説明

基板処理装置

【課題】低コストの装置構成で処理精度の向上を図ることのできる基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板Kの面における任意箇所に所定の処理を施す処理ヘッド73と、基板Kと処理ヘッド73とを相対的に移動させる駆動手段74X,74Yとを備え、基板Kと処理ヘッド73とを相対的に移動させることで基板Kに1次元または2次元的な所定の処理を施す基板処理装置であって、前記駆動手段74X,74Yに見かけ上の真直進性を持たせるための制御データD6X,D6Yを記憶した記憶手段92を備え、基板Kと処理ヘッド73との相対的な移動に伴い前記制御データD6X,D6Yに基づき駆動手段74X,74Yを補正駆動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理装置に関する。より詳しくは、基板と処理ヘッドとを相対的に移動させることで基板に1次元または2次元的な所定の処理を施す装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池パネルを製造するプロセスの一つにレーザパターニングプロセスがある。レーザパターニングプロセスでは、回路形成用材料が成膜されたガラス基板を、所定強度のレーザ光で走査することによって、目的の回路パターンに応じたスクライブ線を形成していく。このようなレーザパターニングは、一般には、専用のレーザスクライブ装置を用いて行われる。具体的には、レーザスクライブ装置は、レーザ照射ヘッドとガラス基板とをガラス基板の表面に平行な方向に相対移動可能に構成される(例えば下記特許文献1)。この種のレーザスクライブ装置の一例について図16を参照して説明する。
【0003】
図16は従来のレーザスクライブ装置100を示す構成概要図である。なお、レーザスクライブ装置100により形成されるスクライブ線L(L1,L2,L3,・・・)のパターンは、後述する本発明の実施形態に記載のレーザスクライブ装置1により形成されるパターンと同じであるため、図8も参照する。
【0004】
レーザスクライブ装置100は、図16に示すように、ニップ53A、リニアモータ52YA、レーザ照射ヘッド73A、リニアモータ74XA、及び制御装置9Aなどを備える。ニップ53Aは、ガラス基板Kの一辺を掴持することでガラス基板Kを片持支持可能であると共に、この状態でリニアモータ52YAによりY方向に駆動可能とされる。レーザ照射ヘッド73Aは、ガラス基板Kの表面に向けてスクライブ用のレーザ光bを照射可能なレーザ照射窓735Aを備えると共に、リニアモータ74XAによりX方向に駆動可能とされる。制御装置9Aは、レーザスクライブ装置100が一連のスクライブ動作を行うように、ニップ53A及びレーザ照射ヘッド73Aの動作を制御するように構成される。
【0005】
レーザスクライブ装置100によるスクライブ動作は、次のようにして行われる。即ち、まず、リニアモータ52YAは、ガラス基板Kを掴持した各ニップ53Aを+Y方向へピッチQ進めて停止させる。次いで、リニアモータ74XAは、レーザ照射ヘッド73AをX方向へ駆動して、ガラス基板Kの面をレーザ走査(レーザ光の移動)する。
【0006】
以上の動作を繰り返すことで、図8に示すように、ガラス基板K(なお、このガラス基板Kの片面には、回路形成用材料Kjが成膜されている。)に対し、X方向に平行で且つY方向にピッチQをなす複数のスクライブ線L1,L2,L3,・・・を形成していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−111078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、レーザスクライブ装置100では、レーザ光をガラス基板Kに対してX方向に真っ直ぐに移動させることでスクライブ線を形成する。従って、リニアモータ74XAの位置決め精度や真直度、ヨーイング、ローリング等がそのままスクライブ線の精度に影響を及ぼす。また、Y方向への直線駆動も行うため、リニアモータ52YAの位置決め精度等についても同様なことが言える。このため、レーザスクライブ装置100では、スクライブ線の加工精度を向上させるために、各リニアモータ74XA,52YAには極めて高精度なものを用いていた。また、各リニアモータ74XA,52YA等を支持する機台として、剛性が高く且つ熱膨張性の低い例えばグラナイト等の高価なものを用いていた。そして、平面度も極めて高精度に加工されたものを用いていた。また、各可動部にはエアースライダーを用いることで、動作時の摩擦抵抗を減らし、均一な可動を実現させていた。これらのことから、レーザスクライブ装置100では、装置コストがアップする問題があった。しかも、上記のような対策を施したとしても、僅かながらも、ヨーイング及びローリングが発生し、±5μm以下の加工精度を実現することは難しかった。
【0009】
このような問題は、レーザスクライブ装置の他にも、例えばガラス基板上に成膜された膜への露光や検査を行う装置、ガラス基板に対してマーキングやカッティングや検査などを行う装置など、基板と処理ヘッドとを相対的に移動させることで基板に1次元または2次元的な所定の処理を施す装置一般に当てはまることである。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、低コストの装置構成で処理精度の向上を図ることのできる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の本発明により達成される。なお本欄(「課題を解決するための手段」)において各構成要素に付した括弧書きの符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0011】
請求項1の発明は、基板(K)の面における任意箇所に所定の処理を施す処理ヘッド(73)と、基板(K)と処理ヘッド(73)とを相対的に移動させる駆動手段(5,74X,74Y)とを備え、基板(K)と処理ヘッド(73)とを相対的に移動させることで基板(K)に1次元または2次元的な所定の処理を施す基板処理装置(1)であって、前記駆動手段(5,74X,74Y)に見かけ上の真直進性を持たせるための制御データ(D3,D6X,D6Y)を記憶した記憶手段(92)を備え、基板(K)と処理ヘッド(73)との相対的な移動に伴い前記制御データ(D3,D6X,D6Y)に基づき駆動手段(5,74X,74Y)を補正駆動するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項1の発明によると、制御データ(D3,D6X,D6Y)は、駆動手段(5,74X,74Y)に見かけ上の真直進性を持たせるためのデータであり、この制御データ(D3,D6X,D6Y)に基づき駆動手段(5,74X,74Y)を補正駆動する。即ち、駆動手段(5,74X,74Y)というハードウエアの誤差をソフトウエア処理を用いて補正する。これにより、駆動手段(5,74X,74Y)は、基板(K)と処理ヘッド(73)との相対移動について、見かけ上の真直進性を持つことができる。従って、駆動手段(5,74X,74Y)自体に極めて精度の高いものを用いたり、或いは駆動手段(5,74X,74Y)を支持する機台として、剛性が高く且つ熱膨張性の低い例えばグラナイト等の高価なものを用いずに、低コストの装置構成で処理精度の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明は、基板(K)と処理ヘッド(73)との相対的な移動の基準方向を規定するための基準線(XL,YL)を有する長尺ブロック体(30X,30Y)と、処理ヘッド(73)に一体的に設けられ前記基準線(XL,YL)を撮像する撮像手段(77)とを備え、前記制御データ(D6X,D6Y)は、長尺ブロック体(30X,30Y)と処理ヘッド(73)との相対的な移動に伴い撮像手段(77)で撮像した前記基準線(XL,YL)の画像データに基づいて求められる。
【0014】
請求項2の発明によると、制御データ(D6X,D6Y)は、長尺ブロック体(30X,30Y)と処理ヘッド(73)との相対的な移動に伴い撮像手段(77)で撮像した前記基準線(XL,YL)の画像データ(D5X,D5Y)に基づいて求められるため、例えば人手により駆動手段(74X,74Y)のズレ量を計測する手間を省くことができる。
【0015】
請求項3の発明は、撮像手段(77)で撮像した前記基準線(XL,YL)の画像データと、基板(K)と処理ヘッド(73)との相対移動により処理ヘッド(73)が辿る軌跡線(XJ,YJ)の画像データとを比較し、両者のズレがキャンセルされるように駆動手段(74X,74Y)を補正駆動する。
【0016】
請求項3の発明において、実際の駆動手段(74X,74Y)は、うねりや偏角を含んでいるため、「基板(K)と処理ヘッド(73)との相対移動により処理ヘッド(73)が辿る軌跡線(XJ,YJ)」は、うねりや偏角を含んだものとなる。このうねりや偏角は、基準線(XL,YL)を基準としている。請求項3の発明では、基準線(XL,YL)の画像データと、軌跡線(XJ,YJ)の画像データとを比較し、両者のズレがキャンセルされるように駆動手段(74X,74Y)を補正駆動することで、駆動手段(74X,74Y)に見かけ上の真直進性を持たせている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、低コストの装置構成で処理精度の向上を図ることのできる基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るレーザスクライブ装置の外観斜視図である。
【図2】レーザスクライブ装置の主要部を示す平面図である。
【図3】レーザスクライブ装置の主要部を示す正面図である。
【図4】レーザユニットを示す斜視図である。
【図5】レーザスクライブ装置おける制御装置と各種構成部との接続を示す接続図である。
【図6】本発明の要部を説明するための図である。
【図7】ヘッド駆動部及びニップ群駆動部の駆動方向の関係を示す図である。
【図8】レーザスクライブ装置によりスクライブ線が形成されたガラス基板を示す三面図である。
【図9】レーザスクライブ装置の基本動作の概要及び補正量データ取得ステップの動作手順を示すフローチャートである。
【図10】ガラス基板搬入ステップの動作手順を示すフローチャートである。
【図11】スクライブステップの動作手順を示すフローチャートである。
【図12】ガラス基板搬出ステップの動作手順を示すフローチャートである。
【図13】レーザスクライブ装置の基本動作を示すタイムチャートである。
【図14】スクライブ動作を示すタイムチャートである。
【図15】本発明の原理を説明するための図である。
【図16】従来のレーザスクライブ装置を示す構成概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明に係るレーザスクライブ装置1の外観斜視図、図2はレーザスクライブ装置1の主要部を示す平面図、図3はレーザスクライブ装置1の主要部を示す正面図、図4はレーザユニット7を示す斜視図である。これら各図において、直交座標系の3軸をX,Y,Zとし、ガラス基板Kの移送方向をY方向、水平面でY方向に直交する方向をX方向、鉛直方向をZ方向、鉛直軸周りの回転方向をθ方向とする。また、図1の紙面手前側を上流とし、紙面奥側を下流とする。つまり、図2,3では紙面に向かって左側が上流、右側が下流となる。また、XY各方向の向きを更に左右または前後に区別して説明する必要がある場合は、先頭に「+」または「−」の符号を付して示す。例えば、ガラス基板Kの移送方向であるY方向のうち、スクライブ線の形成動作中における移送方向を「+Y方向」、スクライブ線の形成動作後における移送方向を「−Y方向」などと記す。
【0020】
また、図5はレーザスクライブ装置1おける制御装置9と各種構成部との接続を示す接続図、図6は本発明の要部を説明するための図、図7はヘッド駆動部74及びニップ群駆動部52の駆動方向の関係を示す図、図8はレーザスクライブ装置1によりスクライブ線が形成されたガラス基板Kを示す三面図であり、A図が平面図、B図が側面図、C図が正面図である。
【0021】
レーザスクライブ装置1は、片面に回路形成用材料Kj(図8)が成膜されたガラス基板Kを、所定強度のレーザ光で走査することによって、目的の回路パターンに応じたスクライブ線を形成していくように構成される。特に、このレーザスクライブ装置1は、ガラス基板Kにおける回路形成用材料Kjの成膜面を下に向けた状態でスクライブ線の形成を行うタイプである。また、ガラス基板Kをエアーにより浮上支持した状態で+Y方向に移動させながら、スクライブ線を形成していくように構成される。
【0022】
具体的には、レーザスクライブ装置1は、図1に示すように、機台2、浮上ステージ3、リフタユニット4、移送ユニット5、基板位置決め装置6、レーザユニット7、集塵ユニット8及び制御装置9などを備える。また、レーザスクライブ装置1の上流外側には、浮上ステージ3へのガラス基板Kの搬入出を行う搬入出ロボット10が設置される。以下、レーザスクライブ装置1の各構成要素について説明する。
【0023】
機台2は、レーザスクライブ装置1の主構成部を支持する支持体であり、台座部21及び門型フレーム22を備える。台座部21は浮上ステージ3及び移送ユニット5などを支持し、門型フレーム22はレーザユニット7におけるレーザ照射ヘッド73及びヘッド駆動部74などを支持している。従来の機台2は、十分な剛性や平面精度を確保し且つ温度変化に伴う変形を最小限に抑えるために、グラナイト等の石材とすることが好ましかったが、本形態では装置コストの低減を図るため、ステンレス鋼等の金属を材質としている。
【0024】
浮上ステージ3は、その表面から噴出させたエアーにより、スクライブ対象となるガラス基板Kを浮上支持する部材であり、主ステージ31及び副ステージ32を備える。主ステージ31は、レーザスクライブ装置1内における上流側と下流側とにそれぞれ1台ずつ配設される。その配置は、上流と下流の各主ステージ31間に所定の空間を保つようになされる。
【0025】
主ステージ31は、具体的には、Y方向に長い長尺の浮上ユニット311をX方向に所定間隔あけて複数台配設した、簀子状をなす構成とされる。各浮上ユニット311の表面には、多数のエアー噴出孔311hが穿設される。これらエアー噴出孔311hは、圧空ポンプ等を備えるブロワーユニット33に配管接続され、ブロワーユニット33から供給された所定圧力のエアーを上向きに噴出し、このエアーでガラス基板Kを浮上支持するようになっている。噴出するエアーの圧力は、浮上対象とするガラス基板Kが撓むことなく且つ安定した状態を維持される大きさとされる。上流側の主ステージ31における一部の浮上ユニット311間には、Y方向ブロック30Yが設けられている。Y方向ブロック30Yは、Y方向の基準方向を規定するための長尺ブロック体であり、長手方向がY方向に平行となるように設けられる。その表面中央部には、Y方向への基準方向を示す直線溝YLが長手方向に沿って形成されている。Y方向ブロック30Yの材質は、ステンレス鋼と比べて熱膨張係数が半分以下である、例えばファインセラミックスなどで構成することが好ましい。これにより、熱変形による直線溝YLのズレを少なくし、基準方向の信頼性を向上させることができる。このようにY方向ブロック30Yは、Y方向についての高精度な直定規として機能する。
【0026】
副ステージ32は、上流と下流の主ステージ31間で、X方向に長い長尺の浮上ユニット321をY方向に所定間隔あけた状態で2台配設した構成とされる。2台の浮上ユニット321間に形成される空間部分は、その上方にあるレーザ照射ヘッド73によりスクライブ加工がされたときに落下するパーティクル(回路形成用材料Kjのスクライブ屑)の回収穴として機能する。浮上ユニット321についても浮上ユニット311と同様に、表面には多数のエアー噴出孔321hが穿設され、これらエアー噴出孔321hは、ブロワーユニット33から供給された所定圧力のエアーを上向きに噴出するようになっている。副ステージ32は、後述するように、ガラス基板Kが+Y方向への移動により、上流側の主ステージ31による浮上支持から下流側の主ステージ31による浮上支持に移り変わるときの動作、及びそれとは逆にガラス基板Kが−Y方向への移動により、下流側の主ステージ31による浮上支持から上流側の主ステージ31による浮上支持に移り変わるときの動作をスムーズ且つ確実とするために設けてある。上流側の主ステージ31における浮上ユニット311と、上流側の副ステージ32における浮上ユニット312との間には、X方向ブロック30Xが設けられている。X方向ブロック30Xは、X方向の基準方向を規定するための長尺ブロック体であり、長手方向がX方向に平行となるように設けられる。その表面中央部には、X方向についての基準方向を示す直線溝XLが長手方向に沿って形成されている。X方向ブロック30Xの材質は、Y方向ブロック30Yと同様に、例えばファインセラミックスなどで構成することが好ましい。これにより、熱変形による直線溝XLのズレを少なくし、基準方向の信頼性を向上させることができる。このようにX方向ブロック30Xは、X方向についての高精度な直定規として機能する。
【0027】
リフタユニット4は、スクライブ対象となるガラス基板Kの受取り、及びスクライブ済みのガラス基板Kの引渡しを行う装置であり、ピンフレーム41及びフレーム駆動部42を備える。
【0028】
ピンフレーム41は、受取り及び引渡しの対象となるガラス基板Kのサイズに応じた略「日」の字状の枠体であり、図2に示すように、平面視がそれぞれ略「口」の字状の周囲枠41aと、略「一」の字状の中央枠41bとを備える。周囲枠41aには、複数のリフトピン43がそれぞれ隣合うもの同士で所定間隔をあけるように立設されている。リフトピン43は、その先端部でガラス基板Kにおける額縁部Kf(図8参照)の下面に当接してこのガラス基板Kを支持可能なピン部材である。この額縁部Kfは、ガラス基板Kの外側周囲に所定幅をもって形成される領域であり、回路形成用材料Kjが成膜されていないか、または、成膜されていたとしても、リフトピン43の先端部が当接した場合に最終製品に影響を及ぼさない領域である。
【0029】
フレーム駆動部42は、ピンフレーム41をZ方向に昇降駆動するように構成され、例えば中央枠41bに取り付けられた回転ボールネジ機構などにより実現される。フレーム駆動部42がピンフレーム41を駆動することにより、リフトピン43は、図3に示す上限位置P1と下限位置P2とに選択的に配置可能とされる。上限位置P1は、搬入出ロボット10からスクライブ加工の対象となるガラス基板Kを受け取るとき、またはスクライブ加工の済んだガラス基板Kを搬入出ロボット10に引き渡すときに配置される位置であり、リフトピン43の先端部が浮上ステージ3の表面よりも十分に高くなる位置である。下限位置P2は、ガラス基板Kの搬入出以外のとき、例えばスクライブ線の形成時などリフトピン43を使用しないときにこれらリフトピン43を退避させておく位置であり、リフトピン43の先端部が浮上ステージ3の表面よりも低くなる位置である。
【0030】
リフトピン43は、ガラス基板Kを受け取った後に降下するが、このときの降下速度は、次のように設定されている。即ち、リフトピン43が上限位置P1から浮上面上方位置P3(次述)に移るときの降下速度をU1とし、浮上面上方位置P3から浮上面位置P4(同じく次述)に移るときの降下速度をU2とするとき、U2<U1の関係がある。より好ましくはU2<U1/2である。なお、浮上面上方位置P3は、リフトピン43の先端部が浮上面位置P4よりも若干高く且つ上限位置P1よりも低くなる位置である。浮上面位置P4は、浮上ステージ3におけるエアー噴出口311h,321hから噴出するエアーにより、ガラス基板Kが浮上支持されているときの高さ位置である。
【0031】
移送ユニット5は、ガラス基板Kを片持ち支持した状態でこれをY方向に移動可能に構成された装置であり、ニップ群51とニップ群駆動部52とを備える。
【0032】
ニップ群51は、合計4個のニップ53がY方向に沿ってそれぞれ所定間隔をあけて1列状に一体的に配置されてなり、各ニップ53がガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴んでこのガラス基板Kを片持ち支持できるように構成される。具体的には、各ニップ53は、上下一対の可動爪を有する。この可動爪は、制御装置9から送られる信号に基づいて、上下方向に圧空作用等により同期駆動可能に構成され、これにより開閉自在とされる。可動爪を開くのは、ガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴む直前である。可動爪を閉めるのはガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴むとき、または各ニップ51を退避させているたときである。ガラス基板Kを掴む直前以外は、指の挟み込み防止等の安全性確保のため、基本的には可動爪は閉めた状態とされる。
【0033】
また、ニップ群51は、サーボモータ等の駆動装置によりX方向に駆動されて、図2に示す保持位置P5と回避位置P6とに選択的に配置可能とされる。保持位置P5は、リフトピン43により支持されたガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺がニップ53の開口領域に入る位置である。回避位置P6は、上記保持位置P5に対して、−X方向側にあり、ガラス基板Kを掴まないときに配置される位置である。また、各ニップ53は、それぞれ独立してサーボモータ等の駆動装置によりZ,θ各方向にも駆動可能とされる。Z方向の駆動は、主にニップ53の高さ補正時になされる。θ方向の駆動は、主にニップ53のθ方向の取付け角度補正時になされる。これらの補正駆動は、後述するスクライブステップS300において、ニップ群51がガラス基板Kを+Y方向に駆動するとき(ステップS310)になされる。
【0034】
ニップ群駆動部52は、上記ニップ群51をY方向へスライド駆動自在とする装置であり、具体的には台座部21の一方側にY方向に沿って配設されたリニアモータ52Yを主要構成としている。リニアモータ52Yが作動することにより、ニップ群51は図2,3に示す受取位置P7と待避位置P8とに選択的に配置可能とされる。受取位置P7は、搬入出ロボット10から搬入されたガラス基板KのX方向範囲内(短辺範囲内)に全てのニップ53が含まれる位置であり、浮上ステージ3の上流側にある。また、待避位置P8は、安全性確保のために全てのニップ53を待避させておくための位置であり、浮上ステージ3の下流側にある。ガラス基板Kを移送する動作を行うとき以外は、腕の挟み込み防止等の安全性確保のため、基本的には4つのニップ群51は待避位置P8に配置される。
【0035】
基板位置決め装置6は、浮上ステージ3の上流側におけるX方向両側に設けられ、ガラス基板Kにおける2つの短辺側の端面にそれぞれ押し当て可能な押当てローラ61と、押当てローラ61をX方向に駆動するエアーシリンダ62とを備える。この基板位置決め装置6は、位置決め時に、両方のエアーシリンダ62を同時に伸ばすことで、ガラス基板Kにおける2つの短辺側の端面を押当てローラ61により挟み込むことで、ガラス基板Kの位置決めを行うようになっている。そして位置決めが終わったら、両方のエアーシリンダ62を同時に縮めることで、各押当てローラ61をガラス基板Kから離すようになっている。
【0036】
レーザユニット7は、ニップ群51及び浮上ステージ3により支持され且つ+Y方向に移送されるガラス基板Kに対し、その上方からレーザ光bを照射・走査することで、ガラス基板Kの下面に成膜された回路形成用材料Kjをスクライブして所定のスクライブ線を形成するように構成される。具体的には、図1,4に示すように、レーザ発振器71、照射光学系72、レーザ照射ヘッド73及びヘッド駆動部74などを備える。
【0037】
レーザ発振器71は、ガラス基板Kに成膜された回路形成用材料Kjをスクライブするためのレーザ光bを発する光源装置であり、例えば発振波長が、355nm〜1064nm、出力が1〜20W程度のNd−YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザまたはNd−YVO(イットリウム・バナデート)レーザなどを用いることができる。
【0038】
照射光学系72は、レーザ発振器71から発したレーザ光bを、レーザ照射ヘッド73に導くように構成され、反射ミラー722a〜722h、ビームエキスパンダー723及びアッテネータ724などを備える。上記レーザ光bは、レーザ発振器71から出射するレーザ光bの光軸上に設けられたメカシャッター721が開閉することにより、レーザ照射ヘッド73への導光のオンオフが切替えられるようになっている。メカシャッター721の開閉は、制御装置9から送られる信号に基づいて行われる。また、上記反射ミラー722f〜722hは、ボックス76に収容された状態で、リニアモータ76Xによりレーザ照射ヘッド73と同期してX方向に駆動可能とされ、光路長補正部を形成している。このような可動なボックス76により光学系の一部をレーザ照射ヘッド73から切り離すことにより、次に示すレーザ照射ヘッド73内の収容物を少なくし、その重量を軽くすることで、駆動源となるヘッド駆動部74の負荷を少なくしている。それとともに、動作の追従性及び応答性を良くし、精密な微調整を可能としている。
【0039】
レーザ照射ヘッド73は、照射光学系72を介して導かれたレーザ発信器71からのレーザ光bを、ガラス基板Kの面に垂直ビームとして照射するように構成される。具体的には、レーザ光bの照射口となるレーザ照射窓735を備える光学ボックス体からなり、その内部に、折り返しミラー731、フォーカスレンズ732及び集光レンズ733を収容している。レーザ照射ヘッド73は、次述するヘッド駆動部74により、X方向及びY方向にそれぞれ独立して駆動(走行・停止)自在とされる。また、レーザ照射ヘッド73の側壁には、撮像カメラ77が取り付けられている。撮像カメラ77は、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)等の撮像素子を有し、図6に示すように、撮像によって取得した画像データD5X,D5Yを制御装置9へ出力可能に構成される。撮像カメラ77の取付けは、その撮像方向を下方に向けた状態とされる。これにより、撮像カメラ77は、X方向に移動しながら、X方向ブロック30Xに形成された直線溝XLを撮像し、そのとき取得した画像データD5Xを制御装置9に送信するようになっている。また、撮像カメラ77は、Y方向に移動しながら、Y方向ブロック30Yに形成された直線溝YLを撮像し、そのとき取得した画像データD5Yを制御装置9に送信するようになっている。制御装置9では、画像データD5Xに基づいて、補正量データD6Xの算出・記憶処理を行う。同様に、画像データD5Yに基づいて、補正量データD6Yの算出・記憶処理を行う。それらの詳細は後述する。
【0040】
ヘッド駆動部74は、リニアモータ74X及びリニアモータ74Yを主構成としている。具体的には、リニアモータ74Xは、門型フレーム22の上部にその長手方向(X方向)に沿って取り付けられる。このリニアモータ74Xは、X方向に駆動される可動テーブル(図示せず)を有する。リニアモータ74Yは、この可動テーブル上にY方向に沿って設けられる。これによりレーザ照射ヘッド73は、X方向及びY方向へ同時且つ独立に駆動可能とされる。レーザ照射ヘッド73の可動範囲は、図3に示すように、−Y方向の限界位置である初期位置P9と+Y方向の限界位置である終端位置P10との間とされる。レーザ照射ヘッド73は、上記したように非常に軽量に製作されているため、その停止・発進に要する負荷が小さい。このため、ヘッド駆動部74は、高出力の駆動源や制動力の強いブレーキが必要とならず、装置のコストダウンを図ることができる。また、停止・発進時は、駆動源からの発熱が少ない。従って、その発熱の影響により装置細部が膨張することで、位置精度の経時変化が発生し、精度不良の原因となることも極めて少ない。
【0041】
集塵ユニット8は、図1に示すように、その上方にあるレーザ照射ヘッド73によりスクライブ加工がなされたときにガラス基板Kの下面から落下するパーティクル(回路形成用材料Kjのスクライブ屑)を回収するように構成され、具体的には、受け皿81及び真空チャンバー83を備える。受け皿81は、レーザ照射ヘッド73がX方向に移動する範囲の下方に設けられ、配管82を介してチャンバー83に接続される。このような構成により、レーザスクライブにより受け皿81に落下したパーティクルは、真空吸引により真空チャンバー83内に回収される。スクライブ動作中は、真空チャンバー83は基本的に常に吸引作動している。
【0042】
制御装置9は、図5に示すように、レーザスクライブ装置1が一連のスクライブ動作を行なうように、各種命令や条件の入力、それら入力に応じた演算処理、及びこの演算処理結果に基づく各駆動系等への適切な制御信号の出力などを可能に構成される。具体的には、図6に示すように、タッチパネル等の入出力装置91、タッチパネル等の入出力装置91、メモリ装置を主体とした記憶部92、マイクロプロセッサを主体とした演算処理部93、スクライブ装置1における各駆動系及び搬入出ロボット10とデータ通信を行う適当なインターフェイス回路96、並びにこれらハードウエアを動作させるためのコンピュータプログラムを組み込んだハードディスク装置95などから構成される。演算処理部93は、図6(A)に示すように、撮像カメラ77で取り込んだ直線溝YLの画像データD5Yに基づいて、補正量データD6Yを算出して、記憶部92に記憶させるように構成される。また、撮像カメラ77で取り込んだ直線溝XLの画像データD5Xに基づいて、補正量データD6Xを算出して、記憶部92に記憶させるように構成される。
【0043】
ここで、補正量データD6Yは、リニアモータ74Yに見かけ上の真直進性を持たせるための制御データである。つまりY方向へのレーザヘッド73の動作に真直進性を持たせるための制御データである。具体的には、レーザヘッド73がY方向に移動するときにそのレーザ照射窓735の辿る軌跡線が、直線溝YLと等距離を保ち且つ直線溝YLと同等な直進性を有するようにするデータである。より具体的には、リニアモータ74Yの駆動によりY方向に移動しているレーザヘッド73を、リニアモータ74XによりX方向に微小量ずつ補正駆動するデータである。これにより、レーザヘッド73がY方向に移動するときにそのレーザ照射窓735の辿る軌跡線は、直線溝YLと平行になり、リニアモータ74Yは、見かけ上の真直進性を持つようになる。
【0044】
また、補正量データD6Xは、リニアモータ74Xに見かけ上の真直進性を持たせるための制御データである。つまりX方向へのレーザヘッド73の動作に真直進性を持たせるための制御データである。具体的には、レーザヘッド73がX方向に移動するときにそのレーザ照射窓735の辿る軌跡線が、直線溝XLと等距離を保ち且つ直線溝XLと同等な直進性を有するようにするデータである。より具体的には、リニアモータ74Xの駆動によりX方向に移動しているレーザヘッド73を、リニアモータ74YによりY方向に微小量ずつ補正駆動するデータである。これにより、レーザヘッド73がX方向に移動するときにそのレーザ照射窓735の辿る軌跡線は、直線溝XLと平行になり、リニアモータ74Xは、見かけ上の真直進性を持つようになる。
【0045】
補正量データD6X,D6Yは、それぞれ基本的には撮像カメラ77で取り込んだ直線溝XL,YLの座標値に基づいて作成される。そして記憶部92に記憶される。
【0046】
また、記憶部92は、次に示す補正量データD3を予め記憶している。補正量データD3は、リニアモータ52Yに見かけ上の真直進性を持たせるための制御データである。具体的には、ニップ群51で掴んだガラス基板KがY方向に移動するときに辿る軌跡線が、予め定義したY方向基準線(実質的には直線溝YLと平行である)と等距離を保ち且つこのY方向基準線と同等な直進性を有するようするデータである。より具体的には、リニアモータ52Yの駆動によりY方向に移動している各ニップ53を、X,Z,θ各方向に微小量ずつ補正駆動するデータである。補正量データD3は、次に示す誤差積算データに基づいて作成される。即ち、誤差積算データは、リニアモータ52Yの動作誤差量(位置誤差量、ヨーイング、ローリング量など)を、人手により事前にレーザ測長器やミューチェッカーで計測し、それらの誤差量を積算したデータである。この補正量データD3に基づいて、各ニップ53は、ガラス基板Kの移動方向(つまり+Y方向)が真直方向となるように、補正駆動されるようになっている。
【0047】
搬入出ロボット10は、浮上ステージ3に対するガラス基板Kの搬入出を行う構成とされ、図1に示すように、吸着ハンド11、アーム12、バキュームポンプ13、モータ14及び操作パネル17を備える。吸着ハンド11は、枠体15に2次元状に配列された複数の吸引パッド16を備える。これら吸引パッド16は、それぞれの吸着面を同一平面としており、これにより平面体であるガラス基板Kの上面(非成膜面)を複数箇所で同時に吸着可能になっている。各吸引パッド16は、バキュームポンプ13の作動により吸引圧が生じるようになっている。そして、吸着ハンド11は、操作パネル17からの命令に応じてモータ14が駆動され、アーム12を介してXYZθ各方向に移動自在に構成される。
【0048】
次に、レーザスクライブ装置1の動作について説明する。
【0049】
薄膜太陽電池パネルを製造するためのレーザパターニングプロセスは、一般的には大きく4つのプロセスに別れる。第1プロセスは、ガラス基板Kの上に成膜されたTCO膜(Transparent Conducting Oxide:酸化物透明導電膜)をスクライブするプロセスである。第2プロセスは、TCO膜の上に成膜されたアモルファスシリコン膜だけを選択的にスクライブするプロセスである。第3プロセスは、アモルファスシリコン膜と、アモルファスシリコン膜の上に成膜された金属膜だけを選択的にスクライブするプロセスである。第4プロセスは、TCO膜・アモルファスシリコン膜・金属膜の全てを同時にスクライブするプロセスである。第1プロセスと第2プロセスの間には、アモルファスシリコンの成膜プロセスが別工程で存在し、第2プロセスと第3プロセスの間には、金属膜の成膜プロセスが別工程で存在する。なお、上記レーザスクライブ装置1の動作形態に関しては、第1プロセスから第4プロセスのいずれについても、基本的には共通な動作形態でスクライブ加工を行うため、以下の説明では、4つのプロセスのうちのいずれか一つに対応するものとする。つまり、ガラス基板Kに成膜された回路形成用材料Kjは、上記した4つのパターンのいずれであってもよい。
【0050】
図9はレーザスクライブ装置1の基本動作の概要及び補正量データ取得ステップS50の動作手順を示すフローチャート、図10はガラス基板搬入ステップS100の動作手順を示すフローチャート、図11はスクライブステップS300の動作手順を示すフローチャート、図12はガラス基板搬出ステップS500の動作手順を示すフローチャート、図13はレーザスクライブ装置1の基本動作を示すタイムチャート、図14はスクライブ動作を示すタイムチャートである。なお、図9においてA図はレーザスクライブ装置1の基本動作の概要を示し、B図は補正量データ取得ステップの動作手順を示す。また、図13において、動作速度の可変を意識していない軸(可動部)については、オンオフの表記だけになっており加減速は表記していない。リフトピン43のみ動作速度を動作途中で可変としている。
【0051】
図9に示すように、レーザスクライブ装置1の基本動作は、補正量データ取得ステップS50、ガラス基板搬入ステップS100、スクライブステップS300、ガラス基板搬出ステップS500の順で行われる。以下、各ステップの動作内容について順を追って説明する。
【0052】
なお、以下の説明では、レーザスクライブ装置1の初期状態は、次のとおりであるとする(図13の各グラフにおける時間軸の左方参照)。即ち、浮上ステージ3からは、浮上エアーが常に吹き出した状態である。リフトピン43は上限位置P1にある。ニップ群51は待避位置P8にある。各ニップ53は閉じている。基板位置決め装置6は引っ込んだ状態である。スクライブ対象となるガラス基板Kは、成膜面を下向きにして台車或いはパレットに載った状態である。
【0053】
〔S50.補正量データ取得〕
まず、図6(A)及び図9(B)を参照して補正量データ取得取得ステップS50について説明する。ここで、撮像カメラ77とY方向ブロック30Yとの初期位置合わせはされているものとして説明する。即ち、撮像カメラ77は、Y方向ブロック30Yにおける直線溝YLの一端を撮像可能な位置に配置されている。
【0054】
リニアモータ74Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、レーザ照射ヘッド73を+Y方向に駆動する(図9(B)のS53)。これにより、レーザ照射ヘッド73の側部に取り付けられた撮像カメラ77は+Y方向に移動する。撮像カメラ77は、この移動にともない、直線溝YLを撮像し、その画像データD5Y(図6(A)参照)を制御装置9に送信する(図9(B)のS55)。制御装置9において信号処理部93は、送信された画像データD5Yに基づいて、補正量データD6Yを算出し、記憶部92に記憶させる(図9(B)のS57)。
【0055】
補正量データD6Yの算出・記憶が終了すると、撮像カメラ77とX方向ブロック30Xとの初期位置合わせを行う。即ち、撮像カメラ77は、X方向ブロック30Xにおける直線溝XLの一端を撮像可能な位置に配置される(図9(B)のS61)。
【0056】
撮像カメラ77とX方向ブロック30Xとの初期位置合わせが終了すると、リニアモータ74Xは、制御装置9から送られた信号に基づいて、レーザ照射ヘッド73を+X方向に駆動する(図9(B)のS63)。これにより、レーザ照射ヘッド73の側部に取り付けられた撮像カメラ77は+X方向に移動する。撮像カメラ77は、この移動にともない、直線溝XLを撮像し、その画像データD5X(図6(A)参照)を制御装置9に送信する(図9(B)のS65)。制御装置9において信号処理部93は、送信された画像データD5Xに基づいて、補正量データD6Xを算出し、記憶部92に記憶させる(図9(B)のS67)。
【0057】
以上のようにして記憶部92に記憶された補正量データD6Xは、後述するスクライブステップS300で読み出されて、スクライブ動作時にレーザヘッド73がX方向に移動するときにそのレーザ照射窓735の辿る軌跡線XJが直線溝XLと平行になるように、レーザ照射ヘッド73を補正駆動する制御データとして用いられる。これと同様に、補正量データD6Yは、後述するスクライブステップS300で読み出されて、スクライブ動作時にレーザヘッド73がY方向に移動するときにそのレーザ照射窓735の辿る軌跡線YJが直線溝YLと平行になるように、レーザ照射ヘッド73を補正駆動する制御データとして用いられる。
〔S100.ガラス基板搬入〕
次に、図10,13を参照してガラス基板搬入ステップS100について説明する。
【0058】
〔S110.ガラス基板受入れ(図13のt1〜t2)〕
オペレータは、搬入出ロボット10を操作してガラス基板Kをレーザスクライブ装置1に搬入する。具体的には、操作パネル17を用いて次のようにアーム12を動かす。まず、台車或いはパレットに載ったガラス基板Kの上方に吸着ハンド11が来るようにする。次いで、この吸着ハンド11をガラス基板Kにおける非成膜面の高さまで降下させる。次いで、ガラス基板Kにおける非成膜面の複数箇所を、吸着ハンド11における吸着パッド16で吸着させる。次いで、アーム12を動かし、吸着ハンド11が吸着保持したガラス基板Kを、浮上ステージ3の上流側位置に持ってくる。次いで、吸着ハンド11による吸着保持を解除し、ピンフレーム41に付いているガイド(図示せず)に沿わせて、手動にてガラス基板Kの額縁部Kfの下面をリフトピン43の先端部に載せる。
【0059】
〔S120.ニップ群を受取位置へ移動(図13のt3)〕
ガラス基板Kがリフトピン43の先端部で支持されると、ニップ群51は待避位置P8から受取位置P7へ移動する。具体的には、リニアモータ52Yが、制御装置9から送られた信号に基づいて、ニップ群51を−Y方向に駆動する。これにより、安全確保のため待避位置P8に待避していたニップ群51は、受取位置P7に配置される。
【0060】
〔S130.ニップを開く(図13のt4)〕
ニップ群51が受取位置P7に配置されると、各ニップ53は、制御装置9から送られた信号に基づいて、閉じていた可動爪を開く。
【0061】
〔S140.ニップ群を保持位置へ移動(図13のt5)〕
各ニップ53が受取位置P7で開くと、ニップ群51は、回避位置P6から保持位置P5に移る。具体的には、ニップ群51は、制御装置9から送られた信号に基づいて、+X方向に駆動され、これにより、回避位置P6から保持位置P5に配置される。このとき、各ニップ53は、それぞれにおける上下の可動爪間の空間に、ガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺が入った状態となる。
【0062】
〔S150.リフトピンを下降(図13のt6,t7,t8)〕
可動爪を開いたニップ群51が保持位置P5に配置されると、リフトピン43が下降する。これにより、ガラス基板Kは、浮上ステージ3でエアー支持されつつ、浮上面位置P4まで下降する。具体的には、フレーム駆動部42は、制御装置9から送られた信号に基づいて、ピンフレーム41を下降駆動する。この下降駆動は、次のように行う。即ち、まず、リフトピン43はガラス基板Kを支持した状態で、上限位置P1から浮上面上方位置P3まで速度U1で下降する(図13のt6〜t7)。ガラス基板Kが浮上面上方位置P3まで速度U1で下降した後は、浮上面位置P4まで速度U2(<U1)で下降する(図13のt7〜t8)。このようにガラス基板Kを下降させるに際し2段階の速度を用い、U2<U1というように、浮上面位置P4の近傍で低速としたのは、浮上ステージ3の直上での急激な降下により浮上ステージ3とガラス基板Kとが接触してしまうことを防止するためである。リフトピン43が速度U2で下降した後、浮上面位置P4となり、ガラス基板Kが浮上面位置P4で浮上支持されると、リフトピン43は一旦停止する(図13のt8→t12)。この段階でガラス基板Kは、リフトピン43と浮上ステージ3から噴出されたエアーとにより支持されている。
【0063】
〔S160.ガラス基板の位置決め(図13のt9)〕
ガラス基板Kがリフトピン43とエアーとにより支持されると、基板位置決め装置6は、制御装置9から送られた信号に基づいて、エアーシリンダ62を伸ばし、押当てローラ61がガラス基板Kの両端面を押すことで、予め決められた位置にガラス基板Kが配置される。
【0064】
〔S170.ニップを閉じる(図13のt10)〕
ガラス基板Kの位置決めがなされると、制御装置9から送られた信号に基づいて、各ニップ53が閉まり、ガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴む。この段階でガラス基板Kは、ニップ53とリフトピン43とエアーとにより支持されている。
【0065】
〔S180.基板位置決め装置を後退(図13のt11)〕
ニップ53がガラス基板Kにおける額縁部Kfの一辺を掴むと、基板位置決め装置6は、制御装置9から送られた信号に基づいて、エアーシリンダ62を縮め、押当てローラ61を後退させる。
【0066】
〔S190.リフトピンを更に下降(図13のt12,t13)〕
基板位置決め装置6が後退すると、フレーム駆動部42は、制御装置9から送られた信号に基づいて、ピンフレーム41を更に降下駆動する。このときガラス基板Kは、エアーにより支持されている。リフトピン43はガラス基板Kから離れて、下限位置P2まで下降する。この段階でガラス基板Kは、額縁部Kfの一辺がニップ53で保持され、成膜面の全面がエアーで浮上支持されている。以上のようにしてガラス基板Kが搬入され、スクライブ線を形成する準備が整う。
【0067】
〔S300.スクライブ〕
次に、図6(B),図7,11,14を参照してスクライブステップS300について説明する。なお、レーザ照射ヘッド73におけるレーザ照射窓735と、1番目のスクライブ開始端LS1との位置合わせはされているものとして説明する。
【0068】
〔S310〜S345 1番目のスクライブ線の形成(図14のw1〜w12)〕
リニアモータ52Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、ニップ群51を+Y方向にV1の一定速度となるように駆動する(図11のS310、図14のw1,w4)。このとき、各ニップ53は、制御装置9における記憶部92に記憶された補正量データD3に基づいて、ガラス基板Kの移動方向(つまり+Y方向)が真直方向となるように、補正駆動される。これによりガラス基板Kは、+Y方向にV1の一定速度で真直方向に走行する。リニアモータ74Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、レーザ照射ヘッド73を+Y方向にV1の一定速度となるように駆動する(図11のS320、図14のw2,w5)。これにより、ガラス基板Kとレーザ照射ヘッド73との相対速度は0になり、レーザ照射ヘッド73は、ガラス基板Kに対して見かけの上で静止する。それとともに、リニアモータ74Xは、制御装置9における記憶部92に記憶された補正量データD6Yに基づいて、レーザ照射ヘッド73をX方向に微少量ずつ補正駆動することで、Y方向についてのレーザ照射ヘッド73の真直進性を確保する。メカシャッター721は、制御装置9から送られた信号に基づいて開く(図11のS325)。リニアモータ74Xは、制御装置9から送られた信号に基づいて、レーザ照射ヘッド73を+X方向にV2の一定速度となるように駆動する(図11のS330、図14のw3,w6)。それとともに、リニアモータ74Yは、制御装置9における記憶部92に記憶された補正量データD6Xに基づいて、レーザ照射ヘッド73をY方向に微少量ずつ補正駆動することで、X方向についてのレーザ照射ヘッド73の真直進性を確保する。この駆動は、レーザ照射窓735から照射されるレーザ光bが第1のスクライブ開始端LS1(図8参照)から第1のスクライブ終了端LE1にかけて移動するまで行う(図11のS330、図14のw5→w7)。
【0069】
以上の動作により、レーザ照射窓735から照射されたレーザ光bは、ガラス基板Kが+Y方向に移動した状態を維持しながら、第1のスクライブ開始端LS1から第1のスクライブ終了端LE1にかけて、直線溝XLに平行となるようにガラス基板K上を移動する(図6(B)、図11のS330、図14のw6,w8)。つまりレーザ光bが辿る軌跡が直線溝XLに平行となる。このレーザ光bは、ガラス基板Kの透明ガラスKt(図8)を透過して、下面に成膜された回路形成用材料Kjをスクライブすることで、直線溝XLに平行な1番目のスクライブ線L1を形成する。このとき生じたパーティクルは、受け皿81に落下し、真空吸引により真空チャンバー83内に回収される。1番目のスクライブ線L1が形成された時点で、メカシャッター721は、制御装置9から送られた信号に基づいて閉じる(図11のS345)。
【0070】
〔S350 レーザ照射ヘッドを初期位置へ戻す(図14のw7〜w12)〕
メカシャッター721が閉じるとともに、リニアモータ74Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、次の要領でレーザ照射ヘッド73を−Y方向に駆動する(図14のw7〜W12)。即ち、1番目のスクライブ線L1の形成が終了してからt=Q/V1の時間が経過するまでに、レーザ照射ヘッド73を元の初期位置P9に戻す。この動作の目的は次のとおりである。即ち、ガラス基板Kは静止することなくV1の一定速度で+Y方向に移動している。ここで、ガラス基板Kの短辺方向に隣合うスクライブ線同士のピッチ間隔はQ(図8参照)であるから、1番目のスクライブ線L1の形成が終了してからt=Q/V1の経過後には、レーザ照射窓735は第2のスクライブ開始端LS2の上方に位置される。それまでに、レーザ照射ヘッド73を元の初期位置P9に戻すことで、2番目のスクライブ線L2を形成するときに(図14のw16→w18)、レーザ照射ヘッド73が+Y方向へ移動するためのストロークを確保するためである。
【0071】
〔S360〜S385 2番目のスクライブ線の形成(図14のw14〜w21)〕
ガラス基板Kは、+Y方向にV1の一定速度で走行した状態である。リニアモータ74Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、レーザ照射ヘッド73を+Y方向にV1の一定速度となるように駆動する(図11のS360、図14のw13→w15)。これにより、1番目のスクライブ線L1の形成時と同様に、ガラス基板Kとレーザ照射ヘッド73との相対速度は0になり、レーザ照射ヘッド73は、ガラス基板Kに対して見かけの上で静止する。それとともに、リニアモータ74Xは、制御装置9における記憶部92に記憶された補正量データD6Yに基づいて、レーザ照射ヘッド73をX方向に微少量ずつ補正駆動することで、Y方向についてのレーザ照射ヘッド73の真直進性を確保する。メカシャッター721は、制御装置9から送られた信号に基づいて開く(図11のS365)。リニアモータ74Xは、制御装置9から送られた信号に基づいて、レーザ照射ヘッド73を−X方向にV2の一定速度となるように駆動する(図11のS370、図14のw14→w16)。それとともに、リニアモータ74Yは、制御装置9における記憶部92に記憶された補正量データD6Xに基づいて、レーザ照射ヘッド73をY方向に微少量ずつ補正駆動することで、X方向についてのレーザ照射ヘッド73の真直進性を確保する。V2の一定速度での駆動は、レーザ照射窓735から照射されるレーザ光bが第2のスクライブ開始端LS2から第2のスクライブ終了端LE2にかけて移動するように行う。
【0072】
以上の動作により、レーザ照射窓735から照射されたレーザ光bは、ガラス基板Kが+Y方向に移動した状態を維持しながら、第2のスクライブ開始端LS2から第2のスクライブ終了端LE2にかけて、直線溝XLに平行となるようにガラス基板K上を移動する(図11のS370、図14のw16,w18)。このレーザ光bは、ガラス基板Kの透明ガラスKt(図8参照)を透過して、下面に成膜された回路形成用材料Kjをスクライブすることで、1番目のスクライブ線L1に平行な2番目のスクライブ線L2を形成する。このとき生じたパーティクルは、1番目のスクライブ線L1の形成時と同様に、受け皿81に落下し、真空吸引により真空チャンバー83内に回収される。2番目のスクライブ線L2が形成された時点で、メカシャッター721は、制御装置9から送られた信号に基づいて閉じる(図11のS385)。
【0073】
〔S390 レーザ照射ヘッドを初期位置へ戻す(図14のw17〜w22)〕
メカシャッター721が閉じるとともに、リニアモータ74Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、1番目のスクライブ線L1を形成した直後と同様な要領で、レーザ照射ヘッド73を−Y方向に駆動する(図14のw17〜W22)。即ち、2番目ののスクライブ線L2の形成が終了してからt=Q/V1の時間が経過するまでに、レーザ照射ヘッド73を元の初期位置P9に戻す。これにより、3番目のスクライブ線L3を形成するときに(図14のw26→w28)、レーザ照射ヘッド73が+Y方向へ移動するためのストロークを確保することができる。
【0074】
〔S400 3番目以降のスクライブ線以降のスクライブ線の形成〕
以降、3番目以降のスクライブ線についても、1番目または2番目と同様な要領で、ガラス基板Kを+Y方向へ移動させた状態を維持しながら、静止させることなく、レーザ光bを+X方向または−X方向へ移動させてスクライブ線を形成していく。それとともに、リニアモータ74Xは、制御装置9における記憶部92に記憶された補正量データD6Yに基づいて、レーザ照射ヘッド73をX方向に微少量ずつ補正駆動することで、Y方向についてのレーザ照射ヘッド73の真直進性を確保する。また、リニアモータ74Yは、制御装置9における記憶部92に記憶された補正量データD6Xに基づいて、レーザ照射ヘッド73をY方向に微少量ずつ補正駆動することで、X方向についてのレーザ照射ヘッド73の真直進性を確保する。なお、リニアモータ52YをY1軸、リニアモータ74YをY2軸、リニアモータ74XをX1軸と表したときの各軸の位置関係及び動作関係は、図7のようになる。
【0075】
ここで、ガラス基板Kが+Y方向に移動することにより、ガラス基板Kの浮上支持が上流の主ステージ31から下流の主ステージ31に移る際に、副ステージ32からもエアーが吹き出ているため、回収穴部(受け皿81の上方)でガラス基板Kが大きく撓むことが防止される。これにより、ガラス基板Kの進行方向端部が下流の主ステージ31の端部に当たることなどが防止され、上流の主ステージ31から下流の主ステージ31へのガラス基板Kの乗り移りがスムーズ且つ確実に行われる。なお、後述するステップS510においてガラス基板Kを−Y方向に移動するときもこれと同じ効果がある。
【0076】
以上のようにして、ガラス基板Kを停止することなく+Y方向に移動させながら予定本数のスクライブ線が形成されたら(図11のS400でイエス)、リニアモータ52Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、+Y方向へのニップ群51の駆動を停止させる(図11のS410、図13のt16,t17)。
【0077】
レーザスクライブ装置1によると、制御装置9は、撮像カメラ77がX方向に移動することで撮像した直線溝XLの画像データと、レーザ照射ヘッド73が実際の移動により辿る撮像中心線XJ(図15(A)参照)のデータとを比較し、両者のズレがキャンセルされるようにリニアモータ74Yを制御する。これにより、リニアモータ74Xに、見かけ上の真直進性を持たせることができる。従って、リニアモータ74X自体に極めて精度の高い高価なものを用いたり、或いは機台2として、剛性が高く且つ熱膨張性の低い例えばグラナイト等の高価なものを用いずに、低コストの装置構成で処理精度の向上を図ることができる。リニアモータ74Yについても同様であり、この場合、Y方向の軌跡線は、撮像カメラ77で得た画像データではY方向の撮像中心線YJ(図15(A)参照)となる。
【0078】
また、補正量データD6X,D6Yは、それぞれ撮像カメラ77でX方向ブロック30X,Y方向ブロック30Yを撮像したときの画像データD5X,D5Yに基づいて求められる。このように、自動的に直線溝XLのデータが取得されるので、例えば人手によりリニアモータ74X,74Yのズレ量を計測する手間を省くことができる。
【0079】
以上の補正駆動について、図15を参照して、更に具体的に説明する。形成される1本のスクライブ線の長さをWとし、このスクライブ線を形成するのに要する時間をt′とすると、次の関係式が成立する。
t′=W/V2
【0080】
図15(A)に示すように、撮像カメラ77で取り込んだ画像データD5Xにおいて、直線溝XLが撮像カメラ77における撮像中心線XJに対して末端でΔYのズレがあったとする。このような状態は、例えばリニアモータ74Xがメカ的な取付けや熱膨張等の要因により直線溝XLからズレている場合に生じる。そこで、補正量データD6Xでリニアモータ74Yを次のように動作制御する。即ち、リニアモータ74YでY方向に補正をかけながら、リニアモータ74XでX方向にV2で移動させる。具体的には、Y方向への移動速度V1からΔY/t′を補正量として減算する。つまり、Y方向へのレーザ照射ヘッド73の速度は、ΔY/t′=ΔY・V2/Wだけ減算された速度をV1として移動する。これにより、図15(B)に示すように、レーザ光bの移動方向は、X方向から傾いた補正前速度とY方向の補正速度とが合成されることにより、X方向の基準線となる直線溝XLに平行となる。
【0081】
次に、図12,13を参照してガラス基板搬出ステップS500について説明する。
【0082】
〔S510.ガラス基板を受取位置に戻す(図13のt17)〕
スクライブ線の形成が終わると、リニアモータ52Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、ニップ群51を−Y方向に駆動する。これにより、下流にあったガラス基板Kは、−Y方向へ移動しながら受取位置P7に戻ってくる。ガラス基板Kが−Y方向へ移動するに際し、下流側の主ステージ31による浮上支持から上流側の主ステージ31による浮上支持に移り変わるときは、副ステージ32から噴出されるエアーにより、ガラス基板Kが支持されるため、回収穴部でも移り変わり動作がスムーズ且つ確実になる。
【0083】
〔S520.リフトピンを上昇(図13のt18,t19)〕
ガラス基板Kを掴んだニップ群51が受取位置P7に戻ってくると、フレーム駆動部42は、制御装置9から送られた信号に基づいて、ピンフレーム41を浮上面位置P4まで上昇駆動する。これにより、リフトピン43は下限位置P2から上昇し、その先端部がガラス基板Kにおける額縁部Kfの下面に当接する。この段階でガラス基板Kは、ニップ53とリフトピン43とエアーとにより支持されている。
【0084】
〔S530.ニップを開く(図13のt20)〕
リフトピン43が上昇し、その先端部がガラス基板Kにおける額縁部Kfの下面に当接すると、各ニップ53は、制御装置9から送られた信号に基づいて、閉じていた可動爪を開き、ガラス基板Kを放す。この段階でガラス基板Kは、リフトピン43とエアーとにより支持されている。
【0085】
〔S540.ニップ群が回避位置(図13のt21)〕
各ニップ53がガラス基板Kを放すと、ニップ群51は、制御装置9から送られた信号に基づいて、−X方向に駆動される。これにより、ニップ群51は、保持位置P5から回避位置P6に移る。
【0086】
〔S550.リフトピンだけでガラス基板を支持(図13のt22,t23)〕
ニップ群51が回避位置P6に移ると、フレーム駆動部42は、制御装置9から送られた信号に基づいて、ピンフレーム41を上昇駆動する。これにより、リフトピン43は、その先端部がガラス基板Kにおける額縁部Kfの下面に当接した状態で浮上面位置P4から上限位置P1まで上昇する。この段階でガラス基板Kは、浮上面位置P4から完全に持ち上がり、リフトピン43だけで支えられた状態になる。
【0087】
〔S560.ニップ群が待避位置(図13のt24,t25)〕
ガラス基板Kが上限位置P1となると、リニアモータ52Yは、制御装置9から送られた信号に基づいて、ニップ群51を+Y方向に駆動する。これにより、ニップ群51は、受取位置P7から待避位置P8に移動する。その後、各ニップ53は、制御装置9から送られた信号に基づいて、開いていた可動爪を閉じる。
【0088】
〔S570.ガラス基板引渡し(図13のt26,t27)〕
ニップ群51が待避位置P8に移ると、オペレータは、搬入出ロボット10を操作して、リフトピン43だけで支えらたガラス基板Kを、レーザスクライブ装置1から台車或いはパレットに引き渡す。具体的には、まず、アーム12を操作し、リフトピン43に支持されたガラス基板Kの上方に吸着ハンド11を配置する。次いで、この吸着ハンド11をガラス基板Kにおける非成膜面の高さまで降下させる。次いで、ガラス基板Kにおける非成膜面の複数箇所を、吸着ハンド11で吸着させる。次いで、アーム12を操作し、吸着ハンド11が吸着保持したガラス基板Kを、台車或いはパレットの位置に持ってくる。次いで、吸着ハンド11による吸着保持を解除し、手動にて台車或いはパレットにガラス基板Kを搬出する。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明を行ったが、上に開示した実施形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。即ち、レーザスクライブ装置1の全体または一部の構造、形状、寸法、材質、個数などは、本発明の趣旨に沿って種々に変更することができる。また、本実施形態では、基板処理装置はレーザスクライブ装置としたが、これ以外にも、例えば、ガラス基板上に成膜された膜への露光や検査を行う装置、ガラス基板に対してマーキングやカッティングや検査などを行う装置などに適用することもできる。検査装置の場合は、処理ヘッドは、検査用の撮像カメラとなる。
【0090】
上述の実施形態において、レーザ照射ユニット73がX,Y各方向へ移動するときの補正方式についても、移送ユニット5におけるニップ53がY方向へ移動するときの補正方式と同様な方式とすることもできる。即ち、スクライブの動きに合わせたレーザ照射ユニット73の動作誤差量(位置誤差量、ヨーイング、ローリング量など)を、人手により事前にレーザ測長器やミューチェッカーで計測し、その誤差積算データに基づいて、レーザ照射ユニット73が真直方向(X,Y各方向について)となるように、補正するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 レーザスクライブ装置(基板処理装置)
5 移送ユニット(駆動手段)
30X X方向ブロック(長尺ブロック体)
30Y Y方向ブロック(長尺ブロック体)
73 レーザ照射ヘッド(処理ヘッド)
74 ヘッド駆動部(駆動手段)
74X リニアモータ(駆動手段)
74Y リニアモータ(駆動手段)
77 撮像カメラ(撮像手段)
92 記憶部(記憶手段)
D3 補正量データ(制御データ)
D6X 補正量データ(制御データ)
D6Y 補正量データ(制御データ)
D5X 画像データ
D5Y 画像データ
K ガラス基板(基板)
XL 直線溝(基準線)
XJ 撮像中心線(軌跡線)
YJ 直線溝(基準線)
YJ 撮像中心線(軌跡線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の面における任意箇所に所定の処理を施す処理ヘッドと、基板と処理ヘッドとを相対的に移動させる駆動手段とを備え、基板と処理ヘッドとを相対的に移動させることで基板に1次元または2次元的な所定の処理を施す基板処理装置であって、
前記駆動手段に見かけ上の真直進性を持たせるための制御データを記憶した記憶手段を備え、
基板と処理ヘッドとの相対的な移動に伴い前記制御データに基づき駆動手段を補正駆動するように構成されたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板と処理ヘッドとの相対的な移動の基準方向を規定するための基準線を有する長尺ブロック体と、処理ヘッドに一体的に設けられ前記基準線を撮像する撮像手段とを備え、
前記制御データは、長尺ブロック体と処理ヘッドとの相対的な移動に伴い撮像手段で撮像した前記基準線の画像データに基づいて求められる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
撮像手段で撮像した前記基準線の画像データと、基板と処理ヘッドとの相対移動により処理ヘッドが辿る軌跡線の画像データとを比較し、両者のズレがキャンセルされるように駆動手段を補正駆動する請求項2に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−167458(P2010−167458A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12494(P2009−12494)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】