説明

塗布装置、塗布方法及び記憶媒体

【課題】塗布液をスピンコーティング法によって基板へ塗布するにあたって、基板裏面側へのパーティクルの付着を減らし、このパーティクルを洗浄するための溶剤の使用量を抑えることである。
【解決手段】カップ10内のスピンチャック11に保持されたウエハWの周縁部裏面と対向するように、縦断面が山形の塗布液の跳ね返り防止用のガイド部2を設け、このガイド部2の内側に連続してカップ10の下方側外部空間と区画する水平面22を形成する。この水平面22とウエハWとの間の裏側空間23はウエハWの回転により雰囲気が負圧となる空間であり、前記水平面22に開口部25を形成する。そして、ウエハWの回転数に基づいてシャッター6により開口部25の開口量を調整し、またカップ10の底部に接続された排気路中のダンパの開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に塗布液を塗布する塗布装置、塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては塗布液を基板上に塗布する工程があり、塗布する手法としては例えばスピンコーティング法があげられる。このスピンコーティング法は半導体ウエハやLCD用のガラス基板などの基板を基板保持部であるスピンチャックに吸着し、基板の中心部に塗布液を供給すると共に基板を高速で回転させて塗布液を基板の表面に展伸させる手法である。また、塗布液としてはレジスト液が代表的であり、その他には酸化シリコンの前駆物質を含む絶縁膜用の薬液等が用いられている。
【0003】
前記スピンコーティング法で用いられる塗布装置は、図9に示すように下部に廃液路15及び排気路16を備えたカップ10内にスピンチャック11を設けると共に、スピンチャック11上の基板であるウエハWの裏面周縁に近接して対向するように液の跳ね返り防止部2を環状に形成して構成され、スピンチャック11によりウエハWを回転したときに振り切られるミストを排気路15の吸引によりカップ10の下方側に引き込んで廃液路15から排出するようにしている。跳ね返り防止部2よりもスピンチャック11寄りの空間は当該防止部2に連続する区画部22により外部と区画されている。また、この塗布装置の上方側に設けられたファンフィルタユニット(FFU)33から下方側にクリーンエアーが供給されており、このためウエハWの回転による遠心力によって振り切られた塗布液のミストは、排気路15の吸引によりカップ10内に形成されるクリーンエアーの気流に乗って下方へ運ばれ、気液分離されて廃液路15から排出される。
【0004】
ところで、跳ね返り防止部2はカップ10の内壁に衝突した塗布液が基板の裏面側に跳ね返らないように設けられているものであるが、ウエハWを高速で回転させるときに跳ね返り防止部2よりも内側(スピンチャック11側)の空間23が負圧になり、このため飛散した塗布液の微粒子(ミスト)がこの減圧されている空間23に引き込まれウエハWの裏面に付着しパーティクルとなる。このパーティクルを除去するためスピンコーティングに続いて、ウエハWの裏面側に設けられたノズルからウエハWの裏面に溶剤を供給する処理(バックリンス)を行っているが、ウエハWの1枚当りの使用量が数十mlであることから、このバックリンスは一連の塗布処理あるいは現像も加えた液処理の中では、溶剤を最も消費する工程である。このため、毎月の溶剤の総使用量は相当の量となり、バックリンスの溶剤の使用量の低減が望まれている。
【0005】
一方、特許文献1にはスピンチャック軸の周りの区画部に間隙を形成すると共にこの間隙を開閉するシャッターを設け、このシャッターの開閉により基板裏面の負圧空間に気体が流入することで負圧状態を解消し、基板へのパーティクルの付着を低減する装置が記載されている。しかし、基板の回転数によって負圧の程度が変化するため、例えば回転数が低い時は負圧の程度は小さいのでシャッターを大きく開くと、必要以上の気体が前記隙間を介してカップの外からカップ内へ流れ込み、下降気流に影響を与えて基板の表面の気流が乱れ、この結果基板に形成される液膜の面内均一性が損なわれるおそれがある。また逆に、回転数が高い時は負圧の程度は大きいことからシャッターの開きが小さいと、気体の流入が少なく、このため負圧状態が解消されずパーティクルの低減が有効になされるとは言い難
い。
【0006】
【特許文献1】特開平5−6855
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、スピンコーティング法により基板に塗布液を塗布するにあたって基板裏面へのパーティクルの付着を低減することができ、これにより溶剤の使用量を減少することができる塗布装置及び塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗布装置は、下降気流が形成される雰囲気に置かれたカップと、このカップの下部に接続され、当該カップ内雰囲気を吸引排気するための排気路と、を備え、前記カップに囲まれた基板保持部に基板を水平に保持し、この基板の中心部に塗布液を供給すると共に前記基板保持部を介して基板を鉛直軸回りに回転させて塗布液を基板の表面に広げる塗布装置において、
前記基板の裏面側へ液の跳ね返りを抑えるために当該基板の裏面の周縁部に近接して対向して設けられ、基板の裏面側に突出するようにかつ基板の周方向に環状に形成された跳ね返り防止部と、
この跳ね返り防止部から基板の中央寄りに連続し、前記基板の裏面側にカップの下方側外部空間に対して区画された空間を形成する区画部と、
この区画部に形成され、区画部で囲まれる基板の裏面側の空間とカップの下方側外部空間とを連通する開口部と、
この開口部の開口量を調整するための開口量調整手段と、
前記排気路に設けられ、当該排気路の排気量を調整するための排気量調整手段と、
基板の回転数に応じて前記開口量調整手段及び排気量調整手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記制御部は、基板の回転数毎に前記開口部の開口量に対応するデータと排気量に対応するデータとが記憶された記憶部と、この記憶部から基板の回転数に応じたデータを読み出して開口量調整手段及び排気量調整手段の各制御信号を出力する手段と、を備えた構成とすることができる。
【0010】
また、制御部は、塗布レシピ毎に前記開口部の開口量に対応するデータと排気量に対応するデータとの各時系列データを記憶した記憶部と、この記憶部から読み出したデータに基づいて開口量調整手段及び排気量調整手段の各制御信号を出力する手段と、を備えた構成としてもよい。
【0011】
本発明の塗布方法は、カップに囲まれた基板保持部と、この基板保持部に保持された基板の裏面側へ液の跳ね返りを抑えるために当該基板の裏面周縁部に近接して対向するように設けられ、基板の裏面側に突出するようにかつ基板の周方向に環状に形成された跳ね返り防止部と、この跳ね返り防止部から基板の中央寄りに連続し、前記基板の裏面側にカップの下方側外部空間に対して区画された空間を形成する区画部と、この区画部に形成され、区画部で囲まれる基板の裏面側の空間とカップの下方側外部空間とを連通する開口部と、カップの下部に接続され、当該カップ内雰囲気を吸引するための排気路とを備えた塗布装置を用い、
前記カップが置かれる雰囲気に下降気流を形成する工程と、
前記基板保持部に基板を水平に保持する工程と、
この基板の中心部に塗布液を供給すると共に前記基板保持部を介して基板を鉛直軸回りに回転させて塗布液を基板の表面に広げる工程と、
前記基板の回転数に応じて前記開口部の開口量と、前記排気路に設けられた排気量調整手段による排気量とを制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記塗布方法は、基板の回転数毎に前記開口部の開口量に対応するデータと前記排気量に対応するデータとが記憶された記憶部を参照し、基板の回転数に応じた前記開口量に対応するデータと前記排気量に対応するデータとを、コンピュータにより記憶部から読み出す工程と、
読み出したデータに基づいて開口量及び排気量を制御する工程と、を含む構成としてもよい。
【0013】
また、塗布方法は、塗布レシピ毎に前記開口部の開口量に対応するデータと前記排気量に対応するデータとの各時系列データを記憶した記憶部からコンピュータにより前記時系列データを読み出す工程と、
読み出した時系列データに基づいて開口量及び排気量を制御する工程と、を含む構成としてもよい。
【0014】
更に他の発明は、回転する基板に塗布液を塗布する塗布装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、本発明の上記の塗布方法を実施するためのステップ群が組み込まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の裏面側の空間を区画する区画部の開口部の開口量を基板の回転数に基づいて調整することで、カップの外から基板裏面の負圧空間へ吸引される気体の量をコントロールしているため、塗布液のミストが基板の裏面側に引き込まれて生じるパーティクルを低減することができる。この結果、基板裏面に付着するパーティクルの量を減少させることが可能となり、バックリンスの使用量を減らすことができる。さらに、排気路における排気量の調整も前記開口量の調整と併せて行うようにしているため、基板の裏面側の負圧空間への外部からの気体の取り込みに基づく基板周辺の気流の乱れが抑えられ、基板に形成される膜の膜厚プロファイルへの影響も少なく、基板間の膜厚プロファイルのばらつきが小さいので安定した処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明に係る塗布装置の実施形態を示す縦断面図である。この塗布装置は基板であるウエハWを水平に保持して真空吸着する基板保持部であるスピンチャック11を備えており、軸部11aを介して回転駆動部12により昇降可能であり、また鉛直軸周りに回転可能である。このスピンチャック上のウエハWを囲むようにカップ10が設けられ、このカップ10の上部には開口部18がウエハWの受け渡しができるようにウエハWよりも一回り大きく円形状に形成されている。そして、この開口部18の周縁には、その内周面から水平に外方側へ切り欠かれて形成された環状の凹部19が形成されており、この凹部19の底面13はスピンチャック11に保持されたウエハWと略同じ高さに設定されている。当該底面13は回転するウエハWにより生じた気流を制御しウエハWの周縁部のレジスト膜厚を均一にする役割を持っている。また、前記底面13より垂直かつ下方向へ連通路13aが形成され、後述の液受け部14と繋がっている。
【0017】
また、カップ10の底部は液受け部14として構成され、この液受け部14には廃液を排出するための廃液路15が接続されている。さらに、前記液受け部14よりカップ10の中心側には2本の排気路をなす排気管16a、16bが突入して設けられ、この突入部分により気液分離が行われる。この2本の排気管16a、16bは下流において夫々合流し、ダンパー17を介して図示しない工場内の排気ダクトに接続されている。したがって、このダンパー17を開くことによりカップ10内の気体が吸引され、その開度を調整することで排気量を制御できることになる。
【0018】
前記カップ10の内側にはスピンチャック11に保持されたウエハWの裏面周縁部に近接してガイド部2が設けられている。このガイド部2は内側の傾斜面21と外側の傾斜面26とにより山形に形成されかつウエハWの周方向に沿って環状に形成されており、跳ね返り防止部を構成している。さらに、ガイド部2の外端には、垂直かつ下方向に伸びる垂直壁24が前記液受け部14に突入するように設けられている。前記ガイド部2はウエハWより振り切られた塗布液をその表面を介して液受け部14へガイドし、またウエハWの裏面へ塗布液の跳ね返りを防ぐためのものである。前記ガイド部2の傾斜面21の内側には水平面22が設けられており、前記傾斜面21及び水平面22は区画部を構成している。この区画部によりウエハWの裏面側に、カップ10の下方側外部空間と区画された空間が形成される。すなわち、傾斜面21、水平面22とウエハW及びスピンチャック11とで囲まれる環状の空間がウエハWの裏側空間23となる。スピンチャック11の軸部11aが貫通しているので、スピンチャック11の外周と水平面22との間にはわずかな隙間が形成されている。前記裏側空間23はウエハWの回転及び排気管16a及び16bの吸引効果により雰囲気が減圧される空間である。なお、ガイド部2が跳ね返り防止部に相当するので、ウエハWの裏面側に区画された空間(裏側空間23)を形成する部分は跳ね返り防止部も含まれていると捉えることもできるが、技術的な説明には支障がないことから、ガイド部2の上端部に連続する傾斜面21とこれに続く水平面22とが区画部に相当するものとする。また、水平面22の外縁付近にはバックリンスノズル40が設けられ、その先端部位はウエハWの外周縁を向いて構成されている。このバックリンスノズル40は図示しない供給路を介してバックリンス供給源と接続されている。
【0019】
前記カップ10は筐体30に収められており、この筐体30にはウエハWの搬送口31が設けられており、図示しない搬送機構によりこの搬送口31を介してウエハWの受け渡しが行える構成となっている。図中31aは搬送口31を開閉するシャッターである。このシャッター31aはウエハWが前記搬送機構により筺体30の内部に搬出入される場合を除いて閉じられている。また、筐体30の上部にはファンフィルタユニット(FFU)33が設けられ、このFFU33は気体供給路32を介して流入する清浄気体例えばクリーンエアーを下降流として筐体30に供給する役割を有する。なお、図ではFFU33に設けられているファンを省略して記載してある。前記筐体30の底部にはこの筐体30内の気体を排気するための吸引排気路35が設けられている。前記FFU33からの下降流と前述排気管16a及び16bによる吸引とが相俟ってカップ10の開口部18には下降気流が形成される。
【0020】
前記筐体30内には、カップ10の上方に溶剤を吐出する溶剤ノズル41、塗布液を吐出する塗布ノズル42及びリンス液を吐出するリンスノズル43が設けられ、これらノズル41、42、43は夫々供給管41a、42a、43aを介して溶剤供給源51、塗布液供給源52及びリンス液供給源53へ接続されると共に、ウエハW上方の所定位置とカップ10の側方の待機位置との間で図示しない搬送アームにより移動されるように構成されている。
【0021】
前記ガイド部材2の水平面22には下方向へ貫通した開口部25が形成されている。この開口部25は例えば図2に示すようにスピンチャック11の回転中心を中心とする円に沿って円弧状に形成されたスリットとして構成され、スピンチャック11の軸部11aの周囲に前記円に沿って等間隔に4箇所設けられている。前記開口部25は前述の裏側空間23が負圧状態となることにより、カップ10の下方側空間から気体がこの開口部25を介して当該空間23へ流入し、負圧の程度を緩和する役割を持つものである。また、流入する気体がゴミ等を含まないものとなるように交換可能なフィルター26が着脱自在に設けられている。さらに、当該4つの開口部25の下方には夫々4個のシャッター保持台63が設けられ、これら保持台63の上に各々シャッター6が保持され、当該シャッター6により開口部25の開口量が調整されるように構成されている。また、61は支持棒、62は駆動部62である。このシャッター6は、円弧状かつ帯状の形態をしており、前記開口部25を下方より覆うことができるように当該開口部25より一回り大きい構成を取っている。前記駆動部62は、支持棒61を介してシャッター6をウエハWの径方向へ水平移動させることが可能であり、この動作によりシャッター6は開口部25の開口量を調整することができる。
【0022】
次に、図3は制御部7を模式的に説明したものである。この制御部7はコンピューターで構成され、データバス70を備えている。このコンピュータには、本発明の実施形態に係る塗布装置の動作を行うためのコンピュータプログラムがフレキシブルディスク、ハードディスク、MD、メモリーカード、コンパクトディスク等の記憶媒体を介してインストールされている。前記データバス70にはCPU71、格納部72aに格納されたプログラム72、記憶部73、スピンチャック用モータ12、シャッター用駆動部62、ダンパー用駆動部76、レジスト供給系77、サイドリンス供給系78等が接続されている。なお、レジスト供給系77及びサイドリンス供給系78は、液量を調整するためのバルブやポンプで構成されている。前記記憶部73にはウエハWの回転数又は塗布レシピ毎に、開口部25の開口量及び気体の排気量のデータが記憶されている。例えば、プログラム72がウエハWの回転数のデータを取得すると、それに伴い開口部25の開口量及び気体の排気量のデータも取得でき、データバス70を介して各データをシャッター用駆動部62及びダンパー用駆動部76へ夫々出力することができる構成を取っている。
【0023】
次に上述の実施の形態の作用を説明する。図示しない搬送機構を用いてウエハWを前記筐体30内に搬入し、例えば回転駆動部12によりスピンチャック11を上昇させ、当該スピンチャック11にウエハWを載置し真空吸着させる。その後、スピンチャック11は下降してウエハWがカップ10内に収まる。なお、例えば3本の昇降ピンを水平面22を貫通させるように設けて、この3本の昇降ピンによりウエハWの受け渡しを行ってもよい。一方、筐体30内には既述のように下降気流が形成されており、図4(a)に示すように時刻tにおいて、スピンチャック11によりウエハWを例えば2000(rpm)の速度で回転させる。すると前述の下降気流はこの回転するウエハWの遠心力により周縁部に向けて渦巻き状に広がっていく。そして、溶剤ノズル41を図示しない移動機構を用いて待機位置からウエハWの中央上部へ移動させ、この溶剤ノズル41よりウエハWへシンナーを供給しウエハWの表面をシンナーで濡らしレジスト液が伸展しやすい環境に整える(プリウェット)。その後、時刻tでウエハWの回転を一時停止し、溶剤ノズル41を待機位置へ退避させると共に塗布ノズル42をウエハWの中央上部へ移動させる。
【0024】
時刻tにおいて回転数を1500(rpm)まで上昇させてこの状態を例えば1、5秒間維持し、この間に塗布ノズル42よりレジスト液をウエハWへの中央部に供給する。図5(a)に示すように、レジスト液RはウエハWの回転による遠心力により外方向へ伸展されていくと共に余分なレジスト液RはウエハWの表面から振り切られる。この振り切られたレジスト液Rは、前述の下降気流に乗って連通路13aやカップ10とガイド部材2の間を流れていき、前述の液受け部14へ一時的に貯留され、廃液路15よりカップ10の外部へ排出される。そして、レジスト液Rの塗布を終えた塗布ノズル42は待機位置へ退避させられる。回転数1500(rpm)を維持した後、時刻tにてウエハWの回転数を1190(rpm)まで落とし、20秒間ウエハWの表面のレジスト液Rを乾燥させてレジスト膜を形成する。
【0025】
しかる後、時刻tにおいてウエハWの回転数を1000(rpm)まで落とし、サイドリンスノズル43をウエハWの周縁部上へ移動させ、図5(b)に示すように当該ノズル43からウエハW表面の周縁部へ向けてリンス液である溶剤を吐出し、レジスト液の液膜の周縁部を所定の幅でカットすると共に、バックリンスノズル40よりリンス液である溶剤をウエハW裏面の周縁部へ供給し、ウエハWの裏面側に回り込んだレジスト液を除去する。そして、ウエハWを回転し続け、20秒間レジスト液の乾燥を行った後、時刻tで回転を停止し、既述のウエハWの搬入時とは逆の手順でウエハWが搬送機構に受け渡され筺体30から搬出される。
一方、制御部7はウエハWの回転数に対応するシャッター6及びダンパー17の開度に対応するデータを記憶部73から読み出し、このデータに基づいてシャッター6及びダンパー17の駆動部62、76に夫々制御信号を出力する。これによりシャッター6及びダンパー17はウエハWの回転数に応じて、その開度が制御されることとなる。なお、制御部7はウエハWの回転数を制御するときにはレシピに応じて記憶部73から回転数のタイムチャートを読み出すため、この読み出した回転数に基づいて記憶部73からシャッター6及びダンパー17の開度に対応するデータを読み出してもよいが、スピンチャック11の回転数を検出する検出部を設け、この検出部からの回転数の検出値に基づいて前記開度に対応するデータの読み出しを行ってもよい。
【0026】
シャッター6及びダンパー17の動作の一例を夫々図4(b)、(c)に示しておく。時刻tからtまでは回転数が2000(rpm)と高いためウエハW付近の気体は回転による遠心力により外方へ振り切られて、裏側空間23の負圧の程度は大きい。従って、これに対応してシャッター6を大きく開き例えば開口部25のスリット幅を4mmとし、減圧された裏側空間23へ吸引される気体の量が多くなるよう制御する。このため、裏側空間23の雰囲気は、流入してきた気体により負圧の程度が緩和されることになる。また、ダンパー17はウエハWの回転により外方へ振り切られた気流と前述の下降気流とを吸引できるように大きく開き、例えば開度90%に調整される。
【0027】
時刻tからtまではウエハWの回転は停止しているため、裏側空間23の雰囲気は大気圧であり、シャッター6は閉まった状態となり、ダンパー17は例えば開度50%に開かれている。次に、時刻tからtまではウエハWの回転数が1500(rpm)であるため裏側空間23の雰囲気は負圧となり、例えば前記スリット幅が3mm、ダンパー17の開度が75%に調整され、同様にして時刻tからtまではウエハWの回転数は1190(rpm)であるため、例えば前記スリット幅が2.4mm、ダンパー17の開度が67%に調整される。また、時刻tからtまではウエハWの回転数は1000(rpm)であるため、例えば前記スリット幅が2.0mm、ダンパー17の開度が58%に調整され、続いて時刻t以降ではカップ10よりウエハWは搬出されてしまうため、シャッター6を閉じると共にダンパー17の開度を50%に制御し、カップ10内部の下降気流を吸引させる。
【0028】
次にカップ10の内部の気体の流れを図6を用いて説明する。図6(a)はシャッター6が半分開いた状態を示した図である。この場合、図4のタイムチャートよりウエハWの回転数は1000(rpm)であり、スリット幅は2mm、ダンパー17の開度は58%である。前記カップ10内に下降した気体(空気)DはウエハWの回転により渦を巻きながら外方へ拡がっていく。また、裏側空間23に存在する気体(空気)GはウエハWの回転により外方へ押し出され、下降気流を構成する気体Dと共にカップ10の下方へ流れ排気管16aより排出される。このため、裏側空間23の雰囲気は負圧になろうするが、気体Gが裏側空間23から排出される量に見合う量の気体Uがカップ10の下方側外部空間から開口部25を介して当該空間23へ流入し、負圧状態が緩和される。
【0029】
また、図6(b)はシャッター6が全開した状態を示した図である。この時は図4のタイムチャートよりウエハWの回転数は2000(rpm)であり、スリット幅は4mm、ダンパー17の開度は90%である。前記気体DはウエハWの回転数が高いため、先に述べた場合よりも強い渦を巻きながら外方へ拡がり、裏側空間23に存在する気体Gは先の場合よりも多く外方へ押し出され、気体Dと共にカップ10の下方へ流れていき、排気管16aより排出される。そして、回転数1000(rpm)の時に比べ裏側空間23の気体Gの排出量が多くなって、当該空間23の雰囲気が大きく負圧になろうとするが、前記スリット幅が4mmと大きく開いているので、裏側空間23から排出される気体Gの量に見合う量の気体Uが開口部25から当該空間23へ気体Uが流入し、負圧状態が緩和される。この時、カップ10へ流入する気体Uの総量は先の場合よりも多くなるが、排気路16a、b中のダンパー17の開度を、ウエハWの回転数が1000(rpm)の時よりも大きくしているので、ウエハWの周囲から排気路16a、b内に引き込まれる気体の量は概ね等しく、このためウエハWの表面の気流の状態が同じになる。なお、ダンパー17の開度の数値は便宜上の数値であり、ウエハWの回転数にかかわらず(開口部25のスリット幅の大きさにかかわらず)排気路16a、b内に引き込まれる気体の量が揃うように設定される。
【0030】
一方、図7はシャッター6とダンパー17の開閉を連動させずにダンパー17の開度を90%に固定した場合における、カップ10の内部の気流を示した図である。この場合、例えばウエハWの回転数が高い状態かつシャッター6の開度が大きいときは、ウエハWの回転により外方へ振り切られる裏側空間23の気体Gの量が多く、この気体Gと気体Dが排気管16aより吸引されることになる。これは図6(b)の場合と同様のケースである。しかし、ウエハWの回転数が低い状態かつシャッター6の開度が小さいときは、ウエハWの回転により外方へ振り切られる裏側空間23の気体Gの量はウエハWの回転数が高い場合よりも少なく、この少ない気体Gと気体Dが排気管16aより吸引される。従って、この場合には吸引の効果が気体Dに対して過剰に働いてしまうことになる。この結果、ウエハWの表面付近の気流が乱れ、レジスト膜の膜厚の面内のプロファイルに影響を与えてしまうおそれがある。
【0031】
以上説明した本発明の実施形態によれば、ウエハWの回転数に基づいてシャッター6の開閉を制御し、当該ウエハWの裏側空間23が減圧される程度により、この空間23へ流入する気体の量を調整することができる。従って、ウエハWの周縁から当該空間23に向かう気流が抑えられるかあるいはその気流が発生しなくなるので、ウエハWへ付着するパーティクルの量を低減することができ、この結果バックリンスの使用量を低減することが可能となる。また、シャッター6とダンパー17の開閉を連動して制御することにより、シャッター6の開度の大小に応じたウエハWの表面の気流の変化が抑えられるので、プロセス中における気流が安定化し、結果としてシャッター6により開口部25の開度を変えることによる、レジスト膜の膜厚のプロファイルへの影響が少なく、安定した処理を行うことができる。なお、膜厚プロファイルに関係する工程のみダンパー17を調整すれば足りるので、ウエハWへのプリウェット時には調整しなくともよい。
【0032】
また、シャッター6は上下に動くことによって、開口部25の開口量を調整する構成を取ることもできる。この場合は図8(a)に示すように、シャッター6は駆動部62の代わりに昇降部64を有し、この昇降部64に支持棒61が嵌挿される構成を取っている。前記昇降部64は、この嵌挿された支持棒63を昇降させることにより、シャッター6を上下に動かすことができる。この動いている様子を図8(b)に模式的に示した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る塗布装置を示す縦断面図である。
【図2】水平面に形成された開口部とその開口量を調整するシャッターを模式的に示す斜視図である。
【図3】制御部を示す構成図である。
【図4】本発明の実施の形態において、ウエハの回転数と開口量及び排気量のタイムチャートの一例を示した図である。
【図5】ウエハへのレジスト液の塗布及びサイドリンスの供給の様子を模式的に示した説明図である。
【図6】カップ内部の気流の流れを模式的に示した説明図である。
【図7】シャッターとダンパーの動きを連動させない場合のカップ内部の気流の流れを模式的に示した説明図である。
【図8】シャッターの他の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図9】従来の塗布装置の概略断面図を示したものである。
【符号の説明】
【0034】
W ウエハ
10 カップ
11 スピンチャック
12 回転駆動部
16a、b 排気管
17 ダンパー
2 ガイド部
23 裏側空間
25 開口部
34 気体供給部
42 塗布ノズル
6 シャッター
7 制御部
R レジスト液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下降気流が形成される雰囲気に置かれたカップと、このカップの下部に接続され、当該カップ内雰囲気を吸引排気するための排気路と、を備え、前記カップに囲まれた基板保持部に基板を水平に保持し、この基板の中心部に塗布液を供給すると共に前記基板保持部を介して基板を鉛直軸回りに回転させて塗布液を基板の表面に広げる塗布装置において、
前記基板の裏面側へ液の跳ね返りを抑えるために当該基板の裏面の周縁部に近接して対向して設けられ、基板の裏面側に突出するようにかつ基板の周方向に環状に形成された跳ね返り防止部と、
この跳ね返り防止部から基板の中央寄りに連続し、前記基板の裏面側にカップの下方側外部空間に対して区画された空間を形成する区画部と、
この区画部に形成され、区画部で囲まれる基板の裏面側の空間とカップの下方側外部空間とを連通する開口部と、
この開口部の開口量を調整するための開口量調整手段と、
前記排気路に設けられ、当該排気路の排気量を調整するための排気量調整手段と、
基板の回転数に応じて前記開口量調整手段及び排気量調整手段を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、基板の回転数毎に前記開口部の開口量に対応するデータと排気量に対応するデータとが記憶された記憶部と、この記憶部から基板の回転数に応じたデータを読み出して開口量調整手段及び排気量調整手段の各制御信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記制御部は、塗布レシピ毎に前記開口部の開口量に対応するデータと排気量に対応するデータとの各時系列データを記憶した記憶部と、この記憶部から読み出したデータに基づいて開口量調整手段及び排気量調整手段の各制御信号を出力する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項4】
カップに囲まれた基板保持部と、この基板保持部に保持された基板の裏面側へ液の跳ね返りを抑えるために当該基板の裏面周縁部に近接して対向するように設けられ、基板の裏面側に突出するようにかつ基板の周方向に環状に形成された跳ね返り防止部と、この跳ね返り防止部から基板の中央寄りに連続し、前記基板の裏面側にカップの下方側外部空間に対して区画された空間を形成する区画部と、この区画部に形成され、区画部で囲まれる基板の裏面側の空間とカップの下方側外部空間とを連通する開口部と、カップの下部に接続され、当該カップ内雰囲気を吸引するための排気路とを備えた塗布装置を用い、
前記カップが置かれる雰囲気に下降気流を形成する工程と、
前記基板保持部に基板を水平に保持する工程と、
この基板の中心部に塗布液を供給すると共に前記基板保持部を介して基板を鉛直軸回りに回転させて塗布液を基板の表面に広げる工程と、
前記基板の回転数に応じて前記開口部の開口量と、前記排気路に設けられた排気量調整手段による排気量とを制御する工程と、を含むことを特徴とする塗布方法。
【請求項5】
基板の回転数毎に前記開口部の開口量に対応するデータと前記排気量に対応するデータとが記憶された記憶部を参照し、基板の回転数に応じた前記開口量に対応するデータと前記排気量に対応するデータとを、コンピュータにより記憶部から読み出す工程と、
読み出したデータに基づいて開口量及び排気量を制御する工程と、を含むことを特徴とする請求項4記載の塗布方法。
【請求項6】
塗布レシピ毎に前記開口部の開口量に対応するデータと前記排気量に対応するデータとの各時系列データを記憶した記憶部からコンピュータにより前記時系列データを読み出す工程と、
読み出した時系列データに基づいて開口量及び排気量を制御する工程と、を含むことを特徴とする請求項4記載の塗布方法。
【請求項7】
回転する基板に塗布液を塗布する塗布装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項4ないし6のいずれか一つに記載の塗布方法を実施するためのステップ群が組み込まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−277796(P2009−277796A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126271(P2008−126271)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】