説明

多層構造緩衝材の製造方法、ダンプトラックの受け木の製造方法、多層構造緩衝材及びダンプトラックの受け木

【課題】耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れた多層構造緩衝材の製造方法及び多層構造緩衝材を提供する。
【解決手段】ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料を押出機24,26内で混練して加熱溶融し、この加熱溶融した樹脂を、押出機に装着され、内部に発泡ポリエチレンシート55を挿入した金型40内に加圧注入し、成型することで樹脂材料を発泡ポリエチレンシート55と一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造緩衝材の製造方法、ダンプトラックの受け木の製造方法、多層構造緩衝材及びダンプトラックの受け木に係わり、特に、耐久性が高く安価でありかつ表面柔軟性に優れた多層構造緩衝材の製造方法、ダンプトラックの受け木の製造方法、多層構造緩衝材及びダンプトラックの受け木に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝材の用途の代表例としてダンプトラックの受け木がある。ダンプトラックの受け木は、ダンプした荷台を降下させる際に、荷台の底面が車体フレームに当たるときの衝撃を吸収したり、車両走行時における荷台の上下動による衝撃を吸収するためのものであり、車体フレームを構成する左右2本のシャシフレームの上面に、複数個(例えば各シャシフレーム当たり2個、合計4個)、長手方向に間隔を置いて配設されている(特許文献1)。受け木は、一般に木製である。
【0003】
【特許文献1】特開2002−96671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダンプトラックの受け木は、荷台が降下した状態で荷台を支持するものであるため、複数個の受け木の表面は荷台の底面に均一に当たる必要がある。もし、複数個の受け木の表面の当たり方にバラツキがあると、一部の受け木の表面だけが荷台の底面に強く当たり、荷台底面の変形や受け木破損の原因となる。また、走行時に荷台振動の原因となる。このためダンプトラックの製造組み立てに際しては、受け木表面で荷台を均一に支持するための受け木合わせ工程が必須の工程となっている。この受け木合わせ工程では、全ての受け木と荷台底面の当たり具合をチェックし、その当たり具合にバラツキがある場合は、強く当たる受け木表面にかんながけ作業を施し、当たり具合を調整する。しかし、全ての受け木の当たり具合を均一にするのは大変な作業であり、受け木合わせ工程には多大の時間と労力を要していた。
【0005】
本発明の第1の目的は、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れた多層構造緩衝材の製造方法及び多層構造緩衝材を提供することである。
【0006】
本発明の第2の目的は、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れ、受け木合わせ工程に要する時間と労力を低減することができるダンプトラックの受け木の製造方法及びダンプトラックの受け木を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記第1の目的を達成するために、本発明は、ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料を押出機内で混練して加熱溶融し、この加熱溶融した樹脂を、前記押出機に装着され、内部に発泡ポリエチレンシートを挿入した金型内に加圧注入して成型し、前記樹脂材料を前記発泡ポリエチレンシートと一体化することを特徴とする多層構造緩衝材の製造方法を提供する。
【0008】
発泡ポリエチレンシートの融点(ポリエチレンの融点)は100℃前後であり、金型に注入される樹脂材料は押出機により200℃程度まで加熱されて溶融したものである。その結果、金型内への樹脂材料の注入時にその樹脂材料の熱によって発泡ポリエチレンシートの表面部分が溶融し、樹脂材料が冷えて固まるとき、発泡ポリエチレンシートの表面部分と樹脂材料は一体化して結合され、このように樹脂材料と発泡ポリエチレンシートとが溶融結合することにより、樹脂材料と発泡ポリエチレンシートは強固に結合される。樹脂材料の主成分がポリプロピレンである場合も、その融点は165℃前後であり、同様に溶融結合により樹脂材料と発泡ポリエチレンシートは強固に結合される。なお、樹脂材料の主成分が発泡ポリエチレンシートと同じポリエチレンである場合は、発泡ポリエチレンシート55との間に架橋結合が生じ、結合はより強固なものとなる。
【0009】
また、樹脂材料の主成分がポリエチレン又はポリプロピレンであるため高い強度を確保し、かつ発泡ポリエチレンシートにより優れた衝撃吸収性を発揮する。これにより耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れた多層構造緩衝材を製造することができる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記発泡ポリエチレンシートの発泡倍率は5〜30倍である。
【0011】
発泡ポリエチレンシートの発泡倍率が5倍より小さいと、発泡ポリエチレンシートが硬くなり過ぎるため、多層構造緩衝材としての荷重吸収性が十分でなくなり、発泡ポリエチレンシートの発泡倍率が30倍より大きくなると、発泡ポリエチレンシートが柔らかくなり過ぎるため、やはり、多層構造緩衝材としての荷重吸収性が十分でなくなる。発泡ポリエチレンシートの発泡倍率を5〜30倍とすることにより、多層構造緩衝材として適切な荷重吸収性を確保することができる。
【0012】
(3)また、上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記樹脂材料における主成分としての再生樹脂の重量割合は70%以上である。
【0013】
樹脂材料における主成分としての再生樹脂の重量割合を70%より小さくすると、主成分の配合割合が少なくなり過ぎるため、主成分であるポリエチレン又はポリプロピレンの物性を十分に発揮できなくなり、多層構造緩衝材として強度が不足してしまう。主成分としての再生樹脂の重量割合を70%以上とすることにより、主成分であるポリエチレン又はポリプロピレンの物性が有効に発揮され、多層構造緩衝材として適切な強度を確保することができる。
【0014】
(4)また、上記第2の目的を達成するために、本発明は、ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料を押出機内で混練して加熱溶融し、この加熱溶融した樹脂を、前記押出機に装着され、内部に発泡ポリエチレンシートを挿入した金型内に加圧注入して成型し、前記樹脂材料を前記発泡ポリエチレンシートと一体化することを特徴とするダンプトラックの受け木の製造方法を提供する。
【0015】
これにより上記(1)で述べたように、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れたダンプトラックの受け木を製造することができる。
【0016】
また、受け木の表面に発泡ポリエチレンシートが位置しているため、ダンプした荷台を降下させる際に、荷台の底面が車体フレームに当たるときの衝撃や、車両走行時における荷台の上下動による衝撃を適切に吸収するだけでなく、受け木が荷台を支持する状態で組み立て公差等により複数個の受け木の表面の当たり方にバラツキがあったとしても、発泡ポリエチレンシートによりそのバラツキが吸収される。その結果、従来、その当たり具合のバラツキを無くすために行っていた受け木合わせ工程に要する時間と労力を大幅に低減することができる。
【0017】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記発泡ポリエチレンシートの発泡倍率は5〜10倍である。
【0018】
発泡ポリエチレンシートの発泡倍率が5倍より小さいと、発泡ポリエチレンシートが硬くなり過ぎるため、ダンプトラックの受け木としての荷重吸収性が十分でなくなり、発泡ポリエチレンシートの発泡倍率が10倍より大きくなると、発泡ポリエチレンシートが柔らかくなり過ぎるため、やはり、ダンプトラックの受け木としての荷重吸収性が十分でなくなる。発泡ポリエチレンシートの発泡倍率を5〜10倍とすることにより、ダンプトラックの受け木として適切な荷重吸収性を確保することができる。
【0019】
(6)また、上記(4)又は(5)において、好ましくは、前記樹脂材料における主成分としての再生樹脂の重量割合は70%以上である。
【0020】
樹脂材料における主成分としての再生樹脂であるポリエチレン又はポリプロピレンの重量割合を70%より小さくすると、主成分の配合割合が少なくなり過ぎるため、主成分であるポリエチレン又はポリプロピレンの物性を十分に発揮できなくなり、ダンプトラックの受け木として強度が不足してしまう。主成分としての再生樹脂の重量割合を70%以上とすることにより、主成分であるポリエチレン又はポリプロピレンの物性が有効に発揮され、ダンプトラックの受け木として適切な強度を確保することができる。
【0021】
(7)更に、上記第1の目的を達成するために、本発明は、ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料からなる硬質体と、この硬質体の一面に接合された発泡ポリエチレンシートからなる軟質体とを有し、前記硬質体と前記軟質体は、前記樹脂材料の成型時に前記樹脂材料と前記発泡ポリエチレンシートとが溶融結合することにより一体化されていることを特徴とする多層構造緩衝材を提供する。
【0022】
これにより上記(1)で述べたように、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れた多層構造緩衝材を得ることができる。
【0023】
(8)また、上記第2の目的を達成するために、本発明は、ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料からなる硬質体と、この硬質体の一面に接合された発泡ポリエチレンシートからなる軟質体とを有し、前記硬質体と前記軟質体は、前記樹脂材料の成型時に前記樹脂材料と前記発泡ポリエチレンシートとが溶融結合することにより一体化されていることを特徴とするダンプトラックの受け木を提供する。
【0024】
これにより上記(1)で述べたように、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れたダンプトラックの受け木を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れた多層構造緩衝材を製造することができる。
【0026】
また、本発明によれば、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れたダンプトラックの受け木を製造することができる。
【0027】
更に、本発明によれば、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れた多層構造緩衝材を得ることができる。
【0028】
また、本発明によれば、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れたダンプトラックの受け木を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
<製造方法>
まず、本発明の一実施の形態による多層構造緩衝材の製造方法を図5〜図9を用いて説明する。本実施の形態は、多層構造緩衝材としてダンプトラックの受け木を製造する場合のものである。
【0030】
図1は、本実施の形態の多層構造緩衝材(ダンプトラックの受け木)の製造方法を実施するための製造ラインを示す図である。
【0031】
図1において、製造ラインは、原材料ストック置き場20、プラットフォーム21、ベルトコンベヤー22、ホッパ23を備えた第1押出機24、ミキサー25及びホッパ(図示せず)を備えた第2押出機26、第1及び第2押出機の操作盤27,28、冷却水槽29,30、製品置き場31、加工・検品所32、梱包所33を備えている。第1及び第2押出機24,26の反ベルトコンベヤー側には、受け木1を成型するための多数の金型40を載置した支持台34,35が配置されている。
【0032】
図1の製造ラインを用いた本実施の形態における製造方法は下記の工程からなる。
【0033】
1.原材料の配合
2.ベルトコンベヤ搬送
3.ミキサー投入
4.ホッパー投入
5.押し出し
6.金型注入
7.冷却水槽投入
8.冷却水槽取り出し
9.脱型
10.外見検品
11.種別養生
12.穴開け・凸加工
13.寸法測定
14.最終検品(チェックリスト等)
15.梱包
16.出荷
以下にその工程の詳細を説明する。
【0034】
<原材料の配合工程→ベルトコンベヤ搬送工程>
まず、原材料ストック置き場20から原材料をプラットフォーム21に移動し、プラットフォーム21で原材料を配合する。配合した原材料は、ポリエチレンの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料である。なお、主成分はポロプロピレンであってもよい。その他の再生樹脂としては、主成分以外のプラスチック材料であれば何でもよく、例えば主成分がポリエチレンである場合は、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニール等の廃プラスチック類である。なお、多少、ガラス繊維、カーボン繊維等が混入していてもよい。主成分としてのポリエチレン又はポリプロピレン再生樹脂の配合割合は、70重量%以上が好ましい。
【0035】
ここで、再生樹脂とは、例えば、電線の被覆材、繊維素材、フィルム等の廃プラスチック類を適当な大きさに裁断したものであり、場合によっては、造粒した再生樹脂であっても良い。
【0036】
プラットフォーム21で配合された原材料はベルトコンベヤー22により第1及び第2押出機24,26へと搬送される。
【0037】
<ミキサー投入工程→ホッパ投入工程>
原材料がホッパ投入口に投入可能な大きさよりも大きい場合は、その原材料を第2押出機26まで搬送し、それをミキサー25に投入して粉砕し、第2押出機26のホッパー(図示せず)に投入する。ホッパ投入口に投入可能な大きさの原材料の場合は第1押出機24に搬送し、そのままホッパ23に投入する。
【0038】
<押し出し工程→金型注入工程>
操作盤27,28を操作して第1及び第2押出機24,26の運転を制御し、ホッパから投入された樹脂材料を第1及び第2押出機24,26のバレル(シリンダ)内でスクリューにより混練して約200℃まで加熱し溶融する。第1及び第2押出機24,26のバレル先端の出口には専用のノズル装置(後述)が取り付けられており、このノズル装置には、事前に、発泡ポリエチレンシートを挿入した金型40が装着されている。第1及び第2押出機24,26のバレル内で加熱溶融された樹脂材料は200〜300kg/cmに加圧して、ノズル装置から金型40内に注入される。樹脂材料の注入が完了すると、第1及び第2押出機24,26を停止し、樹脂材料の混練、押し出しを停止する。
【0039】
<冷却水槽投入工程→冷却水槽取り出し工程→脱型工程>
金型40内への樹脂材料の注入が完了すると、第1及び第2押出機24,26から金型40を取り外し、冷却水槽29又は30へと移送し、冷却水中に投入する。金型40内の樹脂材料が常温付近の温度まで冷却されると、冷却水槽29又は30から金型40を取り出し、製品置き場31へと移送する。そして、金型40から成型品である多層構造緩衝材(受け木)を取り出す。
【0040】
<外見検品以降の工程>
その後、成型品の外見検品、種別養生、穴開け・凸加工、寸法測定、チェックリストによる最終検品の各工程を経て製品とし、その製品を梱包して出荷する。
【0041】
図2は押出機に取り付けられたノズル装置への金型の装着状況の概略を示す図であり、図3は金型の投入口とノズル装置の関係を示す図であり、図4は金型支持台の昇降機構を示す図である。
【0042】
図2〜図4において、第1及び第2押出機24,26のバレル先端部にはノズル装置51が取り付けられている。ノズル装置51は、第1及び第2押出機24,26のバレル内で加熱溶融した樹脂材料を金型40の上面に開けられた投入口42へと導くものであり、ノズル装置51の内部には加熱装置やスクリューフィーダが設けられている。ノズル装置51の下端部には、下方に向けてその内径が徐々に小さくなった円錐形状をした押し出し口53が設けられている。金型40の投入口42にはスライド式のストッパ43が取り付けられており、金型40が置かれる支持台34,35(図1参照)には油圧式リフター54が設けられている。金型40内には事前に発泡ポリエチレンシート55が挿入されている。
【0043】
図5は金型の構造を示す図である。金型40は両端が開放した横断面矩形の筒体44と、筒体44の両端開口部に設けられたヒンジ式の開閉扉45,46とからなり、開閉扉45,46の反ヒンジ側に開閉扉45,46を閉じ位置に保持するためのロック装置47a,47bが設けられている。筒体44の上面には投入口42が形成され、この投入口42の周囲に投入口42と整合したテーパ開口部48を備えたノズル受けプレート49が取り付けられ、このノズル受けプレート49の下面と筒体44の上面との間にスライド式のストッパ43がスライド自在に挿入されている。筒体44の左右の側面部分間の寸法は長手方向にわずかにテーパー状(先細)となっており、成型品の抜け性を良くしている。
【0044】
金型40に発泡ポリエチレンシート55を挿入した後、両端開口部の開閉扉45,46を閉じ、ロック装置47a,47bにより開閉扉45,46を閉じ位置に固定する。次いで、この金型40を支持台34又は35上に置き、油圧式リフター54を作動して支持台34又は35を上げ、ノズル装置51の押し出し口53をノズル装着プレート49のテーパ開口部48に押し当てる。このようにして金型40をノズル装置51に装着した後、上記の押し出し・金型注入工程により、加熱溶融した樹脂材料を金型40内に注入する。
【0045】
金型40への樹脂材料の注入が完了すると、スライド式のストッパ43を挿入して金型40の投入口42を閉じ、油圧式リフター54を作動して支持台34又は35を下げ、ノズル装置51から金型40を取り外す。
【0046】
金型40の冷却後、金型40から成型品(受け木)を取り出す際は、ロック装置47a,47bを開放して開閉扉45を開け、筒体44の上記テーパーを利用して金型40から成型品を抜き出す。
<受け木>
次に、以上のように製造されたダンプトラックの受け木の実施の形態を図6〜図8を用いて説明する。図6は本発明の一実施の形態に係わるダンプトラックの受け木を示す図であり、図7は図6に示した受け木の縦断面図であり、図8は同受け木の横断面図である。
【0047】
本実施の形態に係わる受け木1は、受け木本体を構成する反り、ヒケが少ない厚板状の硬質体2と、この硬質体2の一面に接合され、受け木1の表面層を構成するたシート状の弾性を有する軟質体3とで構成されている。硬質体2は第1押出機24又は第2押出機26から金型40に注入した樹脂材料を成型したものであり、上記の如く、ポリエチレン又はポリプロピレンの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料から構成されている。軟質体3は金型40内に事前に挿入された発泡ポリエチレンシート55から構成されている。
【0048】
ここで、発泡ポリエチレンシート55の融点(ポリエチレンの融点)は100℃前後であり、金型40に注入される樹脂材料は押出機25又は26のバレル内で200℃程度まで加熱されて溶融したものである。その結果、金型40内への樹脂材料の注入時にその樹脂材料の熱によって発泡ポリエチレンシート55の表面部分が溶融し、樹脂材料が冷えて固まるとき、発泡ポリエチレンシート55の表面部分と樹脂材料は一体化して結合される。このような結合を溶融結合という。このように樹脂材料と発泡ポリエチレンシート55とが溶融結合することにより、樹脂材料(硬質体2)と発泡ポリエチレンシート55(軟質体3)は強固に結合される。樹脂材料の主成分(70重量%以上)がポリプロピレンである場合も、その融点は165℃前後であり、同様に溶融結合により樹脂材料(硬質体2)と発泡ポリエチレンシート55(軟質体3)は強固に結合される。なお、樹脂材料の主成分(70重量%以上)が発泡ポリエチレンシート55と同じポリエチレンである場合は、発泡ポリエチレンシート55との間に架橋結合が生じ、結合はより強固なものとなる。
【0049】
また、溶融した樹脂材料が金型40に注入されるとき、柔軟性のある発泡ポリエチレンシート55は金型40の底面と左右の側面に拘束されつつ、金型40内に加圧注入される樹脂材料によって押圧される。その結果、図8の横断面に示すように、硬質体2と軟質体3の接合面の両端部分にアール部4が形成される。このアール部4は、結合強度を更に強固なものとするのに役立つ。
【0050】
本実施の形態における受け木1は、樹脂材料の主成分がポリエチレン又はポリプロピレンであるため高い強度が確保され、かつ発泡ポリエチレンシート55により優れた衝撃吸収性が発揮される。
【0051】
ここで、樹脂材料における主成分としての再生樹脂であるポリエチレン又はポリプロピレンの重量割合を70%より小さくすると、主成分の配合割合が少なくなり過ぎるため、ポリエチレン又はポリプロピレンの物性を十分に発揮できなくなり、ダンプトラックの受け木として強度が不足してしまう。ポリエチレン又はポリプロピレンの重量割合を70%以上とすることにより、ポリエチレン又はポリプロピレンの物性が有効に発揮され、ダンプトラックの受け木として適切な強度を確保することができる。
【0052】
また、発泡ポリエチレンシート55の発泡倍率は好ましくは5〜10倍である。発泡ポリエチレンシート55の発泡倍率が5倍より小さいと、発泡ポリエチレンシート55が硬くなり過ぎるため、ダンプトラックの受け木としての荷重吸収性が十分でなくなり、発泡ポリエチレンシート55の発泡倍率が10倍より大きくなると、発泡ポリエチレンシートが柔らかくなり過ぎるため、やはり、ダンプトラックの受け木としての荷重吸収性が十分でなくなる。発泡ポリエチレンシート55の発泡倍率を5〜10倍とすることにより、ダンプトラックの受け木として適切な荷重吸収性を確保することができる。
【0053】
更に、樹脂材料は再生樹脂であるため安価であり、かつリサイクル性向上に寄与することができる。
【0054】
以上のように本実施の形態によれば、耐久性が高く安価でありかつ衝撃吸収性に優れたダンプトラックの受け木を提供することができる。
【0055】
<ダンプトラック>
本発明の多層構造緩衝材からなる受け木1の利用形態を図9を用いて説明する。図9は、ダンプトラックの荷台を上げた状態を示す図である。
【0056】
ダンプトラックは車体フレーム10と荷台11を有し、荷台11は車体フレーム10の後端側に回動可能に連結されている。荷台11と車体フレーム10の間には、荷台11を傾動させるための油圧シリンダとリンク機構からなるダンプ装置12が設けられている。車体フレーム10は、前後に伸びる左右2本のシャーシフレーム13,14を有し、シャーシフレーム13,14のそれぞれの上面には、2個ずつ(合計4個)、受け木1が長手方向に間隔を置いて配設されている。
【0057】
ダンプトラックの受け木は、荷台11が降下した状態で荷台11を支持するものであるため、複数個の受け木の表面は荷台の底面に均一に当たる必要がある。もし、複数個の受け木の表面の当たり方にバラツキがあると、一部の受け木の表面だけが荷台11の底面に強く当たり、荷台底面の変形や受け木破損の原因となる。また、走行時に荷台振動の原因となる。このため、従来は、ダンプトラックの製造組み立てに際しては、受け木表面で荷台11を均一に支持するための受け木合わせ工程が必須の工程となっている。この受け木合わせ工程では、全ての受け木と荷台底面の当たり具合をチェックし、その当たり具合にバラツキがある場合は、強く当たる受け木表面にかんながけ作業を施し、当たり具合を調整する。しかし、全ての受け木の当たり具合を均一にするのは大変な作業であり、受け木合わせ工程には多大の時間と労力を要していた。
【0058】
本実施の形態における受け木1においては、受け木1の表面に発泡ポリエチレンシート55(軟質体3)が位置しているため、ダンプした荷台11を降下させる際に、荷台11の底面が車体フレーム10に当たるときの衝撃や、車両走行時における荷台11の上下動による衝撃を適切に吸収するだけでなく、受け木1が荷台11を支持する状態で組み立て公差等により複数個の受け木1の表面の当たり方にバラツキがあったとしても、発泡ポリエチレンシート55によりそのバラツキが吸収される。その結果、従来、その当たり具合のバラツキを無くすために行っていた受け木合わせ工程に要する時間と労力を大幅に低減することができ、場合によっては受け木合わせ工程を不要とすることができる。
【0059】
<実施例>
次に、本発明の実施例と性能試験結果を説明する。
【実施例1】
【0060】
実施例1の原材料として下記の組成の原材料を用意した。
【0061】
ポリエチレンの廃プラスチック
80重量%
ポリプロピレン、ポリエステル、ビニール等の廃プラスチック類の混合物
20重量%
上記組成の原材料を上述した製造ラインを用い、上述した製造方法により緩衝材A1を製造した。
【0062】
比較材B1として緩衝材A1の硬質体と同じ組成の原材料からなる単層ブロック(再生樹脂単層成型品)を成形して製造し、比較実験として、曲げ試験(JIS A 1106準拠)によって緩衝材A1と比較材B1との強度を比較した。ここで、緩衝材A1と比較材B1の寸法は下記の通りであった。
【0063】
緩衝材A1
硬質体:幅60mm×高さ68mm×長さ1200mm
軟質体:幅60mm×高さ5mm×長さ1200mm
比較材B1
幅60mm×高さ68mm×長さ1200mm
曲げ試験の結果は下記の通りであった。
【0064】
緩衝材A1は荷重0.75KN/cm(試験装置の読取値は4.5KN)で曲げ破壊し、比較材B1は荷重0.73KN/cm(試験装置の読取値は4.4KN)で曲げ破壊した。すなわち、緩衝材A1の最大荷重は4.5KNであり、比較材B1の最大荷重は4.4KNであり、強度的な差はほとんど無かった。また、緩衝材A1の曲げ試験では硬質体(再生樹脂)と軟質体(発泡ポリエチレンシート)との結合面に剥離は見られなかった。このことから硬質体(再生樹脂)と軟質体(発泡ポリエチレンシート)との結合強度は極めて高いものであることが実証された。
【0065】
緩衝材Aの硬質体と軟質体の接合強度を比較するため、金型内に帯板状のゴムシートを挿入し、ポリエチレンの廃プラスチック(再生樹脂)を主成分とした実施例1と同様の原材料を押出機により加熱溶融し、金型に注入し、比較材C1を製造した。しかし、軟質体がゴムシートである場合は、再生樹脂とゴムシートはうまく一体化せず、手で力を加えるだけで簡単に剥がれてしまった。
【実施例2】
【0066】
実施例2の原材料として下記の組成の原材料を用意した。
【0067】
ポリプロピレンの廃プラスチック
80重量%
ポリエチレン、ポリエステル、ビニール等の廃プラスチック類の混合物
20重量%
上記組成の原材料を上述した製造ラインを用い、上述した製造方法により緩衝材A2を製造した。
【0068】
圧縮試験(JIS A 1106準拠)によって緩衝材A1と緩衝材A2との比較試験を行った。ここで、緩衝材A2の寸法は上記緩衝材A1と同じ寸法とした。すなわち、
緩衝材A1及びA2
硬質体:幅60mm×高さ68mm×長さ60mm
軟質体:幅60mm×高さ5mm×長さ60mm
圧縮試験の結果は下記の通りであった。
【0069】
緩衝材A1については、樹脂材料の主成分がポリエチレンであるため、圧縮力を増加させるにしたがって曲がるように変形し、試験装置の測定範囲外となった。つまり、圧縮破壊は生じなかった。
【0070】
緩衝材A2については、硬質体の主成分がポリプロピレンであるため、緩衝材A1(主成分がポリエチレン)のように曲がることはなく、荷重6.12KN/cm(試験装置の読取値は250KN)で一気に割れるような結果となった。しかし、圧縮強度自体は、十分、ダンプトラックの受け木としての役割を果たせるものであった。
【0071】
以上の試験結果より、緩衝材A1,A2は共にダンプトラックの受け木として十分な強度を有し、かつ硬質体(再生樹脂)と軟質体(発泡ポリエチレンシート)との結合強度も極めて高いものであることが実証された。しかし、主成分がポリプロピレンである緩衝材A2は、ある一定以上の圧縮力が加わると一気に割れ周囲に飛散するおそれがあることから、安全面から考えると、ポリエチレンを主成分とする緩衝材A1の方が受け木として好ましいと考えられる。
【0072】
<他への適用>
本発明の多層構造緩衝材は、ダンプトラックの受け木に限らず、種々の用途に適用可能である。例えば、本発明の多層構造緩衝材の他の適用例として、工場内或いは工場間で製品を載せて搬送するのに使用する搬送用パレットへの適用がある。
【0073】
従来の搬送用パレットは一般的に合成樹脂製であり、製品載置部の表面も合成樹脂面となっている。この場合、パレット上に製品が落下した場合や、パレット上に製品を置く場合であっても、製品の置き方によっては製品に傷が付く可能性がある。
【0074】
本発明の多層構造緩衝材を用いて搬送用パレットを構成する場合は、軟質体(発泡ポリエチレンシート)が製品載置部の表面側となるよう緩衝材を配置する。これによりパレット上に製品が落下した場合や、パレット上への製品の置き方が乱暴であったとしても、そのときの衝撃が軟質体(発泡ポリエチレンシート)により吸収され、製品の傷付きを防止することができる。
【0075】
また、現在、搬送用パレットは合成樹脂製が一般的であるが、リサイクル性向上の観点から再生樹脂製の搬送用パレットも広く使用されている。再生樹脂製の搬送用パレットは、再生樹脂製であるため黒色をしているため、製品がパレットとこすれた場合に、パレット樹脂の黒色が製品に付き、製品の品質を低下させる可能性がある。本発明の多層構造緩衝材を搬送用パレットに用いた場合は、軟質体が製品載置部の表面側となるよう緩衝材を配置することにより、製品は軟質体により硬質体を構成する再生樹脂と直接接触することが防止され、製品の色付きを防止することができる。
【0076】
本発明の多層構造緩衝材を搬送用パレットに用いる場合は、搬送用パレットが製品重量により変形することを防止するため、ポリエチレンよりもポリプロピレンを主成分とする緩衝材を用いることが好ましい。
【0077】
また、本発明の多層構造緩衝材を用いて搬送用パレットを構成する場合は、発泡ポリエチレンシートの発泡倍率は5〜30倍であることが好ましい。発泡ポリエチレンシートの発泡倍率が5倍より小さいと、発泡ポリエチレンシートが硬くなり過ぎるため、搬送用パレットとしての荷重吸収性が十分でなくなり、発泡ポリエチレンシートの発泡倍率が30倍より大きくなると、発泡ポリエチレンシートが柔らかくなり過ぎるため、やはり、搬送用パレットとしての荷重吸収性が十分でなくなる。発泡ポリエチレンシートの発泡倍率を5〜30倍とすることにより、搬送用パレットとして適切な荷重吸収性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施の形態の多層構造緩衝材(ダンプトラックの受け木)の製造方法を実施するための製造ラインを示す図である。
【図2】押出機に取り付けられたノズル装置への金型の装着状況の概略を示す図である。
【図3】金型の投入口とノズル装置の関係を示す図である。
【図4】金型支持台の昇降機構を示す図である。
【図5】金型の構造を示す図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係わるダンプトラックの受け木を示す図である。
【図7】図1に示した受け木の縦断面図である。
【図8】図1に示した受け木の横断面図である。
【図9】ダンプトラックの荷台を上げた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1 受け木
2 硬質体
3 軟質体
10 車体フレーム
11 荷台
12 ダンプ装置
13,14 シャーシフレーム
20 原材料ストック置き場
21 プラットフォーム
22 ベルトコンベヤー
23 ホッパ
24 第1押出機
25 ミキサー
26 第2押出機
27,28 操作盤
29,30 冷却水槽
31 製品置き場
32 加工・検品所
33 梱包所
34,35 支持台
40 金型
42 投入口
43 スライド式ストッパ
44 筒体
45,46 開閉扉
47a,47b ロック装置
48 テーパ開口部
49 ノズル受けプレート
51 ノズル装置
54 油圧式リフター
55 発泡ポリエチレンシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料を押出機内で混練して加熱溶融し、この加熱溶融した樹脂を、前記押出機に装着され、内部に発泡ポリエチレンシートを挿入した金型内に加圧注入して成型し、前記樹脂材料を前記発泡ポリエチレンシートと一体化することを特徴とする多層構造緩衝材の製造方法。
【請求項2】
前記発泡ポリエチレンシートの発泡倍率は5〜30倍であることを特徴とする請求項1記載の緩衝材の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂材料における主成分としての再生樹脂の重量割合は70%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の特徴とする緩衝材の製造方法。
【請求項4】
ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料を押出機内で混練して加熱溶融し、この加熱溶融した樹脂を、前記押出機に装着され、内部に発泡ポリエチレンシートを挿入した金型内に加圧注入して成型し、前記樹脂材料を前記発泡ポリエチレンシートと一体化することを特徴とするダンプトラックの受け木の製造方法。
【請求項5】
前記発泡ポリエチレンシートの発泡倍率は5〜10倍であることを特徴とする請求項4記載のダンプトラックの受け木の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂材料における主成分としての再生樹脂の重量割合は70%以上であることを特徴とする請求項4又は5記載のダンプトラックの受け木の製造方法。
【請求項7】
ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料からなる硬質体と、この硬質体の一面に接合された発泡ポリエチレンシートからなる軟質体とを有し、前記硬質体と前記軟質体は、前記樹脂材料の成型時に前記樹脂材料と前記発泡ポリエチレンシートとが溶融結合することにより一体化されていることを特徴とする多層構造緩衝材。
【請求項8】
ポリエチレン、ポリプロピレンのいずれかの再生樹脂を主成分とし、その他の再生樹脂を混入した樹脂材料からなる硬質体と、この硬質体の一面に接合された発泡ポリエチレンシートからなる軟質体とを有し、前記硬質体と前記軟質体は、前記樹脂材料の成型時に前記樹脂材料と前記発泡ポリエチレンシートとが溶融結合することにより一体化されていることを特徴とするダンプトラックの受け木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−234100(P2009−234100A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84459(P2008−84459)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508093089)成雄商事有限会社 (1)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】