説明

変速機の制御装置

【課題】飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することのできる変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置100は、シフトレバー81やステアリングシフトスイッチ91が連続して複数回操作されたときに選択された変速段まで一度の変速段切替操作によって変速段を切り替える飛び越し変速を行う。電子制御装置100は、アクセルペダル60が踏み込まれた状態で飛び越し変速によるシフトダウンが要求されたときに飛び越し変速の実行に先立ち、同飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になるか否かを推定する。電子制御装置100は、飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定されたときに選択された変速段及び同変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段切替操作を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速機の制御装置に関し、特にシフトアップスイッチ及びシフトダウンスイッチを備え、これらのスイッチを操作することによって変速段を切り替えることのできる変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、自動車等の車両に搭載される変速機の制御装置にあっては、車速やアクセル操作量に基づいて自動的に変速段を切り替える自動変速モードに加えて、運転者によるシフトアップスイッチ又はシフトダウンスイッチの操作に基づいて変速段を切り替えることのできる手動変速モードを備えているものがある。
【0003】
こうした手動変速モードにあっては、一般にシフトアップスイッチ又はシフトダウンスイッチが操作されたときに、これに基づいて変速段を1段ずつ切り替える。例えば、変速段が「5速」に設定されているときに、シフトアップスイッチが操作された場合には変速段を「5速」から「6速」に切り替える。一方でシフトダウンスイッチが操作された場合には変速段を「5速」から「4速」に切り替える。
【0004】
ところで、上記のようにスイッチが操作されたことに基づいて1段ずつ変速段を切り替えるようにしている場合には、例えば「6速」から「3速」に変速段を切り替えるべく、シフトダウンスイッチを3回連続して操作したときに変速段が「6速」から「5速」、「5速」から「4速」、「4速」から「3速」へと1段ずつ切り替えられ、3回の変速段切替操作が実行されることとなる。そのため、変速段が「3速」に切り替えられるまでの時間が長くなってしまい、速やかに変速段の切り替えを完了させることができず、運転者の操作に即した態様で迅速に駆動力を増大させたり、エンジンブレーキの作用を増大させたりすることができないおそれがある。
【0005】
これに対して、連続してシフトアップスイッチ又はシフトダウンスイッチの操作がなされたときには最終的に選択された変速段まで一度に変速段を変更するいわゆる飛び越し変速を行うようにすることも考えられる。
【0006】
こうした飛び越し変速を行う場合には、例えば変速段が「6速」に設定されているときに3回連続してシフトダウンスイッチが操作されたときに「5速」、「4速」への変速段の切り替えを行わずに「6速」から直接「3速」へと変速段を切り替える。そのため、一度の変速段切替操作で変速段の切り替えを完了させることができ、変速段の切り替えにかかる時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008‐169916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記のような飛び越し変速を行うと、一度の変速段切替操作の間に変速比が大幅に変化することとなる。そのため、アクセルペダルを踏み込んだ状態での飛び越し変速によるシフトダウンにあっては、変速段切替操作の間に機関回転速度を十分に上昇させることができず、機関回転速度を変速機側の回転速度に同期させることができないおそれがある。
【0009】
例えば、複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより内燃機関に連結された状態で変速段を変更する遊星歯車式の変速段切替機構を備える変速機にあっては、図15の上段に示されるように変速段が「6速」に設定されているときにシフトダウンスイッチが3回連続で操作され、「3速」が選択された場合には、これに基づいて時刻t11において「3速」に対応する変速信号が出力される。そして、この「3速」に対応する変速信号の出力に基づいて変速機において変速段切替操作が実行され、変速機における「6速」の変速段を構成する係合要素の係合が解除されるとともに、「3速」の変速段を構成する係合要素の係合が開始される。そして、時刻t12において「3速」の変速段を構成する係合要素の係合が完了すると、変速段切替操作が完了する。
【0010】
このように「6速」の変速段を構成する係合要素の係合解除が開始されてから新たに選択された「3速」の変速段を構成する係合要素の係合が完了するまでの変速段切替操作の間(図15における変速期間T)には、内燃機関にかかる負荷が低減することとなる。そのため、アクセルペダルが踏み込まれた状態でのシフトダウンのように加速要求に伴うシフトダウンの場合には、変速期間Tの間に機関回転速度が徐々に上昇し、それに伴って内燃機関の出力軸と連結されている変速機の入力軸の回転速度であるタービン回転速度も徐々に上昇するようになる。
【0011】
これに対して変速段切替操作による変速比の変化に伴って、タービン回転速度は変速段切替操作完了時に図15の中央に破線で示されている「6速」の同期回転速度に対応する回転速度から「3速」の同期回転速度に対応する回転速度まで一気に変化することとなる。
【0012】
そのため、変速段切替操作中のタービン回転速度の上昇度合によっては、タービン回転速度が同期回転速度まで上昇する前に変速段切替操作が完了し、変速段切替操作の完了に伴って駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動され、図15に示されるようにタービン回転速度が引き上げられる状態となる。その結果、このときの負荷によって図15の下段に示されるように負のトルクが発生し、加速のためにシフトダウンスイッチを操作しているにも拘わらず、車両が減速してしまうおそれがある。
【0013】
尚、こうした課題は、上記のように内燃機関と連結された状態で変速段を変更する遊星歯車式の変速段切替機構を備える変速機に限らず、変速段切替機構と内燃機関との間の駆動力の伝達を断接するクラッチを備え、クラッチが解放されている間に変速段を切り替える変速機にあっても同様に生じ得るものである。
【0014】
この発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することのできる変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、シフトアップスイッチ及びシフトダウンスイッチを操作することによって変速段を選択することのできる手動変速モードを備え、前記シフトアップスイッチ又は前記シフトダウンスイッチが連続して複数回操作されたときに最終的に選択された変速段まで一度の変速段切替操作によって変速段を切り替える飛び越し変速を行う変速機の制御装置において、アクセルペダルが踏み込まれた状態で前記シフトダウンスイッチが連続して複数回操作されたときに、前記飛び越し変速の実行に先立ち、同飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になるか否かを推定する駆動状態推定手段を備え、同駆動状態推定手段によって前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることが推定されたときに、前記選択された変速段及び同変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段切替操作を禁止することをその要旨とする。
【0016】
上記構成にあっては、アクセルペダルが踏み込まれた状態でシフトダウンスイッチが連続して複数回操作されたとき、すなわち加速要求を伴う飛び越し変速によるシフトダウンが要求されたときに、飛び越し変速の実行に先立ち、同飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になるか否かを推定するようにしている。そして、飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になることが推定されたときには、選択された変速段及び同変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段切替操作を禁止する。そのため、内燃機関が駆動される状態になるような変速比の大きな変速段への飛び越し変速が禁止されるようになる。したがって、変速段切替操作完了に伴って駆動輪側の駆動力によって機関回転速度が引き上げられるような状態になることが抑制され、変速段切替操作の完了に伴って車両が減速してしまうことを抑制することができるようになる。すなわち、上記請求項1に記載の構成によれば、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することができるようになる。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の変速機の制御装置において、前記変速機は、複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより前記内燃機関と連結された状態で変速段を切り替える遊星歯車式の変速段切替機構を備える変速機であり、前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と前記選択された変速段の変速比とに基づいて前記選択された変速段に変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作中の前記変速機の入力軸回転速度を第2推定値として算出し、前記第1推定値が前記第2推定値よりも大きいときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定することをその要旨とする。
【0018】
複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより内燃機関と連結された状態で変速段を切り替える遊星歯車式の変速段切替機構を備える変速機にあっては、変速段切替操作に伴ってそれまで選択されていた変速段を構成する係合要素の係合が解除され、新たに選択された変速段を構成する係合要素が係合されることとなる。
【0019】
このとき、変速機における係合要素の係合が解除されている間には、内燃機関の負荷が低減するため、アクセルペダルを踏み込んだ状態における変速段切替操作の間には、機関回転速度が上昇し、これに伴って内燃機関の出力軸と連結された変速機の入力軸の回転速度も上昇することとなる。そして、このときの機関回転速度及び変速機の入力軸回転速度の上昇度合は、アクセルペダルの踏み込み量に応じて変化し、アクセルペダルの踏み込み量が大きいときほど機関回転速度及び入力軸回転速度が大幅に上昇するようになる。そのため、上記請求項2に記載されているように、変速段切替操作中の入力軸回転速度は、アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作の実行に先立って予め推定することができる。
【0020】
そして、変速機の出力軸回転速度と新たに選択された変速段の変速比とに基づいて算出された第1推定値が、上記のようにアクセルペダルの踏み込み量に基づいて算出された変速段切替操作中の入力軸回転速度の推定値である第2推定値よりも大きい場合には、新たに選択された変速段を構成する係合要素が係合されるときの機関回転速度が、変速比の変化によって上昇する入力軸回転速度未満になることが予測される。
【0021】
そのため、上記請求項2に記載されているように第1推定値が第2推定値よりも大きいときには、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になることを推定することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の変速機の制御装置において、前記変速機は複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより前記内燃機関と連結された状態で変速段を切り替える遊星歯車式の変速段切替機構を備える変速機であり、前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と各変速段の変速比とに基づいて変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として変速段毎に算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作中の前記変速機の入力軸回転速度を第2推定値として算出し、変速段毎に算出された前記第1推定値と前記第2推定値とをそれぞれ比較して前記第1推定値が前記第2推定値以下になる変速段のうち、変速比が最も大きい変速段をシフトダウン下限値として設定し、前記選択された変速段が同シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定することをその要旨とする。
【0023】
選択された変速段が、シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段である場合には、これに基づいて同選択された変速段に対応する第1推定値が第2推定値よりも大きいことが推定される。そのため、この場合には、上記請求項2に記載の発明と同様に、新たに選択された変速段を構成する係合要素が係合されるときの機関回転速度が変速比の変化によって上昇する入力軸回転速度未満になることが予測される。
【0024】
すなわち、上記請求項5に記載されているように選択された変速段が、シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときには、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になることを推定することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の変速機の制御装置において、前記変速機は、変速段を切り替える変速段切替機構と、同変速段切替機構と前記内燃機関との間の駆動力の伝達を断接するクラッチとを備え、同クラッチが解放されている間に変速段を切り替える変速機であり、前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と前記選択された変速段の変速比とに基づいて前記選択された変速段に変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作に伴い前記クラッチが係合される直前の機関回転速度を第2推定値として算出し、前記第1推定値が前記第2推定値よりも大きいときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定することをその要旨とする。
【0026】
変速段を切り替える変速段切替機構と、同変速段切替機構と内燃機関との間の駆動力の伝達を断接するクラッチとを備え、同クラッチが解放されている間に変速段を切り替える変速機にあっては、変速段切替操作に伴って一旦クラッチが解放され、その間に変速段が新たに選択された変速段に切り替えられることとなる。
【0027】
このとき、クラッチが解放されている間には、内燃機関の負荷が低減するため、アクセルペダルを踏み込んだ状態における変速段切替操作の間には、機関回転速度が上昇する。そして、このときの機関回転速度の上昇度合は、アクセルペダルの踏み込み量に応じて変化し、アクセルペダルの踏み込み量が大きいときほど機関回転速度が大幅に上昇するようになる。そのため、上記請求項3に記載されているように、変速段切替操作に伴いクラッチが係合される直前の機関回転速度は、アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作の実行に先立って予め推定することができる。
【0028】
そして、変速機の出力軸回転速度と新たに選択された変速段の変速比とに基づいて算出された第1推定値が、上記のようにアクセルペダルの踏み込み量に基づいて算出されたクラッチが係合される直前の機関回転速度の推定値である第2推定値よりも大きい場合には、クラッチが係合されるときの機関回転速度が、変速比の変化に伴って上昇する入力軸回転速度未満になることが予測される。
【0029】
そのため、上記請求項3に記載されているように第1推定値が第2推定値よりも大きいときには、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になることを推定することができる。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の変速機の制御装置において、前記変速機は、変速段を切り替える変速段切替機構と、同変速段切替機構と前記内燃機関との間の駆動力の伝達を断接するクラッチとを備え、同クラッチが解放されている間に変速段を切り替える変速機であり、前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と各変速段の変速比とに基づいて変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として変速段毎に算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作に伴い前記クラッチが係合される直前の機関回転速度を第2推定値として算出し、変速段毎に算出された前記第1推定値と前記第2推定値とをそれぞれ比較して前記第1推定値が前記第2推定値以下になる変速段のうち、変速比が最も大きい変速段をシフトダウン下限値として設定し、前記選択された変速段が同シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定することをその要旨とする。
【0031】
選択された変速段が、上記のようにしてシフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段である場合には、これに基づいて同選択された変速段に対応する第1推定値が第2推定値よりも大きいことが推定される。そのため、この場合には、上記請求項3に記載の発明と同様に、クラッチが係合されるときの機関回転速度が変速比の変化に伴って上昇する入力軸回転速度未満になることが予測される。
【0032】
すなわち、上記請求項6に記載されているように選択された変速段がシフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であった場合には、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になることを推定することができる。
【0033】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の変速機の制御装置において、変速段切替操作の実行に先立ち、前記変速機の出力軸回転速度と各変速段の変速比とに基づいて変速段を変更した場合の前記変速機の入力軸回転速度を変速段毎に算出する入力軸回転速度推定手段と、同入力軸回転速度推定手段によって変速段毎に推定された入力軸回転速度の推定値と前記第2推定値とをそれぞれ比較して前記入力軸回転速度推定手段によって推定された入力軸回転速度の推定値が前記第2推定値以下になる変速段のうち、変速比が最も大きい変速段をシフトダウン下限値として設定するシフトダウン下限値設定手段とを備え、前記第1推定値が前記第2推定値よりも大きい場合には、前記シフトダウン下限値として設定されている変速段に変速段を切り替える一方、前記第1推定値が第2推定値以下の場合には、前記選択された変速段に変速段を切り替えることをその要旨とする。
【0034】
飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制した上で、運転者の加速要求に即した変速段切替操作を実行するためには、請求項4に記載されているように、変速段を変更した場合の変速機の入力軸回転速度を変速段毎に算出する入力軸回転速度推定手段と、変速段毎に推定された入力軸回転速度の推定値と第2推定値とをそれぞれ比較してシフトダウン下限値を設定するシフトダウン下限値設定手段とを設けることが望ましい。
【0035】
そして、第1推定値が第2推定値よりも大きいことに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になることが推定された場合にはシフトダウン下限値として設定されている変速段に変速段を切り替える一方、第1推定値が第2推定値以下であり、その推定がなされなかった場合には選択された変速段に変速段を切り替えるようにすればよい。
【0036】
こうした構成を採用すれば、駆動状態推定手段によって飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることが推定された場合には切り替え可能な変速段の中で選択された変速段に変速比が最も近い変速段に変速段が切り替えられるようになる。そのため、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制しつつ、運転者の加速要求に即した変速段切替操作を実行することができるようになる。
【0037】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は請求項6に記載の変速機の制御装置において、前記選択された変速段が、前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段である場合には、前記シフトダウン下限値として設定されている変速段に変速段を切り替える一方、前記選択された変速段が、前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段又は前記シフトダウン下限値として設定された変速段と同一の変速段である場合には、前記選択された変速段に変速段を切り替えることをその要旨とする。
【0038】
上記請求項4と同様に、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制した上で、運転者の加速要求に即した変速段切替操作を実行するためには、上記請求項7に記載されているように、前記選択された変速段が、前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段である場合には、前記シフトダウン下限値として設定されている変速段に変速段を切り替える一方、前記選択された変速段が、前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段又は前記シフトダウン下限値として設定された変速段と同一の変速段である場合には、前記選択された変速段に変速段を切り替えるようにすることが望ましい。
【0039】
こうした構成を採用すれば、シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段の変更を禁止しつつ、切り替え可能な変速段の中で選択された変速段に変速比が最も近い変速段に変速段が切り替えられるようになる。そのため、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制しつつ、運転者の加速要求に即した変速段切替操作を実行することができるようになる。
【0040】
請求項8に記載の発明は、請求項4に記載の変速機の制御装置において、前記アクセルペダルが踏み込まれた状態で前記シフトダウンスイッチが連続して複数回操作されたときに、自動変速モードにおいて参照する変速マップを参照して変速段切換操作を実行する直前の前記アクセルペダルの踏み込み量及び車速に対応する変速段を導出し、同変速マップを参照して導出された変速段と、前記シフトダウン下限値として設定された変速段とを比較して同変速マップを参照して導出された変速段が前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段である場合には、同変速マップを参照して導出された変速段を前記シフトダウン下限値にすることをその要旨とする。
【0041】
自動変速モードにあっては、アクセルペダルの踏み込み量と車速とに基づいて適切な変速段を選択することができるように予め作成された変速マップを参照し、アクセルペダルの踏み込み量と車速とに基づいて変速段を自動的に切り替える。これにより、現在の車速に対するアクセルペダルの踏み込み量に基づいて運転者の加速要求の度合を推定し、その加速要求の度合に即した態様で自動的に変速段を切り替えることができるようになっている。
【0042】
これに対して手動変速モードにあっては、シフトアップスイッチ及びシフトダウンスイッチを操作することによって基本的に任意に変速段を選択することができる。そのため、手動変速モードにおける飛び越し変速によるシフトダウン時に、自動変速モードのときに選択される変速段よりも変速比の大きい変速段が選択された場合には、変速段の切り替えに伴って駆動力が非常に大きくなってしまうことがあり、急発進や急加速、車輪のスリップが発生するおそれがある。
【0043】
また、飛び越し変速の際には、シフトアップスイッチ又はシフトダウンスイッチが連続して操作されてから変速段が一度に切り替えられるため、最終的に選択された変速段が運転者の要求に即した運転状態を適切に実現することのできる変速段と必ずしも一致しない場合がある。そして特に飛び越し変速によるシフトダウン時には、こうした場合に上述したように急発進や急加速、車輪のスリップが発生するおそれがある。
【0044】
そこで、こうした急発進や急加速、車輪のスリップ等の発生を抑制する上では、上記請求項8に記載の発明のように、変速マップを参照して導出された変速段と、シフトダウン下限値として設定された変速段とを比較し、変速マップを参照して導出された変速段が前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段である場合に変速マップを参照して導出された変速段をシフトダウン下限値にするようにシフトダウン下限値を更新する構成を採用することが望ましい。
【0045】
こうした構成を採用すれば、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って、変速段が、自動変速モードにおいて選択される変速段よりも変速比の大きい変速段に切り替えられることが回避されるようになる。そのため、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することができるとともに、急発進や急加速、車輪のスリップが発生することを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる電子制御装置と、その制御対象である内燃機関及び自動変速機の概略構成を示す模式図。
【図2】同実施形態にかかるフロアシフト装置のシフトゲートパターンを示す模式図。
【図3】自動変速モードにおいてシフトダウンのときに参照する変速マップ。
【図4】同実施形態にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図5】シフトダウン時のタービン回転速度の変化と、第1推定値及び第2推定値との関係を示すタイムチャート。
【図6】同実施形態にかかる制御を通じて飛び越し変速によるシフトダウンを行った場合のタービン回転速度の変化態様、並びに出力トルクの変化態様を示すタイムチャート。
【図7】同実施形態の変更例にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図8】同実施形態の変更例にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図9】この発明の第2の実施形態にかかる電子制御装置と、その制御対象である内燃機関及び自動変速機の概略構成を示す模式図。
【図10】同実施形態にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図11】シフトダウン時の機関回転速度の変化と、第1推定値及び第2推定値との関係を示すタイムチャート。
【図12】同実施形態にかかる制御を通じて飛び越し変速によるシフトダウンを行った場合の機関回転速度の変化態様、並びに出力トルクの変化態様を示すタイムチャート。
【図13】同実施形態の変更例にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図14】同実施形態の変更例にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御の一連の処理の流れを示すフローチャート。
【図15】従来の変速制御を通じて飛び越し変速によるシフトダウンを行った場合のタービン回転速度の変化態様、並びに出力トルクの変化態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる変速機の制御装置を、車両に搭載される内燃機関及び自動変速機を統括的に制御する電子制御装置に具体化した第1の実施形態について、図1〜6を参照して説明する。
【0048】
図1に示されるように、本実施形態にかかる内燃機関10には、燃焼室に空気を導入する吸気通路13が接続されている。吸気通路13には、吸入空気量GAを調量するスロットル弁14が設けられている。このスロットル弁14はモータ15によってその開度であるスロットル開度TAが制御される。
【0049】
内燃機関10では、こうしてスロットル弁14によって調量される吸入空気に対してその量に応じた燃料が図示しない燃料噴射弁から噴射される。そして、空気と燃料の混合気が燃焼室で燃焼されることにより、内燃機関10の出力軸であるクランクシャフト12が回転し、駆動力が得られるようになる。
【0050】
クランクシャフト12は、トルクコンバータ20を介して自動変速機30の入力軸31に接続されている。そして、自動変速機30の出力軸34は図示しないディファレンシャルギア等を介して最終的に車両の駆動輪に接続されている。
【0051】
自動変速機30には、入力軸31の回転方向に対する出力軸34の回転方向を切り替える前進後退切替機構32と、複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより変速段を変更する遊星歯車式の変速段切替機構33が設けられている。
【0052】
変速段切替機構33は係合要素として4組の多板式ブレーキ及び4組の多板式クラッチを備えるとともに、4個のワンウェイクラッチと、遊星歯車からなる3組のギアセットを備えて構成されており、各係合要素の断接状態を切り替えることにより、変速段を変更することができるようになっている。尚、自動変速機30にあっては前進時に選択可能な変速段として、「1速」、「2速」、「3速」、「4速」、「5速」、「6速」の6つの変速段が設定されており、これら各変速段には、「1速」から「6速」まで順に変速比が小さくなるようにそれぞれ異なる変速比が割り振られている。
【0053】
これにより、内燃機関10の駆動力は、トルクコンバータ20を介して自動変速機30に入力され、自動変速機30の前進後退切替機構32及び変速段切替機構33を通じてその回転方向と回転速度が変更されて駆動輪に伝達される。
【0054】
尚、この前進後退切替機構32及び変速段切替機構33の制御は車両各部を統括的に制御する電子制御装置100によって実行される。
電子制御装置100には、車両各部の状態を検出する各種センサとして、以下のようなセンサがそれぞれ接続されている。アクセルポジションセンサ70は運転者によって操作されるアクセルペダル60の踏み込み量であるアクセル操作量ACCPを検出する。自動変速機30の出力軸34近傍に設けられた車速センサ71は出力軸34の回転速度である出力軸回転速度SPを検出する。自動変速機30の入力軸31近傍に設けられた回転速度センサ72は入力軸31の回転速度であるタービン回転速度NTを検出する。内燃機関10のクランクシャフト12近傍に設けられたクランク角センサ73はクランクシャフト12の回転速度である機関回転速度NEを検出する。また、スロットル開度センサ74はスロットル開度TAを検出し、エアフロメータ75は吸気通路13を通じて内燃機関10に導入される空気の量である吸入空気量GAを検出する。
【0055】
電子制御装置100は、これら各種センサの検出信号を読み込み、各種演算を行って内燃機関10を制御するとともに、自動変速機30の変速段を変更する変速制御を実行する。例えば、アクセル操作量ACCPに基づいて要求トルクを算出し、モータ15を駆動してスロットル開度TAを変更することにより吸入空気量GAを調量するとともに、エアフロメータ75によって検出された吸入空気量GAに基づいて内燃機関10における燃料噴射量や点火時期を制御して要求トルクに見合ったトルクを発生させる。また、自動変速機30に変速信号を出力して自動変速機30における変速段を切り替える。
【0056】
尚、本実施形態の電子制御装置100にあっては、変速制御の制御モードとして、自動的に変速段を切り替える自動変速モードと、運転者の選択した変速段に変速段を切り替える手動変速モードとが設定されている。そして、本実施形態にかかる車両にあっては、これら自動変速モードと手動変速モードとを任意に切り替えることができるようになっている。
【0057】
図1の下方に示されるように電子制御装置100には、変速制御の制御モードを切り替える切替手段として、運転席に設けられたフロアシフト装置80のシフトレバー81と、ステアリングホイール90に設けられたステアリングシフトスイッチ91とが接続されている。
【0058】
図1に示されるようにステアリングシフトスイッチ91は、シフトアップスイッチとしてステアリングホイール90の右側に設けられたシフトアップパドル91aと、シフトダウンスイッチとしてステアリングホイール90の左側に設けられたシフトダウンパドル91bとを備えて構成されている。そして、ステアリングシフトスイッチ91は、シフトアップパドル91aが操作された場合にはシフトアップ信号SHUを電子制御装置100に出力し、シフトダウンパドル91bが操作された場合にはシフトダウン信号SHDを電子制御装置100に出力する。
【0059】
一方、フロアシフト装置80は、シフトレバー81と、シフトレバー81を案内するシフトゲート82とを備えている。図2に示されるようにシフトゲート82には、シフトレバー81の操作位置として、上方からパーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)の各ポジションが順に配置され、更に前進走行用の操作位置としてドライブ(D)及びSモード(S)の2つのポジションが横方向に並んで配置されている。また、シフトゲート82のSモードポジション(S)の前後には、シフトアップ(+)、シフトダウン(−)の各ポジションが配置されている。
【0060】
尚、シフトアップ(+)、シフトダウン(−)の各ポジションでは、運転者がシフトレバー81から手を離すと、すなわちシフトレバー81への操作力の付与を解除すると、シフトレバー81がスプリングの反発力で自動的にSモードポジション(S)に移動するようなっている。
【0061】
また、図2に破線で示されるようにフロアシフト装置80には、シフトレバー81の操作位置を検出するために以下のような各種スイッチが設けられている。
シフトレバーポジションスイッチSW1は、パーキングポジション(P)、リバースポジション(R)、ニュートラルポジション(N)、及び前進走行用のドライブポジション(D)又はSモードポジション(S)のいずれの位置にシフトレバー81が操作されているかを検出し、シフトポジション信号を出力する。
【0062】
選択モード検出スイッチSW2は、ドライブポジション(D)からSモードポジション(S)へのシフトレバー81の操作、及びSモードポジション(S)からドライブポジション(D)へのシフトレバー81の操作を検出し、選択モード信号を出力する。
【0063】
シフトアップスイッチSW3は、Sモードポジション(S)からシフトアップポジション(+)へのシフトレバー81の操作を検出し、シフトアップ信号SHUを出力する。
シフトダウンスイッチSW4は、Sモードポジション(S)からシフトダウンポジション(−)へのシフトレバー81の操作を検出し、シフトダウン信号SHDを出力する。
【0064】
図1に示されるようにフロアシフト装置80及びステアリングシフトスイッチ91は、電子制御装置100に接続されており、これらステアリングシフトスイッチ91及びフロアシフト装置80から出力される信号は、電子制御装置100に取り込まれる。そして、電子制御装置100は、これらの信号に基づいて変速制御の制御モードを自動変速モードと手動変速モードとの間で切り替えるとともに、変速段を切り替える。
【0065】
本実施形態の車両にあっては、基本的にシフトレバー81の操作位置に基づいて変速制御の制御モードを自動変速モードと手動変速モードとの間で切り替える。具体的には、シフトレバー81がドライブポジション(D)に操作されているときには、自動変速モードによって変速制御を実行する。一方で、シフトレバー81がSモードポジション(S)に操作されているときに、手動変速モードによって変速制御を実行する。
【0066】
また、本実施形態の車両にあっては、シフトレバー81がドライブポジション(D)に操作されている場合であっても、ステアリングシフトスイッチ91を操作することにより、制御モードを自動変速モードから手動変速モードに一時的に変更することができるようにしている。これにより、運転者はステアリングホイール90から手を離すことなく、制御モードを手動変速モードに変更することができる。
【0067】
そして、電子制御装置100は、自動変速モードの場合には出力軸回転速度SPに基づいて算出される車速Vとアクセル操作量ACCPとに基づいて自動的に変速段を選択し、選択された変速段に対応する変速信号を自動変速機30に出力する。
【0068】
具体的には、予め作成されている図3に示されるような変速マップを参照して車速Vとアクセル操作量ACCPとに基づいて自動的に変速段を切り替える。この変速マップにあっては、車速Vとアクセル操作量ACCPとに基づいて変速段を切り替えるための変速線が変速段毎に設定されている。尚、変速マップにはシフトアップ時に参照するシフトアップ用変速線と、シフトダウン時に参照するシフトダウン用変速線が設定されているが、図3にあっては、シフトダウンの際に参照するシフトダウン用変速線のみが示されている。
【0069】
例えば図3に点Pで示されるようにアクセル操作量ACCPが「ACCP1」であり車速Vが「V1」であって、「3速」が選択されている状態から図3に矢印で示されるようにアクセル操作量ACCPが増大して「ACCP2」になったとき(図5における点Q)には、新たな変速段として「2速」が選択される。そして、これに基づいて「2速」に対応する変速信号が出力され、変速段が「3速」から「2速」に自動的に切り替えられるようになる。
【0070】
このように自動変速モードにあっては、車速Vとアクセル操作量ACCPとに基づいて適切な変速段が選択され、運転者の加速要求に即した変速段の切り替えが自動的に行われるようになっている。
【0071】
また、電子制御装置100は、手動変速モードの場合にはシフトアップ信号SHU及びシフトダウン信号SHDに基づいて変速段を選択し、選択された変速段に対応する変速信号を自動変速機30に出力する。具体的には、電子制御装置100は、フロアシフト装置80又はステアリングシフトスイッチ91からシフトアップ信号SHUが一回入力される度に変速段を一段昇段させる。これにより、例えば変速段が「3速」に設定されているときに、シフトアップ信号SHUが一回入力されると、変速段が「4速」に変更されるようになる。一方、電子制御装置100は、シフトダウン信号SHDが一回入力される度に変速段を一段降段させる。これにより、例えば変速段が「3速」に設定されているときに、シフトダウン信号SHDが一回入力されると、変速段が「2速」に変更されるようになる。
【0072】
また、本実施形態の電子制御装置100にあっては、連続してシフトレバー81又はステアリングシフトスイッチ91が複数回操作され、シフトアップ信号SHU又はシフトダウン信号SHDが連続して複数回出力されたときには、最終的に選択された変速段まで一度に変速段を変更するいわゆる飛び越し変速を行うようにしている。
【0073】
例えば、変速段が「6速」に設定されているときに3回連続してシフトダウンパドル91bが操作されたときには、「5速」、「4速」への変速を行わずに「6速」から直接「3速」へと変速段を切り替える。そのため、一度の変速段切替操作で変速段の切り替えを完了させることができ、変速段の切り替えにかかる時間を短縮することができる。
【0074】
ところで、このような飛び越し変速を行うと、一度の変速段切替操作の間に変速比が大幅に変化することとなる。そのため、アクセルペダル60を踏み込んだ状態でのシフトダウンのように、加速要求に伴う飛び越し変速の際には、変速段切替操作の間に機関回転速度NEを十分に上昇させることができず、変速段の変更に伴って変化するタービン回転速度NTに機関回転速度NEを同期させることができないおそれがある。その結果、内燃機関10が駆動輪側の駆動力、すなわち自動変速機30の出力軸34側から伝達される駆動力によって駆動され、機関回転速度NEが引き上げられるような状態になる。そして、このときの負荷によって出力軸回転速度SPが低下し、加速のためにシフトレバー81やシフトダウンパドル91bを操作しているにも拘わらず、車両が減速してしまうおそれがある。
【0075】
そこで、本実施形態の電子制御装置100にあっては、アクセルペダル60を踏み込んだ状態での飛び越し変速によるシフトダウン時に、シフトダウン下限値ngを設定し、切替可能な変速段を制限するようにしている。
【0076】
以下、図4を参照して本実施形態にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御について説明する。尚、図4は飛び越し変速によるシフトダウンにかかる制御の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【0077】
この制御は、変速制御の制御モードが手動変速モードに設定されているときに電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。この制御が実行されると、図4に示されるように電子制御装置100は、まずステップS100においてアクセルペダル60が踏み込まれた状態で飛び越し変速によるシフトダウンが要求されたか否かを判定する。
【0078】
ここでは、アクセル操作量ACCPが「0」以上であることに基づいてアクセルペダル60が踏み込まれていることを判定し、シフトダウン信号SHDが連続して複数回入力されたことに基づいて飛び越し変速によるシフトダウンが要求されたことを判定する。すなわち、ステップS100にあっては、アクセル操作量ACCPが「0」以上であり、且つシフトダウン信号SHDが連続して複数回入力されたことが判定されたときに肯定判定がなされるようになっている。
【0079】
尚、シフトダウン信号SHDが連続して入力されたか否かを判定する具体的な方法としては、例えばシフトダウン信号SHDが入力されてから所定期間(例えば2秒)が経過する前に再びシフトダウン信号SHDが入力された場合に、シフトダウン信号SHDが連続して入力されたことを判定する、といった構成を採用すればよい。すなわち、所定期間(2秒)以上の間隔をあけずに入力されたシフトダウン信号SHDを連続して入力されたシフトダウン信号SHDとして判定すればよい。
【0080】
ステップS100において、否定判定がなされた場合(ステップS100:NO)には、電子制御装置100はこの制御を一旦終了する。
一方、ステップS100において、アクセルペダル60が踏み込まれた状態で飛び越し変速によるシフトダウン要求がなされたことが判定された場合(ステップS100:YES)には、ステップS110へと進む。
【0081】
そして、ステップS110において、出力軸回転速度SPに基づいて各変速段に対応する第1推定値NTAをそれぞれ算出する。すなわち、ここでは電子制御装置100が入力軸回転速度推定手段として機能し、変速段を切り替えた場合に変速比の変化に伴って変化するタービン回転速度NTの値を、第1推定値NTAとして算出する。具体的には、出力軸回転速度SPに各変速段の変速比をそれぞれ乗ずることにより、第1推定値NTAを変速段毎にそれぞれ算出する。
【0082】
尚、以下の説明ではこのステップS110において算出された第1推定値NTAのうち、変速段を「n速」(nは1〜6までの整数)に切り替えた場合のタービン回転速度NTの値に対応する第1推定値NTAを「NTAn」と記載する。すなわち変速段を「1速」に切り替えた場合のタービン回転速度NTの値に対応する第1推定値NTAを「NTA1」と記載する。
【0083】
こうしてステップS110において第1推定値NTAを変速段毎にそれぞれ算出すると、ステップS120へと進み、タービン回転速度NTとアクセル操作量ACCPとに基づいて変速段切替操作中のタービン回転速度NTの推定値である第2推定値NTBを算出する。
【0084】
ここでは、まずアクセル操作量ACCPに基づいて図5に示されるように変速段切替操作が開始されてから完了するまでの期間である変速期間Tの間におけるタービン回転速度NTの上昇勾配θを推定する。
【0085】
尚、変速期間Tにあっては、変速段切替操作に伴って変速段切替機構33においてこれまで選択されていた変速段を構成する係合要素が解放されるため、内燃機関10と駆動輪と間の連結が解除される。そのため、変速期間Tにあっては、内燃機関10の負荷が低減し、機関回転速度NEが上昇することとなる。その結果、これに伴ってクランクシャフト12と連結されている入力軸31の回転速度であるタービン回転速度NTが上昇するようになる。そして、このときの機関回転速度NE及びタービン回転速度NTの上昇勾配θは、アクセル操作量ACCPに応じて変化し、アクセル操作量ACCPが大きいときほど機関回転速度NE及びタービン回転速度NTが大幅に上昇するようになる。
【0086】
そこで、このステップS120にあっては、アクセル操作量ACCPが大きいときほど、タービン回転速度NTの上昇勾配θが大きくなるように、アクセル操作量ACCPに基づいてタービン回転速度NTの上昇勾配θを推定する。
【0087】
ステップS120にあっては、こうして推定された上昇勾配θと現在のタービン回転速度NTとに基づいて図5に一点鎖線で示されるように変速期間T経過時のタービン回転速度NTの値を推定し、この値を第2推定値NTBとする。
【0088】
尚、ここでは、変速期間T経過時のタービン回転速度NTの値を第2推定値NTBとしているが、この第2推定値NTBは変速段切替操作に伴ってタービン回転速度NTがどのくらいまで上昇するかを判定することのできる値であればよい。そのため、例えば係合要素の断接による変速段切替操作中のタービン回転速度NTの変化を更に詳しく推定し、その最大値を第2推定値NTBとする構成を採用することもできる。
【0089】
こうしてステップS120において第2推定値NTBを算出すると、ステップS130へと進み、第2推定値NTBと各変速段に対応する第1推定値NTAとを比較して第1推定値NTAが第2推定値NTB以下となる変速段のうち最小の変速段をシフトダウン下限値ngとして設定する。すなわち、ここでは電子制御装置100がシフトダウン下限値設定手段として機能し、第1推定値NTAが第2推定値NTB以下になる変速段のうち変速比の最も大きい変速段をシフトダウン下限値ngとして設定する。
【0090】
例えば図5に示されるように第2推定値NTBが、破線で示されている「4速」に対応する第1推定値NTA4よりも大きく、且つ「3速」に対応する第1推定値NTA3よりも小さい場合には、「4速」がシフトダウン下限値ngとして設定される。
【0091】
こうしてシフトダウン下限値ngを設定すると、ステップS140へと進み、今回のシフトダウン要求によって最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいか否かを判定する。例えば、選択された変速段が「3速」である場合には、「3速」に対応する第1推定値NTA3が第2推定値NTBよりも大きいか否かを判定する。
【0092】
ステップS140において、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きい旨の判定がなされた場合(ステップS140:YES)には、ステップS150へと進む。そしてステップS150において、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS170へと進む。
【0093】
一方、ステップS140において、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTB以下である旨の判定がなされた場合(ステップS140:NO)には、ステップS160へと進む。そして、ステップS160において選択された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS170へと進む。
【0094】
ステップS170では、設定された目標変速段ntrgに対応する変速信号を出力し、変速段を目標変速段ntrgとして設定された変速段に切り替える変速段切換操作を実行する。こうして変速段切換操作を実行すると電子制御装置100はこの処理を一旦終了する。
【0095】
このように本実施形態の電子制御装置100は、アクセルペダル60を踏み込んだ状態における飛び越し変速によるシフトダウンのときに、シフトダウン下限値ngを設定し、同シフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段の変更を禁止するようにしている。
【0096】
以下、こうした制御を実行することによる作用について図6を参照して説明する。尚、図6は、図4を参照して説明した制御を通じて飛び越し変速を行った場合のタービン回転速度NTの変化態様、並びに出力トルクの変化態様を示すタイムチャートである。
【0097】
図6の上段に示されるように変速段が「6速」に設定されているときにシフトレバー81又はシフトダウンパドル91bが3回連続で操作され、これによってシフトダウン信号SHDが3回連続で出力された場合には「3速」が選択される。そして、これに基づいて飛び越し変速によるシフトダウンの要求がなされたことが判定される。そして、このとき、アクセルペダル60が踏み込まれた状態である場合には、電子制御装置100は変速段切替操作の実行に先立ってタービン回転速度NTとアクセル操作量ACCPとに基づいて図6の中段に示される第2推定値NTBを算出する。
【0098】
また、これと併せて電子制御装置100は、出力軸回転速度SPと各変速段の変速比とに基づいて図6の中段に破線で示されるように各変速段に対応する第1推定値NTAをそれぞれ算出する。そして、第2推定値NTBを各変速段に対応する第1推定値NTAとそれぞれ比較する。
【0099】
図6に示されるように、ここでは第2推定値NTBは、「3速」に対応する第1推定値NTA3よりも小さく「4速」に対応する第1推定値NTA4よりも大きい値である。そのため、電子制御装置100は、第1推定値NTAが第2推定値NTB以下となる最小の変速段である「4速」をシフトダウン下限値ngとして設定する。
【0100】
そして、選択された変速段である「3速」に対応する第1推定値NTA3と、第2推定値NTBとを比較する。その結果、選択された変速段である「3速」に対応する第1推定値NTA3が第2推定値NTBよりも大きいことを判定すると、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定する。
【0101】
こうして飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定されるときには、選択された変速段である「3速」及び「3速」よりも変速比の大きい「1速」及び「2速」への変速段切替操作が禁止され、シフトダウン下限値ngとして設定されている「4速」が目標変速段ntrgとして設定される。
【0102】
目標変速段ntrgが「4速」に設定されると、時刻t1において変速段を「4速」に切り替える変速段切替操作が開始され、「6速」の変速段を構成する係合要素の油圧(図6における解放側油圧)が低減され、この係合要素による係合が解除される。
【0103】
これにより、内燃機関10と駆動輪との間の連結が一時的に解除され、内燃機関10の負荷が低減して図6の中段に示されるようにタービン回転速度NTが上昇する。
そして、変速段切替操作の進行に伴って「4速」の変速段を構成する係合要素の油圧(図6における係合側油圧)が増大され、この係合要素による係合が時刻t2において完了すると、「4速」への変速段切替操作が完了する。
【0104】
図6の中段に示されるように「4速」に対応する第1推定値NTA4は第2推定値NTBよりも小さい。そのため、時刻t2において「4速」の変速段を構成する係合要素の係合が完了して変速段切替操作が完了するときには、タービン回転速度NTが第1推定値NTA4よりも高くなっている。そのため、変速段切替操作の実行に伴って内燃機関10が駆動輪側の駆動力によって駆動されて機関回転速度NEやタービン回転速度NTが引き上げられるような状態になることが回避され、図6の下段に示されるように変速段切替操作の完了に伴って出力トルクが増大するようになる。
【0105】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより内燃機関10と連結された状態で変速段を切り替える遊星歯車式の変速段切替機構33を備える自動変速機30にあっては、変速段切替操作に伴ってそれまで選択されていた変速段を構成する係合要素の係合が解除され、新たに選択された変速段を構成する係合要素が係合されることとなる。
【0106】
このとき、自動変速機30における係合要素の係合が解除されている間には、内燃機関10の負荷が低減する。そのため、アクセルペダル60を踏み込んだ状態における変速段切替操作の間には、機関回転速度NEが上昇し、これに伴って内燃機関10のクランクシャフト12と連結された自動変速機30の入力軸31の回転速度であるタービン回転速度NTも上昇することとなる。そして、このときのタービン回転速度NTの上昇勾配θは、上述したようにアクセル操作量ACCPに応じて変化し、アクセル操作量ACCPが大きいときほどタービン回転速度NTが大幅に上昇するようになる。そのため、上記のように変速段切替操作中のタービン回転速度NTである第2推定値NTBは、アクセル操作量ACCPに基づいて変速段切替操作の実行に先立って予め推定することができる。
【0107】
そして、出力軸回転速度SPと各変速段の変速比とに基づいて算出された第1推定値NTAが、算出された第2推定値NTBよりも大きい場合には、新たに選択された変速段を構成する係合要素が係合されるときの機関回転速度NEが、変速比の変化によって上昇するタービン回転速度NT未満になることが予測される。
【0108】
そのため、上記のように選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいときには、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定することができる。
【0109】
上記第1の実施形態にあっては、アクセルペダル60が踏み込まれた状態でシフトダウン信号SHDが連続して複数回入力されたとき、すなわち加速要求を伴う飛び越し変速によるシフトダウンが要求されたときに、飛び越し変速の実行に先立ち、第1推定値NTAと第2推定値NTBを算出する。そして、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいか否かを判定することにより、同飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になるか否かを推定するようにしている。そして、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいことに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定されたときには、選択された変速段及び同変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段切替操作を禁止するようにしている。そのため、内燃機関10が駆動される状態になるような変速比の大きな変速段への飛び越し変速が禁止されるようになる。
【0110】
したがって、変速段切替操作完了に伴って駆動輪側の駆動力によって機関回転速度NEが引き上げられるような状態になることが抑制され、変速段切替操作の完了に伴って車両が減速してしまうことを抑制することができるようになる。すなわち、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することができる。
【0111】
(2)変速段を変更した場合のタービン回転速度NTの値を第1推定値NTAとして変速段毎に算出し、変速段毎に算出された第1推定値NTAと第2推定値NTBとをそれぞれ比較してシフトダウン下限値ngを設定するようにしている。
【0112】
そして、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいことに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定された場合には、シフトダウン下限値ngとして設定されている変速段に変速段を切り替えるようにしている。そのため、飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定された場合には、切り替え可能な変速段の中で選択された変速段に変速比が最も近い変速段に変速段が切り替えられるようになる。したがって、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制しつつ、運転者の加速要求に即した変速段切替操作を実行することができる。
【0113】
尚、上記第1の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態にあっては、駆動状態推定手段として、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいか否かを判定し(図4におけるステップS140)、肯定判定がなされたことに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定する構成を示した。これに対して、駆動状態推定手段として、選択された変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときに、飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定する構成を採用することもできる。
【0114】
具体的には図7に示されるように、図4を参照して説明した制御のステップS140に替えて、選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さいか否かを判定する処理(ステップS145)を実行するようにすればよい。
【0115】
こうした構成を採用した場合には、ステップS130においてシフトダウン下限値ngが設定されると、ステップS145へと進み、今回のシフトダウン要求によって最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さいか否かが判定されるようになる。
【0116】
そして、ステップS145において、最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さい旨の判定がなされた場合(ステップS145:YES)、すなわち最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であることが判定された場合には、ステップS150へと進むようになる。
【0117】
一方、ステップS145において、最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ng以上である旨の判定がなされた場合(ステップS145:NO)、すなわち最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の小さい変速段である場合や、最終的にされた変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段と等しい変速段である場合には、ステップS160へと進むようになる。
【0118】
選択された変速段が、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段である場合には、これに基づいて同選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいことが推定される。そのため、この場合には、新たに選択された変速段を構成する係合要素が係合されるときの機関回転速度NEが変速比の変化によって上昇するタービン回転速度NT未満になることが予測される。
【0119】
すなわち、選択された変速段が、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときには、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定することができる。
【0120】
そのため、図7に示されるように選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さい場合(ステップS145:YES)に、シフトダウン下限値ngとして設定されている変速段に変速段を切り替える構成を採用すれば、上記第1の実施形態において記載した(1)及び(2)の効果と同様の効果を得ることができるようになる。
【0121】
・自動変速モードにあっては、上述したように図3に示されるような変速マップを参照し、アクセル操作量ACCPと車速Vとに基づいて変速段を自動的に切り替える。これにより、現在の車速Vに対するアクセル操作量ACCPに基づいて運転者の加速要求の度合を推定し、その加速要求の度合に即した態様で自動的に変速段を切り替えることができるようになっている。
【0122】
これに対して手動変速モードにあっては、シフトレバー81及びステアリングシフトスイッチ91を操作することによって基本的に任意に変速段を選択することができる。そのため、手動変速モードにおける飛び越し変速によるシフトダウン時に、自動変速モードのときに選択される変速段よりも変速比の大きい変速段が選択された場合には、変速段の切り替えに伴って駆動力が非常に大きくなってしまうことがあり、急発進や急加速、車輪のスリップが発生するおそれがある。
【0123】
また、飛び越し変速の際には、シフトレバー81やステアリングシフトスイッチ91が連続して操作されてから変速段が一度に切り替えられるため、最終的に選択された変速段が運転者の要求に即した運転状態を適切に実現することのできる変速段と必ずしも一致しない場合がある。そして特に飛び越し変速によるシフトダウン時には、こうした場合に上述したように急発進や急加速、車輪のスリップが発生するおそれがある。
【0124】
そこで、こうした急発進や急加速、車輪のスリップ等の発生を抑制する上では、変速マップを参照して導出された変速段と、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段とを比較し、その結果に基づいてシフトダウン下限値ngを更新する構成を採用することが望ましい。
【0125】
尚、具体的には、図8に示されるように、図4を参照して説明した制御におけるステップS130に替えて、ステップS132、ステップS134、ステップS136の処理を実行するようにすればこうした構成を実現することができる。
【0126】
図8に示される制御にあっては、電子制御装置100はステップS120において第2推定値NTBを推定すると、ステップS132へと進み、第2推定値NTBと各変速段に対応する第1推定値NTAとを比較して第1推定値NTAが第2推定値NTB以下となる変速段のうち最小の変速段を第1シフトダウン下限値ng1として設定する。すなわち、ここでは第1推定値NTAが第2推定値NTB以下になる変速段のうち変速比の最も大きい変速段を第1シフトダウン下限値ng1として設定する。
【0127】
こうして第1シフトダウン下限値ng1を設定すると、ステップS134へと進み、自動変速モード用の変速マップを参照して第2シフトダウン下限値ng2を設定する。ここでは、図3に示されるような変速マップを参照して第2シフトダウン下限値ng2を設定する。例えば、図3に点Pで示されるように車速Vが「V1」であり、アクセル操作量ACCPが「ACCP1」であるときには、図3における点Pに対応する変速段である「3速」の変速段が第2シフトダウン下限値ng2として設定される。
【0128】
こうして第2シフトダウン下限値ng2を設定すると、ステップS136へと進み、第1シフトダウン下限値ng1と第2シフトダウン下限値ng2とを比較して、大きい方を最終的なシフトダウン下限値ngとして設定する。すなわち、第2シフトダウン下限値ng2として設定された変速段が第1シフトダウン下限値ng1として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段である場合には、このステップS136を通じて、第2シフトダウン下限値ng2として設定された変速段が最終的なシフトダウン下限値ngとして設定されるようになる。
【0129】
そして、こうしてシフトダウン下限値ngを設定すると、ステップS140へと進み、上記第1の実施形態と同様に今回のシフトダウン要求によって最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きいか否かを判定する。
【0130】
そして、ステップS140において、最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTBよりも大きい旨の判定がなされた場合(ステップS140:YES)には、ステップS150へと進む。そしてステップS150において、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS170へと進む。
【0131】
一方、ステップS140において、最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NTB以下である旨の判定がなされた場合(ステップS140:NO)には、ステップS160へと進む。そして、ステップS160において最終的に選択された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS170へと進む。
【0132】
こうした構成を採用すれば、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って、変速段が、自動変速モードにおいて選択される変速段よりも変速比の大きい変速段に切り替えられることが回避されるようになる。そのため、上記第1の実施形態において記載した(1)及び(2)と同様の効果に加え、急発進や急加速、車輪のスリップが発生することを抑制することができるようになる。すなわち、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することができるとともに、急発進や急加速、車輪のスリップが発生することを抑制することができるようになる。
(第2の実施形態)
以下、この発明にかかる変速機の制御装置を、車両に搭載される内燃機関及び自動変速機を統括的に制御する電子制御装置に具体化した第2の実施形態について、図9〜12を参照して説明する。尚、本実施形態と第1の実施形態とは、自動変速機の構成が異なり、それによって飛び越し変速によるシフトダウンの際の制御の一部が異なるのみであるため、以下では第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を割愛し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0133】
図9に示されるように本実施形態にかかる自動変速機230は、「1速」から「6速」までの前進6段及び後退1段の変速段を切り替える変速段切替機構233と、電子制御装置100の制御指令に基づいて駆動される自動クラッチ232とを備えている。
【0134】
自動変速機230の入力軸231は、この自動クラッチ232を介して内燃機関10のクランクシャフト12と接続されている。そして、自動変速機230の出力軸234は図示しないディファレンシャルギア等を介して最終的に車両の駆動輪に接続されている。
【0135】
これにより、内燃機関10の駆動力は、自動変速機230を通じてその回転方向と回転速度が変更されて駆動輪に伝達される。
自動変速機230にあっては、変速段切替操作に伴って自動クラッチ232が一時的に解放されるようになっている。そして、自動クラッチ232が解放されている間に変速段切替機構233において変速段が切り替えられるようになっている。
【0136】
この自動クラッチ232及び変速段切替機構233の制御は、電子制御装置100によって実行される。電子制御装置100には、第1の実施形態と同様に、アクセルポジションセンサ70、車速センサ71、回転速度センサ72、クランク角センサ73、スロットル開度センサ74、エアフロメータ75等の各センサが接続されている。尚、本実施形態における車速センサ71は自動変速機230の出力軸234の回転速度である出力軸回転速度SPを検出し、回転速度センサ72は自動変速機230の入力軸231の回転速度であるタービン回転速度NTを検出する。
【0137】
以下、図10を参照して本実施形態にかかる飛び越し変速によるシフトダウンの制御について説明する。尚、図10は飛び越し変速によるシフトダウンにかかる制御の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【0138】
この制御は、変速制御の制御モードが手動変速モードに設定されているときに電子制御装置100によって所定の制御周期で繰り返し実行される。この制御が実行されると、図10に示されるように電子制御装置100は、まずステップS200において第1の実施形態におけるステップS100と同様にアクセルペダル60が踏み込まれた状態で飛び越し変速によるシフトダウンが要求されたか否かを判定する。
【0139】
ステップS200において、否定判定がなされた場合(ステップS200:NO)には、電子制御装置100はこの制御を一旦終了する。
一方、ステップS200において、アクセルペダル60が踏み込まれた状態で飛び越し変速によるシフトダウン要求がなされたことが判定された場合(ステップS200:YES)には、ステップS210へと進む。
【0140】
そして、ステップS210において、第1の実施形態におけるステップS110と同様に電子制御装置100が入力軸回転速度推定手段として機能し、出力軸回転速度SPに基づいて各変速段に対応する第1推定値NTAをそれぞれ算出する。
【0141】
尚、以下の説明ではこのステップS210において算出された第1推定値NTAのうち、変速段を「n速」(nは1〜6までの整数)に切り替えた場合のタービン回転速度NTの値に対応する第1推定値NTAを「NTAn」と記載する。すなわち変速段を「1速」に切り替えた場合のタービン回転速度NTの値に対応する第1推定値NTAを「NTA1」と記載する。
【0142】
こうしてステップS210において第1推定値NTAを変速段毎にそれぞれ算出すると、ステップS220へと進み、機関回転速度NEとアクセル操作量ACCPとに基づいて変速段切替操作に伴い自動クラッチ232が係合される直前の機関回転速度NEの値の推定値である第2推定値NEBを算出する。
【0143】
ここでは、まずアクセル操作量ACCPに基づいて図11に示されるように変速段切替操作が開始されてから完了するまでの期間である変速期間Tの間における機関回転速度NEの上昇勾配θを推定する。
【0144】
尚、変速期間Tにあっては、変速段切替操作に伴って自動クラッチ232が解放されるため、内燃機関10と駆動輪と間の連結が解除される。そのため、変速期間Tにあっては、内燃機関10の負荷が低減し、機関回転速度NEが上昇することとなる。そして、このときの機関回転速度NEの上昇勾配θは、アクセル操作量ACCPに応じて変化し、アクセル操作量ACCPが大きいときほど機関回転速度NEが大幅に上昇するようになる。
【0145】
そこで、このステップS220にあっては、アクセル操作量ACCPが大きいときほど、機関回転速度NEの上昇勾配θが大きくなるように、アクセル操作量ACCPに基づいて機関回転速度NEの上昇勾配θを推定する。
【0146】
ステップS220にあっては、こうして推定された上昇勾配θと現在の機関回転速度NEとに基づいて図11に一点鎖線で示されるように変速期間T経過時、すなわち自動クラッチ232が係合される直前の機関回転速度NEの値を推定し、この値を第2推定値NEBとする。
【0147】
こうしてステップS220において第2推定値NEBを算出すると、ステップS230へと進み、第2推定値NEBと各変速段に対応する第1推定値NTAとを比較して第1推定値NTAが第2推定値NEB以下となる変速段のうち最小の変速段をシフトダウン下限値ngとして設定する。すなわち、ここでは電子制御装置100がシフトダウン下限値設定手段として機能し、第1推定値NTAが第2推定値NEB以下になる変速段のうち変速比の最も大きい変速段をシフトダウン下限値ngとして設定する。
【0148】
例えば図11に示されるように第2推定値NEBが、破線で示されている「4速」に対応する第1推定値NTA4よりも大きく、且つ「3速」に対応する第1推定値NTA3よりも小さい場合には、「4速」がシフトダウン下限値ngとして設定される。
【0149】
こうしてシフトダウン下限値ngを設定すると、ステップS240へと進み、今回のシフトダウン要求によって最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいか否かを判定する。例えば、選択された変速段が「3速」である場合には、「3速」に対応する第1推定値NTA3が第2推定値NEBよりも大きいか否かを判定する。
【0150】
ステップS240において、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きい旨の判定がなされた場合(ステップS240:YES)には、ステップS250へと進む。そしてステップS250において、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS270へと進む。
【0151】
一方、ステップS240において、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEB以下である旨の判定がなされた場合(ステップS240:NO)には、ステップS260へと進む。そして、ステップS260において選択された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS270へと進む。
【0152】
ステップS270では、設定された目標変速段ntrgに対応する変速信号を出力し、変速段を目標変速段ntrgとして設定された変速段に切り替える変速段切換操作を実行する。こうして変速段切換操作を実行すると電子制御装置100はこの処理を一旦終了する。
【0153】
このように本実施形態の電子制御装置100は、アクセルペダル60を踏み込んだ状態における飛び越し変速によるシフトダウンのときに、シフトダウン下限値ngを設定し、同シフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段の変更を禁止するようにしている。
【0154】
以下、こうした制御を実行することによる作用について図12を参照して説明する。尚、図12は、図10を参照して説明した制御を通じて飛び越し変速を行った場合の機関回転速度NEの変化態様、並びに出力トルクの変化態様を示すタイムチャートである。
【0155】
図12の上段に示されるように変速段が「6速」に設定されているときにシフトレバー81又はシフトダウンパドル91bが3回連続で操作され、これによってシフトダウン信号SHDが3回連続で出力された場合には「3速」が選択される。そして、これに基づいて飛び越し変速によるシフトダウンの要求がなされたことが判定される。そして、このとき、アクセルペダル60が踏み込まれた状態である場合には、電子制御装置100は変速段切替操作の実行に先立って機関回転速度NEとアクセル操作量ACCPとに基づいて図12の中段に示される第2推定値NEBを算出する。
【0156】
また、これと併せて電子制御装置100は、出力軸回転速度SPと各変速段の変速比とに基づいて図12の中段に破線で示されるように各変速段に対応する第1推定値NTAをそれぞれ算出する。そして、第2推定値NEBを各変速段に対応する第1推定値NTAとそれぞれ比較する。
【0157】
図12に示されるように、ここでは第2推定値NEBは、「3速」に対応する第1推定値NTA3よりも小さく「4速」に対応する第1推定値NTA4よりも大きい値である。そのため、電子制御装置100は、第1推定値NTAが第2推定値NEB以下となる最小の変速段である「4速」をシフトダウン下限値ngとして設定する。
【0158】
そして、選択された変速段である「3速」に対応する第1推定値NTA3と、第2推定値NEBとを比較する。その結果、選択された変速段である「3速」に対応する第1推定値NTA3が第2推定値NEBよりも大きいことを判定すると、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定する。
【0159】
こうして飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定されるときには、選択された変速段である「3速」及び「3速」よりも変速比の大きい「1速」及び「2速」への変速段切替操作が禁止され、シフトダウン下限値ngとして設定されている「4速」が目標変速段ntrgとして設定される。
【0160】
目標変速段ntrgが「4速」に設定されると、時刻t3において変速段を「4速」に切り替える変速段切替操作が開始され、図12の下から2段目に示されるように自動クラッチ232が解除される。
【0161】
これにより、内燃機関10と駆動輪との間の連結が一時的に解除され、内燃機関10の負荷が低減して図12の中段に示されるように機関回転速度NEが上昇する。
そして、変速段切替操作の進行に伴って変速段切替機構233における変速段が「6速」から「4速」に切り替えられ、自動クラッチ232が時刻t4において係合されると、「4速」への変速段切替操作が完了する。
【0162】
図12の中段に示されるように「4速」に対応する第1推定値NTA4は第2推定値NEBよりも小さい。そのため、時刻t4において自動クラッチ232が係合されて変速段切替操作が完了するときには、機関回転速度NEが第1推定値NTA4よりも高くなっている。そのため、変速段切替操作の実行に伴って内燃機関10が駆動輪側の駆動力によって駆動されて機関回転速度NEが引き上げられるような状態になることが回避され、図12の下段に示されるように変速段切替操作の完了に伴って出力トルクが増大するようになる。
【0163】
以上説明した第2の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)変速段切替機構233と内燃機関10との間の駆動力の伝達を断接する自動クラッチ232とを備え、自動クラッチ232が解放されている間に変速段を切り替える自動変速機230にあっては、変速段切替操作に伴って一旦自動クラッチ232が解放され、その間に変速段が新たに選択された変速段に切り替えられることとなる。
【0164】
このとき、自動クラッチ232が解放されている間には、内燃機関10の負荷が低減するため、アクセルペダル60を踏み込んだ状態における変速段切替操作の間には、機関回転速度NEが上昇することとなる。そして、このときの機関回転速度NEの上昇勾配θは、上述したようにアクセル操作量ACCPに応じて変化し、アクセル操作量ACCPが大きいときほど機関回転速度NEが大幅に上昇するようになる。そのため、上記のように変速段切替操作に伴い自動クラッチ232が係合される直前の機関回転速度NEである第2推定値NEBは、アクセル操作量ACCPに基づいて変速段切替操作の実行に先立って予め推定することができる。
【0165】
そして、出力軸回転速度SPと各変速段の変速比とに基づいて算出された第1推定値NTAが、算出された第2推定値NEBよりも大きい場合には、自動クラッチ232が係合されるときの機関回転速度NEが、変速比の変化に伴って上昇するタービン回転速度NT未満になることが予測される。
【0166】
そのため、上記のように選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいときには、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定することができる。
【0167】
上記第2の実施形態にあっては、アクセルペダル60が踏み込まれた状態でシフトダウン信号SHDが連続して複数回入力されたとき、すなわち加速要求を伴う飛び越し変速によるシフトダウンが要求されたときに、飛び越し変速の実行に先立ち、第1推定値NTAと第2推定値NEBを算出する。そして、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいか否かを判定することにより、同飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になるか否かを推定するようにしている。そして、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいことに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定されたときには、選択された変速段及び同変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段切替操作を禁止するようにしている。そのため、内燃機関10が駆動される状態になるような変速比の大きな変速段への飛び越し変速が禁止されるようになる。
【0168】
したがって、変速段切替操作完了に伴って駆動輪側の駆動力によって機関回転速度NEが引き上げられるような状態になることが抑制され、変速段切替操作の完了に伴って車両が減速してしまうことを抑制することができるようになる。すなわち、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することができる。
【0169】
(2)変速段を変更した場合のタービン回転速度NTの値を第1推定値NTAとして変速段毎に算出し、変速段毎に推定された第1推定値NTAと第2推定値NEBとをそれぞれ比較してシフトダウン下限値ngを設定するようにしている。
【0170】
そして、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいことに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定された場合には、シフトダウン下限値ngとして設定されている変速段に変速段を切り替えるようにしている。そのため、飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定された場合には、切り替え可能な変速段の中で選択された変速段に変速比が最も近い変速段に変速段が切り替えられるようになる。したがって、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制しつつ、運転者の加速要求に即した変速段切替操作を実行することができるようになる。
【0171】
尚、上記第2の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第2の実施形態にあっては、駆動状態推定手段として、選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいか否かを判定し(図10におけるステップS240)、肯定判定がなされたことに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定する構成を示した。これに対して、駆動状態推定手段として、選択された変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときに、飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定する構成を採用することもできる。
【0172】
具体的には図13に示されるように、図10を参照して説明した制御のステップS240に替えて、選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さいか否かを判定する処理(ステップS245)を実行するようにすればよい。
【0173】
こうした構成を採用した場合には、ステップS230においてシフトダウン下限値ngが設定されると、ステップS245へと進み、今回のシフトダウン要求によって最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さいか否かが判定されるようになる。
【0174】
そして、ステップS245において、最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さい旨の判定がなされた場合(ステップS245:YES)、すなわち最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であることが判定された場合には、ステップS250へと進むようになる。
【0175】
一方、ステップS245において、最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ng以上である旨の判定がなされた場合(ステップS245:NO)、すなわち最終的に選択された変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の小さい変速段である場合や、最終的にされた変速段がシフトダウン下限値ngとして設定された変速段と等しい変速段である場合には、ステップS260へと進むようになる。
【0176】
選択された変速段が、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段である場合には、これに基づいて同選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいことが推定される。そのため、この場合には、変速段切替操作に伴って自動クラッチ232が係合されるときの機関回転速度NEが変速比の変化によって上昇するタービン回転速度NT未満になることが予測される。
【0177】
すなわち、選択された変速段が、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときには、これに基づいて飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることを推定することができる。
【0178】
そのため、図13に示されるように選択された変速段がシフトダウン下限値ngよりも小さい場合(ステップS245:YES)に、シフトダウン下限値ngとして設定されている変速段に変速段を切り替える構成を採用すれば、上記第2の実施形態において記載した(1)及び(2)の効果と同様の効果を得ることができるようになる。
【0179】
・自動変速モードにあっては、上述したように図3に示されるような変速マップを参照し、アクセル操作量ACCPと車速Vとに基づいて変速段を自動的に切り替える。これにより、現在の車速Vに対するアクセル操作量ACCPに基づいて運転者の加速要求の度合を推定し、その加速要求の度合に即した態様で自動的に変速段を切り替えることができるようになっている。
【0180】
これに対して手動変速モードにあっては、シフトレバー81及びステアリングシフトスイッチ91を操作することによって基本的に任意に変速段を選択することができる。そのため、手動変速モードにおける飛び越し変速によるシフトダウン時に、自動変速モードのときに選択される変速段よりも変速比の大きい変速段が選択された場合には、変速段の切り替えに伴って駆動力が非常に大きくなってしまうことがあり、急発進や急加速、車輪のスリップが発生するおそれがある。
【0181】
また、飛び越し変速の際には、シフトレバー81やステアリングシフトスイッチ91が連続して操作されてから変速段が一度に切り替えられるため、最終的に選択された変速段が運転者の要求に即した運転状態を適切に実現することのできる変速段と必ずしも一致しない場合がある。そして特に飛び越し変速によるシフトダウン時には、こうした場合に上述したように急発進や急加速、車輪のスリップが発生するおそれがある。
【0182】
そこで、こうした急発進や急加速、車輪のスリップ等の発生を抑制する上では、変速マップを参照して導出された変速段と、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段とを比較し、その結果に基づいてシフトダウン下限値ngを更新する構成を採用することが望ましい。
【0183】
尚、具体的には、図14に示されるように、図10を参照して説明した制御におけるステップS230に替えて、ステップS232、ステップS234、ステップS236の処理を実行するようにすればこうした構成を実現することができる。
【0184】
図14に示される制御にあっては、電子制御装置100はステップS220において第2推定値NEBを推定すると、ステップS232へと進み、第2推定値NEBと各変速段に対応する第1推定値NTAとを比較して第1推定値NTAが第2推定値NEB以下となる変速段のうち最小の変速段を第1シフトダウン下限値ng1として設定する。すなわち、ここでは第1推定値NTAが第2推定値NEB以下になる変速段のうち変速比の最も大きい変速段を第1シフトダウン下限値ng1として設定する。
【0185】
こうして第1シフトダウン下限値ng1を設定すると、ステップS234へと進み、自動変速モード用の変速マップを参照して第2シフトダウン下限値ng2を設定する。ここでは、図3に示されるような変速マップを参照して第2シフトダウン下限値ng2を設定する。例えば、図3に点Pで示されるように車速Vが「V1」であり、アクセル操作量ACCPが「ACCP1」であるときには、図3における点Pに対応する変速段である「3速」の変速段が第2シフトダウン下限値ng2として設定される。
【0186】
こうして第2シフトダウン下限値ng2を設定すると、ステップS236へと進み、第1シフトダウン下限値ng1と第2シフトダウン下限値ng2とを比較して、大きい方を最終的なシフトダウン下限値ngとして設定する。すなわち、第2シフトダウン下限値ng2として設定された変速段が第1シフトダウン下限値ng1として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段である場合には、このステップS236を通じて、第2シフトダウン下限値ng2として設定された変速段が最終的なシフトダウン下限値ngとして設定されるようになる。
【0187】
そして、こうしてシフトダウン下限値ngを設定すると、ステップS240へと進み、上記第2の実施形態と同様に今回のシフトダウン要求によって最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きいか否かを判定する。
【0188】
そして、ステップS240において、最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEBよりも大きい旨の判定がなされた場合(ステップS240:YES)には、ステップS250へと進む。そしてステップS250において、シフトダウン下限値ngとして設定された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS270へと進む。
【0189】
一方、ステップS240において、最終的に選択された変速段に対応する第1推定値NTAが第2推定値NEB以下である旨の判定がなされた場合(ステップS240:NO)には、ステップS260へと進む。そして、ステップS260において最終的に選択された変速段を目標変速段ntrgとして設定し、ステップS270へと進む。
【0190】
こうした構成を採用すれば、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って、変速段が、自動変速モードにおいて選択される変速段よりも変速比の大きい変速段に切り替えられることが回避されるようになる。そのため、上記第2の実施形態において記載した(1)及び(2)と同様の効果に加え、急発進や急加速、車輪のスリップが発生することを抑制することができるようになる。すなわち、飛び越し変速によるシフトダウンに伴って運転者の要求に反した意図しない減速が生じてしまうことを抑制することができるとともに、急発進や急加速、車輪のスリップが発生することを抑制することができるようになる。
【0191】
その他、上記各実施形態に共通して変更可能は要素としては次のようなものがある。
・シフトアップ要求を検出するシフトアップスイッチとしてシフトアップスイッチSW3とシフトアップパドル91aを備え、シフトダウン要求を検出するシフトダウンスイッチとしてシフトダウンスイッチSW4とシフトダウンパドル91bを備える構成を例示したが、シフトアップスイッチ及びシフトダウンスイッチの構成は変更することができる。
【0192】
例えば、ステアリングシフトスイッチ91、すなわちシフトアップパドル91a及びシフトダウンパドル91bを省略し、シフトアップスイッチSW3及びシフトダウンスイッチSW4のみを備える構成を採用することもできる。またこれとは反対に、シフトアップパドル91a及びシフトダウンパドル91bのみを備える構成を採用することもできる。
【0193】
・また、上記実施形態では、ステアリングシフトスイッチ91としてステアリングホイール90の右側にシフトアップパドル91a、ステアリングホイール90の左側にシフトダウンパドル91bを備える構成を示したが、この構成はステアリングシフトスイッチ91の構成の一例であり、適宜変更することができる。その他のステアリングシフトスイッチ91の構成としては、例えば、ステアリングホイール90の運転者に対向する位置にシフトアップボタンを設け、これに対してステアリングホイール90の裏側にシフトダウンボタンを設けるといった構成を採用することもできる。
【0194】
・尚、上記実施形態では、内燃機関10の吸入空気量GAを調量する吸入空気量調量機構として吸気通路13にスロットル弁14を設け、同スロットル弁14の開度を調整することにより吸入空気量GAを調量する構成を示した。これに対して、吸入空気量調量機構の構成は適宜変更することができる。例えば、内燃機関10の吸気バルブの最大リフト量及びリフト期間の少なくとも一方を変更するリフト量変更機構を設け、スロットル弁14に替えて、リフト量変更機構を通じて吸入空気量GAを調量する内燃機関を搭載した車両にこの発明を適用することもできる。
【0195】
・上記各実施形態にあっては、変速制御の制御モードとして手動変速モードと自動変速モードとを備え、これらの制御モードを切り替えることのできる自動変速機を例示したが、自動変速モードを備えておらず、手動変速モードのみを備えている自動変速機にあってもこの発明を適用することができる。
【0196】
・シフトダウン下限値ngよりも変速比の大きな変速段への変速段の変更を禁止すれば、加速のためにシフトダウンスイッチを操作しているにも拘わらず、車両が減速することを抑制することができる。そのため、飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関10が駆動される状態になることが推定されたときの変速制御の態様は適宜変更することができる。例えば、最終的に選択された変速段が、シフトダウン下限値ngとして設定されている変速段よりも変速比が大きい変速段である場合にシフトダウン要求をキャンセルし、変速段切替操作を実行しないといった構成を採用することもできる。また、最終的に選択された変速段が、シフトダウン下限値ngとして設定されている変速段よりも変速比が大きい変速段である場合に、変速段を現在の変速段よりも1段低い変速段に切り替える変速段切替操作を実行するといった構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0197】
10…内燃機関、12…クランクシャフト、13…吸気通路、14…スロットル弁、15…モータ、20…トルクコンバータ、30…自動変速機、31…入力軸、32…前進後退切替機構、33…変速段切替機構、34…出力軸、60…アクセルペダル、70…アクセルポジションセンサ、71…車速センサ、72…回転速度センサ、73…クランク角センサ、74…スロットル開度センサ、75…エアフロメータ、80…フロアシフト装置、81…シフトレバー、82…シフトゲート、90…ステアリングホイール、91…ステアリングシフトスイッチ、91a…シフトアップパドル、91b…シフトダウンパドル、100…電子制御装置、230…自動変速機、231…入力軸、232…自動クラッチ、233…変速段切替機構、234…出力軸、SW1…シフトレバーポジションスイッチ、SW2…選択モード検出スイッチ、SW3…シフトアップスイッチ、SW4…シフトダウンスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトアップスイッチ及びシフトダウンスイッチを操作することによって変速段を選択することのできる手動変速モードを備え、前記シフトアップスイッチ又は前記シフトダウンスイッチが連続して複数回操作されたときに最終的に選択された変速段まで一度の変速段切替操作によって変速段を切り替える飛び越し変速を行う変速機の制御装置において、
アクセルペダルが踏み込まれた状態で前記シフトダウンスイッチが連続して複数回操作されたときに、前記飛び越し変速の実行に先立ち、同飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって内燃機関が駆動される状態になるか否かを推定する駆動状態推定手段を備え、同駆動状態推定手段によって前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることが推定されたときに、前記選択された変速段及び同変速段よりも変速比の大きい変速段への変速段切替操作を禁止する
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機の制御装置において、
前記変速機は、複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより前記内燃機関と連結された状態で変速段を切り替える遊星歯車式の変速段切替機構を備える変速機であり、
前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と前記選択された変速段の変速比とに基づいて前記選択された変速段に変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作中の前記変速機の入力軸回転速度を第2推定値として算出し、前記第1推定値が前記第2推定値よりも大きいときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定する
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の変速機の制御装置において、
前記変速機は、変速段を切り替える変速段切替機構と、同変速段切替機構と前記内燃機関との間の駆動力の伝達を断接するクラッチとを備え、同クラッチが解放されている間に変速段を切り替える変速機であり、
前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と前記選択された変速段の変速比とに基づいて前記選択された変速段に変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作に伴い前記クラッチが係合される直前の機関回転速度を第2推定値として算出し、前記第1推定値が前記第2推定値よりも大きいときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定する
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の変速機の制御装置において、
変速段切替操作の実行に先立ち、前記変速機の出力軸回転速度と各変速段の変速比とに基づいて変速段を変更した場合の前記変速機の入力軸回転速度を変速段毎に算出する入力軸回転速度推定手段と、同入力軸回転速度推定手段によって変速段毎に推定された入力軸回転速度の推定値と前記第2推定値とをそれぞれ比較して前記入力軸回転速度推定手段によって推定された入力軸回転速度の推定値が前記第2推定値以下になる変速段のうち、変速比が最も大きい変速段をシフトダウン下限値として設定するシフトダウン下限値設定手段とを備え、
前記第1推定値が前記第2推定値よりも大きい場合には、前記シフトダウン下限値として設定されている変速段に変速段を切り替える一方、前記駆第1推定値が第2推定値以下の場合には、前記選択された変速段に変速段を切り替える
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の変速機の制御装置において、前記変速機は複数の係合要素の断接状態を切り替えることにより前記内燃機関と連結された状態で変速段を切り替える遊星歯車式の変速段切替機構を備える変速機であり、
前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と各変速段の変速比とに基づいて変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として変速段毎に算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作中の前記変速機の入力軸回転速度を第2推定値として算出し、変速段毎に算出された前記第1推定値と前記第2推定値とをそれぞれ比較して前記第1推定値が前記第2推定値以下になる変速段のうち、変速比が最も大きい変速段をシフトダウン下限値として設定し、前記選択された変速段が同シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定する
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の変速機の制御装置において、
前記変速機は、変速段を切り替える変速段切替機構と、同変速段切替機構と前記内燃機関との間の駆動力の伝達を断接するクラッチとを備え、同クラッチが解放されている間に変速段を切り替える変速機であり、
前記駆動状態推定手段は、前記変速機の出力軸回転速度と各変速段の変速比とに基づいて変速段を切り替えた場合の前記変速機の入力軸回転速度を第1推定値として変速段毎に算出するとともに、前記アクセルペダルの踏み込み量に基づいて変速段切替操作に伴い前記クラッチが係合される直前の機関回転速度を第2推定値として算出し、変速段毎に算出された前記第1推定値と前記第2推定値とをそれぞれ比較して前記第1推定値が前記第2推定値以下になる変速段のうち、変速比が最も大きい変速段をシフトダウン下限値として設定し、前記選択された変速段が同シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段であるときに、前記飛び越し変速の実行に伴い駆動輪側の駆動力によって前記内燃機関が駆動される状態になることを推定する
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の変速機の制御装置において、
前記選択された変速段が、前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の大きい変速段である場合には、前記シフトダウン下限値として設定されている変速段に変速段を切り替える一方、
前記選択された変速段が、前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段又は前記シフトダウン下限値として設定された変速段と同一の変速段である場合には、前記選択された変速段に変速段を切り替える
ことを特徴とする変速機の制御装置。
【請求項8】
請求項4に記載の変速機の制御装置において、
前記アクセルペダルが踏み込まれた状態で前記シフトダウンスイッチが連続して複数回操作されたときに、自動変速モードにおいて参照する変速マップを参照して変速段切換操作を実行する直前の前記アクセルペダルの踏み込み量及び車速に対応する変速段を導出し、
同変速マップを参照して導出された変速段と、前記シフトダウン下限値として設定された変速段とを比較して同変速マップを参照して導出された変速段が前記シフトダウン下限値として設定された変速段よりも変速比の小さい変速段である場合には、同変速マップを参照して導出された変速段を前記シフトダウン下限値にする
ことを特徴とする変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−266045(P2010−266045A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119999(P2009−119999)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】