説明

基板処理装置

【課題】基板を所定の傾斜角度で搬送しながら処理する際に、基板の下端を支持するローラに傷等が発生することを抑制することができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板3を搬送しながら処理する処理装置1において、基板3を所定の角度で支持して搬送する搬送ローラ4と、この搬送ローラ4によって搬送される基板3の下端を支持する下端支持ローラ5とが処理室2内に配されており、搬送ローラ4をモータ8により回転駆動し、下端支持ローラ5を基板3の搬送に伴って連れ回る状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに用いられるガラス基板などの基板を所定の傾斜角度で搬送しながら処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの家電製品の表示部として、液晶表示装置が広く用いられている。液晶表示装置には、2枚のガラス基板をシール材によって重ねて貼り合わせた後、シール材で区画された領域内に液晶が封入された液晶表示パネルが使われている。
【0003】
従来、液晶表示パネルの製造工程において、例えばTFT側アレイ基板を製造するにあたっては、成膜、レジスト膜形成、露光、現像、エッチング、レジスト膜の剥離等の工程を順次経ることにより基板表面にTFT素子を形成するが、これらの工程において、各工程の前や後に繰り返し洗浄が行われている。
【0004】
図4に示される基板洗浄装置15は、基板16を所定の角度で搬送しながらブラシ洗浄を行う装置である。図5は図4中のC−C断面を示している。図示されるように基板16の傾斜方向下側の面が搬送軸17aに固定して設けられた搬送ローラ17によって支持されている。搬送軸17aの上端部と下端部は、それぞれ軸受17b,17cによって回転可能に支持されている。
【0005】
また、基板16の下端は、駆動軸18aに設けられた駆動ローラ18によって支持されている。この駆動軸18aには歯車18b及び歯車19aを介してモータ19が連結されている。そして、このモータ19によって駆動ローラ18を回転駆動させることで、この駆動ローラ18と基板16の下端との間に生じる摩擦力で基板16に駆動力を与え、基板16を搬送ローラ17に沿って搬送する。通常、駆動ローラ18の外周面は、摩擦性が高いゴムなどの樹脂材料で形成されている。尚、本発明に関連する先行技術文献として下記特許文献が挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−323270号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した液晶表示パネルを製造するにあたっては、大きなマザーガラス基板(液晶表示パネル複数個取り用の大型のガラス基板)に対して複数の液晶表示パネル分の配線パターンを形成するなど、製造工程の途中までは、マザーガラス基板のままで処理が行われている。
【0008】
その後マザーガラス基板同士を貼り合わせて大判パネルとした後に個々に分断する(図6(a)参照)方法か、又は個々に分断(大型の液晶表示装置などは通常2〜6分割程度)してから貼り合わす(図6(b)参照)方法が一般的に用いられる。前者の貼り合わせ後分断する製造方法は、携帯電話などに用いられる小型の液晶表示装置、後者の分断後貼り合わせる製造方法は、液晶テレビなどに用いられる大型の液晶表示装置に採用されている。
【0009】
ガラス基板を分断する方法としては、ガラス表面に硬く鋭いもので筋をつけ、ガラスの厚さ方向に垂直クラックを形成し、このクラックを伸ばすように応力をかけて割る方法が一般的に用いられている。このガラスに傷を入れることが「スクライブ」、割ることが「ブレイク」と呼ばれている。具体的には、例えば、図7に示すようなダイヤモンドチップからなるカッタ21をガラス基板22の表面に当接させたまま、カッタ21を分断予定ライン22aに沿って相対移動させることにより、ガラス基板22にスクライブ溝23を形成した後、曲げ応力を加え、この応力によって分断(ブレイク)するというものである。
【0010】
上述した方法により分断したガラス基板の分断面は、その稜線部分に沿って面取り加工が行われている。図8はこのような面取り加工の一例を示した図である。図示されるように回転軸27に適切な角度に成形された研削砥石28を取り付け、回転方向29に研削砥石28を回転させる。ガラス基板22の分断面24の稜線部24aに研削砥石28を当てながら相対移動させて、適度な大きさの面取り面30を形成することで、割れに対する分断面の強度を向上させることができる。
【0011】
しかしながら、分断されたガラス基板の分断面に対して面取り加工を行うことは、生産性を著しく低下させることになる。例えば、分断面の稜線部が細かな研削粉となってガラス基板へ付着するため、面取り加工後は洗浄工程を必要としている。場合によっては、強固に付着したガラス粉を洗浄により除去できず、製品の不良発生の原因になっていた。また、研削砥石は加工が進むにつれ摩耗し、加工形状が損なわれるなどの不具合のため、メンテナンス等を必要としていた。
【0012】
そこで、このような面取り加工を廃止することが検討されているが、面取りがされていないガラス基板を上述した基板洗浄装置15に投入すると、基板3に与えられる駆動力は基板3の下端と駆動ローラ18との摩擦力だけであるため、上述した樹脂材料からなる駆動ローラ18の外周面に傷がつき、外周面の一部が削られてしまう場合があった。このように駆動ローラ18の外周面が削られてしまうと、パーティクルの発生や、駆動ローラ18の回転不良になってしまう。また、分断を行う前の大型ガラス基板においても、面取り加工が施されておらず、端面がギザギザ状のものが存在するため、同様の不具合が発生するおそれがあった。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、基板を所定の傾斜角度で搬送しながら処理する際に、基板の下端を支持するローラに傷等が発生することを抑制することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る基板処理装置は、基板を搬送しながら処理する処理装置において、前記基板を所定の角度で支持して搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラによって搬送される前記基板の下端を支持する下端支持ローラとが前記処理室内に配され、これらローラのうち前記搬送ローラが回転駆動されると共に、前記下端支持ローラが前記基板の搬送に伴って連れ回る状態であることを要旨とするものである。
【0015】
この場合、前記下端支持ローラの前記基板下端との接触部を耐摩耗性樹脂材料にすると良い。また、前記搬送ローラの前記基板との接触部を摩擦力の高い樹脂材料にすると良い。
【0016】
更に、前記搬送ローラと前記下端支持ローラが搬送方向においてずらされている構成にすると良い。そして、前記搬送ローラが複数備えられると共に、これら複数の搬送ローラが一の駆動源によって回転駆動される構成にすると良い。また、前記処理室が複数備えられると共に、各処理室における前記搬送ローラの回転駆動が同期している構成にすると良い。
【発明の効果】
【0017】
上記構成を有する基板処理装置によれば、基板を所定の角度で支持して搬送する搬送ローラだけが回転駆動され、搬送される基板の下端を支持する下端支持ローラは回転駆動されずに基板の搬送に伴って連れ回る状態であることにより、この下端支持ローラに加えられる摩擦力を少なくすることができる。これにより、下端支持ローラの外周面が削られてしまうおそれがなくなり、パーティクルの発生や下端支持ローラの回転不良が防止される。
【0018】
この場合、前記下端支持ローラの前記基板下端との接触部を例えば高密度ポリエチレンなどの耐摩耗性樹材料にすれば、下端支持ローラの表面が削られてしまうおそれが更になくなる。また、前記搬送ローラの前記基板との接触部を例えばシリコンゴムなどの摩擦力の高い樹脂材料にすれば、搬送ローラと基板との摩擦力が向上して、基板に十分な駆動力を与えることができる。
【0019】
更に、前記搬送ローラと前記下端支持ローラが搬送方向においてずらされている構成にすれば、搬送中の基板の撓みを少なくし、基板上で処理液が淀んでしまうことが防止される。そして、前記搬送ローラが複数備えられると共に、これら複数の搬送ローラが一の駆動源によって回転駆動される構成にすれば、各搬送ローラの回転の同期を簡便にとることができると共に、駆動機構を簡略にすることができる。また、前記処理室が複数備えられると共に、各処理室における前記搬送ローラの回転駆動が同期している構成にすれば、基板洗浄室や基板乾燥室などの複数の処理室を備えた基板処理装置に本発明を好適に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る基板処理装置の一実施の形態ついて、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置1の概略構成を示した図である。図2は図1中のA−A断面を示した図。図3は図1中のB−B断面を示した図である。
【0021】
図示されるように、基板3は所定の角度、例えば75度の角度で傾斜して搬送される。搬送手段としては、複数の搬送ローラ4と複数の下端支持ローラ5が設けられている。また、基板洗浄装置1の洗浄処理室2内の空間には、搬送される基板3に対してブラシ洗浄を行うブラシ洗浄部6が設けられている。
【0022】
搬送軸4aに設けられた搬送ローラ4は、基板3の傾斜方向下側となる裏面側に配されており、その軸線が搬送される基板3と平行、つまり75度の角度で傾斜されている。また、搬送軸4aは、搬送方向に沿って所定間隔をおいて複数設けられている。この搬送軸4aの上端部は軸受4bによって回転可能に支持されており、下端部は歯車4cが取り付けられている。
【0023】
これらの歯車4cにそれぞれ噛合する歯車7aが軸部材7にそれぞれ取り付けられている。この軸部材7は、モータ8の駆動により回転するようになっている。したがって、モータ8の駆動により複数の搬送ローラ4が回転し基板3が搬送される。
【0024】
このように複数の搬送ローラ4が一つのモータ8によって回転駆動される構成にすれば、各搬送ローラ4の回転の同期を簡便にとることができると共に、駆動機構を簡略にすることができる。
【0025】
この場合、搬送ローラ4の外周面はPTFE、シリコン、フッ素樹脂などの摩擦力の高い樹脂材料で形成されている。これにより搬送ローラ4と基板3との摩擦力が向上して、基板3に十分な駆動力を与えることができる。
【0026】
基板3の下端は下端支持ローラ5によって支持される。下端支持ローラ5は支持軸5aの先端に取付固定されている。この場合、支持軸5aの基端部は、軸受5bによって回転可能に支持されており、下端支持ローラ5は基板3の搬送に伴って連れ回る。また、下端支持ローラ5の外周面は例えば高密度ポリエチレンなどの耐摩耗性樹脂材料で形成されている。
【0027】
図示されるブラシ洗浄部6は、基板3の搬送方向に交差する方向に沿って配置された上ロールブラシ6aと下ロールブラシ6bを備えている。上ロールブラシ6aは傾斜して搬送される基板3の傾斜方向上面をブラッシングし、下ロールブラシ6bは下面をブラッシングする。
【0028】
ロールブラシ6a,6bの上下端からはそれぞれ支軸6c,6dが突設されている。上支軸6cは軸受6eに回転可能に支持されている。下支軸6dは駆動源であるモータ9に連結されている。このモータ9の駆動により、上ロールブラシ6aと下ロールブラシ6bが回転駆動される。これらロールブラシ6a,6bの回転方向は基板3の送り方向又は送り方向とは逆方向など要求される洗浄条件に応じて設定される。
【0029】
上述した基板処理装置1によれば、基板3を所定の角度で支持して搬送する搬送ローラ4だけがモータ8によって回転駆動され、搬送される基板3の下端を支持する下端支持ローラ5は回転駆動されずに基板3の搬送に伴って連れ回る状態となっている。
【0030】
このような構成にすることにより、下端支持ローラ5に加えられる摩擦力を少なくすることができ、下端支持ローラ5の外周面が削られてしまうおそれがなくなる。したがって、パーティクルの発生や下端支持ローラの回転不良を防止することができる。
【0031】
また、上述したように下端支持ローラ5の外周面を例えば高密度ポリエチレンなどの耐摩耗性樹脂材料で形成すれば、下端支持ローラ5の外周面が削られてしまうおそれが更になくなる。
【0032】
また、図1に示されるように搬送ローラ4と下端支持ローラ5が搬送方向においてずらされている構成になっているので、搬送中の基板3の撓みを少なくし、基板3上で洗浄液などの処理液が淀んでしまうことが防止される。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、上述した実施の形態では、基板をロールブラシで洗浄する処理室について説明したが、洗浄後に洗浄液を乾燥処理するためのエアーナイフが設けられた処理室などにも本発明を適用することができ、上記実施の形態には限定されない。また、このような基板洗浄室や基板乾燥室などの複数の処理室を備えると共に、各処理室における前記搬送ローラの回転駆動が同期している構成にも、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板洗浄装置の概略構成を示した図である。
【図2】図1中のA−A断面を示した図である。
【図3】図1中のB−B断面を示した図である。
【図4】従来用いられてきた基板処理装置の概略構成を示した図である。
【図5】図4中のC−C断面を示した図である。
【図6】従来用いられてきたガラス基板の分断の手順を示した図である。
【図7】従来用いられてきたガラス基板分断方法の概略構成を示した図である。
【図8】従来用いられてきたガラス基板の分断面の面取り方法の概略構成を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 基板洗浄装置
2 洗浄処理室
3 基板
4 搬送ローラ
4a 搬送軸
4b 軸受
4c 歯車
5 下端支持ローラ
5a 支持軸
5b 軸受
6 ブラシ洗浄部
6a 上ロールブラシ
6b 下ロールブラシ
6c 上支軸
6d 下支軸
6e 軸受
7 軸部材
7a 歯車
8 モータ
9 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送しながら処理する処理装置において、前記基板を所定の角度で支持して搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラによって搬送される前記基板の下端を支持する下端支持ローラとが処理室内に配され、前記搬送ローラが回転駆動されると共に、前記下端支持ローラが前記基板の搬送に伴って連れ回る状態であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記下端支持ローラの前記基板下端との接触部を耐摩耗性樹脂材料にしたこと特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記搬送ローラの前記基板との接触部を摩擦力の高い樹脂材料にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記搬送ローラと前記下端支持ローラが搬送方向においてずらされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記搬送ローラが複数備えられると共に、これら複数の搬送ローラが一の駆動源によって回転駆動されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理室が複数備えられると共に、各処理室における前記搬送ローラの回転駆動が同期していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−277479(P2008−277479A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118136(P2007−118136)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】