説明

基板処理装置

【課題】大型化することなく、処理室内からの処理流体を含む排気を、所望の個別排気管に良好に導くことができる基板処理装置を提供すること。また、3つの個別排気管が全て閉塞することを確実に防止することができる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】処理室からの排気が集合管45に導入される。排気切換器50は、集合管45から排気が導入される排気導入室54と、排気導入室54の内部に回転可能に設けられた回転板55とを備えている。排気導入室54の側壁59には、3つの導出接続孔62,72,82が、回転軸線Cを中心とする円周上に等角度間隔に貫通して形成されている。各導出接続孔62,72,82には、個別排気管60,70,80の上流端が接続されている。回転板55の回転軸線Cまわりの回転に伴って、選択孔49が3つの導出接続孔62,72,82と順に対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液による処理を基板に施すための基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板に対して処理液や処理ガスなどの処理流体を用いた処理が行われる。このような処理のために、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。
枚葉式の基板処理装置は、処理室内に、基板を保持する基板保持部材と、基板の表面に処理流体を供給するためのノズルと、基板保持部材を収容するカップとを備えている。ノズルからの処理流体が基板の表面に供給されることにより、基板の表面に対して処理が施される。処理流体を含む雰囲気がカップ外に漏れ出ることを防止するために、カップの底壁には、カップ内の雰囲気を排気するための排気孔が形成されている。排気孔には排気管の上流端が接続されており、排気管の下流端は排気処理設備に接続されている。カップ内の雰囲気は、排気管を通って排気処理設備へと導かれ、この排気処理設備で処理される。
【0003】
処理室内で2種類の処理流体を用いて基板を処理することがある。この場合、基板保持部材に保持された基板の表面に2種類の処理流体(第1処理流体および第2処理流体)が順に供給されることにより、基板の表面に処理流体が供給される。第1処理流体が使用される処理では、カップ内に第1処理流体を含む雰囲気が存在する。また、第2処理流体が使用される処理では、カップ内に第2処理流体を含む雰囲気が存在する。したがって、第1処理流体および第2処理流体の種類によっては、第1処理流体が使用される処理時における排気と、第2処理流体が使用される処理時における排気とが、互いに異なる排気処理設備で処理されることが望ましい場合がある。
【0004】
このため、処理室内からの排気が流通する集合排気管の下流端に2つの個別排気管を接続するとともに、集合排気管とこれら2つの個別排気管との間に、排気切換器を配置する構成が提案されている。この排気管切換器は、集合排気管を流通する排気の流通先を、2つの個別排気管の間で切り換える。
図11は、従来の排気切換器300の構成を図解的に示す断面図である。図12は、図11を切断面線XII−XIIから見た断面図である。
【0005】
排気切換器300は、集合排気管301から排気が導入される排気導入室302を備えている。排気導入室302の本体は、一方側の側面(図12で示す左側面)が開放した四角箱状の箱体304と、箱体304の開放面を覆う蓋体305とを備えている。
蓋体305の壁には、1つの導入接続孔306が貫通して形成されている。この導入接続孔306には、集合排気管301の下流端が接続されている。蓋体305と対向する箱体304の側壁307には、2つの導出接続孔308,309(第1導出接続孔308および第2導出接続孔309)が貫通して形成されている。第1導出接続孔308には、第1個別排気管310の上流端が接続されている。第2導出接続孔309には、第2個別排気管311の上流端が接続されている。第1導出接続孔308および第2導出接続孔309は、隣り合って並んでいる。
【0006】
側壁307の内面には、切換羽根312が側壁307と直交する揺動軸線Pを中心として揺動可能に支持されている。この切換羽根312によって、第1導出接続孔308および第2導出接続孔309が選択的に閉塞される。切換羽根312が第1導出接続孔308を覆う第1閉塞位置にあるとき(図12に二点鎖線で示す状態)は、第2導出接続孔309が開放し、排気導入室302の内部が第2個別排気管311と連通する。また、切換羽根312が第2導出接続孔309を覆う第2閉塞位置にあるとき(図12に実線で示す状態)は、第1導出接続孔308が開放し、排気導入室302の内部が第1個別排気管310と連通する。
【0007】
したがって、処理室内で基板に第1処理流体が使用される処理が行われているときに、切換羽根312を第2閉塞位置に位置させておけば、排気導入室302の内部が第1個別排気管310と連通し、第1処理流体を含む排気が排気導入室302および第1個別排気管310を通って、第1排気処理設備へと導かれる。
また、処理室内で基板に第2処理流体が使用される処理が行われているときに、切換羽根312を第1閉塞位置に位置させておけば、排気導入室302の内部が第2個別排気管311と連通し、第2処理流体を含む排気が排気導入室302および第2個別排気管311を通って、第2排気処理設備へと導かれる。
【0008】
このように、切換羽根312の位置の切換えにより、処理室からの排気を、2つの個別排気管310,311に選択的に流通させることができる。このため、第1処理流体を含む排気と第2処理流体を含む排気とを、互いに異なる排気設備に導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−12523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
処理室内で3種類の処理流体を用いて基板を処理することがある。基板保持部材に保持された基板の表面に3種類の処理流体(たとえば、第1処理流体、第2処理流体および第3処理流体)が順に供給されることにより、基板の表面に処理流体が供給される。この場合、第1〜第3処理流体の種類の組み合わせによっては、各処理流体が使用される処理が、個別の排気処理設備に導かれることが望ましい場合がある。このため、個別排気管を3つ設けるとともに、集合排気管を流通する排気の流通先を3つの個別排気管の間で切り換える構成が要求されている。
【0011】
たとえば図11および図12に示す従来の排気切換器300を、2つ直列に接続して使用することが考えられる。具体的には、図11および図12に示す排気切換器300における一方の個別排気管(たとえば第1個別排気管310)の下流端に、もう1つの排気切換器300を介して、さらに2つの個別排気管310,311を接続させる。
しかしながら、2つの排気切換器300を直列に接続するので、装置全体として大型化する。
【0012】
また、処理室からの排気が最初の排気切換器300に達してから次の排気切換器300に達するまでにタイムラグが生じる。このため、処理の処理時間が短い場合、処理流体を含む排気を所望の個別排気管に導くことができないおそれもある。
さらに、図11および図12の排気切換器300を用いずに、導出接続孔を3つ有する排気導入室と、各導出接続孔に接続される個別排気管とを設け、各導出接続孔を蓋で個別に開閉させる構成も考えられる。
【0013】
しかしながら、この場合は、蓋を駆動する機構に故障や誤作動があると、3つの個別排気管が全て閉塞される全閉状態を発生するおそれがある。
そこで、この発明の目的は、大型化することなく、処理室内からの処理流体を含む排気を、所望の個別排気管に良好に導くことができる基板処理装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、3つの個別排気管が全て閉塞することを確実に防止することができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)の処理のために複数種の処理流体が内部で使用される処理室(3)と、前記処理室内からの排気が流通する集合排気管(45)と、前記集合排気管が接続され、前記集合排気管から排気が導入される排気導入室(54;204)と、前記排気導入室に接続され、前記排気導入室からの排気が流通する3つの個別排気管(60,70,80)と、前記排気導入室内に、所定の回転軸線(C;C1)を中心に回転可能に設けられる回転部材(55;205;55A;55B)と、前記回転部材を回転駆動するための駆動手段(112;262)とを含み、前記排気導入室には、各個別排気管に対応して、3つの連通孔(62,72,82;246,247,248)が前記回転軸線を中心とする円周上に当該円周方向に間隔を空けて形成されており、前記3つの個別排気管は、それぞれ対応する前記連通孔と連通し、前記回転部材には、1つの選択孔(49;199;49A;49B)が前記回転部材の回転に伴って前記連通孔と順に対向する位置に形成されており、前記選択孔における前記回転部材の回転方向の幅(W1;D;W2;W3)が、互いに隣り合う前記連通孔の間の間隔(N1,N2,N3)よりも大きい、基板処理装置(1,150)である。
【0015】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、選択孔が1つの連通孔に対向する状態では、排気導入室の内部が、その連通孔に対応する1つの個別排気管に連通する。回転部材を回転軸線を中心として回転させると、選択孔が3つの連通孔と順に対向する。したがって、回転部材の選択孔を3つの連通孔のうち所望の連通孔に対向させておけば、排気導入室に導入された排気を、3つの個別排気管のうち所望の個別排気管に流通させることができる。このため、大型化することなく、処理室内からの処理流体を含む排気を、所望の個別排気管に良好に導くことができる。
【0016】
よって、処理室の内部で使用されている処理流体の種別に応じて、集合排気管を流通する排気の流通先を、3つの個別排気管の間で切り換えることができる。
また、選択孔における回転部材の回転方向の幅が、互いに隣り合う連通孔の間の間隔よりも大きく形成されている。このため、回転部材がいずれの回転位置にあっても、選択孔が1つまたは2つの連通孔に重複し、3つの連通孔の全てが閉塞されることない。したがって、駆動手段に故障や誤作動が生じた場合であっても、3つの個別排気管が全て閉塞する全閉状態の発生を、確実に防止することができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記連通孔は、前記排気導入室の壁(59)に貫通して形成され、各個別排気管は、それぞれ対応する連通孔に接続され、前記排気導入室内には、各連通孔の全周縁から延びる筒部(63,73,83)が形成されており、前記回転部材は、前記筒部の先端面に接している、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、排気導入室の壁に、複数の連通孔が貫通して形成される。各個別排気管は、対応する連通孔に接続されている。そして、排気導入室内には、各連通孔の全周縁から延びる筒部が形成されている。さらに、回転部材は、複数の筒部の各先端面に接している。このため、選択孔を1つの連通孔に対向させることにより、当該連通孔を開放させるとともに、他の2つの連通孔を回転部材によって閉塞させることができる。これにより、排気導入室に導入された排気を、3つの個別排気管のうち所望の個別排気管に良好に流通させることができる。
【0018】
また、排気導入室の壁に貫通して形成された連通孔の開閉によって、排気導入室と個別排気管との間の連通/非連通が切り換えられる。このため、筒部の高さを比較的小さく設定することができ、この場合、回転部材を、連通孔が形成される壁に接近して配置させることができる。したがって、排気導入室の小型化を図ることができ、これにより、装置の小型化を図ることができる。
【0019】
請求項3記載に記載のように、前記選択孔(49)は、前記回転軸線を中心とする円弧形状に形成されていてもよい。
また、請求項4に記載のように、前記選択孔(199A)は、前記回転軸線を中心とする扇形状に形成されていてもよい。
さらに、請求項5に記載のように、前記選択孔は、前記回転部材がその周縁から切り欠かれることにより形成された切欠(199B)であってもよい。
【0020】
請求項6記載の発明は、前記排気導入室の壁(209)には、各個別排気管に対応して、3つの接続孔(212;222;232)が前記回転軸線を中心とする円周上に当該円周方向に間隔を空けて形成され、前記3つの個別排気管は、それぞれ対応する前記接続孔に接続され、前記排気導入室内には、前記3つの接続孔の周囲を一括して取り囲む周壁(241,242)と、互いに隣り合う前記接続孔の間を延び、前記周壁と同じ高さを有し、前記周壁により囲まれる空間を3つの分離空間(SS1,SS2,SS3)に分離する分離壁(243,244,245)とが形成され、前記回転部材は、前記分離空間を閉塞するように、前記周壁および前記分離壁の先端面に接しており、前記連通孔は、前記周壁および前記分離壁の先端部により区画形成される前記分離空間の開口(246,247,248)である、請求項1に記載の基板処理装置である。
【0021】
この構成によれば、排気導入室内に、周壁と分離壁とによって区画された分離空間が形成されている。この分離空間の開口によって連通孔が形成される。そして、回転部材は、周壁および分離壁の各先端面に接している。このため、選択孔を1つの開口に対向させることにより、当該開口を含む分離空間を開放させるとともに、他の2つの分離空間を回転部材によって閉塞させることができる。これにより、排気導入室に導入された排気を、3つの個別排気管のうち所望の個別排気管に流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置の構成を概念的に示す断面図である。
【図2】図1に示す排気切換器の構成を示す断面図である。
【図3】図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。
【図4】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す基板処理装置において行われる処理例を説明するための工程図である。
【図6】本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る基板処理装置の排気切換器の構成を示す分解斜視図である。
【図7】図6に示す排気切換器の構成を示す断面図である。
【図8】図7の切断面線VIII−VIIIから見た図である。
【図9】本発明の他の実施形態(第3実施形態)に係る基板処理装置の排気切換器の断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態(第4実施形態)に係る基板処理装置の排気切換器の断面図である。
【図11】従来の排気切換器の構成を図解的に示す断面図である。
【図12】図11の切断面線XII−XIIから見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態(第1実施形態)に係る基板処理装置1の構成を概念的に示す断面図である。この基板処理装置1は、第1処理流体としてのアルカリ性薬液、第2処理流体としての酸性薬液、第3処理流体としての有機溶剤の蒸気、および純水(deionized water)を用いて、基板の一例である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wから汚染物質を除去するための洗浄処理を実行するための装置である。この実施形態では、酸性薬液としてSC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)が用いられ、アルカリ性薬液としてふっ酸(HF)が用いられ、有機溶剤としてIPA(isopropanol)が用いられる。
【0024】
この基板処理装置1は、隔壁2により区画された処理室3内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック4と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(上面)にSC1を供給するための第1ノズル5と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面にふっ酸を供給するための第2ノズル6と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面に純水を供給するための純水ノズル7と、スピンチャック4を収容するカップ8とを備えている。
【0025】
スピンチャック4は、ほぼ鉛直に配置されたスピン軸(図示しない)の上端に固定された円盤状のスピンベース10と、スピンベース10の下方に配置されて、スピン軸を駆動するためのスピンモータ12と、スピンベース10の周縁部に配置された複数の挟持部材11とを備えている。複数の挟持部材11は、スピン軸の中心軸線を中心とする円周上にほぼ等角度間隔で配置されている。
【0026】
なお、スピンチャック4としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
第1ノズル5は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びる第1アーム13の先端部に取り付けられている。第1アーム13の基端部は、カップ8の側方においてほぼ鉛直に延びる第1支持軸14の上端部に支持されている。第1支持軸14には、モータ(図示しない)を含む第1ノズル駆動機構15が結合されている。第1ノズル駆動機構15から第1支持軸14に回転力を入力して、第1支持軸14を回動させることにより、スピンチャック4の上方で第1アーム13を揺動させることができる。
【0027】
第1ノズル5には、SC1供給源からSC1が供給されるSC1供給管16が接続されている。SC1供給管16の途中部には、SC1供給管16を開閉するためのSC1バルブ17が介装されている。SC1バルブ17が開かれると、SC1供給管16から第1ノズル5にSC1が供給され、第1ノズル5からSC1が吐出される。
スピンチャック4にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第1ノズル5が配置された状態で、第1ノズル5からSC1を吐出させることにより、ウエハWの表面にSC1を供給することができる。そして、この第1ノズル5からウエハWの表面へのSC1の供給時に、第1アーム13を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面におけるSC1の供給位置を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0028】
第2ノズル6は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びる第2アーム18の先端部に取り付けられている。第2アーム18の基端部は、カップ8の側方においてほぼ鉛直に延びる第2支持軸19の上端部に支持されている。第2支持軸19には、モータ(図示しない)を含む第2ノズル駆動機構20が結合されている。第2ノズル駆動機構20から第2支持軸19に回転力を入力して、第2支持軸19を回動させることにより、スピンチャック4の上方で第2アーム18を揺動させることができる。
【0029】
第2ノズル6には、ふっ酸供給源からふっ酸が供給されるふっ酸供給管21が接続されている。ふっ酸供給管21の途中部には、ふっ酸供給管21を開閉するためのふっ酸バルブ22が介装されている。ふっ酸バルブ22が開かれると、ふっ酸供給管21から第2ノズル6にふっ酸が供給され、第2ノズル6からふっ酸が吐出される。
スピンチャック4にウエハWが保持され、そのウエハWの上方に第2ノズル6が配置された状態で、第2ノズル6からふっ酸を吐出させることにより、ウエハWの表面にふっ酸を供給することができる。そして、この第2ノズル6からウエハWの表面へのふっ酸の供給時に、第2アーム18を所定の角度範囲内で揺動させることにより、ウエハWの表面におけるふっ酸の供給位置を、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ移動させることができる。
【0030】
純水ノズル7は、スピンチャック4の上方に、スピンチャック4に対して固定的に配置されている。純水ノズル7には、純水供給ライン(図示しない)から純水が供給される純水下供給管23が接続されている。純水下供給管23の途中部には、純水下供給管23を開閉するための純水下バルブ24が介装されている。純水下バルブ24が開かれると、純水下供給管23から純水ノズル7に純水が供給され、純水ノズル7から純水が吐出される。スピンチャック4にウエハWが保持された状態で、純水ノズル7から純水を吐出させることにより、ウエハWの表面の中央部に純水を供給することができる。
【0031】
スピンチャック4の上方には、ウエハWとほぼ同じ径を有する円板状の遮断板25が設けられている。遮断板25の上面には、スピンチャック4のスピン軸と共通の軸線に沿う回転軸26が固定されている。この回転軸26は中空に形成されていて、その内部には、ウエハWの中心部に向けて、純水、IPA蒸気、および不活性ガスとしての窒素ガスを供給するための上供給路27が形成されている。この上供給路27の下端は、遮断板25の下面の中心に開口して中心吐出口28が形成されている。上供給路27には、純水供給ライン(図示しない)から純水が供給される純水上供給管29と、窒素ガス供給源から窒素ガスが供給される窒素ガス供給管30と、IPA供給源からIPA蒸気が供給されるIPA供給管31とが接続されている。純水上供給管29の途中部には、純水上供給管29を開閉するための純水上バルブ32が介装されている。窒素ガス供給管30の途中部には、窒素ガス供給管30を開閉するための窒素ガスバルブ33が介装されている。IPA供給管31の途中部には、IPA供給管31を開閉するためのIPAバルブ34が介装されている。
【0032】
窒素ガスバルブ33およびIPAバルブ34が閉じられた状態で、純水上バルブ32が開かれると、純水上供給管29から上供給路27に純水が供給されて、中心吐出口28から純水が吐出される。スピンチャック4にウエハWが保持された状態で、中心吐出口28から純水を吐出させることにより、ウエハWの表面の中央部に純水を供給することができる。
【0033】
純水上バルブ32およびIPAバルブ34が閉じられた状態で、窒素ガスバルブ33が開かれると、窒素ガス供給管30から上供給路27に窒素ガスが供給されて、中心吐出口28から窒素ガスが吐出される。スピンチャック4にウエハWが保持された状態で、中心吐出口28から窒素ガスを吐出させることにより、ウエハWの表面の中央部に窒素ガスを供給することができる。
【0034】
また、純水上バルブ32および窒素ガスバルブ33が閉じられた状態で、IPAバルブ34が開かれると、IPA供給管31から上供給路27にIPA蒸気が供給されて、中心吐出口28からIPA蒸気が吐出される。スピンチャック4にウエハWが保持された状態で、中心吐出口28からIPA蒸気を吐出させることにより、ウエハWの表面の中央部にIPA蒸気を供給することができる。このように、中心吐出口28から純水、窒素ガスおよびIPA蒸気を選択的に吐出させることができる。
【0035】
回転軸26には、遮断板25をスピンチャック4に保持されたウエハWの表面に近接した近接位置とスピンチャック4の上方に大きく退避した退避位置との間で昇降させるための遮断板昇降駆動機構35が結合されている。
カップ8は、有底円筒容器状の下カップ40と、この下カップ40の上方で、下カップ40に対して昇降可能なスプラッシュガード41とを備えている。
【0036】
カップ8の底部には、処理液(純水)を廃液するとともにカップ8内を排気するための排気液溝42が、ウエハWの回転軸線(スピンチャック4のスピン軸の中心軸線)を中心とする円環状に形成されている。排気液溝42を区画する底壁には、カップ8内の雰囲気を排気するための排気孔(図示しない)が形成されている。
また、カップ8の底部には、排気液溝42を取り囲むように、SC1を回収するための第1回収溝43およびふっ酸を回収するための第2回収溝44が2重円環状に形成されている。排気液溝42の外側に第2回収溝44が形成され、第2回収溝44の外側に第1回収溝43が形成されている。排気液溝42には集合管45が接続されている。第1回収溝43にはSC1回収管47が接続されている。第2回収溝44にはふっ酸回収管48が接続されている。
【0037】
集合管45は処理室3の外方に延びて、その下流端が排気切換器50に接続されている。排気切換器50には、第1個別排気管60、第2個別排気管70および第3個別排気管80が接続されている。排気切換器50は、集合管45を流通する排気の流通先を、3つの個別排気管60,70,80の間で切り換えるためのものである。第1個別排気管60の下流端は、SC1を含む排気を処理するためのSC1排気処理設備61に接続されている。第2個別排気管70の下流端は、ふっ酸排気処理設備71に接続されている。第3個別排気管80の下流端は、IPA排気処理設備81に接続されている。
【0038】
集合管45の途中部には、排気に含まれる処理液を除去するための気液分離器51が介装されている。気液分離器51には、排気から除去された処理液(純水など)を廃棄するための廃液管53が接続されている。廃液管53は廃液処理設備(図示しない)に接続されている。
排気源としての排気処理設備61,71,81は常に負圧に維持されているため、排気液溝42内が強制的に排気されている。このため、カップ8内からの排気が、排気液溝42に集められた処理液(純水など)とともに、集合管45を通って気液分離器51に導かれ、気液分離器51によって処理液が除去される。その後、排気は排気切換器50へと導かれた後、3つの個別排気管60,70,80のうち1つの個別排気管を通って、排気処理設備61,71,81に向けて導かれる。一方、気液分離器51により排気から分離された処理液は、廃液管53を通って、廃液処理設備(図示しない)へと導かれる。
【0039】
スプラッシュガード41は、互いに大きさが異なる3つの傘状部材90,91,92を重ねて構成されている。スプラッシュガード41には、たとえば、サーボモータやボールねじ機構などを含むガード昇降機構93が結合されている。このガード昇降機構93によって、スプラッシュガード41をカップ8に対して昇降(上下動)させることができる。
各傘状部材90,91,92は、ウエハWの回転軸線に対してほぼ回転対称な形状を有している。
【0040】
傘状部材90は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒状の円筒部94と、円筒部94の上端から延びてウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部95と、傾斜部95の途中部から下方に延びる排気液案内部96とを備えている。排気液案内部96の下端は、排気液溝42上に位置している。円筒部94の下端は、第2回収溝44上に位置している。また、排気液案内部96および円筒部94は、スプラッシュガード41が最下方の退避位置に下降したときに、それぞれの下端がカップ8の底面に接触しないような長さを有している。
【0041】
傘状部材91は、傘状部材90を取り囲むように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする同軸円筒状の円筒部97,98と、これら円筒部97,98の上端を連結し、ウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部99とを一体的に備えている。内側(中心側)の円筒部97の下端は、第2回収溝44上に位置し、外側の円筒部98の下端は、第1回収溝43上に位置している。また、円筒部97,98は、スプラッシュガード41が最下方の退避位置に下降したときに、それぞれの下端がカップ8の底面に接触しないような長さを有している。
【0042】
傘状部材92は、傘状部材91を取り囲むように設けられ、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒状の円筒部100と、この円筒部100の上端からウエハWの回転軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部101とを備えている。円筒部100は、第2回収溝44上に位置しており、スプラッシュガード41が最下方の退避位置に下降したときに、その下端がカップ8の底面に接触しないような長さを有している。
【0043】
傾斜部95,99,101の上端縁は、ウエハWの回転軸線を中心軸線とする円筒面上において、そのウエハWの回転軸線に沿う方向(鉛直方向)に間隔を空けて位置している。これにより、傾斜部101の上端縁と傾斜部99の上端縁との間には、ウエハWから飛散するSC1を進入させるための円環状の第1開口部102が形成されている。また、傾斜部99の上端縁と傾斜部95の上端縁との間には、ウエハWから飛散するふっ酸を進入させるための円環状の第2開口部103が形成されている。さらに、傾斜部95の上端縁の下方には、ウエハWから飛散する純水を進入させるための円環状の第3開口部104が形成されている。
【0044】
第1開口部102に進入したSC1は、傘状部材92の内壁と傘状部材91の外壁との間を通して、第1回収溝43に集められる。第1回収溝43に集められたSC1は、SC1回収管47を通して、SC1回収処理設備(図示しない)に回収される。
第2開口部103に進入したふっ酸は、傘状部材91の内壁と傘状部材90の外壁との間を通して、第2回収溝44に集められる。第2回収溝44に集められたふっ酸は、ふっ酸回収管48を通して、ふっ酸回収処理設備(図示しない)に回収される。
【0045】
また、第3開口部104に進入した純水は、傘状部材90の排気液案内部96の内壁を伝って、排気液溝42に導かれる。排気液溝42に導かれた純水は、集合管45および廃液管53を通して廃液される。
図2は、図1に示す排気切換器50の構成を示す断面図である。
排気切換器50は、集合管45から排気が導入される排気導入室54と、排気導入室54の内部に回転可能に設けられた回転部材としての回転板55とを備えている。排気導入室54の本体は、一方側の側面(図2で示す左側面)が開放した四角箱状の箱体56と、箱体56の開放面を覆う四角板状の蓋体57とを備えている。
【0046】
蓋体57の中央部には、1つの導入接続孔58が形成されている。この導入接続孔58には、集合管45の下流端が接続されている。
箱体56における蓋体57と対向する側壁(図2で示す右側の壁)59には、3つの導出接続孔(連通孔)62,72,82(第1導出接続孔62、第2導出接続孔72および第3導出接続孔82(図3(a)〜図3(d)参照)が貫通して形成されている。これらの導出接続孔62,72,82は、側壁59と直交する回転軸線C(後述する)を中心とする円周上に、その円周方向に等角度間隔に(120°ずつ間隔を空けて)形成されている(図3参照)。3つの導出接続孔62,72,82は、ほぼ同じ大きさを有する円形孔である。第1導出接続孔62には、第1個別排気管60の上流端が接続されている。第2導出接続孔72には、第2個別排気管70の上流端が接続されている。第3導出接続孔82には、第3個別排気管80の上流端が接続されている。
【0047】
側壁59には、蓋体57側に向けて延びる3つの円筒部63,73,83(第1円筒部63、第2円筒部73および第3円筒部83)が形成されている。第1円筒部63は、側壁59における第1導出接続孔62の全周縁から、側壁59と直交する方向に延びている。第2円筒部73は、側壁59における第2導出接続孔72の全周縁から、側壁59と直交する方向に延びている。第3円筒部83は、側壁59における第3導出接続孔82の全周縁から、側壁59と直交する方向に延びている。これらの円筒部63,73,83は同じ高さを有しているが、その高さは比較的小さく設定されている(たとえば5mm程度)。
【0048】
回転板55は、円板形状をなし、側壁59に接近して配置されている。回転板55は、側壁59に、回転軸線Cまわりに回転可能に支持されている。具体的には、回転板55には、側壁59と直交する方向に延びる回転シャフト110が接合板109を介して固定されている。回転シャフト110は、側壁59の中央部に固定された軸受111により回転可能に支持されている。回転板55は、サーボモータなどを含む回転板駆動モータ112により回転駆動される。回転板駆動モータ112は、側壁59の外面に固定されたブラケット113に、排気導入室54の外方で支持されている。回転シャフト110は、排気導入室54外に延びて、その他端がカップリング114を介して回転板駆動モータ112の出力軸に駆動連結されている。
【0049】
回転板55は、第1〜第3円筒部63,73,83の先端面に接するように配置されている。そして、回転板55は、その内面が第1〜第3円筒部63,73,83の先端面に接したまま回転する。
回転板55には、1つの選択孔49が貫通して形成されている。この選択孔49と回転軸線Cとの間隔は、回転軸線Cと導出接続孔62,72,82との間の間隔とほぼ同じ大きさに設定されている。このため、回転板55の回転軸線Cまわりの回転に伴って、3つの導出接続孔62,72,82と順に対向する。
【0050】
図3は、図2の切断面線III−IIIから見た断面図である。
選択孔49は、回転軸線Cを中心とする円弧状の長孔に形成されている。選択孔49における回転方向の幅(より詳しくは、各導出接続孔62,72,82の中心を通過する部分における回転方向の幅)W1は、第1導出接続孔62および第2導出接続孔72の間の回転方向の間隔N1(図3(a)参照)、第2導出接続孔72および第3導出接続孔82の間の回転方向の間隔N2(図3(b)参照)、第3導出接続孔82および第1導出接続孔62の回転方向の間隔N3よりも大きい。なお、この実施形態では、第1〜第3導出接続孔N1,N2,N3は、等角度間隔に配置されているので、間隔N1、間隔N2および間隔N3はともに同じ長さである。
【0051】
回転板55が、選択孔49が第1導出接続孔62と対向する状態(以下、「第1対向状態」という。図3(a)参照)にあるときは、第1導出接続孔62が開放し、回転板55によって第2導出接続孔72および第3導出接続孔82が閉塞する。これにより、排気導入室54の内部を第1個別排気管60とのみ連通させることができる。また、回転板55が、選択孔49が第2導出接続孔72と対向する状態(以下、「第2対向状態」という。図3(b)参照)にあるときは、第2導出接続孔72が開放し、回転板55によって第3導出接続孔82および第1導出接続孔62が閉塞する。これにより、排気導入室54の内部を第2個別排気管70とのみ連通させることができる。さらに、回転板55が、選択孔49が第3導出接続孔82と対向する状態(以下、「第3対向状態」という。図3(c)参照)にあるときは、第3導出接続孔82が開放し、回転板55によって第1導出接続孔62および第2導出接続孔72が閉塞する。これにより、排気導入室54の内部を第3個別排気管80とのみ連通させることができる。
【0052】
選択孔49における回転方向の幅W1が、第1導出接続孔62および第2導出接続孔72の間の回転方向の間隔N1よりも大きいので、回転板55が第1対向状態から第2対向状態まで回転移動する際には、選択孔49と第1導出接続孔62との重複が解かれる前に、図3(c)のように選択孔49が第2導出接続孔72と重複する。
また、選択孔49における回転方向の幅W1が、第2導出接続孔72および第3導出接続孔82の間の回転方向の間隔N2よりも大きいので、回転板55が第2対向状態から第3対向状態まで回転移動する際には、選択孔49と第2導出接続孔72との重複が解かれる前に選択孔49が第3導出接続孔82と重複する。
【0053】
さらに、選択孔49における回転方向の幅W1が、第3導出接続孔82および第1導出接続孔62の間の回転方向の間隔N3よりも大きいので、回転板55が第2対向状態から第3対向状態まで回転移動する際には、選択孔49と第3導出接続孔82との重複が解かれる前に選択孔49が第1導出接続孔62と重複する。このため、回転板55がいずれの回転位置にあっても、選択孔49が1つまたは2つの導出接続孔62,72,82に重複し、3つの導出接続孔62,72,82の全てが閉塞することはない。したがって、回転板駆動モータ112に故障や誤作動が生じた場合であっても、第1〜第3導出接続孔62,72,82の全ての閉塞を防止することができる。
【0054】
この排気切換器50では、選択孔49が1つの導出接続孔62,72,82に対向する状態では、排気導入室54の内部が、その導出接続孔62,72,82に対応する1つの個別排気管60,70,80に連通する。そして、回転板55を回転軸線Cを中心として回転させることにより、選択孔49が3つの導出接続孔62,72,82と順に対向する。したがって、回転板55の選択孔49を3つの導出接続孔62,72,82のうち所望の連通孔に対向させておけば、排気導入室54に導入された排気を、3つの個別排気管60,70,80のうち所望の個別排気管に流通させることができる。このため、大型化することなく、処理室3内からの処理流体を含む排気を、所望の個別排気管60,70,80に良好に導くことができる。
【0055】
また、排気導入室54の側壁59に貫通して形成された導出接続孔62,72,82の開閉によって、排気導入室54と個別排気管60,70,80との間の連通/非連通との間の連通/非連通が切り換えられる。このため、各円筒部63,73,83の高さを比較的小さく設定することができ、この場合、回転板55を側壁59に接近して配置させることができる。したがって、排気導入室54の小型化を図ることができ、これにより、基板処理装置1の小型化を図ることができる。
【0056】
図4は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御装置120を備えている。制御装置120には、スピンモータ12、第1ノズル駆動機構15、第2ノズル駆動機構20、遮断板昇降駆動機構35、ガード昇降駆動機構93、ふっ酸バルブ22、SC1バルブ17、純水下バルブ24、純水上バルブ32、窒素ガスバルブ33、IPAバルブ34および回転板駆動モータ112が制御対象として接続されている。
【0057】
図5は、図1に示す基板処理装置1において行われる処理例を説明するための工程図である。
装置運転中は、排気源としての排気処理設備61,71,81が常に負圧に維持されており、排気液溝42内が強制的に排気されている。また、回転板55は第1対向状態に設定されている。
【0058】
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって基板処理装置1内に搬入されて、その表面を上方に向けた状態でスピンチャック4に保持される(ステップS1)。なお、このウエハWの搬入時においては、その搬入の妨げにならないように、スプラッシュガード41が最下方の退避位置に下げられている。この退避位置にあるスプラッシュガード41は、傘状部材92の上端がウエハWの下方に位置している。また、遮断板25は、退避位置(図1に示す位置)に配置されている。
【0059】
ウエハWがスピンチャック4に保持されると、スピンモータ12が制御されて、スピンチャック4によるウエハWの回転(スピンベース10の回転)が開始され(ステップS2)、ウエハWの回転速度が所定の液処理速度(たとえば1500rpm)まで上昇される。また、ガード昇降駆動機構93が制御されて、スプラッシュガード41が、第1開口部102がウエハWの端面に対向する位置まで上昇される。さらに、第1ノズル駆動機構15が制御されて第1アーム13が回動し、第1ノズル5は、スピンチャック4の側方の退避位置からウエハWの上方位置へと移動される。
【0060】
ウエハWの回転速度が所定の液処理速度に達すると、SC1バルブ17が開かれて、第1ノズル5からSC1が吐出される(S3:SC1処理)。このSC1処理では、第1ノズル駆動機構15が駆動されて、第1アーム13が所定の角度範囲内で揺動される。これによって、第1ノズル5からのSC1が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する。また、ウエハWの表面に供給されたSC1は、ウエハWの表面の全域に拡がる。これにより、ウエハWの表面の全域に、SC1がむらなく供給される。第1ノズル5からウエハWの表面にSC1が供給されることにより、そのSC1の化学的能力により、ウエハWの表面に付着しているパーティクルなどの異物を除去することができる。ウエハWの表面に供給されたSC1は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第1開口部102に飛入する。そして、傘状部材92の内または傘状部材91の外壁を伝って第1回収溝43に集められ、SC1回収管47と送られ、SC1回収処理設備(図示しない)へ導かれる。
【0061】
回転中のウエハWの表面にSC1が供給されると、ウエハWの周縁から飛散したSC1が傘状部材91,92の壁面等に衝突することにより、カップ8の内部でSC1のミストが発生し、カップ8の内部の雰囲気は、SC1のミストを含む雰囲気となる。このため、排気液溝42から集合管(集合排気管)45に導入される排気はSC1のミストを含んでおり、この排気が排気切換器50の排気導入室54へと導入される。このとき、回転板55が第1対向状態(図3(a)参照)に位置しているので、排気導入室54に導入された排気雰囲気は、第1個別排気管60へと導入され、第1個別排気管60を流通してSC1排気処理設備61へと導かれる。
【0062】
ウエハWへのSC1の供給開始からSC1処理時間(たとえば30秒間)が経過すると、SC1バルブ17が閉じられて、第1ノズル5からのSC1の供給が停止されるとともに、第1ノズル駆動機構15が制御されて第1アーム13が回動し、第1ノズル5は、ウエハWの上方位置からスピンチャック4の側方の退避位置に退避される。また、ガード昇降駆動機構93が駆動されて、ウエハWの端面に第3開口部104が対向する位置までスプラッシュガード41が上げられる。
【0063】
スプラッシュガード41の上昇後、純水下バルブ24が開かれて、純水ノズル7の吐出口から、回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けて純水が吐出される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSC1が純水によって洗い流される(S4:リンス処理)。ウエハWの周縁に向けて流れる純水は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWの周縁から飛散する純水(ウエハWから洗い流されたSC1を含む)は、ウエハWの端面に対向している第3開口部104に捕獲され、傘状部材90の内壁を伝って排気液溝42に集められ、その排気液溝42から集合管45および廃液管53を通して廃液処理設備(図示しない)へ導かれる。
【0064】
ウエハWへの純水の供給開始から所定のリンス時間(たとえば30秒間)が経過すると、純水下バルブ24が閉じられて、純水ノズル7からの純水の供給が停止される。また、ガード昇降駆動機構93が制御されて、スプラッシュガード41が、第2開口部103がウエハWの端面に対向する位置まで上昇される。さらに、第2ノズル駆動機構20が制御されて第2アーム18が回動し、第2ノズル6は、スピンチャック4の側方の退避位置からウエハWの上方位置へと移動される。純水の供給開始から所定のリンス時間(たとえば30秒間)が経過すると、純水上バルブ32が閉じられて、中心吐出口28からの純水の吐出が停止される。さらにまた、回転板駆動モータ112が駆動されて、回転板55が第2対向状態まで回転移動される。
【0065】
第2ノズル6がウエハWの上方位置へ達すると、ふっ酸バルブ22が開かれて、第2ノズル6からふっ酸が吐出される(S5:ふっ酸処理)。このふっ酸処理では、第2ノズル駆動機構20が駆動されて、第2アーム18が所定の角度範囲内で揺動される。これによって、第2ノズル6からのふっ酸が導かれるウエハWの表面上の供給位置は、ウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を、ウエハWの回転方向と交差する円弧状の軌跡を描きつつ往復移動する。また、ウエハWの表面に供給されたふっ酸は、ウエハWの表面の全域に拡がる。これにより、ウエハWの表面の全域に、ふっ酸がむらなく供給される。第2ノズル6からウエハWの表面にふっ酸が供給されることにより、そのふっ酸の化学的能力により、ウエハWの表面に形成される酸化膜を除去することができる。ウエハWの表面に供給されたふっ酸は、ウエハWの周縁から側方へ飛散し、ウエハWの端面に対向している第2開口部103に飛入する。そして、傘状部材91の内壁または傘状部材90の外壁を伝って第2回収溝44に集められ、ふっ酸回収管48と送られ、ふっ酸回収設処理設備(図示しない)へ導かれる。
【0066】
回転中のウエハWの表面にふっ酸が供給されると、ウエハWの周縁から飛散したふっ酸が傘状部材90,91の壁面等に衝突することにより、カップ8の内部でふっ酸のミストが発生し、カップ8の内部の雰囲気は、ふっ酸のミストを含む雰囲気となる。このため、排気液溝42から集合管45に導入される排気はふっ酸のミストを含んでおり、この排気が排気切換器50の排気導入室54へと導入される。このとき、回転板55が第2対向状態(図3(b)参照)に位置しているので、排気導入室54に導入された排気雰囲気は、第2個別排気管70へと導入され、第2個別排気管70を流通してふっ酸排気処理設備71へと導かれる。
【0067】
ウエハWへのふっ酸の供給開始から所定のふっ酸処理時間(たとえば30秒間)が経過すると、ふっ酸バルブ22が閉じられて、第2ノズル6からのふっ酸の供給が停止されるとともに、第2ノズル駆動機構20が制御されて第2アーム18が回動し、第2ノズル6は、ウエハWの上方位置からスピンチャック4の側方の退避位置に退避される。また、ガード昇降駆動機構93が駆動されて、ウエハWの端面に第3開口部104が対向する位置までスプラッシュガード41が上げられる。
【0068】
さらに、遮断板昇降駆動機構35が制御されて、遮断板25が近接位置まで下げられる。
遮断板25が近接位置まで下降すると、純水上バルブ32が開かれて、上供給路27の中心吐出口28から回転状態にあるウエハWの表面の回転中心に向けて純水が吐出される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力によって、ウエハWの周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているふっ酸が純水によって洗い流される(S6:リンス処理)。ウエハWの周縁に向けて流れる純水は、ウエハWの周縁から側方へ飛散する。ウエハWの周縁から飛散する純水(ウエハWから洗い流されたふっ酸を含む)は、ウエハWの端面に対向している第3開口部104に捕獲され、傘状部材90の内壁を伝って排気液溝42に集められ、その排気液溝42から集合管45および廃液管53を通して廃液処理設備(図示しない)へ導かれる。
【0069】
純水の供給開始から所定のリンス時間(たとえば30秒間)が経過すると、純水上バルブ32が閉じられて、中心吐出口28からの純水の吐出が停止される。また、回転板駆動モータ112が駆動されて、回転板55が第3対向状態まで回転移動される。その後、IPAバルブ34が開かれて、中心吐出口28からIPA蒸気が吐出される。このIPA蒸気によって、ウエハWの表面に付着している純水がIPAに置換され、IPAの揮発性によってウエハWの表面が乾燥されていく(S7:置換処理)。
【0070】
中心吐出口28からIPA蒸気が吐出されると、カップ8の内部の雰囲気は、IPA蒸気を含む雰囲気となる。このため、排気液溝42から集合管45に導入される排気はIPA蒸気を含んでおり、この排気が排気切換器50の排気導入室54へと導入される。このとき、回転板55が第3対向状態(図3(c)参照)に位置しているので、排気導入室54に導入された排気雰囲気は、第3個別排気管80へと導入され、第3個別排気管80を流通してIPA排気処理設備81へと導かれる。
【0071】
IPA蒸気の供給開始から所定の置換時間(たとえば30秒間)が経過すると、IPAバルブ34が閉じられて、ウエハWへのIPA蒸気の供給が停止される。その後、ガード昇降駆動機構93が駆動されて、スプラッシュガード41が最下方の退避位置まで下げられる。さらに、回転板駆動モータ112が駆動されて、回転板55が第1対向状態まで回転移動される。さらにまた、窒素ガスバルブ33が開かれて、中心吐出口28から、ウエハWの表面と遮断板25の下面との間に窒素ガスが供給される。これにより、ウエハWの表面と遮断板25の下面との間が窒素ガスで充満される。
【0072】
また、ウエハWの回転速度がスピンドライ回転速度(たとえば3000rpm)に上げられる。これにより、リンス処理後のウエハWの表面に付着している純水を遠心力で振り切って乾燥させるスピンドライ処理が実施される(ステップS8)。
スピンドライ処理が所定のスピンドライ時間にわたって行われると、スピンチャック4の回転が停止され(ステップS9)、窒素ガスバルブ33が閉じられる。また、遮断板昇降駆動機構35が制御されて、遮断板25が離間位置まで上昇される。その後、基板搬送ロボットによって処理済のウエハWが搬出される(ステップS10)。
【0073】
以上によりこの実施形態によれば、処理室3の内部で使用されている処理流体(SC1、ふっ酸およびIPA蒸気)の種別に応じて、集合管45を流通する排気の流通先を、3つの個別排気管60,70,80の間で切り換えることができる。これにより、3種類の処理流体(SC1、ふっ酸およびIPA蒸気)を含む排気を、互いに異なる排気処理設備61,71,81に導くことができる。
【0074】
図6は、本発明の他の実施形態(第2実施形態)に係る基板処理装置150の排気切換器200の構成を示す分解斜視図である。図7は、図6に示す排気切換器200の構成を示す断面図である。図8は、図7の切断面線VIII−VIIIから見た図である。この第2実施形態において、第1実施形態に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
【0075】
この第2実施形態では、図2に示す排気切換器50に代えて排気切換器200が設けられている。
排気切換器200は、集合管45(図7参照)から排気が導入される排気導入室204と、排気導入室204の内部に回転可能に設けられた回転部材としての回転板205とを備えている。排気導入室204の本体は、一方側の側面(図7で示す左側面)が開放した四角箱状の箱体206と、箱体206の開放面を覆う四角板状の蓋体207とを備えている。
【0076】
蓋体207の中央部には、1つの導入接続孔208が形成されている。この導入接続孔208には、集合管45の下流端が接続されている。
蓋体207と対向する箱体206の側壁(図7で示す右側の壁)209は、鉛直に延びている。側壁209には、3つの導出接続孔(接続孔)212,222,232(第1導出接続孔212、第2導出接続孔222および第3導出接続孔232(図8(c)参照))が貫通して形成されている。これらの導出接続孔212,222,232は、側壁209と直交する回転軸線C1(後述する)を中心とする円周上に、その円周方向に等角度間隔に(120°ずつ間隔を空けて)形成されている(図8(c)参照)。3つの導出接続孔212,222,232は、ほぼ同じ大きさを有する円形孔である。第1導出接続孔212には、第1個別排気管60の上流端が接続されている。第2導出接続孔222には、第2個別排気管70の上流端が接続されている。第3導出接続孔232には、第3個別排気管80の上流端が接続されている。
【0077】
回転板205と側壁209との間には、この回転板205と側壁209との間の間隔を規制するためのスペーサ240が配置されている。このスペーサ240は、側壁209の中央部に対向する円筒状の内側周壁241と、3つの導出接続孔212,222,232の外側を一括して、その周囲を取り囲む円筒状の外側周壁242と、内側周壁241と外側周壁242とにより囲まれる空間を、3つの分離空間SS1,SS2,SS3に分離する3つの分離壁243,244,245(第1分離壁243、第2分離壁244および第3分離壁245。図6および図8参照)を備えている。第1、第2および第3分離壁243,244,245は、回転軸線C1を中心とする放射状に形成されている。内側周壁241、外側周壁242、第1分離壁243、第2分離壁244および第3分離壁245は、側壁209の内面から側壁209と直交する方向に延びている。
【0078】
具体的には、第1分離壁243は、第1導出接続孔212と第2導出接続孔222との間を延びて形成されている。第2分離壁244は、第2導出接続孔222と第3導出接続孔232との間を延びて形成されている。第3分離壁245は、第3導出接続孔232と第1導出接続孔212との間を延びて形成されている。第1、第2および第3分離壁243,244,245および周壁241,242は、同じ高さを有している。
【0079】
内側周壁241、外側周壁242、第3分離壁245および第1分離壁243によって、第1導出接続孔212と連通する第1分離空間SS1が区画形成されている。この第1分離空間SS1は、側壁209と反対側に第1開口246を有している。この第1開口246は、内側周壁241の先端部、外側周壁242の先端部、第3分離壁245の先端部および第1分離壁243の先端部によって区画形成されている。第1分離空間SS1は、側壁209に沿う方向の断面形状が回転軸線C1を中心とする扇形状である。
【0080】
内側周壁241、外側周壁242、第1分離壁243および第2分離壁244によって、第2導出接続孔222と連通する第2分離空間SS2が区画形成されている。この第2分離空間SS2は、側壁209と反対側に第2開口247を有している。この第2開口247は、内側周壁241の先端部、外側周壁242の先端部、第1分離壁243の先端部および第2分離壁244の先端部によって区画形成されている。第2分離空間SS2は、側壁209に沿う方向の断面形状が回転軸線C1を中心とする扇形状である。
【0081】
内側周壁241、外側周壁242、第2分離壁244および第3分離壁245によって、第3導出接続孔232と連通する第3分離空間SS3(図7には図示しない。図6および図8参照)が区画形成されている。この第3分離空間SS3は、側壁209と反対側に第3開口248を有している。この第3開口248は、内側周壁241の先端部、外側周壁242の先端部、第2分離壁244の先端部および第3分離壁245の先端部によって区画形成されている。第3分離空間SS3は、側壁209に沿う方向の断面形状が回転軸線C1を中心とする扇形状である。
【0082】
回転板205は、円板形状をなし、側壁209に接近して配置されている。回転板205は、側壁209に、回転軸線C1まわりに回転可能に支持されている。具体的には、回転板205には、側壁209と直交する方向に延びる回転シャフト260の一端部が固定されている。この回転シャフト260は、側壁209に固定された軸受261および内側周壁241のボス部269に固定された軸受270により回転可能に支持されている。回転板205は、サーボモータなどを含む回転板駆動モータ262により回転駆動される。この回転板駆動モータ262は、側壁209の外面に固定されたブラケット263に、排気導入室204の外方で支持されている。回転シャフト260は、排気導入室204外に延びて、その他端がカップリング264を介して回転板駆動モータ262の出力軸に駆動連結されている。回転板205は、その内面が、内側周壁241、外側周壁242および第1〜第3分離壁243,244,245の先端面に接するように配置されており、回転板205は、周壁241,242および分離壁243,244,245の先端面に接したまま回転する。
【0083】
回転板205には、1つの円形の選択孔199が貫通して形成されている。選択孔199の直径D(回転板205の回転方向の幅)は、各開口246,274,248における径方向の幅の半分程度の大きさを有し、第1分離壁243の厚みT1(図8(a)参照)、第2分離壁244の厚みT2(図8(a)参照)および第3分離壁245の厚みT3(図8(a)参照)よりも著しく大きい。なお、この実施形態では、第1〜第3分離壁243,244,245は同じ厚みを有している。
【0084】
選択孔199と回転軸線C1との間隔は、回転軸線C1と導出接続孔212,222,232との間の間隔とほぼ同じ大きさに設定されている。このため、回転板205の回転軸線C1まわりの回転に伴って、3つの導出接続孔212,222,232と順に対向する。
回転板205が、選択孔199が第1開口246と対向する状態(図8(a)参照)にあるときは、第1開口246が開放し、回転板205によって第2開口247および第3開口248が閉塞する。これにより、排気導入室204の内部を第1個別排気管60とのみ連通させることができる。また、回転板205が、選択孔199が第2開口247と対向する状態(図8(b)に実線で図示)にあるときは、第2開口247が開放し、回転板205によって第3開口248および第1開口246が閉塞する。これにより、排気導入室204の内部を第2個別排気管70とのみ連通させることができる。さらに、回転板205が、選択孔199が第3開口248と対向する状態(図8(b)に二点鎖線で図示)にあるときは、第3開口248が開放し、回転板205によって第1開口246および第2開口247が閉塞する。これにより、排気導入室54の内部を第3個別排気管80とのみ連通させることができる。
【0085】
また、選択孔199の直径Dが、分離壁243,244,245の厚みT1,T2,T3よりも著しく大きいので、回転板205がいずれの回転位置にあっても、選択孔199が1つまたは2つの開口246,247,248に重複し、第1〜第3開口246,247,248の全てが閉塞することはない。したがって、回転板205の回転位置によらずに、排気導入室204の内部を、いずれかの個別排気管60,70,80に連通させることができる。
【0086】
したがって、回転板駆動モータ262に故障や誤作動が生じた場合であっても、第1〜第3開口246,247,248の全ての閉塞を防止することができる。
図9は、本発明のさらに他の実施形態(第3実施形態)に係る基板処理装置の排気切換器50Aの構成を示す分解斜視図である。この図9の実施形態において、前述の第1実施形態に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
【0087】
回転板(回転部材)55Aは、円板形状をなし、側壁59に直交する回転軸線Cまわりに回転可能に設けられている。回転板55Aには、1つの選択孔49Aが貫通して形成されている。この選択孔49Aと回転軸線Cとの間隔は、回転軸線Cと導出接続孔62,72,82との間の間隔とほぼ同じ大きさに設定されている。このため、回転板55Aの回転軸線Cまわりの回転に伴って、3つの導出接続孔62,72,82と順に対向する。
【0088】
選択孔49Aは、回転軸線Cを中心とする扇形状に形成されている。この選択孔49Aにおける回転方向の幅(より詳しくは、各導出接続孔62,72,82の中心を通過する部分における回転方向の幅)W2は、第1導出接続孔62および第2導出接続孔72の間の回転方向の間隔N1、第2導出接続孔72および第3導出接続孔82の間の回転方向の間隔N2、第3導出接続孔82および第1導出接続孔62の回転方向の間隔N3よりも大きい。
【0089】
図10は、本発明のさらに他の実施形態(第4実施形態)に係る基板処理装置の排気切換器50Bの構成を示す分解斜視図である。この図10の実施形態において、前述の第1実施形態に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
この図10に示す排気切換器50Bが、第1実施形態の排気切換器50と相違する点は、回転板55Bに形成された選択孔が、周縁部に設けられた切欠49Bである点である。
【0090】
回転板(回転部材)55Bは、円板形状をなし、側壁59に直交する回転軸線Cまわりに回転可能に設けられている。切欠49Bは、回転板55Bの周縁から内側に入り込む円弧形状を有している。切欠49Bは、その内端と回転軸線Cとの間の間隔が、回転軸線Cと導出接続孔62,72,82との間の間隔よりも短くなるように形成されている。このため、切欠49Bは、回転板55Bの回転軸線Cまわりの回転に伴って、3つの導出接続孔62,72,82と順に対向する。
【0091】
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
前述の実施形態では、第1処理流体としてのSC1をし、第2処理流体としてふっ酸(HF)を、第3処理流体としてIPA(isopropanol)蒸気をそれぞれ例示した。しかし、第1処理流体として、SC1以外のアルカリ性薬液(たとえば、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)を用いることもでき、また、第2処理流体として、ふっ酸以外の酸性薬液(たとえば、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液))を用いることもできる。また、第3処理流体として、IPA以外の有機溶剤(たとえば、HFE(ハイドロフルオロエーテル)など)を用いることもできる。
【0092】
前述の実施形態では、3種類の処理流体が使用される処理を例に挙げて、第1処理流体を含む排気、第2処理流体を含む排気および第2処理流体を含む排気が互いに異なる排気設備に導かれるとして説明した。しかし、基板処理装置1,150の処理において、4種類以上の処理流体が使用されるにも適用することができる。この場合、1つの個別排気管62,72,82に2種類以上の処理流体が導かれるようにすればよい。
【0093】
また、前述の4つの実施形態において、排気導入室54,204の箱体56,206の上壁に洗浄用開口が形成されるとともに、底壁にドレン孔が貫通して形成されていてもよい。この場合、洗浄用開口を介して排気導入室54,204内に挿入されたハンドシャワーにより、排気導入室54,204の壁の内面に向けて洗浄液が噴出されることにより、壁の内面に付着した付着物が除去される。洗浄後の洗浄液は、ドレン孔から排出される。
【0094】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 基板処理装置
3 処理室
45 集合管(集合排気管)
49 選択孔
49A 選択孔
49B 切欠
50 排気切換器
51 気液分離器
54 排気導入室
55 回転板(回転部材)
55A 回転板(回転部材)
55B 回転板(回転部材)
59 側壁(壁)
60 第1個別排気管
61 SC1排気処理設備
62 第1導出接続孔(連通孔)
63 第1円筒部(筒部)
70 第2個別排気管
71 ふっ酸排気処理設備
72 第2導出接続孔(連通孔)
73 第2円筒部(筒部)
80 第3個別排気管
81 IPA排気処理設備
82 第3導出接続孔(連通孔)
83 第3円筒部(筒部)
112 回転板駆動モータ
150 基板処理装置
199 選択孔
204 排気導入室
205 回転板(回転部材)
209 側壁(壁)
212 第1導出接続孔(接続孔)
222 第2導出接続孔(接続孔)
232 第3導出接続孔(接続孔)
241 内側周壁
242 外側周壁
243 第1分離壁
244 第2分離壁
245 第3分離壁
246 第1開口
247 第2開口
248 第3開口
262 回転板駆動モータ
C 回転軸線
C1 回転軸線
D 直径(幅)
N1 間隔
N2 間隔
N3 間隔
SS1 第1分離空間
SS2 第2分離空間
SS3 第3分離空間
W ウエハ(基板)
W1 幅
W2 幅
W3 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理のために複数種の処理流体が内部で使用される処理室と、
前記処理室内からの排気が流通する集合排気管と、
前記集合排気管が接続され、前記集合排気管から排気が導入される排気導入室と、
前記排気導入室に接続され、前記排気導入室からの排気が流通する3つの個別排気管と、
前記排気導入室内に、所定の回転軸線を中心に回転可能に設けられる回転部材と、
前記回転部材を回転駆動するための駆動手段とを含み、
前記排気導入室には、各個別排気管に対応して、3つの連通孔が前記回転軸線を中心とする円周上に当該円周方向に間隔を空けて形成されており、
前記3つの個別排気管は、それぞれ対応する前記連通孔と連通し、
前記回転部材には、1つの選択孔が前記回転部材の回転に伴って前記連通孔と順に対向する位置に形成されており、
前記選択孔における前記回転部材の回転方向の幅が、互いに隣り合う前記連通孔の間の間隔よりも大きい、基板処理装置。
【請求項2】
前記連通孔は、前記排気導入室の壁に貫通して形成され、
各個別排気管は、それぞれ対応する連通孔に接続され、
前記排気導入室内には、各連通孔の全周縁から延びる筒部が形成されており、
前記回転部材は、前記筒部の先端面に接している、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記選択孔は、前記回転軸線を中心とする円弧形状に形成されている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記選択孔は、前記回転軸線を中心とする扇形状に形成されている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記選択孔は、前記回転部材がその周縁から切り欠かれることにより形成された切欠である、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記排気導入室の壁には、各個別排気管に対応して、3つの接続孔が前記回転軸線を中心とする円周上に当該円周方向に間隔を空けて形成され、
前記3つの個別排気管は、それぞれ対応する前記接続孔に接続され、
前記排気導入室内には、前記3つの接続孔の周囲を一括して取り囲む周壁と、互いに隣り合う前記接続孔の間を延び、前記周壁と同じ高さを有し、前記周壁により囲まれる空間を3つの分離空間に分離する分離壁とが形成され、
前記回転部材は、前記分離空間を閉塞するように、前記周壁および前記分離壁の先端面に接しており、
前記連通孔は、前記周壁および前記分離壁の先端部により区画形成される前記分離空間の開口である、請求項1に記載の基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−226043(P2010−226043A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74579(P2009−74579)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】