説明

外観検査装置及び外観検査方法

【課題】基板の表面の高さを求める。
【解決手段】外観検査装置は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体12を撮像して得られる被検査体画像を使用して被検査体12を検査する。外観検査装置は、被検査体12にパターンを投射する投射ユニットと、パターンが投射された被検査体12のパターン画像に基づいて被検査体12の表面の高さ分布を求める高さ測定部と、を備える。高さ測定部は、高さ分布における高さ値の出現頻度に基づいて基板表面の高さを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外観検査用画像と高さ測定用画像を用いてハンダの塗布状態の良否を判定する外観検査装置が記載されている。この装置は、クリームハンダの塗布エリアの面積と高さからクリームハンダの体積を求め、適正な塗布量であるかどうかを検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−226316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実装された電子部品や接合のためのハンダ等の高さを求める場合には通常、基板の表面が高さの基準とされる。よって、精度よく電子部品等の高さを求めるためには、基板表面の高さを正確に与えることが望まれる。しかし、同種の実装基板であっても個々の基板ごとに基板表面の高さにバラツキがあり必ずしも均一ではない。また、一枚の基板においても、基板平坦度のむらや、反り、たわみ、変形などの影響により、基板表面の高さは面内位置によって異なりうる。基板が大型であるほど反りやたわみの影響が大きくなる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、個々の基板についてその表面高さを特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体を撮像して得られる被検査体画像を使用して前記被検査体を検査するための外観検査装置である。この装置は、前記被検査体にパターンを投射する投射ユニットと、前記パターンが投射された前記被検査体のパターン画像に基づいて前記被検査体の表面の高さ分布を求める高さ測定部と、を備える。前記高さ測定部は、前記高さ分布における高さ値の出現頻度に基づいて基板表面の高さを特定する。
【0007】
本発明の別の態様は、電子部品を実装した実装基板の基板表面の高さを求めることを含む外観検査方法である。この方法は、実装基板上の高さ計測点間の相対高さを各計測点について示す該実装基板の高さ分布を作成するステップと、前記高さ分布における高さ値の出現頻度に基づいて基板表面の高さを特定するステップと、を備える。
【0008】
なお、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体等の間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の表面の高さを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観検査装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る被検査体画像の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る高さマップの一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る検査処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板表面高さの測定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置10を模式的に示す図である。外観検査装置10は、被検査体12を撮像して得られる被検査体画像を使用して被検査体12を検査する。被検査体12は例えば、多数の電子部品が実装されている電子回路基板である。外観検査装置10は、電子部品の実装状態の良否を被検査体画像に基づいて判定する。この検査は通常、各部品に対し複数の検査項目について行われる。検査項目とはすなわち良否判定を要する項目である。検査項目には例えば、部品そのものの欠品や位置ずれ、極性反転などの部品配置についての検査項目と、ハンダ付け状態や部品のリードピンの浮きなどの部品と基板との接続部についての検査項目とが含まれる。
【0012】
外観検査装置10は、被検査体12を保持するための検査テーブル14と、被検査体を照明し撮像する撮像ユニット16と、検査テーブル14に対し撮像ユニット16を移動させるXYステージ18と、撮像ユニット16及びXYステージ18を制御するための制御ユニット20と、を含んで構成される。なお説明の便宜上、図1に示すように、検査テーブル14の被検査体配置面をXY平面とし、その配置面に垂直な方向(すなわち撮像ユニット16による撮像方向)をZ方向とする。
【0013】
撮像ユニット16は、XYステージ18の移動テーブル(図示せず)に取り付けられており、XYステージ18によりX方向及びY方向のそれぞれに移動可能である。XYステージ18は例えばいわゆるH型のXYステージである。よってXYステージ18は、Y方向に延びるY方向ガイドに沿って移動テーブルをY方向に移動させるYリニアモータと、Y方向ガイドをその両端で支持しかつ移動テーブルとY方向ガイドとをX方向に移動可能に構成されている2本のX方向ガイドとXリニアモータと、を備える。なおXYステージ18は、撮像ユニット16をZ方向に移動させるZ移動機構をさらに備えてもよいし、撮像ユニット16を回転させる回転機構をさらに備えてもよい。外観検査装置10は、検査テーブル14を移動可能とするXYステージをさらに備えてもよく、この場合、撮像ユニット16を移動させるXYステージ18は省略されてもよい。
【0014】
撮像ユニット16は、カメラユニット22と、照明ユニット24と、投射ユニット26と、を含んで構成される。一実施例においては、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26は一体の撮像ユニット16として構成されていてもよい。この一体の撮像ユニット16において、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26の相対位置は固定されていてもよいし、各ユニットが相対移動可能に構成されていてもよい。また、カメラユニット22、照明ユニット24、及び投射ユニット26は別体とされ、別々に移動可能に構成されていてもよい。
【0015】
カメラユニット22は、対象物の2次元画像を生成する撮像素子と、その撮像素子に画像を結像させるための光学系(例えばレンズ)とを含む。カメラユニット22は例えばCCDカメラである。カメラユニット22の最大視野は、検査テーブル14の被検査体載置区域よりも小さくてもよい。この場合、カメラユニット22は、複数の部分画像に分割して被検査体12の全体を撮像する。制御ユニット20は、カメラユニット22が部分画像を撮像するたびに次の撮像位置へとカメラユニット22が移動されるようXYステージ18を制御する。制御ユニット20は、部分画像を合成して被検査体12の全体画像を生成する。
【0016】
なお、カメラユニット22は、2次元の撮像素子に代えて、1次元画像を生成する撮像素子を備えてもよい。この場合、カメラユニット22により被検査体12を走査することにより、被検査体12の全体画像を取得することができる。
【0017】
照明ユニット24は、カメラユニット22による撮像のための照明光を被検査体12の表面に投光するよう構成されている。照明ユニット24は、カメラユニット22の撮像素子により検出可能である波長域から選択された波長または波長域の光を発する1つまたは複数の光源を備える。照明光は可視光には限られず、紫外光やX線等を用いてもよい。光源が複数設けられている場合には、各光源は異なる波長の光(例えば、赤色、青色、及び緑色)を異なる投光角度で被検査体12の表面に投光するよう構成される。
【0018】
一実施例においては、照明ユニット24は、被検査体12の検査面(すなわち撮像ユニット16に対向する面)に垂直に照明光を投射する落射照明源24aと、被検査体12の検査面に対し斜め方向から照明光を投射する側方照明源24bと、を備えてもよい。落射照明源24a及び側方照明源24bはそれぞれリング照明源であってもよい。すなわち、落射照明源24aは、カメラユニット22の光軸を包囲するリング照明源であり、被検査体12の検査面に対し実質的に垂直に照明光を投射するようカメラユニット22の近傍に配置されている。側方照明源24bは、カメラユニット22の光軸を包囲するリング照明源であり、被検査体12の検査面に対し斜めに照明光を投射するよう落射照明源24aよりも外側に配置されている。
【0019】
図1に示されるように、落射照明源24aは1つのリング照明源を含み、側方照明源24bは複数(図においては2つ)のリング照明源を含んでもよい。例えば、落射照明源24aは青色照明源であり、側方照明源24bは緑色照明源及び赤色照明源であってもよい。なお、これとは異なり、落射照明源24aが複数の照明源を含み、側方照明源24bが1つの照明源を含んでもよい。あるいは、落射照明源24a及び側方照明源24bのそれぞれが赤色照明源、青色照明源、及び緑色照明源を含んでもよい。
【0020】
図1においては参考のため、落射照明源24aから投射され被検査体12の検査面で反射してカメラユニット22に投影される光束を破線の矢印で示している。また、側方照明源24b及び投射ユニット26からの投射も同様に破線の矢印で示している。なお、図示される実施例においては落射照明源24aと側方照明源24bとの間に投射ユニット26が設けられているが、投射ユニット26の配置はこれに限られず、例えば側方照明源24bの外側に投射ユニット26が設けられてもよい。
【0021】
投射ユニット26は、被検査体12の検査面にパターンを投射する。パターンが投射された被検査体12は、カメラユニット22により撮像される。外観検査装置10は、撮像された被検査体12のパターン画像に基づいて被検査体の検査面の高さマップを作成する。制御ユニット20は、投射パターンに対するパターン画像の局所的な不一致を検出し、その局所的な不一致に基づいてその部位の高さを求める。つまり、投射パターンに対する撮像パターンの変化が、検査面上の高さ変化に対応する。
【0022】
投射パターンは、明線と暗線とが交互に周期的に繰り返される1次元の縞パターンであることが好ましい。投射ユニット26は、被検査体12の検査面に対し斜め方向から縞パターンを投影するよう配置されている。被検査体の検査面における高さの非連続は、縞パターン画像においてパターンのずれとして表れる。よって、パターンのずれ量から高さ差を求めることができる。一実施例においては、サインカーブに従って明るさが変化する縞パターンを用いるPMP(Phase Measurement Profilometry)法により制御ユニット20は高さマップを作成する。PMP法においては縞パターンのずれ量がサインカーブの位相差に相当する。
【0023】
投射ユニット26は、パターン形成装置と、パターン形成装置を照明するための光源と、パターンを被検査体12の検査面に投影するための光学系と、を含んで構成される。パターン形成装置は例えば、液晶ディスプレイ等のように所望のパターンを動的に生成しうる可変パターニング装置であってもよいし、ガラスプレート等の基板上にパターンが固定的に形成されている固定パターニング装置であってもよい。パターン形成装置が固定パターニング装置である場合には、固定パターニング装置を移動させる移動機構を設けるか、あるいはパターン投影用の光学系に調整機構を設けることにより、パターンの投影位置を可変とすることが好ましい。また、投射ユニット26は、異なるパターンをもつ複数の固定パターニング装置を切替可能に構成されていてもよい。
【0024】
投射ユニット26は、カメラユニット22の周囲に複数設けられていてもよい。複数の投射ユニット26は、それぞれ異なる投射方向から被検査体12にパターンを投影するよう配置されている。このようにすれば、検査面における高さ差によって影となりパターンが投影されない領域を小さくすることができる。
【0025】
一実施例においては3つの投射ユニット26がカメラユニット22の周囲に設けられてもよい。例えば、図示されるように第1投射ユニット26aに対向して第2投射ユニット26bが配置され、第1投射ユニット26aと第2投射ユニット26bとの中間にカメラユニット22が配置される。第3投影ユニット(図示せず)は、第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bの配置面(図1の紙面)の面外に配置される。例えば第3投影ユニットは、第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bの配置面に垂直でカメラユニット22の光軸を含む面に沿って配置される。各投射ユニットはカメラユニット22から等距離に配置される。
【0026】
第1投射ユニット26a及び第2投射ユニット26bが南北方向から被検査体12にパターンを投影するとしたら、第3投影ユニットは東(または西)から被検査体12にパターンを投影するということである。このように少なくとも3つの投射ユニット26を配置することにより、基板に実装された電子部品による死角を実質的になくすことができる。第3投影ユニットは、基板表面からの高さが所定値を超える実装部品がある場合に被検査体12を撮像するようにしてもよい。
【0027】
図1に示す制御ユニット20は、本装置全体を統括的に制御するもので、ハードウエアとしては、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現され、ソフトウエアとしてはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0028】
図1には、制御ユニット20の構成の一例が示されている。制御ユニット20は、検査制御部28とメモリ30とを含んで構成される。検査制御部28は、高さ測定部32と検査データ処理部34と検査部36とを含んで構成される。また、外観検査装置10は、ユーザまたは他の装置からの入力を受け付けるための入力部38と、検査に関連する情報を出力するための出力部40とを備えており、入力部38及び出力部40はそれぞれ制御ユニット20に接続されている。入力部38は例えば、ユーザからの入力を受け付けるためのマウスやキーボード等の入力手段や、他の装置との通信をするための通信手段を含む。出力部40は、ディスプレイやプリンタ等の公知の出力手段を含む。
【0029】
検査制御部28は、入力部38からの入力及びメモリ30に記憶されている検査関連情報に基づいて、検査のための各種制御処理を実行するよう構成されている。検査関連情報には、被検査体12の2次元画像、被検査体12の高さマップ、及び基板検査データが含まれる。検査に先立って、検査データ処理部34は、すべての検査項目に合格することが保証されている被検査体12の2次元画像及び高さマップを使用して基板検査データを作成する。検査部36は、作成済みの基板検査データと、検査されるべき被検査体12の2次元画像及び高さマップとに基づいて検査を実行する。
【0030】
基板検査データは基板の品種ごとに作成される検査データである。基板検査データはいわば、その基板に実装された部品ごとの検査データの集合体である。各部品の検査データは、その部品に必要な検査項目、各検査項目についての画像上の検査区域である検査ウインドウ、及び各検査項目について良否判定の基準となる検査基準を含む。検査ウインドウは各検査項目について1つまたは複数設定される。例えば部品のハンダ付けの良否を判定する検査項目においては通常、その部品のハンダ付け領域の数と同数の検査ウィンドウがハンダ付け領域の配置に対応する配置で設定される。また、被検査体画像に所定の画像処理をした画像を使用する検査項目については、その画像処理の内容も検査データに含まれる。
【0031】
検査データ処理部34は、基板検査データ作成処理として、その基板に合わせて検査データの各項目を設定する。例えば検査データ処理部34は、その基板の部品レイアウトに適合するように各検査ウインドウの位置及び大きさを各検査項目について自動的に設定する。検査データ処理部34は、検査データのうち一部の項目についてユーザの入力を受け付けるようにしてもよい。例えば、検査データ処理部34は、ユーザによる検査基準のチューニングを受け入れるようにしてもよい。検査基準は高さ情報を用いて設定されてもよい。
【0032】
検査制御部28は、基板検査データ作成の前処理として被検査体12の撮像処理を実行する。この被検査体12はすべての検査項目に合格しているものが用いられる。撮像処理は上述のように、照明ユニット24により被検査体12を照明しつつ撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12の部分画像を順次撮影することにより行われる。被検査体12の全体がカバーされるように複数の部分画像が撮影される。検査制御部28は、これら複数の部分画像を合成し、被検査体12の検査面全体を含む基板全面画像を生成する。検査制御部28は、メモリ30に基板全面画像を記憶する。
【0033】
また、検査制御部28は、高さマップ作成のための前処理として、投射ユニット26により被検査体12にパターンを投射しつつ撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動を制御し、被検査体12のパターン画像を分割して順次撮影する。投射されるパターンは好ましくは、PMP法に基づきサインカーブに従って明るさが変化する縞パターンである。検査制御部28は、撮影した分割画像を合成し、被検査体12の検査面全体のパターン画像を生成する。検査制御部28は、メモリ30にパターン画像を記憶する。なお、全体ではなく検査面の一部についてパターン画像を生成するようにしてもよい。
【0034】
高さ測定部32は、撮像パターン画像上のパターンに基づいて被検査体12の検査面全体の高さマップを作成する。高さ測定部32はまず、撮像パターン画像と基準パターン画像との局所的な位相差を画像全体について求めることにより、被検査体12の検査面の位相差マップを求める。基準パターン画像とは、投射ユニット26により投射されたパターン画像(つまり投射ユニット26に内蔵されているパターン形成装置が生成した画像)である。高さ測定部32は、高さ測定の基準となる基準面と位相差マップとに基づいて被検査体12の高さマップを作成する。基準面は例えば、検査される電子回路基板の基板表面である。基準面は必ずしも平面ではなくてもよく、基板の反り等の変形が反映された曲面であってもよい。基準面は、ユーザの入力等により予め指定されてもよいし、例えば後述の基板表面高さ測定方法により個々の基板ごとに求めてもよい。
【0035】
高さ測定部32は、具体的には、撮像パターン画像の各画素と、当該画素に対応する基準パターン画像の画素とで縞パターンの位相差を求める。高さ測定部32は、位相差を高さに換算する。高さへの換算は、当該画素近傍における局所的な縞幅を用いて行われる。撮像パターン画像上の縞幅が場所により異なるのを補償するためである。検査面上での位置により投射ユニット26からの距離が異なるために、基準パターンの縞幅が一定であっても、検査面のパターン投影領域の一端から他端へと線形に縞幅が変化してしまうからである。高さ測定部32は、換算された高さと基準面とに基づいて基準面からの高さを求め、被検査体12の高さマップを作成する。
【0036】
一実施形態に係る高さ測定方法を説明する。縞パターン投射領域の1つの計測点に着目すると、空間的に位相をずらしながら縞パターンを投射したときに(言い換えれば、縞の反復する方向に縞パターンを走査したときに)、その計測点の明るさは周期的に変動する。色や反射率等の計測点の表面特性に応じて計測点ごとに平均の明るさは異なるものの、どの計測点においても縞パターンに対応する周期的な明るさ変動が生じる。よって、計測点を例えば最も明るくするときの縞パターンの位相がその計測点の高さ情報を表すことになる。一般化すれば、周期的明るさ変動の初期位相が各計測点の高さ情報を与えると言える。
【0037】
PMP法では原理的に1種の縞パターンについて位相をずらして少なくとも3回、典型的には4回の撮像が必要とされている。縞パターンが正弦波であることに対応して各計測点の明るさ変動も正弦波となる。縞のピッチは既知であるから、明るさの平均値、振幅、及び初期位相が明らかとなれば明るさ変動を表す正弦波が特定される。これら3つの変数は、少なくとも3枚の撮像画像から計測点の明るさ測定値を得ることにより決定することができる。また、1つの縞パターンを90度ずつ位相をずらして4回撮像したときのある画素の輝度をそれぞれl乃至lとすると、その画素にあたる計測点の初期位相φはtan(φ)=(l−l)/(l−l)で表されることが知られている。縞パターンのピッチをPとすると縞パターンのずれ量はP*(φ/2π)で求められる。パターンの投射角度を用いてパターンずれ量からその位置の高さを求めることができる。
【0038】
このようにして、高さ測定部32は、高さ情報に基づいて、実装基板上の高さ計測点間の相対高さを各計測点について示す実装基板高さ分布を作成する。高さ測定部32は、特定された基板表面高さと実装基板高さ分布とに基づいて、基板表面を基準面とする高さ分布を求めることができる。
【0039】
検査制御部28は、被検査体12の高さマップが有する高さ情報を被検査体12の2次元画像の各画素に対応づけることにより、高さ分布を有する被検査体画像を作成してもよい。検査制御部28は、高さ分布付き被検査体画像に基づいて被検査体12の3次元モデリング表示を行うようにしてもよい。また、検査制御部28は、2次元の被検査体画像に高さ分布を重ね合わせて出力部40に表示してもよい。例えば、被検査体画像を高さ分布により色分け表示するようにしてもよい。図2は、被検査体画像の一例であり、図3は、図2に示される被検査体画像の高さ分布をグレースケールで表示したものである。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態に係る検査処理を説明するためのフローチャートである。外観検査装置10は、作成済みの基板検査データを用いて検査対象の電子回路基板の検査を行う。まず外観検査装置10は、基板全面画像を作成する(S10)。基板全面画像は、上述のように基板検査データ作成の前処理として説明した方法と同様にして作成される。すなわち、外観検査装置10は、撮像ユニット16により電子回路基板を分割して撮影し、得られた画像を合成する。このようにして、外観検査装置10は、撮像ユニット16に対向する電子基板の全面の2次元画像である基板全面画像を作成する。基板全面画像は図2に示される画像と同様の画像である。
【0041】
次に、外観検査装置10は、基板全面高さマップを作成する(S11)。基板全面高さマップは、上述の方法と同様にして作成される。すなわち、外観検査装置10は、撮像ユニット16により電子回路基板にパターンを投射しつつ分割して撮影する。得られた分割画像から基板全体のパターン画像を合成する。外観検査装置10は、撮像ユニット16に対向する電子回路基板の全面の高さマップをパターン画像に基づいて作成する。基板全面高さマップは、例えば図3に示される形式で外観検査装置10の表示部に表示される。
【0042】
外観検査装置10は、基板全面画像に基板検査データを適用してその基板の検査を実行する(S12)。外観検査装置10は、基板全面画像に基板検査データを適用することにより、各検査項目に必要な検査ウインドウを基板全面画像上に設定する。検査項目によっては、基板全面画像に画像処理をして得られる専用の画像を用いて検査する場合もある。この場合、外観検査装置10は、基板検査データに基づいてその専用画像上に検査ウインドウを設定する。外観検査装置10は、検査ウインドウごとに検査基準に従って各検査項目の良否を判定する。
【0043】
検査基準は高さについてのしきい値であってもよい。すなわち外観検査装置10は、基板全面高さマップから得られる検査ウインドウ内の高さ分布に基づいて良否を判定してもよい。外観検査装置10は、高さ情報を用いて設定された検査基準に基づいて被検査体12の検査をする検査部36をさらに備えてもよい。高さ情報を検査基準に用いることにより、2次元画像からは判定が必ずしも容易ではない検査項目について精度よく判定し得る。例えば、電子部品のリードの浮きを簡単なアルゴリズムで精度よく判定することができる。リードピンが基板表面に接続されずに上方に浮いているか否かを上方から撮像した2次元画像により識別することは必ずしも容易ではない。本実施形態によればリードピン背面の高さを測定することができるので、浮きの有無を精度よく判別することができる。外観検査装置10は、検査結果を出力して処理を終了する。
【0044】
なお、基板全面画像を作成してから基板全面高さマップを作成する代わりに、基板全面高さマップを先に作成するようにしてもよい。また、外観検査装置10は、基板全面画像と基板全面高さマップとを並行して作成してもよい。この場合、被検査体12のある部分領域に対し照明ユニット24及び投射ユニット26の照明及びパターン投射のもとで順次撮像したうえで次の部分領域の撮像のための撮像ユニット16と検査テーブル14との相対移動がなされるように、撮像ユニット16及びXYステージ18が制御されてもよい。また、外観検査装置10は、被検査体12の全体ではなく一部の領域について2次元画像及び高さマップを作成し、その領域について検査をするようにしてもよい。
【0045】
図5は、本発明の一実施形態に係る基板表面高さの測定方法を説明するための図である。基板表面は上述のように高さ測定の基準面として使用される。高さ測定部32は、高さ分布における高さ値の出現頻度に基づいて基板表面の高さを特定する。経験的に見て、部品が実装されていても露出された基板表面の割合は相当大きいと考えられる。また実装された部品は種類ごとに異なる種々の高さ値をもつと考えられる。よって、上述の高さマップにおいて基板表面を表す高さ値の出現頻度は相対的に大きくなるはずである。
【0046】
そこで、高さ測定部32は、高さ値の出現頻度を表す度数分布に現れるピークの高さ値を基板表面の高さとする。このようにして、実装基板表面の高さ分布から容易に基板表面の高さを求めることができる。また、実装基板の実装状態や基板ごとのバラツキについての情報を予め準備または取得することなく個々の基板ごとに基板表面の高さを求めることができる。
【0047】
図5に示されるように、被検査体12は、基板表面70を有する基板本体72に高さの異なる複数の電子部品74、76、78が実装されている。基板本体72には貫通孔80も形成されている。この被検査体12の高さマップの各画素のもつ高さ値を度数分布で表したものを図5の右側に示す。この度数分布の縦軸は高さ値を示し、横軸はその高さ値をもつ画素数(すなわち面積)を示す。ピークが大きいほど、そのピークが示す高さをもつ基板上の面積が広いということである。
【0048】
図5に示す例においては、高さ値の最小値がhで最大値がhであり、被検査体12はこの最小値hから最大値hの範囲の高さを持つ。この度数分布は主なピークを3つ持つ。小さいほうから第1ピークh、第2ピークh、第3ピークhである。基板表面70を設置面としてその上に各電子部品が搭載されるから基板表面70の高さは小さい値をとるはずである。また、被検査体12に高密度に部品が実装される場合には露出されている基板表面70の基板全面に占める比率は小さくなり、必ずしも最大のピークが基板表面70であるとも限らない。よって、高さ測定部32は、度数分布において最小の高さ値をもつピークである第1ピークhを基板表面70の高さであると判定する。なお図示の例では、第2ピークh、第3ピークhはそれぞれ電子部品78、76の高さを表すと考えられる。
【0049】
通常は基板表面70のもつ高さ値と度数分布の最小高さ値とが一致する。しかし、貫通孔80の高さ値は基板表面70よりも低いから、基板本体72に貫通孔80がある場合には、基板表面70を表す第1ピークhよりも小さい高さ値(図5における高さh乃至hの範囲)が度数分布に現れる。よって、高さ測定部32は、度数分布の最小高さ値近傍の値を無視したうえで最小のピークを基板表面高さと特定するようにしてもよい。ここで、最小高さ値近傍とは例えば、度数分布における最小高さ値から最大高さ値までの高さ範囲の所定割合(例えば10%)にあたる範囲であってもよい。
【0050】
上述の基板表面高さ特定処理は、基板全面に対して実行されてもよい。この場合、基板全面について共通の基板表面高さが定められる。投射パターンのずれ量から求められた高さ分布はいわば仮の基準面に対する高さ分布である。この仮の高さ分布が、特定された共通の基板表面高さを基準とする高さ分布に変換される。各画素について仮の基準面と基板表面高さとの差を補正することで基板表面高さを基準とする高さ分布に換算される。
【0051】
一実施例においては、高さ測定部32は、被検査体の全体を表す高さ分布について共通の基板表面高さを求める代わりに、高さ分布を被検査体の各部分を表す複数の部分に分割し、部分ごとに基板表面高さを求めるようにしてもよい。このようにすれば、被検査体の各部分について基板面を定めることができる。こうして定められた基板面をつなぎ合わせることにより、たわみや反り等を反映した基板面を表すことができる。
【0052】
一実施例においては、高さ測定部32は、被検査体上の複数の局所領域それぞれについて代表基板高さを求めてもよい。高さ測定部32は、それら複数の代表高さから前記複数の局所領域を含む範囲の基板表面を決定するようにしてもよい。例えば1つの範囲につき3つの局所領域を選択する。各局所領域における基板高さと面内代表位置(例えば局所領域の中心位置)とに基づいて、その範囲の基板面を表す平面を決定することができる。この局所領域は、部品に覆われていない露出された基板面を当該領域内に含むようにするために、1つの実装部品よりも大きい面積を持つことが好ましい。あるいは、高さ測定部32は、例えば基板上の部品配置を表す情報に基づいて、実装部品が存在しないか、基板表面の比率の高い領域を局所領域として選択するようにしてもよい。基板高さ特定処理の演算量を小さくするためには、局所領域の面積を小さくすることが好ましい。
【0053】
高さ測定部32は例えば、カメラユニット22の視野にあたる被検査体12の部分領域ごとに4点の基板表面高さを求めてもよい。この場合、高さ測定部32は、カメラユニット22の視野領域の上半分、下半分、右半分、左半分のそれぞれを上述の局所領域として各局所領域の代表基板高さを求める。このように複数の局所領域が互いに重複していてもよい。あるいは、互いに重複しないよう視野領域の右上部(の少なくとも一部分)、右下部(の少なくとも一部分)、左上部(の少なくとも一部分)、左下部(の少なくとも一部分)をそれぞれ局所領域としてもよい。高さ測定部32は、こうして求めた4つの代表基板高さを各局所領域の中心点における基板高さとみなして視野領域の基板面を決定する。このようにして、視野領域ごとに基板面が決定され、各々をつなぎ合わせることにより全体の基板面を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
10 外観検査装置、 12 被検査体、 14 検査テーブル、 16 撮像ユニット、 18 XYステージ、 20 制御ユニット、 22 カメラユニット、 24 照明ユニット、 26 投射ユニット、 28 検査制御部、 30 メモリ、 32 高さ測定部、 34 検査データ処理部、 36 検査部、 38 入力部、 40 出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板に実装されている部品とを備える被検査体を撮像して得られる被検査体画像を使用して前記被検査体を検査するための外観検査装置であって、
前記被検査体にパターンを投射する投射ユニットと、
前記パターンが投射された前記被検査体のパターン画像に基づいて前記被検査体の表面の高さ分布を求める高さ測定部と、を備え、
前記高さ測定部は、前記高さ分布における高さ値の出現頻度に基づいて基板表面の高さを特定することを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記高さ測定部は、前記高さ値の出現頻度を表す度数分布に現れるピークにおける高さ値を基板表面の高さとすることを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記高さ測定部は、被検査体上の複数の局所領域それぞれについて代表基板高さを求め、それら複数の代表高さから前記複数の局所領域を含む範囲の基板表面を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記高さ測定部は、特定された基板表面高さと前記高さ分布とに基づいて、基板表面を基準面とする高さ分布を求めることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項5】
電子部品を実装した実装基板の基板表面の高さを求めることを含む外観検査方法であって、
実装基板上の高さ計測点間の相対高さを各計測点について示す該実装基板の高さ分布を作成するステップと、
前記高さ分布における高さ値の出現頻度に基づいて基板表面の高さを特定するステップと、を備えることを特徴とする外観検査方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−53016(P2012−53016A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197947(P2010−197947)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(595039014)株式会社サキコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】