説明

基板上に電気抵抗を製造する方法

本発明は、基板上に電気抵抗たとえば電流センサ抵抗を製造する方法に関する。この場合、基板上に抵抗未加工品が取り付けられ、ついで熱処理されて抵抗が形成される。本発明によれば、抵抗未加工品を形成するため、基板上にパラジウム層が取り付けられ、このパラジウム層の上に銀層が取り付けられるか、または基板上に銀層が取り付けられ、この銀層の上にパラジウム層が取り付けられる。ついで熱処理により、パラジウム層のパラジウムと銀層の銀とが完全に合金化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に電気抵抗たとえば電流センサ抵抗ないしは電流検知抵抗を製造する方法に関する。この場合、基板上に抵抗未加工品が取り付けられ、ついで熱処理されて抵抗が形成される。
【0002】
背景技術
電気抵抗たとえば電流センサ抵抗を基板上に取り付けることは知られている。これはたとえば厚膜技術およびLTCC技術(LTCC = Iow temperature cofire ceramic)により行われる。この目的で銀パラジウムペーストがスクリーン印刷法により基板上に印刷される。殊に導体路抵抗として形成されたとえば100mΩの典型的な抵抗値とたとえば100ppm/kの温度係数値をもつ抵抗を集積するためには煩雑なプロセスが必要とされ、たとえばこの抵抗と銀含有度の高い低抵抗の導体路との接続などを行わなければならず、これと同時に中間合金(中間生成物intermediate)の取り付けも必要とされ、このことから余分な印刷ステップと熱処理ステップが必要となる。このような余分なステップは、製造ラインの設計に起因してまったく不可能であることも多い。まえもって混合された抵抗であるスクリーン印刷された銀パラジウムペーストは、抵抗を製造するために焼成処理され、つまり熱処理される。
【0003】
発明の概要
基板上に抵抗未加工品が取り付けられ、次にこの抵抗未加工品が熱処理されて抵抗が形成される形式の、本発明による電気抵抗たとえば電流センサ抵抗を基板上に製造する方法によれば、抵抗未加工品を形成するため、基板上にパラジウム層が取り付けられ、次にこのパラジウム層の上に銀層が取り付けられる。択一的に、基板上に銀層が取り付けられ、この銀層の上にパラジウム層が取り付けられる。その後、熱処理が行われ、これによってパラジウム層のパラジウムと銀層の銀とが完全に合金化される。このようにして得られた合金は、望ましい抵抗たとえば電流センサ抵抗を成すものである。
【0004】
この抵抗の製造はいわゆる同時焼成プロセス(cofire-process)において行われ、つまりin situで、すなわち現場で焼成ステップ中に、抵抗未加工品から電気抵抗が形成される。したがってこれまでの手法に対し決定的な相違点がある。なぜならばこの場合、熱処理に基づき抵抗を成す合金が形成され、しかも完全合金化に基づき分離されている層の合金化が行われる一方、従来技術の場合には焼成プロセスの前に完成された銀パラジウムペーストが用いられ、これは殊にスクリーン印刷により被着され後に焼成されるからである。抵抗のパラメータの調整は、パラジウムの量を銀の量に対し適切に選定することによって行われる。このようにすることで、抵抗値も温度係数(TK値)も所望のように調整することができる。温度係数とは、抵抗のオームが°Kごとに何オームだけ変化したかを表すものである。本発明によるやり方によれば、たとえば隣接する接続ゾーンと接触したときに、拡散ゾーンが発生せず、カーケンダルボイド(Kirkendall-Void)が形成されないことが保証される。ボイド形成を伴うこのような拡散ゾーンによれば、ドリフトに起因する信頼性の問題が引き起こされ、あるいはそれどころか導体路に亀裂が発生してしまう。殊に重要であるのは、パラジウムが別個に取り付けられ、銀とともに同時焼成プロセスにおいて合金形成により抵抗値が調整されることである。これに対し一般的には、すでに混合されてしまっている銀パラジウムペーストが利用され、これが印刷および焼成といった付加的なステップによって取り付けられ、付加的に取り付けられた中間合金を介して接続ゾーンと接触接続される。
【0005】
本発明の1つの実施形態によれば、パラジウム層および/または銀層の取り付けは印刷法により行われる。たとえばこの印刷法はスクリーン印刷法により実施される。したがってスクリーン印刷法において最初にパラジウム層が被着され、その上に銀層が被着される。
【0006】
電気的な接続ゾーンを形成するため、銀層がパラジウム層の側方で突出していると、さらに有利である。この場合、銀とパラジウムのオーバラップ領域においてのみ合金が形成され、突出した銀層の区間を電気的接続ゾーンの形成に用いることができ、このゾーンは有利には基板の銀スルーホールと接続される。
【0007】
抵抗未加工品の上にカバーガラス層が取り付けられると、さらに有利である。カバーガラス層は有利には印刷され、たとえばスクリーン印刷により印刷され、その際、カバーガラス層は熱処理前に被着される。つまり最初はまだ焼成されていないガラスが設けられ、ついで熱処理によって焼成される。カバーガラス層によって電気抵抗が保護される。
【0008】
本発明の1つの実施形態によれば、パラジウム層は接着剤を少なくとも一部の領域で介在させて基板上に取り付けられる。つまりこのケースでは、パラジウム層は基板の上に設けられ、すなわち直接設けられるのではなく、接着剤を介在させて設けられ、これによってパラジウム層が基板の上に確実に保持されるようになる。ついでパラジウム層に銀層が設けられる。
【0009】
層が導体路層として形成されていると有利である。したがってこれは導体路のように形成されている構造であり、つまり導体路区間によって既述の電気抵抗たとえば電流センサ抵抗が形成される。カバーガラス層も導体路のように形成することができ、これはカバーガラス層に導電性があるということではなく、カバー層が導体路の形状をもつということである。
【0010】
さらに有利であるのは、接着剤をやはり印刷プロセスたとえばスクリーン印刷プロセスによって取り付けることである。
【0011】
本発明による方法が厚膜技術で行われると、さらに有利である。基板としてたとえばセラミック基板を用いることができ、これをたとえばLTCCセラミックスつまり低温焼成セラミックスとすることができる。セラミック基板を、上下に積層された複数のセラミックシートによって形成することができる。各セラミックシートの間に導体路層が設けられていると有利であり、このようにして多層導体路構造が形成される。
【0012】
本発明の1つの実施形態によれば、電気接続ゾーンはスルーホールたとえば銀スルーホール(銀のビアSilber-Via)として形成される。
【0013】
さらに本発明は、既述の方法に従い製造される電気抵抗たとえば電流センサ抵抗を備えた基板に関する。
【0014】
次に、図面を参照しながら実施例に基づき本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電気抵抗たとえば電流センサ抵抗の設けられた基板の断面図である。
【0016】
発明を実施するための形態
図1には電気的に絶縁性の材料から成る基板1が示されており、基板1の表面2に電気抵抗3たとえば電流測定抵抗4が配置されている。この図面では抵抗3が抵抗未加工品5としても示されており、これはあとで述べる処理ステップによって抵抗3に変えられる。ここで用語「電流センサ抵抗」ないしは「電流検知抵抗」とは、この抵抗により電流が捕捉されることを意味するものであり、そのようにして電流の流れに関する情報を取得することができる。
【0017】
基板1は多層状に形成されており、つまり基板1は複数の層6を有しており、これらの層の間に導体路7が配置されている。各導体路7をスルーホール8によって互いに電気的に接続することができる。スルーホール8は有利には銀のスルーホール9として形成されている。基板1は有利にはセラミック基板として形成されており、この場合、個々の層6はセラミックシートとして形成されている。
【0018】
銀のスルーホール9′と9″との間に抵抗3を形成するために、最初に基板表面2に接着剤10たとえばパラジウム接着剤11が取り付けられる。取り付けは有利にはスクリーン印刷法により行われる。ついで接着剤10の上にパラジウム層12が導体路の形態で取り付けられ、有利にはたとえばスクリーン印刷法によって取り付けられる。パラジウム接着剤11は、パラジウム層12が十分に基板1の表面と接合されるようにする役割を果たす。次にパラジウム層12の上に銀層13が取り付けられ、有利にはたとえばスクリーン印刷法によって印刷される。この場合も導体路に応じて構造が生成され、2つの銀スルーホール9′と9″が互いに接続される。パラジウム層12は銀層13よりも短く、つまり銀層13はパラジウム層の側方で突出しており、これによって銀スルーホール9′と9″に対し接続ゾーン14が形成される。
【0019】
既述の作業ステップの後、焼成プロセスによって、つまり多層セラミックスとして形成された基板と共通の焼成ステップにおいて、抵抗3が焼成され、すなわちパラジウム層12のパラジウムと銀層13の銀との完全な合金化が行われる。パラジウムの量の選定に従い、抵抗3の比抵抗および/または温度係数に関して望ましい目標値が設定される。
【0020】
さらにこれに加えて、焼成ステップの前に銀層13の上にカバーガラス層を取り付けることもでき、この層は焼成ステップ後、抵抗3のための保護層を成す。
【0021】
既述のように、パラジウムと銀を別個に取り付けることによって、量の選定に応じて抵抗値が事前に設定され、これに続いて同時焼成プロセスで合金形成が行われることによって、抵抗3たとえば電流案内抵抗ないしは電流センサ抵抗4が形成される。その際に同時に接続ゾーン14も形成され、これは相応の対向部材たとえば銀スルーホール9′および9″と電気的に接続される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗未加工品が基板上に取り付けられ、次に該抵抗未加工品が熱処理されて抵抗が形成される形式の、基板上に電気抵抗たとえば電流センサ抵抗を製造する方法において、
抵抗未加工品を形成するために、基板上にパラジウム層が取り付けられ、該パラジウム層の上に銀層が取り付けられ、または基板上に銀層が取り付けられ、該銀層の上にパラジウム層が取り付けられ、
次に熱処理によって、パラジウム層のパラジウムと銀層の銀とが完全に合金化されることを特徴とする、
電気抵抗を製造する方法。
【請求項2】
前記パラジウム層および/または前記銀層の取り付けは印刷法により行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記印刷法はスクリーン印刷法として実施される、請求項1または2項記載の方法。
【請求項4】
前記印刷法はインクジェット印刷法として実施される、請求項1または2項記載の方法。
【請求項5】
前記銀層は電気接続ゾーン形成のためパラジウム層の側方で突出している、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記抵抗未加工品上にカバーガラス層が取り付けられる、請求項1から5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記カバーガラス層は印刷される、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記カバーガラス層は熱処理前に取り付けられる、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記パラジウム層は接着剤を介在させて基板上に取り付けられる、請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記接着剤は印刷法により取り付けられる、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記層は導体路層として取り付けられる、請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
厚膜技術により製造が行われる、請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記基板としてセラミック基板が用いられる、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記セラミック基板はセラミックシートにより形成される、請求項1から13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記電気接続ゾーンはスルーホールたとえば銀スルーホールとして形成される、請求項1から14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項記載の方法に従い製造された電気抵抗たとえば電流センサ抵抗を備えた基板。

【図1】
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【公表番号】特表2010−514175(P2010−514175A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541936(P2009−541936)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061831
【国際公開番号】WO2008/077671
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】