説明

基板の表面処理装置及び方法、並びに基板処理装置及び方法

【課題】真空装置を用いることなく、大気中で基板表面の清浄化処理を行うことができ、またプラズマクリーニングによることなく、基板表面の自然酸化膜あるいは有機物を除去できるようにする。
【解決手段】基板表面の全面または一部に不活性ガスを供給して酸素遮断ゾーン106を形成する不活性ガス供給部12と、基板表面を所定温度に維持する加熱部16と、酸素遮断ゾーン30に清浄化ガスを供給して基板表面を清浄化する清浄化ガス供給部14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体デバイスの製造工程において、半導体ウェーハ等の基板の表面の有機物や金属表面酸化物等の汚染を除去して該表面を清浄化するのに使用される基板の表面処理装置及び方法に関する。また、本発明は、基板の表面を平坦かつ鏡面状に研磨する基板処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェーハ等の基板の表面に存在する有機物や基板の表面に形成した銅配線の表面に生成される自然酸化膜は、真空排気後、基板を130℃以上に加熱しながら、ガス圧力40Pa以上の蟻酸ガス雰囲気中に置くことで除去できることが確かめられている。この場合の典型的な処理時間は、蟻酸ガス圧力400Pa、基板温度200℃の時、0.1分程度である。
【0003】
一方、半導体デバイスの製造工程では、例えば化学機械研磨(CMP)処理やめっき処理等の大気中での処理の前後で基板表面の清浄化処理が必要な場合がある。例えば、図1に示すように、基板の表面に、例えば銅からなる下層配線膜をめっきで形成し、CMPによって下層配線膜の表面を平坦に研磨して下層配線を形成する。そして、基板の表面に絶縁膜を成膜し、絶縁膜中に溝(トレンチ)を形成した後、基板の表面にバリアメタルを成膜し、しかる後、バリアメタルの表面に、例えば銅からなる上層配線膜をめっきで形成し、CMPによって上層配線膜の表面を平坦に研磨して上層配線を形成することが広く行われている。
【0004】
このような場合、上層配線を形成する前の下層配線の表面に自然酸化膜が生成されたり、CMP工程で配線材料である銅の腐食抑制のために用いられたベンゾトリアゾール(BTA)等の有機物が基板表面に残ったりする場合がある。この自然酸化膜及び有機物は、共に上層配線と下層配線との間の電気的接続を阻害する要因となる。
このため、例えばプラズマクリーニングによって、配線表面に生成された自然酸化膜を除去することが行われていた。
【0005】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離もより狭くなりつつある。特に線幅が0.5μm以下の光リソグラフィの場合、焦点深度が浅くなるためステッパーの結像面の平坦度を必要とする。このような基板の表面を平坦化する一手段として、化学機械研磨(CMP)を行う化学機械研磨装置が知られている。
【0006】
この種の化学機械研磨(CMP)装置は、研磨パッドを上面に有する研磨テーブルとトップリングとを備えている。そして、研磨テーブルとトップリングとの間に基板(ウェーハ)を介在させて、研磨パッドの表面に砥液(スラリ)を供給しつつ、トップリングによって基板を研磨テーブルに押圧して、基板の表面を平坦かつ鏡面状に研磨するようにしている。
【0007】
基板の表面に形成された金属皮膜を化学機械研磨して平坦化する場合には、例えば、スラリ中の酸化剤により金属皮膜を酸化すると同時に、スラリ中のキレート剤により直ちに酸化皮膜を不溶解性錯体化し、この錯体をスラリ中に含まれる砥粒などにより研磨除去することが行われる。
【0008】
基板の表面に銅などの金属皮膜が形成されている場合、研磨を開始する以前に、空気中の水分や酸素によって金属皮膜上に自然酸化膜が成長する場合がある。自然酸化膜が金属皮膜上に形成されていると、キレート剤によって基板の表面が錯体化されにくくなる。また、自然酸化膜自体は錯体よりも研磨されにくいという性質を有している。したがって、基板表面に膜厚が不均一な自然酸化膜が形成された場合に該基板表面を化学機械研磨で研磨すると、局所的に研磨が進行せず、表面の均一な平坦化を実現できないことがある。
【0009】
このため、基板に形成された金属皮膜上の自然酸化膜を除去した状態で基板の金属皮膜を研磨し、基板表面の均一な平坦化を実現するために、平坦化除去処理に先立って、平坦化処理ユニットと一体に組み込んだ酸化膜除去処理ユニットにより、基板表面の自然酸化膜を除去することが提案されている。この酸化膜除去処理ユニットとして、酸の薬液を用いる湿式処理ユニットと真空装置内で酸化膜を還元あるいはエッチング処理する乾式処理ユニットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
なお、蟻酸ガスを使用して銅表面の自然酸化膜をクリーニングした後に大気中に放置した時、銅表面には、クリーニング後、3分40秒で0.5nm程度の膜厚の自然酸化膜が生成されることが報告されている(非特許文献1参照)。したがって、蟻酸ガスによりクリーニングした後の自然酸化膜の成長速度特性を理解した上で、次工程の処理内容を決めることにより、次工程での特性改善が期待できると考えられる。
【特許文献1】特開2005−277396号公報
【非特許文献1】須崎、石川、三好、立石、嶺、嶋、福永、辻村、「Cu表面の自然酸化膜成長と蟻酸ガスによる酸化膜の除去」、2005年秋季応用物理学会学術講演会予稿集、社団法人応用物理学会、平成17年9月7日、第2分冊、p.705
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、基板を真空中で処理するためには、真空容器及び真空排気手段が必要となり、装置自体が大型化するばかりでなく、真空容器内を真空排気する工程と大気圧に復帰させる工程が必要となって、処理時間がかなり長くなってしまう。
【0012】
また、プラズマクリーニングによって、基板表面の自然酸化膜を除去する場合、配線幅の微細化が進むにつれて、プラズマクリーニングによる半導体デバイスの損傷が顕在化してしまうばかりでなく、基板の表面に残ったBTAを除去する有効な手段がないのが現状であった。このため、基板表面のBTAを除去することができる、プラズマクリーニングに代わる新たな基板の表面処理方法の開発が強く望まれていた。
【0013】
なお、酸の薬液を用いる湿式処理で基板表面の自然酸化膜を除去すると、基板内に形成された機能素子に損傷を与えることがあり、高集積半導体の酸化膜除去としては、湿式処理を避けることが望ましい。更に、真空装置を用いた乾式処理で基板表面の自然酸化膜を除去しようとすると、通常、真空処理室とその前後で基板を出し入れする真空予備室の計3つの真空室と真空ポンプが必要となり、化学機械研磨装置に組込むには、酸化膜除去処理装置自体が大型になり、実用的な構成は困難であった。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、真空装置を用いることなく、大気中で基板表面の清浄化処理を行うことができ、しかもプラズマクリーニングによることなく、基板表面の自然酸化膜及びBTA等の有機物を同時に除去できるようにした基板の表面処理装置及び方法を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、基板表面に形成された金属皮膜上の自然酸化膜を大気中での乾式処理で除去し、しかる後、直ちに金属皮膜を化学機械研磨して、基板表面の均一な平坦化が実現できるようにした基板処理装置及び方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、基板表面の全面または一部に不活性ガスを供給して酸素遮断ゾーンを形成する不活性ガス供給部と、基板表面を所定温度に維持する加熱部と、前記酸素遮断ゾーンに清浄化ガスを供給して基板表面を清浄化する清浄化ガス供給部を有することを特徴とする基板の表面処理装置である。
【0016】
これにより、基板表面の全面または一部に不活性ガスを供給して酸素遮断ゾーンを形成した状態で、基板を所定温度に維持しながら、酸素遮断ゾーンに清浄化ガスを供給することで、基板表面の清浄化ガスによる清浄化処理を行うことができる。この場合の清浄化処理中の基板上雰囲気は、実質的に酸素を含まず、不活性ガスと清浄化ガスのみであり、圧力は略大気圧である。これによって、大気中の処理に連続して基板の表面処理(清浄化処理)を行うことができる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、表面を清浄化した後の基板を冷却する冷却部を有することを特徴とする請求項1記載の基板の表面処理装置である。
これにより、基板を清浄化した後の基板を、例えば50℃まで冷却部で冷却してから、装置から取り出して次工程に搬送することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記清浄化ガスは、カルボン酸ガスまたは還元性ガスであることを特徴とする請求項1または2記載の基板の表面処理装置である。
蟻酸、酢酸またはプロピオン酸等のカルボン酸は、比較的安価であるばかりでなく、常温で液体であるので取扱いが容易であり、有機物や酸化物と反応して気化させることができる。従って、清浄化ガスとして、カルボン酸、特に蟻酸、酢酸またはプロピオン酸ガスを使用することで、有機物や酸化物を、容易且つ安価に、例えば揮発、昇華または分解させて除去することができる。還元性ガスとしては、例えば水素ガスが挙げられる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記酸素遮断ゾーンに供給される清浄化ガスの流れを規制する気流規制機構と該気流規制機構内部を排気する排気部を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板の表面処理装置である。
これにより、酸素遮断ゾーンに供給された清浄化ガスの流れを規制し、清浄化ガスが装置の外部に流出するのを防止することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、基板表面の全面または一部に不活性ガスを供給して酸素遮断ゾーンを形成しながら、基板表面を所定温度に維持し、前記酸素遮断ゾーンに清浄化ガスを供給して基板表面を清浄化することを特徴とする基板の表面処理方法である。
請求項6に記載の発明は、表面を清浄化した基板を冷却することを特徴とする請求項5記載の基板の表面処理方法である。
【0021】
請求項7に記載の発明は、基板表面に不活性ガスを供給しながら、表面を清浄化した基板を冷却することを特徴とする請求項6記載の基板の表面処理方法である。
これにより、清浄化処理する前より一般に活性である清浄化処理後の基板表面が再酸化されるのを防止することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、前記清浄化ガスは、カルボン酸ガスまたは還元性ガスであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の基板の表面処理方法である。
請求項9に記載の発明は、前記基板表面の清浄化を、略大気圧下で行うことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の基板の表面処理方法である。
【0023】
請求項10に記載の発明は、前記基板表面の清浄化を、基板を120℃以上の温度に維持して行うことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の基板の表面処理方法である。
請求項11に記載の発明は、前記基板表面の清浄化を、0.5分以上に亘って行うことを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の基板の表面処理方法である。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の基板の表面処理装置と、基板表面を化学機械研磨する化学機械研磨装置と、前記表面処理装置と前記化学機械研磨装置との間で基板を搬送する搬送機構を有することを特徴とする基板処理装置である。
これにより、小型コンパクト化が可能な基板の表面処理装置と化学機械研磨装置を組合せることで、基板処理装置自体の小型コンパクト化を図りながら、基板表面に形成された金属皮膜上の自然酸化膜を大気中での乾式処理で除去し、しかる後、直ちに金属皮膜を化学機械研磨することができる。
【0025】
請求項13に記載の発明は、前記表面処理装置及び前記化学機械研磨装置は、同一の装置フレーム内に配置されていることを特徴とする請求項12項記載の基板処理装置である。
請求項14に記載の発明は、前記表面処理装置と前記化学機械研磨装置は、別体で構成されて互いに離間して配置されていることを特徴とする請求項12項記載の基板処理装置である。
基板の表面処理装置と化学機械研磨装置の処理能力、若しくは設置スペース等の観点から、両装置を独立させて運用するようにしてもよい。
【0026】
請求項15に記載の発明は、金属皮膜を有する基板表面に不活性ガスを吹付けながら該基板表面を所定温度に維持し、基板表面に不活性ガスに加えて有機酸ガスを供給することにより前記基板表面に形成された変質層を除去し、しかる後、前記金属皮膜を化学機械研磨することを特徴とする基板処理方法である。
これにより、より小型の装置の装置で基板表面の変質層を除去し、更に金属皮膜の化学機械研磨厚さをより均一に保つことができる。
請求項16に記載の発明は、前記変質層は、酸化膜であることを特徴とする請求項15記載の基板処理方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の基板の表面処理装置によれば、真空装置を用いることなく、基板表面から酸素を遮断した状態で、基板表面の有機物または金属表面酸化物等の汚染を除去して該表面を清浄化することができる。これによって、表面処理装置の小型コンパクト化と、処理時間のより短縮化を図ることができる。しかも、プラズマエッチングによることなく、したがって、半導体デバイスに損傷を与えることなく、基板の表面に残ったBTAも除去することができる。
本発明の基板処理装置によれば、装置が小型に構成できる基板の表面処理装置を用いて有機酸ガスで金属皮膜表面の自然酸化膜を除去した後、直ちに、基板表面の金属皮膜の化学機械研磨処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
以下の例では、不活性ガスとして窒素ガスを、清浄化ガスとして蟻酸ガスをそれぞれ使用している。なお、清浄化ガスとしては、蟻酸ガス以外の酢酸ガスやプロピオン酸ガス等の他のカルボン酸ガスや、水素ガス等の還元性ガスを使用することができる。不活性ガスは、窒素ガスに限定されないことは勿論である。
【0029】
図2及び図3は、半導体ウェーハ等の基板表面の全面を酸素遮断状態にして清浄化処理を行うようにした、本発明の実施の形態の基板の表面処理装置を示す。図2及び図3に示すように、この表面処理装置は、表面を上向きにして基板Wを載置保持する上下動自在なリフタ10と、リフタ10で保持した基板Wの表面(上面)に窒素ガス(不活性ガス)を供給する不活性ガス供給部12と、リフタ10で保持した基板Wの表面(上面)に、この例では蟻酸ガス(清浄化ガス)と窒素ガスの混合ガスを供給する清浄化ガス供給部14と、基板Wを上面に載置した状態で該基板Wを加熱して所定温度に維持する加熱部16を有している。
【0030】
この例において、リフタ10は、加熱部16の内部を上下に貫通する貫通孔16a内を上下方向に延びており、上昇して、基板Wをリフタ10で保持したまま加熱部16から遠ざけることで基板Wを自然冷却する冷却部としての役割を兼用している。
【0031】
不活性ガス供給部12は、リフタ10の上方に配置され、リフタ10で保持した基板Wの表面(上面)に向けて窒素ガス(不活性ガス)を噴出する多数の噴出口20aを下面に有する円盤状のシャワーヘッド20と、このシャワーヘッド20に窒素ガスを供給する不活性ガス配管22を有している。不活性ガス配管22には、この下流側から順に、開閉弁24a、不活性ガス配管22内を流れる窒素ガスの流量を調節する流量調節弁26及び該流量調節弁26に供給される窒素ガスの圧力を調節する減圧弁28がそれぞれ設けられている。
【0032】
この不活性ガス供給部12は、リフタ10で保持した基板Wの表面(上面)に向けて、シャワーヘッド20の噴出口20aから不活性ガスを噴出することで、基板Wの表面とシャワーヘッド20との間に、窒素ガスによって酸素を遮断した酸素遮断ゾーン30を基板Wの全域に亘って形成するように構成されている。シャワーヘッド20は、上下動自在に構成され、不活性ガス配管22には、伸縮自在で、シャワーヘッド20の上下動が阻害されるのを防止する蛇腹部32が設けられている。
【0033】
清浄化ガス供給部14は、バブラ40と、不活性ガス供給部12の不活性ガス配管22から減圧弁28の上流側で分岐したバブラ配管42と、不活性ガス供給部12の不活性ガス配管22に開閉弁24aと蛇腹部32との間で合流する清浄化ガス配管44を有している。これにより、不活性ガス供給部12と清浄化ガス供給部14は、窒素ガスの供給源を共有することで、構造の簡素化が図られ、共有のシャワーヘッド20の噴出口20aから基板Wに向けてガスを噴出することで、シャワーヘッド20の噴出口20aから不活性ガスを噴出することで基板Wの表面とシャワーヘッド20との間に形成された、酸素を遮断した酸素遮断ゾーン30に、シャワーヘッド20の噴出口20aから蟻酸ガスを噴出できるように構成されている。
【0034】
バブラ40は、内部に蟻酸液50を貯蔵する密閉した容器52と、この容器52内の蟻酸液50を、水54によって、所定の温度に加熱するホットバス56を有している。容器52内の蟻酸液50に浸漬された位置に、多孔板58が配置され、この多孔板58にバブラ配管42が接続されている。清浄化ガス配管44は、容器52の上部空間から外部に延びている。これによって、多孔板58を通して、窒素ガスを蟻酸液50中にバブリングすることで、容器52の上部空間に、窒素ガスと蟻酸ガスとの混合ガスが生成され、この混合ガスが清浄化ガス配管44に導かれるようになっている。
【0035】
バブラ配管42には、開閉弁24bと、バブラ配管42内を流れる窒素ガスの流量を調節する流量調節弁60が設けられている。清浄化ガス配管44には、開閉弁24cが設けられ、この開閉弁24cの上流側に、内部に開閉弁24dを設けたバイパス配管62が分岐して備えられている。これにより、バブラ配管42の開閉弁24bを開くことで、容器52の上部空間に、窒素ガスと蟻酸ガスとの混合ガスが生成され、この混合ガスは、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを閉じ、バイパス配管62の開閉弁24dを開くことで、バイパス配管62を通してバイパスされる。そして、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを開き、バイパス配管62の開閉弁24dを閉じることで、清浄化ガス配管44を通して、シャワーヘッド20の噴出口20aから噴出される。
【0036】
加熱部16は、この例では、内部に発熱源を有するホットプレートによって構成され、この加熱部(ホットプレート)16に基板Wを載置することで、基板Wを加熱するように構成されている。
なお、発熱源としてはホットプレート式によらず、赤外線式や高温の窒素ガス等を吹付ける熱風式でも良い。
【0037】
更に、この例では、加熱部16の上部から上方に延び、加熱部16上に基板Wを載置して、酸素遮断ゾーン30に蟻酸ガス(と窒素ガスとの混合ガス)を供給している時に、酸素遮断ゾーン30の周囲を包囲して、酸素遮断ゾーン30内における蟻酸ガスの流れを規制する略円筒状の気流規制機構70が配置され、この気流規制機構70は、排気部72に連通している。これによって、蟻酸ガスが装置外に流出するのが防止される。
【0038】
次に、この表面処理装置による基板の表面処理(清浄化処理)について説明する。
先ず、図3に示すように、リフタ10及びシャワーヘッド20を共に上昇させておき、表面を上向きにして搬送装置等でリフタ10の上方まで搬送させた基板Wをリフタ10上に載置してリフタ10で保持する。この時、加熱部16を所定温度に昇温させておく。また、バブラ配管42の開閉弁24bを開き、窒素ガスのバブリングによって、容器52の上部空間に窒素ガスと蟻酸ガスとの混合ガスを生成させ、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを閉じ、バイパス配管62の開閉弁24dを開くことで、所定流量の窒素ガスと蟻酸ガスとの混合ガスを、バイパス配管62を通してバイパスさせておく。また、不活性ガス供給部12の開閉弁24aを閉じておく。
【0039】
そして、リフタ10で基板Wを保持した後、不活性ガス供給部12の開閉弁24aを開き、シャワーヘッド20の噴出口20aから基板の表面(上面)に向けて窒素ガスを噴出させ、これによって、基板Wとシャワーヘッド20との間に、窒素ガスで遮断されて、実質的に酸素が存在しない酸素遮断ゾーン30を作る。この状態を作るために、噴出口20aの数と配置、シャワーヘッド20と基板Wとの距離、及び噴出させる窒素ガスの流量を適宜に選択する。
【0040】
シャワーヘッド20の噴出口20aから基板の表面(上面)に向けて窒素ガスを噴出さて、基板Wとシャワーヘッド20との間に酸素遮断ゾーン30を作ったまま、リフタ10とシャワーヘッド20を同時に下降させる。そして、基板Wが加熱部16に接触した時に、シャワーヘッド20の下降を停止させる。リフタ10にあっては、更に下降させることで、基板Wからリフタ10を離して、基板Wを加熱部16に載置する。この時の状態を図2に示す。図2に示す状態を所定時間維持することで、基板Wとシャワーヘッド20との間に酸素遮断ゾーン30を作ったまま、基板Wを所定温度に昇温させる。
【0041】
そして、基板Wが所定温度に達した時、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを開き、バイパス配管62の開閉弁24dを閉じることで、清浄化ガス配管44を通して、シャワーヘッド20の噴出口20aから蟻酸ガスと窒素ガスの混合ガスを噴出させる。これによって、基板Wの表面の蟻酸ガスによる清浄化処理を行う。このように、シャワーヘッド20の噴出口20aから、基板の表面(上面)に向けて窒素ガスを噴出さて、基板Wとシャワーヘッド20との間に酸素遮断ゾーン30を作ったまま、同じシャワーヘッド20の噴出口20aから、基板の表面(上面)に向けて、蟻酸ガスと窒素ガスの混合ガスを噴出させることで、酸素遮断ゾーン30に蟻酸ガスを供給し、基板W上の酸化膜や有機物を除去(清浄化)する。
【0042】
この酸素遮断ゾーン30に蟻酸ガス(と窒素ガスとの混合ガス)を供給している時、気流規制機構70で酸素遮断ゾーン30の周囲を包囲することで、酸素遮断ゾーン30内における蟻酸ガスの流れを規制し、気流規制機構70内の蟻酸ガスを排気部72から排気することで、蟻酸ガスの装置外への流出を防止する。
そして、一定時間、基板Wの表面の蟻酸ガスによる清浄化処理を行った後、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを閉じ、バイパス配管62の開閉弁24dを開くことで、蟻酸ガスの供給を止めて、基板Wの表面の蟻酸ガスによる清浄化処理を終了する。
【0043】
ここで、基板Wの表面は、この清浄化処理を終了した時点では、一般に清浄化処理を行う前より活性を有し、清浄化処理を開始する前の酸素遮断状態を形成する窒素ガスの流量では、基板表面が再酸化される場合がある。そこで、シャワーヘッド20の噴出口20aから基板に向けて噴出させる窒素ガスの流量を、清浄化処理終了後に処理前より多くしたり、シャワーヘッド20と基板Wの距離を縮めたりすることで、酸素遮断性能を高めて、基板の表面の再酸化を防ぐことができる。
【0044】
そして、このようにして、基板の表面の再酸化を防止する雰囲気のまま、リフタ10とシャワーヘッド20を連動させて上昇させ、図3に示すように、リフタ10で保持したまま、基板Wを加熱部16から離し、これによって、基板Wを、例えば50℃以下まで強制冷却させる。
基板を冷却した後、図示しない搬送手段により、基板Wをリフタ10から受取って、次工程に搬出することで、一連の処理を終える。
【0045】
図2及び図3に示す表面処理装置、及び表面処理装置を使用した表面処理方法の有効性を実証するため、図4に示す実験装置で実験・評価した。図4に示す実験装置の図2及び図3に示す表面処理装置と異なる点は、固定タイプのSUS管80の下端から基板Wに向けてガスを噴出するように構成し、また、リフタ10を備えていない(そのため、加熱部16には貫通孔16aがない)点にある。なお、図4に示す装置において、図2及び図3に示す装置と同一または相当する部分には、同一符号を付して、重複した説明を省略している。
【0046】
主な実験条件は以下である。
基板種類 表面に銅めっきを有するシリコンウェーハ
除去対象材料 有機物(ベンゾトリアゾール(BTA))
基板寸法 1×5cm
ヒータ ホットプレート式
ガス噴出部 SUS管、内径4.35mm
蟻酸ガス流量 180sccm(standard cc/min)
【0047】
ここで、純水にBTA粉末を溶かして、BTA濃度が0.05モル/Lの液を作り、その液に基板を30秒間浸漬させ、基板を純水で1分間洗浄した後、乾燥させることで、基板の表面へのBTAを塗布した。
【0048】
実験にあたり、初めに加熱部(ヒータ)16の表面温度と基板Wの表面に向けて噴出する窒素ガス流量(Nブロー量)を変えた時における基板温度との関係を調べた。その結果を図5に示す。図5において、横軸はヒータ温度(℃)を、縦軸は基板中心温度(℃)を示す。変数は窒素ガス流量である。図5から、ヒータ温度が一定でも、窒素ガス流量が増すと基板温度は低下し、例えば窒素ガス流量が10slm(standard liter/min)の時、基板温度を140℃にするためには、ヒータ温度を230℃に、基板温度を200℃にするためには、ヒータ温度を375℃にすればよいことが判る。
【0049】
次に、図4に戻って、基板WからSUS管80までの高さを10mmに固定し、SUS管80の下端から、流量10slmで窒素ガスを基板Wの表面に向けて噴出させながら、基板Wを加熱部(ヒータ)16で所定の温度まで加熱した後、SUS管80の下端から、蟻酸ガスと窒素ガスの混合ガスを基板Wの表面に向けて噴出させた。そして、基板温度、処理時間及び蟻酸ガス流量を変数として、基板上のBTAの除去可否を評価した。
【0050】
実験は以下の手順で行った。
図4に示す構成の実験装置で、図5のデータを用いて、予定の基板温度に対応する温度に加熱部16を昇温させた。また、不活性ガス配管22を経由して、SUS管80から窒素ガスを10slmで噴出させた。
【0051】
ホットバス56を所定温度に設定し、ホットバス56中の水54を、例えば62℃に保ち、容器52内の蟻酸液50をほぼ水54の温度に等しい温度に保ちながら、流量調節弁60で設定した窒素ガスをバブラ配管42の開閉弁24bを経由して多孔板58から蟻酸液50中に供給し、バブリング法で窒素ガスと蟻酸ガスの混合ガスを発生させた。処理開始前は、混合ガスをバイパス配管62からバイパスさせて定常状態を作っておいた。
【0052】
基板Wの表面の清浄化処理を以下の手順で行った。
ピンセットで基板Wを掴み、SUS管80の直下に基板Wを位置させ、基板Wに向けてSUS管80から窒素ガスを噴出させながら、基板Wを加熱部16の上に置き、ピンセットを離した。この状態で、基板Wを2分間加熱して所定温度に昇温させた。基板Wに向けてSUS管80から窒素ガスを噴出させながら、バイパス配管62の開閉弁24dを閉じ、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを開いて、蟻酸ガスと窒素ガスの混合ガスを、清浄化ガス配管44を通して、SUS管80から基板Wの表面に向けて噴出させた。実験条件により、処理時間を0.5分から10分まで変えた。
【0053】
処理時間経過後、基板表面の酸素遮断性能を高めるため、SUS管80から噴出させる窒素ガスの流量を10slmから50slmに増やし、次にピンセットで基板Wを掴み、基板Wを加熱部16から5mmほど持ち上げてから、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを閉じて、蟻酸ガスの供給を止め、基板Wを概ね50℃以下まで冷却した。冷却後、SUS管80の直下から基板Wを取出し、一連の処理を終了した。
実験結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1において、各条件でのBTAの除去状態は、処理前後の基板表面をエリプソメータで測定して判断した。基板表面状態の指標である、エリプソメータの楕円偏向の位相角Δ(以下、単に位相角Δという)は、基板表面が十分清浄であれば−109°以下である。実験に用いた基板における位相角Δは、処理前で−106°前後であった。そこで、処理後の位相角Δが−109°以下であれば、基板表面のBTAは完全に除去されたと判断して、表1に○印を付した。処理後の位相角Δが−109°より大であれば、基板表面のBTAの除去は不完全と判断して、表1に△印を付した。表1中の(○)部は、上記実測の○印データから、実験すれば○印となる事が推定できる条件である。
【0056】
表1から次の事がわかる。
(1)BTAは、処理時間が2分以上であれば、基板温度120℃以上で除去できる。
(2)BTAは、基板温度が140℃以上であれば、処理時間0.5分以上で除去できる。
BTAと同様に、銅配線膜上の自然酸化膜についても、実験から、BTAと場合とほぼ同等の条件で除去できたことを確認している。
【0057】
また、上記実験で得られた、BTAあるいは自然酸化の除去範囲は、概ね直径10mm程度であった。噴出口の数と配置、噴出口と基板との間の距離、及び噴出口からのガス噴出流量を適宜に選ぶことにより、直径200mmあるいは300mmの基板表面全面を酸素遮断ゾーンとして清浄化処理できることは明らかである。
【0058】
次に、本発明の他の実施の形態の表面処理装置を図6に示す。この図6に示す表面処理装置の図2及び図3に示す表面処理装置と異なる点は、以下の通りである。なお、図6に示す表面処理装置において、図2及び図3に示す表面処理装置と同一または相当する部分には、同一符号を付して、重複した説明を省略する。なお、このことは、以下同様である。
【0059】
すなわち、この図6に示す表面処理装置では、不活性ガス配管22の下端に、図2及び図3に示す表面処理装置におけるシャワーヘッド20の代わりに、基板Wの直径以上の長さに亘って線状または帯状に延びるスリット90aを有する上下動不能なガス噴出ヘッド90を使用している。更に、ガス噴出ヘッド90のスリット90aと直交する方向に移動自在で、上面に基板Wを保持する基板ホルダ92が備えられ、不活性ガス配管22に該配管22に沿って流れる窒素ガスを加熱し、この加熱した窒素ガスを基板Wに向けて噴出させることで基板Wを窒素ガスで加熱する加熱部94が設けられている。
【0060】
この例によれば、基板Wの表面の一部とガス噴出ヘッド90との間に、ガス噴出ヘッド90のスリット90aから基板Wに向けて噴出される窒素ガスで、酸素遮断ゾーン30を形成し、同時に、基板Wの表面を加熱し基板Wの表面温度を所定値に保ちながら、酸素遮断ゾーン30に蟻酸ガスと窒素ガスの混合ガスをガス噴出ヘッド90のスリット90aから基板Wに向けて噴出させて、基板Wの表面の一部を清浄化処理することができる。そして、基板ホルダ92を移動させ、清浄化処理を走査させて行うことで、基板表面の全面を清浄化処理することができる。
【0061】
この例によれば、表面処理装置のより簡素化を図ることができる。また、この例では、表面の清浄化処理を終了した後に、基板Wに向けて窒素ガスを噴出させながら、基板を冷却するようにしていないが、基板Wの表面が再酸化しても、この再酸化により影響が少ない場合に特に有効である。
【0062】
上記各実施の形態における表面処理装置を使用して、多層配線構造を有する半導体装置を製造するようにした例を、図7を参照して説明する。前述の図1に示す従来例と同様に、基板の表面に、例えば銅からなる下層配線膜をめっきで形成し、CMPによって下層配線膜の表面を平坦に研磨して下層配線を形成する。このようにして、下層配線を形成すると、基板の表面に絶縁膜を堆積する前に、下層配線の表面に自然酸化膜が生成されたり、CMP工程で配線材料である銅の腐食抑制のために用いられたベンゾトリアゾール(BTA)が基板表面に残ったりする場合がある。この自然酸化膜及びBTAは、共に上層配線と下層配線との間の電気的接続を阻害する要因となる。
【0063】
また絶縁膜に溝や上層配線膜との接続穴を形成し下層配線膜の一部を露出させた時、下層配線膜の表面に自然酸化膜が生成されていると、上層配線と下層配線との間の電気的接続を阻害する要因となる。
【0064】
そこで、この例にあっては、図2及び図3、または図6に示す表面処理装置を使用した基板の表面処理、つまり下地配線膜表面をドライクリーニングして、下層配線の表面に生成された自然酸化膜や、基板の表面に残ったベンゾトリアゾール(BTA)を除去する。
そして、基板の表面に絶縁膜を成膜し、絶縁膜中に溝(トレンチ)を形成した後、基板の表面にバリアメタル成膜し、しかる後、バリアメタルの表面に、例えば銅からなる上層配線膜をめっきで形成し、CMPによって上層配線膜の表面を平坦に研磨して上層配線を形成する。
【0065】
あるいは絶縁膜に溝を形成し、下地配線膜表面をドライクリーニングして下地配線膜表面の自然酸化膜を除去してから基板の表面にバリアメタル成膜し、バリアメタルの表面に、例えば銅からなる上層配線膜をめっきで形成し、CMPによって上層配線膜の表面を平坦に研磨して上層配線を形成する。
上記2回のドライクリーニングの内、必要に応じて、1回のみでも有効である。
【0066】
これにより、プラズマクリーニングによる基板の表面処理を行うことなく、したがって、半導体デバイスに損傷を与えることなく、下層配線の表面に生成された自然酸化膜や、基板の表面に残ったベンゾトリアゾール(BTA)を除去して、上層配線と下層配線の電気的接続を良好にすることができる。
【0067】
基板表面材質としては、金属あるいは金属化合物として、銅、タンタルとタンタル窒化物、チタンとチタン窒化物、タングステンとタングステン窒化物、ルテニウムなどが有り、その他には絶縁物がある。
【0068】
図8乃至図10は、本発明の更に他の実施の形態の表面処理装置を示す。この図8乃至図10に示す表面処理装置の図2及び図3に示す表面処理装置と異なる点は、以下の通りである。
【0069】
つまり、この例の表面処理装置には、図2及び図3に示す例におけるリフタ10の代わりに、基板Wの周縁部を支持して基板Wを保持するリング状の保持部100が加熱部16の上方に備えられている。この保持部100は、加熱部16の周囲に位置して上下動自在に配置された昇降軸102の上端に連結されて上下動自在に構成されている。また、円板状で、下方に向けて内径が拡がる1つの噴出口104aを中央に有する、位置を固定されたヘッド104が備えられている。図8は、保持部100が上昇端にある状態を示し、ヘッド104と保持部100で保持された基板Wとの間隔は、例えば0.6mmである。また、この例では、ヘッド104の位置を固定しているため、不活性ガス配管22に蛇腹部32は備えられていない。
【0070】
これにより、保持部100で保持した基板Wの表面(上面)に向けて、ヘッド104の噴出口104aから窒素ガス(不活性ガス)を噴出することで、基板Wの表面とヘッド104との間に、窒素ガスによって酸素を遮断した酸素遮断ゾーン106が基板Wの全域に亘って形成されるように構成されている。
【0071】
なお、ヘッド104及び保持部100として、より大径のものを使用することで、ヘッド104と保持部100との間隔を適宜保持したまま、基板Wの周辺を含む全面に酸素遮断ゾーン106を確実に形成することができる。
【0072】
また、清浄化ガス配管44、不活性ガス配管22の清浄化ガス配管44との接続部より下流側、及びヘッド104には、これらをホットバス56内の蟻酸液50の温度より高くする配管ヒータ108が設置されている。これにより、バブラ40で発生した蟻酸ガスが基板Wに向かって流れる途中で、その温度が徐々に高くなるようにすることで蟻酸ガスが基板Wに達する以前に装置構成部品表面で結露することを防止できる。
【0073】
加熱部16は、この例では、内部にランプヒータ16bを有し、この加熱部16の上方に保持部100で保持した基板Wを配置し、ランプヒータ316aから発する輻射熱で基板Wを加熱するように構成されている。発熱源としては、ランプヒータによらず、高温の窒素ガス等を吹付ける熱風式でも良い。
【0074】
更に、この例では、加熱部16の上部から上方に延び、保持部100上に基板Wを載置して、酸素遮断ゾーン106に蟻酸ガス(と窒素ガスとの混合ガス)を供給している時に、酸素遮断ゾーン106の周囲を包囲して、酸素遮断ゾーン106内における蟻酸ガスの流れを規制する略円筒状の気流規制機構70、保持部100、及び基板Wで構成される閉空間を、規制配管110を経由して排気部72に連通している。これによって、酸素遮断ゾーン106内に供給された蟻酸ガスが装置外に流出するのが防止される。なお、この例では、気流規制機構70は、上下動自在に構成され、また、規制配管110はその一部に伸縮部112があり、保持部100の上下動を妨げない構造となっている。
【0075】
保持部100の上面には、図10に示すように、基板Wを乗せたフォーク114の形状に沿った溝116が設けられている。これにより、図9に示すように、保持部100を下降させた状態で、保持部100とヘッド104との間に、基板Wを乗せたフォーク114を溝116に沿って挿入し、保持部100を上昇させることで、基板Wの周縁部を支持して基板Wを保持部100で保持するようになっている。
【0076】
図8乃至図10に示す表面処理装置の動作を以下に説明する。
先ず、バブラ配管42の開閉弁24bを開き、窒素ガスのバブリングによって、容器52の上部空間に窒素ガスと蟻酸ガスとの混合ガスを生成させ、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを閉じ、バイパス配管62の開閉弁24dを開くことで、所定流量の窒素ガスと蟻酸ガスとの混合ガスを、バイパス配管62を通してバイパスさせておく。また、不活性ガス供給部12の開閉弁24aを閉じておく。
【0077】
次に、図9に示すように、気流規制機構70が上昇し、保持部100が下降した状態で、保持部100に設けられた溝116内に、基板Wを載せたフォーク114を挿入する。なおフォーク114は、例えば、下記の図15に示す、第2搬送ロボット212の先端部である。そして、図8に示す高さまで保持部100を上昇させ、基板Wをフォーク114から離間させた後、フォーク114を溝116内から退避させる。続いて気流規制機構70を図8に示す高さまで下降させる。
【0078】
次に、不活性ガス供給部12の開閉弁24aを開き、ヘッド104の噴出口104aから基板Wの表面(上面)に向けて窒素ガスを噴出させ、基板Wとヘッド104との間に、窒素ガスで満たされて実質的に酸素が存在しない酸素遮断ゾーン106を作る。そして、基板Wとヘッド104との間に酸素遮断ゾーン106を作ったまま、加熱部16のランプヒータ16bを所定電力で点灯し、基板Wを所定温度に昇温させる。
【0079】
基板Wが所定温度に達するまで基板Wを加熱した後、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを開き、バイパス配管62の開閉弁24dを閉じることで、清浄化ガス配管44を通して、ヘッド104の噴出口104aから蟻酸ガスと窒素ガスの混合ガスを噴出させる。これによって、基板Wの表面の蟻酸ガスによる清浄化処理を行う。この酸素遮断ゾーン106に蟻酸ガス(と窒素ガスとの混合ガス)を供給している時、噴出したガスは、規制配管110を経由して排気部72に排気され、これによって、蟻酸ガスの装置外への流出が防止される。
【0080】
そして、一定時間、基板Wの表面の蟻酸ガスによる清浄化処理を行った後、清浄化ガス配管44の開閉弁24cを閉じ、バイパス配管62の開閉弁24dを開くことで、蟻酸ガスの供給を止めて、基板Wの表面の蟻酸ガスによる清浄化処理を終了する。次いで、加熱装置16のランプヒータ16bを消灯し、基板の加熱を停止する。
【0081】
基板Wの表面は、この有機酸処理を終了した時点では、一般に有機酸処理を行う前より活性を有し、清浄化処理を開始する前の酸素遮断状態を形成する窒素ガスの流量では、基板W表面が再酸化される場合がある。そこで、ヘッド104の噴出口104aから基板Wに向けて噴出させる窒素ガスの流量を、清浄化処理終了後に処理中より多くし酸素遮断性能を高めて、基板Wの表面の再酸化を防ぐ。そして、このようにして、基板の表面の再酸化を防止する雰囲気のまま、基板Wを保持し、例えば50℃以下まで強制冷却させる。
【0082】
図8乃至図10に示す表面処理装置にあっては、リング状の保持部100の上面に基板Wの周縁部を載置して基板Wを保持するようにしている。そして、このように保持部100の上面に基板Wを載置した時、基板Wの表面と保持部100の表面がほぼ面一となって、保持部100が基板Wの外方に延出し、基板Wの側方を保持部100で閉塞するようにしている。
【0083】
図11及び図12は、図8乃至図10に示す表面処理装置の変形例を示す。つまり、図11及び図12に示す表面処理装置は、昇降軸102の上端にリング状の保持台120を取付け、この保持台120の円周方向に沿った所定位置に、内方に延出する複数(図示では3個)の爪122を取付け、この爪122で基板Wの周縁部下面を支持するようにしている。保持台120の内径は、基板Wの外径より大きく、このため、基板Wの外側下方は開放した状態にある。その他の構造は、図8乃至図10に示す表面処理装置とほぼ同様である。
【0084】
図8乃至図10に示す表面処理装置(以下、リング形表面処理装置という)、及び図11及び図12に示す表面処理装置(以下、爪形表面処理装置という)、並びにこれらの表面処理装置を使用した表面処理方法の有効性を実証するため、以下の実験を行って評価した。
主な実験条件は以下である。
基板種類 表面に銅めっきを有するシリコン基板
除去対象材料 自然酸化膜(酸化膜厚:約5nm)
基板寸法 φ200mm
不活性ガス種と流量範囲 窒素ガス×0.3〜30slm(standard
liter/min)
有機酸ガス種と流量範囲 蟻酸ガス×30〜300sccm(standard
cc/min)
基板温度範囲 150〜250℃
ヘッド−基板間間隔 0.6mm
【0085】
以下、実験結果について説明する。
図13は、爪形表面処理装置において、ヘッド104と基板Wとの間に供給する窒素ガス流量(Nブロー量)に対する、ランプヒータ16bに供給するヒータ電力(W)と基板W内の平均温度(℃)との関係を示す。基板内の温度測定個所は、基板中心からの距離で、−92,−45,0,45,92mmの位置の計5点である。図13に示すように、窒素ガス流量0〜10slmの範囲では、ヒータ電力に対する基板温度は、ほぼ同等であった。
【0086】
図14は、図13における基板平均温度200℃相当時における基板内温度分布を示す。図14に示すように、窒素ガス流量0〜10slmで、基板内温度分布は±4%以下であった。
【0087】
表2は、爪形表面処理装置において、ヘッド104と基板Wとの間に窒素ガスを供給しながら基板Wを加熱した時の基板酸化防止条件を示す。
窒素ガス供給量が少なく、従って、基板Wの表面の酸素濃度が高い場合に、基板を加熱すると、基板表面は酸化が進む。酸化を進めないための窒素ガス供給量及び基板温度の関係を調べたものである。基板の表面状態は、前述と同様に、エリプソメータで測定した。窒素ガスを供給しながら基板を15分加熱した時に、位相角Δの酸化方向変化が基板内全面で2°以下の場合に、酸化防止条件であると判定した。
【0088】
【表2】

【0089】
表2において、○印は実験値、(○)印はその実験条件の周辺条件から「○」と推定できる場合を示す。表2より、基板温度150または175℃の時、窒素ガス流量3slm以上で酸化が防止できることがわかる。
【0090】
表3は、爪形表面処理装置を使用し、蟻酸ガス流量100sccm、蟻酸ガス供給時間10分の条件で処理した時の自然酸化膜除去のための基板温度、窒素ガス流量特性を示す。
表4は、リング形表面処理装置を使用し、蟻酸ガス流量100sccm、蟻酸ガス供給時間10分の条件で処理した時の自然酸化膜除去のための基板温度、窒素ガス流量特性を示す。
【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
表3及び表4において、エリプソメータの測定値である楕円偏向の位相角Δが−109°以下を酸化膜除去完と判定した。実験に用いた基板の初期位相角Δの値は、概ね−100°の酸化膜厚がおよそ5nmであった。表3及び表4から、爪形表面処理装置及びリング型表面処理装置とも、基板温度150または175℃、窒素ガス流量10slm以上で自然酸化膜が除去できることがわかる。
【0094】
表5は、爪形表面処理装置を使用し、基板温度175℃、窒素ガス流量10slmの条件で処理した時の自然酸化膜除去のための蟻酸ガス流量、処理時間特性を示す。表5より、蟻酸ガス流量100,300sccm時に、厚さ約5nmの自然酸化膜を処理時間1分で除去できることが確認できた。
【0095】
【表5】

【0096】
表6は、リング形表面処理装置を使用し、基板温度175℃、窒素ガス流量10slmの条件で処理した時の自然酸化膜除去のための蟻酸ガス流量、処理時間特性を示す。表5及び表6により、リング形表面処理装置にあっては、爪形表面処理装置よりも、酸化膜除去条件が狭いことがわかる。
【0097】
【表6】

【0098】
図15は、本発明の実施の形態における基板処理装置を示す平面図である。図15に示すように、基板処理装置は、多数の基板を収納する基板カセット201を載置するロード/アンロードステージ202を4つ備えている。このロード/アンロードステージ202に沿って走行機構203が設けられており、この走行機構203の上には、2つのハンドを有する第1搬送ロボット204が配置されている。
【0099】
第1搬送ロボット204の走行機構203を対称軸として、基板カセット201と反対側には、2台の洗浄・乾燥機205,206が配置されている。第1搬送ロボット204のハンドは、これらの洗浄・乾燥機205,206にもアクセス可能となっている。各洗浄・乾燥機205,206は、基板を高速回転させて乾燥させるスピンドライ機能を有している。また、2台の洗浄・乾燥機205,206の間には、4つの基板の載置台207,208,209,210を備えた基板ステーション211が配置されており、第1搬送ロボット204のハンドがこの基板ステーション211にアクセス可能となっている。
【0100】
洗浄・乾燥機205と3つの載置台207,209,210に到達可能な位置には、2つのハンドを有する第2搬送ロボット212が配置されており、洗浄・乾燥機206と3つの載置台208,209,210に到達可能な位置には、2つのハンドを有する第3搬送ロボット213が配置されている。ここで、載置台207は、第1搬送ロボット204と第2搬送ロボット212との間で基板を受渡すために使用され、載置台208は、第1搬送ロボット204と第3搬送ロボット213との間で基板を受渡すために使用される。また、載置台209は、第2搬送ロボット212から第3搬送ロボット213へ基板を搬送するために使用され、載置台210は、第3搬送ロボット213から第2搬送ロボット212へ基板を搬送するために使用される。なお、載置台209は、載置台210の上に位置している。
【0101】
洗浄・乾燥機205に隣接して、第2搬送ロボット212のハンドがアクセス可能な位置には、半導体ウェーハなどの基板の表面に形成された金属皮膜の自然酸化膜をドライクリーニングにより除去する乾式処理ユニットとしての表面処理装置214が配置されている。この表面処理装置214として、図2及び図3、図6、図8乃至図10、または図11及び図12に示す表面処理装置が使用されている。洗浄・乾燥機206に隣接して、第3搬送ロボット213のハンドがアクセス可能な位置には、研磨後の基板を洗浄する洗浄機215が配置されている。
【0102】
基板処理装置は、基板の金属皮膜を平坦化処理する平坦化ユニットとしての2つの化学機械研磨(CMP)装置216,217を備えている。それぞれの化学機械研磨装置216,217は、それぞれ2つの研磨テーブルと、基板を保持しかつ基板を研磨テーブルに対して押圧しながら研磨するための1つのトップリングとを備えている。すなわち、化学機械研磨装置216は、第1の研磨テーブル218と、第2の研磨テーブル219と、トップリング220と、研磨テーブル218に研磨液を供給するための研磨液供給ノズル221と、研磨テーブル218のドレッシングを行うためのドレッサ222と、研磨テーブル219のドレッシングを行うためのドレッサ223とを備えている。また、化学機械研磨装置217は、第1の研磨テーブル224と、第2の研磨テーブル225と、トップリング226と、研磨テーブル224に研磨液を供給するための研磨液供給ノズル227と、研磨テーブル224のドレッシングを行うためのドレッサ228と、研磨テーブル225のドレッシングを行うためのドレッサ229とを備えている。
【0103】
また、化学機械研磨装置216には、第2搬送ロボット212のハンドがアクセス可能な位置に基板を反転させる反転機230が設置されており、この反転機230には第2搬送ロボット212によって基板が搬送される。同様に、化学機械研磨装置217には、第3搬送ロボット213のハンドがアクセス可能な位置に基板を反転させる反転機231が設置されており、この反転機231には第3搬送ロボット213によって基板が搬送される。
【0104】
これらの反転機230,231とトップリング220,226の下方には、反転機230,231とトップリング220,226との間で基板を搬送するロータリトランスポータ232が配置されている。ロータリトランスポータ232には、基板を載せるステージが4ヶ所等配に設けられており、複数の基板を同時に搭載できるようになっている。反転機232のステージの中心と、反転機230または231でチャックされた基板の中心の位相が合ったときに、ロータリトランスポータ232の下方に設置されたリフタ233または234が昇降することで、ロータリトランスポータ232上に基板が搬送される。
【0105】
ロータリトランスポータ232のステージ上に載せられた基板は、ロータリトランスポータ232が回転することで、トップリング220または226の下方へ搬送される。トップリング220または226は、予めロータリトランスポータ232の位置に揺動させておく。トップリング220または226の中心がロータリトランスポータ232に搭載された基板の中心と位相が合ったとき、それらの下方に配置されたプッシャ235または236が昇降することで、基板は、ロータリトランスポータ232からトップリング220または226に移送される。
【0106】
トップリング220または226に移送された基板は、トップリング220または226の真空吸着機構により吸着され、基板は、吸着されたまま研磨テーブル218または224まで搬送される。そして、基板は、研磨テーブル218または224上に取り付けられた研磨パッドまたは砥石等からなる研磨面で研磨される。上述した第2の研磨テーブル219,225は、それぞれトップリング220,226が到達可能な位置に配置されている。これにより、第1の研磨テーブル218,224で基板を研磨した後に、この基板を第2の研磨テーブル219,225でも研磨できるようになっている。研磨が終了した基板は、同じルートで反転機230,231まで戻される。
【0107】
第3搬送ロボット213は、基板を洗浄機215に搬送し、洗浄機215において基板の洗浄が行われる。洗浄後の基板は、第3搬送ロボット213により洗浄機215から取り出され、洗浄・乾燥機206に導入される。洗浄・乾燥機206では、基板のリンスおよび乾燥処理が行われ、乾燥後の基板は、第1搬送ロボット204により基板カセット201に戻される。
【0108】
次に、上述した基板処理装置における基板処理(研磨処理)について説明する。
図16に銅配線形成工程を示す。つまり、下層金属配線膜上の絶縁膜に上層配線膜埋設用の配線溝(トレンチ)と上下配線接続用の接続穴(ビアホール)を形成し、絶縁膜の平坦部、配線溝の下面及び側壁、並びに接続穴の下面及び側面にバリアメタルとシード層を順次形成する。次に、銅めっきを行って、基板の表面に、配線溝及び接続穴を埋めるだけ厚さの銅めっき膜からなる金属皮膜を形成する。めっき後、金属皮膜(銅めっき膜)をアニールする。次に、金属皮膜上の自然酸化膜を除去し、酸化膜除去後、直ちに化学機械研磨処理して金属皮膜を所定量化学機械研磨する。これによって、銅めっき膜からなる配線を生成する。
【0109】
上述した基板処理装置は、金属皮膜上の自然酸化膜を除去し、酸化膜除去後、直ちに化学機械研磨処理して金属皮膜を所定量化学機械研磨するのに使用される。
【0110】
図15に戻って、研磨される基板は、金属皮膜が形成された面を上向きにして基板カセット201内に収容され、多数の基板Wを収容した基板カセット201がロード/アンロードステージ202に載置される。第1搬送ロボット204は、この基板カセット201から1枚の基板を取り出し、基板を載置台207に搬送する。載置台207に載置された基板を、第2搬送ロボット212により表面処理装置214に搬送する。そして、この表面処理装置214で、前述のようにして、金属皮膜上の自然酸化膜を大気圧雰囲気下における乾式処理によって除去する。
【0111】
酸化膜除去処理を終えた基板は、第2搬送ロボット212により表面処理装置214から取り出され、反転機230に搬送される。反転機230では基板が反転され、金属皮膜形成面が下向きになった状態でロータリトランスポータ232に受渡される。基板を受け取ったロータリトランスポータ232は90度回転し、基板をプッシャ235に搬送する。プッシャ235上の基板は、化学機械研磨装置216のトップリング220に吸着され、研磨テーブル218上に移動され、ここで研磨される。上述したように、この第1の研磨テーブル218での研磨の後、第2の研磨テーブル225で研磨してもよい。
【0112】
研磨後の基板は、プッシャ235からロータリトランスポータ232に受渡される。基板を受け取ったロータリトランスポータ232は180度回転し、基板を反転機231に搬送する。反転機231では基板が反転され、金属皮膜形成面が上向きになった状態で基板が第3搬送ロボット213に受け渡される。第3搬送ロボット213は、この基板を洗浄機215に搬送し、洗浄機215において基板の洗浄が行われる。洗浄後の基板は、第3搬送ロボット213により洗浄機215から取り出され、洗浄・乾燥機206に導入される。洗浄・乾燥機206では、基板のリンスおよび乾燥処理が行われ、乾燥後の基板は、第1搬送ロボット204により基板カセット201に戻される。
【0113】
図17は、本発明の他の実施の形態の基板処理装置を示す。この基板処理装置は、前述の図2及び図3、図6、図8乃至図10、または図11及び図12に示す表面処理装置からなる表面処理装置214を3式備えた表面処理部250を有しており、前述の化学機械研磨装置を備えた、図示しない化学機械研磨部は、表面処理部250と別体で構成されて互いに離間して配置されている。この表面処理部250は、3式の表面処理装置214の他に、基板カセット201を載置するロード/アンロードステージ202を備え、これらの中央に搬送ロボット204が配置されている。
【0114】
この例の場合、表面処理装置214による酸化膜除去処理と化学機械研磨装置による平坦化処理とを別装置で行うことができ、このため、酸化膜除去処理と平坦化処理の自由度を高く運用できる。なお、化学機械研磨装置による平坦化処理後に表面処理装置による酸化膜除去処理または有機物除去等の清浄化処理を行ってもよい。
【0115】
図18乃至図20は、基板表面に設けた接合部同士を互いに接合する接合機能を備えた、本発明の更に他の実施の形態における表面処理装置を示す。この表面処理装置は、大気雰囲気中で2枚の基板表面に設けた接合部表面を蟻酸ガス(清浄化ガス)で清浄化し、しかる後、直ちに接合部同士を互いに圧接して接合するのに使用される。
【0116】
この表面処理装置は、下テーブル300を有しており、この下テーブル300に、例えばシリンダからなる押圧機構302が該下テーブル300を貫通して上向きで取り付けられ、この押圧機構302の駆動軸(シリンダロッド)の上端に基板ステージ304が設置されている。この基板ステージ304は、接合部308aを有する表面を上向きにして基板(以下、下側基板W1という)を吸着保持する機能と、吸着保持した下側基板W1を加熱する加熱機構及び室温近くまで冷却する冷却機構を有している。
【0117】
下テーブル300の上方に位置して、上テーブル310が下テーブル300と平行に配置され、この上テーブル310の下面に、スライド機構312を介してスライド自在に、位置微調機構314及び基板ステージ316が取り付けられている。この基板ステージ316は、前記基板ステージ304とほぼ同様に、接合部308bを有する表面を下向きにして基板(以下、上側基板W2という)を吸着保持する機能と、吸着保持した上側基板W2を加熱する加熱機構及び室温近くまで冷却する冷却機構を有しており、スライド機構312を介して、基板受取り位置と基板ステージ304の直上方位置との間をスライドするようになっている。位置微調機構314は、基板ステージ316に吸着保持された上側基板W2の位置を、X,Y,θ方向に微調整する機能を有している。
なお、位置微調機構314は、下側の基板ステージ316側に設けても同じ効果を有する。
【0118】
下テーブル300の下方に位置して、下テーブル300に設けた貫通孔を通して、基板ステージ316に吸着保持された上側基板W2の接合部308bの位置を検出する機能をもつ位置検出部318が配置されている。同様に、上テーブル310の上方に位置して、上テーブル310に設けた貫通孔を通して、基板ステージ304に吸着された下側基板W1の接合部308aの位置を検出する機能をもつ位置検出部320が配置されている。そして、2つの位置検出部318,320からの信号は、それぞれ位置演算部322に送られ、この位置演算部322の演算結果は、位置微調量演算部324に送られる。位置微調量演算部324では2枚の基板W1,W2の接合部308a,308bを接合する際に正確に位置合わせできるように、必要な微調量信号を、微調量出力部326を経由して位置微調機構314に送り、位置微調機構314は、基板ステージ316で吸着保持された基板W2の位置を補正する。
【0119】
基板ステージ304の側方には、ガス噴出案内330が配置され、このガス噴出案内330は、前記図8に示す例とほぼ同様な構成の不活性ガス配管22の先端に接続されている。この不活性ガス配管22には、清浄化ガス配管44が合流しており、これによって、前記図8に示す例とほぼ同様な構成の不活性ガス供給部12から供給される窒素ガス(不活性ガス)、及び前記図8に示す例とほぼ同様な構成の清浄化ガス供給部14から供給される蟻酸ガス(清浄化ガス)(と窒素ガスの混合ガス)が、不活性ガス配管22を通して、ガス噴出案内330から側方に向けて噴出されるようになっている。
【0120】
ガス噴出案内330は、図20に示すように、基板ステージ304で吸着保持した基板W1の周囲の約半分を囲繞する円弧状の本体332を有している。そして、この本体332の内部に、不活性ガス配管22に連通し円弧状に延びる案内溝334と、この案内溝334の長さ方向に沿った所定間隔で、案内溝334に連通して本体332の内周面側に開口する複数の噴出口336が設けられている。これによって、基板ステージ304で吸着保持した下側基板W1、更には基板ステージ316で吸着保持した上側基板W2に向けて、処理ガスが噴出口336より均一に噴出されるようになっている。
【0121】
なお、ガス噴出案内332の構造は、上記に限ることなく、任意の形状のものを使用してもよいことは勿論である。
下側基板W1に設けられる接合部308a、及び上側基板W2に設けられる接合部308bの表面材質は、典型的には銅である。
【0122】
以上の構造の接合機能を備えた表面処理装置は次のように動作する。
図18に示すように、図示しない搬送手段により搬入された下側基板W1を、その接合部308aを有する表面を上向きにして基板ステージ304で吸着保持する。同様に、図示しない搬送手段により搬入された下側基板W2を、その接合部308bを有する表面を下向きにして基板ステージ316で吸着保持する。次に、位置検出部318で上側基板W2の接合部308bの位置を、位置検出部320で下側基板W1の接合部308aの位置をそれぞれ測定し、位置演算部322で位置を演算した後、位置微調量演算部324で位置補正量を演算する。
【0123】
次に、図19に示すように、スライド機構312を用いて、上側の基板ステージ316を、該基板ステージ316で吸着保持した上側基板W2が下側の基板ステージ304で吸着保持した下側基板W1と対面ように移動させる。この時、基板W1,W2の間隔が、清浄化処理に適した間隔、例えば2mm程度になるように設定しておく。この状態で、位置微調量演算部324で求めた位置補正量信号を微調量出力部326に送り、この情報を元に、位置微調機構314を動作させて、基板ステージ316で吸着保持した上側基板W2の位置を補正する。
【0124】
次に、不活性ガス配管22からガス噴出案内330を経由して、基板W1,W2の間に窒素ガス(不活性ガス)を供給し、基板W1,W2間に存在する酸素濃度を酸化膜除去に支障ない低濃度に保つ。そして、基板ステージ304,316の加熱機能を動作させ、窒素ガス(不活性ガス)を供給している状態で、基板W1,W2の温度を、150〜250℃の間の適宜の温度に昇温させる。基板W1,W2の温度が所定の温度に達した時に、清浄化ガス供給部14を機能させ、基板W1,W2の間に蟻酸ガス(清浄化ガス)(と窒素ガスの混合ガス)を供給する。蟻酸ガス(と窒素ガスの混合ガス)を所定時間供給することにより、基板W1,W2のそれぞれの接合部308a,308bの表面の酸化膜を除去する。
【0125】
次に、窒素ガス(不活性ガス)の供給を維持したまま、蟻酸ガス(と窒素ガスの混合ガス)の供給を止め、基板ステージ304,316の加熱機能も停止させる。次に、押圧機構302を動作させて、下側の基板ステージ304を上昇させ、下側基板W1の接合部308aと、上側基板W2の接合部308bを圧接して、接合部308a,308b同士を接合する。押圧機構302による接合部308a,308bへの押圧力は、接合部308a,308bの数や接合面積に見合った値を、予め実験から求めて選択する。所定時間押圧した後、基板ステージ304,316の冷却機能を動作させ、基板W1,W2を冷却する。
【0126】
基板W1,W2を冷却した後、上側の基板ステージ316の吸着機能を停止させてから、押圧機構302により下側の基板ステージ304を下降させる。すると、接合された基板W1,W2は、下側の基板ステージ304上に載置される。
【0127】
そして、スライド機構312により、上側の基板ステージ316を、図18に示す基板受取り位置に移動させた後、基板ステージ304の吸着機能を停止させ、図示しない搬送機構により、下側の基板ステージ304から接合された基板W1,W2を搬出して、一連の接合作業を終える。
【0128】
上記したように、この接合機能を有する基板処理装置によれば、真空排気手段を必要とすることなく、またロウ材等の補助材料を用いることなく、比較的簡略な装置で、大気雰囲気中での接合部の接合面のクリーニングと接合部同士の接合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】従来例における半導体装置の製造例を工程順に示すフロー図である。
【図2】本発明の実施の形態における表面処理装置の清浄化処理中の状態を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の形態における表面処理装置の清浄化処理の前(及び後)の状態を示す概要図である。
【図4】図2及び図3に示す表面処理装置及び表面処理装置を使用した表面処理方法の有効性を実証するための実験装置を示す概要図である。
【図5】ヒータ温度、ガス流量及び基板温度の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施の形態における表面処理装置の清浄化処理中の状態を示す概要図である。
【図7】本発明の基板処理方法を適用した半導体装置の製造例を工程順次示すフロー図である。
【図8】本発明の更に他の実施の形態における表面処理装置の清浄化処理の前(及び後)の状態を示す概要図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】図9のA−A線矢視図である。
【図11】図8に示す表面処理装置の変形例を示す図9相当図である。
【図12】図8に示す表面処理装置の変形例における保持台及び爪を示す平面図である。
【図13】図11及び図12に示す表面処理装置において、ヘッドと基板との間に供給する窒素ガス流量(Nブロー量)に対する、ランプヒータに供給するヒータ電力(W)と基板内の平均温度(℃)との関係を示すグラフである。
【図14】、図13における基板平均温度200℃相当時における基板内温度分布を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態の基板処理装置の全体平面図である。
【図16】銅配線形成例を工程順に示すフロー図である。
【図17】本発明の他の実施の形態の基板処理装置の表面処理部の平面図である。
【図18】本発明の更に他の実施の形態の接合機構を有する表面処理装置の基板保持時の概要を示す正面図である。
【図19】本発明の更に他の実施の形態の接合機構を有する表面処理装置の清浄化処理時の概要を示す正面図である。
【図20】本発明の更に他の実施の形態の接合機構を有する表面処理装置のガス噴出案内を示す平断面図である。
【符号の説明】
【0130】
10 リフタ
12 不活性ガス供給部
14 清浄化ガス供給部
16,94 加熱部
20 シャワーヘッド
20a 噴出口
22 不活性ガス配管
24a〜24d 開閉弁
26,60 流量調節弁
28 減圧弁
30,106 酸素遮断ゾーン
40 バブラ
42 バブラ配管
44 清浄化ガス配管
50 蟻酸液
52 容器
56 ホットバス
58 多孔板
62 バイパス配管
70 気流規制機構
72 排気部
80 SUS管
90 ガス噴出ヘッド
90a スリット
92 基板ホルダ
100 保持部
104 ヘッド
104a 噴出口
108 配管ヒータ
120 保持台
122 爪
204,212,213 搬送ロボット
214 表面処理装置
216,217 化学機械研磨装置
218,219,224,225 研磨テーブル
220,226 トップリング
232 ロータリトランスポータ
250 表面処理部
300 下テーブル
302 押圧機構(エアシリンダ)
304,316 基板ステージ
308a,308b 接合部
310 上テーブル
312 スライド機構
314 位置微調機構
318,320 位置検出部
322 位置演算部
324 位置微調量演算部
326 微調量出力部
330 ガス噴出案内
332 本体
334 案内溝
336 噴出口
W,W1,W2 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の全面または一部に不活性ガスを供給して酸素遮断ゾーンを形成する不活性ガス供給部と、
基板表面を所定温度に維持する加熱部と、
前記酸素遮断ゾーンに清浄化ガスを供給して基板表面を清浄化する清浄化ガス供給部を有することを特徴とする基板の表面処理装置。
【請求項2】
表面を清浄化した後の基板を冷却する冷却部を有することを特徴とする請求項1記載の基板の表面処理装置。
【請求項3】
前記清浄化ガスは、カルボン酸ガスまたは還元性ガスであることを特徴とする請求項1または2記載の基板の表面処理装置。
【請求項4】
前記酸素遮断ゾーンに供給される清浄化ガスの流れを規制する気流規制機構と該気流規制機構内部を排気する排気部を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板の表面処理装置。
【請求項5】
基板表面の全面または一部に不活性ガスを供給して酸素遮断ゾーンを形成しながら、基板表面を所定温度に維持し、
前記酸素遮断ゾーンに清浄化ガスを供給して基板表面を清浄化することを特徴とする基板の表面処理方法。
【請求項6】
表面を清浄化した基板を冷却することを特徴とする請求項5記載の基板の表面処理方法。
【請求項7】
基板表面に不活性ガスを供給しながら、表面を清浄化した基板を冷却することを特徴とする請求項6記載の基板の表面処理方法。
【請求項8】
前記清浄化ガスは、カルボン酸ガスまたは還元性ガスであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の基板の表面処理方法。
【請求項9】
前記基板表面の清浄化を、略大気圧下で行うことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の基板の表面処理方法。
【請求項10】
前記基板表面の清浄化を、基板を120℃以上の温度に維持して行うことを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の基板の表面処理方法。
【請求項11】
前記基板表面の清浄化を、0.5分以上に亘って行うことを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の基板の表面処理方法。
【請求項12】
請求項1乃至4のいずれかに記載の基板の表面処理装置と、
基板表面を化学機械研磨する化学機械研磨装置と、
前記表面処理装置と前記化学機械研磨装置との間で基板を搬送する搬送機構を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
前記表面処理装置及び前記化学機械研磨装置は、同一の装置フレーム内に配置されていることを特徴とする請求項12項記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記表面処理装置と前記化学機械研磨装置は、別体で構成されて互いに離間して配置されていることを特徴とする請求項12項記載の基板処理装置。
【請求項15】
金属皮膜を有する基板表面に不活性ガスを吹付けながら該基板表面を所定温度に維持し、
基板表面に不活性ガスに加えて有機酸ガスを供給することにより前記基板表面に形成された変質層を除去し、しかる後、
前記金属皮膜を化学機械研磨することを特徴とする基板処理方法。
【請求項16】
前記変質層は、酸化膜であることを特徴とする請求項15記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−311603(P2008−311603A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223941(P2007−223941)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)有機酸ドライクリーニング技術の銅配線形成プロセスへの試験研究」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】