説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板の上面に極めて薄い処理液の液膜を保持しつつ、基板に処理液による処理を施すことができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】スピンチャック2により保持されたウエハWの上面に対向棒14が対向配置される。対向棒14はアーム15の支持ブラケットに、鉛直方向への移動が許容された状態で支持されている。対向棒14が、スピンチャック2により回転されるウエハWの上面に近接されて、ウエハWの上面に保持される薬液の液膜に接触すると、薬液の液膜から対向棒14に与えられる揚力により、対向棒14に鉛直上向きの離反方向力が作用し、対向棒14はアーム15の支持ブラケットに対して鉛直上向きに相対変位する。対向棒14は、その離反方向力と対向棒14に働く重力とが釣り合う位置に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して処理液を用いた処理を施すための基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板に対して処理液を用いた処理が行われる。たとえば、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、基板を水平な姿勢に保持して回転させるスピンチャックと、基板の表面(処理対象面)に処理液を供給するためのノズルとを備えている。基板は、その表面を上方に向けた状態でスピンチャックに保持される。そして、スピンチャックにより基板が回転されつつ、その基板の表面の中央部にノズルから処理液が供給される。基板の表面に供給された処理液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の表面上を中央部から周縁部に向けて拡がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−78368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の上面の全域が処理液によって確実に覆われるようにするためには、基板に供給される処理液の流量をある程度多くしておかなければならない。そのため、1枚の処理に要する処理液量が多くなり、それに応じて処理コストが高くつく。
そこで、前記特許文献1に開示されている実施形態のように、基板の上面に処理液を供給する一方で、当該上面の全域を覆う対向板を基板上面に近接して対向配置させ、この対向部材と基板表面との間に、処理液の液膜を保持することが考えられる。この場合、液膜を形成している処理液が対向板および基板の間を伝って回転半径方向の外方に拡がる。これにより、基板の上面の全域に処理液が行き渡り、当該上面の全域で薄い処理液の液膜を保持することができる。
【0005】
基板に供給される処理液の流量を抑制するためには、基板の上面に形成される処理液の液膜ができるだけ薄いことが望ましい。すなわち、対向板と基板の上面との間隔は、できるだけ微小であることが望ましい。
しかしながら、基板の回転時には基板が上下方向に振れるおそれがあるので、対向板を近接させるとしても、対向板と基板との間の間隔には限界値がある。すなわち、基板の上面に保持される処理液の液膜の厚みにも限界がある。具体的には、コンマ数ミリ台の間隙を維持しようとしても、基板が上下に振れることによって、その間隙を維持することができない。また、間隙が変化する結果として、対向板と基板上面との間の薄い液膜に破れが生じ、基板上面を覆った状態を維持できなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、この発明の目的は、基板の上面に処理液の薄い液膜を確実に保持することができ、これにより、処理液消費量を低減しつつ高品質な基板処理を実現できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を水平姿勢に保持するための基板保持手段(2)と、前記基板保持手段に保持された基板を鉛直軸線まわりに回転させる回転手段(4)と、前記基板保持手段により保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給手段(3)と、前記基板保持手段により保持された基板の上面に形成される前記処理液の液膜に接して当該液膜から揚力を受け得るように当該上面から間隔(S)を隔てて対向配置される対向部材(14)と、前記対向部材を支持するための支持部材(20)と、前記対向部材を、鉛直方向に沿う相対変位が可能な状態で前記支持部材に保持させる対向部材保持機構(44)とを含む、基板処理装置(1;100)である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、基板の上面に処理液が供給され、当該上面に処理液の液膜が形成される。この処理液の液膜は、基板の回転に伴って回転する。したがって、対向部材が処理液の液膜に接した状態では、対向部材は、当該液膜を形成する処理液の相対的な流れに接し、当該液膜を形成する処理液を押し退ける。その反作用として、対向部材は処理液の液膜から揚力、すなわち基板の上面から離反する方向の力(離反方向力)を受ける。
【0009】
対向部材は支持部材に昇降可能に保持されている。処理液の液膜と対向部材との接触による離反方向力を受けて、対向部材は、支持部材に対して、上方に向けて相対変位しようとする。対向部材に作用する離反方向力、すなわち対向部材が処理液の液膜から受ける揚力は、対向部材が基板の上面に近づくほど大きくなる。したがって、対向部材に作用する重力などの基板の上面に接近する方向の力(接近方向力)と、対向部材に作用する離反方向力とが釣り合う位置に対向部材が保持される。このため、対向部材と基板の上面とを極めて微小な間隔を隔てて対向配置させることができる。しかも、基板の反り等の変形により、基板の上面が上下に振れれば、それに応じて対向部材も上下動するから、基板の上面と対向部材との間隙は、基板上面の上下変位によらずに保持される。そのため、当該間隙に処理液の液膜が確実に保持されるから、当該液膜によって基板の上面を確実に覆うことができる。したがって、基板の上面に処理液の薄い液膜を確実に保持することができるから、小流量で処理液を供給しつつ、基板の上面の広範囲に処理液を行き渡らせることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記対向部材保持機構が、前記支持部材と前記対向部材との間に介装された弾性体(45;101)を含む、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、弾性体の変形によって、支持部材に対する対向部材の相対変位が許容される。そして、対向部材が支持部材に対して上方に向けて相対変位し、弾性体が変形すると、この弾性体の変形に伴う復元力が接近方向力となって対向部材に作用するようになる。このようにして、弾性体の使用により、対向部材保持機構の構成を簡単にすることができる。
【0011】
弾性体としては、ベローズ、コイルばね、板ばねおよび皿ばねなどのばね部材を用いることができる。「ベローズ」とは、弾性的に伸縮可能な蛇腹状の筒体のことをいう。
請求項3記載の発明は、前記対向部材が、前記基板保持手段に保持された基板の回転半径方向に沿って延びる棒状の基板対向領域(43)を有している、請求項1または2記載の基板処理装置である。
【0012】
この発明によれば、対向部材の基板対向領域が、基板回転半径方向に沿って延びている。一方、基板の上面に供給された処理液は、基板の回転に伴って、基板の回転方向に沿いつつも、基板の外方に向けて移動する。そのため、対向部材の基板対向領域の延びる方向は、処理液の流れの向きと交差しており、処理液の流れによって生じる力のベクトル成分のうち、対向部材の基板対向領域の延びる方向に直交する力のベクトル成分は、所定の値を有している(ゼロではない)。したがって、対向部材の長手方向の広範囲で、対向部材が処理液の液膜から揚力を受ける。これにより、対向部材に安定した離反方向力を作用させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記対向部材が、前記基板保持手段に保持された基板の回転中心から当該基板の周縁部まで延びる基板対向領域(43)を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、対向部材の基板対向領域が、基板の回転中心から基板の周縁部まで延びている。このため、基板の回転により、基板の上面の全域に極めて薄い処理液の液膜を保持することができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記基板対向領域が、前記基板保持手段に保持された基板の上面と対向し、当該基板の回転方向の上流側に向かうに従って当該基板の上面から離反する傾斜面を有する、請求項3または4記載の基板処理装置である。
この発明によれば、基板の回転に伴って、対向部材は基板の上面の液膜に対してその回転方向の上流側へ移動する。したがって、基板対向領域に、基板の回転方向の上流側に向かうに従って基板の上面から離反する傾斜面を形成することにより、処理液の液膜を対向部材と基板の上面との間にスムーズに入り込ませることができる。
【0015】
また、傾斜面が、基板の回転方向の上流側に向かうに従って基板の上面から離反している。そのため、対向部材と処理液の液膜との接触時に、対向部材が当該処理液の液膜から安定した揚力を受ける。したがって、対向部材に作用する離反作用力を安定化できるから、対向部材と基板との間の間隙をより一層安定化できる。なお、前記傾斜面は平面であってもよいし、凸状の曲面であってもよい。
【0016】
請求項6記載の発明は、前記処理液供給手段が、前記基板保持手段に保持される基板の上面において前記対向部材が対向する領域の上流側に向けて処理液を吐出するノズル(3)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、基板の上面には、対向部材が対向する領域よりも上流側に、ノズルからの処理液が供給される。これにより、基板の上面に供給された処理液が、その供給直後に対向部材と基板との間に液膜を形成することになる。その結果、効率的な基板処理が可能となる。
【0017】
請求項7記載の発明は、基板(W)を水平姿勢に保持して回転させる基板保持回転工程と、基板の上面に処理液を供給する処理液供給工程(S6)と、鉛直方向に沿う相対変位が可能な状態で支持部材に保持された対向部材(14)を、基板の上面に形成される前記処理液の液膜に接して当該液膜から揚力を受け得るように当該上面から間隔を隔てて対向配置させる対向部材配置工程(S5)とを含む、基板処理方法である。
【0018】
この発明によれば、請求項1の発明に関連して述べた作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を図解的に示す図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】図1に示すアームの先端部および対向棒の構成を示す断面図である。
【図4】図3の切断面線IV−IVから見た断面図である。
【図5】図3の切断面線V−Vから見た断面図である。
【図6】図1に示す基板処理装置における薬液処理時の様子を図解した図である。
【図7】図1に示す対向棒が近接位置にあるときの様子を示す、ウエハの上方から見た図解的な平面図である。
【図8】図1に示す基板処理装置の処理例を示す工程図である。
【図9】図8の処理の様子を説明するための側面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の構成を示す図解的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の構成を図解的に示す図である。図2は、基板処理装置1の概略構成を示す平面図である。
基板処理装置1は、たとえば基板の一例としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)Wの表面に処理液(薬液および純水(脱イオン水))による処理を施すための枚葉式の装置である。
【0021】
基板処理装置1は、隔壁(図示せず)により区画された処理室80内に、ウエハWを水平姿勢に保持して、回転させるスピンチャック(基板保持手段)2と、スピンチャック2に保持されたウエハWの上面(表面)に処理液を供給するためのノズル3とを備えている。
スピンチャック2は、モータ(回転手段)4と、このモータ4の駆動軸と一体化されたスピン軸5と、スピン軸5の上端にほぼ水平に取り付けられた円板状のスピンベース6と、スピンベース6の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられた複数個の挟持部材7とを備えている。
【0022】
複数個の挟持部材7により、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持することができる。この状態で、モータ4が駆動されると、その駆動力によって、そのスピンベース6とともに、ウエハWがほぼ水平な姿勢を保った状態でスピン軸5の中心軸線まわりに回転される。
ノズル3には、薬液供給管8および純水供給管9が接続されている。薬液供給管8の途中部には、薬液流量調節バルブ10および薬液バルブ11が、ノズル3側からこの順に介装されている。薬液供給管8に供給される薬液として、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)、塩酸、リン酸、酢酸、アンモニア、過酸化水素水、クエン酸、蓚酸およびTMAHなどを例示することができる。純水供給管9の途中部には、純水流量調節バルブ12および純水バルブ13が、ノズル3側からこの順に介装されている。
【0023】
これにより、純水バルブ13を閉じて、薬液バルブ11を開くことによって、薬液供給源からの薬液を、薬液供給管8を通してノズル3に供給することができる。また、薬液バルブ11を閉じて、純水バルブ13を開くことにより、純水供給源からの純水を、純水供給管9を通してノズル3に供給することができる。
また、スピンチャック2の上方には、対向部材の一例としての棒状の対向棒14が設けられている。対向棒14は、ウエハWの径の半分の長さを有しており、スピンチャック2の上方で水平に延びるアーム15の先端部に取り付けられている。アーム15の先端部には、また、ノズル3が取り付けられている。アーム15は、スピンチャック2の側方でほぼ鉛直に延びたアーム支持軸19に支持されている。アーム支持軸19には、サーボモータやボールねじ機構などを含むアーム昇降駆動機構(図1参照)16およびモータなどを含むアーム揺動駆動機構(図1参照)17が結合されている。アーム揺動駆動機構17により、アーム15をスピンチャック2の側方に設定された軸線を中心に水平面内で揺動させることができる。アーム15の揺動に伴って、対向棒14およびノズル3がスピンチャック2の上方で水平移動する。また、アーム昇降駆動機構16により、アーム15を昇降させることができる。アーム15の昇降に伴って、対向棒14およびノズル3が昇降する。このように、アーム昇降駆動機構16は、対向棒14およびノズル3をウエハWに接近/離反させるための接離駆動機構を構成している。
【0024】
ウエハWに対する処理時には、アーム15の揺動により、対向棒14がウエハWの上面に対向する所定の対向位置(上位置および近接位置。図2に太い破線で図示)に配置される。この対向位置では、対向棒14はウエハWの回転中心Cから周縁部まで、ウエハWの回転半径方向に沿って延びる。言い換えれば、対向棒14は、ウエハWの回転半径方向に隣接するとともに、当該回転半径方向と平行に延びている。また、対向棒14が対向位置にあるとき、ノズル3はウエハWの中央部の上方に配置される。
【0025】
ウエハWへの処理を行わないときは、対向棒14およびノズル3は、対向棒14は、ウエハWの回転範囲外にある退避位置(図2に二点鎖線で図示)に配置される。
また、基板処理装置1は、マイクロコンピュータで構成される制御部18を備えている。制御部18は、予め定められたプログラムに従って、モータ4、アーム揺動駆動機構17およびアーム昇降駆動機構16の駆動を制御する。また、薬液バルブ11の開閉および純水バルブ13の開閉、ならびに薬液流量調節バルブ10および純水流量調節バルブ12の開度を制御する。
【0026】
図3は、アーム15の先端部および対向棒14の構成を示す断面図である。図4は、図3の切断面線IV−IVから見た断面図である。図5は、図3の切断面線V−Vから見た断面図である。
アーム15は、水平方向に延びるアーム本体70と、アーム本体70の先端部に取り付けられて、対向棒14を支持するためのL字状の支持ブラケット(支持部材)20とを備えている。支持ブラケット20は、鉛直姿勢をなす垂直板22と、垂直板22の下端から水平方向に延びる水平板23とを備えている。垂直板22の上端部は、アーム本体70に固定されている。水平板23の下面には、平面視略正方形状の第1上固定板24がボルト25により固定されている。第1上固定板24の中央部には、上下方向に貫通する上貫通孔26が形成されている。
【0027】
アーム本体70には、ノズル3(この実施形態では2本のノズル3A,3Bを採用した場合を例示)を支持するための薄板状のノズル支持板27が取り付けられている。このノズル支持板27は、鉛直姿勢をなし、支持ブラケット20の側端面に固定されている。
対向棒14は、本体部材30と、本体部材30の下部に取り付けられて、ウエハWの上面に保持された処理液の液膜と接触する接液部材31とを備えている。本体部材30は、水平方向に沿って延びる長尺の棒部材32と、棒部材32の長手方向の中央部から上方に延びるヘッド部33とを備え、PVC(ポリ塩化ビニル)を用いて一体的に形成されている。
【0028】
ヘッド部33は、平坦な水平面からなる上端面34を有している。ヘッド部33の上端面34には、長手方向の中央部に、後述するガイド35の下端部を収容するための凹所36が形成されている。凹所36は、鉛直方向に延び、所定深さに形成されている。凹所36には、円筒状の直線運動軸受としてのボールブッシュ37が内嵌されている。ヘッド部33の側端面(図3で示す左側の端面)には、水平方向に延びる横向きのボルト収容凹所38が形成されている。このボルト収容凹所38の底部には、凹所36に連通するボルト孔39が形成されている。このボルト孔39にねじ込まれるボルト49によりボールブッシュ37の外筒がヘッド部33(対向棒14)に押し付けられて固定される。ボルト49の頭部は、ボルト収容凹所38に収容される。
【0029】
ヘッド部33の上面には、平面視略正方形状の下固定板40が固定されている。下固定板40の中央部には、上下方向に貫通する下貫通孔41が形成されている。下固定板40は、ヘッド部33にボルト42を用いて固定されている。
接液部材31は、その断面形状が略長方形をなし、本体部材30の長手方向に沿って、当該本体部材30の一端から他端まで延びている。接液部材31は、本体部材30と比較して、長手方向と直交する幅方向の寸法が小さく形成されている。接液部材31の下面には、スピンチャック2に保持されたウエハWの上面と対向するための対向面(基板対向領域)43が形成されている。この対向面43は、長手方向と直交する水平方向の一方(図4で示す左方向)に向かうに従って上方に向かうテーパ面が形成されている。接液部材31は、耐薬液性を付与するために、石英、カーボン、フッ素系樹脂(PCTEF(三フッ化塩化エチレン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFT(ポリテトラフルオロエチレン))等を用いて形成されている。
【0030】
対向棒14は、対向棒保持機構(対向部材保持機構)44を介して、支持ブラケット20に保持されている。対向棒保持機構44は、鉛直方向に延びる棒状のガイド35と、ガイド35の周囲を取り囲む弾性体の一例としてのベローズ45とを備えている。
ガイド35は、その上端が水平板23の下面に固定されている。このガイド35の上端部は、ボルト46によって水平板23に固定されている。ガイド35の下端部はボールブッシュ37に内挿されている。ガイド35の下端部は、ボールブッシュ37により上下動自在に保持されている。このため、対向棒14は、ガイド35によって、水平方向への移動が規制されつつ、上下動のみが許容される。ボルト46の頭部は、水平板23の上面に固定される第2上固定板47の下面の中央部に形成された収容凹所48内に収容されている。なお、ガイド46の下端部を対向棒14に対して相対的に上下動自在に保持する構成として、ガイド35およびボールブッシュ37に代えて、ボールスプラインを用いることもできる。
【0031】
ベローズ45は、たとえばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの樹脂材料を用いて形成されており、ガイド35の周囲を取り囲んでいる。第1上固定板24の下面には、ベローズ45の上端が上貫通孔26の周囲を取り囲むように固定されている。また、下固定板40の上面には、ベローズ45の下端が、下貫通孔41の周囲を取り囲むように固定されている。
【0032】
ウエハWへの処理を行わない際、すなわち、対向棒14がウエハWに近接していない状態の時には、ベローズ45は、対向棒14に作用する重力によって、鉛直方向に伸長された伸長状態となっている。このため対向棒14が、支持ブラケット20に対して相対的に上昇することにより、ベローズ45が伸張状態から圧縮されて、対向棒14に作用するばね力が減少する。このように、対向棒保持機構44であるガイド35とベローズ45とによって、対向棒14が支持ブラケット20に昇降自在に保持されている。
【0033】
対向棒14と水平板23との間の間隔は、その上限が間隔規制機構50によって規制される。間隔規制機構50は、側面視コ字形状の規制ブラケット51(図4参照)を備えている。規制ブラケット51は、鉛直方向に延びる鉛直板52と、鉛直板52の上端縁で屈曲して水平方向に延びる上面板53と、鉛直板52の下端縁で屈曲して水平方向に延びる下面板54とを備えている。下面板54は、下固定板40の上面にボルト55によって固定されている。上面板53には、その上下面を貫通するねじ孔(図示しない)が形成されており、このねじ孔に上方からボルト56がねじ込まれている。このボルト56の先端が第2上固定板47の上面に当接することにより、対向棒14と水平板23との間の最大間隔が規制されるようになっている。
【0034】
ノズル3は、管状の第1ノズル3Aと管状の第2ノズル3Bとを備えている。第1ノズル3Aは鉛直方向に延び、その先端(下端)に吐出口を有している。第1ノズル3Aの先端は接液部材31の近傍まで達している。ウエハWへの処理時には、第1ノズル3Aの吐出口からの処理液は、ウエハWの上面における回転中心近傍の供給位置(図7参照)に向けて鉛直下方に吐出される。この供給位置は、ウエハWの上面における接液部材31の対向領域よりも上流側に位置している。
【0035】
第2ノズル3Bは、側面視で略「く」の字に屈曲する屈曲部57を有し、その屈曲部57の下端に吐出口を有している。第2ノズル3Bの先端(下端)は接液部材31の近傍まで達している。ウエハWへの処理時には、第2ノズル3Bからの処理液は、前述の供給位置(図7参照)に向けて、そのウエハWの回転方向の上流側から吐出される。第2ノズル3Bは、ノズル支持板27に取り付けられたノズルブラケット58(図5参照)に固定されている。
【0036】
図6は、基板処理装置1における薬液処理時の様子(対向棒14が薬液の液膜に接触しているときの様子)を示す図解的な断面図である。
ウエハWに対する処理中は、スピンチャック2の回転によりウエハWが水平姿勢に保持されつつ回転する。
ウエハWへの薬液処理時には、対向棒14の接液部材31の対向面43が、ウエハWの表面に近接する近接位置に対向配置される。この状態では、対向面43はウエハWの回転方向の上流側に向かうに従って、そのウエハWの上面から離反するように傾斜している。
【0037】
ノズル3からの薬液は、ウエハWの上面における対向棒14の対向領域よりも上流側にある吐出位置(図7参照)に向けて吐出される。ウエハWの上面に供給された薬液は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの周縁部に向けて拡がる。
ウエハWの上面に近接して配置された対向棒14は、ウエハW上に供給された薬液に接する。ウエハW上の薬液の液膜の表面張力により、液膜を形成している薬液が対向棒14を伝って回転半径方向の外方に拡がる。これにより、ウエハWの上面の全域に薬液対向面43がウエハWの回転方向の上流側に向かうに従って、そのウエハWの上面から離反しているので、この対向面43によって、薬液の液膜を対向棒14とウエハWの上面との間にスムーズに入り込ませることができる。
【0038】
ウエハWの上面に保持される薬液の液膜は、ウエハWの回転に伴って回転する。このため、対向棒14が薬液の液膜に接した状態では、対向棒14は、当該液膜に対して相対的に移動し、当該液膜を押し退けるようになる。そのため、対向棒14は薬液の液膜から揚力を受ける。これにより、対向棒14にウエハWの上面から離反する方向の力(離反方向力)が作用する。
【0039】
対向面43がウエハWの回転方向の上流側に向かうに従って、そのウエハWの上面から離反しているので、対向棒14が液膜から大きな揚力を受ける。したがって、対向棒14に大きな離反作用力を作用させることができる。
この離反方向力によって、対向棒14は、支持ブラケット20に対して鉛直上向きに相対変位する。対向棒14の相対変位によりベローズ45(図3および図4参照)が上下方向に収縮し、対向棒14等に働く重力(接近方向力)に対する抗力は、ベローズ45だけでなく、対向棒14が薬液の液膜から受ける揚力によっても与えられる状態となる。一方、対向棒14に鉛直上向きに作用する離反方向力は、対向棒14の対向面43とウエハWの上面との間の間隔が狭くなればなるほど大きくなる。これは、対向棒14とウエハWの上面との間の間隔が狭いほど、対向棒14が薬液の液膜から受ける揚力が大きくなるからである。そして、対向棒14は、離反方向力と接近方向力とが釣り合う位置に保持される。ベローズ45の材質は、対向棒14とウエハWの上面との間隔Sが微小となるように選定されている。これにより、対向棒14とウエハWの上面との間に、微小な間隔(たとえば、0.1mm程度)を確実に確保することができ、このような微小な間隔Sを隔てて対向棒14とウエハWの上面とを対向配置させることができる。
【0040】
図7は、対向棒14が近接位置にあるときの様子を示す、ウエハWの上方から見た図解的な平面図である。
対向棒14が近接位置にあるときは、対向棒14の対向面43が、ウエハWの回転中心CからウエハWの周縁部まで、当該ウエハWの回転半径方向に沿って延びている。
ウエハWの上面に供給された薬液は、ウエハWの回転に伴って、ウエハWの回転方向に沿いつつも、ウエハWの外方に向かって移動する。このため、対向面43の延びる方向は、薬液の流れの向きと交差する。そのため、対向棒14は、その長手方向の全域で、薬液の液膜から揚力を受ける。これにより、対向棒14に大きな離反作用力を作用させることができる。
【0041】
また、対向棒14の対向面が、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部まで延びているので、ウエハWの回転により、ウエハWの上面全域に液膜を保持することができる。
図8は、基板処理装置1の処理例を示す工程図であり、図9は、図8の処理の様子を説明するための側面図である。
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示しない)によって処理室80に搬入されて(ステップS1)、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック2に保持される。また、制御部18は、アーム揺動駆動機構17を制御してアーム15を揺動させる(ステップS2)。このアーム15の揺動により、ノズル3および対向棒14が、退避位置(図2に二点鎖線で図示)から、ウエハWの上面に対向しつつ、かつ当該上面から上面に離間する所定の上位置(図2に実線で図示。図9(a)に示す位置)まで移動される。
【0042】
ウエハWがスピンチャック2に保持された後、制御部18は、モータ4を制御して、ウエハWを回転開始させる(ステップS3)。ウエハWの回転速度が所定の液処理速度(たとえば1500rpm)に達すると、制御部18は薬液バルブ11を開いてノズル3から薬液を吐出する。この薬液の吐出に先立って、制御部18は、薬液流量調節バルブ10の開度を予め定める大開度に設定しており、このため薬液供給管8から大流量(たとえば2L/min)の薬液がノズル3に送られる。この大流量の薬液がノズル3から吐出される(ステップS4)。ノズル3から吐出された薬液は、ウエハWの上面(表面)の中央部に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域が薬液によって覆われる(図9(a)参照)。
【0043】
薬液の吐出開始から所定の大流量期間(たとえば3sec)が経過すると、制御部18は、アーム昇降駆動機構16を制御して、対向棒14を近接位置(図6参照)まで下降させる(ステップS5)。また、制御部18は、薬液流量調節バルブ10の開度を予め定める小開度に切り換える。これにより、ノズル3から吐出される薬液の吐出流量が小流量(たとえば0.5L/min)になる(ステップS6。図9(b)参照)。また、これと同時に、制御部18は、モータ4を制御して、ウエハWの回転速度を所定の速度(たとえば500rpm)に減速する。
【0044】
この状態では、前述のように対向棒14は、離反方向力と近接方向力とが釣り合う位置に保持される。これにより、ウエハWの上面と対向棒14との間の間隔Sが微小に保持される。この間隔Sは、対向棒14が薬液の液膜から受ける揚力によって確保されるので、間隔Sが微小であっても、ウエハWと対向棒14とが接触することはない。
また、薬液の吐出流量が前記小流量であっても、また、ウエハWの回転速度が低速であっても、ウエハWの上面に保持される薬液の液膜の厚みが極めて微小なので、ウエハWの上面の全域に薬液を行き渡らせることができる。その結果、ウエハWの上面に付着しているパーティクル等の異物がウエハWの上面全域から物理的に除去される。
【0045】
なお、ここでは、薬液処理の途中に、ウエハWの回転速度を高速(たとえば1500rpm)から低速(たとえば500rpm)に減速することとしたが、ウエハWの回転速度を途中で変更せずに、所定の回転速度(たとえば、500〜1500rpmの所定の速度、好ましくは500rpm程度)のままとしてもよい。ただし、薬液処理の途中で減速する場合には、ウエハWから飛散する薬液の飛散速度が小さくなるので、ウエハW周囲への薬液の飛散を抑制し、ウエハWの周囲部材からウエハW表面への薬液の跳ね返りを抑制することができる。
【0046】
ノズル3からの薬液の吐出開始から所定の薬液処理時間が経過すると、制御部18は。薬液バルブ11を閉じて、ノズル3からの薬液の吐出を停止させる(ステップS7)。また、制御部18は、純水バルブ13を開いて、ノズル3からウエハWの上面の中心部に向けて純水を吐出する。この純水の吐出に先立って、制御部18は、純水流量調節バルブ12の開度を予め定める小開度にしており、このため純水供給管9から小流量(たとえば0.5L/min)の純水がノズル3に送られる。したがって、ノズル3から小流量の純水が吐出される(ステップS8)。これにより、ウエハWの上面に保持される液膜が、薬液から純水へと置換される。そして、この純水によって、対向棒14に付着した薬液が洗い流される。
【0047】
純水の吐出開始から所定の小流量処理時間(たとえば30sec)が経過すると、制御部18は、アーム昇降駆動機構16を制御して、アーム15を上昇させる(ステップS9)。このアーム15の上昇により、対向棒14およびノズル3が前記上位置(図9(a)参照)まで上昇させられる。
また、制御部18は、純水流量調節バルブ12の開度を大きくなるように制御して、ノズル3からの純水量の吐出流量を大流量(たとえば2L/min)とする(ステップS10)。ウエハWの上面に供給された純水が、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周縁に向けて流れ、この純水によってウエハWの上面に付着している薬液が洗い流される。
【0048】
なおここで、前記ステップS9とステップS10とを入れ替えてもよい。すなわち、先に純水の吐出量を大流量にした後に、アーム15を上昇させるようにしてもよい。この場合、ウエハW上の純水の液膜が(ステップS9とステップS10との間で)途切れてしまうことを確実に防止できる。
純水の吐出開始から所定の純水処理時間が経過すると、制御部18は、純水バルブ13を閉じて、ウエハWへの純水の供給を停止する(ステップS11)。また、制御部18は、スピンチャック2をスピンドライ回転速度(たとえば2500rpm程度)まで加速する。これにより、純水によるリンス後のウエハWの上面に付着している純水を遠心力で振り切って乾燥させるスピンドライが実施される(ステップS12)。スピンドライが所定のスピンドライ時間にわたって行われると、スピンチャック2の回転が停止される(ステップS13)。また、アーム15が揺動されて、ノズル3および対向棒14がスピンチャック2の側方の退避位置に戻される(ステップS14)。その後、搬送ロボット(図示しない)によってウエハWが搬出される(ステップS15)。
【0049】
以上によりこの実施形態によれば、ウエハWの上面に薬液が供給され、当該上面に薬液の液膜が保持される。この薬液の液膜は、ウエハWの回転に伴って回転する。したがって、対向棒14が薬液の液膜に接した状態では、対向棒14が当該液膜に対して相対的に移動し、当該液膜を押し退けるようになる。そのため、対向棒14は薬液の液膜から揚力を受ける。これにより、対向棒14にウエハWの上面から離反する方向の力(離反方向力)が作用する。
【0050】
対向棒14は支持ブラケット20に昇降可能に保持されている。薬液の液膜と対向棒14との接触による離反方向力を受けて、対向棒14は、支持ブラケット20に対して、上方に向けて相対変位しようとする。このため、対向棒14が薬液の液膜から受ける揚力は、対向棒14がウエハWの上面に近づけば近づくほど大きくなる。このため、対向棒14に作用する離反方向力も対向棒14がウエハWの上面に近づけば近づくほど大きくなる。すなわち。したがって、対向棒14に作用する重力などのウエハWの上面に接近する方向の力(接近方向力)と、対向棒14に作用する離反方向力とが釣り合う位置に対向棒14が保持される。このため、対向棒14とウエハWの上面とを極めて微小な間隔Sを隔てて対向配置させることができる。したがって、ウエハWの上面に対向棒14をより一層近接配置させた状態で、ウエハWに薬液処理を施すことができる。この場合、ウエハWの上面に保持される薬液の液膜が極めて薄い。これにより、ウエハWに供給される薬液の流量を増大させることなく、ウエハWの上面の全域に薬液を行き渡らせることができる。
【0051】
回転によってウエハWが上下に振れてもそれに追従して対向棒14が上下動する。そのため、対向棒14とウエハWとの間隙は常に安定しており、この安定した間隙に薬液の安定した液膜を保持できる。つまり、液膜が破れたりすることがない。そのため、ウエハWの上面に安定した薄い液膜を形成し、この液膜を構成する薬液によってウエハWを高品質に処理できる。
【0052】
図10は、本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る基板処理装置100の構成を示す図解的な断面図である。この図10において、前述の第1実施形態に示された各部に対応する部分には、図1〜図9の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
この図10の実施形態が、第1実施形態と相違するのは、弾性体としてベローズ45に代えて、複数個のコイルばね(引張コイルばね)101を用いた点にある。
【0053】
コイルばね101は、ガイド35を中心とする円周上を等間隔に配置されている。各コイルばね101は、その一端部(上端部)102が支持ブラケット20に固定されており、他端部(下端部)103が対向棒14に固定されている。各コイルばね101は、対向棒14に作用する重力によって伸長された伸長状態となっている。対向棒14が、支持ブラケット20に対して相対的に上昇すると、コイルばね101が伸長状態から圧縮される。それに伴って対向棒14に作用するばね力が減少する。その結果、対向棒14に作用する重力に対する抗力は、コイルばね101のばね力によって一部が与えられるようになる。
【0054】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、ウエハWの上面に処理液を供給するためのノズル3は、対向棒14を支持するアーム15に支持されている必要はない。したがって、アーム15とは異なる他のアームに支持されていてもよい。また、ノズル3は、いわゆるスキャンノズルの形態である必要はなく、スピンチャック2に対して固定的に配置された構成であってもよい。
【0055】
また、前述の第1実施形態では、弾性体の一例として樹脂製のベローズ45を例に挙げて説明したが、ウエハWに供給する処理液が金属腐食性のない液体(純水やイオン水、水素水、および磁気水などの機能水)の場合には、これに代えて、金属材料を用いて形成されたいわゆる金属ベローズを採用することもできる。
さらに、弾性体として板ばねや皿ばねなど板材を用いた構成とすることもできる。この場合、第2実施形態のコイルばね101に代えて、これら板ばねや皿ばねが介装される。対向棒14が軽量である場合は弾性体を用いない構成とすることもできる。
【0056】
また、前述の各実施形態では、ガイド35の上端部が支持ブラケット20に固定され、ガイド35の下端部が対向棒14に鉛直方向への変位が許容された状態で挿通された構成を例に挙げて説明したが、ガイド35の下端部が対向棒14に固定されて、すなわちガイド35の上端部が支持ブラケット20の挿通溝(または挿通孔)に挿通される構成とすることもできる。
【0057】
また、対向棒14の形状も前述の構成に限られない。たとえば、ヘッド部33が長手方向の中央部ではなく、長手方向の一端部に設けられた構成であってよい。また、接液部材31の対向面(下面)43がテーパ状のものを例に挙げて説明したが、接液部材31の下面が、円筒面や楕円筒面などの凸状曲面とすることもできる。かかる場合であっても、対向棒14は、処理液の液膜からの揚力を良好に受けることができる。
【0058】
さらに、接液部材31の断面形状が、下に凸の先尖状に形成されていてもよい。すなわち、接液部材31の対向面43が、ウエハWの回転方向の上流側に向かうに従ってウエハWの上面に接近する第1傾斜面と、この第1傾斜面に連続し、ウエハWの回転方向の上流側に向かうに従ってウエハWの上面から離反する第2傾斜面とを有していてもよい。
また、接液部材31の対向面43(下面)を水平面とすることもできるが、この場合、対向棒14が薬液の液膜からの揚力を受けることができるように、当該対向面43にスリットや溝、孔などの凹部が形成されていることが望ましい。
【0059】
また、対向棒14が支持ブラケット20を介してアーム本体70に支持される構成としたが、対向棒14が、アーム本体70に直接支持される構成であってもよい。
また、対向棒14とは別に、ウエハW上に処理液を供給するノズル3を設ける構成としたが、対向棒14の内部にノズルが挿通し、対向棒14の対向面43から処理液が吐出される構成であってもよい。
【0060】
また、対向部材として、棒状の対向棒14を例にとって説明したが、棒状以外の円盤状、半円状または矩形状のものとすることができる。
また、上記2つの実施形態においては、ウエハWに対して薬液および純水を順に供給しウエハWに洗浄処理を施す基板処理装置1,101を例に挙げたが、ウエハWに対して純水のみを供給してウエハWに洗浄処理を施す基板処理装置にも適用可能である。
【0061】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板保持手段)
3 ノズル
4 モータ(回転手段)
14 対向部材
20 支持ブラケット(支持部材)
43 対向面(基板対向領域)
44 対向棒保持機構(対向部材保持機構)
45 ベローズ
100 基板処理装置
101 コイルばね
S 間隔
W ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平姿勢に保持するための基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板を鉛直軸線まわりに回転させる回転手段と、
前記基板保持手段により保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記基板保持手段により保持された基板の上面に形成される前記処理液の液膜に接して当該液膜から揚力を受け得るように当該上面から間隔を隔てて対向配置される対向部材と、
前記対向部材を支持するための支持部材と、
前記対向部材を、鉛直方向に沿う相対変位が可能な状態で前記支持部材に保持させる対向部材保持機構とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記対向部材保持機構が、前記支持部材と前記対向部材との間に介装された弾性体を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記対向部材が、前記基板保持手段に保持された基板の回転半径方向に沿って延びる棒状の基板対向領域を有している、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記対向部材が、前記基板保持手段に保持された基板の回転中心から当該基板の周縁部まで延びる基板対向領域を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板対向領域が、前記基板保持手段に保持された基板の上面と対向し、当該基板の回転方向の上流側に向かうに従って当該基板の上面から離反する傾斜面を有する、請求項3または4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理液供給手段が、前記基板保持手段に保持される基板の上面において前記対向部材が対向する領域の上流側に向けて処理液を吐出するノズルを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を水平姿勢に保持して回転させる基板保持回転工程と、
基板の上面に処理液を供給する処理液供給工程と、
鉛直方向に沿う相対変位が可能な状態で支持部材に保持された対向部材を、基板の上面に形成される前記処理液の液膜に接して当該液膜から揚力を受け得るように当該上面から間隔を隔てて対向配置させる対向部材配置工程とを含む、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−238780(P2010−238780A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82841(P2009−82841)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】