説明

多層プリント配線板の製造方法

【課題】微細化された導体回路とソルダーレジスト層との密着性を高め、はんだバンプ形成部においても、導体回路とソルダーレジスト層とが強固に密着して剥離せず、はんだバンプ形成部に導通不良を引き起こさない多層プリント配線板を得る。
【解決手段】はんだパッド用導体回路と、ソルダーレジスト層と、はんだバンプとを備える多層プリント配線板の製造方法において、(a)無電解めっき及び電解めっきにより、線幅が50μm以下でなる前記はんだパッド用導体回路を形成する工程と、(b)前記はんだパッド用導体回路の上面および側面を第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって処理し、前記はんだパッド用導体回路上に最大粗度(Rmax)が0.5〜10μmの粗化面を形成する工程と、(c)前記工程(b)の後、前記はんだパッド用導体回路上にエッチング処理または研磨処理等による酸処理を行う工程と、(d)前記はんだパッド用導体回路をソルダーレジスト組成物で被覆する工程と、(e)前記はんだパッド用導体回路部分の前記ソルダーレジスト組成物を除去し、開口を有するソルダーレジスト層を形成する工程と、(f)前記開口において、はんだバンプを形成する工程とを含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に関し、特に、はんだパッド用導体回路とソルダーレジスト層及びはんだパッド用導体回路とはんだバンプの密着性、はんだバンプの強度を向上させ得るプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層配線板の高密度化という要請から、いわゆるビルドアップ多層配線基板が注目されている。このビルドアップ多層配線基板は、例えば、特許文献1に開示されているような方法により製造される。
【0003】
この方法によれば、感光性の無電解めっき用接着剤からなる絶縁材をコア基板上に塗布し、これを乾燥させた後、露光現像することにより、バイアホール用開口を有する層間絶縁樹脂層を形成する。次に、この層間絶縁樹脂層の表面を酸化剤等による処理にて粗化した後、その粗化面にめっきレジストを設け、レジスト非形成部に無電解めっきを施し、バイアホールを含む2層の導体回路パターンを形成する。かかる工程を複数回繰り返すことで、多層化したビルドアップ配線基板が得られる。
【0004】
かかるプリント配線板は、その表層にはんだバンプが設けられ、このはんだバンプを介して、ICチップと接続される。この際、かかるプリント配線板には、表層のはんたパッド用導体回路を保護し、はんだバンプが互いに融着しないように、ソルダーレジスト層が設けられる。
【0005】
また、かかるプリント配線板は、かかるはんだパッド用導体回路とソルダーレジスト層との密着を高めるため、導体回路の表面が粗化処理される。かかる導体回路の粗化処理には、黒化−還元処理、硫酸−過酸化水素によるエッチング、銅−ニッケル−リン針状合金めっき(例えば特許文献2参照)等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平4−55555号公報
【特許文献2】特開平9−130050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、プリント配線板の回路パターンとして、微細配線を用いる技術が注目されている。かかる微細配線によって、導体回路を高密度化できるからである。
【0008】
しかしながら、微細化された導体回路では、導体回路とソルダーレジスト層との接触面積が著しく少なくなり、導体回路とソルダーレジスト層との密着性が低下する。特に、プリント配線板の表層において、かかる導体回路が疎の状態で設けられる場合には、導体回路とソルダーレジスト層との密着性がより一層低下する。
【0009】
本発明は、微細化された導体回路とソルダーレジスト層との密着性を高め、はんだバンプ形成部においても、導体回路とソルダーレジスト層とが強固に密着して剥離せず、はんだバンプ形成部に導通不良を引き起こさないプリント配線板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、はんだパッド用導体回路と、ソルダーレジスト層と、はんだバンプとを備える多層プリント配線板の製造方法において、
(a)無電解めっき及び電解めっきにより、前記はんだパッド用導体回路を形成する工程と、
(b)前記はんだパッド用導体回路の上面および側面を第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって処理し、前記はんだパッド用導体回路上に粗化面を形成する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記はんだパッド用導体回路上にエッチング処理または研磨処理による酸処理を行う工程と、
(d)前記はんだパッド用導体回路をソルダーレジスト組成物で被覆する工程と、
(e)前記はんだパッド用導体回路部分の前記ソルダーレジスト組成物を除去し、開口を有するソルダーレジスト層を形成する工程と、
(f)前記開口において、はんだバンプを形成する工程と
を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法に係るものである。
本発明によれば、はんだパッド用導体回路と前記はんだパッド用導体回路上のソルダーレジスト層とを備えており、はんだ体を設けるための開口部が前記ソルダーレジスト層に形成されているプリント配線板において、前記はんだパッド用導体回路が、無電解めっき膜と電解めっき膜とからなり、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって処理された粗化面を有しており、前記ソルダーレジスト層が前記粗化面上に設けられている、プリント配線板に係るものを得ることができる。
【0011】
また、本発明は、はんだパッド用導体回路と、ソルダーレジスト層と、はんだバンプとを備える多層プリント配線板の製造方法において、
(a)無電解めっき及び電解めっきにより、前記はんだパッド用導体回路を形成する工程と、
(b)前記はんだパッド用導体回路の上面および側面を第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって処理し、前記はんだパッド用導体回路上に粗化面を形成する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記粗化面を熱処理する工程と、
(d)前記はんだパッド用導体回路をソルダーレジスト組成物で被覆する工程と、
(e)前記はんだパッド用導体回路部分の前記ソルダーレジスト組成物を除去し、開口を有するソルダーレジスト層を形成する工程と、
(f)前記開口において、はんだバンプを形成する工程と
を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法に係るものである。
本発明によれば、導体回路と前記導体回路上のソルダーレジスト層とを備えており、はんだ体を設けるための開口部が前記ソルダーレジスト層に形成されているプリント配線板において、前記導体回路が、無電解めっき膜と電解めっき膜とからなり、粗化面を有しており、前記粗化面が複数の錨状部と窪み部と稜線とを有し、前記錨状部と前記窪み部と前記稜線とが分散形成されてなり、隣り合う前記錨状部が前記稜線によって繋がってなるとともに、前記窪み部が、前記錨状部と前記稜線とによって囲まれてなり、前記ソルダーレジスト層が前記粗化面上に設けられている、プリント配線板に係るものを得ることができる。
【0012】
本発明者は、多層プリント配線板の表層とソルダーレジスト層との密着を改善するために、導体回路表面の粗化方法を種々検討した。特に、本発明者は、50μm以下の微細配線で形成された導体回路とソルダーレジスト層との密着性及びはんだバンプの強度を高めたいという要望に対して、黒化−還元処理、硫酸−過酸化水素によるエッチング及び銅−ニッケル−リン針状合金めっき等の処理方法を検討した。
【0013】
ところが、黒化−還元処理等は、微細配線の粗化処理として不適切なことが判明した。黒化−還元処理や硫酸−過酸化水素のエッチング処理では、50μm以下の微細配線を用い、配線密度を疎にした場合、粗化面に形成される凸部によって、導体回路とソルダーレジスト層との接地面積が小さくなり、ソルダーレジスト層の密着力が向上できないことを知見した。特に、ヒートサイクル条件下において、配線密度が疎の部分で、剥がれることがわかった。それに、はんだパッド内の金属も剥離したり、クラックが起きたりして、はんだバンプの脱落を誘発したりした。
【0014】
また、銅−ニッケル−リン針状合金めっきによる粗化層形成は、導体回路とソルダーレジスト層との密着性に優れており、50μm以下の微細配線、特に、かかる配線からなる疎の部分でも、十分な密着力を示すことがわかった。しかし、かかる粗化層は、めっきで形成するため、微細配線の密度が高くなると、析出した針状合金が層間絶縁層上で伸び、導体回路同士を接続してしまい、ショートを引き起こすことがわかった。
【0015】
銅−ニッケル−リン針状合金めっきによる粗化層形成では、針状合金の伸びによる析出異常を防止するために、めっき液の厳重な管理、制御が必要となる。
【0016】
また、樹脂から形成されたソルダーレジスト層は、はんだバンプ形成部において、露光や現像を経て、除去される。この時、銅−ニッケル−リン針状合金による粗化層では、針状突起同士が密集しているため、突起と突起の間が狭く、開口部形成の際、現像液や樹脂残りを除去する酸化剤溶液が流れず、樹脂が突起間に残存して、開口部底部にソルダーレジスト樹脂の有機物残さを残すことがある。この残さは、開口部の導体回路とバンプ下金属との間に、導通不良を引き起こすことがある。それに、この残さは、はんだパッド内の貴金属層の未形成、形成不具合を起こし、はんだパッドと導体回路間の強度が低下したりすることがあった。
【0017】
このような知見の下、本発明者は、他の粗化処理について鋭意研究した。その結果、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液を用いて、導体回路の表面を処理することで形成した粗化面が、ソルダーレジスト樹脂との密着性や、バンプ下金属との密着性に優れており、はんだバンプを形成するのに極めて適していることを突き止め、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0018】
本発明により得られるプリント配線板は、かかるエッチング液によって形成されるような、所定の粗面形状の粗化面を導体回路上に有しており、かかる粗化面を介して、ソルダーレジスト層が設けられている。かかる粗化面は、50μm以下の微細配線からなる配線密度が高い導体回路上にも、銅−ニッケル−リン針状合金めっきのような導通不良を引き起こすことなく形成することができる。
【0019】
また、かかる粗化面は、ソルダーレジスト層との密着性に優れ、はんだバンプ形成部でソルダーレジスト層が除去されて、導体回路とソルダーレジスト層との接触面積が少なくなった場合や、微細配線からなる配線密度が疎の状態のプリント配線板でも、導体回路とソルダーレジスト層との十分な密着性を確保することができる。
【0020】
さらに、かかる粗化面は、ソルダーレジスト層が除去されて、はんだバンプ形成用の開口部が設けられる際、粗化面上に樹脂残さが少なく、バンプ下金属との密着性に優れ、はんだバンプ形成部に導通不良を引き起こさない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる一例の粗化面の図面代用写真である。
【図2】本発明にかかる他の例の粗化面の図面代用写真である。
【図3】本発明にかかる更に他の例の粗化面の図面代用写真である。
【図4】本発明にかかる粗化面の摸式図である。
【図5】本発明にかかる粗化面の摸式図である。
【図6】本発明にかかる粗化面の摸式図である。
【図7】本発明にかかる粗化面の摸式図である。
【図8】本発明にかかる粗化面の摸式図である。
【図9】本発明にかかる他の粗化面の断面図である。
【図10】本発明にかかる他の粗化面の断面図である。
【図11】本発明にかかる他の粗化面の断面図である。
【図12】本発明にかかる他の粗化面の断面図である。
【図13】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図14】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図15】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図16】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図17】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図18】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図19】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図20】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図21】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図22】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図23】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図24】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図25】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図26】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図27】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図28】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図29】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図30】本発明にかかる一例の多層プリント配線板の製造工程図である。
【図31】本発明にかかる他の例の多層プリント配線板の断面図である。
【図32】針状合金からなる粗化層の図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
本発明にかかるエッチング液によりはんだパッド用導体回路を処理すると、その表面は、針状合金めっきとは異なり、図1〜8に示すような錨状部を有する粗化面となる。図1は、本発明にかかる一例の粗化面の図面代用写真である。この写真は、電子顕微鏡下において、粗化面を斜めから撮影したものである。図2は、本発明にかかる他の例の粗化面の図面代用写真である。この写真も、図1の写真と同様に撮影したものであるが、倍率を高めたものである。図3は、本発明にかかる更に他の例の粗化面の図面代用写真である。この写真は、図2と同様の倍率で、粗化面を電子顕微鏡下に真上から撮影したものである。
【0023】
本発明にかかるプリント配線板では、この電子顕微鏡写真が示すようなはんだパッド用導体回路の粗化面を介して、かかる導体回路上にソルダーレジスト層が設けられている。
【0024】
図4〜8は、かかる粗化面の摸式図である。図4は、平面図、図5は、図4のA−A線で切断した縦断面図、図6は、錨状部と窪み部との間で切断した縦断面図、図7は、錨状部の間の稜線を示す縦断面図、図8は、稜線と窪み部との間で切断した縦断面図である。
【0025】
図4及び5に示すように、本発明にかかる粗化面は、複数の錨状部1と複数の窪み部2と複数の稜線3とを有しており、錨状部1と窪み部2と稜線3とが分散している。錨状部1とその隣りの錨状部1との間には、図6に示すような窪み部2が形成されている。また、錨状部1とその隣りの錨状部1とは、図7に示すように、稜線3によって互いに繋がっている。窪み部2は、図6と図8に示すように、錨状部1と稜線3とによって囲まれている。
【0026】
比較のため、図32に、めっきにより形成された、従来の針状合金からなる粗化層の図面代用写真を示す。この電子顕微鏡写真に示す粗化層では、針状合金同士が重なり、針状合金間に空間が形成されている。かかるCu−Ni−Pからなる針状合金構造は、針状突起同士が密集しているため、突起と突起の間が狭く、現像液や樹脂残りを除去する酸化剤溶液が流れず、また、樹脂が突起間に残存して樹脂残りの原因となる。
【0027】
一方、本発明にかかる粗面形状は、最も高い部分に錨状部を有し、この錨状部の周囲の最も低い部分に窪み部が形成されており、錨状部とその隣りの錨状部とは、これらの錨状部よりも低く、窪み部よりも高い稜線によって繋がっており、複雑な凹凸形状を呈する。かかる複雑な凹凸形状の粗化面は、錨状部がソルダーレジスト層に食い込み、導体回路とソルダーレジスト層とを強固に密着させ、はんだバンプ形成部において、特に、微細配線からなる配線密度が疎の状態の場合でも、導体回路とソルダーレジスト層との間に剥がれを起こさない。また、かかる粗化面は、めっき液との親和性に優れ、めっきが粗化面の窪み部に浸入して、粗化面の錨状部につきまわるため、錨状部がバンプ下金属に食い込み、導体回路とはんだバンプとの密着性を低下させない。
【0028】
また、かかる粗化面では、各錨状部は密集していない。また、各錨状部を連結する稜線は、樹脂の流れを妨げないような形状を有している。このため、かかる粗化面では、窪み部間や錨状部間を、現像液や樹脂残りを除去する酸化剤溶液が流れ易く、ソルダーレジスト樹脂が溜まり難い。このため、本発明にかかる粗化面は、現像処理後の樹脂残りがなく、バンプ下金属との密着性に優れている。
【0029】
このように、本発明にかかる粗化面は、導体回路とソルダーレジスト層との密着性や、導体回路とバンプ下金属との密着性を維持しつつ、現像処理後の樹脂残りを防止するのに最適な形状を有する。
【0030】
本発明にかかる粗化面は、例えば第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって、導体回路表面の金属結晶粒子を脱落させることで形成することができる。かかる粗化面では、金属結晶粒子が大きく脱落した部分で、窪み部(凹部)が形成される。かかる窪み部は、金属結晶粒子に由来する略多面体形の物質が抉り取られたような形状で形成することができる。本発明では、略多面体形とは、三面体、四面体、五面体、六面体等の多面体やこれらの多面体を二種以上組み合わせた多面体の形状をいう。かかる窪み部は、現像処理後の樹脂残りを防止することができる。
【0031】
また、かかる粗化面の錨状部は、この錨状部の周囲の金属結晶粒子を脱落させることで形成することができる。このようにして形成した錨状部は、角張った凸部から構成され、窪み部に囲まれており、互いに重なり合うことがない。かかる複雑な凹凸形状を有する粗化面は、ソルダーレジスト樹脂やバンプ下金属との密着性を維持しつつ、現像処理後の樹脂残りを防止することができる。
【0032】
更に、かかる粗化面には、隣り合う金属結晶粒子の脱落によって稜線を形成することができる。この稜線は、錨状部とその隣りの錨状部とを、錨状部の高さよりも低い位置で連結する。この稜線は、3つ以上の隣り合う金属結晶粒子を脱落させることで、枝分かれした状態で形成される。また、この稜線は、隣り合う金属結晶粒子が略多面体形状となって脱落することで、尖った状態で形成することができる。かかる稜線は、錨状部を各々分散させ、錨状部が窪み部と稜線とによって囲まれるようにして形成することができる。かかる粗化面は、より一層複雑な凹凸形状を有し、樹脂やバンプ下金属との接触面を拡げ、より密着性を向上させることができると同時に、樹脂残りを防止することができる。
【0033】
かかる粗化面は、0.5〜10μmの最大粗度(Rmax)を有するのが好ましい。0.5μm未満では、ソルダーレジスト層との密着性やバンプ下金属との密着性が著しく低下し、10μmを超えると、現像処理後に樹脂残りが発生し、断線等の問題が発生し易くなる。
【0034】
また、かかる粗化面は、25μm当り、平均2〜100個の錨状部と、平均2〜100個の窪み部とを有しているのが好ましい。25μm当り、平均2〜100個の錨状部は、粗化面とソルダーレジスト層との密着性や、粗化面とバンプ下金属との密着性を維持しつつ、現像処理後の樹脂残りを防止でき、25μm当り、平均2〜100個の窪み部は、錨状部の密集を防止して、現像処理後の樹脂残りの発生を抑止し、かつ、粗化面とソルダーレジスト層との密着性や、粗化面とバンプ下金属との密着性を維持できる。
【0035】
本発明にかかる稜線は、25μm当り、平均3〜3000本形成されるのが望ましい。この範囲の数の稜線は、粗化面の形状を複雑にし、ソルダーレジスト層やバンプ下金属との接触面を拡げ、これらソルダーレジスト層等との密着性を向上させることができると同時に、樹脂残りを除去し易いからである。
【0036】
なお、錨状部、窪み部及び稜線の数は、図2及び3に示すような5000倍の電子顕微鏡写真を用い、粗化面をその真上及び斜め上方45°から撮影し、25μmの領域を任意に選んで測定し、その平均値を採用した。
【0037】
本発明では、かかる粗化面上に、金属層を被覆することができる。図9〜12は、本発明にかかる他の例の粗化面の断面図である。図9〜12では、図4〜8に示すような粗化面が、それぞれ、金属層51で被覆されている。
【0038】
図9〜12に示すような金属層51は、酸化や腐食し難い金属や、この金属自身が酸化や腐食してもソルダーレジスト樹脂との密着性やバンプ下金属との密着性を損なわない金属からなる。
【0039】
また、かかる金属層は、粗化面上における酸化膜や腐食膜の形成を防止し、粗化面を、その形状を保持した状態で被覆しており、ソルダーレジスト樹脂やバンプ下金属と粗化面との密着性を損なわない。
【0040】
かかる金属層は、酸化膜や腐食の剥がれに起因する、粗化面とソルダーレジスト層との間の密着強度の低下や、粗化面とバンプ下金属との間の密着強度の低下を防止することができる。
【0041】
また、かかる金属層は、粗化面を構成する金属の硬度も高くすることができるため、粗化面における金属破壊が起きず、粗化面とソルダーレジスト層、粗化面とバンプ下金属との間の剥離がより一層防止される。
【0042】
本発明にかかるプリント配線板は、粗化面がかかる金属層を有し、粗化面上に酸化層や腐食層が形成され難く、酸化層や腐食層が形成されても、ソルダーレジスト樹脂やバンプ下金属との密着性が保たれ、加熱によっても、粗化面とソルダーレジスト層との間や粗化面とバンプ下金属との間が剥離することはない。
【0043】
かかる金属層は、チタン、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス及び貴金属からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる。
【0044】
かかる金属は、比較的酸化や腐食し難く、あるいはかかる金属自身が酸化や腐食しても、ソルダーレジスト樹脂やバンプ下金属との間の密着性を低下させない。
【0045】
また、かかる金属は、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以下である金属又は貴金属であり、これらの金属又は貴金属の層で、粗化面を被覆すれば、ソルダーレジスト層を粗化する際の局部電極反応による導体回路の溶解を防止することができる。
【0046】
比較的酸化又は腐食し難い金属としては、ニッケル、スズ、コバルト、貴金属等の非酸化性金属等が挙げられる。貴金属としては、金、銀、白金、パラジウムから選ばれる少なくとも1種が望ましい。
【0047】
金属自身が酸化又は腐食しても、この金属層とソルダーレジスト樹脂との密着性を低下させないような金属としては、チタン、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、鉛、ビスマス等の金属を挙げることができる。
【0048】
このように、本発明では、粗化面上に、チタン、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス及び貴金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の金属層を被覆することによって、現像処理後の樹脂残りを防止するのに最適な形状を有しつつ、はんだパッド用導体回路とソルダーレジスト層との密着性や、はんだパッド用導体回路とバンプ下金属との密着性、はんだバンプの強度を向上させることができる。
【0049】
粗化面上に金属層を被覆するには、めっき(電解めっき、無電解めっき、置換めっきのいずれかの中選ばれる方法)、蒸着、電着、スパッタ等の方法を用いることができる。
【0050】
かかる金属層の厚みは、0.01〜1μmがよい。特に、0.03〜0.5μmの厚みがよい。かかる厚みの金属層は、粗化面の凹凸の形状を維持しながら、銅導体の酸化や腐食を防止できるからである。0.01μm未満の厚みでは、かかる粗化面を完全に被覆することができないし、1μmを超えると、粗化面間に被覆する金属が入り込み、粗化面の凹凸を相殺することがあり、粗化面とソルダーレジスト層との密着性や、粗化面とバンプ下金属との密着性を低下させることがある。
【0051】
本発明にかかる粗化面の形成方法について説明する。
かかる粗化面は、はんだパッドとなる導体回路を、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液で処理することによって、形成することができる。かかるエッチング液は、スプレイやバブリング等の酸素共存条件下で、銅導体回路を溶解させることができる。エッチングは、次の反応式によって進行すると推定される。
【0052】
【化1】

〔式中、Aは錯化剤(キレート剤として作用)、nは配位数を示す。〕
【0053】
上記反応式に示すように、発生した第一銅錯体は、酸の作用で溶解し、酸素と結合して第二銅錯体となって、再び銅の酸化に寄与する。
【0054】
本発明で用いる第二銅錯体は、アゾール類の第二銅錯体がよい。この種の第二銅錯体は、金属銅等を酸化する酸化剤として作用する。アゾール類としては、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾールがよい。中でも、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール等がよい。アゾール類の第二銅錯体の添加量は、1〜15重量%がよい。溶解性及び安定性に優れるからである。
【0055】
有機酸は、酸化銅を溶解させるために、第二銅錯体と配合する。アゾール類の第二銅錯体を用いる場合には、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種がよい。有機酸の含有量は、0.1〜30重量%がよい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ溶解安定性を確保するためである。
【0056】
本発明にかかるエッチング液には、銅の溶解やアゾール類の酸化作用を補助するために、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオンを加えてもよい。かかるハロゲンイオンは、塩酸、塩化ナトリウム等として供給することができる。ハロゲンイオンの添加量は、0.01〜20重量%がよい。形成された粗化面とソルダーレジスト層との密着性に優れるからである。
【0057】
本発明にかかるエッチング液は、アゾール類の第二銅錯体と有機酸(必要に応じてハロゲンイオン)とを、水に溶解して調製することができる。また、市販のエッチング液、例えば、メック社製、商品名「メック エッチボンド」を用いることができる。
【0058】
かかるエッチング液による平均エッチング量は、0.1〜10μmがよい。0.1μm未満では、粗化面とソルダーレジスト層との密着性が低下し、10μmを超えると、樹脂残りが発生し易く、また、50μm以下の微細配線では、断線等が起こり易くなる。
【0059】
本発明では、このようにして形成される粗化面上に、金属層を被覆することができる。かかる金属層は、チタン、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス及び貴金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる。かかる金属層の被覆は、めっき、蒸着、電着、スパッタのいずれかの方法で行うことができる。形成される膜の均一性という点では、めっきで行うのがよい。
【0060】
また、本発明では、かかる金属層が均一に形成されるようにするために、粗化面を形成した後、その粗化面を熱処理してから、金属層を形成させることができる。熱処理により、エッチング液及びその残留成分が蒸発し、粗化面の表面状態が均一になるために、金属層が形成し易くなる。
【0061】
熱処理の温度は、粗化面の形状や厚み、はんだパッド用導体回路の金属成分や厚み等により、種々の範囲に設定することができる。特に、50〜250℃の範囲内がよい。50℃未満の場合は、熱処理の効果が見られないし、250℃を超えると、粗化面が酸化され、形成された金属層が不均一になる。
【0062】
本発明では、このようにして形成される所定形状の粗化面上に、ソルダーレジスト層を形成する。かかるソルダーレジスト層の厚さは、5〜40μmがよい。薄過ぎると、ソルダーレジスト層がソルダーダムとして機能せず、また、厚過ぎると、はんだバンプ用の開口部を形成し難くなる上、はんだ体と接触して、はんだ体にクラックが生じる原因となるからである。
【0063】
ソルダーレジスト層は、種々の樹脂から形成することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やそのアクリレートか、ノボラック型エポキシ樹脂やそのアクリレートを、アミン系硬化剤やイミダゾール硬化剤等で硬化させて形成することができる。
【0064】
特に、ソルダーレジスト層に開口を設けて、はんだバンプを形成する場合、ノボラック型エポキシ樹脂かそのアクリレートを、イミダゾール硬化剤で硬化させるのが好ましい。かかる樹脂からなるソルダーレジスト層は、鉛のマイグレーション(鉛イオンがソルダーレジスト層内を拡散する現象)が少ないという利点を持つ。
【0065】
また、ノボラック型エポキシ樹脂のアクリレートをイミダゾール硬化剤で硬化させた樹脂の場合、耐熱性、耐アルカリ性に優れ、はんだが溶融する温度(200℃前後)でも劣化せず、ニッケルめっきや金めっきのような強塩基性のめっき液で分解しない。ノボラック型エポキシ樹脂のアクリレートとしては、フェノールノボラックやクレゾールノボラックのグリシジルエーテルを、アクリル酸やメタクリル酸等と反応させたエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0066】
しかし、ノボラック型エポキシ樹脂のアクリレートから形成されるソルダーレジスト層は、剛直骨格を持つ樹脂で構成されるので、導体回路との間で剥離が生じ易い。本発明にかかる粗化面は、かかる剥離を防止でき、有利である。
【0067】
イミダゾール硬化剤は、25℃で液状であるのが望ましい。液状であれば、均一混合し易いからである。かかる硬化剤としては、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(品名:1B2MZ)、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(品名:2E4MZ−CN)、4−メチル−2−エチルイミダゾール(品名:2E4MZ)を挙げることができる。
【0068】
かかる樹脂及び硬化剤は、グリコールエーテル系の溶剤に溶解し、ソルダーレジスト用組成物とするのが望ましい。かかる組成物からソルダーレジスト層を形成すると、遊離酸素が発生せず、銅パッド表面を酸化させない。また、人体に対する有害性も少ない。
【0069】
グリコールエーテル系の溶剤としては、次の一般式:
CHO−(CHCHO)−CH(n=1〜5)
で表される溶媒を用いることができる。
【0070】
特に望ましくは、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(DMTG)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。これらの溶剤は、30〜50℃程度の加温により、ベンゾフェノンやミヒラーケトン等の反応開始剤を完全に溶解させることができる。かかる溶剤の量は、ソルダーレジスト用組成物の10〜40重量%がよい。
【0071】
イミダゾール硬化剤の添加量は、ソルダーレジスト用組成物の総固形分に対して、1〜10重量%とすることが望ましい。添加量がこの範囲内にあれば、均一混合し易いからである。
【0072】
上述したようなソルダーレジスト用組成物には、この他に、各種消泡剤やレベリング剤、開始剤、光増感剤、耐熱性や耐塩基性の改善と可撓性付与のための熱硬化性樹脂、解像度改善のための感光性モノマー等を添加することができる。
【0073】
レベリング剤としては、アクリル酸エステルの重合体からなるものがよい。また、開始剤としては、チバガイギー製のイルガキュアI907、光増感剤としては日本化薬製のDETX−Sがよい。
【0074】
熱硬化性樹脂には、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることができる。このビスフェノール型エポキシ樹脂には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂があり、耐塩基性を重視する場合には前者が、低粘度化が要求される場合(塗布性を重視する場合)には後者がよい。
【0075】
感光性モノマーには、多価アクリル系モノマーを用いることができる。多価アクリル系モノマーは、解像度を向上させることができるからである。例えば、日本化薬製のDPE−6Aや共栄社化学製のR−604等の多価アクリル系モノマーを用いることができる。
【0076】
かかるソルダーレジスト用組成物には、色素や顔料等を添加してもよい。配線パターンを隠蔽できるからである。かかる色素としては、フタロシアニングリーンを用いることが望ましい。
【0077】
また、かかるソルダーレジスト用組成物は、25℃で0.5〜10Pa・s、より望ましくは、1〜10Pa・sの粘度を有するのがよい。ロールコータで塗布し易いからである。
【0078】
かかる組成物よりなるソルダーレジスト層に開口部を、露光、現像処理により形成することができる。
【0079】
次に、本発明にかかるプリント配線板を製造する方法について説明する。以下の方法は、主として、セミアディティブ法によるものであるが、フルアディティブ法を採用してもよい。
【0080】
本発明では、はんだパッドとなる導体回路を基板の表面に形成した配線基板を作製する。基板としては、ガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板等の樹脂絶縁基板、セラミック基板、金属基板等を用いることができる。
【0081】
かかる配線基板は、内部に複数層の導体回路が形成された多層プリント配線板であってもよい。かかる複数層の導体回路を形成する方法としては、例えば、基板上に設けられた下層導体回路上に、層間絶縁樹脂層として、無電解めっき用接着剤からなる接着剤層を形成し、この接着剤層表面を粗化して粗化面とし、この粗化面全体に薄付けの無電解めっきを施し、めっきレジストを形成し、めっきレジスト非形成部分に厚付けの電解めっきを施した後、めっきレジストを除去し、エッチング処理して、電解めっき膜と無電解めっき膜とからなる2層の導体回路を形成する方法がある。導体回路は、いずれも銅パターンがよい。
【0082】
無電解めっき用接着剤は、酸や酸化剤に可溶性の硬化処理された耐熱性樹脂粒子が、酸や酸化剤に難溶性の未硬化の耐熱性樹脂中に分散されてなるものが最適である。かかる耐熱性樹脂粒子は、酸や酸化剤で処理することによって溶解除去され、表面に蛸つぼ状のアンカーからなる粗化面を形成するからである。なお、かかる無電解めっき用接着剤は、組成の異なる2層により構成してもよい。
【0083】
酸や酸化剤に可溶性の硬化処理された耐熱性樹脂粒子としては、(1)平均粒径が10μm以下の耐熱性樹脂粉末、(2)平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末を凝集させた凝集粒子、(3)平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が2μm未満の耐熱性樹脂粉末との混合物、(4)平均粒径が2〜10μmの耐熱性樹脂粉末の表面に、平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末及び無機粉末の少なくとも1種を付着させた疑以粒子、(5)平均粒径が0.1〜0.8μmの耐熱性樹脂粉末と平均粒径が0.8μmを超え2μm未満の耐熱性樹脂粉末との混合物、(6)平均粒径が0.1〜1.0μmの耐熱性樹脂粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子を用いることが望ましい。これらは、より複雑なアンカーを形成するからである。これらの粒子により得られる粗化面は、0.1〜20μmの最大粗度(Rmax)を有することができる。
【0084】
かかる耐熱性樹脂粒子の混合比は、耐熱性樹脂からなるマトリックスの固形分の5〜50重量%、望ましくは10〜40重量%がよい。また、かかる耐熱性樹脂粒子は、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等)、エポキシ樹脂等からなるのがよい。
【0085】
酸や酸化剤に難溶性の未硬化の耐熱性樹脂としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体、又は感光性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体からなるのが望ましい。前者については耐熱性が高く、後者についてはバイアホール用の開口をフォトリソグラフィーにより形成できるからである。
【0086】
かかる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。また、感光化する場合は、熱硬化基をメタクリル酸やアクリル酸等とアクリル化反応させる。特に、エポキシ樹脂のアクリレートが最適である。エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性させた脂環式エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0087】
熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフェニレンスルフォン(PPS)、ポリフェニレンサルファイド(PPES)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PI)等を用いることができる。
【0088】
熱硬化性樹脂(感光性樹脂)と熱可塑性樹脂の混合割合は、熱硬化性樹脂(感光性樹脂)/熱可塑性樹脂=95/5〜50/50がよい。耐熱性を損なうことなく、高い物性値が得られるからである。
【0089】
次に、かかる無電解めっき用接着剤を硬化させて、層間絶縁樹脂層を形成する一方、この層間樹脂樹脂層には、バイアホール形成用の開口を設けることができる。
【0090】
バイアホール形成用の開口は、無電解めっき用接着剤の樹脂マトリックスが熱硬化樹脂である場合は、レーザー光や酸素プラズマ等を用いて穿孔し、感光性樹脂である場合は、露光現像処理にて穿孔する。なお、露光現像処理は、バイアホール形成用に円パターンが描画されたフォトマスク(ガラス基板がよい)を、円パターン側が感光性の層間樹脂絶縁層の上に密着するように載置した後、露光、現像処理する。
【0091】
次に、バイアホール形成用開口を設けた層間樹脂絶縁層(無電解めっき用接着剤層)の表面を粗化する。特に、無電解めっき用接着剤層の表面に存在する耐熱性樹脂粒子を、酸や酸化剤で溶解除去することにより、接着剤層表面を粗化処理する。このとき、層間樹脂絶縁層に粗化面が形成される。
【0092】
酸としては、リン酸、塩酸、硫酸等の無機酸、又は蟻酸や酢酸等の有機酸を用いることができる。特に、有機酸を用いるのが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させ難いからである。酸化剤としては、クロム酸、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)を用いるのが望ましい。
【0093】
かかる粗化面は、0.1〜20μmの最大粗度(Rmax)を有するのが好ましい。厚過ぎると層自体が損傷、剥離し易く、薄過ぎると密着性が低下するからである。特に、セミアディティブ法では、0.1〜5μmがよい。密着性が確保されつつ、無電解めっき膜が除去されるからである。
【0094】
次に、粗化した層間樹脂絶縁層上に触媒核を付与し、全面に薄付けの無電解めっき膜を形成する。この無電解めっき膜は、無電解銅めっきがよく、厚みは、1〜5μm、より望ましくは、2〜3μmとする。なお、無電解銅めっき液としては、常法で採用される液組成のものを使用することができる。例えば、硫酸銅:10g/L、EDTA:50g/L、水酸化ナトリウム:8g/L、37%ホルムアルデヒド:10mL、からなる液組成のものがよい。
【0095】
次に、このように形成した無電解めっき膜上に、感光性樹脂フィルム(ドライフィルム)をラミネートし、この感光性樹脂フィルム上に、めっきレジストパターンが描画されたフォトマスク(ガラス基板がよい)を密着させて載置し、露光し、現像処理することにより、めっきレジストパターンを配設した非導体部分を形成する。
【0096】
次に、無電解銅めっき膜上の非導体部分以外に電解めっき膜を形成し、導体回路とバイアホールとなる導体部を設ける。電解めっきとしては、電解銅めっきを用いることが望ましく、その厚みは、5〜20μmがよい。
【0097】
次に、非導体回路部分のめっきレジストを除去した後、更に、硫酸と過酸化水素の混合液や過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液にて無電解めっき膜を除去し、無電解めっき膜と電解めっき膜の2層からなる独立した導体回路とバイアホールを得る。なお、非導体部分に露出した粗化面上の触媒核は、クロム酸、硫酸と過酸化水素との混合液等により溶解除去する。
【0098】
次いで、表層のはんだパッドとなる導体回路に、本発明にかかる粗化面を形成する。かかる粗化面は、前述したアゾール類の第二銅錯体と有機酸の水溶液からなるエッチング液を導体回路表面にスプレイするか、かかるエッチング液に導体回路を浸漬し、バブリングする方法により形成することができる。なお、導体回路は、無電解めっき膜又は電解めっき膜が望ましい。厚延銅箔をエッチングした導体回路では、粗化面が形成され難いからである。
【0099】
このようにして形成された粗化面は、更に、その後、エッチング処理、研磨処理、酸化処理、酸化還元処理等によって処理することができ、めっき被膜で被覆することもできる。
【0100】
また、かかる粗化面は、チタン、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛、ビスマス及び貴金属からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属からなる金属層によって被覆することができる。被覆方法は、めっき(電解めっき、無電解めっき、置換めっきのいずれかの中選ばれる方法)、蒸着、電着、スパッタ等で行うことができる。
【0101】
かかる処理を施された粗化面を有する導体回路上には、前述したようなソルダーレジスト層を形成することができる。
【実施例】
【0102】
図面を参照して、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明する。
実施例1
無電解めっき用接着剤調製用の原料組成物(上層用接着剤)
〔樹脂組成物A〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315)3.15重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5重量部、NMP3.6重量部を攪拌混合して得た。
【0103】
〔樹脂組成物B〕
ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径1.0μmのものの7.2重量部と、平均粒径0.5μmのものの3.09重量部とを混合した後、更にNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合して得た。
【0104】
〔硬化剤組成物C〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ−CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907)2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX−S)0.2重量部、NMP1.5重量部を攪拌混合して得た。
【0105】
層間樹脂絶縁剤調製用の原料組成物(下層用接着剤)
〔樹脂組成物D〕
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化物を80wt%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液を35重量部、感光性モノマー(東亜合成製、アロニックスM315)4重量部、消泡剤(サンノプコ製、S−65)0.5重量部、NMP3.6重量部を攪拌混合して得た。
【0106】
〔樹脂組成物E〕
ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部とエポキシ樹脂粒子(三洋化成製、ポリマーポール)の平均粒径0.5μmのものの14.49重量部とを混合した後、更にNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合して得た。
【0107】
〔硬化剤組成物F〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ−CN)2重量部、光開始剤(チバガイギー製、イルガキュア I−907)2重量部、光増感剤(日本化薬製、DETX−S)0.2重量部、NMP1.5重量部を攪拌混合して得た。
【0108】
樹脂充填剤調製用の原料組成物
〔樹脂組成物G〕
ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル製、分子量310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径1.6μmのSiO球状粒子(アドマテック製、CRS1101−CE、ここで、最大粒子の大きさは後述する内層銅パターンの厚み(15μm)以下とする)170重量部、レベリング剤(サンノプコ製、ペレノールS4)1.5重量部を攪拌混合することにより、その混合物の粘度を23±1℃で45,000〜49,000cpsに調整して得た。
【0109】
〔硬化剤組成物H〕
イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ−CN)6.5重量部。
【0110】
プリント配線板の製造
図13〜30は、本発明にかかるプリント配線板の一例を製造する際の一連の製造工程の各工程における縦断面図をそれぞれ示す。
(1)図13に示すような、厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂又はBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板4の両面に18μmの銅箔5がラミネートされている銅張積層板6を出発材料とした。
【0111】
まず、この銅張積層板6には、図14に示すように、ドリル孔7を削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板6の両面に内層銅パターン(下層導体回路)8とスルーホール9を形成した。
【0112】
(2)内層銅パターン8とスルーホール9を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、酸化浴(黒化浴)として、NaOH(10g/L)、NaClO(40g/L)、NaPO(6g/L)、還元浴として、NaOH(10g/L)、NaBH(6g/L)を用いた酸化−還元処理により、内層銅パターン8とスルーホール9の表面に粗化面10,11を設け、図14に示すような配線基板12を製造した。
【0113】
(3)樹脂組成物Gと硬化剤組成物Hとを混合混練して樹脂充填剤を得、この樹脂充填剤を、調製後24時間以内に、基板12の両面にロールコータを用いて塗布することにより、導体回路8間あるいはスルーホール9内に充填し、70℃、20分間で乾燥させて、樹脂層13,14を形成した。
【0114】
(4)前記(3)の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン8の表面やスルーホール9のランド11の表面に樹脂充填剤が残らないように研磨し、次いで、前記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
【0115】
(5)次いで、100℃で1時間、120℃で3時間、150℃で1時間、180℃で7時間の加熱処理を行って樹脂充填剤を硬化し、図15に示すような配線基板15を作製した。この配線基板15では、スルーホール9等に充填された樹脂充填剤の表層部及び内層導体回路8の上面の粗化面10,11が除去されており、基板の両面が平滑化され、樹脂層13と内層導体回路8の側面とスルーホール9のランド表面とが粗化面10a,11aを介して強固に密着し、また、スルーホール9の内壁面と樹脂層14とが粗化面11aを介して強固に密着している。即ち、この工程により、樹脂層13,14の表面と内層銅パターン8の表面が同一平面となる。
【0116】
(6)導体回路を形成したプリント配線板15に、アルカリ脱脂してソフトエッチングして、次いで、塩化パラジウウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、Pd触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅3.2×10−2モル/L、硫酸ニッケル3.9×10−3モル/L、クエン酸ナトリウム5.4×10−2モル/L、次亜リン酸ナトリウム3.3×10−1モル/L、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィール465)1.1×10−4モル/L、pH=9からなる無電解めっき液に浸積し、浸漬1分後に、4秒当たり1回に割合で振動、揺動させて、図16に示すように、銅導体回路8とスルーホール9のランドの表面にCu−Ni−Pからなる針状合金の粗化層16,17を設けた。
【0117】
更に、ホウフッ化スズ0.1モル/L、チオ尿素1.0モル/L、温度35℃、pH=1.2の条件でCu−Sn置換反応させ、粗化層16,17の表面に厚さ0.3μmSn層を設けた。Sn層は特に図示していない。
【0118】
(7)樹脂組成物D及びEと硬化剤組成物Fとを攪拌混合し、粘度1.5Pa・sに調整して層間樹脂絶縁剤(下層用)を得た。次いで、樹脂組成物A及びBと硬化剤組成物Cとを攪拌混合し、粘度7Pa・sに調整して無電解めっき用接着剤溶液(上層用)を得た。
【0119】
(8)前記(6)の基板18の両面に、前記(7)で得られた粘度1.5Pa・sの層間樹脂絶縁剤(下層用)を、調製後24時間以内にロールコータで塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、次に、前記(7)で得られた粘度7Pa・sの感光性の接着剤溶液(上層用)を、調製後24時間以内に塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、図17に示すような厚さ35μmの接着剤層19を形成した。
【0120】
(9)前記(8)で接着剤層19を形成した基板の両面に、図18に示すように、85μmφの黒円20が印刷されたフォトマスクフィルム21を密着させ、超高圧水銀灯により500mJ/cmで露光した。この基板をDMTG溶液でスプレー現像し、更に、超高圧水銀灯により3000mJ/cmで露光し、100℃で1時間、120℃で1時間、その後150℃で3時間の加熱処理(ポストベーク)することにより、図19に示すような、フォトマスクフィルム21に相当する寸法精度に優れた85μmφの開口(バイアホール形成用開口)22を有する厚さ35μmの層間樹脂絶縁層(2層構造)19とした。なお、バイアホールとなる開口22には、スズめっき層を部分的に露出させた。
【0121】
(10)開口22が形成された基板を、クロム酸に19分間浸漬し、層間樹脂絶縁層19の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、この層間樹脂絶縁層19の表面を粗化し、図20に示すような粗化面23,24を形成し、その後、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした。
【0122】
更に、粗面化処理(粗化深さ6μm)した基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂絶縁層19の表面23とバイアホール用開口の内壁面24とに触媒核を付けた。
【0123】
(11)このようにして形成した配線基板を、以下に示す組成の無電解銅めっき水溶液中に浸漬して、図21に示すように、粗面全体に厚さ0.6μmの無電解銅めっき膜25を形成した。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 50 g/L
硫酸銅 10 g/L
HCHO 8 mL/L
NaOH 9 g/L
α、α’−ビピリジル 80 mg/L
PEG 0.1 g/L
〔無電解めっき条件〕
70℃の液温度で30分
【0124】
(12)前記(11)で形成した無電解銅めっき膜25上に、図22に示すように、黒円26が印刷された市販の感光性ドライフィルム27を張り付け、マスクを載置して、100mJ/cmで露光、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、図23に示すような、厚さ15μmのめっきレジスト28を設けた。
【0125】
(13)次いで、レジスト非形成部分に以下の条件で電解銅めっきを施し、図24に示すような厚さ15μmの電解銅めっき膜29を形成した。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 180 g/L
硫酸銅 80 g/L
添加剤(アトテックジャパン製、カパラシドGL)
1 mL/L
〔電解めっき条件〕
電流密度 1A/dm
時間 30分
温度 室温
【0126】
(14)めっきレジスト28を5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト28の下の無電解めっき膜25を、硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、図25に示すような、無電解銅めっき膜25と電解銅めっき膜29とからなる厚さ18μmの導体回路30(バイアホール31を含む)を形成した。
【0127】
(15)(6)と同様の処理を行い、Cu−Ni−P針状合金からなる粗化面を形成し、更に、その表面にSn置換を行った。
【0128】
(16)前記(7)〜(15)の工程を繰り返すことにより、更に上層の導体回路を形成し、多層配線基板を得た。
【0129】
(17)表層の導体回路を、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部からなるエッチング液、メック社商品名「メックエッチボンド」にて、スプレイを施して、搬送ロールにて送ることでエッチング処理して、図26に示すような厚さ3μmの粗化面32を形成した。この粗化面には、スズ置換は行わなかった。
【0130】
この粗化面を電子走査顕微鏡(×5000)にて真上から測定すると、25μmの範囲に、図4〜8に示すような錨状部1が平均11個、窪み部が平均11個、稜線が平均22本確認された。
【0131】
(18)一方、DMDGに溶解させた60重量%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を46.67g、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)15.0g、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ−CN)1.6g、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604)3g、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A)1.5g、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S−65)0.71gを混合し、更に、この混合物に対して光開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学製)を2g、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学製)を0.2g加えて、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト用組成物を得た。なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0132】
(19)前記(16)で得られた多層配線基板の両面に、図27に示すようにして、このソルダーレジスト用組成物33を20μmの厚さで塗布した。次いで、70℃で20分間、70℃で30分間の乾燥処理を行った後、図28に示すように、円パターン(マスクパターン)34が描画された厚さ5mmのフォトマスクフィルム35を密着させて載置し、1000mJ/cmの紫外線で露光し、DMTG現像処理した。そして、更に、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件で加熱処理し、図29に示すように、はんだパッド部分36(バイアホールとそのランド部分37を含む)を開口した(開口径200μm)ソルダーレジスト層(厚み20μm)38を形成し、プリント配線板39を製造した。
【0133】
(20)次に、ソルダーレジスト層38を形成した基板39を、塩化ニッケル30g/L、次亜リン酸ナトリウム10g/L、クエン酸ナトリウム10g/LからなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、図30に示すように、開口部36,37に厚さ5μmのニッケルめっき層40を形成した。更に、その基板を、シアン化金カリウム2g/L、塩化アンモニウム75g/L、クエン酸ナトリウム50g/L、次亜リン酸ナトリウム10g/Lからなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層40上に厚さ0.03μmの金めっき層41を形成した。
【0134】
(21)そして、ソルダーレジスト層38の開口部に、はんだペーストを印刷して200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)42を形成し、はんだバンプ42を有するプリント配線板43を製造した。なお、このプリント配線板では、通常配線(75μm線幅)と微細配線(50μm線幅)の部分を設け、微細配線の部分では、更に、配線密度が疎(400μm間隔)の部分と配線密度が密(50μm間隔)の部分を設けた。
【0135】
実施例2
図31は、この例のプリント配線板の断面図である。この例では、基本的には実施例1と同様であるが、工程(17)において、表層の導体回路(はんだパッド用導体回路)の粗化面を、図9〜図12に示すような金属層51で被覆した。金属としてはニッケルを用い、被覆には、無電解めっきを用いた。得られたニッケル層の厚さは、0.04μmであった。
【0136】
また、この例では、工程(18)〜(21)によって、ソルダーレジスト層38の開口部に、図31に示すような、ニッケル層51上のニッケルめっき層52と、その上の金めっき層53とを介して、はんだバンプ(はんだ体)54を形成した。
【0137】
実施例3
基本的に実施例2と同様であるが、はんだパッド用導体回路の粗化面を被覆する金属層として、無電解めっきによるニッケル層の代わりに、置換めっきによるスズ層を用いた。このスズ層の厚さは、0.03μmであった。
【0138】
実施例4
基本的に実施例2と同様であるが、はんだパッド用導体回路の粗化面を被覆する金属層として、無電解めっきによるニッケル層の代わりに、無電解めっきによる亜鉛層を用いた。この亜鉛層の厚さは、0.05μmであった。
【0139】
実施例5
基本的に実施例2と同様であるが、はんだパッド用導体回路の粗化面を被覆する金属層として、無電解めっきによるニッケル層の代わりに、蒸着による金属層を用いた。この金属層は、鉄及びコバルトからなり、0.05μmの厚さを有していた。
【0140】
比較例1及び2
基本的に実施例1と同様であるが、比較例1では、表層の導体回路に、酸化浴(黒化浴)として、NaOH(10g/L)、NaClO(40g/L)、NaPO(6g/L)を用い、還元浴として、NaOH(10g/L)、NaBH(6g/L)を用いた黒化−還元処理にて粗化面を形成させた。また、比較例2は、表層の導体回路に、硫酸銅3.2×10−2モル/L、硫酸ニッケル3.9×10−3モル/L、錯化剤5.4×10−2モル/L、次亜リン酸ナトリウム3.3×10−1モル/L、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィール465)1.1×10−4モル/L、pH=9からなる無電解めっき液より銅−ニッケル−リンからなる針状合金によって粗化層を形成させた。比較例1及び2のプリント配線板においても、実施例1と同様の通常配線と微細配線の部分、配線密度が疎の部分と配線密度が密の部分を設けた。
【0141】
比較例3
基本的に実施例2と同様であるが、表層の導体回路に、酸化浴(黒化浴)として、NaOH(10g/L)、NaClO(40g/L)、NaPO(6g/L)を用い、還元浴として、NaOH(10g/L)、NaBH(6g/L)を用いた黒化−還元処理にて粗化面を形成させた。この例のプリント配線板においても、実施例1と同様の通常配線と微細配線の部分、配線密度が疎の部分と配線密度が密の部分とを設けた。
【0142】
比較例4
基本的に実施例2と同様であるが、表層の導体回路に、硫酸銅3.2×10−2モル/L、硫酸ニッケル3.9×10−3モル/L、錯化剤5.4×10−2モル/L、次亜リン酸ナトリウム3.3×10−1モル/L、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィール465)1.1×10−4モル/L、pH=9からなる無電解めっき液より銅−ニッケル−リンからなる針状合金によって粗化層を形成させた。この例のプリント配線板においても、実施例1と同様の通常配線と微細配線の部分、配線密度が疎の部分と配線密度が密の部分とを設けた。
【0143】
ソルダーレジスト層の剥がれ試験
実施例1、比較例1及び2で製造したプリント基板について、ソルダーレジスト層形成後と信頼性試験(ヒートサイクル条件)後に、ソルダーレジスト層の剥がれを試験した。なお、導体回路間の接続不良の有無を、配線密度が疎と密の部分で比較し、開口部底部の有機残さの残りを確認した。結果を表1に示す。
【0144】
【表1】

【0145】
表1に示すように、実施例1のプリント配線板では、レジスト層の剥がれや、導体回路の接続不良の発生がなく、有機残さの残りも発見されなかった。比較例1のプリント配線板では、ヒートサイクル後に配線密度が疎の部分で剥がれが発生し、比較例2のプリント配線板では、導体回路の接続不良が発生し、開口部底部に有機残さ残りが確認された。
【0146】
ソルダーレジスト層の剥がれ試験及びはんだバンプの剥がれ試験
実施例2〜5、比較例3及び4で製造したプリント基板について、はんだバンプ形成後と信頼性試験(ヒートサイクル条件)後に、ソルダーレジスト層及びはんだバンプの剥がれ、クラックなどを検査し、はんだバンプのシェアー強度を測定し、また、チェッカーにて導通試験を行い、断線、短絡の有無を判定した。結果を表2に示す。
【0147】
【表2】

【0148】
表2に示すように、実施例2〜5のプリント配線板は、比較例3及び5の配線板と比べ、いずれも、ソルダーレジスト層及びはんだバンプの剥がれ、クラックがなく、導通試験及びはんだバンプのシェアー強度に優れていた。また、信頼性試験後も、ソルダーレジスト層及びはんだバンプの強度が十分に保て、断線、短絡等が無かった。
【産業上の利用可能性】
【0149】
上述したように、本発明にかかるプリント配線板では、所定形状の粗化面がはんだパッド用導体回路の表面に形成されており、この粗化面を介してソルダーレジスト層が強固に密着しており、はんだバンプ形成部でソルダーレジスト層が除去されて、導体回路とソルダーレジスト層との接触面積が少なくなった場合や、導体回路が微細配線からなり、配線密度が疎の状態でも、導体回路とソルダーレジスト層との十分な密着性を確保することができる。
【0150】
また、本発明にかかるプリント配線板では、はんだバンプ形成用の開口部に露出する粗化面上に、ソルダーレジスト樹脂の残さが残らず、バンプ下金属との密着性に優れ、はんだバンプ形成部に導通不良を引き起こさない。
【0151】
さらに、本発明にかかるプリント配線板は、はんだパッド用導体回路の粗化面が金属層で被覆されることによって、ソルダーレジスト層との密着性やバンプ下金属との密着性に優れた形状及び強度が保持されるので、はんだバンプの強度が著しく高まり、はんだバンプの脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 錨状部
2 窪み部
3 稜線
4 基板
5 銅箔
6 銅張積層板
7 ドリル孔
8 内層銅パターン(下層導体回路)
9 スルーホール
10,10a,11,11a,23,24,32 粗化面
12,15,18 配線基板
13,14 樹脂層
16,17 粗化層
19 接着剤層
20,26 黒円
21,35 フォトマスクフィルム
22 開口(バイアホール形成用開口)
25 無電解銅めっき膜
27 感光性ドライフィルム
28 めっきレジスト
29 電解銅めっき膜
30 導体回路
31 バイアホール
33 ソルダーレジスト用組成物
34 円パターン(マスクパターン)
36 はんだパッド部分
37 バイアホールとそのランド部分
38 ソルダーレジスト層
39,43 プリント配線板
40,52 ニッケルめっき層
41,53 金めっき層
42,54 はんだバンプ(はんだ体)
51 金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだパッド用導体回路と、ソルダーレジスト層と、はんだバンプとを備える多層プリント配線板の製造方法において、
(a)無電解めっき及び電解めっきにより、前記はんだパッド用導体回路を形成する工程と、
(b)前記はんだパッド用導体回路の上面および側面を第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって処理し、前記はんだパッド用導体回路上に粗化面を形成する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記はんだパッド用導体回路上にエッチング処理または研磨処理による酸処理を行う工程と、
(d)前記はんだパッド用導体回路をソルダーレジスト組成物で被覆する工程と、
(e)前記はんだパッド用導体回路部分の前記ソルダーレジスト組成物を除去し、開口を有するソルダーレジスト層を形成する工程と、
(f)前記開口において、はんだバンプを形成する工程と
を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
はんだパッド用導体回路と、ソルダーレジスト層と、はんだバンプとを備える多層プリント配線板の製造方法において、
(a)無電解めっき及び電解めっきにより、前記はんだパッド用導体回路を形成する工程と、
(b)前記はんだパッド用導体回路の上面および側面を第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって処理し、前記はんだパッド用導体回路上に粗化面を形成する工程と、
(c)前記工程(b)の後、前記粗化面を熱処理する工程と、
(d)前記はんだパッド用導体回路をソルダーレジスト組成物で被覆する工程と、
(e)前記はんだパッド用導体回路部分の前記ソルダーレジスト組成物を除去し、開口を有するソルダーレジスト層を形成する工程と、
(f)前記開口において、はんだバンプを形成する工程と
を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記はんだパッド用導体回路の線幅が、50μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記粗化面が、0.5〜10μmの最大粗度(Rmax)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−28145(P2010−28145A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252379(P2009−252379)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願2002−292386(P2002−292386)の分割
【原出願日】平成11年5月20日(1999.5.20)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】