説明

封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】流動性、難燃性、硬化性等の特性を損なうことなく、特に低応力化、耐リフロー性、耐熱衝撃性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)特定の構造部位(1)を有し、数平均分子量が8000〜12000であるケイ素含有重合体を含有する封止用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の素子封止の分野では生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂成形材料が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。また近年、電子部品のパッケージ形態は、小型・薄型化等が進み、多ピン化、狭ピッチ化が可能であるBGAパッケージが増大している。今後更に狭ピッチ化は進行すると予想され、配線間に大きな容量が発生し、信号の伝播速度を低下させてしまうため、LSIの動作速度の遅延を招く事が懸念される。この問題を解決するために層間絶縁膜に関しては、比誘電率の低い(Low−k)絶縁材料の開発が進行しており、今後ポーラス化することが予想され強度が低下していくことが懸念される。
【0003】
よって、これらの電子部品のパッケージは、冷熱サイクル時にパッケージがクラックするという問題が生じ、耐熱衝撃性の改善が望まれている。このような技術背景から強度の弱い層間絶縁膜の剥離を防ぐような低応力封止材の開発が求められる。エポキシ樹脂組成物の耐熱衝撃性を改善するために、ポリアルキレンエーテル基を有するシリコーン重合体を可撓剤として使用する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平2−129220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、可撓剤としてポリアルキレンエーテル基を有するシリコーン重合体を使用した場合は、エポキシ樹脂組成物の弾性率を低減するものの、流動性や難燃性、耐リフロー性が悪くなる傾向がある。BGAパッケージの封止方法は、複数のICを一括して封止するMAP(Mold Array Package)成形が増加しており、薄く大きな面積を一括封止するため高い流動性が必要である。
【0005】
本発明の課題は、流動性、難燃性、硬化性等の特性を損なうことなく、特に低応力化、耐リフロー性、耐熱衝撃性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物及びそれにより封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の構造部位と特定範囲の数平均分子量を有するケイ素含有重合体を含む封止用エポキシ樹脂組成物が上記課題を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)ケイ素含有重合体を含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(C)ケイ素含有重合体が下記式(1)で表される構造部位[1]及び下記式(2)で表される構造部位[2]を主鎖骨格に有し、数平均分子量が8000〜12000であること特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【化1】

【0007】
(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【化2】

【0008】
(式(2)中、RおよびRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
また、本発明は、(2)前記(C)ケイ素含有重合体の数平均分子量が、9500〜10500である前記(1)に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、(3)前記式(2)で表される構造部位[2]の重量に対する、式(1)で表される構造部位[1]の重量の比が、2/8〜5/5である前記(1)または(2)に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、(4)前記(C)ケイ素含有重合体の含有量が、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して1〜50重量部である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、(5)前記(C)ケイ素含有重合体の含有量が、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して5〜25重量部である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、(6)前記(C)ケイ素含有重合体が、構造部位[1]を含有する重合体ブロックと、構造部位[2]を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、(7)前記前記(C)ケイ素含有重合体が、構造部位[2]を含有する重合体ブロックの両端に構造部位[1]を含有する重合体ブロックが結合したトリブロック共重合体である前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、(8)前記(C)ケイ素含有重合体が、下記式(3)で示されるブロック重合体である前記(6)に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【化3】

【0015】
(式(3)中、lは1〜200の整数、mは1〜200の整数、mは1〜200の整数、m+mは2〜400の整数を示す。Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、RおよびRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。)
また、本発明は、(9)前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、(10)前記(B)硬化剤が、ビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及び共重合型フェノール・アラルキル樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、(11)(D)無機充填剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、(12)前記(D)無機充填剤の含有量が、エポキシ樹脂組成物の総重量に対して、65質量%〜95質重量%である前記(11)に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、(13)(E)硬化促進剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、(14)前記(E)硬化促進剤が、第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物であることを特徴とする前記(13)に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、(15)(F)カップリング剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(14)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、(16)前記(F)カップリング剤が、二級アミノ基を有するシランカップリング剤を含有することを特徴とする前記(15)に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【0023】
また、本発明は、(17)前記(F)二級アミノ基を有するシランカップリング剤が、下記一般式(4)で示される化合物を含有する前記(16)に記載の封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【化4】

【0024】
(一般式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜2のアルコキシ基から選ばれ、Rは炭素数1〜6のアルキル基及びフェニル基から選ばれ、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは1〜6の整数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
また、本発明は、(18)前記(1)〜(17)のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えてなる電子部品装置に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、流動性、難燃性、硬化性等の特性を損なうことなく、特に低応力化、耐リフロー性、耐熱衝撃性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物及びそれにより封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)ケイ素含有重合体を含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(C)ケイ素含有重合体が下記式(1)で表される構造部位[1]及び下記式(2)で表される構造部位[2]を主鎖骨格に有し、数平均分子量が8000〜12000であること特徴とする。
【化5】

【0027】
(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【化6】

【0028】
(式(2)中、RおよびRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
以下、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
(A)エポキシ樹脂
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂は従来公知のエポキシ樹脂を使用することができる。使用可能なエポキシ樹脂としては、たとえば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル;スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物;ナフタレン環を有するエポキシ樹脂;キシリレン骨格、ビフェニレン骨格を含有するフェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂;硫黄原子含有エポキシ樹脂;などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
これらのなかでも、流動性及び耐リフロー性の観点からはビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂及び硫黄原子含有エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有していることが好ましい。また、硬化性の観点からはノボラック型エポキシ樹脂を含有していることが好ましく、低吸湿性の観点からはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含有していることが好ましい。また、耐熱性及び低反り性の観点からはナフタレン型エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有していることが好ましい。また、難燃性の観点からはビフェニレン型エポキシ樹脂及びナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有していることが好ましい。また、難燃性の良好なエポキシ樹脂を用いてノンハロゲン、ノンアンチモンとすることが高温放置特性向上の観点から好ましい。
【0030】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、たとえば下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化7】

【0031】
(一般式(III)中、R〜Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
上記一般式(III)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェノール化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。前記一般式(III)中のR〜Rは、水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれるものであり、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基;などが挙げられる。これらのなかでも水素原子又はメチル基が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4´‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4´‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)‐3,3´,5,5´‐テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4´‐ビフェノール又は4,4´‐(3,3´,5,5´‐テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも4,4´‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)‐3,3´,5,5´‐テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂は、ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名:YX‐4000H、YL−6121Hが市販品として入手可能である。
【0032】
上記ビフェニル型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0033】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化8】

【0034】
(一般式(IV)中、R〜Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基であり、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
上記一般式(IV)で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂は、ビスフェノールF化合物にエピクロルヒドリンを公知の方法で反応させることによって得られる。一般式(IV)中のR〜Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基であり、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数1〜10のアルケニル基;などが挙げられる。これらのなかでも水素原子又はメチル基が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、たとえば、4,4´‐メチレンビス(2,6‐ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、4,4´‐メチレンビス(2,3,6‐トリメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂、4,4´‐メチレンビスフェノールのジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂等が挙げられ、なかでも4,4´‐メチレンビス(2,6‐ジメチルフェノール)のジグリシジルエーテルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。そのようなエポキシ樹脂は、R、R、R及びRがメチル基で、R、R、R及びRが水素原子であり、n=0を主成分とする東都化成株式会社製商品名:YSLV−80XY等が市販品として入手可能である。
【0035】
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0036】
スチルベン型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化9】

【0037】
(一般式(V)中、R〜Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜5の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(V)で示されるスチルベン型エポキシ樹脂は、原料であるスチルベン系フェノール類とエピクロルヒドリンとを塩基性物質存在下で反応させて得ることができる。この原料であるスチルベン系フェノール類としては、たとえば3−tert−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5,5′−トリメチルスチルベン、3−tert−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5′,6−トリメチルスチルベン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´,5,5´−テトラメチルスチルベン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジ−tert−ブチル−5,5´−ジメチルスチルベン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジ−tert−ブチル−6,6´−ジメチルスチルベン等が挙げられ、なかでも3−tert−ブチル−4,4′−ジヒドロキシ−3′,5,5′−トリメチルスチルベン、及び4,4´−ジヒドロキシ−3,3´,5,5´−テトラメチルスチルベンが好ましい。これらのスチルベン型フェノール類は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記スチルベン型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0039】
硫黄原子含有エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化10】

【0040】
(一般式(VI)中、R〜Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
上記一般式(VI)で示される硫黄原子含有エポキシ樹脂のなかでも、R、R、R及びRが水素原子で、R、R、R及びRがアルキル基であるエポキシ樹脂が好ましく、R、R、R及びRが水素原子で、R及びRがtert−ブチル基で、R及びRがメチル基であるエポキシ樹脂がより好ましい。このような化合物としては、東都化成株式会社製商品名:YSLV−120TE等が市販品として入手可能である。これらのエポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0041】
上記硫黄原子含有エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0042】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化11】

【0043】
(一般式(VII)中、Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
上記一般式(VII)で示されるノボラック型エポキシ樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させることによって容易に得られる。なかでも、一般式(VII)中のRとしては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシル基;などが好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。nは0〜3の整数が好ましい。上記一般式(VII)で示されるノボラック型エポキシ樹脂のなかでも、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。このような化合物としては、日本化薬株式会社製商品名:EOCN−1020等が市販品として入手可能である。
【0044】
上記ノボラック型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0045】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化12】

【0046】
(一般式(VIII)中、R及びRは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基からそれぞれ独立して選ばれ、nは0〜10の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。)
上記式(VIII)中のRとしては、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基などの炭素数1〜5の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、なかでもメチル基、エチル基等のアルキル基及び水素原子が好ましく、メチル基及び水素原子がより好ましい。Rとしては、たとえば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基などの炭素数1〜5の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、なかでも水素原子が好ましい。このような化合物としては、大日本インキ化学工業株式会社製商品名:HP−7200等が市販品として入手可能である。
【0047】
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0048】
ナフタレン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化13】

【0049】
(一般式(IX)中、R〜Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜12の一価の炭化水素基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。pは1又は0で、l、mはそれぞれ0〜11の整数であって、(l+m)が1〜11の整数でかつ(l+p)が1〜12の整数となるよう選ばれる。iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す。)
上記一般式(IX)で示されるナフタレン型エポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。R、Rが水素原子で、Rがメチル基である上記化合物としては、日本化薬株式会社製商品名:NC−7000等が市販品として入手可能である。
【0050】
上記ナフタレン型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0051】
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化14】

【0052】
(一般式(X)中、Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、nは1〜10の整数を示す。)
上記一般式(X)で示されるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、Rが水素原子であるジャパンエポキシレジン株式会社製商品名:E−1032等が市販品として入手可能である。
【0053】
ビフェニレン型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(XI)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化15】

【0054】
(一般式(XI)中、R〜Rは、それぞれが同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数6〜10のアラルキル基から選ばれる、nは0〜10の整数を示す。)
上記下記一般式(XI)において、R〜Rとしては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数6〜10のアラルキル基などが挙げられ、これらのなかでも、水素原子又はメチル基が好ましい。ビフェニレン型エポキシ樹脂の市販品としては、日本化薬株式会社製商品名:NC−3000が入手可能である。
【0055】
上記ビフェニレン型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0056】
ナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂としてはたとえば下記一般式(XII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化16】

【0057】
(一般式(XII)中、R〜Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜12の一価の炭化水素基から選ばれ、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは1〜10の整数を示す。)
ナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、東都化成株式会社製商品名:ESN−175等が市販品として入手可能である。
【0058】
上記ナフトール・アラルキル型エポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0059】
また、本発明では(A)エポキシ樹脂として、下記構造式(XIII)のエポキシ樹脂も使用することができる。
【化17】

【0060】
(一般式(XIII)中のRは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基及び置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜4の整数を示す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基及び置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルコキシ基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。mは0〜2の整数を示す。)
上記一般式(XIII)で示されるエポキシ樹脂としては、たとえば下記一般式(XIV)〜(XXXII)で示されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【0061】
これらのなかでも、難燃性、成形性の観点からは上記一般式(XIV)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン社製商品名:YX−8800等が入手可能である。
【0062】
上記構造式(XIII)のエポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0063】
また、本発明では、(A)エポキシ樹脂として、下記一般式(XXXIII)で示される化合物を使用することもできる。
【化28】

【0064】
(一般式(XXXIII)中のRは水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。R、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは1〜20の整数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
一般式(XXXIII)中、mは1〜2であることが難燃性、硬化性の観点から好ましい。nは1〜20の整数を示すが、好ましくは1〜5である。一般式(XXXIII)で示される化合物はインドール類と架橋剤を酸触媒下で反応させた後、エピハロヒドリン化合物と反応させることにより得られる。
【0065】
一般式(XXXIII)で示される化合物としては東都化成株式会社製商品名:ENP−80等が入手可能である。一般式(XXXIII)で示される化合物の軟化点は、好ましくは40〜200℃、より好ましくは50〜160℃、さらに好ましくは60〜120℃である。前記軟化点が40℃未満の場合、硬化性が低下し、200℃を超える場合は流動性が低下する傾向にある。ここで軟化点とはJIS−K−6911の環球法に基づき測定される軟化点を示す。
【0066】
上記一般式(XXXIII)のエポキシ樹脂の配合量は、その性能を発揮するためにエポキシ樹脂全量中、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましく、60質量%以上とすることが特に好ましい。
【0067】
(B)硬化剤
本発明において用いられる(B)硬化剤は、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、たとえば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂、ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;トリフェニルメタン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂;などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
なかでも、難燃性、成形性の観点からは下記一般式(XXXIV)で示されるフェノール・アラルキル樹脂が好ましい。
【化29】

【0069】
(ここで、Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
一般式(XXXIV)中のRが水素原子で、nの平均値が0〜8であるフェノール・アラルキル樹脂がより好ましい。具体例としては、p−キシリレン型フェノール・アラルキル樹脂、m−キシリレン型フェノール・アラルキル樹脂等が挙げられる。このような化合物としては、三井化学株式会社製商品名:XLC等が市販品として入手可能である。これらのフェノール・アラルキル樹脂を用いる場合、その配合量は、その性能を発揮するために(B)硬化剤全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましい。
【0070】
ナフトール・アラルキル樹脂としては、たとえば下記一般式(XXXV)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化30】

【0071】
上記一般式(XXXV)で示されるナフトール・アラルキル樹脂としては、たとえばR、Rが全て水素原子である化合物等が挙げられ、このような化合物としては、新日鐵化学株式会社製商品名:SN−170が市販品として入手可能である。
【0072】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XXXVI)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化31】

【0073】
(一般式(XXXVI)中、R及びRは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基からそれぞれ独立して選ばれ、nは0〜10の整数を示し、mは0〜6の整数を示す。)
上記一般式(XXXVII)において、R及びRが水素原子である化合物としては、新日本石油化学株式会社製商品名:DPP等が市販品として入手可能である。ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂を用いる場合、その配合量は、その性能を発揮するために(B)硬化剤全量に対して30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
【0074】
反り低減という観点からはトリフェニルメタン型フェノール樹脂が好ましい。トリフェニルメタン型フェノール樹脂としては、たとえば下記一般式(XXXVII)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化32】

【0075】
(一般式(XXXVII)中、Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、nは1〜10の整数を示す。)
上記一般式(XXXVIII)において、Rが水素原子である上記化合物としては、明和化成株式会社製商品名:MEH−7500等が市販品として入手可能である。
【0076】
トリフェニルメタン型フェノール樹脂の配合量は、(B)硬化剤全量に対して10〜50重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがさらに好ましい。前記配合量が10重量%以上であると反り低減効果が良好となり、50重量%以下であると難燃性が良好となる。
【0077】
ノボラック型フェノール樹脂としては、たとえばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等が挙げられ、なかでもフェノールノボラック樹脂が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の配合量は、(B)硬化剤全量に対して、30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
【0078】
ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂としては、たとえば下記一般式(XXXVIII)で示されるフェノール樹脂等が挙げられる。
【化33】

【0079】
上記式(XXXVIII)中のR〜Rは全てが同一でも異なっていてもよく、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数6〜10のアラルキル基;などから選ばれ、これらのなかでも水素原子又はメチル基が好ましい。nは0〜10の整数を示す。
【0080】
上記一般式(XXXVIII)で示されるビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂としては、たとえばR〜Rが全て水素原子である化合物等が挙げられ、なかでも溶融粘度の観点から、nが1以上の縮合体を50重量%以上含む縮合体の混合物が好ましい。このような化合物としては、明和化成株式会社製商品名:MEH−7851が市販品として入手可能である。
【0081】
上記のアラルキル型フェノール樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ビフェニレン型フェノール・アラルキル樹脂は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0082】
併用する上記硬化剤の中では特にノボラック型フェノール樹脂が硬化性の観点から好ましく、アラルキル型フェノール樹脂が流動性、耐リフロー性の観点から好ましい。
【0083】
本発明においては、(B)硬化剤として、下記一般式(XXXIX)で示される化合物を含むこともできる。
【化34】

【0084】
(一般式(XXXIX)中のRは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、Rは水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1〜10の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示し、mは0〜10の整数を示し、n及びmが0の場合を除く。)
一般式(XXXIX)で示される化合物は、フェノール化合物と芳香族アルデヒド及びビフェニレン化合物を酸触媒の存在下で反応させることにより得られる。フェノール化合物としてはフェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等の置換フェノール類が用いられる。芳香族アルデヒドは芳香族に結合した1個のアルデヒド基を持った芳香族化合物である。芳香族アルデヒドとしてはベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、tert−ブチルベンズアルデヒド等が挙げられる。またビフェニレン化合物としてはビフェニレングリコール、ビフェニレングリコールジメチルエーテル、ビフェニレングリコールジエチルエーテル、ビフェニレングリコールジアセトキシエステル、ビフェニレングリコールジプロピオキシエステル、ビフェニレングリコールモノメチルエーテル、ビフェニレングリコールモノアセトキシエステル等が挙げられる。特にビフェニレングリコール、ビフェニレングリコールジメチルエーテルが好ましい。また下記一般式(b)で示されるビフェニレン化合物も用いることができる。
【化35】

【0085】
一般式(XXXIX)で示される化合物としては、エア・ウォーター株式会社製:HE−610C、620C等が入手可能である。
【0086】
一般式(XXXIX)で示される化合物の配合量は、(B)硬化剤全量に対して50〜90重量%が好ましく、70〜85重量%がより好ましい。前記配合量が50重量%以上であると難燃性が良好となり、90重量%以下であると反り低減効果が良好となる。
【0087】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には難燃性を向上させる観点から、アセナフチレンを含有してもよい。アセナフチレンはアセナフテンを脱水素して得ることができるが、市販品を用いてもよい。また、アセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物として用いることもできる。アセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物を得る方法としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等が挙げられる。また、重合に際しては従来公知の触媒を用いることができるが、触媒を用いずに熱だけで行うこともできる。この際、重合温度は80〜160℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。得られるアセナフチレンの重合物又はアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物の軟化点は、60〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。前記軟化点が60℃より低いと成形時の染み出しにより成形性が低下する傾向にあり、150℃より高いと樹脂との相溶性が低下する傾向にある。
【0088】
アセナフチレンと共重合させる他の芳香族オレフィンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、インデン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル又はそれらのアルキル置換体等が挙げられる。また、上記した芳香族オレフィン以外に本発明の効果に支障の無い範囲で脂肪族オレフィンを併用することもできる。脂肪族オレフィンとしては、(メタ)アクリル酸及びそれらのエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、フマル酸及びそれらのエステル等が挙げられる。これら脂肪族オレフィンの使用量は重合モノマー全量に対して20重量%以下が好ましく、9重量%以下がより好ましい。
【0089】
さらに、アセナフチレンとして、(B)硬化剤の一部又は全部と予備混合されたアセナフチレンを含有することもできる。(B)硬化剤の一部又は全部と、アセナフチレン、アセナフチレンの重合物及びアセナフチレンと他の芳香族オレフィンとの重合物の1種以上とを予備混合したものを用いてもよい。予備混合の方法としては、(B)硬化剤及びアセナフチレン成分をそれぞれ微細に粉砕し固体状態のままミキサー等で混合する方法、両成分を溶解する溶媒に均一に溶解させた後溶媒を除去する方法、(B)硬化剤及び/又はアセナフチレン成分の軟化点以上の温度で両者を溶融混合する方法等で行うことができるが、均一な混合物が得られて不純物の混入が少ない溶融混合法が好ましい。溶融混合は、(B)硬化剤及び/又はアセナフチレン成分の軟化点以上の温度であれば制限はないが、100〜250℃が好ましく、120〜200℃がより好ましい。また、溶融混合は両者が均一に混合すれば混合時間に制限はないが、1〜20時間が好ましく、2〜15時間がより好ましい。
【0090】
(B)硬化剤とアセナフチレンを予備混合する場合、混合中にアセナフチレン成分が重合もしくは(B)硬化剤と反応しても構わない。本発明の封止用エポキシ樹脂組成物中には、アセナフチレン成分の分散性に起因する難燃性向上の観点から前述の予備混合物(アセナフチレン変性硬化剤)が(B)硬化剤中に90重量%以上含まれることが好ましい。アセナフチレン変性硬化剤中に含まれるアセナフチレン及び/又はアセナフチレンを含む芳香族オレフィンの重合物の量は5〜40重量%が好ましく、8〜25重量%がより好ましい。前記含有量が5重量%より少ないと難燃性が低下する傾向があり、40重量%より多いと成形性が低下する傾向がある。本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれるアセナフチレン構造の含有率は、難燃性と成形性の観点からは0.1〜5重量%が好ましく、0.3〜3重量%がより好ましい。前記含有率が0.1重量%より少ないと難燃性に劣る傾向にあり、5重量%より多いと成形性が低下する傾向にある。
【0091】
本発明において、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中のエポキシ基数に対する硬化剤中の水酸基数の比(硬化剤中の水酸基数/エポキシ樹脂中のエポキシ基数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために上記当量比は0.5〜2の範囲に設定されることが好ましく、0.6〜1.3がより好ましい。成形性、耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を得るためには上記当量比は0.8〜1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0092】
(C)ケイ素含有重合体
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、特定の構造部位と特定範囲の数平均分子量を有するケイ素含有重合体を含有することが重要であり、それによって本発明の課題を達成することができるのである。すなわち、流動性、難燃性、硬化性等の特性を損なうことなく、特に低応力化、耐リフロー性、耐熱衝撃性に優れた封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができるのである。
【0093】
本発明で用いられる(C)ケイ素含有重合体は、下記式(1)で表される構造部位[1]及び下記式(2)で表される構造部位[2]を主鎖骨格に有することを特徴とする。
【化36】

【0094】
(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【化37】

【0095】
(式(2)中、RおよびRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
上記式(1)中、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デシレン基などが挙げられる。これらのなかでも、分散性の観点から、Rはプロピレン基であることが好ましい。
【0096】
上記式(2)中、R及びRは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基など炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などの炭素数6〜10のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基;2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基などの炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基;カルボキシメチレン基、カルボキシエチレン基、カルボキシプロピレン基、カルボキシブチレン基、カルボキシペンチレン基などの炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基;下記式(5)で示されるポリエチレンオキシ基を有する炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基、下記式(6)で示されるポリプロピレンオキシ基を有する炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基、下記式(5)及び式(6)で示されるポリエチレンオキシ基を有する炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基;などから選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよい。
【化38】

【0097】
(式(5)、式(6)における、a、bは1〜100の整数を示し、1〜20の整数であることが好ましい。)
これらのなかでも、弾性率低減効果の観点からは、R及びRはアルキル基又はアリール基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0098】
本発明では、(C)ケイ素含有重合体は、前記式(1)で表される構造部位[1]を含有する重合体ブロックと、前記式(2)で表される構造部位[2]を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0099】
ブロック共重合体中の構造部位[1]の数は、20〜80個であることが好ましく、30〜50個であることがより好ましい。また、ブロック共重合体中の構造部位[2]の数は、2〜400個であることが好ましく、10〜50個であることがより好ましく、20〜30であることが更に好ましい。
【0100】
ブロック共重合体の形態は、鎖状型ブロックでも星型ブロックでも特に限定されないが、好ましい形態としては、構造部位[2]を含有する重合体ブロックの両端に構造部位[1]を含有する重合体ブロックが結合したトリブロック共重合体である。かかるトリブロック共重合体においては、構造部位[2]を含有する重合体ブロックと構造部位[1]を含有する重合体ブロックとの間に結合部位[3]を有していても良い。
【0101】
好ましいブロック共重合体は、下記式(3)で示される。
【化39】

【0102】
(式(3)中、lは1〜200の整数、mは1〜200の整数、mは1〜200の整数、m+mは2〜400の整数を示す。Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、RおよびRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。)
式(3)中、lは1〜200の整数を示し、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜50である。lが1未満では効果を得られにくい傾向があり、200を越えると分子量が大きくなりすぎるためである。m、mは1〜200の整数、好ましくは5〜25、より好ましくは10〜20であり、m、mがほぼ同じであることが好ましい。
【0103】
式(3)中、R、RおよびRは前述したものと同様のものが示される。
【0104】
は構造部位[2]を含有する重合体ブロックと構造部位[1]を含有する重合体ブロックをつなぐ結合部位[3]であり、炭素数1〜10の2価の炭化水素基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デシレン基などのアルキレン基;フェニレン基、1−ナフチレン基、2−ナフチレン基などのアリーレン基;などが挙げられる。
【0105】
これらのなかでも、分散性の観点からは、炭素数は単一ではなく上記範囲で分布を持っていることが好ましい。つまり、すべて置換基が同一の単一成分を用いるのではなく、炭素数が異なる複数の置換基成分を併用していることが好ましく、ブロック共重合体としては全て同一のものではなく、分子量などにある程度の分布を持ったものであることが好ましい。
【0106】
本発明では、前記(C)ケイ素含有重合体の数平均分子量が8000〜12000であることが重要であり、その範囲にあることによって耐リフロー性に優れる封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。数平均分子量は、9500〜10500であることが好ましく、9750〜10250であることがより好ましい。本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定することで得られる。本発明において、上記数平均分子量は、GPCとしてポンプ(株式会社日立製作所製L−6200型)、カラム(TSKgel―G5000HXLおよびTSKgel−G2000HXL、いずれも東ソー株式会社製商品名)、検出器(株式会社日立製作所製L−3300RI型)を用い、テトラヒドロフランを溶離液として温度30℃、流量1.0ml/minの条件で測定した。
【0107】
前記式(2)で表される構造部位[2]の重量に対する式(1)で表される構造部位[1]の重量の比(式(1)で表される構造部位[1]の重量/式(2)で表される構造部位[2]の重量)は、弾性率低減、流動性、耐リフロー性のバランスの観点から、2/8〜5/5であることが好ましく、3/7〜4/6であることがより好ましく、3/7であることが特に好ましい。前記式(2)で表される構造部位[2]の重量に対する式(1)で表される構造部位[1]の重量の比は、H−NMRの測定による各構造部位由来のプロトンの積分値により求めることができる。
【0108】
以上のような(C)ケイ素含有重合体としては、ワッカー社製商品名SLM446200シリーズ、SLJ1661−03、SLJ44620−1065が挙げられる。前記SLJ1661−03は、数平均分子量が10968で、前記式(2)で表される構造部位[2]に対する式(1)で表される構造部位[1]の重量比が5/5である。前記SLJ44620−1065は、数平均分子量が10000で、前記式(2)で表される構造部位[2]に対する式(1)で表される構造部位[1]の重量比が3/7である。
【0109】
前記(C)ケイ素含有重合体の含有量は、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、2〜30重量部であることがより好ましく、5〜25重量部であることが特に好ましく、20重量部であることが最も好ましい。前記含有量が1重量部未満では、封止用エポキシ樹脂組成物に可とう性を付与しにくくなり、50重量部を超えると封止用エポキシ樹脂組成物の流動性が低下する傾向にある。
【0110】
(D)無機充填剤
本発明では、必要に応じて(D)無機充填剤を含有することができる。無機充填剤は、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上の向上のために封止用エポキシ樹脂組成物に配合されるものであり、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限されるものではない。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等の単結晶繊維、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛などが挙げられる。これら無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これら無機充填剤の中で、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填剤の形状は成形時の流動性及び金型磨耗性の点から球形もしくは球状に近い形が好ましい。
【0111】
無機充填剤の含有量は、成形性、吸湿性、線膨張係数の低減及び強度向上の観点から、封止用エポキシ樹脂組成物の総質量に対して、65〜95質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、75〜92重量%がさらに好ましい。前記含有量が65質量%未満では耐リフロー性が低下する傾向があり、95質量%を越えると流動性が不足する傾向がある。
【0112】
(E)硬化促進剤
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の反応を促進させるために必要に応じて(E)硬化促進剤を用いることができる。(E)硬化促進剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されているものであれば特に限定はなく、たとえば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2―フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられる。これら硬化促進剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
これらのなかでも、硬化性及び流動性の観点からは第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が好ましく、特に好ましくはトリブチルホスフィンとベンゾキノンとの付加物である。保存安定性の観点からはシクロアミジン化合物とフェノール樹脂との付加物が好ましく、ジアザビシクロウンデセンのノボラック型フェノール樹脂塩がより好ましい。これらの好ましい硬化促進剤の配合量は合計で、硬化促進剤の総重量に対して、60重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0114】
第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いられる第三ホスフィン化合物としては特に制限はないが、たとえば、ジブチルフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメチル−4−エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−エトキシフェニル)ホスフィン等のアルキル基、アリール基を有する第三ホスフィン化合物が挙げられ、成形性の点からはトリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。また、キノン化合物としては特に制限はないが、たとえば、o−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、ジフェノキノン、1,4−ナフトキノン、アントラキノン等が挙げられ、耐湿性又は保存安定性の観点からはp−ベンゾキノンが好ましい。
【0115】
(E)硬化促進剤の含有量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に限定されるものではないが、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.3〜5重量部がより好ましい。前記含有量が0.1重量部未満では短時間の硬化性に劣る傾向があり、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない傾向がある。
【0116】
(F)カップリング剤
本発明において、(D)無機充填剤を用いる場合、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と(D)無機充填剤との接着性を高めるために、(F)カップリング剤をさらに配合することが好ましい。(F)カップリング剤としては、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、たとえば、アミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。(F)カップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤;などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
これらのなかでも流動性、金線変形低減、難燃性の観点からは2級アミノ基を有するシラン系カップリング剤が好ましい。2級アミノ基を有するシラン系カップリング剤は分子内に2級アミノ基を有するシラン化合物であれば特に制限はないが、たとえば、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルエチルジメトキシシラン、γ−アニリノメチルトリメトキシシラン、γ−アニリノメチルトリエトキシシラン、γ−アニリノメチルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノメチルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノメチルエチルジエトキシシラン、γ−アニリノメチルエチルジメトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−(p−メトキシフェニル)−γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−ブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−ベンジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−ブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−ベンジル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−ブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−ベンジル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのなかでも下記一般式(4)で示されるアミノシランカップリング剤が特に好ましい。
【化40】

【0118】
(一般式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜2のアルコキシ基から選ばれ、Rは炭素数1〜6のアルキル基及びフェニル基から選ばれ、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは1〜6の整数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
一般式(4)中のRの具体例としては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基又はエトキシ基等の炭素数1〜2のアルコキシル基;などが挙げられ、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;フェニル基;などが挙げられる。
【0119】
カップリング剤の含有量は、封止用エポキシ樹脂組成物の総重量に対して0.037〜5重量%であることが好ましく、0.05〜4.75重量%であることがより好ましく、0.1〜2.5重量%であることがさらに好ましい。前記含有量が0.037重量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、4.75重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0120】
(各種添加剤)
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)ケイ素含有重合体、(D)無機充填剤、(E)硬化促進剤、(F)カップリング剤に加えて、以下に例示する離型剤、着色剤といった各種添加剤を追加してもよい。
【0121】
離型剤としては、特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン等の酸化型ポリオレフィン系ワックス、非酸化ポリエチレン等の非酸化型ポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも酸化型ポリオレフィン系ワックス又は非酸化型ポリオレフィン系ワックスを、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部用いることが好ましく、0.1〜5重量部用いることがより好ましい。前記使用量が0.01重量部未満では離型性が不十分となる傾向があり、10重量部を超えると接着性が低下する傾向がある。酸化型ポリオレフィン系ワックス又は非酸化型ポリオレフィン系ワックスとしては、ヘキスト株式会社製商品名:H4やPE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。これら離型剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化型ポリオレフィン系ワックス又は非酸化型ポリオレフィン系ワックスに加えて、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス等の離型剤を併用する場合、その全配合量が、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜3重量部であることがより好ましい。前記配合量が0.1重量部未満では離型性が不十分となる傾向があり、10重量部を超えると接着性が低下しない傾向がある。
【0122】
着色剤としては、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を用いることができる。
【0123】
(封止用エポキシ樹脂組成物の調製)
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製することができる。一般的な手法として、所定の配合量の各種成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダー、押出機等によって溶融混練した後、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。たとえば、上述した各種成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダーなどで混練を行い、次いで冷却し、粉砕するなどの方法で本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。なお、封止用エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると取り扱いやすい。
【0124】
(電子部品装置)
本発明の電子部品装置は、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えてなるものである。電子部品装置としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材や実装基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置などが挙げられる。
【0125】
ここで、実装基板としては特に制限するものではなく、たとえば、有機基板、有機フィルム、セラミック基板、ガラス基板等のインターポーザ基板、液晶用ガラス基板、MCM(Multi Chip Module)用基板、ハイブリットIC用基板等が挙げられる。
【0126】
このような電子部品装置としては、たとえば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形等により封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
【0127】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0128】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
[ケイ素含有重合体1〜4]
実施例又は比較例で用いたケイ素含有重合体1〜4は、以下に示すものであり、物性を下記表1に示す。
【0130】
ケイ素含有重合体1:ワッカー社製、開発品番「SLJ1661−01」
ケイ素含有重合体2:ワッカー社製、製品番号「WAX OH350D」
ケイ素含有重合体3:ワッカー社製、開発品番「SLJ44620−1065」
ケイ素含有重合体4:ワッカー社製、開発品番「SLJ1661−03」

なお、前記ケイ素含有重合体1〜4は、下記式(1)で表される構造部位[1]及び下記式(2)で表される構造部位[2]を含有する下記式(3)で示されるブロック重合体である。
【化41】

【化42】

【化43】

【表1】

【0131】
*1:数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定することにより求めた。前記数平均分子量は、GPCとしてポンプ(株式会社日立製作所製L−6200型)、カラム(TSKgel―G5000HXLおよびTSKgel−G2000HXL、いずれも東ソー株式会社製商品名)、検出器(株式会社日立製作所製L−3300RI型)を用い、テトラヒドロフランを溶離液として温度30℃、流量1.0ml/minの条件で測定した。
【0132】
*2:構造部位[2]の重量に対する構造部位[1]の重量の比は、前記式(1)で表される構造部位[1]の重量/式(2)で表される構造部位[2]の重量であり、H−NMRの測定による各構造部位由来のプロトンの積分値により求めた。
【0133】
*3、*4:上記の数平均分子量、構造部位[2]の重量に対する構造部位[1]の重量の比、各構造部位の分子量から、ケイ素含有重合体1〜4のm+mおよびlを概算した。
【0134】

[封止用エポキシ樹脂組成物の作製]
実施例1〜7、比較例1〜3
以下の成分をそれぞれ表2〜表3に示す質量部で配合し、混練温度80〜90℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、実施例1〜7、比較例1〜3の封止用エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0135】
なお、(D)無機充填剤の含有量は、封止用エポキシ樹脂組成物の総質量に対して82質量%である。
【0136】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名:YX−4000H)
(B)硬化剤
硬化剤1:水酸基当量199、軟化点89℃のビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂(明和化成株式会社製商品名:MEH−7851)
硬化剤2:水酸基当量104、軟化点83℃のトリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名:MEH−7500−3S)
(C)ケイ素含有重合体
ケイ素含有重合体1〜4:前記表1に記載のとおり
(D)無機充填剤
無機充填剤1:球状溶融シリカ(平均粒径21.7μm、比表面積1.3m/g)
(E)硬化促進剤
硬化促進剤1:トリ−n−ブチルホスフィンとp−ベンゾキノンとの付加反応物
(F)カップリング剤
カップリング剤1:N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
(離型剤)
酸化ポリエチレン:クラリアント株式会社製商品名 PED153
モンタン酸エステル:クラリアント社製商品名 Hoechst−Wax E
(着色剤)
カーボンブラック

[封止用エポキシ樹脂組成物の特性評価]
実施例1〜7及び比較例1〜3で作製した封止用エポキシ樹脂組成物の特性を、以下(1)〜(10)に示す各特性試験によって評価した。評価結果を表2〜表3に示す。
【0137】
なお、封止用エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機を用い、封止用エポキシ樹脂組成物を金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒で成形した。
【0138】
(1)ゲルタイム
JSR製キュラストメータを用いて、封止用エポキシ樹脂組成物3gを温度180℃で測定し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(秒)とした。
【0139】
(2)熱時硬度
封止用エポキシ樹脂組成物を、直径50mm×厚さ3mmの円板に上記条件で成形し、成形後直ちにショアD硬度計(株式会社上島製作所製HD−1120(タイプD))を用いて測定した。
【0140】
(3)スパイラルフロー
封止用エポキシ樹脂組成物を、EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
【0141】
(4)円板フロー
200mm(W)×200mm(D)×25mm(H)の上型と200mm(W)×200mm(D)×15mm(H)の下型を有する円板フロー測定用平板金型を用いて、上皿天秤にて秤量した封止用エポキシ樹脂組成物5gを180℃に加熱した下型の中心部にのせ、5秒後に、180℃に加熱した上型を閉じて、荷重78N、硬化時間90秒の条件で圧縮成形し、ノギスで成形品の長径(mm)及び短径(mm)を測定して、その平均値(mm)を円板フローとした。
【0142】
(5)曲げ弾性率
封止用エポキシ樹脂組成物を、寸法70mm×10mm×3mmに上記条件で成形し試験片として用いた。A&D社製テンシロンを用い、JIS−K−6911に準拠した3点支持型曲げ試験を室温及び260℃にて行い、曲げ弾性率を求めた。
【0143】
(6)ガラス転移温度
封止用エポキシ樹脂組成物を、19mm×3mm×3mmの形状に上記条件で成形し、180℃で5時間後硬化して試験片を作製し、理学電機工業株式会社製、熱機械分析装置(TAS−100)を用いて、昇温速度5℃/minの条件下で測定した線膨張曲線の屈曲点よりガラス転移温度(以下、Tgと略す)を求めた。
【0144】
(7)線膨張係数
前記(6)で求めたTg以下の傾きから線膨張係数(α)、Tg以上の傾きから線膨張係数(αと略す)を求めた。
【0145】
(8)難燃性
厚さ1/32インチ(0.8mm)の試験片を成形する金型を用いて、封止用エポキシ樹脂組成物を上記条件で成形し、180℃で5時間後硬化して試験片を作製し、UL−94試験法に従って難燃性を評価した。
【0146】
(9)耐リフロー性
9mm×9mm×0.28mmの日立化成工業株式会社製、HSG−255(次世代Low−k対応層間絶縁膜;膜ヤング率10GPa)を用いたシリコーンチップおよび、半径28mm,金属厚み0.3mmのクロムめっきを施した銅製ヒートスプレッタを搭載した外形寸法40mm×40mm×2mm厚のボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージを、封止用エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形し、180℃で5時間後硬化して試験片を作製した。試験片をJEDEC規格に準拠したLevel2(85℃/65%RH/168h),Level2A(30℃/70%RH/696h),Level3(30℃/70%RH/168h)の条件で加湿した後に260℃、10秒の条件でリフロー処理を行なった。日立建機ファインテック株式会社製の超音波映像装置(HYE−FOCUS)によりパッケージ内部の剥離の有無を観察し、試験パッケージ数(5個)に対するクラック発生パッケージ数で評価した。
【0147】
(10)耐熱衝撃性
9mm×9mm×0.28mmの日立化成工業株式会社製、HSG−255(次世代Low−k対応層間絶縁膜;膜ヤング率10GPa)を用いたシリコーンチップおよび、半径28mm,金属厚み0.3mmのクロムめっきを施した銅製ヒートスプレッタを搭載した外形寸法40mm×40mm×2mm厚のボール・グリッド・アレイ(BGA)パッケージを、封止用エポキシ樹脂組成物を用いて上記条件で成形し、180℃で5時間後硬化して試験片を作製し、温度サイクル試験(−65℃/15分、次いで150℃/15分を1サイクルとする)を行った。Low−kパッケージ内部の剥離状態を日立建機ファインテック株式会社製の超音波映像装置(HYE−FOCUS)によりパッケージ内部の剥離状態を観察し、試験パッケージ数(8個)に対する不良パッケージ数で評価した。
【表2】

【表3】

【0148】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、流動性、難燃性、硬化性等の特性を損なうことなく、特に低応力化、耐リフロー性、耐熱衝撃性に優れている。ケイ素含有重合体を含有しない比較例1の封止用エポキシ樹脂組成物は、耐熱衝撃性に劣り、数平均分子量が小さいケイ素含有重合体を含有する比較例2、3の封止用エポキシ樹脂組成物は耐リフロー性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)ケイ素含有重合体を含有する封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記(C)ケイ素含有重合体が下記式(1)で表される構造部位[1]及び下記式(2)で表される構造部位[2]を主鎖骨格に有し、数平均分子量が8000〜12000であること特徴とする封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【化2】

(式(2)中、RおよびRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記(C)ケイ素含有重合体の数平均分子量が、9500〜10500である請求項1に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(2)で表される構造部位[2]の重量に対する、式(1)で表される構造部位[1]の重量の比が、2/8〜5/5である請求項1または2に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)ケイ素含有重合体の含有量が、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して1〜50重量部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)ケイ素含有重合体の含有量が、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して5〜25重量部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)ケイ素含有重合体が、構造部位[1]を含有する重合体ブロックと、構造部位[2]を含有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記前記(C)ケイ素含有重合体が、構造部位[2]を含有する重合体ブロックの両端に構造部位[1]を含有する重合体ブロックが結合したトリブロック共重合体である請求項1〜6のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)ケイ素含有重合体が、下記式(3)で示されるブロック重合体である請求項6に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化3】

(式(3)中、lは1〜200の整数、mは1〜200の整数、mは1〜200の整数、m+mは2〜400の整数を示す。Rは炭素数1〜10のアルキレン基を示し、RおよびRは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のエポキシ基を有する1価の有機基、炭素数1〜10のカルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基から選ばれ、各々が同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示す。)
【請求項9】
前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル型エポキシ樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)硬化剤が、ビフェニレン骨格含有フェノール・アラルキル樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂及び共重合型フェノール・アラルキル樹脂の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
(D)無機充填剤を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記(D)無機充填剤の含有量が、エポキシ樹脂組成物の総重量に対して、65質量%〜95質重量%である請求項11に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
(E)硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記(E)硬化促進剤が、第三ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物であることを特徴とする請求項13に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
(F)カップリング剤を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
前記(F)カップリング剤が、二級アミノ基を有するシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項15に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
前記(F)二級アミノ基を有するシランカップリング剤が、下記一般式(4)で示される化合物を含有する請求項16に記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
【化4】

(一般式(4)中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数1〜2のアルコキシ基から選ばれ、Rは炭素数1〜6のアルキル基及びフェニル基から選ばれ、Rはメチル基又はエチル基を示し、nは1〜6の整数を示し、mは1〜3の整数を示す。)
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の封止用エポキシ樹脂組成物で封止された素子を備えてなる電子部品装置。

【公開番号】特開2009−102631(P2009−102631A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256143(P2008−256143)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】