説明

基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体

【課題】薬液処理時に処理槽内の薬液の温度を均一にして、複数の基板を均一に薬液処理することができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】本発明による基板処理装置1は、互いに対向する一対の側壁10a、10bを有し、薬液を貯留して複数の基板を薬液処理する処理槽10と、複数の基板を起立させて保持する保持部21と、保持部21に連結され、処理槽10内に搬入された際に、保持部21に保持された基板と処理槽10の一方の側壁10aとの間に介在される背部22とを有し、保持部21に保持された基板を薬液に浸漬させる基板保持機構20とを備えている。処理槽10に、貯留された薬液を加熱する加熱器80が設けられている。この加熱器80は、一方の側壁10aに設けられた第1加熱器81と、他方の側壁10bに設けられた第2加熱器82と、を有しており、第1加熱器81の出力と第2加熱器82の出力は個別に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ等の基板(以下、単にウエハと記す)を、処理槽に貯留された薬液(エッチング液)に浸漬して薬液処理(エッチング処理)する基板処理装置が知られている。このような基板処理装置においては、表面にシリコン窒化膜が形成された複数(例えば、50枚)のウエハが、処理槽に貯留された高温(例えば、約160℃〜約180℃)で沸騰状態の薬液(例えば、リン酸水溶液、HPO)に浸漬されて、ウエハのシリコン窒化膜のエッチング処理が行われる。このことにより、ウエハ表面のシリコン窒化膜が、所望のパターンに形成される。
【0003】
ここで、処理槽は、直方体状に形成され、4つの側壁および底板を有しており、各側壁および底板には、ヒータがそれぞれ設けられ、貯留された薬液が、ウエハを浸漬する前、およびウエハを浸漬している間に、加熱されるようになっている。
【0004】
また、基板処理装置には、複数のウエハを起立して(垂直状に)保持する保持棒と、この保持棒に連結され、垂直状に延びる背板とを有するウエハボードが設けられており、ウエハは、このウエハボードの保持棒に保持されて、加熱されて沸騰状態の薬液に浸漬されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−23952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらウエハボードの背板の周囲の薬液は、背板に熱を奪われたり、熱の伝搬が背板によって遮蔽される。このことにより、保持棒に保持されているウエハのうち、背板側で保持されているウエハの周囲の薬液の温度が低下し、保持棒の先端側と背板側とにおいて薬液の温度や沸騰状態に差が生じる。ウエハのシリコン窒化膜のエッチングレート(エッチング速度)は薬液の温度に依存するとともに、沸騰状態はSiNとSiOの選択比に依存するため、ウエハボードの保持棒の背板側で保持されているウエハのシリコン窒化膜のエッチングレートが低下し、ウエハボードに保持された各ウエハのシリコン窒化膜を、均一にエッチングすることが困難となることがあった。
【0007】
本発明は、このようなことを考慮してなされたものであり、薬液処理時に処理槽内の薬液の温度および沸騰状態を均一にして、複数の基板を均一に薬液処理することができる基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いに対向する一対の側壁を有し、薬液を貯留して複数の基板を薬液処理する処理槽と、複数の前記基板を起立させて保持する保持部と、当該保持部に連結された背部であって、前記処理槽内に搬入された際に、当該保持部に保持された当該基板と当該処理槽の前記一対の側壁のうちの一方の側壁との間に介在される前記背部とを有し、当該保持部に保持された当該基板を薬液に浸漬させる基板保持機構と、前記処理槽に設けられ、貯留された薬液を加熱する加熱器と、を備え、前記加熱器は、前記処理層の前記一方の側壁に設けられた第1加熱器と、他方の側壁に設けられた第2加熱器と、を有し、前記第1加熱器および前記第2加熱器に、制御部が接続され、前記制御部は、前記第1加熱器の出力と前記第2加熱器の出力を個別に制御することを特徴とする基板処理装置である。
【0009】
本発明による基板処理装置において、前記制御部は、前記第1加熱器の出力が前記第2加熱器の出力より大きくなるように、当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御し、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されるようにしてもよい。
【0010】
本発明による基板処理装置において、前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられ、前記制御部は、前記第1加熱器の出力および前記第2加熱器の出力をそれぞれ一定に維持するように当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御すると共に、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように、前記第3加熱器を制御するようにしてもよい。
【0011】
本発明による基板処理装置において、前記処理槽に、貯留された薬液の温度を検出する温度検出器が設けられ、前記制御部は、前記温度検出器により検出された温度に基づいて、前記第3加熱器を制御するようにしてもよい。
【0012】
本発明による基板処理装置において、前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられ、前記制御部は、前記第3加熱器の出力を一定に維持するように、当該第3加熱器を制御すると共に、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように、前記第1加熱器および前記第2加熱器を制御するようにしてもよい。
【0013】
本発明による基板処理装置において、前記処理槽に、貯留された薬液の温度を検出する温度検出器が設けられ、前記制御部は、前記温度検出器により検出された温度に基づいて、前記第1加熱器および前記第2加熱器を制御するようにしてもよい。
【0014】
本発明による基板処理装置において、前記制御部は、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力と略同一となるように、当該第1加熱器および当該第3加熱器を制御するようにしてもよい。
【0015】
本発明による基板処理装置において、前記制御部は、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力より大きくなるように、当該第1加熱器および当該第3加熱器を制御するようにしてもよい。
【0016】
本発明による基板処理装置において、前記処理槽内に設けられ、薬液に浸漬された前記基板に薬液を供給する薬液供給部を更に備え、前記基板保持機構の前記保持部に、前記基板を係合自在な複数の保持溝が形成され、前記薬液供給部は、前記保持溝の間に対応するように設けられ、前記基板の間に薬液を供給する複数の基板位置供給孔と、前記保持溝のうち最も前記背部の側に形成された前記保持溝と前記一方の側壁との間に対応するように設けられ、最も前記背部側の前記保持溝に係合した前記基板と当該一方の側壁との間に薬液を供給する背部側供給孔と、を有しているようにしてもよい。
【0017】
本発明による基板処理装置において、前記制御部は、前記第1加熱器の出力が前記第2加熱器の出力より小さくなるように、当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御し、前記処理層に貯留された薬液が加熱されるようにしてもよい。
【0018】
本発明による基板処理装置において、前記制御部は、前記第2加熱器に対する前記第1加熱器の出力が30%〜50%となるように、当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御するようにしてもよい。
【0019】
本発明は、互いに対向する一対の側壁を有し、薬液を貯留して複数の基板を薬液処理する処理槽と、複数の前記基板を起立させて保持する保持部と、当該保持部に連結された背部であって、前記処理槽内に搬入された際に、当該保持部に保持された当該基板と当該処理槽の前記一対の側壁のうちの一方の側壁との間に介在される前記背部とを有し、当該保持部に保持された当該基板を薬液に浸漬させる基板保持機構と、前記処理槽に設けられ、貯留された薬液を加熱する加熱器とを備え、前記加熱器は、前記処理層の前記一方の側壁に設けられた第1加熱器と、他方の側壁に設けられた第2加熱器と、を有する、基板処理装置を用いて基板を処理する基板処理方法において、前記処理槽に、薬液を貯留する工程と、前記第1加熱器の出力と前記第2加熱器の出力を個別に制御して、前記処理槽に貯留された薬液を加熱する工程と、前記基板保持機構の前記保持部に複数の前記基板を起立させて保持し、当該基板を前記処理槽に貯留された薬液に浸漬させる工程と、を備えたことを特徴とする基板処理方法である。
【0020】
本発明による基板処理方法において、前記薬液を加熱する工程において、前記第1加熱器の出力を前記第2加熱器の出力より大きくして、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されるようにしてもよい。
【0021】
本発明による基板処理方法において、前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられており、前記薬液を加熱する工程において、前記第1加熱器および前記第2加熱器の出力がそれぞれ一定に維持されると共に、前記第3加熱器が、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように作動するようにしてもよい。
【0022】
本発明による基板処理方法において、前記薬液を加熱する工程において、前記処理槽に貯留された薬液の温度が検出され、当該検出された温度に基づいて、前記第3加熱器が作動するようにしてもよい。
【0023】
本発明による基板処理方法において、前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられており、前記薬液を加熱する工程において、前記第3加熱器の出力が一定に維持されると共に、前記第1加熱器および前記第2加熱器が、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように作動するようにしてもよい。
【0024】
本発明による基板処理方法において、前記薬液を加熱する工程において、前記処理槽に貯留された薬液の温度が検出され、当該検出された温度に基づいて、前記第1加熱器および前記第2加熱器が作動するようにしてもよい。
【0025】
本発明による基板処理方法において、前記薬液を加熱する工程において、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力と略同一となるようにしてもよい。
【0026】
本発明による基板処理方法において、前記薬液を加熱する工程において、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力より大きくなるようにしてもよい。
【0027】
本発明による基板処理方法において、前記処理槽内に、薬液に浸漬された前記基板に薬液を供給する薬液供給部が設けられ、前記基板保持機構の前記保持部に、前記基板を係合自在な複数の保持溝が形成され、前記薬液供給部は、前記保持溝の間に対応するように設けられ、前記基板の間に薬液を供給する複数の基板位置供給孔と、前記保持溝のうち最も前記背部の側に形成された前記保持溝と前記一方の側壁との間に対応するように設けられ、最も前記背部側の前記保持溝に係合した前記基板と当該一方の側壁との間に薬液を供給する背部側供給孔と、を有し、基板を薬液に浸漬させる工程において、薬液は、薬液に浸漬された前記基板の間に供給されると共に、最も前記背部側の前記保持溝に係合した前記基板と前記一方の側壁との間に供給されるようにしてもよい。
【0028】
本発明による基板処理方法において、前記薬液を加熱する工程において、前記第1加熱器の出力を前記第2加熱器の出力より小さくして、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されるようにしてもよい。
【0029】
本発明による基板処理方法において、前記薬液を加熱する工程において、前記第2加熱器に対する前記第1加熱器の出力を30〜50%として、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されるようにしてもよい。
【0030】
本発明は、互いに対向する一対の側壁を有し、薬液を貯留して複数の基板を薬液処理する処理槽と、複数の前記基板を起立させて保持する保持部と、当該保持部に連結された背部であって、前記処理槽内に搬入された際に、当該保持部に保持された当該基板と当該処理槽の前記一対の側壁のうちの一方の側壁との間に介在される前記背部とを有し、当該保持部に保持された当該基板を薬液に浸漬させる基板保持機構と、前記処理槽に設けられ、貯留された薬液を加熱する加熱器とを備え、前記加熱器は、前記処理層の前記一方の側壁に設けられた第1加熱器と、他方の側壁に設けられた第2加熱器と、を有する、基板処理装置を用いて基板を処理する基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、この基板処理方法は、前記処理槽に、薬液を貯留する工程と、前記第1加熱器の出力と前記第2加熱器の出力を個別に制御して、前記処理槽に貯留された薬液を加熱する工程と、前記基板保持機構の前記保持部に複数の前記基板を起立させて保持し、当該基板を前記処理槽に貯留された薬液に浸漬させる工程と、を備えたことを特徴とする記録媒体である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、薬液処理時に処理槽内の薬液の温度および沸騰状態を均一にして、複数の基板を均一に薬液処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における基板処理装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態における基板処理装置の処理槽を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における基板処理装置の側方断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態における基板処理方法のフローチャートを示す図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態における基板処理装置の全体構成を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態における基板処理装置の側方断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態における基板処理装置において、エッチングの均一性とエッチング量とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図4は、本発明の第1の実施の形態における基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体の一実施の形態を説明するための図である。
【0034】
まず、図1により基板処理装置1の全体構成について説明する。
【0035】
図1乃至図3に示すように、基板処理装置1は、薬液(リン酸水溶液、HPO)を貯留して複数(例えば、50枚)の基板(例えば、半導体ウエハ、以下単にウエハWと記す)を薬液処理(エッチング処理)する処理槽10と、この処理槽10内に搬入可能に設けられ、ウエハWを起立させて保持し、薬液に浸漬させるウエハボード(基板保持機構)20と、を備えている。このうち、処理槽10は、互いに対向する一対の側壁を構成する第1側壁(一方の側壁)10aおよび第2側壁(他方の側壁)10bと、2つの他の側壁(第3側壁10cおよび第4側壁10d)と、底板(底部)10eとを有し、直方体状に形成されている。
【0036】
処理槽10の各側壁10a、10b、10c、10dの上部に、切欠溝11が形成されている。処理槽10は、石英により形成されており、この処理槽(内槽)10の周囲には、処理槽10からオーバーフローする薬液を受ける石英製の外槽12が設けられている。
この外槽12の外方には、断熱材(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))からなる断熱壁13が設けられ、処理槽10に貯留された薬液の温度が低下することを防止すると共に、処理槽10の周囲に設けられた他の装置(図示せず)に、熱が放射されることを防止している。また、処理槽10の下面に、矩形状の枠板14が設けられ、この枠板14の各縁に、断熱壁13を支持する取付枠15が取り付けられている。これら枠板14および取付枠15は、断熱壁13と同様の材料により形成されている。
【0037】
図3に示すように、ウエハボード20は、ウエハWを起立させて(垂直状に)保持する保持棒(保持部)21と、この保持棒21に連結され、垂直状に延びる背板(背部)22とを有している。この背板22は、処理槽10内に搬入された際に、処理槽10の第1側壁10aに近接し、保持棒21に保持されたウエハWと第1側壁10aとの間に介在されるようになっている。なお、背板22は、ウエハボード20を昇降する図示しない駆動部に連結され、この駆動部は、後述する制御部90に接続され、制御部90からの制御信号に基づいて、駆動されるようになっている。
【0038】
図1に示すように、外槽12と処理槽10との間に、処理槽10からオーバーフローした薬液を処理槽10に循環させる循環ライン30が設けられている。すなわち、循環ライン30の一端は、外槽12の底部に設けられた排出口31に連結され、他端は、処理槽10の底板10eに設けられた供給口32に連結されている。循環ライン30には、外槽12の排出口31から処理槽10の供給口32に薬液を送る循環ポンプ33が設けられている。また、循環ライン30のうち循環ポンプ33の下流側(供給口32の側)には、フィルタ34が設けられており、循環ライン30を通る薬液に含まれるパーティクル等の異物が除去されるようになっている。さらに、フィルタ34の下流側には、温度コントローラ35が設けられており、循環ライン30を通る薬液を、約160℃〜約180℃に加熱して沸騰状態とするようになっている。なお、循環ポンプ33および温度コントローラ35は、制御部90に接続され、制御部90により制御されるようになっている。
【0039】
循環ライン30には、処理槽10に供給される薬液を希釈するための希釈液(例えば、純水)を供給する希釈液供給源40が、希釈液供給ライン41を介して連結されている。この希釈液供給ライン41の一端は、循環ライン30のうち温度コントローラ35と供給口32との間の部分に連結され、他端は、希釈液供給源40に連結されている。また、希釈液供給ライン41に、希釈液開閉弁42が設けられており、希釈液供給ライン41を通る希釈液の流量が調整可能になっている。この希釈液開閉弁42は、制御部90に接続され、制御部90により制御されるようになっている。
【0040】
また、循環ライン30には、処理槽10から薬液を排出する排出ライン50が連結されている。すなわち、排出ライン50の一端は、循環ライン30のうち循環ライン30と希釈液供給ライン41との合流点の下流側の部分に連結され、他端は、薬液を排出する図示しない排出機構に連結されている。この排出ライン50には、排出開閉弁51が設けられており、処理槽10から排出される薬液の流量が調整可能になっている。この排出開閉弁51は、制御部90に接続され、制御部90により制御されるようになっている。
【0041】
処理槽10内の下部に、供給口32から循環供給される薬液を、ウエハボード20に保持されたウエハWに対して均一に分散させるように案内する整流板60が設けられている。この整流板60は、薬液を均一に分散させるための長孔61を有しており、この長孔61は、例えば、互いに平行に形成されている。
【0042】
処理槽10の上方に、薬液を収容する薬液収容槽70が設けられている。この薬液収容槽70の底部から、処理槽10に向かって薬液補充ライン71が延びており、この薬液補充ライン71に薬液補充開閉弁72が設けられている。この薬液補充開閉弁72を開くことにより、薬液収容槽70から処理槽10に薬液が供給されるようになっている。なお、薬液補充開閉弁72は、制御部90に接続され、制御部90により制御されるようになっている。
【0043】
図3に示すように、処理槽10に、貯留された薬液を加熱する加熱器80が設けられており、この加熱器80は、処理槽10の第1側壁10aの側の出力が、第2側壁10bの側の出力より大きくなっている。
【0044】
すなわち、加熱器80は、処理槽10の第1側壁10aに設けられた第1ヒータ(第1加熱器)81と、処理槽10の第2側壁10bに設けられた、第2ヒータ(第2加熱器)82とを有しており、第1ヒータ81の出力が、第2ヒータ82の出力より大きくなっている。また、図1に示すように、処理槽10の第3側壁10c、第4側壁10d、および底板10eに、第3ヒータ(第3加熱器)83が設けられている。これらのヒータ81、82、83により、処理槽10内の薬液を加熱して沸騰状態とするようになっている。図1および図3に示すように、各ヒータ81、82、83は、制御部90にそれぞれ接続され、制御部90からの制御信号に基づいて、作動するようになっている。なお、各第3ヒータ83は、制御部90により、一体に作動するようになっている。
【0045】
上述したように、加熱器80の各ヒータ81、82、83には、これらを制御する制御部90が接続されている。この制御部90は、第1ヒータ81の出力を、第2ヒータ82の出力より大きくすると共に、第1ヒータ81の出力および第2ヒータ82の出力を一定に維持するように、第1ヒータ81および第2ヒータ82をそれぞれ制御する。なお、制御部90は、例えば、各ヒータ81、82に供給する電流値を変えることにより、各ヒータ81、82の出力を変えることができる。
【0046】
処理槽10内に、貯留された薬液の温度を検出する温度センサ(温度検出器)85が設けられ、この温度センサ85に、制御部90が接続されている。制御部90は、温度センサ85により検出された温度に基づいて、第3ヒータ83をONまたはOFFすることにより、第3ヒータ83を制御する。このようにして、処理槽10に貯留された薬液は、その温度が所望の温度、すなわち薬液が沸騰する温度(約160℃〜約180℃)となるように加熱される。
【0047】
また、制御部90は、第3ヒータ83の出力が第1ヒータ81の出力と略同一となるように、第1ヒータ81および第3ヒータ83を制御する。
【0048】
外槽12に、オーバーフローした薬液に、エッチング処理により溶解されているシリコン(Si)の濃度を検出する濃度センサ86が設けられている。また、処理槽10内に、貯留されている薬液の液面を検出する液面センサ87が設けられている。濃度センサ86および液面センサ87は、制御部90にそれぞれ接続されており、制御部90は、濃度センサ86および液面センサ87からの検出信号に基づいて、希釈液開閉弁42、排出開閉弁51、および薬液補充開閉弁72を制御するようになっている。
【0049】
ところで、図1に示すように、制御部90には、工程管理者等が基板処理装置1を管理するために、コマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置1の稼働状況等を可視化して表示するディスプレイ等からなる入出力装置91が接続されている。また、制御部90は、基板処理装置1で実行される処理を実現するためのプログラム等が記録された記録媒体92にアクセス可能となっている。記録媒体92は、ROMおよびRAM等のメモリ、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、およびフレキシブルディスク等のディスク状記録媒体等、既知の記録媒体から構成され得る。このようにして、制御部90が、記録媒体92に予め記録されたプログラム等を実行することによって、基板処理装置1においてウエハWの処理が行われるようになっている。
【0050】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち、本実施の形態による基板処理方法について説明する。なお、以下に説明する基板処理方法を実行するための各構成要素の動作は、予め記録媒体92に記録されたプログラムに基づいた制御部90からの制御信号によって制御される。
【0051】
まず、図4に示すように、処理槽10に薬液が貯留される(ステップS1)。この場合、薬液補充開閉弁72が開き、薬液収容槽70から、薬液補充ライン71を通って、処理槽10に薬液が供給される。この際、薬液は、処理槽10から外槽12にオーバーフローするまで供給される。
【0052】
次に、処理槽10に設けられた加熱器80の第1ヒータ81、第2ヒータ82、および各第3ヒータ83が作動して、処理槽10に貯留された薬液が加熱される(ステップS2)。この場合、第1ヒータ81の出力を第2ヒータ82の出力より大きくして、第1ヒータ81の出力および第2ヒータ82の出力がそれぞれ一定に維持されると共に、各第3ヒータ83の出力を第1ヒータ81の出力と略同一にして、第1ヒータ81、第2ヒータ82、および各第3ヒータ83が作動する。この間、温度センサ85により、処理槽10に貯留された薬液の温度が検出され、この検出された温度に基づいて、各第3ヒータ83がON/OFFされて制御される。
【0053】
また、処理槽10に薬液が貯留された後、循環ポンプ33が駆動される。このことにより、外槽12にオーバーフローした薬液が、外槽12の排出口31から、循環ライン30を通って、処理槽10の供給口32に流れて処理槽10内に戻され、薬液が循環する。なお、循環ライン30を通る薬液は、温度コントローラ35により加熱され、処理槽10に戻る薬液が、温度低下することを防止している。
【0054】
このようにして、処理槽10に貯留された薬液のうち第1ヒータ81の側の部分の温度を、第2ヒータ82の側の部分の温度より高くしながら、薬液が、沸騰する温度(約160℃〜約180℃)まで加熱されて沸騰状態となる。
【0055】
次に、ウエハWが、加熱された薬液に、所定時間、浸漬される(ステップS3)。この場合、まず、図示しない搬送機構により搬送され、表面にシリコン窒化膜が形成された複数のウエハWが、ウエハボード20に受け取られて、ウエハボード20の保持棒21に起立して保持される。次に、図示しない駆動部が駆動されて、ウエハボード20が処理槽10内に搬入され、各ウエハWが薬液に浸漬される。
【0056】
ウエハWが薬液に浸漬されている間、上述したステップS2と同様にして、第1ヒータ81および第2ヒータ82が作動すると共に、第3ヒータ83が、温度センサ85により検出された薬液の温度に基づいて作動する。
【0057】
このようにして、各ウエハWの表面上のシリコン窒化膜が、エッチング処理されて、所望のパターンに形成される。
【0058】
ウエハWが薬液に浸漬されている間、ウエハボード20の背板22は、処理槽10の第1側壁10aに設けられた第1ヒータ81に近接し、保持棒21に保持されたウエハWと第1ヒータ81との間に介在されている。しかしながら、ウエハWを浸漬する前には、処理槽10に貯留された薬液のうち第1ヒータ81の側の部分は、第2ヒータ82の側の部分より温度が高くなっている。また、ウエハWが浸漬されている間、第1ヒータ81の出力が第2ヒータ82の出力より大きくなるように、第1ヒータ81および第2ヒータ82が作動している。このため、ウエハボード20が処理槽10内に搬入されて、ウエハWが薬液に浸漬されている場合においても、背板22の近傍で保持されているウエハWの周囲の薬液の温度が低下することを防止し、処理槽10内の薬液の温度および沸騰状態を均一にすることができる。
【0059】
ウエハWが薬液に浸漬されている間、循環ポンプ33が駆動されて、薬液が循環される。このことにより、ウエハWのシリコン窒化膜がエッチングされることにより発生したシリコンのパーティクルは、循環ライン30に設けられたフィルタ34により除去される。
【0060】
また、この間、外槽12に設けられた濃度センサ86により、処理槽10からオーバーフローした薬液にエッチング処理により溶解されているシリコンの濃度が検出される。この検出されたシリコンの濃度が所望の濃度に達した場合、以下のようにして、薬液中のシリコンの濃度を低下させる。すなわち、まず、排出開閉弁51が開いて、処理槽10に貯留されている薬液の一部が、排出ライン50を介して排出される。この際、処理槽10に貯留されている薬液の液面が低下する。次に、薬液の液面が所定位置まで低下すると、液面センサ87が、制御部90に検出信号を送信する。この液面センサ87からの検出信号に基づいて、制御部90は、排出開閉弁51を閉じると共に、薬液補充開閉弁72を開き、薬液収容槽70に収容されていた薬液が、薬液補充ライン71を通って処理槽10に補充(供給)される。このことにより、処理槽10に貯留されている薬液中のシリコンの濃度を低下させることができる。なお、薬液中のシリコンの濃度が所望の濃度より高い場合、制御部90は、希釈液開閉弁42を開き、希釈液供給源40から希釈液供給ライン41を通って希釈液を処理槽10に供給させて、処理槽10に貯留されている薬液中のシリコンの濃度を低下させるようにしても良い。
【0061】
ウエハWのエッチング処理が終了した後、図示しない駆動部によりウエハボード20が上昇して、エッチング処理されたウエハWが処理槽10から搬出される。その後、図示しない搬送機構に引き渡される。
【0062】
上述した工程を繰り返すことにより、処理槽10において、複数のウエハWを、順次、エッチング処理することができる。
【0063】
このように本実施の形態によれば、処理槽10に貯留された薬液は、第1ヒータ81の出力が第2ヒータ82の出力より大きくなるように、第1ヒータ81および第2ヒータ82により加熱されている。このことにより、エッチング処理時、ウエハボード20の保持棒21のうち背板22の近傍で保持されているウエハWの周囲の薬液の温度が低下することを防止し、処理槽10内の薬液の温度および沸騰状態を均一にすることができる。このため、各ウエハWのエッチングレートを均一にして、各ウエハWの表面上のシリコン窒化膜を、均一にエッチング処理することができる。すなわち、エッチング処理時に処理槽10内の薬液の温度および沸騰状態を均一にして、複数のウエハWを均一にエッチング処理することができる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、第1ヒータ81の出力および第2ヒータ82の出力がそれぞれ一定に維持されると共に、第3ヒータ83の出力を第1ヒータ81の出力と略同一とし、処理槽10に貯留された薬液の温度が沸騰する温度となるように第3ヒータ83が作動する。このことにより、ウエハWのエッチング処理時に、処理槽10に貯留された薬液の温度および沸騰状態を均一に維持することができる。さらに、第3ヒータ83は、温度センサ85により検出された処理槽10内の薬液の温度に基づいてONまたはOFFされるため、処理槽10に貯留された薬液を、精度良く、沸騰状態に維持することができる。
【0065】
以上、本発明による実施の形態について説明してきたが、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形も可能である。以下、代表的な変形例について説明する。
【0066】
本実施の形態においては、第1ヒータ81の出力および第2ヒータ82の出力をそれぞれ一定に維持すると共に、各第3ヒータ83の出力を、貯留されている薬液の温度が沸騰する温度となるようにON/OFFして制御する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各第3ヒータ83の出力を所定の値に一定に維持し、第1ヒータ81の出力を、第2ヒータ82の出力より大きくすると共に、貯留されている薬液の温度が所望の温度となるように第1ヒータ81および第2ヒータ82をON/OFFして制御するようにしても良い。この場合においても、ウエハWを薬液に浸漬させた場合に処理槽10に貯留されている薬液の温度および沸騰状態を均一に維持することができる。
また、この場合、第1ヒータ81および第2ヒータ82は、温度センサ85により検出された処理槽10内の薬液の温度に基づいてONまたはOFFして制御するようにしても良い。この場合、処理槽10に貯留された薬液を、精度良く、沸騰状態に維持することができる。
【0067】
また、本実施の形態においては、制御部90は、第3ヒータ83の出力が第1ヒータ81と略同一となるように、第1ヒータ81および第3ヒータ83を制御する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、制御部90が、第3ヒータ83の出力を第1ヒータ81の出力より大きくするように、第1ヒータ81および第3ヒータ83を制御するようにしても良い。このような場合、温度センサ85により検出された温度に基づいて制御される第3ヒータ83の出力が第1ヒータ81の出力より大きくなるため、処理槽10に貯留された薬液を、沸騰状態に、より一層精度良く維持することができる。
【0068】
また、本実施の形態においては、温度センサ85により検出された温度に基づいて、第3ヒータ83が制御される例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、温度センサ85を用いることなく、第3ヒータ83を作動させて、薬液を加熱するようにしても良い。この場合においても、処理槽10に貯留された薬液を加熱して沸騰状態とすることができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、外槽12に、オーバーフローした薬液の濃度を検出する濃度センサ86が設けられると共に、処理槽10内に、貯留されている薬液の液面を検出する液面センサ87が設けられて、薬液中のシリコンの濃度が調整可能に構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、濃度センサ86および液面センサ87の少なくとも一方を設けることなく、他の方法により薬液中のシリコンの濃度を調整するように構成しても良い。例えば、薬液中のシリコンの濃度が所定濃度範囲を超えるまでの処理回数、処理時間、または処理枚数を実験的に求めておき、この処理回数、処理時間、または処理枚数毎に薬液中のシリコン濃度を調整するようにしても良い。
【0070】
さらに、本実施の形態においては、加熱器80が、第1ヒータ81と第2ヒータ82とを有し、第1ヒータ81の出力が、第2ヒータ82の出力より大きくなっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、処理槽10の底板10eに設けられた第3ヒータ83を複数に分割し、このような第3ヒータ83のうち第1側壁10aの側の部分の出力を、第2側壁10bの側の部分の出力より大きくして、貯留された薬液を加熱するようにしても良い。この場合においても、ウエハボード20の保持棒21のうち背板22の近傍で保持されているウエハWの周囲の薬液の温度が低下することを防止し、エッチング処理時に処理槽10内の薬液の温度および沸騰状態を均一にすることができる。なお、処理槽10の第3側壁10cおよび第4側壁10dに設けられた各第3ヒータ83を複数に分割して、このような第3ヒータ83のうち第1側壁10aの側の部分の出力を、第2側壁10bの側の部分の出力より大きくして、貯留された薬液を加熱するようにしても良い。
【0071】
第2の実施の形態
次に、図5乃至図7により、本発明の第2の実施の形態における基板処理装置、基板処理方法、およびこの基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体について説明する。
【0072】
図5乃至図7に示す第2の実施の形態においては、保持溝の間に対応するように設けられた複数の基板位置供給孔と、保持溝のうち最も背部の側に形成された保持溝と一方の側壁との間に対応するように設けられた背部側供給孔と、を有する薬液供給部を備え、第1加熱器の出力が第2加熱器の出力より小さくなるように、第1加熱器および第2加熱器が制御されている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図5乃至図7において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0073】
図5および図6に示すように、処理槽10内には、薬液に浸漬されたウエハWに薬液を供給する薬液供給部100が設けられている。また、図6に示すように、ウエハボード20の保持棒21には、ウエハWを係合自在な複数の保持溝23が形成されており、各ウエハWを保持溝23に係合させて、ウエハWが保持されるようになっている。
【0074】
薬液供給部100は、処理槽10の対向する第3側壁10cおよび第4側壁10dに沿って略水平方向に延びる2つの薬液供給ノズル101と、各薬液供給ノズル101に設けられた複数のウエハ位置供給孔(基板位置供給孔)102および複数の背板側供給孔(背部側供給孔)103と、を有している。このうちウエハ位置供給孔102は、各薬液供給ノズル101においてウエハボード20の保持棒21に形成された保持溝23の間に対応するように設けられており、列状に配置されて、薬液に浸漬されたウエハWの間に薬液を吐出(供給)するようになっている。また、背板側供給孔103は、保持溝23のうち最も背板22の側に形成された保持溝23と第1側壁10aとの間に対応するように設けられており、列状に配置されて、最も背板22の側に形成された保持溝23に係合したウエハWと第1側壁10aとの間に薬液を供給するようになっている。なお、背板側供給孔103は、各薬液供給ノズル101に1つだけ設けるようにしてもよい。また、ウエハ位置供給孔102および背板側供給孔103は、ウエハWに向かって、図5に示すように、斜め上方に薬液を吐出するように構成されている。
【0075】
図5に示すように、本実施の形態における循環ライン30の一端は、外槽12の底部に設けられた排出口31に連結され、他端は、分岐されて、処理槽10内に設けられた薬液供給部100の各薬液供給ノズル101に連結されている。循環ライン30に設けられた循環ポンプ33は、外槽12の排出口31から各薬液供給ノズル101に薬液を送るようになっている。このことにより、外槽12にオーバーフローした薬液が、外槽12の排出口31から、循環ライン30を通って、薬液供給部100の各薬液供給ノズル101に流れて処理槽10内に戻され、薬液が循環する。この際、各薬液供給ノズル101に設けられたウエハ位置供給孔102から、ウエハWの間に薬液が供給されると共に、背板側供給孔103からウエハボード20の保持棒21に形成された複数の保持溝23のうち最も背板22の側の保持溝23に係合したウエハWと第1側壁10aとの間に薬液が供給される。なお、本実施の形態においては、排出ライン50は、処理層10に連結されており、処理層の薬液を交換する際などには、処理層10から薬液を排出することができるようになっている。
【0076】
本実施の形態においては、制御部90は、加熱器80の第1ヒータ81の出力を、第2ヒータ82の出力より小さくすると共に、第1ヒータ81の出力および第2ヒータ82の出力を一定に維持するように、第1ヒータ81および第2ヒータ82をそれぞれ制御する。とりわけ、第2ヒータ82に対する第1ヒータ81の出力は、30%〜50%となるように、第1ヒータ81および第2ヒータ82が制御されることが好ましい。そして、制御部90は、温度センサ85により検出された温度に基づいて、第3ヒータ83をONまたはOFFすることにより、第3ヒータ83を制御する。このようにして、処理槽10に貯留された薬液は、その温度が所望の温度、すなわち薬液が沸騰する温度(約160℃〜約180℃)となるように加熱される。また、制御部90は、第3ヒータ83の出力が第1ヒータ81の出力と略同一となるように、第1ヒータ81および第3ヒータ83を制御する。
【0077】
このように本実施の形態によれば、ウエハWが薬液に浸漬されている間、薬液供給部100の各薬液供給ノズル101に設けられた背板側供給孔103から、ウエハボード20の保持棒21に形成された複数の保持溝23のうち最も背板22の側の保持溝23に係合したウエハWと第1側壁10aとの間に薬液が供給される。このことにより、保持棒21に保持された複数のウエハWのうち、最も背板22の側に配置されたウエハWと第1側壁10aとの間に薬液を供給することができ、ウエハボード20の背板22の周囲の薬液の温度が低下することを防止し、処理槽10内の薬液の温度および沸騰状態を均一にすることができる。このため、背板22の側に位置するウエハWのエッチングレートを向上させることができる。この結果、各ウエハWのエッチングレートを均一にして、各ウエハWの表面上のシリコン窒化膜を、均一にエッチング処理することができる。すなわち、エッチング処理時に処理槽10内の薬液の温度および沸騰状態を均一にして、複数のウエハWを均一にエッチング処理することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、処理槽10に貯留された薬液は、第1ヒータ81の出力が第2ヒータ82の出力より小さくなるように、とりわけ、第2ヒータ82に対する第1ヒータ81の出力が、30〜50%となるように、第1ヒータ81および第2ヒータ82により加熱されている。このことにより、図7を用いて以下に述べるように、各ウエハWの表面上のシリコン窒化膜を、より一層均一にエッチング処理することができ、複数のウエハWをより一層均一にエッチング処理することができる。
【0079】
ここで、本実施の形態により薬液処理されたウエハWのエッチングの均一性とエッチング量を図7に示す。ここでは、第2ヒータ82に対する第1ヒータ81の出力の割合(α)が0%、30%、50%、70%となるそれぞれの場合において、ウエハボード20の保持棒21に保持された複数のウエハWのうちいくつかのウエハWにおけるエッチングの均一性とエッチング量とを示している。また、スロット1とは、保持棒21に形成された複数の保持溝23のうち、最も第2側壁10bの側に形成された保持溝23に係合したウエハWのデータを示しており、スロット25とは、複数の保持溝23のうち中央部に形成された保持溝23に係合したウエハWのデータを示しており、スロット50とは、複数の保持溝23のうち最も背板22の側に形成された保持溝23に係合したウエハWのデータを示している。また、WIWとは、ウエハWの表面上の複数の点におけるエッチング量の均一性を示している。
【0080】
図7によれば、第1ヒータ81の出力が第2ヒータ82の出力より小さくなる場合、とりわけ、とりわけ、αが30%〜50%である場合、各ウエハWのエッチングの均一性が向上していることが確認できる。また、一般にエッチングの均一性が向上する場合にはエッチング量が大きく低下する傾向があるにも関わらず、図7によれば、エッチングの均一性を向上しつつ、エッチング量の大きな低下を抑制していることが確認できる。なお、図7には、同一条件での薬液処理により得られた各ウエハWのエッチングの均一性およびエッチング量をデータ1およびデータ2として示しているが、これらデータ1およびデータ2によれば、エッチングの均一性の向上とエッチング量の低下抑制という効果の信頼性を確認することができる。
【0081】
なお、上述した第2の実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0082】
以上の説明においては、本発明による基板処理方法、この基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体92、および基板処理装置1を、半導体ウエハWのエッチング処理に適用した例を示している。しかしながらこのことに限られることはなく、LCD基板またはCD基板等、種々の基板等のエッチング処理に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 基板処理装置
10 処理槽
10a 第1側壁
10b 第2側壁
10c 第3側壁
10d 第4側壁
10e 底板
11 切欠溝
12 外槽
13 断熱壁
14 枠板
15 取付枠
20 ウエハボード
21 保持棒
22 背板
23 保持溝
30 循環ライン
31 排出口
32 供給口
33 循環ポンプ
34 フィルタ
35 温度コントローラ
40 希釈液供給源
41 希釈液供給ライン
42 希釈液開閉弁
50 排出ライン
51 排出開閉弁
60 整流板
61 長孔
70 薬液収容槽
71 薬液補充ライン
72 薬液補充開閉弁
80 加熱器
81 第1ヒータ
82 第2ヒータ
83 第3ヒータ
85 温度センサ
86 濃度センサ
87 液面センサ
90 制御部
91 入出力装置
92 記録媒体
100 薬液供給部
101 薬液供給ノズル
102 ウエハ位置供給孔
103 背板側供給孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の側壁を有し、薬液を貯留して複数の基板を薬液処理する処理槽と、
複数の前記基板を起立させて保持する保持部と、当該保持部に連結された背部であって、前記処理槽内に搬入された際に、当該保持部に保持された当該基板と当該処理槽の前記一対の側壁のうちの一方の側壁との間に介在される前記背部とを有し、当該保持部に保持された当該基板を薬液に浸漬させる基板保持機構と、
前記処理槽に設けられ、貯留された薬液を加熱する加熱器と、を備え、
前記加熱器は、前記処理層の前記一方の側壁に設けられた第1加熱器と、他方の側壁に設けられた第2加熱器と、を有し、
前記第1加熱器および前記第2加熱器に、制御部が接続され、
前記制御部は、前記第1加熱器の出力と前記第2加熱器の出力を個別に制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1加熱器の出力が前記第2加熱器の出力より大きくなるように、当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御し、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、
前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられ、 前記制御部は、前記第1加熱器の出力および前記第2加熱器の出力をそれぞれ一定に維持するように当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御すると共に、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように、前記第3加熱器を制御することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理槽に、貯留された薬液の温度を検出する温度検出器が設けられ、
前記制御部は、前記温度検出器により検出された温度に基づいて、前記第3加熱器を制御することを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、
前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられ、 前記制御部は、前記第3加熱器の出力を一定に維持するように、当該第3加熱器を制御すると共に、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように、前記第1加熱器および前記第2加熱器を制御することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理槽に、貯留された薬液の温度を検出する温度検出器が設けられ、
前記制御部は、前記温度検出器により検出された温度に基づいて、前記第1加熱器および前記第2加熱器を制御することを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力と略同一となるように、当該第1加熱器および当該第3加熱器を制御することを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力より大きくなるように、当該第1加熱器および当該第3加熱器を制御することを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記処理槽内に設けられ、薬液に浸漬された前記基板に薬液を供給する薬液供給部を更に備え、
前記基板保持機構の前記保持部に、前記基板を係合自在な複数の保持溝が形成され、
前記薬液供給部は、前記保持溝の間に対応するように設けられ、前記基板の間に薬液を供給する複数の基板位置供給孔と、前記保持溝のうち最も前記背部の側に形成された前記保持溝と前記一方の側壁との間に対応するように設けられ、最も前記背部側の前記保持溝に係合した前記基板と当該一方の側壁との間に薬液を供給する背部側供給孔と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1加熱器の出力が前記第2加熱器の出力より小さくなるように、当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御し、前記処理層に貯留された薬液が加熱されることを特徴とする請求項1または9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2加熱器に対する前記第1加熱器の出力が30%〜50%となるように、当該第1加熱器および当該第2加熱器を制御することを特徴とする請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
互いに対向する一対の側壁を有し、薬液を貯留して複数の基板を薬液処理する処理槽と、複数の前記基板を起立させて保持する保持部と、当該保持部に連結された背部であって、前記処理槽内に搬入された際に、当該保持部に保持された当該基板と当該処理槽の前記一対の側壁のうちの一方の側壁との間に介在される前記背部とを有し、当該保持部に保持された当該基板を薬液に浸漬させる基板保持機構と、前記処理槽に設けられ、貯留された薬液を加熱する加熱器とを備え、前記加熱器は、前記処理層の前記一方の側壁に設けられた第1加熱器と、他方の側壁に設けられた第2加熱器と、を有する、基板処理装置を用いて基板を処理する基板処理方法において、
前記処理槽に、薬液を貯留する工程と、
前記第1加熱器の出力と前記第2加熱器の出力を個別に制御して、前記処理槽に貯留された薬液を加熱する工程と、
前記基板保持機構の前記保持部に複数の前記基板を起立させて保持し、当該基板を前記処理槽に貯留された薬液に浸漬させる工程と、を備えたことを特徴とする基板処理方法。
【請求項13】
前記薬液を加熱する工程において、前記第1加熱器の出力を前記第2加熱器の出力より大きくして、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されることを特徴とする請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、
前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられており、
前記薬液を加熱する工程において、前記第1加熱器および前記第2加熱器の出力がそれぞれ一定に維持されると共に、前記第3加熱器が、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように作動することを特徴とする請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記薬液を加熱する工程において、前記処理槽に貯留された薬液の温度が検出され、当該検出された温度に基づいて、前記第3加熱器が作動することを特徴とする請求項14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記処理槽は、2つの他の側壁と底部とを更に有し、
前記処理槽の前記他の2つの側壁および前記底部に、第3加熱器がそれぞれ設けられており、
前記薬液を加熱する工程において、前記第3加熱器の出力が一定に維持されると共に、前記第1加熱器および前記第2加熱器が、前記処理槽に貯留された薬液の温度が所望の温度となるように作動することを特徴とする請求項13に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記薬液を加熱する工程において、前記処理槽に貯留された薬液の温度が検出され、当該検出された温度に基づいて、前記第1加熱器および前記第2加熱器が作動することを特徴とする請求項16に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記薬液を加熱する工程において、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力と略同一となることを特徴とする請求項14乃至17のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記薬液を加熱する工程において、前記第3加熱器の出力が前記第1加熱器の出力より大きくなることを特徴とする請求項14乃至17のいずれかに記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記処理槽内に、薬液に浸漬された前記基板に薬液を供給する薬液供給部が設けられ、
前記基板保持機構の前記保持部に、前記基板を係合自在な複数の保持溝が形成され、
前記薬液供給部は、前記保持溝の間に対応するように設けられ、前記基板の間に薬液を供給する複数の基板位置供給孔と、前記保持溝のうち最も前記背部の側に形成された前記保持溝と前記一方の側壁との間に対応するように設けられ、最も前記背部側の前記保持溝に係合した前記基板と当該一方の側壁との間に薬液を供給する背部側供給孔と、を有し、
基板を薬液に浸漬させる工程において、薬液は、薬液に浸漬された前記基板の間に供給されると共に、最も前記背部側の前記保持溝に係合した前記基板と前記一方の側壁との間に供給されることを特徴とする請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項21】
前記薬液を加熱する工程において、前記第1加熱器の出力を前記第2加熱器の出力より小さくして、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されることを特徴とする請求項12または20に記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記薬液を加熱する工程において、前記第2加熱器に対する前記第1加熱器の出力を30〜50%として、前記処理槽に貯留された薬液が加熱されることを特徴とする請求項21に記載の基板処理方法。
【請求項23】
互いに対向する一対の側壁を有し、薬液を貯留して複数の基板を薬液処理する処理槽と、複数の前記基板を起立させて保持する保持部と、当該保持部に連結された背部であって、前記処理槽内に搬入された際に、当該保持部に保持された当該基板と当該処理槽の前記一対の側壁のうちの一方の側壁との間に介在される前記背部とを有し、当該保持部に保持された当該基板を薬液に浸漬させる基板保持機構と、前記処理槽に設けられ、貯留された薬液を加熱する加熱器とを備え、前記加熱器は、前記処理層の前記一方の側壁に設けられた第1加熱器と、他方の側壁に設けられた第2加熱器と、を有する、基板処理装置を用いて基板を処理する基板処理方法を実行するためのコンピュータプログラムが記録された記録媒体であって、
この基板処理方法は、
前記処理槽に、薬液を貯留する工程と、
前記第1加熱器の出力と前記第2加熱器の出力を個別に制御して、前記処理槽に貯留された薬液を加熱する工程と、
前記基板保持機構の前記保持部に複数の前記基板を起立させて保持し、当該基板を前記処理槽に貯留された薬液に浸漬させる工程と、を備えたことを特徴とする記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−15490(P2012−15490A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106422(P2011−106422)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】