説明

射出成形機および射出成形方法

【課題】 固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形機において、油圧式射出成形機と電動式射出成形機の長所を兼ね備えた射出成形機および射出成形方法を提供する。
【解決手段】 固定金型26と可動金型32の間に形成されるキャビティ68内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形機11において、サーボモータ35によって駆動される型開閉機構の偏移量Aを検出する第一位置検出手段35aと、サーボバルブ47によって駆動される型締シリンダ29の偏移量Bを検出する第二位置検出手段33とにより固定盤17に対する可動盤27の偏移量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形機および射出成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスク基板等の成形を行う射出成形機としては、特許文献1ないし特許文献4に記載されたものが知られている。特許文献1は、油圧による型締シリンダにより型開閉および型締を行うものである。しかし特許文献1は、作動油の量が多い上に省エネルギの点においても問題があった。また上記の問題に対処するものとして特許文献2は、サーボモータとトグルリンク機構の組合せにより型開閉と型締を行うものである。しかし特許文献2は、可動盤背面の両端近傍にリンクが取付けられるために、可動盤の中心を押圧することができず、可動盤の撓みから良好な転写ができないという問題があった。更に特許文献2では、サーボモータとトグルリンク機構の組合せは、型閉状態から型締により所望の型締力が発生するまでの時間がかかるという問題があった。また特許文献2はトグルリンクにより型締を行うので可動盤と受圧盤の間隔が変更されると型締力が変更され、成形金型の熱膨張に対応しにくいという問題があった。更に特許文献3は、油圧によるトグルリンク機構とサーボモータによる型締機構を用いるものであるが、油圧によるトグルリンク機構による位置制御が高精度に行えない上に、型閉状態から型締により所望の型締力が発生するまでの時間がかかるという問題が特許文献2と同様にあった。
【0003】
また特許文献1ないし特許文献3は、可動盤および可動金型が水平方向に移動する所謂横型射出成形機であるが、キャビティが縦方向に形成されるので、重力の影響によりキャビティ内における上下方向が均一なディスク基板を成形することが難しいという問題があった。そこで前記問題を解決するために、特許文献4に記載されたものが知られている。特許文献4では横型射出成形機の成形が重力の影響を受けるという問題を解決した縦型ディスク用射出成形機である。しかし特許文献4の図1、図2のタイプについても、可動ダイプレート5は撓むため、可動金型の中心を押圧することができないという問題は解消されていなかった。またサーボモータとトグルリンクの組合せによる型閉状態から型締により所望の型締力が発生するまでの時間がかかるという問題や成形金型の熱膨張時の問題も解消されておらず、依然として成形されるディスク基板に対して最良の転写ができないものであった。更にはトグル式成形機では、金型を変更した際にも所定の型締力が得られるように受圧盤を移動させる複雑な型厚調整機構を有しており、成形金型の厚みが変更されると受圧盤の位置を調整する必要があった。
【0004】
【特許文献1】特開平8−276479号公報(0028、0029、図2)
【特許文献2】特開2003−77178号公報(0017、図2)
【特許文献3】特開平6−87142号公報(0057、図6)
【特許文献4】特開2005−28634号公報(0009、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明では、固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形機において、油圧式射出成形機と電動式射出成形機の長所を兼ね備えた射出成形機および射出成形方法を提供することを目的とする。また前記において固定盤に対する可動盤の位置検出を正確に行うことができる射出成形機および射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の射出成形機は、固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形機において、サーボモータによって駆動される型開閉機構の偏移量を検出する第一位置検出手段と、サーボバルブによって駆動される型締シリンダの偏移量を検出する第二位置検出手段とにより固定盤に対する可動盤の偏移量を求めることを特徴とする。
【0007】
また本発明の射出成形方法は、固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形方法において、サーボモータによって駆動される型開閉機構の偏移量と、サーボバルブによって駆動される型締シリンダの偏移量とにより固定盤に対する可動盤の偏移量を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の射出成形機および射出成形方法は、固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形機において、サーボモータによって駆動される型開閉機構の偏移量を検出する第一位置検出手段と、サーボバルブによって駆動される型締シリンダの偏移量を検出する第二位置検出手段とにより固定盤に対する可動盤の偏移量を求めるので、可動盤の反りの問題を解消し所望の型締力が発生するまでの時間を短縮することができる上に、固定盤に対する可動盤の位置検出を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態について図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本実施形態のディスク用射出成形機の正面図であって型開時の状態を示す図である。なお図1では射出装置も上昇させた状態を示している。図2は、本実施形態のディスク用射出成形機の正面図であって型閉時の状態を示す図である。図3は、本実施形態のディスク用射出成形機の要部の拡大断面図である。図4はディスク用射出成形機の固定盤に対する可動盤の偏移量を示す図である。図5は型開閉機構と型締機構の制御を示すタイムチャート図である。
【0010】
図1ないし図3に示されるように、本発明の射出成形機は、上部に射出装置12が設けられ、下部に型締装置13が設けられた縦型のディスク用射出成形機11である。基台14には4本の枠部材15が立設され、前記枠部材15に水平方向に設けられた梁部材16を介して固定盤17が固定されている。固定盤17は、ディスク用射出成形機11全体の中では中間の高さに配設されており、前記固定盤17と、固定盤17の下方の受圧盤18との間には4本のタイバ19が配設されている。そして前記タイバ19には可動盤20が固定盤17に対して昇降自在に取付けられている。また可動盤20と受圧盤18の間にはサーボモータ35によって駆動される型開閉機構のトグルリンク21が設けられている。そして可動盤20の内部に型開閉機構とは別に型締機構の型締シリンダ29が配設されている。
【0011】
固定盤17の上面には射出装置12の加熱筒22およびノズル23が挿入される擂鉢状の穴24が設けられ、その周囲に射出装置12を昇降させるシフトシリンダ25が2本設けられている。一方固定盤17の下面には固定金型26が固定されている。可動盤20は、上方の第一可動盤27と下方の第二可動盤28の2枚の可動盤20から形成され、いずれの可動盤27,28も四隅近傍がタイバ19に挿通されている。第一可動盤27の上面中央部には可動金型32が取付けられ、第二可動盤28は、背面中央部(下面中央部)にトグルリンク21が取付けられ、内部に型締機構である型締シリンダ29が配設されている。
【0012】
先に型開閉機構について説明すると、図1、図2に示されるように、型開閉機構のトグルリンク21は、一端が第二可動盤28に取付けられ他端が第2リンク21bに取付けられた第1リンク21a、一端が受圧盤18に取付けられ他端が前記第1リンク21aに取付けられ他端寄りが第3リンク21cに取付けられた第2リンク21b、一端が第2リンク21bに取付けられ、他端がクロスヘッド34に取付けられた第3リンク21cからなっている。また受圧盤18の側方には型開閉機構の型開閉用サーボモータ35がブラケットにより取付けられている。受圧盤18には図示しないベアリングを介してボールネジ36が垂直方向に回転自在に取付けられている。そしてボールネジ36の下端にはプーリ37が水平方向に取付けられ、前記型開閉用サーボモータ35の駆動プーリ38との間にタイミングベルト39が配設されている。ボールネジ36の上方にはクロスヘッド34に固定されたボールネジナット40が配設され、ボールネジ36の回転によりボールネジナット40とクロスヘッド34が昇降移動されるようになっている。そして前記型開閉用サーボモータ35には、クロスヘッド34、トグルリンク21、第二可動盤28等の型開閉機構の偏移量A1を検出する第一位置検出手段であるエンコーダ35aが設けられている。従ってエンコーダ35aにより受圧盤18に対する第二可動盤28の相対的な位置を検出することができる。
【0013】
従って受圧盤18に対する第二可動盤28の偏移量A1は、図4に示されるようにトグルリンク21が伸長され第二可動盤28が最上昇した際のエンコーダ35aの検出値を原点A0として検出される。なお第一位置検出手段については前記エンコーダ35aの代わりにリニアスケール等他の位置センサを用いてもよく種類は問わない。なお原点A0についてはトグルリンク21が最大に屈曲された位置または型開完了位置としてもよい。
【0014】
なお本実施形態のディスク用射出成形機11では、型開閉は型開閉用サーボモータ35とトグルリンク21等の組合せにより行い、型締は型締シリンダ29により行うので型開閉用サーボモータ35とトグルリンク21を小型化できる。また本実施形態では、成形金型の厚みが変更されても型締シリンダ29のストローク位置調整により対応可能なので、受圧盤18の位置を移動させる型厚調整機構は取付けられていない。
【0015】
次に型締機構について説明すると、型締シリンダ29は復動シリンダであるが、ピストン30は型締側の受圧面積の方が型開側の受圧面積よりも大きく設けられている。ピストン30に固定されるラム31の他端は、第一可動盤27の背面(下面)に固定されている。また第一可動盤27と第二可動盤28の一方の側面には、型締シリンダ29の偏移量B1を検出する第二位置検出手段である位置センサ33(MTSセンサ)が配設されている。
【0016】
従って第二可動盤28に対する第一可動盤27の偏移量B1は、図4に示されるように型締シリンダ29のラム31が最も伸長され第一可動盤27が最上昇した際の位置センサ33の検出値を原点B0として検出される。なお原点B0については第一可動盤27が最下降した位置としてもよい。また第二位置検出手段については回転角度を検出するエンコーダタイプや非接触式センサを用いてもよく種類および数は問わない。そしてまた第二位置検出手段により固定盤17と第一可動盤27の間の距離を測定するようにしてもよく取付け位置は問わない。
【0017】
型締シリンダ29のラム31の直径は、成形されるディスク基板および可動金型32のスタンパ64の直径よりも大きく設けられている。また前記ラム31のストロークは、型締時の移動分と金型変更時の型厚調整分であるので10〜30mm程度であり、従来の油圧式型締機構と比較して極めて少量の油で作動させることができる。また第一可動盤27内およびラム31内には図示は省略するがオスカッタ、突出ピン、およびエジェクタスリーブを作動させる油圧シリンダやエアシリンダとその管路等が設けられている。なお前記オスカッタ、突出ピン、およびエジェクタスリーブや、上記したシフトシリンダ25については、すべてサーボモータとボールネジ機構により前後進するものとしてもよい。
【0018】
型締シリンダ29の油圧回路について説明すると、図3に示されるようには、モータにより作動するポンプ41が設けられ、ポンプ41から油が送られる管路42は、チェックバルブ43を介してカートリッジバルブ44に接続されている。そしてカートリッジバルブ44に到る途中の管路42には前記カートリッジバルブ44を作動させるパイロット管路45が設けられ、パイロット管路45には切換バルブ46が配設されている。またカートリッジバルブ44の先にはサーボバルブ47が配設され、サーボバルブ47のAポートとBポートは、管路48、管路49等を介して型締シリンダ29の型開側油室50と型締側油室51に接続されている。そして前記型開側油室50への管路48には圧力検出手段である圧力センサ52が取付けられ、型締側油室51への管路49には同じく圧力検出手段である圧力センサ53が取付けられている。またカートリッジバルブ44への管路42から分岐した管路54には、アキュームレータ55が接続されている。またポンプ41とチェックバルブ43との間の管路42は圧力制御バルブ56に接続されている。そしてポンプ41、サーボバルブ47、圧力制御バルブ56等は、油圧タンク57に接続されている。また前記切換バルブ46、サーボバルブ47、圧力制御バルブ56、圧力センサ52,53等はそれぞれディスク用射出成形機11の制御装置58と電気的に接続されている。なお制御装置58は、型開閉用サーボモータ35、射出用サーボモータ75、計量用サーボモータ78の本体およびエンコーダともサーボアンプ等を介して電気的に接続されている。更には位置センサ33とも電気的に接続されている。
【0019】
図3に示されるように、固定金型26はノズル23が当接され射出される溶融樹脂が通過するスプルブッシュ61、ゲートインサートブロック62、固定鏡面板63等を備えている。そしてゲートインサートブロック62にはメスカッタが形成されている。また可動金型32は、図示しない突出ピン、オスカッタ、エジェクタスリーブと、スタンパ64の内周側を押える内周スタンパホルダ65、スタンパ64の外周側を押える外周スタンパホルダ66、可動鏡面板67等を備えている。そして型閉された際には前記外周スタンパホルダ66の内孔に固定鏡面板63の外周面が嵌合されて容積可変のキャビティ68が形成されるようになっている。なおディスク基板成形金型としては、前記のものに限定されず、固定金型にスタンパが配設されたものでもよく、バネにより進退しディスク基板を形成する側面壁形成部が一方の金型に取付けられ、前記側面壁形成部の前面が他方の金型に当接してキャビティを形成するものでもよい。
【0020】
図1、図2に示されるように、4本の枠部材15における一方の2本の梁部材16には射出装置12の昇降移動をガイドするガイド部材71が取付けられている。そしてガイド部材71の上部側は軸72により枠部材15に対して旋回可能となっている。またガイド部材71にはハウジングプレート73とプッシャプレート74が上下方向に摺動自在に取付けられている。ハウジングプレート73の下面には加熱筒22が下方に向けて固定されるとともに、上記シフトシリンダ25のロッドがそれぞれ取付けられている。またハウジングプレート73の両側に水平方向に張出した張出部には射出用サーボモータ75がそれぞれ取付けられている。射出用サーボモータ75の図示しないロータにはボールネジ76が直結され、前記ボールネジ76は、ハウジング内で軸支されるとともに上側はプッシャプレート74に固定されたボールネジナット77に回転自在に挿入されている。また加熱筒22内に配設された図示しないスクリュの後端は、スクリュスリーブに接続され、スクリュスリーブが計量用サーボモータ78のロータに直結されている。またハウジングプレート73の他方面には樹脂材料を加熱筒22内に投入する開口79が形成され、フィードスクリュが配設された供給装置80等を介して図示しない樹脂貯留部に接続されている。従って射出装置12は、射出用サーボモータ75の作動によりハウジングプレート73に対してプッシャプレート74が昇降移動し、それに従いスクリュスリーブおよびスクリュが前後進する。また計量用サーボモータ78の作動により、スクリュスリーブを介してスクリュが回転される。
【0021】
次にディスク用射出成形機11の固定盤17に対する可動盤20(特に第一可動盤27)の偏移量の求め方について図4により説明する。上記したように受圧盤18に対する第二可動盤28の偏移量A1は、図4(b)に示されるようにトグルリンク21が伸長された状態におけるエンコーダ35aの検出値を原点A0として、原点A0からの偏移量A1を検出して求める。また第一可動盤27の偏移量B1は、同じく図4(c)に示されるように型締シリンダ29のラム31が最も伸長された状態における位置センサ33による検出値を原点B0として、原点B0からの偏移量B1を検出して求める。そして図4(c)に示されるように、第二可動盤28と第一可動盤27の両方が原点A0,B0にあるときの固定盤17の下面と第一可動盤27の上面の距離をシステム値Cとして制御装置58に設定する。上記の点から図4(a)に記載したように、固定盤17に対する第一可動盤27の距離である型位置絶対値Dは、A1+B1+Cとして制御装置58により算出される。なお図4(a)と図4(b)とでは、第一可動盤27と第二可動盤28の距離は変化していないから、図4(a)のA1と図4(b)のA1とは等しい。
【0022】
そして前記型位置絶対値Dから固定金型26の金型厚さE1と可動金型32の金型厚さE2を加えた金型厚さEを減算することにより金型間距離Fが制御装置58により算出される。従って本発明では第一位置検出手段であるエンコーダ35aと第二位置検出手段である位置センサ33の両方の検出値が制御装置58に送られ、固定盤17に対する第一可動盤27の偏移量を求めることができる。また予め成形金型26,32が取付けられた際に成形金型26,32の金型厚さEが測定され制御装置58に入力されているので、金型間距離Fを求めることができる。上記を数式で表わすと次の通りとなる。
【0023】
【数1】

【0024】
次にディスク用射出成形機11を用いたブルーレイディスク(登録商標)用のディスク基板(直径120mm、厚さ1.1mm、トラックピッチ0.32μm:いずれの数値も許容成形誤差内のものを含む)の成形について図5等により説明する。本実施形態では、射出成形の一分野であって、射出時の射出圧により可動金型32が僅かに後退しその後圧縮を加える射出圧縮成形によりディスク基板成形を行う。前回成形サイクル時の型開時に可動盤20内の型締シリンダ29のピストン30およびラム31の位置が、最適な位置(偏移量B)となるように位置制御されている。型締シリンダ29のピストン30およびラム31の位置制御は、第二可動盤28に対する第一可動盤27の偏移量Bを位置センサ33により検出してサーボバルブ47を制御してクローズドループ制御される。またこの際、型開側油室50と型締側油室51の両方の油室に圧力は一定圧以上となっている。また冷却工程時や前記型締シリンダ29への油の封じ込め後などには、ポンプ41から送られる油がアキュームレータ55に蓄圧される。
【0025】
次に制御装置58から型閉信号が送信されることにより型開閉機構の型開閉用サーボモータ35が作動されボールネジ36が回転されると、ボールネジナット40およびクロスヘッド34の上昇とともにトグルリンク21が伸長される。この際の受圧盤18に対する第二可動盤28の位置は、図4(a)に示されるように偏移量A1として検出される。そしてトグルリンク21が設定された位置まで伸長され偏移量A1が0になったことがエンコーダ35aにより検出されると型開閉用サーボモータ35を停止させサーボロック(位置保持)して、型閉が完了する。型閉完了位置におけるトグルリンク21の状態は、トグルリンク21が完全に一直線に伸長される直前であってトグルリンク21が僅かに内側に屈曲された状態である。そして上記したように第二可動盤28に対する第一可動盤27の位置は、既に型締シリンダ29により位置保持制御されているから、型閉完了により固定金型26と可動金型32の間にキャビティ68が形成される。この際の型締力は一例として10〜100kNと比較的低圧となっている。型閉完了時には、型開閉機構の偏移量A1は0である。また型締機構の偏移量B1は正の数(金型厚さによって異なるが例えば10mm程度)である。従って制御装置58においては、前記偏移量B1に、上記システム値Cを加えることにより固定盤17に対する第一可動盤27の距離である型位置絶対値Dが算出される。そして前記型位置絶対値Dから金型厚さEを減算することにより金型間距離Fが算出される。ディスク用射出成形機11では、型閉完了してパーティング面同士が型当接した際の金型間距離Fが0mmとしての表示画面に表示される。
【0026】
そして次に前回の成形時から固定金型26に常時ノズルタッチしている射出装置12のノズル23から340〜380℃、射出速度100〜400mm/sec、射出圧力10〜60MPaのポリカーボネートの溶融樹脂をキャビティ68内に射出する。この際の可動金型32は型閉完了位置に位置保持されているが射出圧により、僅かに後退し偏移量B1が僅かに大きくなる。しかし前記可動金型32等の後退分は、型締シリンダ29のストロークによりほとんど吸収される。従ってトグルリンク21は設定された伸長した状態のままであるので、第二可動盤28と受圧盤18との位置関係(偏移量A1)はほとんど変化なく、サーボモータ35に大きな負荷がかかることはない。
【0027】
次に射出開始から僅かに遅れて射出装置12のスクリュが所定位置に前進したことが検出されると、制御装置58から切換バルブ46に対して信号が送られ、カートリッジバルブ44が開放され、アキュームレータ55に蓄圧された油とポンプ41からの油がサーボバルブ47を介して型締シリンダ29の型締側油室51に向けて送油される。そして型開側油室50の油はサーボバルブ47を介してドレンに落とされる。この際アキュームレータ55を用いることにより、0.03〜0.07秒で型締シリンダ29の圧力センサ53の値(または圧力センサ53と圧力センサ52の差圧)が所定の設定値の16〜19MPaとなるまで昇圧可能となる。そのため型締シリンダ29のラム31は射出圧に打勝って高速で前進され、同時に可動金型32の鏡面板67が、図3において一点鎖線で示される位置まで前進される。よってキャビティ68内の溶融樹脂を急速に圧縮と延展させ良好な転写成形ができる。またラム31によりキャビティ68内の溶融樹脂に対して直接圧縮制御を行うことができるので、第一可動盤27が反ることがなく、ラム31の形状および断面積を選択することにより、最良の押圧面積を選択できる。なお本実施形態では水平方向に形成されたキャビティ68に溶融樹脂が延展されるので重力の影響により不均一なディスクが成形されることがない。
【0028】
そして型締シリンダ29の圧力が前記所定の設定値に到達したことが圧力センサ53(または圧力センサ52,53の差圧)により検出されると、その後は圧力センサ52,53の差圧を検出しサーボバルブ47をクローズドループ制御する圧縮制御(多段圧力フィードバック制御)がなされる。この際に型締シリンダ29により発生する型締力の最高値は、300〜700kNであり、溶融樹脂に対する面圧としては26MPa〜62MPa程度である。またこの際、射出力に打勝つ形でラム31が前進されることにより型締力が上昇され、その結果タイバ19が伸長され受圧盤18が僅かに下降(後退)する。またこの際、固定金型26と可動金型32との画面表示される金型間距離Fは、型締力が発生してタイバ19が伸長した際に、その分だけ型締シリンダ29のラム31と第一可動盤27が前進されるので負の数(例えば−0.1〜−0.5mm)となる。
【0029】
上記のように射出圧縮制御時に急速に型締圧力を上昇させるためには、トグルリンクとサーボモータのみを用いた型締機構で行うよりも、サーボバルブ47によって制御される型締シリンダ29で昇圧を行う方が、短い時間で所望の型締力またはキャビティ内圧が得られる。その結果、キャビティ68内で良好な転写成形ができるのでディスク基板には望ましい。そしてキャビティ68内の圧縮とともに射出装置12側は保圧を行う。また保圧中に可動金型32のオスカッタが前進してゲートカットが行われる。
【0030】
キャビティ68内の溶融樹脂の冷却時間が終了すると型締シリンダ29の圧抜が行われる。圧抜は、型締シリンダ29を圧力制御して可動盤20が自重で下降しない最低型締圧力に低下させる。それと前後して固定金型26および可動金型32から離型エアが噴出される。そして型開閉用サーボモータ35の駆動によりトグルリンク21が作動され、型開が行われる。従って型締力がほとんど発生していない状態でトグルリンク21を作動させるので、リンクに大きな負荷がかからない。この際の型締シリンダ29の減圧時間の可変制御とサーボモータ35による可動金型32の後退時の所定速度までの加速時間または加速度の可変制御をできるようにしておく。このことにより成形されるディスク基板のチルトや離型モヤの修正が可能となる。そして成形されたディスク基板は可動金型32側に取出される。
【0031】
そして型開閉機構のサーボモータ35により可動盤20等が型開完了位置へ向けて異動されるが、また型開中に同時に型締シリンダ29のラム31が位置制御により当初の型閉完了時に対応した位置に戻される。そしてトグルリンク21の屈曲により可動盤20等が型開完了位置に到達すると、サーボロックされ、可動盤20の位置は位置保持される。その後型開完了位置でディスク基板は、エジェクタスリーブおよび突出ピンにより可動金型32から突き出されるとともに、図示しない取出ロボットにより取出される。従って常に安定した取出位置でディスク基板を取出すことができる。
【0032】
本発明については、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。ディスク用射出成形機11は設置面積の点やキャビティ68内の溶融樹脂が重力の影響を受けずに均一なディスク基板を成形する上で有利であるが、水平方向に可動盤および可動金型が移動する横型ディスク成形機に本発明を用いても良い。また本実施形態では、下方に向けて射出装置が設けられた縦型ディスク用射出成形機について説明したが、射出装置の向きは加熱筒が水平方向に設けられ、ノズルが直角方向に屈曲して下方に向けて設けられたものや水平方向にノズルが設けられ金型内でキャビティへ導かれるものでもよい。更には下方に射出装置が設けられ、上方に型締装置が設けられたものでもよい。
【0033】
またサーボモータによって駆動される型開閉機構としては、ボールネジとボールナットの組合せによりトグルリンクを用いずに型開閉するもの、クランク機構を用いるもの、リニア直動機構を用いるものなど他の方式であってもよい。型締手段の型締シリンダは一枚の可動盤内に配置され可動金型内のブロックを作動させるものでもよい。その場合、前記ブロックの偏移量が第二位置検出手段により検出される。また型締シリンダは両ロッド型のものを用いてもよい。
【0034】
また本実施形態ではブルーレイディスク用のディスク基板の成形について記載したが他のディスク基板、光学製品、圧縮成形に適する薄板等の成形品の成形にも用いることができる。そしてトグルリンクで型閉した際に成形されるディスク基板の板厚以上に固定金型と可動金型の間隔が僅かに開いた状態でキャビティを形成し、溶融樹脂を射出後に型締シリンダにより可動金型を前進させてキャビティ内の溶融樹脂を圧縮する射出圧縮成形の一分野である射出プレスについても、本発明に使用することができる。射出プレスによる成形は、特に厚さが薄いDVD用のディスク基板、導光板等の成形に特に好適に用いられる。射出プレス成形では停止位置から可動金型を前進させるので、通常のトグルリンク機構のみの場合、トグルリンクが屈曲した状態からトグルリンクを伸長させる必要がありサーボモータに大きな負荷がかかる。しかし本発明ではトグルリンクが伸長している状態から型締シリンダを前進させるので、サーボモータの負荷が少ない。また射出と型締側の圧縮制御の関係は、射出と同時に可動金型を圧縮開始するもの、射出中に圧縮制御を開始するもの、射出後に圧縮制御を開始するものなど各種のタイミングのものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態のディスク用射出成形機の正面図であって型開時の状態を示す図である。
【図2】本実施形態のディスク用射出成形機の正面図であって型閉時の状態を示す図である。
【図3】本実施形態のディスク用射出成形機の要部の拡大断面図である。
【図4】ディスク用射出成形機の固定盤に対する可動盤の偏移量を示す図である。
【図5】型開閉機構と型締機構の制御を示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0036】
11 ディスク用射出成形機
13 型締装置
17 固定盤
20 可動盤
21 トグルリンク
26 固定金型
27 第一可動盤
28 第二可動盤
29 型締シリンダ
31 ラム
32 可動金型
35 型開閉用サーボモータ
A0,B0 原点
A1 第二可動盤28の偏移量
B1 第一可動盤27の偏移量
C システム値
D 型位置絶対値
E,E1,E2 金型厚さ
F 金型間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形機において、
サーボモータによって駆動される型開閉機構の偏移量を検出する第一位置検出手段と、
サーボバルブによって駆動される型締シリンダの偏移量を検出する第二位置検出手段とにより固定盤に対する可動盤の偏移量を求めることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記型締シリンダには圧力検出手段が設けられ、型締時にはキャビティ内の溶融樹脂の圧縮制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記可動盤が固定盤に対して昇降して型開閉されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティ内に溶融樹脂を射出して成形を行う射出成形方法において、
サーボモータによって駆動される型開閉機構の偏移量と、サーボバルブによって駆動される型締シリンダの偏移量とにより固定盤に対する可動盤の偏移量を求めることを特徴とする射出成形方法。
【請求項5】
前記型締シリンダには圧力検出手段が設けられ、型締時にはキャビティ内の溶融樹脂の圧縮制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の射出成形方法。
【請求項6】
前記可動盤は固定盤に対して昇降して型開閉されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−255463(P2009−255463A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109707(P2008−109707)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】