項14】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドの吐出振動数を異にする請求項10または11に記載の基板の配線形成方法。
【請求項15】
前記アルカリ金属化合物は、KOH、NaOH、及びLiOHの中の少なくとも一つである請求項6または10に記載の基板の配線形成方法。
【請求項16】
アルカリ金属化合物を含む表面処理液を吐出する表面処理液用インクジェットプリンタヘッド、及び
金属ナノ粒子を含む導電性インクを吐出する導電性インク用インクジェットプリンタヘッド
を含んでおり、
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドがそれぞれ表面処理液と導電性インクを同時に吐出する基板の配線形成装置。
【請求項17】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドは相互違う動作制御信号に応じて個別的に動きながらそれぞれ表面処理液と導電性インクを同時に吐出する請求項16に記載の基板の配線形成装置。
【請求項18】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさは前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの大きさより小さな請求項16または17に記載の基板の配線形成装置。
【請求項19】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径は前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドのノズルの直径より1乃至20μm小さな請求項18に記載の基板の配線形成装置。
【請求項20】
前記表面処理液用インクジェットプリンタヘッドと前記導電性インク用インクジェットプリンタヘッドとの吐出振動数を異にする請求項16または17に記載の基板の配線形成装置。
【請求項21】
請求項6乃至11に記載された基板の配線形成方法によって形成された微細配線を含む配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−287217(P2006−287217A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66742(P2006−66742)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】