説明

基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体

【課題】配線パターンへのダメージを抑えつつ、硬化層が形成されたレジスト膜を除去することが可能な基板処理装置等を提供する。
【解決手段】硬化層を有するレジスト膜からなるマスクがその表面に形成された基板Wを処理する基板処理装置2において、基板保持部23は基板Wを裏面側から保持し、押圧部31には、この基板保持部23に保持された基板Wの硬化層を突き刺して損傷させるための多数の突起が設けられており、移動機構34、341は、基板Wの表面に対して前記突起を押し付けて硬化層に突き刺す押圧位置と、基板Wから退避させた退避位置との間で前記押圧部31を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入などにより硬化したレジスト膜を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンなどの半導体ウエハ(以下、ウエハという)にホウ素やリンなどの不純物を注入するイオン注入においては、レジスト膜などのマスクを形成することによりイオン注入を行う領域とイオン注入を行わない領域とを分けている。このときレジスト膜にイオンが衝突すると、レジスト膜を形成する分子から水素などが抜けて炭化することなどにより、その表面に硬化層が形成される。
【0003】
これらレジスト膜やその硬化層は、イオン注入処理の後、SPM液(Sulfuric acid-hydrogen Peroxide Mixture;濃硫酸と過酸化水素水の混合液)などにより溶解されウエハから除去されるが、ソース-ドレイン間の電気抵抗を下げることなどを目的として、注入されるイオン量の高濃度化が進んでいる。この結果、レジスト膜においても炭化が進行した硬い硬化層が形成されてしまい、従来のSPM液では除去することが困難となっている。
【0004】
このような除去しにくい硬化層が形成されたレジスト膜は、例えば120〜200℃に加熱して活性を高めたSPM液を用いて除去していたが、例えば20nmといった微細なパターンが形成されたウエハでは、パターン倒れや基板表面に露出しているシリコンや窒化シリコンなどがエッチングされてしまうフィルムロスを引き起こすため、高温のSPMを使用することは好ましくない。
【0005】
例えば特許文献1には、イオン注入を行って硬化層が形成されたレジストパターンの上から、保護用のレジスト膜を塗布してベーク処理を行い、この保護レジストを固化してからCMP(Chemical Mechanical Polishing)により硬化層を除去する技術が記載されている。しかしながら、当該手法では、レジスト膜の塗布装置、ベーク処理装置及びCMP装置と、これらの装置間でウエハを搬送する搬送機構など、硬化層を除去するのに多種の装置が必要となってしまい、処理コストが大きく上昇してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−60368号公報:段落0033〜0037、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配線パターンへのダメージを抑えつつ、硬化層が形成されたレジスト膜を除去することが可能な基板処理装置、基板処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基板処理装置は、硬化層を有するレジスト膜からなるマスクがその表面に形成された基板を処理する基板処理装置において、
基板を裏面側から保持するための基板保持部と、
この基板保持部に保持された基板の前記硬化層を突き刺して損傷させるための多数の突起が設けられた押圧部と、
前記押圧部を、基板の表面に対して相対的に押し付けて、前記突起を硬化層に突き刺す押圧位置と、基板から退避させた退避位置との間で移動させる移動機構と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記基板処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記突起により硬化層を突き刺して開けた孔を介してレジスト膜と接触させることにより、このレジスト膜を除去する処理液を、前記基板保持部に保持された基板の表面に供給するための処理液供給部を備えたこと。
(b)前記突起により硬化層を突き刺して開けた孔を介してレジスト膜と接触させることにより、このレジスト膜を酸化させて水溶化する酸性ガスを、前記基板保持部に保持された基板の表面に供給するためのガス供給部を備え、この酸性ガスにより水溶化されたレジスト膜に、前記処理液供給部からアルカリ性の処理液を供給してレジスト膜を除去すること。
(c)前記基板保持部は、鉛直軸周りに回転自在に構成され、この基板保持部に保持された基板を回転させ、前記処理液供給部より供給された処理液を当該基板の表面に広げてレジスト膜を除去すること。
(d)前記押圧部は、突起を加熱する加熱機構を備えること。
【0010】
(e)前記突起の高さは、レジスト膜の厚さの1/3以上、1/2以下の範囲内であること。
(f)前記押圧部は、前記突起の配置領域が硬化層を有するレジスト膜のマスクと少なくとも同等の広さであること。
(g)前記突起は、押圧部を構成する材料部材に形成され、前記突起の先端部に相当する位置に配置されたマスクの下方側にエッチング剤が回り込むように等方エッチングを行って形成されたものであること。
(h)前記突起は、前記押圧部の基板に押し付けられる面に微粒子を接着して形成されたものであること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧部に設けられた多数の突起によりレジスト膜の硬化層を突き刺すので、これらの突起が突き刺されて形成された孔を介し、後段の処理において供給される処理液をレジスト膜に直接供給することが可能となる。この結果、例えば高温に加熱した処理液などを用いなくても、炭化が進行した硬化層の下方側に形成されているレジスト膜を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本例に係わるレジスト除去ユニットで処理されるウエハの構成例を示す縦断側面図である。
【図2】前記レジスト除去ユニットを備えたウエハ処理システムを示す横断平面図である。
【図3】前記レジスト除去ユニットの構成を示す縦断側面図である。
【図4】前記レジスト除去ユニットへの処理液及び処理ガスの供給系統を示す説明図である。
【図5】前記レジスト除去ユニットの押圧部に設けられた押圧部材の突起の作成方を示す第1の説明図である。
【図6】前記押圧部材の突起の作成法を示す第2の説明図である。
【図7】前記押圧部材の突起の作成法を示す第3の説明図である。
【図8】前記レジスト除去ユニットの作用を示す第1の説明図である。
【図9】前記レジスト除去ユニットの作用を示す第2の説明図である。
【図10】ウエハに形成された硬化層を除去する動作を示す第1の説明図である。
【図11】前記硬化層を除去する動作を示す第2の説明図である。
【図12】前記硬化層を除去する動作を示す第3の説明図である。
【図13】前記硬化層を除去する動作を示す第4の説明図である。
【図14】前記硬化層を除去する動作を示す第5の説明図である。
【図15】前記硬化層を除去する動作を示す第6の説明図である。
【図16】前記硬化層を除去する動作を示す第7の説明図である。
【図17】他の例に係わる押圧部材の突起の作成法を示す第1の説明図である。
【図18】前記他の例に係わる押圧部材の突起の作成法を示す第2の説明図である。
【図19】前記他の例に係わる押圧部材の突起の作成法を示す第3の説明図である。
【図20】酸性ガスを用いたレジスト除去の例を示す説明図である。
【図21】押圧部の他の構成を示す平面図である。
【図22】押圧ユニットとレジスト除去ユニットが別々に設けられたウエハ処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板処理装置であるレジスト除去ユニット2を備えたウエハ処理システム1の構成を説明する前に、当該レジスト除去ユニット2を用いてレジスト膜の除去が行われるウエハW(基板)の構成例について図1を参照しながら簡単に説明しておく。図1に示したウエハWは、シリコン層81の上層側にポリシリコン層82が積層されており、このポリシリコン層82はトレンチ状にパターニングされていてシリコン層81の表面の一部が露出している。
【0014】
このようにシリコン層81、ポリシリコン層82が露出した領域の一部をレジスト膜で覆いイオン注入を行うと、表面が露出しているシリコン層81やポリシリコン層82には不純物が注入される一方、レジスト膜83で覆われている領域ではこのレジスト膜83に遮られて不純物はシリコン層81やポリシリコン層82に到達しない。このように下層側のシリコン層81やポリシリコン層82へのイオン注入を遮るレジスト膜83の表面では、打ち込まれたイオンによりレジストを構成する分子の水素が抜け出すなどして炭化が進行し、その表層側に硬化層84が形成される。
本実施の形態のレジスト除去ユニット2は、前記硬化層84が形成されたレジスト膜83を除去するために、硬化層84に孔を開ける機能を備えている。以下、レジスト除去ユニット2を備えたウエハ処理システム1の詳細な構成について説明する。
【0015】
図2の横断平面図に示すように、ウエハ処理システム1は、複数のウエハWを収容するFOUP100を載置する載置ブロック11と、載置ブロック11に載置されたFOUP100からのウエハWの搬入・搬出を行う搬入出ブロック12と、搬入出ブロック12と後段の処理ブロック14との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡しブロック13と、ウエハWの表面に形成された前述の硬化層84、レジスト膜83を除去する処理が行われる処理ブロック14とを備えている。
【0016】
載置ブロック11は、複数のウエハWを水平状態で収容するFOUP100を載置台111上に載置する。搬入出ブロック12は、ウエハWの搬送を行う。受け渡しブロック13は、ウエハWの受け渡しを行う。
【0017】
搬入出ブロック12は、第1のウエハ搬送機構121を有している。第1のウエハ搬送機構121は、ウエハWを保持する搬送アーム122、及び搬送アーム122を前後に移動させる機構を有している。また第1のウエハ搬送機構121は、FOUP100の配列方向に延びる水平ガイド123に沿って移動する機構、不図示の垂直ガイドに沿って移動する機構、水平面内で搬送アーム122を回転させる機構を有している。この第1のウエハ搬送機構121により、FOUP100と受け渡しブロック13との間でウエハWが搬送される。
【0018】
受け渡しブロック13は、複数枚のウエハWを載置可能な受け渡し棚131を有している。受け渡しブロック13では、この受け渡し棚131を介して搬入出ブロック12、処理ブロック14の搬送機構間(既述の第1のウエハ搬送機構121及び後述する第2のウエハ搬送機機構143間)でウエハWの受け渡しが行われるようになっている。
【0019】
処理ブロック14は、複数のレジスト除去ユニット2が配置された処理部141と、ウエハWの搬送が行われる搬送部142とを筐体内に収めた構成となっている。搬送部142は、受け渡しブロック13との接続部を前方として、前後方向に伸びる空間内に第2のウエハ搬送機機構143を配置してなる。第2のウエハ搬送機機構143は、ウエハWを保持する搬送アーム144、及び搬送アーム144を水平方向に移動させる機構を有している。また、第2のウエハ搬送機機構143は、前後方向に伸びる水平ガイド145に沿って移動する機構、垂直方向に設けられた不図示の垂直ガイドに沿って移動する機構、水平面内で搬送アーム144を回転させる機構を有している。この第2のウエハ搬送機機構143により、既述の受け渡し棚131と各レジスト除去ユニット2との間でウエハWの搬送が行われる。
【0020】
処理部141には、搬送部142を形成する空間が伸びる方向に沿って、複数台、例えば6台のレジスト除去ユニット2が横方向に並べて配置されている。この液処置部141は搬送部142を挟んで2列設けられており、本例のウエハ処理システム1は合計で12台のレジスト除去ユニット2を備えている。
【0021】
このウエハ処理システム1に設けられたレジスト除去ユニット2の構成について図3、図4を参照しながら説明する。図3に示すようにレジスト除去ユニット2は、レジスト膜83が形成されたウエハWの表面に、SPM液を供給して当該レジスト膜83を除去する機構を備えている。本機構の構成として、レジスト除去ユニット2はウエハWを吸着保持するスピンチャック23と、このスピンチャック23を下面側から支持して回転させる回転軸241と、この回転軸241内に貫挿され、搬送アーム144との間での受け渡し時にウエハWを昇降させるリフター242と、ウエハWの表面側にSPM液や酸性ガスを供給するためのノズル部27と、回転するウエハWから振り飛ばされたSPM液などを受け止めて外部へ排出するための内カップ22と、スピンチャック23や内カップ22を収容し、レジスト除去ユニット2内の雰囲気の排気が行われる外カップ21と、を備えている。
【0022】
スピンチャック23は、中央に開口部が設けられた円板状の部材であり、その上面には、ウエハWを裏面(下面)側から吸着保持するための真空ポンプなどに接続された不図示の吸引孔が開孔している。また、本例のスピンチャック23は、ウエハWの裏面全体を下方側から支持する支持板としての役割も果たすと共に、ウエハWの周縁部よりも径方向の外側へ広がっていて、後述する押圧ユニット部3のストッパー32を受け止めることもできる。スピンチャック23は本発明の基板保持部に相当している。
【0023】
スピンチャック23を下面側から支える回転軸241は、液処理部141内のベースプレート26上に設けられた軸受け部243に回転自在な状態で保持されされている。回転軸241は、その下端部がベースプレート26から下方側に突出しており、その下端部にはプーリー部254が形成されている。一方、回転軸241の下端部の側方位置にはモーター251が配設されていて、このモーター251の回転軸にもプーリー252が設けられている。そしてこれら2つのプーリー251、252に駆動ベルト253を捲回することにより回転軸241の回転機構が構成され、モーター251を駆動させることで回転軸241を所望の回転速度で回転させることができる。
【0024】
リフター242の上端面には、ウエハWを下面側から支持するための支持ピンが設けられている一方、その下端側にはリフター242を昇降させるための昇降モーター255が設けられている。そしてリフター242全体を上昇、下降させ、スピンチャック23の開口部からリフター242を突没させることにより、支持ピン上にウエハWを支持し、搬送アーム144との間でウエハWの受け渡しを行う位置と、スピンチャック23上の処理位置との間でウエハWを昇降させることができる。
【0025】
内カップ22は、スピンチャック23に保持されたウエハWを囲むように設けられた円環状の部材であり、底面に接続された排液用配管221を介して、内部のSPM液やリンス液を排出することができる。外カップ21は、内カップ22との間の隙間から流れ込んだ気流を排気する役割を果たし、その底面には排気用の排気ライン211が接続されている。外カップ21及び内カップ22の上面には、ウエハWよりも大口径の開口部が形成されており、リフター242に支持されたウエハWは、この開口部を介して上下方向に移動できる。
【0026】
ウエハWの上面にエッチング溶液を供給するノズル部27は、ノズルアーム271に支持されており、スピンチャック23に保持されたウエハWの上方の処理位置と、この処理位置から退避した退避位置との間で移動することができる。
【0027】
図4に示すようにノズル部27には、例えば80〜200℃の範囲の温度でSPM液を貯留する貯留タンクとその送液機構とを備えたSPM供給部41及び、DIWなどのリンス液を貯留する貯留タンクとその送液機構とを備えたリンス液供給部42に接続されている。SPM供給部41から供給されるSPMは、ウエハWの表面に形成されたレジスト膜83を溶解して、剥離、除去する役割を果たす。またリンス液供給部42から供給されるリンス液は、ウエハWから剥離されたレジスト膜83などを洗い流してウエハWの表面から除去する役割を果たす。図4中に示した410、420は、SPM液やリンス液の供給・停止時に開閉される開閉弁である。またSPM液やリンス液は本実施の形態の処理液に相当し、SPM供給部41やリンス液供給部42は処理液供給部に相当している。
【0028】
以上に説明した構成を備えたレジスト除去ユニット2は、多数の突起311が形成された押圧部31をウエハWの表面に向けて押し付ける押圧ユニット部3を備えている(図3)。押圧部31に形成された突起311は、レジスト膜83の表層側に形成された硬化層84に孔を開け、SPM液やリンス液をレジスト膜83に到達させやすくするために、前記硬化層84を突き刺して損傷させる役割を果たす。
【0029】
押圧ユニット部3は、前記多数の突起311が形成された押圧部31と、スピンチャック23に保持されたウエハWに対し、これら突起311を対向させるように押圧部31を保持する保持部33と、この保持部33を上面側から支持し、昇降させることによって押圧部31の昇降動作を実行するための駆動モーター34や伸縮ロッド341とを備えている。
【0030】
押圧部31は、ウエハWのデバイスに対して汚染や性状変化などを引き起こさない材料、例えばシリコンや窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)などにより構成される板状の部材である。図10に示すように、押圧部31の下面には、剣山状の多数の突起311が形成されており、スピンチャック23に保持されたウエハWに対してこれらの突起311を対向させるように押圧部31は保持部33に保持されている。
【0031】
各突起311は、イオン注入が行われてレジスト膜83が形成される前のレジスト膜の厚さに対して例えば1/3以上、1/2以下の範囲内の高さを有している。このように、レジスト膜の厚さ(図1に示したようにイオン注入後、硬化層84が形成された後は、レジスト膜83と硬化層84との合計の厚さ)よりも突起311の方が短くなっていることにより、突起311によってウエハWに形成されるデバイス構造を傷付けないようになっている。ウエハWに塗布されるレジスト膜の厚さによって突起311の高さは適宜変更し得るが、例えばレジスト膜の厚さが2000〜5000Åである場合には、突起311は1000〜3000Å程度の高さとなる。
【0032】
本例の押圧部31は、ウエハWに対向する領域の全面に、多数の突起311が形成されており、ウエハWどの領域にレジスト膜83が形成されている場合であっても、その表層側に形成された硬化層84を突き刺して、硬化層84に孔を開けることができるようになっている。ここで「多数の突起311」とは、ウエハWの表面の一部の領域にレジスト膜83が形成されている場合であっても、この一部の領域のレジスト膜83に複数個の突起311を突き刺して孔を開け、SPM液を接触させてレジスト膜83を除去することが可能な個数の突起311が形成されていれば、特定の本数に限定されるものではない。一例を挙げると、例えば0.5〜1μm四方の領域内に1個以上の突起311を設ける場合などが考えられる。また、突起311は、ウエハWの全面に対向するように設ける場合に限らず、前記突起311の配置領域が硬化層84を有するレジスト膜83のマスクと少なくとも同等の広さを有し、この硬化層84に対向するように配置されていればよい。
【0033】
押圧部31に多数の突起311を形成する手法の一例を挙げると、突起311を形成する材料部材301を用意し、その一面側の突起311の先端部に相当する位置に、小さな例えば円板状のレジスト膜302をパターニングする(図5)。そしてエッチング溶液(例えばシリコンに対してはフッ酸と硝酸との混合液、SiNに対してはフッ酸)を用いた等方性エッチングを行うと(図6)、レジスト膜302の下面側中心位置に先端部を有するほぼ円錐形状の突起311をパターニングすることができる(図7)。
【0034】
かかる構成を備えた押圧部31は、ウエハWの表面に対して突起311の先端部を対向させた状態で保持部33に保持される。また、保持部33には押圧部31を例えば70〜140℃の範囲の100℃に加熱する加熱機構35が設けられている。加熱機構35は、例えば抵抗発熱体などから構成され、電力供給部36に接続されていて、押圧部31の温度を計測する不図示の温度計による温度検出結果に応じて加熱機構35に供給する電力を増減することができるようになっている。
【0035】
保持部33の上面側には、駆動モーター34により伸縮する伸縮ロッド341が接続されており、この伸縮ロッド341を伸縮させることにより、押圧部31をウエハWの表面に押し付けて、突起311をウエハW表面の駆動モーター34に突き刺す押圧位置と、この押圧位置より上方側に退避させた退避位置との間で押圧部31を昇降させることができる。駆動モーター34や伸縮ロッド341は、押圧部31を移動させる本実施の形態の移動機構を構成している。このように、本例では押圧部31を移動機構により移動させる構成を採用しているが、スピンチャック24に保持されたウエハWを押圧部31に向けて昇降させてもよく、押圧部31とウエハWとが相対的に移動可能となっていればよい。
【0036】
この駆動モーター34は、例えば予め設定された高さの押圧位置にて下降動作を停止することが可能であり、押圧部31にてウエハWに過度の力を加えないようになっている。このとき、スピンチャック23上のウエハWから保持部33が押し返される力を検出する圧力センサなどを設け、予め設定された大きさ以上の力が押圧部31からウエハWに加わったら、押圧部31の下降を停止するようにしてもよい。
【0037】
図中、保持部33の下面に設けられている32は、押圧部31(ウエハW)の外周側を囲むように設けられ、弾性体などにより構成されたストッパーである。ストッパー32は、保持部33とスピンチャック23との間に挟まれることにより、ウエハWと押圧部31との間に予め設定された幅の隙間を形成する役割を果たし、押圧部31による押圧位置を調節する駆動モーター34とは独立して押圧部31からウエハWを保護している。
【0038】
以上に説明した構成を備えたウエハ処理システム1及びレジスト除去ユニット2は、図2、図3、図4に示すように制御部5が接続されている。制御部5は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部にはウエハ処理システム1の作用、つまり、ウエハ処理システム1内にウエハWを搬入し、各レジスト除去ユニット2でレジスト膜の除去を行ってからウエハWを搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0039】
特に本例の制御部5は、図3に示すように押圧部31の駆動モーター34や各種モーター251、255、加熱機構35の電力供給部36に接続され、また図4に示すようにSPM供給部41やリンス液供給部42及びその開閉弁410、420と接続されている。これにより制御部5は、押圧部31を押圧位置まで降下させて突起311をウエハW表面の硬化層84に突き刺し、ノズル部27からSPM液やリンス液を供給してレジスト膜83及び硬化層84の除去を実行するための制御信号を各部に出力する役割を果たす。
【0040】
以上に説明した構成を備えたウエハ処理システム1の作用について説明すると、まず載置ブロック11に載置されたFOUP100から第1のウエハ搬送機構121により1枚のウエハWを取り出して受け渡し棚131に載置し、この動作を連続的に行う。受け渡し棚131に載置されたウエハWは、搬送部142内の第2のウエハ搬送機機構143により順次搬送されて、いずれかのレジスト除去ユニット2に搬入され、スピンチャック23に保持される。
【0041】
このとき図8に示すように、押圧部31は退避位置まで退避し、例えば100℃に加熱された状態で待機している。また、ノズル部27についても退避位置まで退避し、押圧部31の昇降動作の際にノズル部27やノズルアーム271が干渉しない状態となっている。
【0042】
こうして押圧部31を降下させることが可能になったら、スピンチャック23が回転しないように固定した状態でウエハWを保持し、押圧位置まで押圧部31を降下させる(図9)。この結果、図10に示すように突起311の先端部をウエハWの表面に向けて押圧部31が降下し、押圧位置に到達すると、ウエハWの表面に対して押圧部31が押し付けられることにより多数の突起311がウエハWの表面の硬化層84に突き刺さる(図11)。また、このとき押圧部31が加熱されていることにより、各突起311も加熱されて硬化層84に突き刺さり易い状態となっている。なお、図10〜図16では保持部33やスピンチャック23などを省略して示してある。
【0043】
このとき、押圧部31の押圧位置は、突起311の先端部が硬化層84の上面よりも下方側、且つ、デバイスを構成するポリシリコン層82やシリコン層81まで到達しない位置に設定されており、ウエハWのデバイスを傷付けずに突起311で硬化層84を突き刺すことができる。
【0044】
また、通常の場合硬化層84の厚さは、図11に示すレジスト膜83と硬化層84の合計の高さ「h(本例ではポリシリコン層82のトレンチ内に入り込んだレジストの高さを除いてある)」の1/3よりも薄いので、突起311の高さを前記「h」の1/3以上、1/2以下の範囲とすることにより、突起311で硬化層84を突き刺したとき、硬化層84を貫通する孔を開けることができる。但し、突起311は硬化層84を必ずしも貫通しなくてもよい。多数の突起311で硬化層84を突き刺すことにより、例えば硬化層84に亀裂を発生させ、この亀裂を介してSPM液をレジスト膜83に到達させることもできるからである。
【0045】
こうして押圧位置まで降下させた突起311にてウエハW表面の硬化層84を突き刺したら、保持部33を上昇させて押圧部31を退避位置まで退避させる(図8)。この結果、図12に示すように、硬化層84には、当該硬化層84を貫通する貫通孔840が形成される。しかる後、図4に示すようにノズル部27を処理位置まで移動させ、スピンチャック23を回転させ、ウエハWを回転させながらSPM供給部41よりSPM液を供給すると、ウエハWの表面全体にSPM液が広がる。
【0046】
ウエハWの表面に供給されたSPM液は、硬化層84に多数形成された貫通孔840を介してレジスト膜83に到達してこれを溶解する。レジスト膜83の溶解が進行すると、図13に示すようにレジスト膜83に亀裂が入りはじめ、レジスト膜83や硬化層84が粉々になっていく。そして、さらにSPM液の供給を続けると、粉々になったレジスト膜83や硬化層84が剥がれ落ち、ウエハWの表面から除去されていく(図14)。
【0047】
こうして予め設定した時間だけSPM液の供給を行ったら、ウエハWの回転を継続したまま処理液をリンス液に切り替えて(図15)、ウエハWの表面に残存しているレジスト膜83や硬化層84のかけらを洗い流す。しかる後、ウエハWの回転を継続しつつ、リンス液の供給を停止してスピン乾燥を行い、ウエハWの表面から処理液を除去する。またこのスピン乾燥に際しては、不図示のIPA供給部から供給されたIPA(IsoPropyl Alcohol)がノズル部27を介してウエハWの表面に所定量だけ供給され、IPA乾燥を行うことによりウォーターマークの形成が防止される。
【0048】
こうしてウエハWの表面に形成されたレジスト膜83や硬化層84を除去する一連の動作が完了すると、処理位置からノズル部27を退避させ、搬送アーム144がレジスト除去ユニット2内に進入してウエハWの受け渡しが行われる。搬送アーム144は受け取ったウエハWをレジスト除去ユニット2から搬出して受け渡し棚131に載置し、第1のウエハ搬送機構121は受け渡し棚131からFOUP100にウエハWを戻す。こうしてウエハ処理システム1に設けられた複数のレジスト除去ユニット2により、複数枚のウエハWに対するレジスト膜83及び硬化層84の除去処理が順次行われる。
【0049】
本実施の形態に係わる液処理ユニット2によれば、押圧部31に設けられた多数の突起311によりレジスト膜83の硬化層84を突き刺し、貫通孔840を形成するので、ノズル部27から供給されるSPM液を、これらの貫通孔840を介してレジスト膜83に直接供給することが可能となる。この結果、例えば高温に加熱した処理液などを用いなくても、炭化が進行した硬化層84の下方側に形成されているレジスト膜83を除去することができ、ウエハWに形成されるデバイスへのダメージを抑えることができる。
【0050】
ここで、押圧部31に突起311を形成する手法は、図5〜図7に示した等方エッチングを利用する手法に限定されない。例えば図17に示すように、凹凸を有するSi(SiN、SiC)の微粒子312を板面上に均等に撒き、下面側に接着剤などの薄い接着層313が形成された押圧部31を押し付け(図18)、これら微粒子312の接着層313から突出した部分を突起311としてもよい(図19)。微粒子312の凹凸で硬化層84を突き刺すことにより、硬化層84に孔を開けたり、亀裂を生じさせたりすることができる。
【0051】
また、レジストの除去はSPM液を利用する場合に限定されるものではなく、例えばガスを利用してもよい。図20に示したレジスト除去ユニット2aは、処理液ノズル27aと酸性ガスノズル27bとの2種類のノズルを備えている。酸性ガスノズル27bには、酸素中で放電を行うことなどによりオゾンガスを発生させる不図示のオゾンガス発生部と、水蒸気を発生させる不図示の水蒸気発生部と、これらオゾンガスと水蒸気とを窒素ガスなどで希釈する希釈調製部と、を備えた酸性ガス供給部43が接続されている。酸性ガス供給部43から供給されるオゾンガスと水蒸気とを含む酸性ガスは、突起311によって硬化層84の表面に形成された貫通孔840や亀裂を介してレジスト膜に浸透し、レジスト膜を水溶化する。
【0052】
一方、処理液ノズル27aには、既述のリンス液供給部42と並列にアルカリ性溶液供給部44が接続されている。アルカリ性溶液供給部44には、酸性ガスにより水溶化したレジスト膜を溶解するアルカリ性の処理液である、例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)やSC-1(アンモニアと過酸化水素水との混合液)などを貯留する貯留タンクやその送液機構が設けられている。
【0053】
このレジスト除去ユニット2aでは、突起311が突き刺された後の硬化層84に、ウエハWを回転させながら酸性ガスノズル27bより酸性ガスを供給してレジスト膜83を水溶化し、しかる後、アルカリ性の処理液でレジスト膜83を溶解する処理を行うことにより、レジスト膜83や硬化層84を粉々にしてウエハWの表面から除去する。アルカリ性の処理液による処理が行われた後は、リンス液による洗浄やIPAを利用した乾燥を行ってウエハWの処理を終える。
そしてウエハWへの処理液の供給は、ウエハWを回転させることによって処理液を拡げる回転塗布に限らず、ノズル27を移動させながらウエハWに処理液を供給するスキャン塗布であってもよい。
【0054】
このほか、押圧部31はウエハWの全面を覆うことができるように形成する場合に限定されない。保持部33を下方側から仰視した平面図である図21に示した例では、突起311が形成された押圧部31は、ウエハWの一部のみを覆うことが可能な扇形に形成されている。このような場合であっても、スピンチャック24上に保持されたウエハWを小刻みに回転させながら、回転動作毎にウエハWに対して押圧部31を押し付ける動作を繰り返すことにより、ウエハWの表面に形成された硬化層84に対して突起311を突き刺す動作をウエハWの表面全体に満遍なく実行することができる。
【0055】
また、図3や図4、図20に示したレジスト除去ユニット2、2aでは、ウエハWに押圧部31を押し付ける押圧ユニット部3と、処理液や酸性ガスなどによる処理が行われるユニットとを一体に構成した例を示したが、これらのユニットは別々に構成してもよい。図22には、ウエハWを保持する固定台6を備えた押圧ユニット3と、処理液の供給によるレジスト膜83の除去が行われるレジスト除去ユニット20とを別々に構成し、ユニット3、20間でウエハWを搬送する例を示している。図22に示した構成に含まれている、レジスト膜の除去機能を有していない押圧ユニット3についても、本発明の基板処理装置に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
W ウエハ
1 ウエハ処理システム
2、2a レジスト除去ユニット
3 押圧ユニット部(押圧ユニット)
31 押圧部
311 突起
34 駆動モーター
341 伸縮ロッド
35 加熱機構
41 SPM供給部
42 リンス液供給部
43 酸性ガス供給部
44 アルカリ性溶液供給部
81 シリコン層
82 ポリシリコン層
83 レジスト膜
84 硬化層
840 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化層を有するレジスト膜からなるマスクがその表面に形成された基板を処理する基板処理装置において、
基板を裏面側から保持するための基板保持部と、
この基板保持部に保持された基板の前記硬化層を突き刺して損傷させるための多数の突起が設けられた押圧部と、
前記押圧部を、基板の表面に対して相対的に押し付けて、前記突起を硬化層に突き刺す押圧位置と、基板から退避させた退避位置との間で移動させる移動機構と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記突起により硬化層を突き刺して開けた孔を介してレジスト膜と接触させることにより、このレジスト膜を除去する処理液を、前記基板保持部に保持された基板の表面に供給するための処理液供給部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記突起により硬化層を突き刺して開けた孔を介してレジスト膜と接触させることにより、このレジスト膜を酸化させて水溶化する酸性ガスを、前記基板保持部に保持された基板の表面に供給するためのガス供給部を備え、この酸性ガスにより水溶化されたレジスト膜に、前記処理液供給部からアルカリ性の処理液を供給してレジスト膜を除去することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板保持部は、鉛直軸周りに回転自在に構成され、この基板保持部に保持された基板を回転させ、前記処理液供給部より供給された処理液を当該基板の表面に広げてレジスト膜を除去することを特徴とする請求項2または3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記押圧部は、突起を加熱する加熱機構を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記突起の高さは、レジスト膜の厚さの1/3以上、1/2以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記押圧部は、前記突起の配置領域が硬化層を有するレジスト膜のマスクと少なくとも同等の広さであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記突起は、押圧部を構成する材料部材に形成され、前記突起の先端部に相当する位置に配置されたマスクの下方側にエッチング剤が回り込むように等方エッチングを行って形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記突起は、前記押圧部の基板に押し付けられる面に微粒子を接着して形成されたものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項10】
硬化層を有するレジスト膜からなるマスクがその表面に形成された基板を処理する基板処理方法において、
多数の突起が設けられた押圧部材を基板の表面に対して押し付けて、これらの突起により硬化層を突き刺して損傷させる工程を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
前記基板の表面に処理液を供給し、前記突起により硬化層を突き刺して開けた孔を介して前記レジスト膜と当該処理液とを接触させ、このレジスト膜を除去する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記基板の表面に酸性ガスを供給し、前記突起により硬化層を突き刺して開けた孔を介して前記レジスト膜と当該酸性ガスとを接触させ、このレジスト膜を水溶化する工程と、
この酸性ガスにより水溶化されたレジスト膜に、アルカリ性の処理液を供給してレジスト膜を除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
硬化層を有するレジスト膜からなるマスクがその表面に形成された基板を処理する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項10ないし12のいずれか一つに記載された基板処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−169474(P2012−169474A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29614(P2011−29614)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】