説明

基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びサセプタカバー

【課題】 基板の裏面への異物の付着及び基板の横滑りを抑制する。
【解決手段】 基板を処理する処理室内に設けられ、基板を支持する基板支持部は、基板の縁側を下方から支持する凸領域と、凸領域により支持された基板に接触しないように凸部の内側に設けられた凹領域と、凹領域に設けられ、凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有し、凹領域内に連通し、基板と、基板支持部との間の気体を凹領域側から逃す流路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びサセプタカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程では、例えば処理室内に搬入した基板を基板支持部の上面に載置し、基板に所定の処理を施していた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−042023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板支持部上に基板を載置すると、例えば基板支持部の上面に付着していた異物等が基板の裏面に付着してしまう場合があった。また、例えば基板と基板支持部との間に気体が挟み込まれ、基板が横滑りしてしまう場合があった。
【0005】
本発明の目的は、基板支持部上に載置された基板の裏面への異物の付着及び基板の横滑りを抑制することが可能な基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びサセプターカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ前記基板を支持する基板支持部と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内を排気するガス排気部と、
前記処理室内に供給された処理ガスを励起するプラズマ生成部と、
前記ガス供給部、前記ガス排気部及び前記プラズマ生成部を制御する制御部と、を有し、
前記基板支持部は、
前記基板の縁側を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように前記凸領域の内側に設けられた凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有し、
前記凹領域内に連通し、前記基板と前記基板支持部との間の気体を前記凹領域側から逃す流路を有する基板処理装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内に設けられ、前記基板の縁側を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように前記凸領域の内側に設けられた凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有する基板支持部上に、前記基板と前記基板支持部との間の気体を、前記凹領域に連通する流路により逃しつつ、前記基板を載置する工程と、
ガス排気部により前記処理室内を排気しつつガス供給部により前記処理室内に処理ガスを供給し、プラズマ生成部により前記処理室内に供給した処理ガスを励起して前記基板を
プラズマ処理する工程と、前記処理室内から前記基板を搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内に設けられ、前記基板の縁側を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように前記凸領域の内側に設けられた凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有する基板支持部上に、前記基板と前記基板支持部との間の気体を、前記凹領域に連通する流路により逃しつつ、前記基板を載置する工程と、
ガス排気部により前記処理室内を排気しつつガス供給部により前記処理室内に処理ガスを供給し、プラズマ生成部により前記処理室内に供給した処理ガスを励起して前記基板をプラズマ処理する工程と、
前記処理室内から前記基板を搬出する工程と、を有する基板処理方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する処理室内で前記基板を支持するサセプタに着脱自在なサセプタカバーであって、
前記基板の一部を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように配置される凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、が設けられているサセプタカバーが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板支持部に載置された基板の裏面への異物の付着及び基板の横滑りを抑制することが可能な基板処理装置、半導体装置の製造方法、基板処理方法及びサセプタカバーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置としての変形マグネトロン型プラズマ処理装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置が備える基板支持部を示す模式図であって、(a)は基板支持部の平面図であり、(b)は基板支持部のA−A断面図である。
【図3】基板支持部から異物が発生するモデルを示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【図5】(a)は本発明の第1実施形態に係る予備加熱工程にて基板が保持される様子を示す模式図であり、(b)は従来技術に係る予備加熱工程にて基板が保持される様子を示す模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例に係る基板処理装置が備える基板支持部を示す模式図であって、(a)は基板支持部の平面図であり、(b)は基板支持部のA−A断面図である。
【図7】本発明の実施例3及び比較例に係る基板処理工程における基板昇温特性を示す図であって、(a)は基板処理工程における各イベントの実施時間を示すイベントチャートであり、(b)は基板昇温特性を示すグラフ図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置としてのICP型プラズマ処理装置の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置としてのECR型プラズマ処理装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明の第1実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本発明の第1実施形態に係る基板処理装置について、図1を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態に係る基板処理装置としての変形マグネトロン型プラズマ処理装置100の断面図である。
【0013】
変形マグネトロン型プラズマ(Modified Magnetron Typed Plasma)処理装置100(以下、MMT装置100と記載)は、電界と磁界とにより高密度プラズマを生成する変形マグネトロン型プラズマ源を用いて、シリコン(Si)等の基板としてのウエハ200をプラズマ処理する基板処理装置として構成されている。すなわち、MMT装置100は、気密性を保持した処理室201内にウエハ200を搬入し、処理室201内に供給した処理ガスに、一定の圧力下で高周波電圧をかけてマグネトロン放電を起こすように構成されている。係る機構により処理ガスを励起させて、ウエハ200に酸化や窒化等を行なったり、薄膜を形成したり、またはウエハ200の表面をエッチングしたり等の各種プラズマ処理を施すことができる。
【0014】
(処理室)
MMT装置100は、ウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al)または石英(SiO)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0015】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているときには、搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内へウエハ200を搬入し、または処理室201外へウエハ200を搬出することができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0016】
(基板支持部)
処理室201の底側中央には、ウエハ200を支持する基板支持部217が設けられている。基板支持部217は、例えば石英(SiO)等の非金属材料からそれぞれ形成されるサセプタ219及びサセプタカバー218を有しており(図2参照)、ウエハ200上に形成される膜等への金属汚染を低減することができるように構成されている。サセプタ219及びサセプタカバー218については後述する。
【0017】
基板支持部217の内部には、ウエハ200を加熱する加熱部としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200を例えば25℃〜700℃程度に加熱することができるように構成されている。
【0018】
基板支持部217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。基板支持部217内部にはインピーダンス調整電極217cが装備されている。インピーダンス調整電極217cは、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構274を介して接地されている。インピーダンス調整電極217cは、後述する第1の電極としての筒状電極215に対する第2の電極として機能する。インピーダンス可変機構274はコイルや可変コンデンサから構成されており、コイルのインダクタンス及び抵抗並びに可変コンデンサの容量値を制御することにより、インピーダンス調整電極217c及び基板支持部217を介して、ウエハ200の電位(バイアス電圧)を制御できるように構成されている。
【0019】
基板支持部217には、基板支持部217を昇降及び回転させる基板支持部昇降・回転機構268が設けられている。また、基板支持部217には、貫通孔217aが設けられ、一方、下側容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。貫通孔217aとウエハ突上げピン266とは互いに対向する位置に、少なくとも各3箇所ずつ設けられている。基板支持部昇降・回転機構268により基板支持部217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266が基板支持部217とは非接触な状態で貫通孔217aを突き抜けることで、ウエハ突上げピン266により、処理室201内に搬入されたウエハ200を一時的に保持するように構成されている。基板支持部昇降・回転機構268により基板支持部217が上昇させられたときには、ウエハ突上げピン266から基板支持部217上にウエハ200が載置されるように構成されている。なお、後述するように、貫通孔217aは、ウエハ200と基板支持部217との間の気体を逃がす流路としても構成されている。
【0020】
また、基板支持部昇降・回転機構268は、基板支持部217上面の中心を通る垂直軸回りに基板支持部217を回転させることで、プラズマ処理中のウエハ200を回転させて、ウエハ200面内におけるプラズマ処理の均一性を向上させることができるように構成されている。
【0021】
(ランプ加熱ユニット)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上面には、光透過窓278が設けられ、光透過窓278上の反応容器203外側には、ランプ加熱装置としてのランプ加熱ユニット280が設置されている。ランプ加熱ユニット280は、基板支持部217と対向する位置に設けられ、ウエハ200の上方からウエハ200を加熱するよう構成されている。ランプ加熱ユニット280を点灯することで、ヒータ217bと比較してより短時間でウエハ200を加熱することができるよう構成されている。また、ヒータ217bを併用することで、基板表面の温度を例えば900℃にすることができる。
【0022】
(ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、シャワーヘッド236が設けられている。シャワーヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、処理ガス等の各種ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入される各種ガスを分散する分散空間として構成されている。
【0023】
ガス導入口234には、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、窒素含有ガスとしての窒素(N)ガスを供給する窒素含有ガス供給管232bの下流端と、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順にOガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。窒素含有ガス供給管232bには、上流側から順にNガス供給源250b、流量制御装置としてのマスフローコントローラ252b、開閉弁としてのバルブ253bが設けられている。酸素含有ガス供給管232aと窒素含有ガス供給管232bとが合流した下流側には、バルブ254が設けられ、ガスケット203bを介してガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253a,253b,254を開くことによって、マスフローコントローラ252a,252bによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232a,232bを介して、酸素含有ガス及び窒素含有ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0024】
主に、シャワーヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、酸素含有ガス供給管232a、窒素含有ガス供給管232b、Oガス供給源250a、Nガス供給源250b、マスフローコントローラ252a,252b、バルブ253a,253b,254により、本実施形態に係るガス供給部が構成されている。
【0025】
(ガス排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内からガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。
【0026】
主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APC242、バルブ243b、真空ポンプ246により、本実施形態に係るガス排気部が構成されている。
【0027】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、第1の電極としての筒状電極215が設けられている。筒状電極215は、筒状、例えば円筒状に形成されている。筒状電極215は、インピーダンスの整合を行なう整合器272を介して高周波電力を印加する高周波電源273に接続されている。
【0028】
筒状電極215の外側表面の上下端部には、上側磁石216a及び下側磁石216bがそれぞれ取り付けられている。上側磁石216aおよび下側磁石216bは、ともに筒状、例えば円筒状に形成された永久磁石により構成されている。上側磁石216aおよび下側磁石216bは、処理室201に向いた面側とその反対の面側とに磁極を有している。上側磁石216aおよび下側磁石216bの磁極の向きは、逆向きになるよう配置されている。すなわち、上側磁石216aおよび下側磁石216bの処理室201に向いた面側の磁極同士は互いに異極となっている。これにより、筒状電極215の内側表面に沿って円筒軸方向の磁力線が形成される。
【0029】
上側磁石216aおよび下側磁石216bにより磁界を発生させ、さらに処理室201内に処理ガスを導入した後、筒状電極215に高周波電力を供給して電界を形成することで、処理室201内のプラズマ生成領域224にマグネトロン放電プラズマが生成されるように構成されている。放出された電子を上述の電磁界が周回運動させることによって、プラズマの電離生成率が高まり、長寿命かつ高密度のプラズマを生成させることができる。
【0030】
なお、筒状電極215、上側磁石216aおよび下側磁石216bの周囲には、これらが形成する電磁界が他の装置や外部環境に悪影響を及ぼさないように、電磁界を有効に遮蔽する金属製の遮蔽板223が設けられている。
【0031】
主に、筒状電極215、整合器272、高周波電源273、上側磁石216aおよび下側磁石216bにより、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。
【0032】
(制御部)
制御部としてのコントローラ221は、信号線Aを通じて、APC242、バルブ243及び真空ポンプポンプ246bを、信号線Bを通じて基板支持部昇降・回転機構268を、信号線Cを通じてヒータ217b及びインピーダンス可変機構274を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じて整合器272及び高周波電源273を、
信号線Fを通じてマスフローコントローラ252a,252b及びバルブ253a,253b,254を、信号線Gを通じてランプ加熱ユニット280を、それぞれ制御するように構成されている。
【0033】
(2)基板支持部の構成
次に、本実施形態の基板支持部217が備えるサセプタ219及びサセプタカバー218について、主に図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る基板処理装置が備える基板支持部217を示す模式図であって、(a)は基板支持部217の平面図であり、(b)は基板支持部217のA−A断面図である。
【0034】
図2(b)に示すように、基板支持部217は、ヒータ217bやインピーダンス調整電極217cが埋め込まれたサセプタ219と、例えば厚さが0.7mm以上1.5mm以下の円板状のサセプタカバー218とを有する。サセプタカバー218は、サセプタ219に着脱自在に設けられている。サセプタ219及びサセプタカバー218の径や各部のサイズは、支持するウエハ200の径に応じて定められる。以下においては、200mm〜450mmの範囲であって、例えば300mm径のウエハ200に対応するサセプタ219及びサセプタカバー218について説明する。
【0035】
(凸領域および凹領域)
サセプタカバー218は、ウエハ200の一部を下方から支持する凸領域としての外周支持部218mを有する。外周支持部218mは、例えばウエハ200の縁から半径方向内側に向けて3mm未満の領域を支持するよう構成されている。このとき、外周支持部218mは、例えばウエハ200を囲うように切れ目なく縁側を支持する。また、外周支持部218mがウエハ200の裏面と接触する幅wは、3mm未満であって例えば1.5mm以下とする。
【0036】
また、サセプタカバー218は、外周支持部218mの内側に凹領域としての中央凹部218dを有する。中央凹部218dは、例えばサセプタカバー218の表面にザグリ加工により設けられ、外周支持部218mにより支持されたウエハ200に接触しないように構成されている。
【0037】
このように、サセプタカバー218に外周支持部218mと中央凹部218dとを設けたので、基板支持部217の上面とウエハ200の裏面との接触面積が減り、ウエハ200の裏面の異物や傷を低減することができる。
【0038】
また、中央凹部218dを用いてウエハ200の裏面に空間を設けることによって、基板支持部217上へのウエハ200の静電吸着を抑制することができる。すなわち、ウエハ200とインピーダンス調整電極217cとの間に、サセプタカバー218を構成する材料よりも誘電率が低い空間を介在させるようにしたので、サセプタカバー218とウエハ200との間に生じる静電力を低減させることができる。なお、静電吸着は、プラズマにより帯電したウエハ200がサセプタ219内部のインピーダンス調整電極217cに引きつけられることで起きる。本実施形態によれば、ウエハ200の搬出時等に基板支持部217からウエハ200を容易に剥がすことができる。また、静電吸着を抑制することで、ウエハ200と基板支持部217との接触圧力が減り、ウエハ200裏面と基板支持部217との摩擦力が減ることにより、ウエハ200裏面に形成される傷や、ウエハ200裏面に付着するパーティクルを低減することができる。
【0039】
また、外周支持部218mにより、異物による影響の少ないウエハ200の縁側を支持するようにしたので、ウエハ200の裏面に異物が付着したとしても半導体装置への影響が軽減される。また、ウエハ200を囲うように支持する外周支持部218mにより、ウ
エハ200の縁部とサセプタカバー218との間に隙間がなくなることによって、ウエハ200の裏面へのプラズマの回り込みを抑制することができる。
【0040】
なお、サセプタカバー218の外周支持部218mは、ウエハ200の底面縁側を下方から支持されるように構成されており、ウエハ200の側部(ウエハ200の側面)には接触しないように構成されている。すなわち、外周支持部218mの上面は、ウエハ200側部に嵌合するような段差状には形成されておらず、平坦状に構成されている。これにより、ウエハ200の側部とサセプタカバー218との接触によるパーティクルの発生を抑制することができ、基板処理の品質を向上させることが可能となる。
【0041】
(流路)
また、サセプタカバー218は、中央凹部218d内に連通する貫通孔218aを有する。貫通孔218aは、ウエハ200と基板支持部217との間の気体を中央凹部218d側から逃がす流路の一部を構成する。係る貫通孔218aは、例えば中央凹部218dの少なくとも3箇所に開口している。3箇所の貫通孔218aは、例えばサセプタカバー218の外周縁との同心円上に、それぞれが略同距離だけ離れて配置されている。サセプタ219は、サセプタカバー218が有する貫通孔218aと重なる位置に貫通孔219aを有している。貫通孔218aと貫通孔219aとで、基板支持部217が備える流路としての貫通孔217aが構成される。
【0042】
このように、中央凹部218d内に連通する貫通孔217aを更に設けたので、ウエハ200が基板支持部217に載置される際、ウエハ200と基板支持部217とに挟まれた気体を貫通孔217aにより逃がすことができ、ウエハ200の横滑り(スライド)を起こり難くすることができる。
【0043】
(補助凸領域)
中央凹部218dは、ウエハ200の一部を下方から補助的に支持する補助凸領域としての中央支持部218sを有する。中央支持部218sは、例えば突起状に1つ以上、好ましくは複数個、さらに好ましくは3つ以上設けられている。図2(a)に示す例では、3つの中央支持部218sが、サセプタカバー218の外周縁との同心円上に、それぞれ略同距離だけ離れて、例えば貫通孔218aの開口位置とは約60°ずれた位置に配置されている。3つの中央支持部218sは、所定のピッチ円直径(PCD:Pitch Circle Diameter)dとなるよう配置され、例えばピッチ円直径dを145mm以上155mm以下とすることができる。
【0044】
また、中央支持部218sは、例えば外周支持部218mよりも低く形成されており、外周支持部218mとの高低差hは例えば0.1mm以上0.2mm以下である。なお、サセプタカバー218の表面(中央凹部218dの表面)に対してザグリ加工を行うことで中央支持部218sを形成する場合、中央支持部218sの高さは例えば0.04mm〜0.1mm程度とすることができる。また、サセプタカバー218の表面(中央凹部218dの表面)に例えば円板状の石英部材等を設置することで中央支持部218sを形成する場合、中央支持部218sの高さは例えば0.5mm程度とすることができる。なお、外周支持部218mの高さ(中央凹部218dの深さ)は、これら中央支持部218sの高さに0.1mm〜0.2mmを加えたものになる。
【0045】
このように、ウエハ200を縁側で支持する外周支持部218mに対し、その内側に、中央支持部218sを外周支持部218mよりも低く設けたので、ウエハ200の撓みを補正しつつ、ウエハ200との接触圧力を更に下げて裏面の異物を低減することができる。また、ウエハ200とインピーダンス調整電極217cとの間に存在するキャパシタンスが減り、静電力を低減させることができる。
【0046】
なお、中央支持部218sを例えば円柱形とする場合、その上端面(支持面)の直径は例えば2.8mmよりも小さくすることが好ましい。このように構成した場合、ウエハ200をいわゆる点で支持すること、すなわち、ウエハ200と中央支持部218sとの接触面積を小さくすることができるようになる。その結果、ウエハ200と中央支持部218sとの接触によるパーティクルの発生を効果的に抑制することができるようになる。
【0047】
また、中央支持部218sを複数設ける場合、中央支持部218sはウエハ200の中心を除く領域を囲うように設けることが好ましい。すなわち、中央支持部218sはウエハ200の中心付近(中央凹部218dの中央付近)には設けないことが好ましい。外周支持部218mにより外周縁が支持されるウエハ200は、その中央部が最も下がるように撓むこととなるが、仮に、中央支持部218sをウエハ200の中央部に設けた場合、ウエハ200と中央支持部218sとの接触圧が大きくなり過ぎて、パーティクルの発生量が増大してしまう恐れがある。これに対し、図2のように中央支持部218sをウエハ200の中心を除く領域を囲うように設けることにより、ウエハ200と中央支持部218sとの接触圧の増大を防ぎ、パーティクルの発生を抑制することができるようになる。
【0048】
(その他の構成)
また、本実施形態では、例えばサセプタカバー218をサセプタ219とは別体としている。これにより、基板支持部217の上面の消耗具合に応じてサセプタカバー218のみを交換することができ、また、所望の基板処理特性等に応じて、サセプタカバー218の厚さや形状の変更を容易に行うことができる。例えば、サセプタカバー218を厚く形成し、インピーダンス調整電極217cとウエハ200との距離を広げれば、インピーダンス調整電極217cとウエハ200との間のキャパシタンスを小さくすることができ、上記ウエハ200の吸着をより一層抑制することができる。
【0049】
なお、サセプタカバー218の表面には研磨等を施して、表面粗さRaを小さくすることが好ましい。例えば石英等から構成されるサセプタカバー218は、切削したのみの仕上げでは、表面粗さRaが例えば2.5μm程度となっており、ウエハ200の表面の異物が増加する原因となる場合がある。係る異物は、例えば図3に示すモデルにより発生すると考えられる。すなわち、図3に示すように、基板支持部217上に載置されたウエハ200は、基板支持部217が備えるヒータ217bにより加熱されて膨張する。このとき、サセプタカバー218の表面が粗いと、ウエハ200とサセプタカバー218の外周支持部218mとが擦れて異物Pが発生し、舞い上がった異物Pが例えばウエハ200の表面に付着する。
【0050】
そこで、サセプタカバー218の表面粗さRaを小さくしておけば、係る異物Pの発生を抑えてウエハ200の表面への付着を低減することができる。サセプタカバー218の表面粗さRaは、例えば焼き仕上げにより低減させることが可能である。サセプタカバー218が薄いために焼き入れにより変形が生じるようであれば、研磨仕上げとすることも可能である。この場合も、焼き仕上げと同等の表面粗さRaが得られるように研磨を施すことが好ましい。
【0051】
また、上記焼き仕上げや研磨仕上げの際に、外周支持部218mや中央支持部218sの角部の面取りを一緒に行ってもよい。これにより、各支持部218m,218sのウエハ200の支持面が鏡面となってウエハ200との局所的な接触圧力が緩和されることによって、より一層異物の発生や付着を低減することができる。また、ウエハ200の縁部とサセプタカバー218との微小な隙間を減少させることができ、ウエハ200の裏面へのプラズマの回り込みを一層抑制することができる。
【0052】
(3)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理工程について、主に図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。本実施形態に係る基板処理工程は、例えば半導体装置の製造工程の一工程として、上述のMMT装置100により実施される。本実施形態に係る基板処理工程においては、例えばシリコン(Si)からなるウエハ200の表面に窒化処理を施す。なお以下の説明において、MMT装置100を構成する各部の動作は、コントローラ221により制御される。
【0053】
(基板搬入工程)
まずは、ウエハ200を処理室201内に搬入する。具体的には、ウエハ200の搬送位置まで基板支持部217を下降させて、基板支持部217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突上げピン266が、基板支持部217上面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送機構を用いて処理室201に隣接する真空搬送室(図示せず)から処理室201内にウエハ200を搬入する。その結果、ウエハ200は、基板支持部217の上面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハ200を搬入したら、搬送機構を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。
【0054】
(予備加熱工程)
ヒータ217bには予め電力が供給され、ヒータ217b及び基板支持部217は、例えば25℃以上900℃以下の範囲内の所定温度に加熱されている。予備加熱工程では、搬入したウエハ200を直ちに基板支持部217上に載置せず、図5(a)に示すように、基板支持部217の上面の外周支持部218mから所定距離g1だけ離してウエハ突上げピン266上にウエハ200を保持した状態で、ヒータ217bからの熱輻射によりウエハ200の予備加熱を行う。このとき、処理室201内に昇圧ガスを供給し、処理室201内の圧力を高めた状態とすれば、昇圧ガスにより基板支持部217からウエハ200へと熱が伝達され、ウエハ200の昇温速度を向上させることができる。
【0055】
しかしながら、図5(b)に示す従来例のように、従来の基板支持部517の上面から所定距離g2だけ離して保持したウエハ200を、予備加熱の終了後に基板支持部517の略平坦な上面に載置する場合、処理室201内の圧力が高いと、ウエハ200と基板支持部517との間の気体(昇圧ガス等)により、ウエハ200が横滑りしてしまうことがあった。特に処理室201内の圧力が100Paを超えると横滑りが起き易かった。横滑りを抑制すべく、低圧下で予備加熱を行うと、ウエハ200の昇温に時間がかかってしまう。或いは、ウエハ200を載置するときだけ低圧にすると、降圧のための工数が増えて時間がかかってしまう。よって、いずれの場合もスループットが低下して、生産性を低下させていた。
【0056】
本実施形態では、外周支持部218mと中央凹部218dとによりウエハ200との接触面積を減らし、また、中央凹部218d内に連通する貫通孔217aを有する基板支持部217としている。よって、ウエハ200の横滑りを抑制しつつ、以下の手順により、高圧力下で予備加熱を行うことが可能となり、ウエハ200の昇温速度を高めることができる。
【0057】
本実施形態では、まず、ウエハ200をウエハ突上げピン266上に保持した状態で、バルブ253b,254を開け、マスフローコントローラ252bにて流量制御しながら、バッファ室237を介して処理室201内に昇圧ガスとしてのNガスを供給する。このとき、Nガスの流量を例えば500sccm以上3000sccm以下の範囲内の所定値とする。また、真空ポンプ246により処理室201内を排気しつつAPC242の
開度を調整し、処理室201内を例えば100Paよりも高い所定圧力とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程が終了するまで作動させておく。
【0058】
上記の状態を所定時間、例えば10秒間〜60秒間保つことで、基板支持部217からの熱輻射及びNガスの熱伝達により、ウエハ200が所定温度に昇温される。
【0059】
(基板載置工程)
所定時間が経過した後に、所定温度まで昇温されたウエハ200をウエハ突上げピン266から基板支持部217上へと載置する。つまり、基板支持部昇降・回転機構268を用いて基板支持部217を上昇させ、ウエハ200を基板支持部217の上面に支持させる。このとき、処理室201内は、例えば先の予備加熱工程と同様の、100Paよりも高い圧力となっている。本実施形態に係る基板支持部217によれば、このような高圧下であっても、ウエハ200の横滑りを抑制しつつウエハ200を載置することができる。
【0060】
基板支持部217上にウエハ200が載置されたら、ウエハ200を所定の処理位置まで上昇させる。また、基板支持部昇降・回転機構268の回転機能を用いて、ウエハ200の回転を開始する。後述の排気工程の終了時までこの回転を継続することで、ウエハ200面内における基板処理の均一性を向上させることができる。
【0061】
(圧力調整工程)
次に、処理ガスとしてのNガスの供給を行うと共に、高圧に保たれていた処理室201内の圧力を、後述のプラズマ処理工程における圧力になるよう調整する。本実施形態においては、昇圧ガスと処理ガスとが共にNガスであるので、予備加熱工程にて開始したNガスの供給を継続したまま、マスフローコントローラ252bによるNガスの流量の再調整を行って、Nガスの流量を例えば10sccm以上500sccm以下の範囲内の所定値とする。また、APC242による処理室201内の圧力の再調整を行って、処理室201内の圧力を例えば1Pa以上200Pa以下の範囲内の所定値とする。
【0062】
(プラズマ処理工程)
処理室201内の圧力が安定したら、筒状電極215に対して高周波電源273から整合器272を介して、例えば150W以上200W以下の範囲内の所定の出力値の高周波電力の印加を開始する。このとき、インピーダンス可変機構274は、予め所定のインピーダンス値に制御しておく。これにより、処理室201内、より具体的にはウエハ200の上方のプラズマ生成領域224内にプラズマ放電を起こしてNガスを励起する。Nガスは例えばプラズマ状態となって解離し、窒素(N)を含む窒素活性種等の反応種を生成する。プラズマ状態となったNガスにより、ウエハ200の表面に窒化処理が施される。
【0063】
その後、例えば2分以上5分以下の範囲内の所定の処理時間が経過したら、高周波電源273からの電力の印加を停止して、処理室201内のプラズマ放電を停止する。また、バルブ253b,254を閉めて、Nガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程が終了する。
【0064】
なお、上記プラズマ処理工程において、ウエハ200はプラズマ中で帯電し、サセプタ219内部のインピーダンス調整電極217cに引きつけられる。これにより、基板支持部217の上面にウエハ200が吸着した状態となる。本実施形態では、中央支持部218sを外周支持部218mよりも低く形成しているので、係る状態であっても中央支持部218sとウエハ200との接触圧力の増大が緩和され、異物の増加を抑えることができる。ウエハ200の吸着状態は、後述のウエハ200の搬出時まで保たれる。
【0065】
(残留ガス排気工程)
ガスの供給を停止したら、ガス排気管231aを用いて処理室201内を排気する。これにより、処理室201内に残留したNガスや、Nガスが反応した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室(ウエハ200の搬出先。図示せず)と同じ圧力(例えば100Pa)に調整する。
【0066】
(基板搬出工程)
処理室201内が所定の圧力となったら、基板支持部217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送機構を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0067】
なお、上述したように、ウエハ200は搬出時にも依然、基板支持部217の上面に吸着した状態となっている。ウエハ200を略全面で支持する従来の基板支持部の場合、ウエハ200の搬出時には、基板支持部に面で張り付いているウエハ200をウエハ突上げピン266で突き上げて無理に引き剥がすこととなり、ウエハ200が飛び跳ねて位置ずれが生じたり、ウエハ200が破損してしまったりするおそれがあった。
【0068】
しかしながら、本実施形態においては、ウエハ200は少ない接触面積で支持されているため、基板支持部217から剥がし易い状態となっており、ウエハ200の飛び跳ねや破損のリスクを低減することができる。
【0069】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0070】
(a)本実施形態によれば、基板支持部217は、ウエハ200の一部を下方から支持する外周支持部218mと、外周支持部218mにより支持されたウエハ200に接触しないように配置される中央凹部218dと、を上面に有する。これにより、基板支持部217上にウエハ200を載置したときの接触面積が減り、ウエハ200の裏面への異物の付着が抑制され、また、ウエハ200の裏面の傷を軽減することができる。
【0071】
従来の略平坦な上面を有する基板支持部においては、ウエハ200の裏面の略全面を基板支持部の上面で支持しており、ウエハ200の裏面に異物が付着したり傷がついたりしてしまう場合があった。係る異物は、ウエハ200との摩擦によるほか、例えば基板支持部やそれ以外の処理室内部材がプラズマによりスパッタされて発生する。裏面に異物や傷のあるウエハ200は、例えば後の露光工程にて露光機のウエハステージ上等に載置された際に異物や傷の周囲で局所的な歪みを生じ、露光機のピントが合わないデフォーカスを引き起こす場合があった。
【0072】
本実施形態においては、ウエハ200の裏面の異物や傷が低減され、このようなデフォーカス等を起こり難くすることができる。よって、ウエハ200上に形成される半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【0073】
(b)また、本実施形態によれば、基板支持部217は、中央凹部218d内に連通し、ウエハ200と基板支持部217との間の気体を中央凹部218d側から逃す貫通孔217aを更に有する。これにより、基板支持部217上にウエハ200を載置した際、ウエハ200と基板支持部217との間の気体が貫通孔217aから基板支持部217の下部構造へと抜けていくので、ウエハ200の横滑りを抑制することができる。
【0074】
従来の略平坦な上面を有する基板支持部においては、基板支持部上にウエハ200が載置される際、処理室201内に処理ガスや不活性ガス等の気体が存在していると、ウエハ200と基板支持部との間に一部の気体が挟まれ、ウエハ200を横滑りさせてしまう場合があった。横滑りが起きると、例えばウエハ200の搬送エラーが生じたり、ウエハ200を破損させたりするおそれがあった。
【0075】
本実施形態においては、ウエハ200の横滑りを抑制して、このようなウエハ200の搬送エラーや破損を起こり難くすることができる。
【0076】
(c)また、本実施形態によれば、外周支持部218mはウエハ200の縁側を支持し、中央凹部218dは外周支持部218mの内側に設けられる。また、外周支持部218mは、ウエハ200の縁から内側に3mm未満の領域を支持する。これにより、ウエハ200の裏面に異物が付着したとしても、半導体装置への影響を軽減することができる。
【0077】
例えばウエハ200の縁から内側に数mmまでの領域は、通常、半導体装置の形成領域外となり、ウエハ200の裏面の異物や傷はある程度許容される。露光装置の場合を例にとると、半導体装置の形成領域外に局所的な歪みが生じてデフォーカスが発生したとしても、半導体装置の形成領域に対してはほとんど影響を及ぼさない。また、ウエハ200全体が傾いた場合には、露光装置の備える傾き補正機構等による修正が可能である。
【0078】
本実施形態の構成によれば、外周支持部218mは主にウエハ200の半導体装置の形成領域外でウエハ200と接触することとなり、異物の付着による半導体装置への影響を軽減することができる。
【0079】
(d)また、本実施形態によれば、外周支持部218mは切れ目なくウエハ200の縁側を支持する。これにより、ウエハ200の裏面にプラズマが回り込むのを遮って、ウエハ200の裏面がエッチングされたり、ウエハ200の裏面に堆積物等が付着したりすることを抑制することができる。よって、ウエハ200の裏面の異物や傷を一層低減することができる。
【0080】
(e)また、本実施形態によれば、中央凹部218dを用いてウエハ200の裏面に空間を設けることによって、基板支持部217上へのウエハ200の静電吸着を抑制することができる。すなわち、ウエハ200とインピーダンス調整電極217cとの間に、サセプタカバー218を構成する材料よりも誘電率が低い空間を介在させるようにしたので、サセプタカバー218とウエハ200との間に生じる静電力を低減させることができる。
【0081】
(f)また、本実施形態によれば、サセプタカバー218の外周支持部218mは、ウエハ200の側部(ウエハ200の側面)には接触しないように構成されている。すなわち、外周支持部218mの上面は、ウエハ200側部に嵌合するような段差状には形成されておらず、フラットに構成されている。これにより、ウエハ200縁部とサセプタカバー218との接触によるパーティクルの発生を抑制することができ、基板処理の品質を向上させることが可能となる。
【0082】
(g)また、本実施形態によれば、中央凹部218dは、ウエハ200の一部を下方から補助的に支持する中央支持部218sを有する。これにより、外周支持部218mによって主に縁側で支えられるウエハ200の撓みを補正することができ、ウエハ200の面内で基板処理の均一性を保つことができる。
【0083】
(h)また、本実施形態によれば、中央支持部218sは、外周支持部218mよりも例えば0.1mm以上0.2mm以下低く形成されている。これにより、ウエハ200の撓
みを補正しつつ、ウエハ200との接触圧力を下げることができ、ウエハ200の裏面の異物が増加するのを抑えることができる。
【0084】
(i)また、本実施形態によれば、中央支持部218sのウエハ200を支持する面の直径は2.8mmよりも小さい。これにより、ウエハ200と中央支持部218sとの接触面積を小さくすることができ、ウエハ200と中央支持部218sとの接触によるパーティクルの発生を効果的に抑制することができるようになる。
【0085】
なお、中央支持部218sのウエハ200を支持する面積を増やせば、ウエハ200との接触圧力を一層下げることができると共により安定的な支持が可能にはなるが、支持面積の増大はまた、ウエハ200の裏面の異物を増大・増加させてしまう。上記のように、中央支持部218sの支持面の直径に上限を設けることで、異物の増加を抑えることができる。
【0086】
(j)また、本実施形態によれば、中央支持部218sを、ウエハ200の中心を除く領域を囲うように設けている。すなわち、中央支持部218sを、ウエハ200の中心付近(中央凹部218dの中央付近)には設けていない。これにより、ウエハ200と中央支持部218sとの接触圧の増大を防ぎ、パーティクルの発生を抑制することができるようになる。
【0087】
(k)また、本実施形態によれば、中央支持部218sの表面粗さRaは2.5μmよりも小さい。これにより、ウエハ200が基板支持部217上に載置されて膨張しても、ウエハ200と外周支持部218mとが擦れて異物Pが発生することを抑制でき、ウエハ200の表面の異物を低減することができる。
【0088】
(l)また、本実施形態によれば、基板支持部217は、サセプタ219と、サセプタ219に着脱自在なサセプタカバー218とを有し、外周支持部218mおよび中央凹部218dはサセプタカバー218に設けられている。これにより、プラズマに曝されるなどして消耗の激しい基板支持部217の上面のサセプタカバー218のみを消耗具合に応じて適宜交換することができ、コストや工数を省くことができる。
【0089】
(m)また、本実施形態によれば、処理室201内の圧力を高め、基板支持部217からウエハ200を離した状態で予備加熱する予備加熱工程と、処理室201内の圧力が100Paよりも高い状態で基板支持部217の外周支持部218mにウエハ200を載置する基板載置工程と、を有する。このように、処理室201内の圧力が高い状態で基板載置工程を行ってもウエハ200が横滑りし難いため、処理室201内の圧力を高めてウエハ200の昇温速度の向上を図ることができ、スループットが向上する。
【0090】
(n)また、本実施形態によれば、ウエハ200が、サセプタカバー218上に載置されていることにより、ウエハ200の裏面に空間を設けることができる。このように構成することで、ウエハ200とインピーダンス調整電極217cとの間に真空のキャパシタンスが形成され、ウエハ200のバイアスを低減することができる。バイアスを低減することによって、プラズマ中に存在する活性なガスをウエハ200に引き込む力が弱くなり、表面に微小な凹凸が形成されたウエハ200の凹部の底面と側面とに等方的な処理を行うことができ、例えば窒化処理等によりステップカバレッジの良い膜を形成することができる。
【0091】
(5)本実施形態の変形例
(変形例1)
次に、本実施形態の変形例1について、図6を用いて説明する。図6(a)に示すよう
に、本変形例に係る基板支持部317の上面には、ウエハ200の支持位置を示す印318bが、所定の形状および配置で1つ以上設けられている。図6に示す例では、ウエハ200の搬入搬出方向(A−A軸方向)に2箇所、搬入搬出方向に対して垂直方向に2箇所、直線状の印318bが設けられている。目視で充分な確認ができるよう、印318bは所定の太さ(幅)及び長さを有するものとする。
【0092】
係る印318bは、サセプタカバー218の表面に彫り込みや段差、突起を設ける等、ウエハ200に対する影響の少ない方法により形成することができる。また、サセプタカバー218の研磨仕上げも一緒に行えば、サセプタカバー218の透明性が増し、印318bの視認性を向上させることができる。この場合、ウエハ200への影響を避け、サセプタカバー218の裏面に印を設けてもよい。
【0093】
MMT装置100が備える搬送機構(図示せず)の調整を行う際などに、図6(a)に示すように、基板支持部317に支持されたウエハ200の各印318bに掛かる4点の縁が、各印318bの所定幅の中に入るよう搬送機構を調整すれば、次回以降、ウエハ200を所定の支持位置へと搬入し、支持させることができる。このように、印318bを設けることで、搬送機構の位置調整が容易となり、また、搬送の位置精度が上がってウエハ200の位置ずれを抑えることができる。したがって、ウエハ200と他部材との接触やそれによりウエハ200に加わる振動等が生じ難くなるので、いっそう異物を低減することができる。
【0094】
(変形例2)
次に、本実施形態の変形例2について説明する。本変形例に係る基板支持部の上面に設けられる凸領域は、ウエハ200の縁から3mm以上離れた(ウエハ200の中心に寄った)領域を支持するよう構成されている。ウエハ200を支持する際、ウエハ200に何らかの膜が形成されているような場合には、凸領域がウエハ200の縁に触れてしまうことによって、ウエハ200の縁の部分の膜が削られてパーティクルを発生させるおそれがある。しかし、上記のように、ウエハ200の縁から3mm以上離れた位置を凸領域が支持する構成とすることで、ウエハ200を支持する際、ウエハ200の縁に触れてしまう可能性を低減することができる。
【0095】
<本発明の第2実施形態>
上述した実施形態ではMMT装置100を用いる場合について説明したが、本発明は係る形態に限らず、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)方式プラズマ処理装置(以下、ICP装置300と記載)を用いて実施することも可能である。
【0096】
以下に、本実施形態に係るICP装置300について、図8を用いて説明する。ICP装置300は、主にプラズマ生成部の構成が上述の実施形態に係るMMT装置100と異なる。それ以外の構成についてはMMT装置100と同様である。なお、図8では、反応ガス供給部等、一部の構成を簡略化して図示した。
【0097】
ICP装置300は、プラズマ生成部の構成の一部として、電力を供給することでプラズマを生成する誘電コイル315a、315bを備えている。誘電コイル315aは上側容器210の天井壁の外側に敷設されている。誘電コイル315bは上側容器210の外周壁の外側に敷設されている。ICP装置300においても、ガス導入口234を経由して反応ガスを処理室201内へ供給するように構成されている。反応ガスを供給して誘電コイル315a、315bへ高周波電力を印加すると、電磁誘導により、ウエハ200の表面(処理面)に対して略水平の電界が生じるように構成されている。この電界をエネルギーとしてプラズマ放電を起こし、供給された反応ガスを励起して反応種を生成すること
ができる。
【0098】
上記構成において、誘電コイル315a、315bに印加する高周波電力と、インピーダンス可変機構274のインピーダンスとを制御することによって、ウエハ200に加わる電界の垂直成分及び水平成分の強度を調整可能に構成されている。特に、誘電コイル315bにより、水平方向の電界を強めることがより容易となる。また、誘電コイル315bの替わりに、例えば円筒状の筒状電極や、平行平板型の電極等を用いてもよい。
【0099】
主に、誘電コイル315a、315b、整合器272a、272b、高周波電源273a、273bにより、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。
【0100】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0101】
<本発明の第3実施形態>
また、上述した実施形態ではMMT装置100やICP装置300を用いる場合について説明したが、本発明は係る形態に限らず、例えばECR(Electron Cyclotron Resonance)方式プラズマ処理装置(以下、ECR装置400と記載)を用いて実施することも可能である。
【0102】
以下に、本実施形態に係るECR装置400について、図9を用いて説明する。ECR装置400は、主にプラズマ生成部の構成が上述の実施形態に係るMMT装置100と異なる。それ以外の構成についてはMMT装置100と同様である。なお、図9では、反応ガス供給部等、一部の構成を簡略化して図示した。
【0103】
ECR装置400は、プラズマ生成部の構成の一部として、マイクロ波導入管415a及び誘電コイル415bを備えている。マイクロ波導入管415aは上側容器210の天井壁の外側に敷設され、マイクロ波418aを供給してプラズマを生成するように構成されている。誘電コイル415bは上側容器210の外周壁の外側に敷設され、電力を供給してプラズマを生成するように構成されている。ECR装置400においても、ガス導入口234を経由して反応ガスを処理室201内へ供給するように構成されている。反応ガスを供給してマイクロ波導入管415aへマイクロ波418aを導入すると、マイクロ波418aが処理室201へ放射され、マイクロ波418aの進行方向に対して略垂直、つまり、ウエハ200の表面(処理面)に対して略水平の電界が形成されるように構成されている。また、誘電コイル415bへ高周波電力を印加すると、電磁誘導により、ウエハ200の処理面に対して略水平の電界が生じるように構成されている。これにより、マイクロ波418a及び誘電コイル415bにより形成された電界をエネルギーとしてプラズマ放電を起こし、供給された反応ガスを励起して反応種を生成することができる。
【0104】
上記構成において、導入するマイクロ波418aの強度及び誘電コイル415bに印加する高周波電力と、インピーダンス可変機構274のインピーダンスとを制御することによって、ウエハ200に加わる電界の垂直成分及び水平成分の強度を調整可能に構成されている。特に、誘電コイル415bにより、ウエハ200の処理面に対して水平方向の電界を強めることがより容易となる。また、誘電コイル415bの替わりに、例えば円筒状の筒状電極や、平行平板型の電極等を用いてもよい。
【0105】
なお、マイクロ波導入管415aを上側容器210の側壁部に設け、マイクロ波418aをウエハ200の表面に対して略水平に放射することとしてもよい。係る構成により、ウエハ200の処理面に対してより一層、電界の向きを垂直に制御し易くなる。
【0106】
主に、マイクロ波導入管415a、誘電コイル415b、整合器272b、高周波電源
273b、磁石216により、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。
【0107】
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0108】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0109】
例えば、上述の実施形態では、基板支持部217は、サセプタ219に着脱自在なサセプタカバー218を有するとしたが、凸領域や凹領域、補助凸領域等が、サセプタの表面の削り出しやサセプタの表面への接合等、様々な手法によりサセプタと一体的に形成されることで基板支持部が構成されていてもよい。別体のサセプタカバー218を設ける構成ではハンドリング強度等を考慮に入れた所定厚さを要するが、一体型であれば全体をより薄く形成することが可能である。このため、ヒータ217bとの距離を縮めて昇温速度を向上させたり、より高温の基板処理を行ったりすることができる。また、インピーダンス調整電極217cとの距離を縮めてウエハ200への荷電粒子の引き込み強度を高めることが容易となる。
【0110】
また、上述の実施形態では、基板支持部217は石英から形成されるとしたが、例えば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス等の他の非金属材料から形成されていてもよい。サセプタ219とサセプタカバー218とで異なる材質とすることも可能である。
【0111】
また、上述の実施形態では、外周支持部218mは切れ目なくウエハ200の縁側を支持するとしたが、ウエハ200の外側へと向かう1つ又は複数の流路としての溝を、貫通孔217aの替わりに、又は貫通孔217aに加えて、外周支持部に形成してもよい。そのとき、溝の幅等を調整して、ウエハ200の裏面へのプラズマ回り込みを抑制可能な狭さや形状とすることが好ましい。
【0112】
また、上述の実施形態では、基板支持部217は、外周支持部218m、中央凹部218d、中央支持部218s、貫通孔217aを有することとしたが、基板支持部の形状や構成はこれに限られない。例えば、凸領域と凹領域とをマトリックス状に配置したり、ドット状の凸領域を複数配置したりすることができる。流路も貫通孔や溝、その他メッシュ状のものや多孔質体等とすることができる。これら種々の態様に合わせて、円形や矩形等の支持面を持つ補助凸領域を配置し、或いは、補助凸領域を設けない構成とすることもできる。
【0113】
また、上述の実施形態では、サセプタカバー218が有する印218bは直線状としたが、この他、曲線状、L字型、U字型の線、或いは、円、楕円、多角形状などであってもよい。
【0114】
また、上述の実施形態では、予備加熱工程でウエハ突上げピン266にてウエハ200を保持することとしたが、ウエハ200を基板支持部217から所定距離離して保持できる方式であれば、これ以外の方式も用いることができる。
【0115】
また、上述の実施形態では、予備加熱工程で用いる昇圧ガスをNガスとしたが、昇圧ガスはこれに限られず、Oガスや水素(H)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、クリプトン(Kr)ガス等の希ガスなどを用いることができる。
【0116】
また、本発明は上記に挙げた窒化処理のみならず、ベアウエハや各種の膜が形成されたウエハに対する酸化、酸化と窒化とを一緒に行う酸窒化、拡散、エッチング、アニール等
の処理にも適用可能である。上記処理は、プラズマにより、或いはプラズマによらずに行うことができる。
【0117】
また、上述の実施形態では、予備加熱工程以降の工程において、ヒータ217bにてウエハ200を加熱することとしたが、ランプ加熱ユニット280を併用することも可能である。これにより、ウエハ200を急速に加熱することができ、さらに高温にすることができる。このようにウエハ200を急速に加熱させたり、高温状態にしたりすることによって、ウエハ200の膨張が増大して撓みが大きくなり、ウエハ200の裏面と、ウエハ200を支えるウエハ突上げピン266や基板支持部とが擦れる長さが長くなる。このような現象によって、ウエハ200の裏面に形成される傷の大きさや、擦れによって生じる異物の量が多くなることが考えられる。しかしながら、上述の実施形態のように基板支持部217を構成することによって、ウエハ200裏面に形成される傷の大きさや、異物の量を低減することができる。またランプ加熱ユニット280の出力とヒータ217bの出力とを調整することにより、ウエハ200の表面と裏面との温度差を減少させ、ウエハ200の撓み・反りを低減して、反りによるウエハ200のずれに伴う異物の発生を低減することができる。
【0118】
また、上述の実施形態では、ウエハ200の径を300mmとしたが、これに限らず、450mmのウエハを支持するように基板支持部を構成してもよい。ウエハが大きいほど、ウエハを基板支持部に載置したときの基板支持部とウエハとの間のガスの層が多くなり、横滑りの量が大きくなる。また、ウエハが膨張した時のウエハの伸びは、ウエハの中心から離れた位置になるほど長くなるので、ウエハの裏面と基板支持部とが擦れる量が多くなり、傷や異物の発生が多くなる。しかし、上述の実施形態と同様に基板支持部を構成することで、ウエハの横滑り量や、ウエハの裏面に形成される傷・異物の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
まずは、本発明の実施例1について比較例とともに説明する。本実施例では、上述の実施形態と同様の基板支持部を備えるMMT装置にてウエハを処理し、裏面の異物の個数を測定した。このとき、中央支持部を外周支持部よりも0.2mm低く形成し、中央支持部のウエハを支持する面の直径が1.8mm及び3mmのものについて実験した。つまり、それぞれ3つある中央支持部の面積の総和は、約8mm及び約21mmである。また、比較例として、従来の略平坦な上面を有する基板支持部を備えるMMT装置にて処理したウエハについても、裏面の異物の個数を測定した。測定した異物のサイズは、実施例に係るもの(直径が1.8mm及び3mm)が0.15μmであり、比較例に係るものが0.3μmである。
【0120】
測定の結果、異物の個数はそれぞれ、中央支持部の直径が1.8mmのものが46個、直径が3mmのものが357個、比較例に係るものが5000個〜20000個であった。このことから、ウエハを略全面で支持する比較例に比べ、ウエハとの接触面積を減らした本実施例のほうが、ウエハの裏面の異物を低減できることがわかった。また、中央支持部の直径が小さいほうが、異物がより減少することが分かった。
【0121】
上記結果から、任意の要求仕様を満たす中央支持部の直径の上限を割り出すことができる。すなわち、上記直径が1.8mm及び3mmの2点の測定値から、以下の直線近似の式、
y=259.17x−420.5・・・(1)
が求められる。但し、xを中央支持部のウエハを支持する面の直径、yをウエハの裏面の異物の個数とする。
【0122】
異物の個数yの要求仕様を例えば300個未満として上記の式(1)にあてはめ、中央支持部のウエハを支持する面の直径xが約2.8mmよりも小さければ、上記要求仕様を満たすという理論値を得た。
【0123】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について比較例とともに説明する。本実施例に係る基板支持部は、ウエハの支持位置を示す太さ1.5mm、長さ40mm、位置精度±0.5mmの印を4箇所に有し、研磨仕上げにより表面粗さRaが0.1μmの基板支持部とした。また、比較例に係る基板支持部は、印を有さず、かつ、研磨仕上げを施さない、表面粗さRaが2.5μmの上面が略平坦な基板支持部とした。それぞれの基板支持部を備えるMMT装置でウエハを処理し、ウエハ表面の異物の個数を測定した。測定した異物のサイズは0.15μmである。
【0124】
上記の結果、異物の個数は、本実施例に係るものが10個程度、比較例に係るものが100個程度であった。表面粗さRaを低減し、また、ウエハの支持位置を示す印により搬送精度を上げることで、ウエハの表面の異物を低減可能であることがわかった。
【0125】
(実施例3)
次に、中央支持部が外周支持部よりも0.1mm低く形成された基板支持部を実施例3として用い、上面が略平坦な基板支持部を比較例として用いて、それぞれの基板支持部を備えるMMT装置で、予備加熱工程におけるそれぞれのウエハの昇温特性を測定した。
【0126】
図7(a)に、それぞれのウエハの基板処理のフローに対応するイベントチャートを、各イベントの実施時間とともに示す。紙面左側が本実施例に係るウエハのデータであり、紙面右側が比較例に係るウエハのデータである。それぞれのウエハの基板処理は、図7(a)に示すイベントチャートに従って、予備加熱工程(No.1:PE−UP)、基板載置工程、圧力調整工程(No.2:APC−SET,No.3:PRESET)、プラズマ処理工程(No.4:IGNITION,No.5:NITRIDATION)を経て終了(No.6:PE−DOWN,No.7:END)させた。
【0127】
予備加熱工程において、本実施例に係るデータは、処理室内の圧力を400Paに高めた状態で、本実施例に係る基板支持部から離してウエハを保持し(図5(a)を参照して、g1=0.5mm〜1.0mm)、目標温度である300℃近くまで昇温して取得した。比較例に係るデータは、処理室内の圧力を100Paに高めた状態で、比較例に係る基板支持部から離してウエハを保持し(図5(b)を参照して、g2=2.0mm)、300℃近くまで昇温して取得した。
【0128】
比較例では予備加熱工程(No.1:PE−UP)の時間が55秒かかっているのに対し、本実施例では33秒に短縮されている。これをグラフ化したものを、図7(b)に示す。図7(b)の横軸はウエハの処理時間(sec)であり、縦軸はウエハ温度(℃)である。図中、実施例に係るウエハの昇温データを実線で示し、比較例に係るウエハの昇温データを一点鎖線で示した。
【0129】
図7(b)に示すように、本実施例に係るウエハの方が、予備加熱工程における温度上昇が急峻であり、比較例に係るウエハよりも処理室内の圧力を高めることで、昇温速度が向上することがわかった。上記の条件にて、実施例及び比較例のスループットを測定したところ、実施例が最大34枚/h、比較例が最大29枚/hであった。
【0130】
(実施例4)
次に、実施例4として上述の実施例3と同様の基板支持部を用い、比較例として上述の実施例3の比較例と同様の基板支持部を用いて、予備加熱工程を行わない場合について、それぞれのスループットを測定した。真空搬送室からウエハが搬入された直後の処理室内の圧力は、真空搬送室と略同圧の100Pa程度となっている。本実施例のウエハは、処理室内へと搬入した後、処理室内の圧力が100Paの状態で本実施例に係る基板支持部上に載置した。比較例のウエハは、処理室内へと搬入した後、ウエハの横滑りを抑止すべく、一旦、処理室内の雰囲気を排気し、処理室内の圧力が30Paの状態で比較例に係る基板支持部上に載置した。
【0131】
その結果、比較例では、ウエハ1枚当たりに要する処理時間が90秒であり、スループットは40枚/hであった。実施例では、ウエハ1枚当たりに要する処理時間が85秒に短縮され、スループットが42枚/hに向上した。以上のことから、ウエハの横滑りを抑制した基板支持部を用いることで、基板処理のフローが異なる場合においてもスループットが向上することがわかった。
【0132】
なお、実施例1〜4に係る基板支持部においては、大気圧下であってもウエハの横滑りが発生しないことが確認されている。
【0133】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
【0134】
本発明の一態様は、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ前記基板を支持する基板支持部と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内を排気するガス排気部と、
前記処理室内に供給された処理ガスを励起するプラズマ生成部と、
前記ガス供給部、前記ガス排気部及び前記プラズマ生成部を制御する制御部と、を有し、
前記基板支持部は、
前記基板の一部を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように配置される凹領域と、を上面に有し、
前記凹領域内に連通し、前記基板と前記基板支持部との間の気体を前記凹領域側から逃す流路を有する
基板処理装置である。
【0135】
好ましくは、
前記凸領域は前記基板の縁側を支持し、
前記凹領域は前記凸領域の内側に設けられる。
【0136】
また好ましくは、
前記凸領域は、前記基板の縁から内側に3mm未満の領域を支持する。
【0137】
また好ましくは、
前記凸領域は、前記基板の底面縁側のみを下方から支持し、前記基板の側部に接触しないように構成されている。
【0138】
また好ましくは、
前記凸領域の上面は平坦状に構成されている。
【0139】
また好ましくは、
前記凹領域は、前記基板の一部を下方から補助的に支持する補助凸領域を有する。
【0140】
また好ましくは、
前記補助凸領域は、前記凸領域よりも低く形成されている。
【0141】
また好ましくは、
前記補助凸領域は、前記凸領域よりも0.1mm以上0.2mm以下低く形成されている。
【0142】
また好ましくは、
前記補助凸領域の前記基板を支持する面の直径は2.8mmよりも小さい。
【0143】
また好ましくは、
前記補助凸領域は複数設けられている。
【0144】
また好ましくは、
前記補助凸領域は3つ以上設けられている。
【0145】
また好ましくは、前記補助凸領域は、前記基板の中央部を除く領域に設けられている。
【0146】
また好ましくは、前記補助凸領域は、前記凹領域の中央部を除く領域に設けられている。
【0147】
また好ましくは、
前記凸領域の表面粗さRaは2.5μmよりも小さい。
【0148】
また好ましくは、
前記基板支持部は、前記基板の支持位置を示す印を上面に有する。
【0149】
また好ましくは、
前記基板支持部は、
サセプタと、前記サセプタに着脱自在なサセプタカバーとを有し、
前記凸領域および前記凹領域は前記サセプタカバーに設けられている。
【0150】
本発明の他の態様は、
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内に設けられ前記基板を支持する基板支持部上に前記基板を載置する工程と、
ガス排気部により前記処理室内を排気しつつガス供給部により前記処理室内に処理ガスを供給し、プラズマ生成部により前記処理室内に供給した処理ガスを励起して前記基板をプラズマ処理する工程と、
前記処理室内から前記基板を搬出する工程と、を有し、
前記基板支持部上に前記基板を載置する工程では、
前記基板と前記基板支持部との間の気体を、前記基板支持部の上面の凹領域に連通する流路により逃しつつ、前記基板と前記凹領域とが接触しないよう、前記基板支持部の上面で前記基板の一部を下方から支持する凸領域に前記基板を載置する
半導体装置の製造方法である。
【0151】
好ましくは、
前記基板支持部上に前記基板を載置する工程の前に、前記処理室内の圧力を高めた状態で、前記凸領域から離して保持した前記基板を前記基板支持部に設けられた加熱部により予備加熱する工程を有し、
前記基板支持部上に前記基板を載置する工程は、
前記基板が所定温度に加熱された後に、前記処理室内の圧力が100Paよりも高い状態で実施する。
【0152】
また好ましくは、
前記基板支持部は、
サセプタと、前記サセプタをカバーするサセプタカバーとを有し、
前記凸領域と、前記凹領域と、前記補助凸領域とは、前記サセプタカバーに設けられている。
【0153】
また好ましくは、
前記補助凸領域の前記基板を支持する面の直径は、2.8mmよりも小さい。
【0154】
また好ましくは、
前記補助凸領域は3つ以上設けられている。
【0155】
また好ましくは、
前記補助凸領域は、前記凹領域の中央部を除く領域に設けられている。
【0156】
本発明のさらに他の態様は、
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内に設けられ、前記基板の縁側を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように前記凸領域の内側に設けられた凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有する基板支持部上に、前記基板と前記基板支持部との間の気体を、前記凹領域に連通する流路により逃しつつ、前記基板を載置する工程と、
ガス排気部により前記処理室内を排気しつつガス供給部により前記処理室内に処理ガスを供給し、プラズマ生成部により前記処理室内に供給した処理ガスを励起して前記基板をプラズマ処理する工程と、
前記処理室内から前記基板を搬出する工程と、を有する基板処理方法である。
【0157】
本発明のさらに他の態様は、
基板を処理する処理室内で前記基板を支持するサセプタに着脱自在なサセプタカバーであって、
前記基板の一部を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように配置される凹領域と、が設けられた
サセプタカバーである。
【0158】
また好ましくは、
前記補助凸領域の前記基板を支持する面の直径は、2.8mmよりも小さい。
【0159】
また好ましくは、
前記補助凸領域は3つ以上設けられている。
【0160】
また好ましくは、
前記補助凸領域は、前記凹領域の中央部を除く領域に設けられている。
【0161】
本発明のさらに他の態様は、
基板を処理する処理室内に設けられ前記基板を支持する基板支持部であって、
前記基板の一部を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように配置される凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有する
基板支持部である。
【0162】
また好ましくは、
前記凹領域内に連通し、前記基板と前記基板支持部との間の気体を前記凹領域側から逃す流路を有する。
【0163】
本発明のさらに他の態様は、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に前記基板と接するように設けられ前記基板の縁側を支持する凸領域と、
前記処理室内に設けられ前記凸領域よりも低い位置で前記基板の中央側を支持する補助凸領域と、を有する基板支持部と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内を排気するガス排気部と、
前記処理室内に供給された処理ガスを励起するプラズマ生成部と、
前記ガス供給部、前記ガス排気部及び前記プラズマ生成部を制御する制御部と、を有する
基板処理装置である。
【符号の説明】
【0164】
100 MMT装置(基板処理装置)
221 コントローラ(制御部)
200 ウエハ(基板)
201 処理室
217 基板支持部
217a 貫通孔(流路)
218m 外周支持部(凸領域)
218d 中央凹部(凹領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に設けられ前記基板を支持する基板支持部と、
前記処理室内に処理ガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内を排気するガス排気部と、
前記処理室内に供給された処理ガスを励起するプラズマ生成部と、
前記ガス供給部、前記ガス排気部及び前記プラズマ生成部を制御する制御部と、を有し、
前記基板支持部は、
前記基板の縁側を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように前記凸領域の内側に設けられた凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有し、
前記凹領域内に連通し、前記基板と前記基板支持部との間の気体を前記凹領域側から逃す流路を有する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板支持部は、
サセプタと、前記サセプタをカバーするサセプタカバーとを有し、
前記凸領域と、前記凹領域と、前記補助凸領域とは、前記サセプタカバーに設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記補助凸領域の前記基板を支持する面の直径は、2.8mmよりも小さい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記補助凸領域は3つ以上設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記補助凸領域は、前記凹領域の中央部を除く領域に設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内に設けられ、前記基板の縁側を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように前記凸領域の内側に設けられた凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有する基板支持部上に、前記基板と前記基板支持部との間の気体を、前記凹領域に連通する流路により逃しつつ、前記基板を載置する工程と、
ガス排気部により前記処理室内を排気しつつガス供給部により前記処理室内に処理ガスを供給し、プラズマ生成部により前記処理室内に供給した処理ガスを励起して前記基板をプラズマ処理する工程と、
前記処理室内から前記基板を搬出する工程と、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記基板支持部は、
サセプタと、前記サセプタをカバーするサセプタカバーとを有し、
前記凸領域と、前記凹領域と、前記補助凸領域とは、前記サセプタカバーに設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記補助凸領域の前記基板を支持する面の直径は、2.8mmよりも小さい
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記補助凸領域は3つ以上設けられている
ことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記補助凸領域は、前記凹領域の中央部を除く領域に設けられている
ことを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
基板を処理室内に搬入する工程と、
前記処理室内に設けられ、前記基板の縁側を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように前記凸領域の内側に設けられた凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、を上面に有する基板支持部上に、前記基板と前記基板支持部との間の気体を、前記凹領域に連通する流路により逃しつつ、前記基板を載置する工程と、
ガス排気部により前記処理室内を排気しつつガス供給部により前記処理室内に処理ガスを供給し、プラズマ生成部により前記処理室内に供給した処理ガスを励起して前記基板をプラズマ処理する工程と、
前記処理室内から前記基板を搬出する工程と、を有する
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
基板を処理する処理室内で前記基板を支持するサセプタに着脱自在なサセプタカバーであって、
前記基板の一部を下方から支持する凸領域と、前記凸領域により支持された前記基板に接触しないように配置される凹領域と、前記凹領域に設けられ前記凸領域よりも低く形成された補助凸領域と、が設けられている
ことを特徴とするサセプタカバー。
【請求項13】
前記補助凸領域の前記基板を支持する面の直径は、2.8mmよりも小さい
ことを特徴とする請求項12に記載のサセプタカバー。
【請求項14】
前記補助凸領域は3つ以上設けられている
ことを特徴とする請求項12または13に記載のサセプタカバー。
【請求項15】
前記補助凸領域は、前記凹領域の中央部を除く領域に設けられている
ことを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のサセプタカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−216774(P2012−216774A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21225(P2012−21225)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】